JP4515896B2 - 扁平ガラス繊維織物の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2には、超音波を利用してガラス繊維織物を開繊する方法が記載されている。特許文献3には、ガラス繊維織物に気泡を含む液流を噴きつけることによりガラス繊維織物を開繊する方法が記載されている。特許文献4には、水分を含有したガラス繊維をシリンダー乾燥機で加熱処理することによりガラス繊維織物を開繊する方法が記載されている。しかしながら、いずれも加工速度や生産性に必ずしも満足のいくものではなく、より優れた開繊方法が待ち望まれていた。
また、本発明者らは、上記した知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成させた。
[1] ガラス繊維織物から扁平ガラス繊維織物を製造する方法であって、
(1)前記ガラス繊維織物を含水処理する工程、および
(2)含水処理されたガラス繊維織物の少なくとも片面にノズルから水蒸気を噴射することにより前記ガラス繊維織物を開繊する工程を含み、前記開繊工程(2)が、
(2−a)水蒸気を前記ノズルの水蒸気導入口と多数のノズル孔を有するノズル部材との間に配されたフィルターに通過させること、
(2−b)フィルターを通過した水蒸気を前記ノズル孔から噴射させること、および
(2−c)前記ノズル孔から噴射した水蒸気を、前記ガラス繊維織物を挟んで反対側に配されたサクションボックスの僅少な吸引穴またはスリットを通して積極的に吸引すること、
の手順を含んでなることを特徴とする、扁平ガラス繊維織物の製造方法、
[2] 前記手順(2−b)において、前記ノズル孔から蒸気を噴出させる際に、前記ノズル部材に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射させることを特徴とする前記[1]記載の製造方法、
[3] 前記手順(2−c)において、前記ノズル孔から噴射した水蒸気が、前記ノズル部材に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射した水蒸気であることを特徴とする前記[1]記載の製造方法、
[4] 前記手順(2−b)において、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部側へ拡開する形状であることを特徴とする前記[2]記載の製造方法、
[5] 前記手順(2−c)において、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部側へ拡開する形状であることを特徴とする前記[3]記載の製造方法、
[6] 含水処理したガラス繊維織物をネットで支持しながら開繊処理に付すことを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法、および
[7] 扁平ガラス繊維織物がプリント配線板用ガラス繊維織物である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法
に関する。
(A)加工速度が速く生産性に優れている。
(B)比較的低圧の水蒸気を使用できるので、ガラス繊維織物の目荒れを生じることなく(構成フィラメントがズレたりせずに)、外観や機能を損なわずに開繊できる。
(C)ウォータージェットを使用する場合に比べて、多量の水を必要とせず、高圧ポンプや水処理が不要であり、小規模な設備でも実施できる。
(D)厚さの薄いガラス繊維織物でも好適に実施できる。
(1)前記ガラス繊維織物を含水処理する工程、および
(2)含水処理されたガラス繊維織物の少なくとも片面にノズルから水蒸気を噴射することにより前記ガラス繊維織物を開繊する工程を含み、前記開繊工程(2)が、
(2−a)水蒸気を前記ノズルの水蒸気導入口と多数のノズル孔を有するノズル部材との間に配されたフィルターに通過させること、
(2−b)フィルターを通過した水蒸気を前記ノズル孔から噴射方向の端部側が拡開する開口を通して噴射させること、および
(2−c)前記ノズル孔から噴射した水蒸気を、前記ガラス繊維織物を挟んで反対側に配されたサクションボックスの僅少な吸引穴またはスリットを通して積極的に吸引すること、
の手順を含んでなることを特徴とする。
本発明で原料として使用されるガラス繊維織物は、開繊されていないガラス繊維織物であれば特に限定されず、公知のものであってよい。本発明においては、厚さの薄いガラス繊維織物でも好適に用いられ、例えば厚さ100μm以下(好ましくは60μm以下)のガラス繊維織物が好適に用いられる。
上記ガラス繊維は、公知のガラス繊維であってよく、その種類、繊維径、番手等は特に限定されない。しかしながら、あえてガラス繊維の種類を例示すると、Eガラス、シリカガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Cガラス及びHガラス等から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも本発明において好ましいのは、Eガラスである。
上記糊付工程は、経糸に集束剤を付与できさえすればどのような工程であってよい。例えば、経糸に対して集束剤を公知の手段を用いて付与するなどの工程が挙げられる。かかる公知の手段としては、例えば、浸漬塗布、ローラー塗布、吹き付け塗布、流し塗布又はスプレー塗布等が挙げられる。上記集束剤は、公知の集束剤であってよく、ガラス繊維集束剤と称されるものが好ましい。上記集束剤は広く市場に流通しており、本発明では、これら市販品を上記集束剤として用いてもよい。
