JP4522855B2 - GEF−H1b:バイオマーカー,その複合体,アッセイおよび治療用途 - Google Patents

GEF−H1b:バイオマーカー,その複合体,アッセイおよび治療用途 Download PDF

Info

Publication number
JP4522855B2
JP4522855B2 JP2004519732A JP2004519732A JP4522855B2 JP 4522855 B2 JP4522855 B2 JP 4522855B2 JP 2004519732 A JP2004519732 A JP 2004519732A JP 2004519732 A JP2004519732 A JP 2004519732A JP 4522855 B2 JP4522855 B2 JP 4522855B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gef
pak4
seq
polypeptide
cell
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004519732A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005532062A (ja
JP2005532062A5 (ja
Inventor
スミール,トッド,アール
キャロウ,マリネラ,ジー
ジャラール,バヒジャ
ゾズルヤ,セルゲイ
ジシズキー,ミハイル,エル
Original Assignee
スージェン, インク.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by スージェン, インク. filed Critical スージェン, インク.
Publication of JP2005532062A publication Critical patent/JP2005532062A/ja
Publication of JP2005532062A5 publication Critical patent/JP2005532062A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4522855B2 publication Critical patent/JP4522855B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/12Transferases (2.) transferring phosphorus containing groups, e.g. kinases (2.7)
    • C12N9/1205Phosphotransferases with an alcohol group as acceptor (2.7.1), e.g. protein kinases
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/46Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • C07K14/47Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • C07K14/4701Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals not used
    • C07K14/4702Regulators; Modulating activity
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/82Translation products from oncogenes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/40Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against enzymes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Steroid Compounds (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

