JP4517098B2 - 液中プラズマ発生方法 - Google Patents

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この発明は、水やアルコール等導電性の液体において、高エネルギーのプラズマを発生するための液中プラズマ発生装置および液中プラズマ発生方法に関するものである。
従来より、プラズマを用いた蒸着技術として気相プラズマによる蒸着技術が幅広く利用されている。たとえば特許文献1にはプラズマCVD法によってシリコンまたは立方晶シリコンカーバイトの表面にダイヤモンド膜を形成することが記載されている。また、非特許文献1には超音波キャビテーションと局所電磁場の重畳による液中プラズマの生成に関する研究が記載されている。さらに、非特許文献2には、水中にグラファイトの電極を挿入してアーク放電を行い、フラーレンを合成する技術が記載されている。
特開平10−81589号公報
野村 信福、豊田 洋通、「第4回愛媛大学全学シンポジウム予稿集」、愛媛大学全学シンポジウム実施準備委員会、平成13年11月12日、p.56 N. Sano,et al, Nature 414,506(2001)
特許文献1に記載の方法等プラズマCVD法では蒸着物質を大量に合成することは困難である。従って、ある程度厚みのある膜を形成しようとすれば、長時間を要する。あえて蒸着速度を上げるために、メタン等の原材料物質を急速に供給することは危険を招くことにもなりかねない。また、気相で高エネルギーのプラズマを発生させると高温になり、熱に弱い基板材料へ蒸着することはできない。一方、非特許文献1に記載の超音波キャビテーションと局所電磁場の重畳による液中プラズマの生成は、液体中でプラズマを発生させようとする極めて有望な考え方ではあるが、当該文献および発表は、この研究を開始するに当たっての方針を発表したものでありその詳細は全く記載されておらず、同発表者であり本願発明者によってなされた特願2002−98193に係る発明において具体的なものとして完成されている。
非特許文献2に記載された例のような液体中でアーク放電を行う技術では、電力の大部分を電子の流れに消費するのでエネルギー効率が低いという問題がある。また、基板に蒸着を行う場合にはこの過大な電子流によってターゲットの基板を加熱するという問題があり、熱に弱い素材の基板は使用できないし、非導電性の基板を使用することもできない等、用途が極めて限定される。
一方、非特許文献2に記載された液中に電磁波を照射して液中プラズマを発生する方法は、液相では分子密度が気相に比べて極めて高いことから、高い合成速度が得られることが期待される。しかしながら、水やアルコール等の導電性の液体では液中に渦電流が発生して、照射した電磁波のエネルギーが消耗されるという問題があり、また水酸基などが特定の周波数を吸収するために電磁波が減衰するという問題がある。この発明は、水やアルコール等の導電性の液体でも効率的にプラズマを発生させることができる液中プラズマ発生装置および液中プラズマ発生方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る液中プラズマ発生装置は、液体を保持するための容器と、液体中に電磁波を照射するための電磁波照射手段と、液体中で気泡を発生させるための気泡発生手段と、気泡を電磁波照射手段の近くに保持するための気泡保持手段を有するものである。前記気泡保持手段としては、気泡を挟んで上下に配置された超音波照射手段と超音波反射板の対、気泡を上部より保持する保持板、気泡を挟んで上下に配置された電磁波照射のための電極の対などが使用できる。
さらに、本発明に係る液中プラズマ発生方法は、導電性の液体中で気泡を発生させるとともにその気泡を電磁波照射手段の近くに保持し、気泡に電磁波を照射して気泡中にプラズマを発生させるものである。上下に配置された超音波照射手段と超音波反射板の対によって気泡を保持してもよく、上下に配置された電磁波照射のための電極の対によって気泡を保持する。導電性の液体として水溶液を用いてもよい。
この発明の本発明に係る液中プラズマ発生装置および液中プラズマ発生方法は、導電性の液体を使用しても、局所的には高エネルギーでありながら巨視的には低温であり安全で取り扱いやすい液中プラズマを発生できるという効果を有する。
液中プラズマ発生装置の例を示す説明図である。 液中プラズマ発生装置の実施例を示す説明図である。 高周波供給装置の一例を示す回路図である。 高周波供給装置の別の例を示す回路図である。
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る液中プラズマ発生装置の一例を示す説明図である。液中プラズマ発生装置1の容器2には液体3を入れるようになっている。容器2の大きさは必要とされる処理能力に応じて適宜選択でき、ビーカー程度の小型のものであっても、大型プラントとして実施するための大型の処理槽であってもよい。ここで、アクリル製の容器を用いている。
電磁波照射手段4は液体3中に電磁波を照射するためのものであり、この例では電極の対5a、5bとこの電極の対に高周波を供給するための高周波供給装置6よりなっている。また、この発明の液中プラズマ発生装置1は気泡発生手段を備えるが、気泡を挟んで上下に配置された電磁波照射のための電極の対を使用する。この例では電極5a、5bが気泡発生手段の役割をも果たしている。電磁波を照射するために高周波が供給されると電極5a、5bが加熱され、電極5a、5bに接している液体から気泡が発生する。気泡発生手段としては、電磁波照射手段4とは別に専用の加熱手段を設けてもよい。また、気泡発生手段として、容器2を別の容器で覆い、真空ポンプ等で減圧することによって気泡を発生させることもでき、あるいは外部より気体を導入するようにしてもよく、さらにはこれらの組み合わせであってもよい。