本発明の製造方法は、
(1)ガラス繊維織物を含水処理する工程(工程1)、及び含水処理した前記ガラス繊維織物を開繊する工程(工程2)からなり、工程(2)は、
(2−a)水蒸気を前記ノズルの水蒸気導入口と多数のノズル孔を有するノズル部材との間に配されたフィルターを通過させる工程(工程2−a)、
(2−b)フィルターを通過した水蒸気を前記ノズル孔から噴射させる工程(工程2−b)、および
(2−c)前記ノズル孔から噴射した水蒸気を、前記ガラス繊維織物を挟んで反対側に配されたサクションボックスの僅少な吸引穴またはスリットを通して積極的に吸引する工程(工程2−c)、
を含む。
本発明においては、前記工程2−bにおいて、前記ノズル孔から水蒸気を噴射させる際に、前記ノズル板に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射させることもできる。さらにこの場合、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部へ拡開している形状とすることもできる。
さらに本発明においては、前記工程2−cにおいて、前記ノズル孔から噴射した水蒸気が、前記ノズル板に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射した水蒸気とすることもできる。さらにこの場合、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部側へ拡開する形状とすることもできる。
工程(1)は、上記ガラス繊維織物を含水処理できさえすれば特に限定されない。前記ガラス繊維織物の含水処理の手段は公知の手段であってよく、例えば、スプレー法、ディップ法、コート法、ウォーターカーテン法、低圧の水蒸気で加湿する方法などが挙げられる。処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、常温であってもよいし、加温下であってもよい。つまり、処理水は、冷水であっても、温水であっても、熱水であってもよい。また、水道水であってもよいし、工業用水であってもよい。さらに、処理水には必要に応じて界面活性剤を添加することも可能である。界面活性剤の種類は特に限定されず、公知のものが使用可能である。本発明では、本工程の処理時間が短時間であっても、水蒸気による開繊が好適に行われる。そのため、処理時間は特に限定されないが、好ましくは10秒以上である。含水処理後の工程(2)に使用される前記ガラス繊維織物の含水率は、好ましくは20%以上、より好ましくは40〜80%、最も好ましくは50〜80%である。なお、「含水率」は、下記数式によって求められる値である。
〔数1〕
含水率(%)={(イ−ロ)/イ}×100
(上記数式中、イは含水後のガラス繊維織物の質量を表し、ロは含水前のガラス繊維織物の質量を表す。)
図1は、ノズル1を主として表している模式的断面図である。
ノズル1は空洞2aが内部に形成され、蒸気圧に耐える肉厚の壁で囲まれたノズル箱2を主体とする。空洞2aの下部にはノズル部材3が水平に設けられる。ノズル部材3には、ノズル孔3aが左右の幅方向(図において紙面に直角方向)に列をなして開口している。このノズル部材3の好適な例としては、図5に示すノズル部材3などが挙げられる。なお、図5における領域Aの正面断面図を図6に示す。ノズル部材3は、例えばOリング(図示せず)によってシールされたり、押板6が設けられたりすることによって、ノズル箱2に固定される。
ガラス繊維織物4に噴射水蒸気11aによる圧力がかかり、ガラス繊維織物4に開繊処理が施される。この際の噴射水蒸気は飽和水蒸気および過熱水蒸気のいずれであってもよく、噴射水蒸気の圧力は、好ましくは低圧であり、具体的には2MPa(G)以下であり、より好ましくは0.1〜1MPa(G)である。このように低圧の噴射水蒸気で開繊処理することによって、織物の目荒れなどが生じることなく(構成フィラメントがズレたりせずに)、ほぐれるように、ガラス繊維織物4が開繊される。このような水蒸気処理は、通常、フィラメントを柔軟化させて開繊をより好適に行うことができる点で加温下で行われ、噴射水蒸気の温度は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。また、ノズル1は、ガラス繊維織物4の幅方向に対して揺動する機構を備えていてもよい。
図2に示される製造装置を用いて、ガラス繊維織物(生機){ユニチカグラスファイバー株式会社製のE02E(糸:ECBC2250 1/0、密度:経95本/25mm、緯:95本/25mm、織組織:平織)}から扁平ガラス繊維織物を製造した。
図2は、本発明の各工程を連続して実施することが可能な連続式の製造装置を示す。
巻き出し装置12によって、ガラス繊維織物4は巻き出し装置12の矢印方向に送り出される。送り出されたガラス繊維織物4は、ガイドローラー15によって所定の方向に案内されながら、水供給装置(ウォーターカーテン装置)16によってウォーターカーテン法による含水処理が施される。この含水処理により、ガラス繊維織物4は水分を含み、含水率70%に調整される。含水処理後、ガラス繊維織物4は、所定の方向に移動する上側ネット5aおよび下側ネット5bに挟まれながら、所定の方向に移動する。このときの上側ネット5aおよび下側ネット5bの搬送速度は同じ速度となるように設定されている。上側ネット5aおよび下側ネット5bは、どちらも円筒状に継がれたいわゆるエンドレスネットであって、ガイドローラー15によって適当な張力が付与された状態で、駆動ローラー14によって搬送速度が設定される。上側ネット5aは、ポリエステル製の50メッシュのネットである。下側ネット5bは、ポリエステル製の16メッシュのネットである。