関連する特許出願へのクロスリファレンス
本出願は米国特許出願60/460,053(04/04/2003出願),および60/393,600(07/05/2002出願)(いずれもその全体を本明細書の一部としてここに引用する)の通常出願である。
発明の分野
本発明は,新規グアニンヌクレオチド交換因子バイオマーカーのリン酸化変種アイソフォームを検出することにより,生物学的サンプルにおいて異常な細胞増殖を診断すること,および細胞成長,特に発癌性の細胞成長を阻害,低下または破壊する薬剤をスクリーニングすることに関する。
発明の背景
グアニンヌクレオチド交換因子(“GEF”)は,GTPの加水分解生成物であるGDPが,小さなGTP結合蛋白質から解離することを刺激して,新たなGTP分子の結合を促進する。これを行うにあたり,このGEFにより促進されるGDPとGTPとの交換は,GTP結合蛋白質の構造的変化を伴い,これはGTP結合蛋白質の他の分子との相互作用の程度に影響を及ぼす。例えば,Ras蛋白質は,GTPが結合すると,エフェクターおよび他の分子と相互作用して,細胞増殖,分化およびアポトーシスに影響を与えることができる。
アクチン細胞骨格の変化の空間的局在化におけるGEFの重要性の可能性が理解され始めている。Shamah et al.,Cell,20:105(2):233−44,2001を参照。進化的な見方では,この空間的制御は,関連性の遠いS.cerevisiae Cdc24(Cdc42のGEF)が,種々のシグナルに応答して細胞の異なる空間的ドメインへの細胞骨格変化をターゲティングする上で鍵となる役割を果たすことから,納得しうるものである(O’Shea et al.,Nature Cell Biol.,2(3):E39−41,2000)。
すなわち,現存する手法および現在の知識は,細胞増殖を制御することができる手段として,または癌性,発癌性細胞および組織の検出および治療を開発することができる手段として,GEF−H1と他の蛋白質との相互作用を利用しておらず,これに注意してもいない。
発明の概要
したがって,本発明は,配列番号2のGEF−H1Sポリペプチドをコードする単離された核酸,ならびに配列番号1の配列を含む単離された核酸に関する。これに関連して,本発明はまた,配列番号2の配列を含む単離されたGEF−H1Sポリペプチドを企図する。
別の態様においては,配列番号3のGEF−H1ペプチドをコードする単離された核酸が提供される。本発明はまた,配列番号3の配列から本質的になるペプチドに関する。同様に,1つの別の態様は,配列番号4のGEF−H1ペプチドをコードする単離された核酸を提供する。別の態様においては,配列番号4の配列から本質的になるペプチドも提供される。好ましい態様においては,配列番号2の残基162−354のアミノ酸領域を欠失したGEF−H1ポリペプチドが提供される。好ましい態様においては,GEF−H1はGEF−H1Sである。本発明は,これらのGEF−H1ペプチド,ポリペプチドおよび蛋白質のいずれかのリン酸化された形に関する。すなわち,1つの態様においては,少なくとも1つのリン酸化されている残基を含む,配列番号2,3または4に記載される配列を含むペプチドが提供される。好ましい態様においては,リン酸化されている残基はセリンである。好ましい態様においては,セリンは,配列番号2のセリン−67および/またはセリン−810である。別の態様においては,セリン−67は,配列番号4の配列を含む30アミノ酸より短いペプチド中に存在する。別の態様においては,配列番号4の配列を含むペプチドは25アミノ酸未満の長さである。好ましくは,このペプチドは20アミノ酸未満の長さである。より好ましい態様においては,配列番号4の配列を含むペプチドは18アミノ酸の長さである。
別の態様においては,セリン−810は,配列番号3の配列を含む30アミノ酸より短いペプチド中に存在する。別の態様においては,配列番号3の配列を含むペプチドは25アミノ酸未満の長さである。好ましくは,このペプチドは20アミノ酸未満の長さである。より好ましい態様においては,配列番号3の配列を含むペプチドは18アミノ酸の長さである。
本発明はまた,これらのペプチド,ポリペプチドまたは蛋白質のいずれかを検出するために生成した抗体を企図する。すなわち,1つの態様においては,配列番号3に記載される配列を含むペプチドに向けられ,これに結合するGEF−H1特異的抗体が提供される。別の態様においては,配列番号4に記載される配列を含むペプチドに向けられ,これに結合するGEF−H1特異的抗体が提供される。本発明の抗体は標識することができる。好ましくは,標識は蛍光標識または放射性標識である。
別の態様においては,抗体は,本明細書に記載される方法を実施するために用いられる診断キットの一部である。すなわち,1つの態様においては,キットは,抗体を含む第1の容器,および抗体の結合パートナーと標識,例えば放射性同位体とのコンジュゲートを有する第2の容器を含む。別の態様においては,診断キットはまた,FDAに認可された用途の通知およびその指針を含んでいてもよい。
さらに別の態様においては,GEF−H1ポリペプチドまたはポリペプチドドメインに特異的結合親和性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が提供される。
さらに別の態様においては,GEF−H1特異的抗体は,リン酸化されたGEF−H1ペプチドに対して向けられ,これに結合する。すなわち,1つの態様は,リン酸化されたセリンを有する配列番号3に記載される配列を含むペプチドを具現する。好ましくは,そのペプチド中のリン酸化されたセリンは配列番号2のセリン−810である。別の態様においては,GEF−H1特異的抗体は,セリン−67がリン酸化されている,配列番号4に記載される配列を含むペプチドに対して向けられ,これに結合する。配列番号3および4におけるこれらのセリンの番号付け,すなわちそれぞれセリン−810およびセリン−67は,GEF−H1,特に配列番号2のGEF−H1Sの全長蛋白質配列の番号付けを示す。
本発明により想定されるペプチドには,配列番号6または配列番号20の少なくとも1つを含むペプチドが含まれる。別の態様においては,配列番号6または配列番号20の少なくとも1つから本質的になるペプチドが提供される。さらに別の態様においては,配列番号6の配列を含む30アミノ酸未満のペプチドが提供される。別の態様においては,配列番号6の配列を含むペプチドは25アミノ酸未満の長さである。好ましくは,このペプチドは20アミノ酸未満の長さである。より好ましい態様においては,配列番号6の配列を含むペプチドは18アミノ酸の長さである。
さらに別の態様においては,配列番号20の配列を含む30アミノ酸未満のペプチドが提供される。別の態様においては,配列番号20の配列を含むペプチドは,25アミノ酸未満の長さである。好ましくは,このペプチドが20アミノ酸未満の長さである。より好ましい態様においては,配列番号20の配列を含むペプチドは18アミノ酸の長さである。
本発明のGEF−H1蛋白質をコードする核酸もまた企図される。すなわち,1つの態様においては,配列番号1の配列を含むポリヌクレオチドが提供される。別の態様においては,配列番号2,3,4,6または20のいずれかに記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。さらに別の態様においては,配列番号3または配列番号4に記載される配列を含むペプチドをコードする,90ヌクレオチドの長さより短い核酸分子が提供される。好ましくは,ポリヌクレオチドは,75ヌクレオチドの長さより短く,より好ましくは60ヌクレオチドの長さより短く,最も好ましくは54ヌクレオチドの長さより短い。
本発明はまた,配列番号2に記載される配列を含むGEF−H1S蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを企図する。別の態様においては,ベクターは細胞中に存在する。別の態様においては,ベクターは,配列番号3または4の配列を含むポリヌクレオチドを含む。別の態様においては,ベクターは細胞中に存在する。
本発明の別の態様は,配列番号1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む細胞である。さらに別の態様においては,配列番号2に記載される配列を含む蛋白質を含む細胞が提供される。別の態様においては,細胞は細菌,真菌または哺乳動物の細胞である。
本発明は,蛋白質がGEF−H1に結合して複合体を形成している,単離されたGEF−H1/蛋白質複合体を提供する。1つの態様においては,複合体中の蛋白質はキナーゼである。すなわち,本発明は,GEF−H1−キナーゼ複合体を想定する。さらに別の態様においては,キナーゼはセリンおよび/またはトレオニンキナーゼである。好ましい態様においては,GEF−H1−キナーゼ複合体のキナーゼはp−21活性化キナーゼ(“PAK”)である。より好ましい態様においては,PAKは,PAK4,PAK5およびPAK6からなる群より選択される。さらにより好ましい態様においては,GEF−H1/PAK複合体のPAKはPAK4である。
本発明は,GEF−H1蛋白質とPAK蛋白質との間の相互作用を阻害または調節するか,または,PAKのキナーゼ活性を阻害または調節する物質,例えば,化合物,化学物質,薬剤,蛋白質または核酸を同定する方法を提供する。好ましい態様においては,同定された物質により調節または阻害されるPAK蛋白質はPAK4,PAK5またはPAK6である。最も好ましくは,PAKはPAK4である。別の態様においては,同定された物質は,GEF−H1SのPAK蛋白質への結合を調節または阻害するか,またはGEF−H1遺伝子の発現レベルを調節する。
本発明の別の観点においては,サンプルにおいてPAK4活性を検出する方法(“方法1”)が提供される。この方法は,サンプル中のリン酸化されたGEF−H1の存在またはレベルを検出することを含み,ここで,リン酸化されたGEF−H1が検出されることは,サンプルが少なくとも1つの活性なPAK4をも含むことを示す。1つの態様においては,GEF−H1は配列番号2,3または4のいずれかに記載される配列を含む。別の態様においては,PAK4は細胞のサンプルにおいて検出される。別の態様においては,サンプルは,細胞溶解物から単離された蛋白質の調製物である。別の態様においては,細胞は腫瘍細胞である。好ましい態様においては,腫瘍細胞は哺乳動物中に存在する。さらに別の態様においては,哺乳動物は,ヒト,ラット,マウス,イヌ,ウサギ,ブタ,ヒツジ,ウシ,ウマ,ネコ,霊長類,ヤギ,またはサルからなる群より選択される。最も好ましい態様においては,哺乳動物はヒトである。
さらに別の観点においては,本発明は,PAK4とGEF−H1ポリペプチドとの間の相互作用を調節する物質を同定する方法を提供する。この方法は,(a)GEF−H1ポリペプチドを候補物質に曝露して混合物を形成させ;(b)混合物にPAK4酵素を導入し;そして次に(c)GEF−H1ポリペプチドを候補物質に曝露する前および後にリン酸化されたGEF−H1ポリペプチドの量を測定する,ことを含む。1つの態様においては,候補物質に曝露した後のリン酸化されたGEF−H1ポリペプチドの量の減少または増加は,候補物質が,PAK4とGEF−H1ポリペプチドとの間の相互作用を調節する物質であることを示す。好ましい態様においては,GEF−H1ポリペプチドは,配列番号2,配列番号3または配列番号4のいずれかの配列を含む。
PAK4とGEF−H1ポリペプチドとの間の相互作用を調節する物質を同定する方法(“方法2”)もまた本発明により提供される。この方法は,(a)PAK4を候補物質に曝露して混合物を形成し;b)混合物中にGEF−H1ポリペプチドを導入し;そして次に(c)リン酸化されたGEF−H1ポリペプチドの量を測定する,ことを含み,ここで,PAK4を候補物質に曝露していない対照と比較して,リン酸化されたGEF−H1ポリペプチドの量が減少または増加したことは,候補物質がPAK4とGEF−H1ポリペプチドとの間の相互作用を調節する物質であることを示す。
好ましい態様においては,GEF−H1ポリペプチドは配列番号2,配列番号3または配列番号4のいずれかの配列を含む。
別の態様においては,方法1または2においてGEF−H1がリン酸化されるか否かを判定する工程は,リン酸化された配列番号2のセリン−810またはリン酸化された配列番号2のセリン−67の少なくとも1つを含むペプチドに対するGEF−H1特異的抗体を用いることにより行う。
好ましい態様においては,候補物質は,GEF−H1リン酸化の総レベルの低下を引き起こす。
別の観点においては,本発明によりPAK4とGEF−H1Sとの間の相互作用を調節する物質を同定する方法(“方法3”)が提供される。この方法は,(i)候補物質をGEF−H1/PAK4複合体と接触させ,次に(ii)化合物が複合体を破壊するか否かを判定することを含む。好ましい態様においては,GEF−H1は配列番号2の配列を含むGEF−H1Sである。
本発明により,さらに別の方法(“方法4”)が提供され,この方法は,哺乳動物において候補物質がPAK4キナーゼ活性を阻害するか否かを判定するために用いられる。この方法は,(i)哺乳動物において配列番号2の配列を含むGEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルを測定し;(ii)哺乳動物を候補物質に曝露し;そして次に(iii)哺乳動物においてGEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルを測定することを含み,ここで,工程(i)において測定したレベルと比較して,工程(iii)におけるGEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルが低下することは,候補物質がPAK4キナーゼの阻害剤であることを示す。別の態様においては,候補物質の投与後にリン酸化されたGEF−H1蛋白質が検出されることは,その薬剤がPAK4キナーゼ活性を阻害しないであろうことを示す。別の態様においては,候補物質を適用した後のGEF−H1リン酸化のレベルに対する候補物質を適用する前のGEF−H1リン酸化のレベルの比率は,候補物質で処理していない細胞および/または細胞溶解物におけるGEF−H1リン酸化の“バックグラウンド”レベルに対する比率を比較することにより決定する。
好ましい態様においては,哺乳動物は,ヒト,ラット,マウス,イヌ,ウサギ,ブタ,ヒツジ,ウシ,ウマ,ネコ,霊長類,ヤギ,またはサルである。最も好ましい態様においては,哺乳動物はヒトである。
本明細書に記載されるいずれかの方法により同定された候補物質は,例えば,癌を治療するために,細胞増殖を低下させるために,または足場非依存性細胞成長を低下させるために用いることができる。すなわち,本発明により,哺乳動物において癌を治療する方法(“方法5”)が想定される。この方法は,本発明の1つの方法によりGEF−H1活性を調節するか阻害するとして,またはPAK4とGEF−H1との相互作用を調節するか阻害するとして同定された物質を,哺乳動物に投与することを含む。
さらに別の観点においては,本発明は,細胞サンプルにおいて活性化PAK4の存在を検出する方法(“方法6”)を提供する。好ましくは,細胞サンプルは腫瘍細胞サンプルである。この方法は,(i)細胞サンプルから細胞溶解物を調製し;(ii)細胞溶解物調製物から蛋白質を単離および/または分離し;そして(iii)GEF−H1リン酸化変種の存在を検出する,ことを含む。1つの態様においては,リン酸化されたセリン−810またはセリン−67を有するGEF−H1リン酸化変種が検出されることは,細胞サンプルが活性化されたPAK4を含むことを示す。
好ましい態様においては,この方法および本明細書に記載される他の方法において,GEF−H1リン酸化のレベルは,GEF−H1特異的抗体を用いるELISAアッセイにおいて全細胞を用いて決定する。
本発明の別の観点は,哺乳動物において細胞増殖,細胞運動性および/または細胞侵襲を検出する方法(“方法7”)を含む。この方法は,少なくとも2つの時点(すなわち,時点Aおよび少なくとも1つの別の時点B)において哺乳動物から採取したサンプル中のGEF−H1のリン酸化レベルをモニターすることを含み,ここで,時点間でのサンプル中のGEF−H1のリン酸化レベルの増加は,細胞増殖,細胞運動性および/または細胞侵襲を示す。
好ましい態様においては,GEF−H1は配列番号2の配列を含むGEF−H1S蛋白質である。
さらに別の態様においては,方法7のサンプルは,哺乳動物の皮膚,血液,または細胞から得る。1つの態様においては,細胞は腫瘍細胞である。
別の態様においては,哺乳動物は,ヒト,ラット,マウス,イヌ,ウサギ,ブタ,ヒツジ,ウシ,ウマ,ネコ,霊長類,ヤギ,またはサルからなる群より選択される。最も好ましくは,哺乳動物はヒトである。
本発明により企図される別の方法(“方法8”)においては,配列番号3または4の配列を含むペプチドを細胞または細胞溶解物調製物に投与して,内因性GEF−H1蛋白質のリン酸化を競合的に阻害する。1つの態様においては,これらのペプチドは過剰に,すなわちこれらが本質的にすべてのPAK4蛋白質に結合するような高い濃度で投与される。別の態様においては,配列番号3または配列番号4のいずれかを含む30アミノ酸の長さより短いペプチドが提供される。.好ましくは,これらのペプチドは,25アミノ酸の長さより短く,より好ましくは20アミノ酸の長さより短く,最も好ましくは18アミノ酸の長さである。
すなわち,本発明はまた,個体においてGEF−H1活性を阻害することを含む,個体において癌を治療する方法(“方法9”)を想定する。好ましい態様においては,GEF−H1はGEF−H1M,GEF−H1SまたはGEF−H1Uの少なくとも1つである。最も好ましい態様においては,GEF−H1Sは,配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。
別の態様においては,GEF−H1活性を阻害する工程は,前記GEF−H1をコードする内因性遺伝子の発現を阻害することを含む。さらに別の態様においては,GEF−H1活性は,前記個体中に存在する癌性細胞の集団中またはその近くで阻害される。GEF−H1をコードする遺伝子の発現は,当該技術分野において知られる手法,例えばアンチセンス技術およびRNA干渉により阻害またはダウンレギュレートすることができる。したがって,そのような方法にしたがって一本鎖または二本鎖の核酸(すなわち,DNAまたはRNA)を使用して,GEF−H1遺伝子に関連するmRNA転写産物を破壊するかその転写を終了させることができ,あるいは,GEF−H1遺伝子それ自体の転写に影響を及ぼすことができる。
本発明の別の観点は,細胞サンプルにおいて細胞増殖および足場非依存性細胞成長を低下させる方法(“方法10”)を提供し,この方法は,細胞サンプルにおいてGEF−H1活性を阻害することを含む。1つの態様においては,GEF−H1はGEF−H1M,GEF−H1SまたはGEF−H1Uの少なくとも1つである。別の態様においては,GEF−H1は,好ましくは,配列番号2で記載されるアミノ酸配列を含むGEF−H1Sである。
本発明の1つの観点においては,配列番号21のアミノ酸配列を含むが他のグループII PAKのアミノ酸を含まないポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。好ましい態様においては,ポリペプチドは,グアニン−ヌクレオチド交換因子に結合することができ,これによって,グアニン−ヌクレオチド交換因子のPAK4媒介性リン酸化を防止するか,またはグアニン−ヌクレオチド交換因子のPAK4媒介性リン酸化のレベルを低下させることができる。別の態様においては,“配列番号21のポリペプチド”のグアニン−ヌクレオチド交換因子への結合は,グループII PAK媒介性リン酸化によるそのポリペプチドが結合したグアニン−ヌクレオチド交換因子のリン酸化のレベルを防止または低下させる。好ましい態様においては,ポリペプチドはGEF−H1Sのアミノ酸763−921に結合することができる。
本発明にしたがえば,ポリペプチドは,ポリペプチドがなおGEF−H1アイソフォームに結合することができる限り,およびポリペプチドがPAK4蛋白質または他のグループII PAKアイソフォームの他のアミノ酸配列を含まない限り,配列番号21の一部のみを含んでいてもよい。すなわち,本発明のポリペプチドは,PAK4のアミノ酸276−324(すなわち配列番号21),またはアミノ酸280−324,またはアミノ酸285−324,またはアミノ酸291−324,またはアミノ酸298−322(すなわち,配列番号22)を含むことができる。
すなわち,1つの態様においては,本発明は,配列番号21のアミノ酸配列から本質的になるかまたは配列番号21の一部から本質的になるポリペプチドをコードする,単離されたポリヌクレオチドを提供する。本明細書において用いる場合,“から本質的になる”との語句は,配列番号21以外のグループII PAK蛋白質の他のアミノ酸がないことを示す。
別の態様においては,単離されたポリヌクレオチドは配列番号21のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。
配列番号21をコードするポリヌクレオチドは,PAKと無関係の第2の蛋白質またはポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドに動作可能なように連結されていてもよい。すなわち,本発明は,配列番号21および/または配列番号22のいずれかまたは両方と,少なくとも1つの他の蛋白質またはポリペプチドとを含む融合蛋白質を発現する,配列番号21のDNAコンストラクトおよび配列番号22のDNAコンストラクトを想定する。
さらに別の態様においては,単離されたポリヌクレオチドは,配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし,ここで,ポリペプチドは,グアニンヌクレオチド−交換因子に結合することができる。
別の態様においては,配列番号22のアミノ酸配列を含むが他のグループII PAKアミノ酸を含まないポリペプチドをコードする,単離されたポリヌクレオチドが提供される。好ましい態様においては,ポリペプチドはグアニン−ヌクレオチド交換因子に結合して,その際,グアニン−ヌクレオチド交換因子のPAK4媒介性リン酸化を防止するかまたはそのレベルを低下させることができる。別の態様においては,そのような“配列番号22のポリペプチド”のグアニン−ヌクレオチド交換因子への結合は,ポリペプチドが結合したグアニン−ヌクレオチド交換因子のいずれかの,グループII PAK媒介性リン酸化を防止または低下させることができる。
別の態様においては,単離されたポリヌクレオチドは,配列番号22のアミノ酸配列から本質的になる,または配列番号22の一部から本質的になるポリペプチドをコードする。本明細書において用いる場合,“から本質的になる”との句は,配列番号22以外の他のグループII PAK蛋白質のアミノ酸がないことを示す。
さらに別の態様においては,単離されたポリヌクレオチドは,配列番号22のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。
さらに別の態様においては,単離されたポリヌクレオチドは,配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードし,ここで,ポリペプチドはグアニンヌクレオチド−交換因子と結合することができる。
本発明の別の観点においては,配列番号21のアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドが提供される。1つの態様においては,ポリペプチドは標識を含む。別の態様においては,標識は,ビオチン,HISタグ,放射性標識,蛍光団,および発色団からなる群より選択される。
本発明のさらに別の観点においては,配列番号22のアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドが提供される。1つの態様においては,ポリペプチドは標識を含む。好ましい態様においては,標識は,ビオチン,HISタグ,放射性標識,蛍光団,および発色団からなる群より選択される。
本発明はまた,配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドであって,グアニンヌクレオチド−交換因子と結合することができるポリペプチドを提供する。
さらに,配列番号21と少なくとも76%の配列同一性を有するアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドであって,グアニンヌクレオチド−交換因子と結合することができるポリペプチドが提供される。
さらに別の観点においては,p21活性化キナーゼ4の残基276−324で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列および少なくとも1つの他のポリペプチド配列を含む組換えポリペプチドが提供され,組換えポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基1−275で示されるアミノ酸配列も,p21活性化キナーゼ4の残基325−985で示されるアミノ酸配列も含まない。さらに,組換えポリペプチドは,他のグループII PAKポリペプチド配列のいずれも含まない。
1つの態様においては,ポリペプチドは標識を含む。好ましい態様においては,標識は,ビオチン,HISタグ,放射性標識,蛍光団,および発色団からなる群より選択される。
すなわち,本発明のいずれのポリペプチドも,これらを検出し,容易に操作し,またはサンプルから単離することができるように標識することができる。
本発明はまた,配列番号22と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドを提供し,ここで,ポリペプチドはグアニンヌクレオチド−交換因子に結合することができる。
別の観点においては,p21活性化キナーゼ4の残基298−324で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列および少なくとも1つの別のポリペプチド配列を含む組換えポリペプチドが提供され,ここで,組換えポリペプチドはp21活性化キナーゼ4の残基1−297で示されるアミノ酸配列を含まず,p21活性化キナーゼ4の残基325−985で示されるアミノ酸配列を含まない。また,組換えポリペプチドは,他のグループII PAKポリペプチド配列を含まない。
さらに別の態様においては,p21活性化キナーゼ4の残基276−324で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。1つの態様においては,このポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基1−275で示されるアミノ酸配列を含まず,p21活性化キナーゼ4の残基325−985で示されるアミノ酸配列を含まない。また,組換えポリペプチドは,他のグループII PAKポリペプチド配列を含まない。
さらに別の態様においては,p21活性化キナーゼ4の残基298−324で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。1つの態様においては,ポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基1−297で示されるアミノ酸配列を含まず,p21活性化キナーゼ4の残基325−985で示されるアミノ酸配列を含まない。また,組換えポリペプチドは,他のグループII PAKポリペプチド配列を含まない。
本発明はまた,配列番号21またはその一部または配列番号22のアミノ酸配列から本質的になる,またはそれからなるポリペプチドを含む医薬組成物を含む。好ましい態様においては,そのようなポリペプチドはGEF−H1アイソフォームに結合することができる。
本発明はまた,生物学的サンプル中におけるグアニンヌクレオチド−交換因子の存在を検出する方法を提供する。この方法は,
(i)生物学的サンプルをp21活性化キナーゼ由来ポリペプチドとともにインキュベートし,そして
(ii)p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドのいずれかがグアニンヌクレオチド−交換因子に結合するか否かを判定する,
ことを含み,ここで,
(a)p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基298−324で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み,
(b)p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基1−297で示されるアミノ酸配列を含まない,および
(c)p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドは,p21活性化キナーゼ4の残基325−985で示されるアミノ酸配列を含まない。
