JP4524117B2 - 耐摩耗性マーキングシート - Google Patents
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Description
ところで、床面マーキングシートは、駅構内、デパート床面等に施工され、多数の人に歩行されるため耐摩耗性を有することが望まれる。一般的に、数ヶ月毎に意匠を貼りかえるため、特に冬場における剥離作業性が問題となる。塩化ビニル樹脂にガラス繊維を練り込んだマーキングシートは、床面に施工されて数ヵ月後に剥離される際、低温下ではシートが破断し易いため作業性に問題を抱えていた。
そこで、本発明者らは、低温での再剥離性と耐摩耗性及び耐滑り性に優れた床面等のマーキングシート材料として有用な構造体を開発することを課題として、鋭意研究を行ってきた。その結果、低温環境下での伸びに優れたマーキングシートを用いることにより、低温での再剥離性が改善されることを見出し、本発明を成すに至った。
さらに、ポリプロピレン樹脂又はアクリル樹脂にガラス繊維を練り込んだ表面保護層が透過率および耐摩耗性に優れ、かつ画像付きレセプターフィルムと組み合わせることにより、低温での伸び率が改善されることを見出し、本発明を成すに至った。
(a)画像記録可能な粘着剤付きフィルムと、
(b)記録された画像を保護するためのガラス繊維含有透明樹脂層と、
を含んでなり、JIS Z 0237:2000年に準拠する5℃での伸びが20%以上であるマーキングシートにより解決される。
また、本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂層が、ガラス繊維を含有するポリプロピレン樹脂層又はガラス繊維を含有するアクリル樹脂層であるマーキングシートにも関する。
本発明のマーキングシートによれば、従来のマーキングシートに比較して低温での伸び特性が改善されるため、床面に貼り付けて使用され、使用後に低温環境下で剥離される場合でもシートが破壊し難い(低温再剥離性)。
図1は、本発明のマーキングシートの一例を模式的に示している。マーキングシート(100)のベースフィルム層(3)には画像層(2)が形成される。
ベースフィルム層(3)は、表面(31)及び裏面(32)を有し、表面(31)に、着色剤、すなわちトナーを受容して画像層(2)を形成している。トナーは、保護フィルム(4)を通して、保護フィルム(4)の最表面(41)から視認可能な画像を形成している。
画像層を認識し易くするために、ベースフィルム層(3)には白色ベースフィルム層が好適に使用される。白色ベースフィルム層は、酸化チタン等の白色顔料をベース層の樹脂に混入したり、ベースフィルム層表面に白色顔料をコーティングすることで得られる。
粘着剤層(5)の粘着剤は、特に限定されないが、通常、粘着性ポリマーを含有する感圧粘着剤である。この様な感圧接着性の粘着剤層としては、たとえば、粘着性ポリマーを含有する単層フィルム状の感圧接着フィルムや、2つの感圧粘着剤層を有する両面接着シートが好適に使用される。また、ベースフィルム層と粘着剤層との密着を高めるために、ベースフィルム層にコロナ処理、プラズマ処理等の物理的前処理、化学結合を促進するためのプライマー層を適宜設けてもよい。
まず、第1モノマーとして、アクリル性不飽和酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)やアクリロニトリル等の極性(メタ)アクリルモノマーを用意する。この第1モノマーと、第2モノマーとしてのアクリルモノマーとを混合し、モノマー混合物を調製する。第2モノマーとしては、アルキルアクリレート、例えば、イソオクチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等が使用できる。この様にして調製したモノマー混合物を、通常の重合方法、たとえば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等を用い、所定の分子量の粘着性ポリマーを合成する。
このような透明樹脂層は、本発明の目的を阻害するものでない限り特に限定されないが、使用する樹脂としては、低温再剥離性の点で、Tgが80℃以下の樹脂が好ましい。中でも、ポリプロピレン樹脂又はアクリル樹脂が好適に用いられる。
前記樹脂層は、ガラス繊維を含有する樹脂組成物からなるフィルムを前記画像記録用フィルムにラミネートすることにより本発明のマーキングシート中に配置することが好ましいが、ガラス繊維を含有する樹脂組成物を前記画像記録フィルムにコーティングすることにより本発明のマーキングシート中に配置することも可能である。
また、保護層の厚さは、通常10〜300μm、特に好適には20〜200μmである。画像層が形成されたフィルムに保護層を接着するために用いる粘着剤は特に限定されるものではないが、透明性、耐候性の面からアクリル系接着剤が好ましく用いられ、粘着剤層の厚さは、通常10〜100μm、特に好適には20〜50μmである。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕 (a)画像記録可能な粘着剤付きフィルムと、
