JP4520602B2 - 高血圧症予防・治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高血圧症予防・治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
狭心症、心筋梗塞、心不全などの心疾患あるいは脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳血管疾患は、高血圧と非常に深い関係があり、日本人の死因のそれぞれ第二位と第三位を占める。また、厚生省国民生活基礎調査(平成10年度)によれば、高血圧症で通院する患者数は我が国で千人あたり64人であり、病因の第一位を占めている。高血圧の対策としては、利尿薬、交感神経抑制薬、血管拡張薬、アンジオテンシン交換酵素阻害薬などの血圧降下医薬品が挙げられ、これらは主として重症高血圧患者に適用される。それに対して、食事療法、運動療法、飲酒・喫煙の制限などの生活習慣改善を目的とした一般療法は、軽症者から重症者までの高血圧者に広く適用されることから、一般療法の重要性が認識されている。なかでも食習慣の改善は重要であるといわれ、伝承として血圧降下作用を有すると言われる食品は数多く存在する。また従来から食品由来の血圧降下素材の探索が盛んに行われ、血圧降下作用を有する有効成分の分離・同定が数多くなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現状において高血圧症対策の目的で使用される医薬品は、有効性に関しては満足できるものが多い反面、少なからず存在する頻脈・徐脈等の副作用のため患者にかかる負担が大きい。また、血圧降下作用を有するといわれる食品あるいはその有効成分に関しても、その有効性には必ずしも満足できるものではなく、また血圧降下効果が発現されるまでに長期間を要するものが多い。
【0004】
従って、本発明の目的は、日常食用できる安全性に優れ、日常的な摂取にも負担にならず、且つより高い抗高血圧作用を有する飲食品、特定保健用食品、医薬部外品及び医薬品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)カフェ酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、それらのエステル及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる化合物と、(b)糖アルコールを含有する、高血圧症の予防・治療剤を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる成分(a)はこれを含有する天然物(特に植物)の抽出物を用いることができる。植物としては、例えば、コーヒー、タマネギ、ダイコン、レモン、モロヘイヤ、センキュウ、トウキ、マツ、オウレン、アギ、カンショ、トウモロコシ、大麦、コメ等が挙げられる。
【0007】
カフェ酸、クロロゲン酸としては、コーヒー生豆、南天の葉、リンゴ未熟果等の植物から抽出したものでもよく、例えばアカネ科コーヒー(Coffea arabica LINNE)の種子より、温時アスコルビン酸、クエン酸酸性水溶液又は熱水で抽出して得られたものが好ましい。
【0008】
本発明で用いるフェルラ酸は、そのエステル体がコメあるいはハトムギ等の天然物、特に植物に含まれる化合物であり、植物からの精製物あるいは工業的に得られる合成品として得ることができる。フェルラ酸エステルは、例えば、コメの糠より得られた米糠油を、室温時弱アルカリ性下で含水エタノール及びヘキサンで分配した後、含水エタノール画分に得られる。フェルラ酸は、上記工程より得られたフェルラ酸エステルを加圧加熱下硫酸で加水分解し、精製して得るか、又は細菌(Pseudomonas)を、フトモモ科チョウジノキ(Syzygium aromaticum MERRILL et PERRY)のつぼみ及び葉より水蒸気蒸留で得られた丁子油、又は丁子油から精製して得られたオイゲノールを含む培養液で培養し、その培養液を、分離、精製して得ることができる。
【0009】
化学合成によってフェルラ酸を調製する場合は、例えば、バニリンとマロン酸との縮合反応によって製造することができる(Journal of American Chemical Society,74,5346,1952)。なお、カフェ酸、クロロゲン酸、フェルラ酸又はそれらの製剤学的に許容される塩には、立体異性体が存在し、本発明では、純粋な立体異性体又はそれらの混合物を用いることができる。
【0010】
カフェ酸、クロロゲン酸又はフェルラ酸のエステル体は、天然物、特に植物中に本来含有されているもの、抽出又は分画の際の化学的処理によって変換したもの及び化学的修飾を行ったものなどが含まれる。具体的には、例えば、フェルラ酸エステル等を挙げることができる。フェルラ酸エステルの具体例としては、例えば、炭素数1〜40のアルコールとのエステルであり、直鎖状若しくは分岐状のアルキル若しくはアルケニルアルコール、アリルアルコール、テルペンアルコール、ステロール、又はトリメチルステロールと、フェルラ酸とのエステル化合物が挙げられる。本発明には上述のこれらフェルラ酸エステルのフェルラ酸をカフェ酸あるいはクロロゲン酸で置き換えたものも含まれる。
【0011】
カフェ酸、クロロゲン酸、フェルラ酸を薬学的に許容される塩の形で用いることにより水溶性が向上し、生理学的有効性が増大する。これら薬学的に許容される塩の塩形成用の塩基物質としては、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、又は水酸化アンモニウム等の無機塩基、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸、又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が用いられるが、特に好ましいものとして、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。これらの塩を調製してから、その塩を本発明品中に添加してもよいし、塩形成成分を本発明品中に別々に添加して処方系中で反応させてもよい。
【0012】