1つの態様においては,p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドは標識を含む。好ましい態様においては,標識は,ビオチン,HISタグ,放射性標識,蛍光団,および発色団からなる群より選択される。
この方法の別の態様においては,p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドのいずれかがグアニンヌクレオチド−交換因子と結合するか否かを判定する工程は,生物学的サンプルから未結合の放射性標識p21活性化キナーゼ由来ポリペプチドを除き,次にサンプル中の放射活性のレベルを測定することを含む。
本発明のさらに別の観点は,グアニン−ヌクレオチド交換因子のPAK4媒介性リン酸化を阻害する方法である。この方法は,グアニン−ヌクレオチド交換因子を配列番号21のアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドに曝露することを含み,ここで,ポリペプチドはグアニン−ヌクレオチド交換因子に結合し,その際グアニン−ヌクレオチド交換因子のPAK4媒介性リン酸化をある程度またはすべて阻害する。他のグループII PAK蛋白質によるGEF−H1のリン酸化もまたこの方法により同様に阻害されることもありうる。
1つの態様においては,グアニン−ヌクレオチド交換因子は生物学的サンプル中に,例えば組織,培養細胞,または単離された細胞中に存在する。別の態様においては,生物学的サンプルは哺乳動物から得られたものである。好ましい態様においては,哺乳動物は,ヒト,マウス,ラット,ブタ,ウシ,ウサギ,イヌ,ネコ,ウマ,ヤギ,霊長類,またはサルである。最も好ましい態様においては,哺乳動物はヒトである。
さらに別の態様においては,グアニン−ヌクレオチド交換因子をポリペプチドに曝露する工程は,ポリペプチドを含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む。好ましい態様においては,ポリペプチドを含む医薬組成物は,錠剤,エアロゾル,粉体,液体,ゲル,クリーム,坐剤のいずれかである。
本発明はまた,PAK4とグアニン−ヌクレオチド交換因子との間の相互作用を破壊する分子を同定する方法を提供する。この方法は,
(a) グアニン−ヌクレオチド交換因子を配列番号21のアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドに曝露し,ここで,ポリペプチドはグアニン−ヌクレオチド交換因子に結合して複合体を形成し;
(b) 1またはそれ以上の試験分子を複合体に加え;そして
(c) 試験分子を複合体に加えた後にポリペプチドおよびグアニン−ヌクレオチド交換因子が互いに解離するか否かを判定する,
ことを含む。
本発明はまた,GEF−H1アイソフォームのPAK4媒介性リン酸化を阻害する方法を包含する。この方法は,配列番号21のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを細胞に導入することを含み,ここで,ポリヌクレオチドはポリペプチドを産生するよう発現され,ポリペプチドは細胞中でGEF−H1アイソフォームに結合し,このことによりPAK4リン酸化を阻害する。好ましい態様においては,ベクターは他のいずれかのグループII PAKポリペプチド配列をコードしない。
“阻害する”とはGID含有ポリペプチドがGEF−H1アイソフォームに結合したときに,PAK蛋白質の,特にPAK4の正常なリン酸化活性が,すべて,ほとんど,またはある程度減少することであると理解される。“GID”は以下に定義される。
図面の簡単な説明
図1:(出現順にそれぞれ配列番号32−34)
GEF−H1のPAK4への直接結合
(a)mycタグ付きPAK4アレルまたはサブドメインを過剰発現する293T細胞から溶解物を調製し,グルタチオンビーズに結合したGST,GST−GEF−H1(787−921)およびGST−Maguin−様(ビーズ名称1,2,3,4)とともにインキュベートした;または(b)GFP−GEF−H1を過剰発現する293T細胞から溶解物を調製し,ストレプトアビジンビーズに結合させたPAK4ビオチン化ペプチド(291−355)および(276−324)とともにインキュベートした。等量のビーズおよび過剰の溶解物(500ug)を用いた。ビーズの溶出物および総溶解物をSDS−PAGEで分析し,mycまたはGEF−H1抗血清を用いて免疫ブロットした;(c)はPAK4遺伝子を示し,GEF−H1相互作用ドメイン(GID)を同定するために用いたPAK4の領域の概略が示される;(d)PAK4の最小結合領域により規定されるGIDとPAK5およびPAK6とのアラインメント。
図2:腫瘍細胞においてPAK4とGEF−H1との間の相互作用が生ずる
(a)A549,HCT116およびH1299からのヒト腫瘍細胞溶解物を,抗PAK4,抗GEF−H1および抗PAK4免疫前血清と結合させたプロテインGビーズで免疫沈殿した。ビーズ溶出物は,抗GEF−H1抗血清を用いるウエスタンブロッティングにより分析した。(b)H1299細胞の二重免疫蛍光は,PAK4およびGEF−H1(赤)がシス−ゴルジ付随蛋白質β−COP(緑)と共局在化し,およびトランスゴルジマーカーである小麦胚芽アグルチニン(青)と部分的共局在化することを示す。
図3:(配列番号35−37,37−45および45−47(それぞれ表示順))
PAK4はインビトロおよびインビボでGEF−H1をリン酸化する
(a)インビトロキナーゼアッセイは,精製したGST,GST−GEF−H1(763−921)およびGST−Maguin様蛋白質がPAK4によりリン酸化されることを示す。ネガティブ対照の自己リン酸化反応は,基質を含まない反応混合物である。反応基質の濃度勾配は三角形で示される;
(b)ファージディスプレイのヒットに対してアライメントした重み付けしたPAK4基質コンセンサス(点線の上)。アスタリスクはリン酸アクセプター部位を示す。推定リン酸化部位を有するアミノ末端GEF−H1ペプチド(点線の下)は“*”で示される;
(c)PAK4によるGEF−H1のインビボでのリン酸化は,共トランスフェクトした溶解物をリン酸特異的抗HA抗血清(下パネル)でプローブしたウエスタンブロットで示される。総GEF−H1の量はHA抗血清を用いて検出した(上パネル)。
図4:GEF−H1アレルの形態学的影響
NIH−3T3細胞をEGFPタグ付きGEF−H1アレルでトランスフェクトした;GEF−H1S(I),GEF−H1SS810A(II),GEF−H1SS67A(III),GEF−H1SS67,810A(IV),GEF−H1Q312M,R313G(V)およびEGFP(VI)。GFP蛍光を用いてGEF−H1(左パネル)の発現を検出し,および蛍光−ファリシジンを用いて細胞骨格の再配列をモニターした(右パネル)。
図5:PAK4はSer810のリン酸化を介してラメリポディウム形成および張線維の減弱化を制御する。
(a)NIH−3T3細胞をPAK4およびGEF−H1Sアレルでトランスフェクトし,EGFPの蛍光イメージングによりGEF−H1アレルを調べた。PAK4コンストラクトは,PAK4についてはHA抗血清,続いて抗マウス蛍光ローダミンコンジュゲートを用いて,免疫染色により同定した。アクチンを標識するためには蛍光クマリン−ファリシジンを用いた。a)対照EGFPとコトランスフェクトしたPAK4(I)および変異体PAK4S474E(II)およびPAK4K350,351A(III);b)aと同様に,GEF−H1SをPAK4アレルと(I−III),およびGEF−H1SS810A,GEF−H1SS67AおよびGEF−H1SQ312M,R313GをPAK4S474Eと(IV−VI),コトランスフェクトした。矢印は,PAK4S474EとGEF−H1SまたはGEF−H1SS67Aとを共発現する細胞についてのラメリポディウム誘導を示す。アスタリスクは張線維の誘導を有する細胞を示す。スケールバーは10μmを示す。
図6:PAK4シグナリングはGEF−H1Mを介してアクチンおよびMT細胞骨格に伝わる
NIH−3T3細胞をGEF−H1およびPAK4でコトランスフェクトした。GEF−H1およびPAK4の発現は,GEF−H1についてはEGFPの,PAK4についてはPAK4抗血清(#933)およびその後に抗ウサギ蛍光ローダミンの蛍光イメージングにより検出した。蛍光クマリン−ファリシジンを用いてアクチン細胞骨格を調べた。抗β−チューブリン,続いて抗マウス−マリナブルーコンジュゲートを用いて,MT細胞骨格を染色した。(a)においては,GEF−H1MはPAK4および変異体PAK4S474Eと一緒に示されている。矢印はGEF−H1Mと変異体PAK4S474Eをを共発現する細胞におけるアクチンの豊富なラメリポディウムを示す;(b)GEF−H1Mならびにベクターおよび変異体PAK4S474EおよびPAK4K350,351Aが示される。変異体PAK4S474Eの存在下におけるMT細胞骨格の分極していない部分的解離に注目されたい。スケールバーは10μmを表す。
図7:インビボでのRacおよびRhoの相反的制御のモデル
(a)リン酸化されていない状態のGEF−H1は,基底の構成的Rho活性を保持している;(b)PAK4はGEF−H1をリン酸化してRac活性化と構成的Rhoシグナリングの阻害を同時に生じさせることによりGEF−H1を制御することができる。
図8:(出現順にそれぞれ配列番号18,3,3,3,4,4および4)
GEF−H1蛋白質およびペプチドのリン酸化スコア
(a)可能性のある制御領域から誘導したペプチドホスホアイソマーを用いてリン酸化部位を確認した。赤字で示される残基は予めリン酸化されており,インビトロでリン酸化をブロックする;(b)GEF−H1蛋白質上のPAK4リン酸化を物理学的に位置決定するために用いられた欠失と部位特異的突然変異体との組み合わせ。
図9:(配列番号35,48−49,35および50−51)
GEF−H1とCdc24の保存
Cdc24との残基の保存は,ピンク色および黄色で示される。PAK4リン酸化部位は,重み付けされたコンセンサス上のアスタリスクにより強調されており,これはCdc24との間で保存されている推定制御領域と並列されている。
図10はGEF−H1S遺伝子の概略図であり,リン酸化されるセリン残基67および810の位置を,GEF−H1S蛋白質の鍵となるドメイン,すなわちいわゆる“DH”ドメインおよび“PH”ドメインとの関係で示す。
好ましい態様の詳細な説明
米国特許出願60/393,600においては,種々のGEF−H1アイソフォームが“GEF−H1a”,“GEF−H1b”および“GEF−H1c”として示されている。本明細書においては,これらの同じアイソフォームを“GEF−H1M”,“GEF−H1S”および“GEF−H1U”と表す。したがって,“GEF−H1a”は“GEF−H1M”と同じであり;“GEF−H1b”は“GEF−H1S”と同じであり;“GEF−H1c”は“GEF−H1U”と同じである。
これらのGEF−H1スプライシングアイソフォームのうち,GEF−H1Sは,GEF−H1の残基1−921から本質的になり,さらに7アミノ酸の“ミニ−エクソン”を含む。GEF−H1SはN末端ジンクフィンガードメインを含まない。これとは対照的に,GEF−H1Mのアミノ酸配列はジンクフィンガードメインを含み,これは微小管結合に関与している。GEF−H1Mの配列は,Krendel et al.,(上掲)に記載されるGEF−H1の全長版,すなわち残基1−985と同一である。
すなわち,本発明は,細胞増殖のバイオマーカーであり,癌を治療するための候補薬剤のスクリーニングの標的である,新規GEFアイソフォーム“GEF−H1S”を提供する。本発明者らは,GEF−H1アイソフォームのある種のリン酸化状態を検出することにより,細胞が発癌性であるか,あるいは異常な細胞成長を示すか否かを判定することができることを発見した。
GEF−H1は,交換因子の“Dblファミリー”に属するグアニンヌクレオチド交換因子である(Ren et al.,J.Biol.Chem.,273(52);34954−60,1998)。本明細書に記載される新規GEF−H1S遺伝子(配列番号1)は,2763ヌクレオチドを含み,約104kDの予測分子量を有する921アミノ酸の蛋白質(配列番号2)をコードする。GEF−H1Sを含むすべてのファミリーメンバーに共通するものは“DH”および“PH”ドメインである。Chan, et al.,Oncogene,9(4):1057−63,1994;およびMusacchio et al.,Trends Biochem.Sci.,18(9):343−8,1993を参照。典型的には,酵素活性はDHドメイン中に存在し,Rho GTPasesのRasスーパーファミリーに属する蛋白質におけるGDPからGTPへの交換を容易にする。GEF−H1SのDHドメイン(すなわち,配列番号2)は,GEF−H1S蛋白質の162位および354位に位置するアミノ酸中に存在する。PHドメインは,アミノ酸396と496との間に位置する。本発明はまた,DHドメインを含まないが1またはそれ以上のリン酸化部位を含むGEF−H1ペプチドに関する。
以下に詳細に説明するように,GEF−H1を過剰発現する細胞は,足場非依存性であり,異常に増殖する。さらに,そのような細胞は,無胸腺ヌードマウスに移植したとき,腫瘍を形成することができる。したがって,GEF−H1の発現をダウンレギュレートまたは阻害することにより,そのような表現型の発生を予防または低下させることができる。
配列番号2に記載される配列を有する新規なGEF−H1S蛋白質は,セリン/トレオニン−蛋白質キナーゼであるp−21活性化キナーゼ4(“PAK4”)と関連しており,これによりリン酸化される。GEF−H1S蛋白質中の2つの領域,すなわちセリン−810およびセリン−67がPAK4によりリン酸化される。“セリン−810”および“セリン−67”は,GEF−H1S蛋白質,すなわち配列番号2のアミノ酸位置810および67を表す。しかし,他のGEF−H1蛋白質もまたこれらの位置および一般的リン酸化認識部位中にセリン残基を含む。“リン酸化認識部位”とは,特定のキナーゼにより認識されるリン酸化可能なセリン/トレオニン残基のいずれかの側のアミノ酸残基の短いストレッチを表す。したがって,“セリン−810”および“セリン−67”との用語は,多数のGEF−H1蛋白質のいずれか1つにおけるリン酸化可能なセリン残基を表す。これらの位置(すなわち,配列番号2の810位および67位)のトレオニン残基もまたキナーゼによりリン酸化されると考えられる。
すなわち,残基807−824,RRRLPAGDALYLSFNPP(配列番号3)中で,および残基55−72,RQSLLGSRRGRSLSLAK(配列番号4)中で示されるセリン(太字,下線)を含む任意のGEF−H1ペプチドは,PAK4によりリン酸化される。他のGEF−H1蛋白質には,GEF−H1MおよびGEF−H1Uが含まれる。前者はRen et al.,J.Biol.Chem.,273(52):34954−60,1998;およびKrendel et al.,Nat.CellBiol.,4(4):294−301,2002に記載されている。GEF−H1Uは,Reddy&Chatterjee,Cancer Res.,49(7):1763−7,1989に記載されている。本発明は,配列番号3または配列番号4のいずれかを含む30アミノ酸の長さより短いペプチドを想定する。好ましくは,これらのペプチドは25アミノ酸の長さより短く,より好ましくは20アミノ酸の長さより短く,最も好ましくは18アミノ酸の長さである。したがって,本発明はまた,配列番号3または4のいずれかの配列を含むペプチドをコードするポリヌクレオチドを企図する。すなわち,本発明は,配列番号3または配列番号4に記載される配列を含むペプチドをコードする90ヌクレオチドの長さより短いポリヌクレオチドを想定する。好ましくは,ポリヌクレオチドは,75ヌクレオチドの長さより短く,より好ましくは60ヌクレオチドの長さより短く,最も好ましくは54ヌクレオチドの長さより短い。
したがって,これらのGEF−H1アイソフォームのセリン−810およびセリン−67は,PAK4の存在下でリン酸化されるであろう。したがって,本発明は,PAK4活性を指示するものとしてGEF−H1Sのリン酸化を測定することを企図するが,本発明はまた,GEF−H1MおよびGEF−H1Uアイソフォームのリン酸化も包含する。すなわち,“総”GEF−H1リン酸化レベルは,配列番号3または4に記載される配列のペプチドを含むGEF−H1蛋白質;すなわち,GEF−H1M,GEF−H1SおよびGEF−H1Uの累積的リン酸化状態を示す。
この情報から,GEF−H1のリン酸化コンセンサス配列は,N末端からC末端に,“RBSZXG”(配列番号6)または“RBSZXL”(配列番号20)(式中,Rはアルギニンであり,Bは塩基性アミノ酸であり,Sはセリンであり,Zは疎水性アミノ酸であり,Xは任意のアミノ酸であり,Gはグリシンであり,Lはロイシンである)であるという予測が導かれる。GEF−H1中のいくつかのリン酸化部位においては,C−末端アミノ酸残基はグリシンであるが,別の部位においては,残基はロイシンである。したがって,このコンセンサス配列構造を含むすべてのペプチドは,PAK4によるリン酸化の標的である可能性があり,そのようなペプチドは本発明にしたがうアッセイにおいて用いることができる。さらに,RBSZXG(配列番号6)および/またはRBSZXL(配列番号20)コンセンサス配列から本質的になるすべてのペプチドは,PAK4によるリン酸化の標的である可能性があり,そのようなペプチドは,本発明にしたがうアッセイにおいて用いることができる。
PAK4は,ヒト腫瘍細胞株で過剰発現されており,PAKファミリーのキナーゼの他のメンバーとともに,細胞形態学および運動性の制御における関与が示唆されている。例えば,Callow et al.,J.Biol.Chem.,4;277(1):550−8,2002;Abo et al.,EMBO J.,17(22):6527−40,1998;Gnesutta et al.,J.Biol.Chem,276(17):14414−9,2001;Qu et al.,Mol.Cell Biol.,21(10):3523−33,2001;およびDan et al.,J.Biol.Chem.,276(34):32115−21,2001を参照。本明細書において用いられる“PAK4”蛋白質はまた,WO99/53036および米国特許6,013,500に記載されている。他のPAK酵素は,GEF−H1等のGEF蛋白質をリン酸化することができる。PAK5およびPAK6が,配列番号3または4のリン酸化部位を含むGEF−H1をリン酸化しうることが企図される。PAK5は,Pandey et al.,Oncogene,21(24):3939−48,2002およびDan et al.,Mol.Cell Biol.,22(2):567−77,2002により記載されている。PAK6は,Yang et al.,J.Biol.Chem.,276(18):15345−53,2001において記載されている。
PAK4の過剰発現は,局在化したアクチン重合および糸状足の形成を誘導し,したがって,細胞のアクチン細胞骨格の変化はPAK4活性が原因であると考えることができる。さらに,PAKキナーゼは,発癌性Rasにより推進される足場非依存性細胞成長および細胞生存の制御における関与が示唆されている。例えば,Callow et al.,2002は,活性化PAK4は細胞をトランスフォームする能力を有するが,不活性な形(“キナーゼデッド”)はRas依存性の足場非依存性細胞増殖をブロックすることを示した。一般に,腫瘍細胞は足場を必要とせず,懸濁して成長することができる。足場非依存性細胞増殖は,発癌性細胞の顕著な特徴である。したがって,PAK4は,発癌性におけるその関与が強く示唆され,Rasトランスフォーメーションに特に重要であると考えられる。
この観点からみると,本明細書に記載される研究は,GEF−H1がPAK4の基質であること,およびこれが活性化型のキナーゼによりリン酸化されることを明らかにする。したがって,GEF−H1のリン酸化状態を検出することにより,PAK4が活性であるか不活性であるかを判定することができる。したがって,細胞または組織サンプルが増殖しているかまたは異常な細胞成長または形態学の徴候を示すか否かを確かめることができる。すなわち,GEF−H1はPAK4活性の優れたバイオマーカーであり,PAK4活性をブロックしうる薬剤および化合物をスクリーニングするのに非常に有用である。例えば,GEF−H1のリン酸化状態を変化させる薬剤は,直接的にまたは間接的に作用してPAK4キナーゼを阻害し,このことにより,細胞増殖を改善し,低下させまたは理想的には停止させる薬剤でありうる。したがって,候補薬剤の存在下および非存在下でGEF−H1のリン酸化パターンをモニターすることにより,可能な癌治療を識別することができる。
この文脈においては,アッセイは,(i)試験サンプルから細胞溶解物を取得し;(ii)細胞溶解物の調製物から蛋白質を単離および/または分離し;そして(iii)GEF−H1リン酸化変種,すなわち,セリン−810および/またはセリン−67がリン酸化されたGEF−H1蛋白質の存在を検出することを含む。この点に関して,試験サンプルの細胞溶解物における全GEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルを対照細胞サンプルから単離された全GEF−H1蛋白質のリン酸化レベルと比較することにより,そのレベルが異常であるかどうかを判定することができる。対照細胞サンプルは,試験サンプルと同じ細胞タイプであるが,哺乳動物から,または健康であることが知られている起源,すなわち哺乳動物野生型細胞から単離された細胞のサンプルである。対照細胞サンプルは,試験細胞サンプルを単離した同じ個体から単離することができる。哺乳動物は,ヒト,ラット,マウス,イヌ,ウサギ,ブタ,ヒツジ,ウシ,ウマ,ネコ,霊長類,ヤギ,またはサルでありうる。
すなわち,試験サンプルと対照サンプルとの間のGEF−H1リン酸化のレベルの比率は,(i)より多い数の活性なPAK4キナーゼ,または(ii)より早い速度の触媒活性を有するPAK4キナーゼ酵素,のいずれかを有する試験サンプル中において高いことが予測される。例えば,運動性,増殖および細胞侵襲に関与する細胞は,より高いPAK4活性を,したがって,他のタイプの非運動製細胞より高いレベルのGEF−H1リン酸化を有するであろう。この点に関して,腫瘍細胞および免疫系の細胞(すなわちマクロファージ)は,運動性,増殖および細胞侵襲に関与する細胞の例である。腫瘍細胞の例には,組織の癌および造血性起源の癌からの細胞が含まれる。
上に概説した方法の工程(iii)は,GEF−H1特異的抗体を用いて行うことができる。すなわち,本発明は,リン酸化された形のGEF−H1を標的とするリン酸特異的抗体を提供する。
GEF−H1のリン酸化状態を測定するためには,多数の既知のプロトコルのいずれを用いてもよい。例えば,以下の実施例9に記載されるように,GEF−H1またはGEF−H1−PAK複合体に結合したリン酸特異的抗体を検出することができる。GEF−H1−PAK複合体とは,GEF−H1蛋白質とPAK蛋白質とが,2つの蛋白質が互いに結合するように物理学的に相互作用することを表す。複合体の蛋白質は,時間の経過とともに解離してもしなくてもよい。好ましくは,GEF−H1−PAK複合体はGEF−H1S−PAK4複合体である。この文脈において,複合体のGEF−H1Sは,配列番号2に記載される配列を含む。
あるいは,ハイブリッドグリーン蛍光蛋白質(GFP)を,配列番号3および4に示されるリン酸化されたおよびリン酸化されていない形のGEF−H1ペプチドの両方に高い親和性を有する一本鎖抗体に結合させるよう加工することにより,リン酸化を測定することができる。次に,Deo&Daunert,Anal.Biochem.,289(1):52−9,2001に記載されるように,蛍光分光光度計を用いて“蛍光クエンチング”の程度をモニターする。GFPハイブリッドはGEF−H1ペプチドのリン酸化によりコンフォメーションが変化し,このことにより異なる種類の蛍光を生じ,これは簡単かつ容易に検出および定量することができる。
同様に,配列番号3および4のリン酸化されていない形のGEF−H1ペプチドから誘導されたビオチン化ペプチド基質をGFPに結合させることができる。続くPAK4によるリン酸化により,上述した蛍光クエンチングが生ずると予測される。ビオチンは,蛍光を用いることができない場合に呈色および発色測定を可能とする。例えば,PAK4活性を阻害する物質はまた基質,例えばGEF−H1ペプチドのリン酸化をも防止するため,ペプチドコンフォメーションのポジティブの変化はほとんどまたは全くなく,したがって,GFP蛍光の変化もほとんどまたは全くない。しかし,ビオチン標識は,候補阻害剤物質の存在下で,リン酸化およびそれがないことの測定を容易にする。
GEF−H1リン酸化の程度を測定するのに有用なさらに別の方法は“蛍光共鳴エネルギー転移”(FRET)である。Sato et al.,Nat.Biotechnol.,20(3):287−94,2002を参照。この方法は,リン酸化を指示するものとして,PAK4リン酸化認識ドメインとGEF−H1基質ペプチド(または誘導体)(例えば,配列番号3および4のもの)の間のリン酸成分の転移を測定する。
ゲルシフトアッセイは,蛋白質のリン酸化を検出することができるさらに別の方法である。Wegener et al.,J.Biol.Chem.,259(3):1834−41,1984を参照。
本発明は,生化学に基づく細胞溶解物アッセイおよび放射性方法を用いて,PAK4による全GEF−H1蛋白質およびGEF−H1由来ペプチドのリン酸化の変化をモニターし,記録し,検出する。以下の実施例14および15を参照。細胞アッセイにおいては,GEF−H1に対するリン酸特異的抗体を用いて,細胞溶解物調製物中のリン酸化されたGEF−H1の存在を検出する。GEF−H1に特異的な抗体は,多数の手法のいずれを用いて生成してもよい。例えば,抗体はウサギで生成することができる。Nims et al.,Lab Anim.Sci.,23(3):391−6,1973を参照。特定の蛋白質にユニークまたは特異的であるエピトープに対する抗体を生じさせることができる。例えば,PAK4について先に示されているようにして,KLH−コンジュゲート化ペプチドCSGDRRRAGPEKRPKSS(配列番号23)に対する抗体を生じさせることができる。Hashimura et al.,J.Immunol.Methods,55(3):375−87,1982を参照。
同様に,GEF−H1に特異的な抗体はウサギで生成してもよい。詳細には,PAK4によりリン酸化されるGEF−H1領域,すなわちGEF−H1S領域807−824(配列番号3)および55−72(配列番号4)に対する抗体を生成することができる。リン酸で修飾された形のこれらのペプチドに対する抗体を生成することもできる。そのようにして,リン酸化されていないまたはリン酸化されているGEF−H1の変種のいずれかに特異的な抗体を設計することができる。
PAK4抗体を表面,例えばビーズの表面に結合させることにより,溶解した細胞中に存在するPAK4蛋白質を捕捉することができる。したがって,細胞溶解物中に存在するPAK4蛋白質は,表面/ビーズに結合した抗体とこれらとの相互作用により,表面またはビーズに結合する。さらに,調製物中にGEF−H1も存在する場合には,同様にしてGEF−H1/PAK4複合体を単離することができる。細胞は,既知の系統の樹立された細胞株からのものであってもよい。例えば,上でおよび実施例14に記載されるように,腫瘍細胞株から細胞溶解物を調製し,リン酸特異的抗体で処理してもよい。
抗体は,モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく,GEF−H1ポリペプチド,そのドメインまたはフラグメントに特異的結合親和性を有する抗体フラグメントであってもよい。“特異的結合親和性”とは,特定の条件下で,抗体が,他のポリペプチドに結合するより高い親和性をもって標的ポリペプチドに結合することを意味する。好ましくは,抗体は,配列番号2,3または4のいずれかに記載される配列を含むGEF−H1ポリペプチドに結合する。より好ましくは,抗体は,配列番号3または4に記載される配列を含むポリペプチドに結合する。GEF−H1に対する抗体はまた,リン酸化された形のGEF−H1アイソフォームのにも結合することができる。したがって,これらの抗体は,リン酸化された形の配列番号2,3および4に記載されるペプチドに結合する。このようにして,GEF−H1蛋白質のリン酸化されたセリン810および67を含むペプチドに結合する抗体を生成することができる。
"ポリクローナル"との用語は,抗原または抗原性を有するその機能的誘導体で免疫した動物の血清から誘導される,抗体分子の異成分集団である抗体を表す。ポリクローナル抗体の製造のためには,種々の宿主動物に抗原を注射することにより免疫することができる。宿主の種により,種々のアジュバントを用いて免疫学的応答を増加させることができる。