(b)記録された画像を保護するためのガラス繊維含有透明樹脂層と、
を含んでなり、5℃環境下での伸び率(JIS Z 0237:2000年に準拠)が20%以上であるマーキングシート。
〔2〕 前記ガラス繊維含有樹脂層は、ガラス繊維を含有するポリプロピレン樹脂層又はガラス繊維を含有するアクリル樹脂層である〔1〕に記載のマーキングシート。
〔3〕 前記ガラス繊維含有樹脂層の全光線透過率が60%以上である〔1〕又は〔2〕に記載のマーキングシート。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のマーキングシートからなる、床用マーキングシート。
透過率
カラーメーター(日本電色社製Σ90)を用いて透明保護層(例えばフィルム)の全光線透過率を測定した。全光線透過率は次式で与えられる。
(全光線透過率)=(平行透過率)+(拡散透過率)
透明保護層を通して画像が良好に視認できたものをGood、画像が十分に視認できないものをPoorで示した(表1参照)。
JIS A 1453に準拠したテーパー摩耗試験器にて摩耗性試験を実施した。使用した摩耗輪はS−42、荷重750gfである。100回転後の減少質量を測定した。また、粘着剤が露出した回転数、ウレタンクリアを保護層に用いた場合には画像層が露出した回転数を測定した。なお、厚さを150μmに換算してある(表2参照)。
耐滑り性は、床面に幅1200mm、長さ1200mmのシートを貼り合わせ、上記シート表面を水で十分に濡らした後、安全靴(黒いゴム底)を履いた大人が、上記シート上を歩いたときの感応試験により、以下の基準で評価した:
○:滑らない、
△:部分的に滑る、
×:滑る。
レオメトリックス社製RSAIIIを用い、以下のモードで測定した。
・Dynamic Temperature Ramp Test
・昇温速度:5.0℃/min
・周波数:10Hz
・ストレッチモード
JIS Z 0237:2000年に準拠し、シートを幅25mmに切断し20℃および5℃環境下でテンシロンを用い、掴み間隔100mm、引っ張り速さ300mm/分にて伸び率を測定した。マーキングシート全体が破断した時点をもって最大伸びとみなした(表2参照)。
シートを床材に貼り付けて5℃環境下で剥離作業を行った。5℃環境下での剥離作業時にシート破断なく作業できたものをGood、シート破断が発生したものをPoorと評価した(表2参照)。
<画像付きフィルムの準備>
スコッチプリント9512システム(スリーエム社製静電プリンター)でトライデント(Trident、スリーエム社製トランスファーメディア)に転写用デジタル画像を形成した。次に、オルカIII(スリーエム社製ヒートラミネート)でアクリル系粘着剤付き白色ポリオレフィン(ポリプロピレン/ポリエチレン)フィルム(スリーエム社製SP4235C)に画像を熱転写した。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度:135℃、下部ロール温度:50℃、スピード:70cm/分、圧力:60psiであった。
透明保護フィルムと前記画像付きフィルムを常温でラミネートした。
実施例1の透明保護フィルムの全光線透過率は89%で十分な透過性を有し、透明保護フィルムを通した画像の視認性も良好で視認性はGoodと判断された。
また、実施例1の減少質量は0.04g、630回転後に粘着剤が露出した。透明保護フィルムが摩耗して画像が露出するまでの時間はガラス繊維を含まないポリプロピレン樹脂フィルム(比較例1)と比較して、ガラス繊維練り込みにより耐摩耗性が約50%向上していることが示された。
耐滑り性は良好であった。
20℃および5℃での伸び率は100%以上であり良好な伸び特性を有することが示された。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
画像付きフィルムを形成するフィルムに白色塩化ビニル樹脂フィルム(スリーエム社製ER010)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
透明保護フィルムの全光線透過率は89%で十分な透過性を有し、透明保護フィルムを通した画像の視認性も良好で視認性はGoodと判断された。
また、実施例2の減少質量は0.04g、630回転後に粘着剤が露出した。
耐滑り性は良好であった。
20℃での伸び率は100%以上、5℃での伸び率は38%であり良好な伸び特性を有することが示された。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
透明保護フィルムとしてガラス繊維練り込みアクリル樹脂フィルム(バンドー化学社製PC202、150μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
実施例3の透明保護フィルムの全光線透過率は88%で十分な透過性を有し、透明保護フィルムを通した画像の視認性も良好で視認性はGoodと判断された。