この発明の液中プラズマ発生装置1は気泡保持手段を備えるが、この例では容器2内に上下に配置された超音波照射装置7超音波反射板8が気泡保持手段の役割を果たしている。気泡9が保持されるべき位置の下に超音波照射装置7を、気泡9が保持されるべき位置の上に超音波反射板7を設け、気泡を上下から挟むような配置にする。気泡9は上下からの超音波照射による放射力および浮力を受けるが、これらがつりあった位置で保持される。この気泡9が保持されるべき位置は、電極5の近くになるように設定されている。
ついで、図1に示す液中プラズマ発生装置1により液中プラズマを発生する方法について説明する。容器2を液体3で満たす。液体3として、ベンゼンやドデカン等の非導電性の液体でもよいが、本発明の液中プラズマ発生方法では、水やアルコール類等の導電性の液体を使用することができる。特に水には水溶性の物質を大量に溶かすことができるので、処理の目的に応じた水溶液を調整することができる。高周波供給装置6より高周波を電極5に供給すると電極5が加熱され、電極5より気泡が発生する。さらに、超音波照射装置7を作動させることによって、超音波照射装置7と超音波反射板8との間に超音波が上下から照射される。この上下からの超音波による放射力がつりあう位置で気泡9は保持され、電極の近くに単一、または数個の大きな気泡9が形成・保持される。
電極5a、5b間には電磁波が照射されているので、その位置に保持されている気泡9にも電磁波が照射される。気泡9は電極5の近くに保持されているために、電磁波は途中で減衰することなく気泡に到達し、気泡9内にプラズマを発生させる。このプラズマは局所的には高温・高エネルギーであって物質の分解・合成に効果的なものであるが、一方、液中にあるために巨視的には低温であり安全で取り扱いやすいものである。
このように発生させたプラズマはさまざまな処理を行うことができる。例えば、蒸着を行うべき基板を気泡9に接するように配置し、蒸着膜の原料となる物質を液体中に含有させておくことにより、基板上に蒸着を行うことができる。CCVD法等従来の気相による蒸着と異なり、物質密度の高い液体を原料として使用するために蒸着膜の形成速度は著しく向上する。また、炭素を含む液体を使用して、カーボンナノチューブ、フラーレン、ダイヤモンド等の物質を合成したり、ダイオキシンやフロン等通常の処理法では分解が困難な有害物質の分解処理を行う化学反応炉としても使用できる。
この発明の液中プラズマ発生方法の第1の実施例について説明する。図はこの実施例において使用する液中プラズマ発生装置を示す説明図である。図はこの実施例において使用する高周波供給装置を示す回路図である。この実施例は中波帯(MF帯)の電磁波を使用する例である。アクリル製の容器2には、水が入れられている。電極5a、5bは真鍮製であって、上下に配置されており、上側5aは直径40mmの円柱型、下側5bは直径2mmの釘を使用している。
の共振回路を使用した。共振回路部はコイル(0.24Ω、9μH)11とコイル12(1.7Ω、57μH)および磁器コンデンサ13(500pF)を並列接続したもので、回路全体の共振周波数は855kHzである。整合器15を端子A'およびB'に接続し、高周波電源14側からのインピーダンスを50Ωになるよう、整合器15を調整する。さらに、液中プラズマ発生装置1を接続し、反射波が最小となるよう整合器15を微調整する。
855kHz・200Wの高周波を供給すると、電極間(距離5mm)に赤紫色のプラズマを得た。電力を下げても100Wまでプラズマを安定に維持することが出来た。
この発明の液中プラズマ発生方法の第2の実施例について説明する。図はこの実施例において使用する高周波供給装置を示す回路図である。この実施例は短波帯(HF帯)の電磁波を使用する例である。液中プラズマ発生装置は図のものを使用する。電極5a、5bは上下に配置されており、上側5aは真鍮製で直径40mmの円柱型、下側5bはアルミニウム製で直径3mmの円柱を鋭利に加工したものを使用している。
の共振回路を使用した。コンデンサ16の容量は1nFであり、コンデンサ17の容量は91pF(1nFを11ヶ直列接続)である。また、コイル18のインダクタンスは1.4μHである。液中プラズマ発生装置1を接続し、回路全体の共振周波数を測定すると、12.6MHzとなっていた(液中プラズマ発生装置1の容量は30pF程度あり、この影響は無視できない)。整合器15を端子A'およびB'に接続し、高周波電源14からのインピーダンスを50Ωになるよう、整合器15を調整する。
高周波電源14より、12.6MHz・200Wの高周波を供給すると、電極5a、5b間に赤紫色のプラズマを得た。
この発明の液中プラズマ発生装置および液中プラズマ発生方法は、水やアルコール類等の導電性の液体中に高エネルギーのプラズマを発生することができるものであり、化学蒸着や化学反応炉あるいは有害物質の分解炉として適用することができるものである。
1.液中プラズマ発生装置
2.容器
3.液体
4.電磁波照射手段
5a、5b.電極
6.高周波供給装置
7.超音波照射手段
8.超音波反射板
9.気泡
10.マイクロ波集中装置
11,12,18 コイル
13,16,17 コンデンサ

Claims (2)

  1. 導電性の液体中で気泡を発生させるとともに、気泡を挟んで上下に配置された電磁波照射のための電極の対により気泡を電磁波照射手段の近くに保持し、気泡に対して電磁波を照射して気泡中にプラズマを発生させる液中プラズマ発生方法。
  2. 導電性の液体として水溶液を用いる請求項1に記載の液中プラズマ発生方法。
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