"モノクローナル抗体"は,特定の抗原に対する抗体の実質的に均一な集団である。モノクローナル抗体は,培養連続細胞株による抗体分子の生成を与える任意の技術により得ることができる。モノクローナル抗体は,当業者に知られる方法により得ることができる(Kohler et al.Nature 256:495−497,1975,および米国特許4,376,110)。
本発明の抗体には,"ヒト化"モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。ヒト化抗体は,抗体の非ヒト(典型的にはネズミ)相補性決定領域が非ヒト(例えばネズミ)免疫グロブリンの重および軽可変鎖からヒト可変ドメイン中に移され,次にネズミ対応物のフレームワーク領域中のいくつかのヒト残基が置き換えられている組換え蛋白質である。本発明にしたがうヒト化抗体は,治療方法において用いるのに適している。ネズミ免疫グロブリン可変ドメインをクローニングする一般的手法は,例えば刊行物(Orlandi et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:3833(1989))に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を製造する手法は,例えば,Jonesら(Nature 321:522(1986)),Riechmannら(Nature 332:323(1988)),Verhoeyenら(Science 239:1534(1988)),Carterら(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992)),Sandhu(Crit.Rev.Biotech.12:437(1992)),およびSingerら(J.Immun.150:2844(1993))に記載されている。
"抗体フラグメント"との用語は,特定の分子に対して特異的結合親和性を表示する抗体の一部,しばしば超可変領域および周囲の重鎖および軽鎖の一部を表す。超可変領域は,ポリペプチド標的に物理的に結合する抗体の部分である。
本発明の抗体フラグメントには,"一本鎖抗体"が含まれる。この記載において用いられる語句は,特異性をもって抗原と結合し,抗体の重鎖および軽鎖からの可変または超可変領域を含む線状ポリペプチドを示す。そのような一本鎖抗体は,一般的な方法論により製造することができる。FvフラグメントのVhおよびVl領域を共有結合させ,ジスルフィド結合を導入することにより安定化させる。Glockshuberら(Biochemistry 1362(1990))を参照。あるいは,ペプチドリンカーを挿入することによりVhおよびVl領域を結合させることができる。Vh,Vlおよびペプチドリンカー配列をコードする遺伝子は,組換え発現ベクターを用いて構築し発現させることができる。Colcherら(J.Nat’l Cancer Inst.82:1191(1990))を参照。VhおよびVl抗体鎖からの超可変領域を含むアミノ酸配列もまた,ジスルフィド結合またはペプチドリンカーを用いて構築することができる。
本発明の抗体は,例えば,蛍光標識または放射性標識を用いて標識することができる。
本発明のGEF−H1または誘導体ペプチドに対して特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは,(i)サンプルを標的−抗体免疫複合体の形成に適した条件下で抗体で探索し,そして(ii)所望のポリペプチドに結合した抗体の存在および/または量を検出することにより,サンプル中のそのポリペプチドの存在および/または量を検出する方法において用いることができる。そのような方法を実施するための診断キットは,標的に特異的な抗体または抗体フラグメント,ならびに抗体の結合パートナーまたは抗体それ自体のコンジュゲートを含むように構築することができる。
GEF−H1の“誘導体ペプチド”とは,より大きい完全なGEF−H1蛋白質の一部のアミノ酸配列を含むペプチドである。例えば,配列番号3および4に記載される配列を含むペプチドはGEF−H1蛋白質の“誘導体ペプチド”である。
本発明のGEF−H1またはPAK4ポリペプチドに対して特異的結合親和性を有する抗体または抗体フラグメントは,原核生物または真核生物から単離,濃縮,または精製することができる。当業者に知られる日常的な方法により,原核生物および真核生物のいずれにおいても,抗体または抗体フラグメントを製造することができる。ポリペプチド分子である抗体の精製,濃縮および単離は,上に記載される。
本発明の標的ポリペプチドに対して特異的結合親和性を有する抗体は,免疫複合体が形成するような条件下でサンプルを抗体と接触させ,標的ポリペプチドに結合した抗体の存在および/または量を検出することにより,サンプル中の標的ポリペプチドの存在および/または量を検出するための方法において用いることができる。そのような方法を実施するための診断キットは,抗体を含む第1の容器,および抗体の結合パートナーおよび標識(例えば放射性同位体)を含む第2の容器を含むように構築することができる。診断キットはまた,FDAに認可された使用の通知およびその指針を含んでいてもよい。
別の観点においては,本発明は,GEF−H1ポリペプチドまたはポリペプチドドメインに対して特異的結合親和性を有する抗体を産生するハイブリドーマを特徴とし,ここで,ポリペプチドは,配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有する群より選択される。"ハイブリドーマ"とは,抗体,例えばGEF−H1に対する抗体を分泌しうる不死化細胞株を意味する。好ましい態様においては,GEF−H1に対する抗体は,本発明のGEF−H1ポリペプチドに特異的に結合することができるアミノ酸の配列を含む。
別の観点においては,本発明はまた,上述したいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドに結合する抗体,およびネガティブ対照抗体を含むキットに関する。
"ネガティブ対照抗体"との用語は,特異的結合親和性を有する抗体と類似の起源に由来するが,本発明のポリペプチドに対して結合親和性を示さない抗体を表す。
また,単離したGEF−H1/PAK4複合体のウエスタンブロット分析を調製し,上述したリン酸特異的GEF−H1抗体でプローブして,これらの蛋白質のリン酸化状態を判定することができる。あるいは,予め特異的GEF−H1/PAK4複合体を分離することなく,細胞溶解物を直接ウエスタンブロットに供し,GEF−H1特異的抗体を適用してもよい。
いずれにしても,細胞サンプルにおけるリン酸化されたGEF−H1の同定は,上述の戦略にしたがって容易にかつ日常的に行うことができる。
また,細胞サンプルを候補物質,例えば薬剤,化学物質,化合物,蛋白質,または核酸で処理して,GEF−H1リン酸化による下流の効果のモニターすることにより,その物質がPAK4の活性に及ぼす影響を判定することができる。候補物質は,PAK4活性,またはPAK4とGEF−H1との相互作用を“調節”するかもしれない。“調節する”とは,候補物質がPAK4のキナーゼ活性またはPAK4とGEF−H1とが相互作用する程度に影響を及ぼしうることを意味する。したがって,候補物質による“調節”の1つの影響は,所定のサンプル中の全GEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルを低下させることである。候補物質がPAK4キナーゼ活性を増大させるか,またはGEF−H1/PAK4相互作用を促進することも考えられる。反対に,物質に曝露した後に総GEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルが上昇するかもしれない。したがって,候補物質は,その影響がGEF−H1蛋白質のリン酸化パターンと相関するように,PAK4,GEF−H1またはGEF−H1/PAK4複合体を調節することができる。
PAK4活性またはGEF−H1/PAK4相互作用を調節する物質をスクリーニングするためのアッセイにおいては,配列番号2に示される全長GEF−H1S蛋白質配列,またはより短いフラグメント,例えば,PAK4によりリン酸化されるペプチド(すなわち,配列番号3および4に示されるもの)を用いることができる。あるいは,触媒的DHドメインを含まないGEF−H1ポリペプチドもまた,PAK4活性および/またはGEF−H1/PAK4相互作用を調節する物質をスクリーニングするために用いることができる。したがって,本発明は,残基162と354との間のアミノ酸領域を欠失したGEF−H1ポリペプチドを企図する。
この文脈においては,薬剤スクリーニングアッセイは,以下の工程を含む:(i)(好ましくは発癌性細胞株から)細胞溶解物を取得し;(ii)溶解物に候補物質を適用し;(iii)細胞溶解物の調製物から蛋白質を単離および/または分離し;そして(iv)GEF−H1リン酸化変種の存在を検出する。候補物質を細胞または細胞溶解物に適用する前と後との総GEF−H1蛋白質のリン酸化のレベルを比較することにより,PAK4活性に及ぼす候補物質の影響を判定することが可能である。すなわち,そのような比率での総GEF−H1蛋白質リン酸化のレベルは,候補物質がPAK4キナーゼ活性を阻害するのに有効である場合には低下すると予測される。さらに,この比率(候補物質を適用する前のGEF−H1リン酸化のレベル対候補物質を適用した後のGEF−H1リン酸化のレベル)はまた,候補物質で処理していない細胞および/または細胞溶解物におけるGEF−H1リン酸化の“バックグラウンド”レベルと比較することができる。候補物質は,細胞を溶解する前に適用してもよい。
候補物質は,配列番号3および4のGEF−H1配列を含むペプチドでありうる。したがって,細胞に高濃度で,すなわち内因性GEF−H1の量が過剰となるように適用すると,GEF−H1ペプチドは競合して内因性PAK4に結合し,このことにより内因性GEF−H1の結合およびリン酸化を阻害するはずである。当業者には,ペプチドを細胞または細胞溶解物に“過剰に”加えるために,どの程度の量の競合的ペプチド阻害剤を加えるべきかがわかるであろう。候補物質はまた,PAK4の発現を調節するかまたは阻害する核酸であってもよい。すなわち,アンチセンスおよびRNA干渉手法にしたがって,アンチセンスポリヌクレオチドまたは二本鎖RNA分子を用いてPAK4遺伝子発現をノックアウトまたはダウンレギュレートすることができる。
好結果の候補物質はPAK4を阻害し,このことにより,過剰発現したPAK4に伴う細胞の異常を軽減するものである。したがって,好結果の候補物質は,癌性組織において認められるような細胞増殖を遅らせるか阻害するものである。
すなわち,そのような調節または阻害的効果を示す物質は,(i)増殖する,(ii)足場非依存性成長を有する,または(iii)不死化している,細胞を調節または阻害するのに有用である。したがって,これらの物質の1またはそれ以上をこれらの特性を示す細胞に投与することにより,特定の細胞サンプルに伴う増殖,足場非依存性成長または細胞運動性を阻害することができる。すなわち,同定された物質の1またはそれ以上を純粋な形でまたは医薬処方の形で投与することにより,これらの種類の細胞タイプの集団を有する個体を治療することが可能である。このような理論的根拠にしたがえば,本発明にしたがって,癌性組織または細胞に伴う1またはそれ以上の細胞表現型を調節または阻害する同定された物質を含む医薬組成物を投与することにより,癌,または発癌性の細胞成長を有する個体を治療することが可能である。
本発明はまた,以下のPAK4アミノ酸配列をp21活性化キナーゼ由来ポリペプチドとして使用することに関し,これは以下に記載されるように機能する。
配列番号21:
276-CTPAAPAVPAVPGPPGPRSPQREPQRVSHEQFRAALQLVVDPGDPRSYLDNF-324
配列番号22:
298-RVSHEQFRAALQLVVDPGDPRSYLD-322
すなわち,本発明は,GEF−H1蛋白質アイソフォームに結合しうるグループIIp21活性化キナーゼ由来ポリペプチドを包含する。そのようなポリペプチドは,GEF−H1蛋白質に結合することにより,全長の,例えば内因性PAK4および他のグループII PAKファミリーメンバーが,本発明のポリペプチドが結合しているGEF−H1蛋白質にドッキングまたは結合することを防止またはじゃますることができると考えられる。グループIIp21活性化キナーゼの例は,PAK4,PAK5,およびPAK6である。
本発明の驚くべき発見は,PAK4の残基276−324(配列番号21で表される)のみを含むポリペプチドが,GEF−H1ファミリーのメンバーに優先的に結合することができることである。この新規な結合領域は,PAK4のアミノ酸276−324にわたっており,さらにグループII PAK蛋白質の間で高度に保存されている残基298−322(配列番号22)のアミノ酸の配列を含む。この保存されたドメインは,本明細書において“GEF−H1相互作用ドメイン”(“GID”)と称される。例えば,PAK5のアミノ酸399−454は,配列番号21と76%の配列同一性を有するが,配列番号22に示されるGIDドメインと88%の配列同一性を有する。したがって,グループII PAK蛋白質間でGID領域にわたって高程度の保存が認められることは,PAK4,PAK5,およびPAK6のこの領域が種々のGEF−H1ファミリーメンバー,例えば,GEF−H1S,GEF−H1M,およびGEF−H1Uに結合しうることを意味するであろう。
本発明は,GID領域を含む,配列番号21のアミノ酸276−324のストレッチ中の,GEF−H1アイソフォームに結合する能力をなお保持している任意のPAK4ポリペプチドを包含する。すなわち,本発明は,そのポリペプチドがGEF−H1アイソフォームに結合することができ,他のいずれのPAK4または他のグループII PAK蛋白質配列を含まない限り,配列番号21に示される配列の一部のアミノ酸配列のみを含むポリペプチドを包含する。すなわち,本発明にしたがえば,そのようなポリペプチドは,他のPAK4アミノ酸配列を含まず,ポリペプチドは他のグループII PAKポリペプチド配列を含まない。例えば,ポリペプチドが配列番号21の残基298−324を含む場合,そのポリペプチドはPAK4のアミノ酸配列1−297または325−985を含まないであろう。しかし,本発明のp21活性化キナーゼ由来ポリペプチドは,融合蛋白質の一部であってもよく,グループII PAKではないポリペプチドまたは蛋白質と組み合わせてもよい。
本発明はまた,配列番号21の残基280−324,配列番号21の残基285−324,配列番号21の残基291−324,ならびにこれに由来する他の変種を含むポリペプチドを包含する。“変種”とは,その配列が少なくとも1つのGEF−H1アイソフォームに結合しうる限り,配列番号21で表されるアミノ酸配列中の任意の配列を本発明に記載されるように用いることができることを意味する。
本明細書において説明するように,GEF−H1のPAK4リン酸化は,張線維形成を減少させるかまたは阻害し,ラメリポディウム,細胞増殖,および細胞運動性を促進する。すなわち,PAK4リン酸化の阻害剤,例えば,配列番号21のアミノ酸配列またはその一部から本質的になるポリペプチドを投与することにより,張線維形成が増加して,処理した細胞の運動性がより低下し,侵襲性が低下し,細胞アポトーシスを誘導するプロセスに対してより感受性になるであろう。例えば,配列番号21および22に規定されるGIDドメインを含むポリペプチドの投与は,微小管結合GEF−H1Mのリン酸化を防止または減少させることにより,細胞運動性を破壊することができる。GEF−H1Mのリン酸化により,これは微小管ネットワークから解離する。したがって,GIDドメイン−ポリペプチドを用いてPAK4に対するGEF−H1M活性を変化させ,このことにより細胞アクチン基礎構造および細胞運動性を破壊することができる。
ファージディスプレイスクリーニングを用いて,GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)に融合させたPAK4のキナーゼドメイン(アミノ酸291−591)を’おとり’として用いて,PAK4の生理学的標的を同定した。スクリーニングにおいて同定されたファージディスプレイのヒットは,いくつかの別々の遺伝子に由来するインフレーム融合体に対応していた。1つのフラグメントはMaguin−2−様遺伝子に由来するものであった。2つの別のヒットはGEF−H1のGEF−H1Sスプライシング変種に由来するものであった。GEF−H1Mとは異なり,GEF−H1Sは微小管結合に必要であることが示されているジンクフィンガー領域を欠失している。
GEF−H1SとPAK4とのインビトロ相互作用を確認するため,ファージディスプレイにより単離されたGEF−H1Sのアミノ酸763−921またはMaguin−2−様蛋白質のアミノ酸385−555のいずれかをコードする配列と同一の配列を有するGST融合蛋白質を細菌で発現させた。これらの融合蛋白質は,グルタチオンビーズに結合させ,外因性PAK4を発現する293T溶解物を用いる結合アッセイにおいて用いた。GST−GEF−H1S(aa763−921)は,全長mycタグ付きPAK4蛋白質およびキナーゼドメイン(アミノ酸291−591)の両方に強く結合することができたが,GSTもMaguin−2−様フラグメントもできなかった。これに対し,PAK4のアミノ末端制御ドメインのみ(アミノ酸1−309)はGEF−H1Sと安定に相互作用しなかった。これらの結果は,相互作用がPAK4キナーゼドメインのN末端の短い領域またはキナーゼドメインそれ自体のいずれかにより媒介されることを示唆する。
PAK4配列のN末端領域に由来するビオチン化ペプチドを用いて,さらにGEF−H1結合部位のマッピングを行った。アミノ酸276−324から構成されるペプチドはGEF−H1Sと強い相互作用を示したが,よりC末端側の領域のアミノ酸291−355をカバーする別のペプチドは示さなかった。これらの結果を合わせると,GEF−H1相互作用ドメイン(GID)はPAK4のアミノ酸276と324の間,例えば,PAK4のアミノ酸291から始まりアミノ酸322で終わる領域に存在することが示される。PAK4GIDと他のPAKの対応するドメインとの配列アラインメントは,グループ−II PAKファミリーのメンバー(PAK4,PAK5,およびPAK6)の間のこの領域における有意なホモロジーを明らかにした。PAK4のGID中のホモロジーに基づけば,PAK5およびPAK6もまたGEF−H1または関連する蛋白質と相互作用する可能性がある。
内因性PAK4およびGEF−H1は,インビボで安定に会合して,ゴルジ膜に局在化する。PAK4とGEF−H1との間のインビトロ相互作用が生理学的に意味のあるものであることを確認するために,示されるようにPAK4,GEF−H1のいずれかに対する抗体または免疫前血清を用いて,A549,HCT116およびH1299細胞からの溶解物について免疫沈殿実験を行った。次に,GEF−H1特異的抗体を用いてウエスタンブロッティングにより蛋白質を分析した。PAK4またはGEF−H1抗体のいずれかで免疫沈殿した複合体において内因性GEF−H1蛋白質が検出されたが,免疫前血清からは検出されなかった。GEF−H1の種々のアイソフォームがインビボでPAK4と相互作用するが,H1299細胞の場合には,PAK4は小さい方のGEF−H1アイソフォームとより強く相互作用し,HCT116細胞においてはそのような優先性は見られなかった。
PAK4の先の研究は,活性化Cdc42の存在下でこれがゴルジ装置に局在化し,糸状足が誘導されることを示している。したがって,本発明において,内因性PAK4およびGEF−H1がインビボで共に局在化するか否かを決定した。H1299細胞は,PAK4またはGEF−H1に対する抗体で,β−COP抗体またはトランスゴルジマーカーである小麦胚芽アグルチニンとともに染色した。蛍光顕微鏡により観察したところ,PAK4,GEF−H1およびβ−COPはすべて同じ亜細胞領域に局在化する。したがって,GEF−H1は,PAK4と同様に,ゴルジ膜結合性である。PAK4およびGEF−H1抗血清の両方で見られる核染色は,内因性蛋白質の検出に必要な長時間曝露によるものであり,非特異的である。より高い解像度の実験では,ゴルジネットワーク内での局在化にいくぶんかの相違が見られた。例えば,PAK4は,トランスゴルジネットワークより,シスゴルジ膜およびこれに付随するMTにより多く局在する。
PAK4はインビトロおよびインビボでGEF−H1Sをセリン810でリン酸化する
次に,GEF−H1がPAK4の基質であるか否かを調べた。インビトロキナーゼアッセイは,GEF−H1GST融合蛋白質,Maguin−2−様GST融合蛋白質およびGST対照蛋白質を,PAK4によるリン酸化の基質として用いて行った。これらのアッセイにおいては,GEF−H1ポリペプチドがPAK4の高親和性基質であることが見出され,Kmは1−5uMの範囲内であった。PAK4はGST対照をリン酸化せず,GST−Maguin−2−様融合蛋白質を弱くリン酸化した。
これまでに,PAK4の活性化ループ配列に由来するペプチドがPAK4の高親和性基質であることが見出されている。PAK4がその活性化ループに高度に関連する一連のペプチドをリン酸化する能力を調べることにより,PAK4のおおまかな基質コンセンサスを推理することができた(RRXSL(X)nG(配列番号24),n=1または2)。このことから,PAK4による高親和性基質認識にはリン酸アクセプター部位を挟む塩基性残基および疎水性残基の両方が重要であることが示唆された。PAK4の基質選択性をさらに調べるために,PAK4キナーゼドメインスクリーニングにおいて濃縮されたファージディスプレイクローンの配列を推定PAK4基質コンセンサスと比較した。GEF−H1Sを含むほとんどの配列は高親和性PAK4基質と非常に類似する領域を含む。GEF−H1Sアミノ酸763−921に対応するGEF−H1ファージディスプレイヒットの中で,潜在的PAK4リン酸化部位はGEF−H1SのSer810であると同定された。この部位を囲む配列に由来するペプチド(アミノ酸807−824)もまた,PAK4の高親和性基質であり,PAK4に対してGST−GEF−H1(793−921)融合蛋白質と同様のKmを有する。
すなわち,本発明において,PAK4媒介性リン酸化の基質コンセンサスモチーフはRRXSL(X)nG(配列番号24)(nは“1”または“2”個のX残基であり,“X”は任意のアミノ酸である)であると同定される。
このペプチドから誘導された種々のホスホアイソマーを合成し,PAK4によりリン酸化される能力を調べた。810位のセリンを有するペプチドはもはやPAK4の基質ではなかった。さらに,変異により,GEF−H1SのSer810が真にインビトロでのPAK4のリン酸化部位であることが確認された。Ser810の変異によりGEF−H1SのC末端フラグメントのPAK4リン酸化はなくなったが,GEF−H1Sのアミノ末端フラグメント(アミノ酸1−386)はさらに別のPAK4リン酸化部位(単数または複数)を含んでいた。PAK4基質コンセンサス配列との配列比較は,セリン残基57,66,および67が可能性のある他のPAK4リン酸化部位であることを示した。推定PAK4リン酸化部位のホスホアイソマーに対応するペプチドを合成することにより,Ser67がおそらくGEF−H1のアミノ末端中のインビトロPAK4リン酸化部位であることが決定された。興味深いことに,GEF−H1S中のPAK4リン酸化部位はCdc24(PAK様キナーゼCla4により制御されている酵母Cdc42GEF)中のトレオニンまたはグルタミン酸である部位とともに保存されている可能性があり,このことは,これらの部位が重要であることを示唆する。アラインメントデータは,N末端のグルタミン酸89およびC末端のトレオニン737が,それぞれヒトGEF−H1SのSer67および810に対応することを示す。
PAK4によるGEF−H1Sリン酸化がインビボでこれらの部位で生ずるか否かを確認するために,コトランスフェクションアッセイを行って,ホスホセリン810に対するホスホ特異的抗体を用いてGEF−H1のリン酸化を分析した。この抗体は,Ser810でリン酸化されたGEF−H1に特異的である。哺乳動物細胞においてSer810がリン酸化され,Cdc42と共発現させたときに活性化PAK4ならびに野生型PAK4の存在下でSer810におけるGEF−H1Sのこのリン酸化が増強されるが,キナーゼデッド変異体およびベクターの存在下ではそうではないことがわかった。キナーゼデッドPAK4の発現はまた,内因性PAK4によるGEF−H1SのSer810の基底リン酸化を阻害することができる。同様に,GEF−H1SのSer67に対するリン酸特異的抗体を生成し,哺乳動物細胞においてSer67がリン酸化されるのみならず,活性化PAK4とGEF−H1SとのコトランスフェクションがSer67のリン酸化を刺激することが見出された。
GEF−H1アレルにより媒介される形態学的変化
Rho GTPaseファミリーのヌクレオチド交換因子は細胞骨格構造および細胞形態学の制御に関与する。保存されたDblホモロジー(DH)ドメインおよびプレクストリンホモロジー(PH)ドメインは,これらの交換因子の機能に重要である。GEFは,Rho GTPase基質の交換を刺激する能力について,インビトロで,または過剰発現によりインビボで分析されている。GEF−H1の場合,種々のグループがRacおよびRhoに対する触媒活性を示している。Cos−7細胞におけるGEF−H1の過渡的発現および単離されたGEF−H1DH−PHドメインの発現は,それぞれインビボおよびインビトロでRacに対する活性を示す。Cos−1およびHeLa細胞におけるインビトロおよびインビボアッセイによる分析は,GEF−H1がRhoに対して測定可能な活性を有することを示し,これは先の研究と一致する。
表1は線維芽細胞形態学に及ぼすGEF−H1変異体の影響を示し,表2は線維芽細胞形態学に及ぼすGEF−H1のPAK4制御の影響を示す。
GEF−H1が線維芽細胞における細胞形態学に及ぼす影響を分析するために,GEF−H1SおよびGEF−H1S中のPAK4リン酸化部位の一連の変異体アレルのEGFP(増強グリーン蛍光蛋白質)融合コンストラクトをNIH3T3細胞に導入した。GEF−H1のDHドメインを変異させた優性ネガティブアレルGEF−H−QR312,313MGも作製した。p21結合ドメイン(PBD)アッセイにおいては,NIH−3T3細胞において,この優性ネガティブアレルはRac−GTPの蓄積を阻害したが,Cdc42−GTPは阻害しなかった。アクチン細胞骨格をクマリン−ファリシジンで染色して,EGFP蛍光細胞のF−アクチン構造を顕微鏡により対比させた。
野生型GEF−H1Sは,典型的には核周囲領域に局在し,細胞は長く延びているように見え,時々張線維が存在する。これに対し,GEF−H1S−S810Aを単独で過剰発現させると,トランスフェクトしていない細胞と比較して,張線維の蓄積および無秩序なアレイが生じた。野生型GEF−H1SまたはPAK4アレルのいずれかを単独で発現させるとアクチン細胞骨格への影響は比較的小さいため,張線維の誘導は印象的である。GEF−H1S−S67Aを発現する細胞の形態は,優性ネガティブGEF−H1SDH変異体を発現する細胞の形態と同様であった。DHドメイン変異体GEF−H1S−QR312,313MGの発現は,広く分布した細胞質拡大の痕跡を生ずる。GEF−H1S−S810Aの場合における張線維の誘導は,Rho活性化を暗示しており,一方,GEF−H1−Q312R,M313GおよびGEF−H1S−S67Aについて見られた無秩序な細胞質拡大は,おそらくはRho阻害による退縮していない細胞の痕跡の残余であろう。局在化およびアクチン細胞骨格の変化は,GEF−H1S−(S67A−S810A)の二重変異体において特に顕著である。EGFP−GEF−H1S(S67A−S810A)を発現する細胞において,F−アクチンの細胞質凝集,ならびにF−アクチンを欠失した広い弧状のラメラが認められた。リン酸化部位変異体蛋白質の再分布および細胞質F−アクチンの不適切な蓄積は,GEF−H1が張線維を刺激する能力には局在化が重要であるという考えを支持する。
活性化PAK4およびGEF−H1SはNIH−3T3細胞においてラメリポディウム形成を誘導する
線維芽細胞におけるF−アクチン構造の誘導,すなわち糸状足,ラメリポディウム,および張線維の形成は,それぞれ活性な形のCdc42,Rac,およびRhoによるシグナリングによるものである。PAK蛋白質および特にPAK4は,F−アクチンに基づく形態学的構造の制御に役割を果たすため,細胞形態学におけるPAK4により誘導された変化がGEF−H1Sの制御により媒介されるか否かを決定するための実験を工夫した。また,EGFP−GEF−H1コンストラクトを種々のHAエピトープタグ付きPAK4アレルとともにNIH−3T3細胞で共発現させた。外因性PAK4は抗HA抗体(赤)で検出し,アクチン細胞骨格はクマリン−ファリシジン(青)で染色した。NIH−3T3細胞は低いが検出可能なレベルの内因性PAK4およびGEF−H1を有するが,この実験の条件下ではこれらは活性化されなかった。