水蒸気処理の条件を、水蒸気が飽和水蒸気であり、水蒸気の温度が159℃であり、水蒸気の圧力0.5MPa(G)、処理速度5m/分に代えたこと以外、実施例1と同じ条件にして扁平ガラス繊維織物を得た。
水供給装置(ウォーターカーテン装置)16を使用せず、含水処理をしなかったこと以外、実施例1と同じ条件にして扁平ガラス繊維織物を得た。
含水処理したガラス繊維織物(生機){ユニチカグラスファイバー株式会社製のE02E(糸:ECBC2250 1/0、密度:経95本/25mm、緯:95本/25mm、織組織:平織)}を、水蒸気処理に代えて2.8MPa(G)の高圧水を用いてウォータージェット処理(処理速度5m/分)したこと以外は実施例1と同じ条件にて開繊することによって扁平ガラス繊維織物を得た。
含水処理したガラス繊維織物(生機){ユニチカグラスファイバー株式会社製のE02E(糸:ECBC2250 1/0、密度:経95本/25mm、緯:95本/25mm、織組織:平織)}を、水蒸気処理に代えてバイブロワッシャー装置を用いて、前記ガラス繊維織物を5m/分の速度で搬送しながら開繊することによって扁平ガラス繊維織物を得た。なお、含水処理については、前記ガラス繊維織物を5m/分の速度で搬送しながら、常温水中で75Hzの振動を付与して処理した。
実施例1〜2および比較例1〜3で得られた扁平ガラス繊維織物の性状を表1に示す。また、参考データとして、未開繊未処理のガラス繊維織物(生機){ユニチカグラスファイバー株式会社製のE02E(糸:ECBC2250 1/0、密度:経95本/25mm、緯:95本/25mm、織組織:平織)}の性状を表1に併せて示す。なお、各性状は、以下の方法により測定した。
顕微鏡を用いて試料を150倍に拡大観察しながら、経糸の幅と緯糸の幅を測定した。
(2)開口率の算出
糸幅および密度を用いて、全体の面積から糸面積を引いて空隙面積を算出し、ついで、空隙面積を全体の面積で割り、100倍することにより開口率を求めた。
(3)厚さの測定
試料の厚さをマイクロメーターで測定した。
(4)通気度の測定
東洋精機製作所製のフラジールパーミヤメータを用いて、試料の通気度を測定した。
(5)外観の観察
試料の外観を目視で観察した。未開繊未処理の試料の外観と比べて変化がないものや、著しい目荒れやネット痕の転写が認められないものについては「○」とし、著しい目荒れやネット痕の転写が認められるものについては「×」とした。
2 ノズル箱
2a 空洞
3 ノズル部材
3a ノズル孔
3a−1 逆円錐台孔
3a−2 円筒孔
4 ガラス繊維織物
5 ネット
5a 上側ネット
5b 下側ネット
5c スライドテーブル(金網)
6 押板
6a 開口部
7 蒸気導入口
8 ボイラ
9 フィルター
10 サクションボックス
10a 吸引穴またはスリット
11 水蒸気
11a 噴射水蒸気
12 巻き出し装置
13 巻き取り装置
14 駆動ローラー
15 ガイドローラー
16 水供給装置(ウォーターカーテン装置)
17 舟形の凹陥溝部
18 矩形断面溝部
Claims (7)
- ガラス繊維織物から扁平ガラス繊維織物を製造する方法であって、
(1)前記ガラス繊維織物を含水処理する工程、および
(2)含水処理されたガラス繊維織物の少なくとも片面にノズルから水蒸気を噴射することにより前記ガラス繊維織物を開繊する工程を含み、前記開繊工程(2)が、
(2−a)水蒸気を前記ノズルの水蒸気導入口と多数のノズル孔を有するノズル部材との間に配されたフィルターに通過させること、
(2−b)フィルターを通過した水蒸気を前記ノズル孔から噴射させること、および
(2−c)前記ノズル孔から噴射した水蒸気を、前記ガラス繊維織物を挟んで反対側に配されたサクションボックスの僅少な吸引穴またはスリットを通して積極的に吸引すること、
の手順を含んでなることを特徴とする、扁平ガラス繊維織物の製造方法。 - 前記手順(2−b)において、前記ノズル孔から蒸気を噴出させる際に、前記ノズル部材に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記手順(2−c)において、前記ノズル孔から噴射した水蒸気が、前記ノズル部材に対して噴射側に設けた開口部を通して噴射した水蒸気であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記手順(2−b)において、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部側へ拡開する形状であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 前記手順(2−c)において、前記開口部の形状が前記ノズル孔から噴射方向の端部側へ拡開する形状であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 含水処理したガラス繊維織物をネットで支持しながら開繊処理に付すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 扁平ガラス繊維織物がプリント配線板用ガラス繊維織物である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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