また、実施例3の減少質量は0.12g、380回転後に粘着剤が露出した。透明保護フィルムが摩耗して画像が露出するまでの時間はガラス繊維を含まないアクリル樹脂フィルム(比較例3)と比較して、ガラス繊維練り込みにより耐摩耗性が約50%向上していることが示された。
耐滑り性は良好であった。
20℃での伸び率は40%、5℃での伸び率は100%以上であり良好な伸び特性を有することが示された。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
透明保護フィルムとして、ガラス繊維を含有しない100μmポリプロピレン樹脂フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
透明保護フィルムの全光線透過率は88%で十分な透明性を有し、画像の視認性はGoodと判断された。
摩耗試験後の減少質量は0.03g、430回転後に粘着剤が露出した。実施例1と比較して耐摩耗性は劣っていた。
耐滑り性は満足できるものではなかった。
20℃および5℃では100%以上の伸び率を示した。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
透明保護フィルムとして粘着剤付きガラス繊維練り込み透明塩ビフィルム(スリーエム社製SP4856)、レセプターフィルムとして粘着剤付き白色塩ビフィルム(スリーエム社製SP4287C)を使用し、実施例1と同様に画像を形成、透明保護フィルムと積層し比較例2とした。
透明保護フィルムの全光線透過率は87%で十分な透明性を有し、画像の視認性はGoodと判断された。
摩耗試験後の減少質量は0.04g、520回転後に粘着剤が露出した。実施例1と比較して耐摩耗性は劣っていた。SP4856は床面で約3ヶ月使用することが可能であった。
耐滑り性は良好であった。
20℃での伸び率は95%であった。一方、5℃での伸び率は8%とほとんど伸びず低温性に問題を抱えていた。5℃環境下での剥離作業時フィルム破断が発生し、低温作業性はPoorと判断された。
透明保護フィルムとして、ガラス繊維を含有しない100μmアクリル樹脂フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
透明保護フィルムの全光線透過率は89%で十分な透明性を有し、画像の視認性はGoodと判断された。
摩耗試験後の減少質量は0.14g、250回転後に粘着剤が露出した。実施例3と比較して耐摩耗性は劣っていた。
耐滑り性は満足できるものではなかった。
20℃での伸び率は80%、5℃での伸び率は100%以上であった。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
<画像付きフィルムの準備>
スコッチプリント9512システム(スリーエム社製静電プリンター)でトライデント(Trident、スリーエム社製トランスファーメディア)に転写用デジタル画像を形成した。次に、オルカIII(スリーエム社製ヒートラミネート)でアクリル系粘着剤付き白色塩化ビニル樹脂フィルム(スリーエム社製ER010)に画像を熱転写した。オルカIIIの設定条件は、上部ロール温度:135℃、下部ロール温度:50℃、スピード:70cm/分、圧力:60psiであった。
透明保護フィルムを貼り付ける代わりに、ウレタン系透明樹脂(スリーエム社製GA3Sクリヤー)を乾燥後の塗布厚が20μmとなるようにナイフコーターを用いてコーティングし、透明樹脂層を設けた。
摩耗試験後の減少質量は0.51g、230回転後に粘着剤が露出した。
耐滑り性は満足できるものではなかった。
20℃での伸び率は100%以上、5℃での伸び率は29%であり良好な伸び特性を有することが示された。
5℃環境下での剥離作業性は良好であり低温作業性はGoodと判断された。
アクリル系粘着剤付き白色塩化ビニル樹脂フィルムとしてスリーエム社製ER008を用いたこと以外は比較例4と同様にしてサンプルを作製した。
摩耗試験後の減少質量は0.51g、230回転後に粘着剤が露出した。
耐滑り性は満足できるものではなかった。
20℃での伸び率は100%以上であった。一方、5℃での伸び率は4%であった。
5℃環境下での剥離作業時にフィルム破断が発生し、低温作業性はPoorと判断された。
結果を表1、表2にまとめた。
Claims (3)
- (a)画像記録可能な粘着剤付きフィルムと、
(b)記録された画像を保護するためのガラス繊維含有透明樹脂層と、
を含んでなり、前記ガラス繊維含有樹脂層は、ガラス繊維を含有するポリプロピレン樹脂層又はガラス繊維を含有するアクリル樹脂層であり、5℃環境下での伸び率(JIS Z 0237:2000年に準拠)が20%以上であるマーキングシート。 - 前記ガラス繊維含有樹脂層の全光線透過率が60%以上である請求項1に記載のマーキングシート。
- 請求項1〜2のいずれかに記載のマーキングシートからなる、床用マーキングシート。
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