PAK4の種々のアレルを用いることにより,いずれの形態学的影響がGEF−H1のPAK4リン酸化により推進されたものであるか否かを確認することが可能であった。EGFP対照と共発現させたPAK4アレルは,NlH3T3細胞においてF−アクチンに基づく構造の形成に対して比較的小さい影響を与えた。野生型PAK4と野生型GEF−H1Sとを共発現する細胞においては,PAK4またはGEF−H1Sのいずれかを単独で発現する細胞と比較して,糸状足が顕著に増加していることが認められた。糸状足構造は,いずれかの蛋白質が細胞で単独で発現された場合,またはベクターをコトランスフェクトした対照では認められなかったため,より低い活性の野生型PAK4アレルおよびGEF−H1Sとの相互作用に依存するようであった。活性化PAK4S474EとGEF−H1Sとを共発現する細胞においては,これらの構造は前縁において糸状足からラメリポディウムに移行した。GEF−H1Sをキナーゼ不活性なPAK4K350,351Aとともにトランスフェクトしたときには糸状足もラメリポディウムも認められなかったが,このとき張線維は豊富に存在した。このことは,GEF−H1S中のPAK4リン酸化部位変異の分析と合わせて,ラメリポディウム形成への移行はPAK4キナーゼ活性によるものであることを示唆する。
これらの構造の形成が,PAK4がGEF−H1Sをリン酸化する能力に依存することを確認するために,GEF−H1Sのリン酸化部位変異体を用いた。変異体GEF−H1S−S810AアレルをPAK4S474Eと一緒にコトランスフェクションすると,豊富な張線維が見られる。このことは,キナーゼデッドアレルからの結果と合わせて,線維芽細胞におけるラメリポディウム形成および張線維形成の阻害につながるシグナルは両方ともSer810のリン酸化によるものであることを示唆する。さらに,PAK4S474EおよびGEF−H1SS810Aはアクチン張線維の核形成点として作用する細胞接着部位を暗示する別々の周辺部位に局在化する。GEF−H1のこのタイプの局在化はHeLa細胞においても見られる。S810の変異により見られた効果とは対照的に,変異体GEF−H1S−S67Aと活性化PAK4−S474Eとを共発現させることにより,ラメリポディウムがGEF−H1依存的に形成され,一方張線維形成は防止される。この実験では,非変異体GEF−H1Sと変異体GEF−H1SS67Aに由来するラメリポディウムの間の量的相違は調べていない。
GEF−H1の交換活性は,Dblホモロジー(DH)ドメインと不活性な状態のRacまたはRho GTPasesとの相互作用により活性化される。PAK4リン酸化により推進されるGEF−H1S媒介性の効果がGEF−H1S交換活性に依存するか否かを判定するために,GEF−H1S優性ネガティブDH変異体(Q3I2M,R3I3G)とPAK4の種々のアレルとを共発現するNIH−3T3細胞を調べた。アクチンを欠失した広く弧状に広がるラメラが観察され,これは活性なアレルのGEF−H1Sおよび活性化PAK4の存在下で形成されるアクチンの豊富なラメリポディウムまたは張線維と対照的である。この結果により,PAK4シグナルがGEF−H1の交換活性を介して直接リレーされていることが確認される。GEF−H1の先の研究は,Cos−7細胞においてGEF−H1の過剰発現により構成的なラメリポディウム誘導を示している。したがって,活性化PAK4/GEF−H1S複合体を加えることにより,NIH−3T3細胞においてこの効果を際構築することが可能であることが示された。
PAK4がGEF−H1Mを介して細胞形態学に及ぼす影響
PAK4によりリン酸化されるGEF−H1Sの残基は,MT(“微小管”)結合型のGEF−H1である“GEF−H1M”において保存されている。GEF−H1Mはそのアミノ末端に微小管への結合を可能とするジンクフィンガードメインを含む。PAK4がGEF−H1M活性を制御する能力を決定する上での微小管結合の役割を調べた。GEF−H1MでMT(インビボでのMTのEGFP−GEF−H1Mラベリングにより)およびアクチン細胞骨格(クマリン−ファリシジンのF−アクチン染色により)の両方を同時に調べる実験を行った。また,β−チューブリン抗体で共染色することによりMT細胞骨格における変化も調べた。
F−アクチンに基づく形態学的変化の場合,GEF−H1のスプライシングアイソフォームは,その効果にある程度の差異を示す。時々分布する張線維を与えるGEF−H1Sとは異なり,GEF−H1Mを過剰発現する細胞は,しばしば細胞周囲にF−アクチンの織られたハロの外観を与える張線維を示し,このことは,ある種のRho刺激活性がMT末端に局所的に制限されているかもしれないことを示唆する。GEF−H1Mを野生型HAタグ付きPAK4と共発現させたときに,糸状足の誘導がないことは,GEF−H1MとGEF−H1Sとの識別しうる別の相違点であった。この場合には糸状足は見られない。しかし,活性化PAK4−S474Eと共発現させた場合には,GEF−H1Sと同様に,ラメリポディウムへの移行が認められた。
文献の報告と一致して,GEF−H1M様LFC(ネズミGEF−H1)は微小管と安定に結合していた。GEF−H1の過剰発現は,インビボで微小管を安定化させることが知られている。EGFP−GEF−H1Mを単独で,または野生型またはキナーゼデッドPAK4のいずれかと共発現する細胞において見られるように,MTの安定化はその放射状の整列により明らかである。しかし,活性化PAK4をEGFP−GEF−H1Mと共発現させると,MTが不安定化され,GEF−H1MがMTから細胞質に顕著に再分布する。GEF−H1MをPAK4の種々のアレルと共発現する細胞においては,MTの極性も明らかに変化していた。これらの結果は,本発明の知見と合わせると,PAK4がアクチン細胞骨格とMTネットワークとの間のGEF−H1により媒介されるクロストークを制御しうることを示す。
配列番号 1
atgcctgtaacaagagcatcacagccaaggaagccctcatctgcccaacaacagaaagcggccctgctgaagaacaacaccgccttgcagtccgtttctcttcgaagtaagacaaccatccgggagcggccaagctcggccatctacccctccgacagcttccggcagtccctcctgggctcccgccgtggccgctcctccttgtctttagccaagagtgtttctaccaccaacattgctggacatttcaatgatgagtctcccctggggctgcgccggatcctctcacagtccacagactccctcaacatgcggaaccgaaccctatccgtggaatccctcattgacgaagcagaggtaatctacagtgagctgatgagtgactttgagatggatgagaaggactttgcagctgactcttggagtcttgctgtggacagcagcttcctgcagcagcataaaaaggaggtgatgaagcagcaagatgtcatctatgagctaatccagacagagctgcaccatgtgaggacactgaagatcatgacccgcctcttccgcacggggatgctggaagagctacacttggagccaggagtggtccagggcctgttcccctgcgtggacgagctcagtgacatccatacacgcttcctcagccagctattagaacgccgacgccaggccctgtgccctggcagcacccggaactttgtcatccatcgcttgggtgatctgctcatcagccagttctcaggtcctagtgcggagcagatgtgtaagacctactcggagttctgcagccgccacagcaaggccttaaagctctataaggagctgtacgcccgagacaaacgcttccagcaattcatccggaaagtgacccgccccgccgtgctcaagcggcacggggtacaggagtgcatcctgctggtgactcagcgcatcaccaagtacccgttactcatcagccgcatcctgcagcattcccacgggatcgaggaggagcgccaggacctgaccacagcactggggctagtgaaggagctgctgtccaatgtggacgagggtatttatcagctggagaaaggggcccgtctgcaggagatctacaaccgcatggaccctcgggcccaaaccccagtgcctggcaagggcccctttggccgagaggaacttctgaggcgcaaactcatccacgatggctgcctgctctggaagacagcgacggggcgcttcaaagatgtgttagtgctgctgatgacagatgtactggtgtttctccaggaaaaggaccagaagtacatctttcctaccctggacaagccttcagtggtatcgctgcagaatctaatcgtacgagacattgccaaccaggagaaagggatgtttctgatcagcgcagccccacctgagatgtacgaggtgcacacagcatcccgggatgaccggagcacctggatccgggtcattcagcagagcgtgcgcacatgcccatccagggaggacttccccctgattgagacagaggatgaggcttacctgcggcgaattaagatggagttgcagcagaaggaccgggcactggtggagctgctgcgagagaaggtcgggctgtttgctgagatgacccatttccaggccgaagaggatggtggcagtgggatggccctgcccaccctgcccaggggccttttccgctctgagtcccttgagtcccctcgtggcgagcggctgctgcaggatgccatccgtgaggtggagggtctgaaagacctgctggtggggccaggagtggaactgctcttgacaccccgagagccagccctgcccttggaaccagacagcggtggtaacacgagtcctggggtcactgccaatggtgaggccagaaccttcaatggctccattgaactctgcagagctgactcagactctagccagagggatcgaaatggaaatcagctgagatcaccgcaagaggaggcgttacagcgattggtcaatctctatggacttctacatggcctacaggcagctgtggcccagcaggacactctgatggaagcccggttccctgagggccctgagcggcgggagaagctgtgccgagccaactctcgggatggggaggctggcagggctggggctgcccctgtggcccctgaaaagcaggccacggaactggcattactgcagcggcaacatgcgctgctgcaggaggagctacggcgctgccggcggctaggtgaagaacgggcaaccgaagctggcagcctggaggcccggctccgggagagtgagcaggcccgggcactgctggagcgtgaggccgaagaggctcgaaggcagctggccgccctgggccagaccgagccactcccagctgaggccccctgggcccgcagacctgtggatcctcggcggcgcagcctccccgcaggcgatgccctgtacttgagtttcaaccccccacagcccagccgaggcactgaccgcctggatctacctgtcactactcgctctgtccatcgaaactttgaggaccgagagaggcaggaactggggagccccgaagagcggctgcaagacagcagtgaccctgacactggcagcgaggaggaaggtagcagccgtctgtctccgccccacagtccacgaggtgagaccctggcggagacatggaccagagactttaccagaatgcaggacatcccggaggagacggagagccgcgacggggaggctgtagcctccgagagctaa
配列番号 2
MPVTRASQPRKPSSAQQQKAALLKNNTALQSVSLRSKTTIRERPSSAIYPSDSFRQSLLGSRRGRSSLSLAKSVSTTNIAGHFNDESPLGLRRILSQSTDSLNMRNRTLSVESLIDEAEVIYSELMSDFEMDEKDFAADSWSLAVDSSFLQQHKKEVMKQQDVIYELIQTELHHVRTLKIMTRLFRTGMLEELHLEPGVVQGLFPCVDELSDIHTRFLSQLLERRRQALCPGSTRNFVIHRLGDLLISQFSGPSAEQMCKTYSEFCSRHSKALKLYKELYARDKRFQQFIRKVTRPAVLKRHGVQECILLVTQRITKYPLLISRILQHSHGIEEERQDLTTALGLVKELLSNVDEGIYQLEKGARLQEIYNRMDPRAQTPVPGKGPFGREELLRRKLIHDGCLLWKTATGRFKDVLVLLMTDVLVFLQEKDQKYIFPTLDKPSVVSLQNLIVRDIANQEKGMFLISAAPPEMYEVHTASRDDRSTWIRVIQQSVRTCPSREDFPLIETEDEAYLRRIKMELQQKDRALVELLREKVGLFAEMTHFQAEEDGGSGMALPTLPRGLFRSESLESPRGERLLQDAIREVEGLKDLLVGPGVELLLTPREPALPLEPDSGGNTSPGVTANGEARTFNGSIELCRADSDSSQRDRNGNQLRSPQEEALQRLVNLYGLLHGLQAAVAQQDTLMEARFPEGPERREKLCRANSRDGEAGRAGAAPVAPEKQATELALLQRQHALLQEELRRCRRLGEERATEAGSLEARLRESEQARALLEREAEEARRQLAALGQTEPLPAEAPWARRPVDPRRRSLPAGDALYLSFNPPQPSRGTDRLDLPVTTRSVHRNFEDRERQELGSPEERLQDSSDPDTGSEEEGSSRLSPPHSPRGETLAETWTRDFTRMQDIPEETESRDGEAVASES
配列番号 3
RRRSLPAGDALYLSFNPP
配列番号 4
RQSLLGSRRGRSSLSLAK
配列番号 5
RGETLAETWT
配列番号 6
RBSZXG
配列番号 7
CPRRRSLPAGDALYLSFNPP
配列番号 8
CRQSLLGSRRGRSSLSLAK
配列番号 9
CRQSLLGSRRGRSSLSLAK
配列番号 10
TGTAGATCCTCGGCGGCGCGCTCTCCCCGCA
配列番号 11
GGTGATGCCCATGGTCTCCAGCAGGAT
配列番号 12
ATCCTGCTGGTGACCATGGGCATCACCA
配列番号 13
GCCGTGGCCGCTCCGCCTTGTCTTTA
配列番号 14
TAAAGACAAGGCGGAGCGGCCACGGC
配列番号 15
QRITKY
配列番号 16
GCAGAATTCTGTAACAAGAGCATCACA
配列番号 17
GCGCTCGAGTTAGCTCTCGGAGGCTACAGCCT
配列番号 18
RRKSLVGTPYWMAPE
配列番号 19
ビオチン-LC-LC-RRKSLVG(pT)PYWMAPE
配列番号 20
RBSZXL
配列番号 21
CTPAAPAVPAVPGPPGPRSPQREPQRVSHEQFRAALQLVVDPGDPRSYLDNF
配列番号 22
RVSHEQFRAALQLVVDPGDPRSYLD
実施例1
GEF−H1Sのクローニング
NCBI(National Center for Biotechnology Information,USA)に寄託された受託番号KIAA0651から設計したプライマーMC1 GCAGAATTCTGTAACAAGAGCATCACA(配列番号16)およびMC3b GCGCTCGAGTTAGCTCTCGGAGGCTACAGCCT(配列番号17)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において用いて,ヒト全脳プラスミドcDNAライブラリ(Clontech laboratories Cat#HL9002CC)からGEF−H1S遺伝子を増幅した。EXPANDポリメラーゼ(Roche Molecular,USA Cat#1681834)を用いて20ラウンドのPCRを行った。プライマーMC1は,5’位にEcoR1制限酵素部位を導入し,MC3bは3’位にXho1制限酵素部位を含む。制限酵素部位の配列は天然のGEFH−1b配列の一部ではない。得られたPCR産物を,EcoR1およびXho1制限酵素で消化したプラスミドベクター(pcDNA(Invitrogen Cat# V790−20)の骨格,改変したマルチクローニング部位を有する)に挿入した。制限酵素HindIIIおよびXba1を用いてGEF−H1S遺伝子を切り出し,同様に制限酵素消化した発現ベクターpRSV/Rc(Promega,USA)中に挿入した。
実施例2
発現および足場非依存性増殖
マウス線維芽細胞細胞株NIH−3T3においてGEF−H1Sを含む,安定に発現するクローン192.58を樹立した。pRSV/Rcをサブクローニングしたベクターは組織培養細胞中でGEF−H1S蛋白質を発現する。
GEF−H1Sクローンは,接着を防止する組織培養容器に播種した。GEF−H1Sを過剰発現する細胞は足場非依存性である。発現ベクターpcDNAのみを有するNIH3T3細胞は,足場形成が妨害されている場合には自発的にトランスフォームしなかった。GEF−H1S遺伝子を有するクローンのみが生存し増殖することが示された。したがって,GEF−H1Sの発現によりNIH−3T3細胞の足場非依存性生存および増殖が可能となる。細胞が増殖する能力は,培養物中で代謝的に活性な細胞のみを測定するテトラゾリウム塩XTTに基づくアッセイ(Roche Molecular Biochemicals Cat#1465015)を用いて測定した。測定は経時的に行った。
実施例3
マウス腫瘍モデルに及ぼすGEF−H1Sの影響
192.58細胞は,無胸腺ヌードマウス中にトランスフェクトしたときに腫瘍を形成した。1群あたり8匹のマウスに,対照pcDNA発現ベクターまたはGEF−H1S遺伝子を発現するpcDNA発現ベクターを有するNIH−3T3細胞を皮下注射した。192.58細胞で処置したマウスで認知可能な腫瘍を経時的に測定した。pcDNA発現ベクターを有する細胞を移植したマウスでは触知しうる腫瘍は検出されなかった。
実施例4
GEF−H1SはPAK4の基質である
第1のGEF−H1Sポリペプチドの回収に特に用いた試薬は,アミノ酸291−591で示されるPAK4の触媒ドメインのポリペプチドを有する発現プラスミドpGEX−4T(Amersham Biosciences Cat#27−4581−01)であった。この発現ベクターは,適切に挿入された遺伝子を融合蛋白質として生成および発現させることができる。ここで,融合パートナーは,SJ26遺伝子グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)の蛋白質産物である。融合パートナーであるGSTにより,グルタチオンセファロース4Bマトリクス(Amersham Biosciences Cat#17−0756−01)(グルタチオンビーズとしても知られる)にアフィニティー固定化することができる。これらのビーズに固定化したPAK4ポリペプチドを,MCF7(ATCC,USAから入手可能な乳癌組織培養細胞)cDNAに由来するペプチドのライブラリを発現するファージ粒子を含む溶解物とともにインキュベートした。Zozulya et al.,Nat.Biotechnol.,17(12):p.1193−8,1999を参照。このスクリーニングで得られた候補の多くの配列を決定して,13−8と名付けたクローンからGEF−H1Sポリペプチドを発見した。シークエンシングは,ABIプリズム装置で,製造元(Applied Biosystems,USA)により提供される標準的な方法を用いて行った。
実施例5
PAK4はインビトロでGEF−H1Sをリン酸化することができる
ファージディスプレイスクリーニングで得られたGEF−H1SをコードするcDNAを切り出し,pGEX−4T発現ベクター中にサブクローニングして,インビトロ実験用に蛋白質を組換え生成させた。次に,GEF−H1S蛋白質をPAK4キナーゼと混合し,PAK4がGEF−H1Sをリン酸化するようインキュベートした。このキナーゼ反応物の一部をSDS−PAGEにより分離し,オートラジオグラフィーによりリン酸化の程度を可視化した。オートラジオグラフにより,GEF−H1Sポリペプチドはリン酸化され,融合パートナーであるGSTはリン酸化されていないことが示された。SDS−PAGEは,万能の蛋白質分離および可視化手法であり,Laemmli,Nature,227(259):680−5,1970に記載されている。
実施例6
GEF−H1Sのセリン810およびセリン67がインビトロでPAK4によりリン酸化される
上述のリン酸化実験から,GEF−H1Sの2つのペプチドがPAK4誘導性リン酸化の標的であるとして同定された。GEF−H1Sの標的残基は,PAK4活性化ループペプチドをGEF−H1Sポリペプチド配列のアミノ酸762−921とアラインメントすることにより同定した。次に,インビトロキナーゼアッセイにより,GEF−H1Sペプチド PRRRSLPAGDALYLSFNPP(配列番号45)およびRQSLLGSRRGRSSLSLAK(配列番号4)がPAK4によりリン酸化されることが明らかとなった。
これらのペプチド基質のリン酸化の程度を,オートラジオグラフィーにより目視で比較し,リン酸化された基質のコンセンサスを経験的に決定した。コンセンサス配列は,例えば,RBSZX[G/L](配列番号25)(式中,Rはアミノ酸アルギニンであり;Bは任意の塩基性アミノ酸であり;Sはアミノ酸セリンであり;Zは任意の疎水性アミノ酸であり;Xは任意のアミノ酸であり,Gはグリシンであり,Lはロイシンである)であると予測することができた。アミノ酸残基の同定は,酵素としてPAK4を用い,GEF−H1Sの予測される基質領域のアイソマーを用いるキナーゼアッセイにより行った。
以下のホスホアイソマー(リン酸修飾GEF−H1Sペプチド)をPAK4キナーゼアッセイにおいて用いて,いずれの残基が特異的にリン酸化されるかを決定した。ある種の残基はリン酸成分を含むよう修飾したため(下記の下線の残基),これらはPAK4によりリン酸化することができなかった。これらの結果から,GEF−H1Sのセリン810および67がPAK4のリン酸化部位であることが明らかとなった。
Figure 0004522855
実施例7
GEF−H1SはPAK4と相互作用する
GEF−H1SがPAK4の基質であることの追加の証拠は,上述のGST固定化手法を用いてGST固定化GEF−H1Sと293T細胞で発現される異なるアレルのPAK4との相互作用を示すことにより得られた。蛋白質アフィニティーおよび抗原抗体媒介性免疫沈殿の両方についての免疫沈殿手法は,Lew et al.,J.Immunol.Methods,136(2):211−9,1991;およびAnderson et al.,Methods Enzymol.,96:111−20,1983に記載されている。
GST固定化GEF−H1Sポリペプチドを用いて,293T細胞抽出物からの免疫沈殿を行った。得られたビーズ上の蛋白質複合体をSDS−PAGEで分離し,次にウエスタンブロッティングにより同定して,存在する蛋白質を同定した。ウエスタンブロット手法(Renart et al.,Methods Enzymol.,104:455−60,1984)は,抗体等の特異的免疫試薬を用いて蛋白質を同定するために万能的に用いられる。PAK4蛋白質をこのmycアフィニティータグに融合させ(Cravchik et al.,Gene,137(1):139−43,1993),mycアフィニティータグに特異的なモノクローナル抗体を用いて,PAK4アレルが存在することが示された。GSTビーズ上に固定化されたGEF−H1Sを用いる免疫沈殿後のPAK4の検出は,細胞蛋白質の溶液中におけるこれらの2つの蛋白質の間の物理学的相互作用を示した。固定化融合パートナーGSTで免疫沈殿した後にはPAK4は存在しなかった。この相互作用は,GEF−H1Sの存在または非存在によって制限された。
実施例8
腫瘍におけるPAK4キナーゼ活性のメカニズムに基づくバイオマーカーとしてのGEF−H1S
KLHコンジュゲート化ペプチドCSGDRRRAGPEKRPKSS(配列番号23)(KLHにコンジュゲートしたPAK4蛋白質の一部)でウサギを免疫することにより,PAK4に特異的な抗体をウサギで生成した。Nims et al.,1973.23(3):391−6;およびHashimura et al,1982を参照。また,アミノ酸762−921を含むGST−GEF−H1Sポリペプチドで免疫することにより,ウサギでGEF−H1に特異的な抗体を生成させた。
PAK4抗体血清をプロテインGビーズ(Roche Molecule,USA Cat#1243233)に結合させた(IgGアイソタイプのイムノグロブリンのFc部分とS.AureusのプロテインGとの相互作用により)。PAK4抗体を有するビーズを3つのヒト腫瘍細胞株,A549,HCT116およびH1299(ATCC,USA)の細胞溶解物と混合した。得られた免疫沈殿物をSDS−PAGEで分離し,ウエスタンブロットを行った。GEF−H1特異的抗体は内因性GEF−H1を免疫沈殿させることが示された。この結果から,3つの腫瘍細胞溶解物中にGEF−H1Sが存在することが確認される。内因性PAK4の相互作用は,ウエスタンブロットにおいてGEF−H1特異的抗体でプローブしたときに内因性GEF−H1が検出されたことにより示された。相互作用はPAK4の存在および非存在によって制限される。
実施例9
GEF−H1Sリン酸特異的抗体は腫瘍におけるPAK4キナーゼ活性をモニターするためのツールである
KLHコンジュゲート化ペプチドCPRRRLPAGDALYLSFNPP(配列番号7),CRQSLLGSRRGRSLSLAK(配列番号8)およびCRQSLLGSRRGRSSLSLAK(配列番号9)を用いて,ウサギで抗体を生成した。下線を付した太字のセリン残基“S”は,リン酸で修飾された残基を表す。“抗1009”は配列番号7のセリン−810でリン酸化されたGEF−H1蛋白質を検出する抗体である。配列番号8および9に記載される配列を含むペプチドに対して生じさせた抗体は,セリン−67がリン酸化された形のGEF−H1ペプチドを認識する。
抗血清がセリン−810がリン酸化されたGEF−H1S蛋白質を認識する能力は,293T細胞(ATCC,USA)をGEF−H1SおよびPAK4の種々のアレルを同時に発現するよう過渡的にトランスフェクトした実験において示された。
この実験においては,GEF−H1S発現ベクターはpRSV/Rcであり,PAK4発現ベクターはpcDNAであった。トランスフェクトした293T細胞から溶解物を調製し,抗1009試薬を用いてウエスタンブロットにより分析した。結果は,GEF−H1Sが野生型PAK4(1−591)およびPAK4変異体S474Eの存在下で,基底リン酸化(すなわち,GEF−H1Sの一部が内因性キナーゼによりすでにリン酸化されている)より顕著に多くリン酸化されており,PAK4キナーゼデッドK350,351Aの存在下でリン酸化のレベルが顕著に低下していることを示す。これらのリン酸特異的抗体を用いて,GEF−H1の特異的リン酸化により,腫瘍におけるPAK4活性を検出することができる。
実施例10
GEF−H1Sアレルの構築
以下の一覧は,本発明において構築された野生型,S810AおよびQR312,313MG変異体GEF−H1Sアレルであるアレルを表す。後者のアレルについては,GEF−H1S蛋白質のグルタミン312およびアルギニン313がそれぞれメチオニンおよびグリシンに変異しており,このため“QR312,313MG”と表される。同様に,“S810A”は,GEF−H1S蛋白質のアミノ酸位置810のセリン残基がアラニンに変異していることを示す。突然変異誘発は,PCR反応または部位特異的突然変異誘発のいずれかにより行った。
Figure 0004522855
突然変異誘発において用いたオリゴヌクレオチド
MC27 TGTAGATCCTCGGCGGCGCGCTCTCCCCGCA(配列番号10)。太字の“GCT”残基はXhoII部位を示し,これは,Ser810のコドンをアラニンに変化させる。これをMC3bと対で用いてPCR反応を行い,XhoIIおよびXhoIで切断したときにアミノ酸386−921をコードするcDNA配列を含むプラスミド中の野生型cDNAフラグメント(BamH1およびXhoIで切断)と交換しうるフラグメントを作製した。得られた新たに構築したプラスミドはGEF−H1Sの810位にアラニンを含んでいた。この変異体ポリペプチドをBcl1およびXho1で切り出し,遺伝子の残りを構成するEcoR1−Bcl1フラグメントに連結して全長とした。
MC40 GGTGATGCCCATGGTCTCCAGCAGGAT(配列番号11)をMC1およびMC41と対で,TCCTGCTGGTGACCATGGGCATCACCA(配列番号12)をMC3bと対で,別々の反応において用いて,EcoR1,Nco1およびXho1で制限酵素処理することにより連結しうる重複するフラグメントを作製した。MC40およびMC41はQR312,313MG変異体アレルを生ずるコドンを含む。