成分(a)は、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明で用いる成分(b)糖アルコールは、天然物、特に植物中に本来含有されているもの、抽出又は分画の際の化学的処理によって変換したもの、及び化学的修飾を行ったものなどが含まれる。具体的には、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等のカルボニル基を還元して、アルコールに変えたものが用いられ、単糖アルコールの具体例としてブドウ糖を酵母で発酵分解して選ばれる4炭糖の糖アルコールであるエリスリトールや、5炭糖のキシリトール、6炭糖のソルビトール、マンニトール等が、オリゴ糖類の具体例として2糖アルコールのパラチニット(還元パラチノース)、マルチトール(還元麦芽糖)、ラクチトール、分岐オリゴ糖アルコール等が、多糖アルコールの具体例として、還元水飴として利用されている還元デキストリン等が挙げられる。
【0014】
成分(b)のうち、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、パラチニット、還元デキストリン、分岐オリゴ糖アルコールが好ましいものとして挙げられる。
成分(b)は、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の高血圧症予防・治療剤を医薬として用いる場合、上記有効成分に薬学的に許容される担体を添加して、経口用又は非経口用の組成物とすることができる。経口用組成物としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤(硬カプセル剤及び軟カプセル剤を含む)、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)などが挙げられる。また、非経口用組成物としては、注射剤などの静脈内投与製剤、坐剤、皮膚外用剤などが挙げられる。
【0016】
本発明の高血圧症予防・治療剤を食品として用いる場合、飲料、スープ等の液状食品、牛乳、カレー等の乳状又はペースト状食品、ゼリー、グミ、ジャム等の半固形状食品、ガム、豆腐等の固形状食品、あるいは粉末状食品、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂含有食品、砂糖代替調味料等いかなる形態でもよい。
【0017】
製剤中における成分(a)の含有量としては、0.005〜5重量%(以下単に%と記載する)、好ましくは0.01〜1%、成分(b)としては、0.1〜70%、好ましくは1〜50%である。
【0018】
本発明に用いる成分(a)の成人(体重60kg)1日あたりの有効投与量は、1日に0.001〜10g、特に0.005〜5gを摂取するようなものであることが好ましい。また、成分(b)の成人(体重60kg)1日あたりの有効投与量は、1日に0.1〜50g、特に1〜20gを摂取するようなものであることが好ましい。
【0019】
【実施例】
実施例1 ラットにおける血圧上昇抑制評価
(1)使用動物
7週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を、予備的に7日間連続で市販のラット用非観式血圧測定装置(ソフトロン社製)を用いて血圧測定することにより、ラットを血圧測定操作に十分慣れさせたのち、評価試験を開始した。ラットはすべて温度25±1℃、相対湿度55±10%、照明時間12時間(午前7時〜午後7時)の条件下(ラット区域内飼育室)で飼育した。
【0020】
(2)投与方法及び投与量
対照区では、1%の砂糖水溶液を飲料水とし、市販の固形飼料を自由摂取させた。試験区1では0.1%フェルラ酸(和光純薬(株)製)と1%砂糖を含む水溶液を飲料水とし、市販の固形飼料を自由摂取させた。試験区2(本発明)では0.1%フェルラ酸と1%エリスリトール(和光純薬(株)製)とを含む水溶液を飲料水とし市販の固形飼料を自由摂取させた。
【0021】
(3)試験方法
SHRを1群8匹で使用し、4週間後、尾動脈の収縮期血圧を測定した。
【0022】
(4)統計学的処理方法
得られた試験成績は平均値及び標準誤差で表してStudent's t-testを行い、有意水準は5%以下とした。
【0023】
表1に、投与開始前及び投与4週間後における収縮期血圧を示した。表1から明らかなように、試験区2の本発明品の摂取により、顕著な血圧上昇抑制作用を認めた。
【0024】
【表1】
Figure 0004520602
【0025】
実施例2 ラットにおける降圧評価
(1)使用動物
14週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を実施例1と同様に予備飼育した。
(2)投与方法及び投与量
対照区では、1%の砂糖水溶液を経口投与した。試験区1では0.2%フェルラ酸と1%砂糖を含む水溶液を経口投与した。試験区2では0.2%フェルラ酸と1%エリスリトールとを含む水溶液を経口投与した。投与量は15mL/kgとした。
(c)試験方法
SHRを1群6匹で使用し、投与後1時間目の尾動脈収縮期血圧を測定した。
【0026】
表2に、実施例1と同様に統計学的処理した投与開始前及び投与1時間後における収縮期血圧を示した。表2から明らかなように、該組成物の摂取により顕著な血圧の降下を認めた。
【0027】
【表2】
Figure 0004520602
【0028】
実施例3 軟カプセル剤
軟カプセル剤皮(オバール型、重さ150mg)の中にクロロゲン酸(和光純薬(株)製)50mgとマルチトール(和光純薬(株)製)450mgを定法により充填し、軟カプセル剤を製造した。良好な血圧降下作用を示した。
【0029】
実施例4 飲料
脱脂粉乳 3.5 %
レモンエキス 3.5
パラチニット(和光純薬(株)製) 9.0
フェルラ酸ナトリウム(和光純薬(株)製) 0.1
クエン酸 0.1
アスコルビン酸 0.1
香料 0.1
水 83.6
上記組成の飲料の保存安定性は高く、また、風味も良好であった。
【0030】
実施例5 クッキー
菜種油 12 %
コーンスターチ 12
オレンジエキス 5
小麦粉 40
バター 5
還元デキストリン(和光純薬(株)製) 14
フェルラ酸シクロアルテノール(和光純薬(株)製) 1
食塩 0.5
重曹 0.5
水 10
上記組成から成るクッキーを焼成した。美味であった。
【0031】
【発明の効果】
血圧の上昇が抑制されるとともに、高血圧症が改善され、高血圧症予防・治療用の医薬品及び食品として用いることができる。

Claims (1)

  1. (a)フェルラ酸、フェルラ酸エステル及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選ばれる化合物と、(b)エリスリトールとを含有する高血圧症予防・治療剤。
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