MC57 GCCGTGGCCGCTCCGCCTTGTCTTTA(配列番号13)およびMC58 TAAAGACAAGGCGGAGCGGCCACGGC(配列番号14)を用いて部位特異的突然変異誘発反応(Stratagene Cat#200519,USA)を行い,67位にアラニンを配置したプラスミドを得た。この反応はポリペプチド1−386をコードするフラグメントを含むpBLUESCRIPTベクターで行った。この断片を,制限酵素EcoR1,Sac1およびXho1によりGEF−H1アレル(野生型,S810A,QR312,313MG)の残りに連結した。
実施例11
GEF−H1Sアレルの分析
RhoファミリーのGTPasesが関与するシグナル伝達は,広範な細胞応答,例えば,アクチン細胞骨格の再編成,遺伝子発現,アポトーシス,膜横断事象,有糸分裂促進シグナリングおよび悪性トランスフォーメーションに関与する。典型的には,DHドメインの高度に保存された“QRITKY”(配列番号15)モチーフ中の変異により,蛋白質はRho GTPase蛋白質に結合することができなくなり,したがって酵素的に不活性となる。
Clarkら(Methods Enzymol.,225:395−412,1995)の方法にしたがうインビトロトランスフォーメーションアッセイは,野生型GEF−H1SがNIH3T3細胞においてフォーカスを誘導しうることを示した。活性化RasとGEF−H1S野生型およびGEF−H1SQR312,MG313との間のコトランスフォーメーションアッセイは,GEF−H1Sは活性化Rasと相乗的に作用するが,GEF−H1SQR312,MG313は活性化Rasにより形成されるフォーカスを阻害することを示した。
実施例12
局在化および形態学的変化
GEF−H1SアレルをNIH3T3細胞内で過渡的に発現させるかまたはPAK4アレルと同時に発現させた。GEF−H1SアレルはpcDNAベクターからEcoR1およびXho1消化により回収し,EcoR1およびSal1で消化したpEGFP−C1(Clontech,USA Cat#6082−1)に挿入した。得られた蛋白質は,明るい蛍光蛋白質であるグリーン蛍光蛋白質(GFP)のハイブリッドであった。細胞形態学に及ぼす影響は,F−アクチンをクマリンファラシジン(Molecular Probes,USA,Cat.#C−606)で染色することにより追跡した。PAK4との共局在化を示す実験のためには,PAK4をmycまたはHAアフィニティータグのいずれかを有するpcDNA発現ベクター中に挿入し,ローダミンと結合させたヤギ抗マウス(Santa Cruz,USA)とサンドイッチしたモノクローナル抗体“9E10”または“HA7”で検出した。これは赤色の蛍光を示す。野生型GEF−H1Sはゴルジ装置の核周囲領域に局在化した。.Callow et al.,2002を参照。活性化PAK4もまたゴルジ装置に局在するため,この知見はGEF−H1SがPAK4の基質であることと一致する。
しかし,リン酸化変異体S810Aは細胞質に局在し,このことは,GEF−H1Sの局在化にはS810のリン酸化が重要であることを示す。DH変異体QR312,MG313もまた細胞質に局在することが認められ,細胞質凝集の染色パターンを示した。GFPそれ自体は同様の細胞コンパートメントのいずれにも局在化しなかったため,これらの知見はGEF−H1Sアレルに特異的である。
NIH3T3細胞においてPAK4野生型アレルをGEF−H1S野生型アレルと同時に発現させると,Rho GTPase Cdc42の過剰発現によるものと同様に,末梢アクチンマイクロスパイクの形成が誘導される。このことは,これらの構造の形成にはPAK4およびGEF−H1Sの両方が重要な役割を有することを示唆する。活性化PAK4S474EとGEF−H1Sとの同時発現によりラメリポディウムが形成され,このことはPAK4およびGEF−H1SがRho GTPaseシグナリングに関与する蛋白質の複合体であることをさらに示唆する。Nobes et al.,Biochem Soc Trans.,23(3):456−9,1995を参照。不活性なキナーゼを野生型GEF−H1とともに発現させた場合にはアクチンに基づく構造が存在しなかったため,これらのアクチンに基づく形態学は,PAK4キナーゼとGEF−H1交換活性との組み合わせに特異的である。同様に,PAK4と交換因子が不活性な変異体との組み合わせは,アクチンに基づく構造の形成を妨害した。
実施例13
この実施例は,本明細書に記載される方法に関する追加の情報を含む。
GEF−H1のクローニング
蛋白質相互作用物質のファージディスプレイスクリーニングにおいて,PAK4の触媒ドメイン(アミノ酸291−591)のポリペプチドを発現するプラスミドpGEX−4T(Amersham Biosciences Cat#27−4581−01)をおとりとして用いた。ファージディスプレイライブラリは乳癌細胞株MCF−7から誘導した。ファージプラスミドからの配列をクエリーとして用いて,the National Centre for Biotechnology(NCBI)のデータベースでBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いた。cDNAのうち2つがKIAA0651(Genbank受託番号:AB014551)と称されるcDNAおよびいくつかの重複発現配列タグ(EST)と99%より高い同一性でマッチした。GEF−H1のクローニングの間に,この遺伝子が3つの主要なスプライシングアイソフォームである,GEF−H1M,GEF−H1SおよびGEF−H1Uを有することが見出された。GEF−H1S(アミノ酸1−921)アイソフォームは,7アミノ酸のミニエクソンならびにN末端ジンクフィンガードメインをコードするエクソンの欠失の点で,GEF−H1Mスプライシング型とは異なる。GEF−H1Mと称されるスプライシング型は,微小管結合に関与するジンクフィンガー領域を含み,GEF−H1と称される全長型(aa1−985)と同一である。インフレーム配列をpGEX−4Tにサブクローニングして基質分析に用いた。
DNAプラスミドおよびコンストラクト
GEF−H1Sを得るために,配列KIAA0651に由来するオリゴヌクレオチドMC1 GCAGAATTCTGTAACAAGAGCATCACA(配列番号16)およびMC3b GCGCTCGAGTTAGCTCTCGGAGGCTACAGCCT(配列番号17)を用いて,20ラウンドのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って,ヒト全脳プラスミドcDNAライブラリ(CLONTECH laboratories Cat#HL9002CC)からの遺伝子を増幅した。約3000bpのフラグメントが得られ,これをサブクローニングして3つのクローンをシークエンスし,同一の結果が得られた。EcoR1−Xho1を用いて,MCSの5’側のHAエピトープを含むpcDNAベクター中にインフレームでサブクローニングした。pcDNAクローンからのEcoR1−Xho1フラグメントを用いて,すべてのGEF−H1アレルをそれぞれEco−R1−Sal1で消化したpEGFPC(Clontech)にインフレームでシャトルした。
変異体S810AはオリゴMC27 TGTAGATCCTCGGCGGCGCGCTCTCCCCGCA(配列番号10)およびMC3bを用いるPCR反応により導入した。変異体挿入物をヌクレオチド1100−2761にわたるGEF−H1Sの欠失変異体に導入し,野生型のBamH1−Xho1フラグメントを変異体XhoII−XhoIフラグメントで置き換えた。オリゴヌクレオチドMC40 GGTGATGCCCATGGTCTCCAGCAGGAT(配列番号11),MC1,MC41 ATCCTGCTGGTGACCATGGGCATCACCA(配列番号12)およびMC3bを用いて,重複するEcoR1−Nco1およびNco1−Xho1フラグメントを作製して,DHドメインの高度に保存されているQRITYモチーフ中のQR残基をMGに変換した。S67Aは,オリゴMC57 GCCGTGGCCGCTCCGCCTTGTCTTTA(配列番号13)およびMC58 TAAAGACAAGGCGGAGCGGCCACGGC(配列番号14)を用い,および1−626にわたるpBluescipt GEF−H1S(Stratagene)を部位特異的突然変異誘発反応の骨格として用いて作製した。この変異体フラグメントをEcoR1−Sac1で消化し,Sac−Xho1で消化した残りの遺伝子と連結して,変異体および野生型アレルからのフラグメントを作製した。GEF−H1MおよびS蛋白質はアミノ末端においてのみ異なるため,GEF−H1Sに由来する変異体および野生型配列を連結させることによりハイブリッドとして作製した。ユニークな5’配列は,オリゴヌクレオチドMC61GCGGAATTCATGTCTCGGATCGAATCCCTCA(配列番号26)およびMC62GTCACTGAGCTCGTCCACGCAGGGGA(配列番号27)を用いて,IMAGEクローン4157775(Research genetics)をテンプレートとして用いるPCR反応により作製した。
組換え蛋白質の製造,ペプチドのシークエンスおよびキナーゼアッセイ
グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)融合PAK4(残基291−591),GEF−H1アミノ酸763−921(ファージクローン13.8配列より,KIAA0651とマッチする)およびMaguin2−様(ファージクローン13.32より,受託#XP−087831と配列がマッチする)を,標準的であり先に記載されている方法(31)により精製した。GEF−H1b807−824にまたがるペプチドのアミノ酸配列,すなわち#1008(RRRSLPAGDALYLpSFNPP)(配列番号28),#1009(RRRpSLPAGDALYLSFNPP)(配列番号29),#1010(RRRSLPAGDALpYLSFNPP)(配列番号30)および#934(RRRSLPAGDALYLSFNPP)(配列番号3)をインビトロキナーゼアッセイにおいて用いた。インビトロキナーゼ反応は先に記載されるようにして行った(31)。
抗体および免疫試薬
810位にリン酸化されたセリンを有するKLH連結ペプチド(#1009)CRRRSLPAGDALYLSFNPP(配列番号52)(残基807−824)および(#104)GST−GEF−H1(残基762−921)を抗原として用いて,ウサギで抗血清を生成した。PAK4抗体は,抗原(#933)CATTARGGPGKAGSRGRFAGHSEA(配列番号31)(残基122−144)および(#80)CSGDRRRAGPEKRPKSS(配列番号23)(残基148−163)から誘導した。特異性は,先に記載されるようにして分析した。ヤギ抗マウスおよび抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートは,Roche Molecularから入手した。蛍光団FITCまたはローダミンに結合させたヤギ抗マウスおよび抗ウサギはSanta Cruzbiotechnologyから,マウス抗−β−チューブリンはZymedから入手した。クマリン−ファリシジンおよびファロイジンFITCはMolecular Probesから入手した。マウス抗カスケードブルーおよび蛍光色素;テキサスレッド,FITCまたはマリナブルーを入手し,製造元の指針にしたがって抗体とコンジュゲート化させた。架橋試薬の溶液は,G25 sephadexを通して脱塩することによりクエンチし,塩化アンモニウムと混合物して最終濃度50mMとした。
細胞のトランスフェクションおよび免疫蛍光
NIH−3T3,293T,A549,HCT116およびH1299細胞は10%ウシ胎児血清(FBS),ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen(Carlsbad,CA))中で維持した。トランスフェクションのためには,細胞を,特に記載しないかぎり,NIH−3T3については105細胞/mlで,293TおよびH1299については104細胞/mlで播種した。トランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Invitrogen)またはFugene(Roche Molecular)を3μg /μgプラスミドDNAで用いた。免疫ブロッティング用の細胞抽出物は,溶解バッファ中で調製した。免疫沈殿実験のためには,溶解物を,適当な抗体と結合させたプロテインGビーズ(Pharmacia),適当なGST融合蛋白質を有するグルタチオンセファロースビーズ(Pharmacia),および適当なビオチン化ペプチドに結合させたストレプトアビジンビーズ(Pierce)とともにインキュベートした。免疫蛍光のためには,カバースリップを24ウエル細胞培養容器に置き,上述の密度で播種した。16時間後にトランスフェクションを行い,特に記載しないかぎり,固定するまで,0.2%FBSを含むOptimemまたはDMEM中で24時間維持した。顕微鏡観察は,NikonE800顕微鏡で60X対物(1.5NA)を用いて行った。画像はCCD SPOTカメラで捕獲し,SPOTイメージングソフトウエア(Diagnostic instruments)を用いて擬似着色した。
実施例14
ELISAを用いる全細胞中のPAK4キナーゼ活性の測定
GEF−H1SのPAK4依存性リン酸化のレベルは,以下のプロトコルにしたがって,リン酸特異的抗体のGEF−H1Sへの結合をモニターすることにより決定することができる。ELISAプレート(Corning,96ウエルプレート,Cat.#25805−96)をPBS中5μg/mlの抗HAモノクローナル抗体でウエルあたり100μlの最終容量を用いて予めコーティングし,4℃で一晩保存した。次に,コーティングバッファを除去し,ブロッキングバッファ(2%BSA,TBST中)で置き換え,次にプレート全体を室温で60分間振盪した。
次に,組織培養プレートをポリ−L−リジンでウエルあたり50μlを用いてコーティングし,次に37℃で30分間インキュベートした。次にプレートをPBSですすぎ,過剰の液体を吸引し,使用前に完全に乾燥させた。乾燥したのち,TR−293−KDG細胞を,各ウエルに100μl容量のDMEMおよび10%Clontech認可FBS中で2x10+4細胞/ウエルで播種し,室温で少なくとも2時間インキュベートした。この時点で,培地を除去し,1μg/mlのドキシサイクリンを補充した100μlの低血清培地(DMEM,0.2%BSAおよび1%Clontech認可FBS)で置き換えた。ネガティブ対照ウエルはドキシサイクリンで処理しなかった。
翌日,候補物質を0.2%BSA,10mM HEPESおよび1μg/mlのドキシサイクリンを含む溶液中で必要に応じて希釈した。候補物質は,まず100%DMSO中に物質の10mM保存溶液を調製することにより希釈した。次にこの溶液5μlを15μlのDMSOに加えて,2.5mM(50X濃度)溶液を調製した。次に,この最終溶液の6μlをポリプロピレンプレートのウエルに移し,これに300μlの培地を加えた。次に,細胞を覆う培地を除去することにより,ウエル中の100μlの溶液を細胞を含む各ウエルに加え,候補物質の希釈物を含む溶液を穏やかに加えた。
次に,1錠の“コンプリートミニ”プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を10mlの水,200μlの−グリセロリン酸(最終濃度,1M),100μlのNaF(最終濃度,1M),および10μlのNa3VO4(最終濃度,1M)に加えることによりHNTGplus溶液を新たに調製し,氷上に保存した。希釈した候補物質とともに細胞を3時間インキュベートした後,培地を除去し,プレートを氷上に移した。次に細胞を含む各ウエルに100μlの新たなHNTGplus溶液を加え,冷室で10分間振盪した。この間,ELISAプレートからBSAをピペットで除き,TBSTで2回洗浄した。
次に組織培養プレートから50μlの細胞溶解物をELISAプレートの洗浄したウエルに移し,室温で60分間振盪した。次に,細胞溶解物を除去し,ELISAプレートのウエルをTBSTで3回洗浄した。次に,100μlの新たに希釈した抗pGEF抗体(1:5000)をELISAプレートの各ウエルに移し,室温で60分間振盪した。抗体溶液を除去し,ウエルをTBSTで4回洗浄した。次に,100μlの新たに希釈したHRP−GaR(1:10,000)をELISAプレートの各ウエルに加え,室温で45分間振盪した。次にこの溶液を除去し,ウエルをTBSTで4回,次にPBSで1回洗浄した。次に,ABTS溶液をプレートに100μl/ウエルで加えた。次に,ELISAプレートを室温でインキュベートし,10−20分間振盪した。
その後,ELISAプレートをTecan Sunriseプレートリーダー上に置き,測定フィルタ405nm,参照フィルタ620nmを用いて測定値を記録した。
実施例15
シンチレーションプロキシミティーアッセイを用いるヒトPAK4のインビトロキナーゼ活性の測定
シンチレーションプロキシミティーアッセイ(SPA)を用いて,PAK4の蛋白質セリン/トレオニンキナーゼ活性をインビトロで分析した。用いたプロトコルは,10μlの阻害剤溶液をフレキシプレート(Wallac96ウエルポリエチレンテレフタレート(“フレキシ”)プレート,Cat.#1450−401)の各ウエルに加えることを含み,ポジティブおよびネガティブ対照については10μlの5%DMSOを用いた。
PAK4酵素を経験的に決定した濃度でフレキシプレートのウエルに加えた。PAK4酵素はBL21細胞から精製した。この実験のとき,ウエルに加えたPAK4キナーゼ酵素の濃度は20μlの容量中,0.1μg/ウエルであった。濃度は酵素調製物によって様々であろう。したがって,当業者には,特定のキナーゼ調製物について,酵素調製物を滴定し,直線的なキナーゼ活性の経時変化を決定する方法がわかるであろう。ネガティブ対照ウエルには20μlの0.5M EDTAをを加えた。基質はPAK酵素によりリン酸化されることが知られているPAK4ペプチドであり,以下の構造からなるものであった:
ビオチン−LC−LC−RRKSLVG(pT)PYWMAPE(配列番号19)
PAK4ペプチドの8番目のアミノ酸であるトレオニンはホスホトレオニンであり,全ペプチドを最終濃度5mg/mlで水に溶解し,100μlのアリコートで必要となるまで−80℃で保存した。しかし,本発明においては,基質としてPAKキナーゼ(例えばPAK4)によりリン酸化されるか,またはリン酸化されると考えられるすべてのペプチドをPAK4ペプチドの代わりに使用しうることが企図される。例えば,配列番号3および4で表されるGEF−H1SペプチドをPAK4基質として用いることができる。
PAK4キナーゼ活性用には2.5Xキナーゼバッファを用いた。これは,ウエルあたり50mM HEPES(pH7.4),12.5mM MgCl2,375mM KClおよび2.5mM NaFの作業濃度を含んでいた。典型的には,約4.5枚のプレートの反応には10mlのキナーゼバッファで十分である。候補物質およびATPを加えた後のこれらの成分の最終濃度は,20mM HEPES(pH7.4),5mM MgCl2,150mM KClおよび1.0mM NaFであった。
キナーゼ反応を開始させるためには,20μlのPAK4ビオチン化ペプチド/ATP溶液をプレートのウエルに加え,室温で30分間振盪せずにインキュベートし,反応遮蔽の後に置いた。ペプチド/ATP溶液は,1.4μMの作業濃度(すなわちウエルあたりの濃度)のコールド(すなわち放射活性を有しない)ATP,0.1μg/ウエルのPaktideおよび0.33μCi/ウエルの放射性標識γ33P−ATP(NEN Easy−Tide,Cat.#NEG602H)を含む。30分後,200μlの停止溶液を各ウエルに加え,プレートを少なくとも15分間放置した。“停止”溶液は,ウエルあたり,PBSバッファ溶液中の50μM ATP(未標識),5mM EDTA,0.1%Triton X−100および0.5mgのSPAビーズの作業濃度を含んでいた。マグネシウムまたはカルシウムを含まないPBS(Dulbecco’s Phosphate−buffered Saline)は,Gibco BRL(Cat.#14190−144)から入手した。ビーズはAmersham(Amershamストレプトアビジン被覆ポリビニルトルエンSPAビーズ,Cat.#NIF1077)から入手した。ビーズをマグネシウムまたはカルシウムを含まないPBS中で20mg/mlの保存濃度で再構成し,4℃で保存した。
次にプレートを2300rpmで10−15分間遠心分離し,次にTriluxプレートリーダーに移し,放射性カウントを記録した。
実施例16
血清応答要素の誘導
血清応答要素(SRE)に集束する転写因子の活性化は,50%ものヒト結腸癌において観察されるRas活性化に起因するかもしれない。Gauthier−Rouviere et al.,EmboJ.,9(1):171−80,1990を参照。
pSRE−SEAPベクター系(Clontech,USA)を用いて,rasおよびrho蛋白質の下流のGEF−H1SおよびPAK4活性によるSREへのシグナリングを測定した。このアッセイは,NIH3T3細胞において標準的なトランスフェクション方法を用いて行った。不活性なGEF−H1SアレルであるQR312,313MGは,刺激された細胞において活性化rac Rho GTPaseのレベルを低下させた。Taylor et al.,Methods Enzymol.,333:333−42,2001を参照。
さらに,不活性な変異体アレルGEF−H1SQR312,313MGおよびリン酸化変異体S810Aの過渡的発現により,SREへのシグナリングはほぼ基底レベルにまで減少する。
実施例17
GEF−H1アレルにより媒介される形態学的変化
線維芽細胞においてGEF−H1が細胞形態学に及ぼす影響を分析するために,GEF−H1SおよびGEF−H1S中のPAK4リン酸化部位の一連の変異体アレルのEGFP(増強グリーン蛍光蛋白質)融合コンストラクトをNlH3T3細胞にトランスフェクトした。GEF−H1のDHドメインを変異させることにより作成した,変異体GEF−H−QR3l2,313MGを生成する優性ネガティブアレルのコンストラクトも作成した。p21結合ドメイン(PBD)アッセイにおいては,この優性ネガティブアレルはNlH−3T3細胞においてRac−GTPの蓄積を阻害するがCdc42−GTPは阻害しない。アクチン細胞骨格をクマリン−ファリシジンで染色して,顕微鏡によりEGFP蛍光(fluorescing)細胞のF−アクチン構造を対比した。
野生型GEF−H1Sが典型的には核周囲領域に局在化し,細胞は細長く見え,時々張線維を有することが認められた。これに対し,GEF−H1S−S8l0A単独の過剰発現は,トランスフェクトしていない細胞と比較して,張線維の蓄積した無秩序なアレイを生じた。野生型GEF−H1SまたはPAK4アレルいずれかを単独で発現させたときのアクチン細胞骨格への影響は比較的小さいため,張線維の誘導は印象的である。GEF−H1S−S67Aを発現する細胞の形態学は,優性ネガティブGEF−H1SDH変異体を発現する細胞の形態学と同様であった。
DHドメイン変異体GEF−H1S−QR312,313MGの発現は,広く分布した細胞質拡大の痕跡を生じた。GEF−H1S−S810Aの場合における張線維の誘導は,Rho活性化を暗示しており,一方,GEF−H1−Q312R,M313GおよびGEF−H1S−S67Aについて見られた無秩序な細胞質拡大は,おそらくはRho阻害による退縮していない細胞の痕跡の残余であろう。
局在化およびアクチン細胞骨格の変化は,GEF−H1S−(S67A−S810A)の二重変異体において特に顕著である。EGFP−GEF−H1S(S67A−S810A)を発現する細胞においてF−アクチンの細胞質凝集,ならびにF−アクチンを欠失した広い弧状のラメラが認められた。リン酸化部位変異体蛋白質の再分布および細胞質F−アクチンの不適切な蓄積は,GEF−H1が張線維を刺激する能力には局在化が重要であるという考えを支持する。
実施例18
活性化PAK4およびGEF−H1SはNIH−3T3細胞においてラメリポディウム形成を誘導する
線維芽細胞におけるF−アクチン構造の誘導,すなわち,糸状足,ラメリポディウム,および張線維の形成は,それぞれ活性な形のCdc42,Rac,およびRhoによるシグナリングにより生ずる。PAK蛋白質,特にPAK4は,F−アクチンに基づく形態学的構造の制御に役割を果たす。したがって,GEF−H1Sの制御により媒介される,PAK4により誘導される細胞形態学の変化を調べた。NlH3T3細胞においてEGFP−GEF−H1コンストラクトを種々のHAエピトープタグ付きPAK4アレルと共発現させた。外因性PAK4は抗HA抗体で検出し,アクチン細胞骨格はクマリンファリシジンで染色した。NIH−3T3細胞は低いが検出可能なレベルの内因性PAK4およびGEF−H1を有するが,これらはこの実験の条件下では活性化されなかった。
種々のアレルのPAK4を用いることにより,いずれの形態学的影響がGEF−H1のPAK4リン酸化により生じたものであるかを確認することが可能であった。EGFP対照と共発現させたPAK4アレルは,NlH3T3細胞においてF−アクチンに基づく構造の形成に対して比較的小さい影響を与えた。野生型PAK4と野生型GEF−H1Sとを共発現する細胞においては,PAK4またはGEF−H1Sのいずれかを単独で発現する細胞と比較して,糸状足が顕著に増加していることが認められた。糸状足構造は,いずれかの蛋白質が細胞で単独で発現された場合,またはベクターをコトランスフェクトした対照では認められなかったため,より低い活性の野生型PAK4アレルおよびGEF−H1Sとの相互作用に依存するようであった。活性化PAK4S474EおよびGEF−H1Sを共発現する細胞においては,これらの構造は,前縁において糸状足からラメリポディウムに移行した。GEF−H1Sをキナーゼ不活性PAK4K350,351Aとともにトランスフェクトした場合には糸状足およびラメリポディウムのいずれも観察されなかったが,今回は張線維は豊富に存在した。これは,GEF−H1SにおけるPAK4リン酸化部位変異の分析と合わせて,PAK4キナーゼ活性がラメリポディウム形成への移行を担うことを示唆する。
これらの構造の形成が,PAK4がGEF−H1Sをリン酸化する能力に依存することを確認するために,GEF−H1Sのリン酸化部位変異体を利用した。変異体GEF−H1S−S810AアレルをPAK4S474Eとともにコトランスフェクションすると,多量の張線維を示す。このことは,キナーゼデッドアレルからの結果と合わせて,Ser810のリン酸化がラメリポディウム形成につながるシグナル,および線維芽細胞における張線維形成の阻害の両方を担うという仮説を促した。さらに,PAK4S474EおよびGEF−H1SS810Aは,アクチン張線維が凝集する点として働く細胞接着部位を暗示する別々の周縁部位に局在した。GEF−H1のこのタイプの局在化はHeLa細胞においても認められている。5810の変異により観察された効果とは対照的に,変異体GEF−H1S−S67Aと活性化PAK4−S474Eとの共発現により,張線維形成を防止しながらラメリポディウムのGEF−H1依存性形成が生じた。
GEF−H1の交換活性は,Dblホモロジー(DH)ドメインと不活性状態のRacまたはRho GTPasesとの相互作用を介して達成される。PAK4リン酸化により推進されるGEF−H1S媒介性の効果がGEF−H1S交換活性に依存するか否かを判定するために,GEF−H1S優性ネガティブDH変異体(Q3I2M,R3I3G)とPAK4の種々のアレルとを共発現するNIH−3T3細胞を調べた。その結果,アクチンを欠失した広い弧状のラメラが観察され,これは活性なアレルのGEF−H1Sおよび活性化PAK4の存在下で形成されるアクチンの豊富なラメリポディウムまたは張線維と対照的である。この結果により,PAK4シグナルがGEF−H1の交換活性を介して直接リレーされていることが確認される。GEF−H1の先の研究は,Cos−7細胞においてGEF−H1の過剰発現により構成的なラメリポディウム誘導を示している(14)。
Figure 0004522855
Figure 0004522855
図1は,GEF−H1のPAK4への直接結合を示す。 図2は腫瘍細胞におけるPAK4とGEF−H1との間の相互作用を示す。 図3は,PAK4がインビトロおよびインビボでGEF−H1をリン酸化することを示す。 図4はGEF−H1アレルの形態学的影響を示す。 図5aはPAK4によるラメリポディウム形成および張線維の減弱化を示す。 図5bはPAK4によるラメリポディウム形成および張線維の減弱化を示す。 図6aはPAK4シグナリングを示す。 図6bはPAK4シグナリングを示す。 図7はインビボでのRacおよびRhoの相反的制御のモデルを示す。 図8はGEF−H1蛋白質およびペプチドのリン酸化スコアを示す。 図9はGEF−H1とCdc24の保存を示す。 図10はGEF−H1S遺伝子の概略図を示す。

Claims (9)

  1. サンプルにおいてPAK4活性を検出する方法であって,リン酸化されたGEF−H1の存在またはレベルを検出することを含み,ここで、当該GEF−H1は、GEF−H1アイソフォームであるGEF−H1a、GEF−H1bおよびGEF−H1cからなり、GEF−H1のリン酸化された部位は、配列番号2のセリン−810に対応する部位であり、ここで,リン酸化されたGEF−H1の検出は少なくとも1つの活性なPAK4の存在を示すことを特徴とする方法。
  2. 前記GEF−H1が,配列番号2,3または4のいずれかに記載される配列を含む,請求項1記載の方法。
  3. 前記PAK4が細胞中に存在する,請求項1記載の方法。
  4. 前記細胞が腫瘍細胞である,請求項3記載の方法。
  5. 前記腫瘍細胞が哺乳動物中に存在する,請求項4記載の方法。
  6. 前記哺乳動物が,ヒト,ラット,マウス,イヌ,ウサギ,ブタ,ヒツジ,ウシ,ウマ,ネコ,霊長類,ヤギ,またはサルからなる群より選択される,請求項5記載の方法。
  7. 配列番号3に記載される配列を含むペプチドに向けられたGEF−H1特異的抗体であって,前記ペプチドはリン酸化されたセリン−810を含むGEF−H1特異的抗体。
  8. 配列番号4に記載される配列を含むペプチドに向けられたGEF−H1特異的抗体であって,前記ペプチドはリン酸化されたセリン−67を含むGEF−H1特異的抗体。
  9. 細胞サンプルにおける活性化PAK4の存在を判定する方法であって,(i)細胞サンプルから細胞溶解物を取得し;(ii)細胞溶解物の調製物から蛋白質を単離および/または分離し,そして(iii)リン酸化されたGEF−H1の存在を検出することを含み,ここで、当該GEF−H1は、GEF−H1アイソフォームであるGEF−H1a、GEF−H1bおよびGEF−H1cからなり、ここで,配列番号2のセリン−810に対応する部位がリン酸化されていることが検出されることは前記細胞サンプルが活性化PAK4を含むことを示すことを特徴とする方法。
JP2004519732A 2002-07-05 2003-07-02 GEF−H1b:バイオマーカー,その複合体,アッセイおよび治療用途 Expired - Fee Related JP4522855B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US39360002P 2002-07-05 2002-07-05
US46005303P 2003-04-04 2003-04-04
PCT/US2003/020743 WO2004005529A2 (en) 2002-07-05 2003-07-02 GEF-H1b: BIOMARKERS, COMPLEXES, ASSAYS AND THERAPEUTIC USES THEREOF

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005532062A JP2005532062A (ja) 2005-10-27
JP2005532062A5 JP2005532062A5 (ja) 2006-07-20
JP4522855B2 true JP4522855B2 (ja) 2010-08-11

Family

ID=30118381

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004519732A Expired - Fee Related JP4522855B2 (ja) 2002-07-05 2003-07-02 GEF−H1b:バイオマーカー,その複合体,アッセイおよび治療用途

Country Status (9)

Country Link
US (3) US7439329B2 (ja)
EP (1) EP1539956B1 (ja)
JP (1) JP4522855B2 (ja)
AT (1) ATE497002T1 (ja)
AU (1) AU2003256356A1 (ja)
DE (1) DE60335883D1 (ja)
DK (1) DK1539956T3 (ja)
PT (1) PT1539956E (ja)
WO (1) WO2004005529A2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6861442B1 (en) * 1998-12-30 2005-03-01 Sugen, Inc. PYK2 and inflammation
ES2397637T3 (es) 2006-11-10 2013-03-08 Massachusetts Institute Of Technology Inhibidores de PAK para uso en el tratamiento de trastornos del desarrollo neurológico

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4939224A (en) * 1987-02-26 1990-07-03 The Salk Institute Biotechnology/Industrial Associates, Inc. Vasoactive intestinal peptide analogs
DE4412174A1 (de) * 1994-04-08 1995-10-19 Schramm Wolfgang Prof Dr Peptide, Verfahren zu ihrer Herstellung und ihre Verwendung
US5863532A (en) * 1996-03-14 1999-01-26 The Regents Of The University Of California Compositions and methods comprising cytostatic protein kinase
DK1073723T3 (da) * 1998-04-14 2006-01-02 Sugen Inc STE20-relaterede proteinkinaser
US6013500A (en) * 1998-05-21 2000-01-11 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York PAK4, a novel gene encoding a serine/threonine kinase
JP2003523733A (ja) * 1999-10-29 2003-08-12 ヒューマン ジノーム サイエンシーズ, インコーポレイテッド 10個のヒト分泌タンパク質
WO2003068940A2 (en) * 2002-02-14 2003-08-21 Curagen Corporation Complexes and methods of using same

Also Published As

Publication number Publication date
US7439329B2 (en) 2008-10-21
US20110159532A1 (en) 2011-06-30
JP2005532062A (ja) 2005-10-27
US7871786B2 (en) 2011-01-18
DE60335883D1 (de) 2011-03-10
US20090130695A1 (en) 2009-05-21
AU2003256356A1 (en) 2004-01-23
EP1539956A4 (en) 2006-09-06
WO2004005529A3 (en) 2004-07-22
WO2004005529A2 (en) 2004-01-15
US20040091907A1 (en) 2004-05-13
ATE497002T1 (de) 2011-02-15
AU2003256356A8 (en) 2004-01-23
PT1539956E (pt) 2011-03-16
EP1539956A2 (en) 2005-06-15
DK1539956T3 (da) 2011-03-28
EP1539956B1 (en) 2011-01-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3561268B2 (ja) レセプターチロシンキナーゼ標的タンパク質のcDNAクローニング方法及びhGRBタンパク質
Callow et al. PAK4 mediates morphological changes through the regulation of GEF-H1
JPH09509304A (ja) Bcl‐2会合タンパク質
WO1995013292A9 (en) Bcl-2-associated proteins
US6207452B1 (en) Antibody of the anti-proliferation domain of human Bcl-2
US20100286362A1 (en) Mammalian MDM2 Binding Proteins and Uses Thereof
Takano et al. Identification and characterization of molecular interactions between glucose-regulated proteins (GRPs) mortalin/GRP75/peptide-binding protein 74 (PBP74) and GRP94
US7396920B2 (en) Tumour suppressor and uses thereof
JPH10503365A (ja) チロシンリン酸化crklタンパク質を発現する癌の診断および処置
JP2002508961A (ja) 内皮細胞の形態および細胞骨格編成に影響を与える、ヒトリンパ節由来のgtpアーゼ
US5972674A (en) Stimulus-inducible protein kinase complex and methods of use therefor
US7871786B2 (en) GEF-H1b: biomarkers, complexes, assays and therapeutic uses thereof
US7087386B2 (en) Nucleic acid encoding proteins involved in protein degradation, products and methods related thereto
Szymkiewicz et al. SH3P2 in complex with Cbl and Src
US20060094013A1 (en) Salt-inducible kinases 2 and use thereof
US5677421A (en) Target proteins for eukaryotic tyrosine kinases
EP1489177A1 (en) Cdc7-ask kinase complex, substrate of the kinase complex, antibody specific to the substrate, and method of screening compound capable of inhibiting cdc7-ask kinase using the same
ES2357833T3 (es) Gef-h1b: biomarcadores, complejos, ensayos y usos terapéuticos de los mismos.
KR101083852B1 (ko) 유전자 전사 조절제 및 히스톤 탈아세틸화효소 저해 화합물의 스크리닝 방법
Lukas et al. Immunochemical analysis of the D-type cyclin-dependent kinases CDK4 and CDK6, using a series of monoclonal antibodies
JP2003505064A (ja) キナーゼ遮断ポリペプチド及びその使用
US7041783B2 (en) Survivin-binding proteins, encoding nucleic acids, and methods of use
CA2489214A1 (fr) Anticorps monoclonal anti-aurora-a, son procede d'obtention, et ses utilisations dans le diagnostic et le traitement des cancers
JP2002531058A (ja) Tpl−2/cotキナーゼおよび使用方法
Occurring Cloning and Characterization of SCHIP-1

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060530

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060530

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20071130

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20071130

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090511

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090623

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090630

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090908

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090915

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20091007

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20091015

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091207

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100216

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100223

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100406

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100510

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100526

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130604

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees