JP4514894B2 - 充填性の優れた酸化アルミニウム粉体及びその製法 - Google Patents

充填性の優れた酸化アルミニウム粉体及びその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐火物、電子材料部品及び機械用部品等のセラミックス用原料として有用な酸化アルミニウム粉体及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化アルミニウム粉体は、各種セラミックス製品の製造原料や、定型耐火物、不定型耐火物等の微粒原料として従来から広く使用されている。近年、セラミックスの大型化に伴い、焼成収縮率の低減・安定化、また耐火物の長寿命化要求により、酸化アルミニウム粉体に要求される品質も変化してきている。
【0003】
従来、セラミックス原料用酸化アルミニウム粉体や、耐火物原料用酸化アルミニウム粉体は、バイヤー法による水酸化アルミニウムを焼成し、得られた酸化アルミニウムを種々の方法で粉砕したものを単独又は混合して使用されていた。 不定型耐火物用途では、低水分での流動性が良いことが重要となるため、従来から粒度分布や粒子形状の影響が検討されている。
【0004】
耐火物誌46〔7〕(1994)の『最近のセラミックスアルミナの動向について』によると、単一分布系では粒子径が細かくなるほど流動性は改善されるが、粒子径を細かくするには限界があるため、さらなる改善は難しい。また、平均粒子径の異なる2種類の単一分布系のアルミナを混合しても流動性は改善されない。
【0005】
特開昭47−15420号公報では、水酸化アルミニウムを圧縮成形し、焼成することによって密度の高いアルミナ耐火物が製造されることを開示している。しかしながら、これらの方法で得られた酸化アルミニウム粉体は高密度化が難しく、低収縮率の成形体が得られない。また、耐火物用微粒として使用した場合、期待する減水効果が得られないという問題点があった。
【0006】
ここでいう減水効果とは、以下の意味を指す。即ち、耐火物が電融アルミナ等の骨材と酸化アルミニウム等の微粒成分及びアルミナセメント等を混合して、水を添加して固める際に、水の添加量が多いと硬化後の耐火物に空隙が多くなり、耐火物としての特性が落ちることが知られおり、この添加水量を減らす効果を減水効果という。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い加圧嵩密度を有し、かつ低水分でスラリー化できる酸化アルミニウム粉体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、耐火物用途の微粒成分として、最密充填できる酸化アルミニウム粉体を使用することで、著しい減水効果を有し、電子材料部品及び機械用部品等のセラミックス用原料として使用した時に成形体の密度が高くなり、また樹脂に充填した際、高充填できる酸化アルミニウム粉体とその製法を提供する。
【0009】
即ち、本願発明は、以下の各発明からなる。
(1)酸化アルミニウムの二次粒子粉体の、平均1次粒子径が夫々0.3μm〜1μmの粉体A、1μm〜3μmの粉体B、3μm〜6μmの粉体Cを併せて混合し、該混合粉体100質量部あたりのこれらの混合比を15〜35質量部(粉体A)、25〜40質量部(粉体B)、25〜60質量部(粉体C)とし、該混合粉体を粉砕強度(R比×粉砕時間)30以上にして粉砕する酸化アルミニウム粉体の製造方法であって、粉砕後の粉末を1t/cm 2 で加圧した圧粉体の密度(加圧嵩密度)が、2.50g/cm 3 以上となることを特徴とする酸化アルミニウム粉体の製造方法
【0010】
(2)粉体A、粉体B、粉体Cの夫々の平均二次粒子が、独立に30μm〜120μmの範囲にある上記(1)に記載の酸化アルミニウム粉体の製造方法
(3)粉砕後の酸化アルミニウム粉体100質量部に、クエン酸2.0gとナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダ4.0gを600mlの精製水に溶かした分散剤を15質量部添加したとき、その粘度が500cP以下の特性を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の酸化アルミニウム粉体の製造方法
【0011】
(4)上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の製造方法によって得られた酸化アルミニウム粉体。
(5)上記(4)に記載の酸化アルミニウム粉体が分散されたスラリー。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、平均一次粒子径の異なる3種類の酸化アルミニウムの二次粒子原粉を独立に準備し、それらを好ましくは所定の割合で混合し、次いでボールミル等の手段で粉砕することにより、高い加圧嵩密度とスラリー特性の良好な(改良された)酸化アルミニウムを提供する。
【0013】
ここで、原粉に用いられる酸化アルミニウムは、通常のバイヤー法で得られる水酸化アルミニウムを焼成した粉体(二次粒)であり、酸化アルミニウムの平均二次粒子径は10〜120μmの範囲、好ましくは30〜120μmの範囲のものである。
【0014】
焼成方法は、一般的にロータリーキルン、トンネルキルンを使用しても良く、特に手段には限定されない。また、平均二次粒子径の測定には、日機装(株)社製マイクロトラックX−100が用いられる。
前記焼成後の二次粒子は、一般には一次粒子の凝集体(二次粒子)であり、1次粒子径は焼成条件によって支配を受ける。
【0015】
本発明においては、平均一次粒子径の異なる3種類の二次粒子粉を前記焼成条件の制御により、これらを準備する。即ち、独立に準備される原料粉(二次粉)としては、平均一次粒子径が0.3μm〜1μm、好ましくは0.3μm〜0.8μmの原料(以下包含して「原料A」と称する)、及び平均一次粒子径が1μm〜3μm、好ましくは1.5μm〜2.6μm(以下包含して「原料B」と称する)、及び平均一次粒子径が3μm〜6μm、好ましくは3μm〜5μm(以下包含して「原料C」と称する)の3種類の酸化アルミニウムを用いる。
【0016】
一次粒子径の測定は、電子顕微鏡写真の実測から求め、これから平均一次粒子径とした。さらに他の方法として、比表面積からの換算径により平均一次粒子径を求めた。その換算式は6/(比表面積×密度)である。
好ましい混合割合は、原料Aを15〜35質量部、好ましくは25〜35質量部、原料Bを25〜40質量部、好ましくは30〜40質量部、原料Cを25〜60質量部、好ましくは30〜40質量部とすると良い。
【0017】
好ましい混合方法としては、サイロに投入してエアー混合する方法、ロッキングブレンダーによる混合方法、その他の混合装置を用いて行うことができる。
粉砕は、前記原料A、原料B、原料Cを混合後、粉砕機にて粉砕する方法、又は粉砕機に直接原料A、B、Cを所定の割合で投入し、混合と粉砕を同時に行う方法等などあり、どの方法でも期待した効果が得られる。
【0018】
粉砕には、ロータリーボールミル、振動ミル等一般的なセラミックス原料製造用の粉砕機を用いることができるが、酸化アルミニウムの二次粒子を構成している一次粒子まで粉砕することが必要なため、バッチ式のロータリーボールミルを用いることが好ましい。
【0019】
粉砕強度(R比×粉砕時間)は、バッチ式のロータリーボールミルの場合、30以上、好ましくは30〜50が必要である。粉砕強度が30より小さいと酸化アルミニウムの二次粒子が粉砕されないで凝集粒子が残存し、その結果得られた酸化アルミニウム粉体の特性を著しく阻害する。また、粉砕強度を50より大きくすると生産効率の点で不利益となる。ここで、粉砕強度とは、R比と粉砕時間(時間)の積であり、またR比とは、ミルに充填された粉砕メディア(アルミナボール等)の重量(kg)を、投入された酸化アルミニウムの重量(kg)で割った値をいう。
【0020】
原料A、原料B、原料Cをそれぞれ単独に粉砕し、その後混合しても所定の効果は得られない。本発明においては、平均一次粒子径の異なる凝集した酸化アルミニウム(二次粒)を混合後、又は混合しながらボールミル等によって粉砕することにより、最密充填した酸化アルミニウム粉体を得ることができる。また、さらにはこの方法で得られた酸化アルミニウム粉体は、水性溶媒に分散する際、低水分でスラリー化できる酸化アルミニウム粉体となる。
【0021】
最密充填できる理由については、以下のように考えられる。
酸化アルミニウムの粉砕粉は、約0.5μm〜約5μmの微粒子(「約」とは対象数字の±10%の範囲を意味する。)であるため、再凝集しやすく混合機程度の解砕力では単粒まで分散しない。従って、粉砕後の酸化アルミニウムを混合しても、粒子の配列が最密充填するような配列まで混合できない。凝集した酸化アルミニウムを混合後にボールミルで粉砕すると、単粒にほぐされながら粗粒子・中粒子・微粒子が均一に分散、すなわち最密充填する配列のままミクロ的に再凝集し、粉砕処理が進むに従い、最密充填する配置のままミクロな再凝集品が増加していく。粉砕が完了すると、粗粒子・中粒子・微粒子の単粒子がミクロ的にもマクロ的にも均一に分散、すなわち最密充填する配列になるためと考えられる。
【0022】
最密充填の尺度として、実施例に記載する加圧嵩密度の評価方法によるその値が2.50g/cm3以上の酸化アルミニウム粉体が得られる。
このように、加圧嵩密度が高くなることは勿論のこと、スリップキャスト成形を用いても、得られる成形体の密度は高くなり、大型のセラミックス体の製造に有利である。
【0023】
本発明の酸化アルミニウムは、最密充填しやすい酸化アルミニウム粉体のため、分散剤を溶かした水性溶媒中で容易にスラリー化できる。ここで用いる分散剤は、無機系分散剤でも有機系分散剤でもどちらでも良く、制限されず公知のものを使うことができる。また、本発明の分散液は、該分散剤の添加量には限定されないが、好ましくは最適な添加量で使用する。一般的に、添加量が多いと分散効果が得られない。
【0024】
本発明の酸化アルミニウム粉体に関するスラリー特性の評価は、例えば前記本発明の酸化アルミニウム粉体200gを、クエン酸2.0gとデモール(花王株式会社の登録商標、以下同じ)N(成分:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダ)4.0gを精製水600mlに溶かした分散液30mlに添加混合して、粘度により行うことができる。
【0025】
本発明の酸化アルミニウム粉体は、前記スラリーに調製した粘度として500cP以下を示すことができるものが好ましい。このような粘度特性を有する酸化アルミニウム粉体は、低水分(例えば、15%の水分)でスラリー化できる長所があり、耐火物の原料として用いた場合、著しい減水効果を発揮するものである。この効果は、樹脂に充填した際にも発現し、樹脂充填用フィラーとして使用すると、充填量を多くすることができる。このため、硬化樹脂の熱伝導率を良好にすることが期待できる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1〜7)
実施例1〜7は、原料Aとして、昭和電工(株)製の酸化アルミニウムAL−17−M(平均二次粒子径は55μmで、構成する平均一次粒子径は0.6μmのもの)、原料Bとして、昭和電工(株)製の酸化アルミニウムAL−17−H(平均二次粒子径は55μmで、構成する平均一次粒子径は2.1μmのもの)、そして原料Cとして、昭和電工(株)製の粗粒酸化アルミニウム(平均二次粒子径は90μmで、構成する平均一次粒子径は3.8μmのもの)を準備し、表1に記載の各配合で混合し、振動ミルにて粉砕強度(R比×粉砕時間)45で粉砕した。各粉砕粉について、加圧嵩密度及びスラリー粘度をそれぞれ測定した。但し、粉砕条件、加圧嵩密度及びスラリー粘度の測定条件を下記に示す。
【0028】
(粉砕条件)
振動ミル:川崎重工業(株)製SM0.6型の振動ミル
アルミナポット:1リットルのポット
10mmφアルミナボールの使用量:1.5kg
酸化アルミニウム原粉(全量)の使用量:0.2kg
【0029】
(加圧嵩密度の測定)
実施例1〜7で製造された充填性の優れた酸化アルミニウム粉体15gを、内径30mmφの金型に入れ、(株)東邦インターナショナル製の油圧成形機で1t/cm2で加圧後、三豊(株)製のダイヤルゲージを用い、高さを計測し、圧粉体の密度を算出した。
【0030】
(スラリー粘度の評価)
実施例1〜7で製造された充填性の優れた酸化アルミニウム粉体200gに、所定の分散剤30mlを添加し、充分混合した後、B型粘度計(60rpm)でスラリー粘度を測定した。所定の分散剤には、クエン酸2.0g、花王(株)製デモールN(成分:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダ)4.0gを600mlの精製水に溶かしたものを使用した。スラリー粘度の測定には、TOKIMEC社製のB型粘度計を使用して実施した。
【0031】
(比較例1〜3)
比較例1〜3は、実施例1〜7で得られたものと同等な酸化アルミニウム粉末を用い、表1に記載の配合で混合し、振動ミルにて粉砕強度45で粉砕した。実施例と同様の方法で加圧嵩密度及びスラリー粘度を測定した。
【0032】
(比較例4)
比較例4では、実施例1〜7で用いた3原料(原料A、原料B及び原料C)を各単独で振動ミルにて粉砕強度45で粉砕し、その後、原料Aの粉砕粉、原料Bの粉砕粉、原料Cの粉砕粉を前記順に30質量部:35質量部:35質量部の配合割合にて混合し、加圧嵩密度及びスラリー粘性を測定した。
【0033】
(比較例5)
比較例5では、原料A、原料B及び原料Cを表1の割合にて混合し、振動ミルにて粉砕強度25で粉砕し、加圧嵩密度及びスラリー粘性を測定した。
【0034】
(比較例6)
比較例6では、昭和電工(株)製の酸化アルミニウムA−45−1(二次粒子径60μm、一次粒子径1.5μm)を用い同様の測定を実施した。
【0035】
【表1】
Figure 0004514894
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、二次粒子径が10μm〜120μmであり、かつ一次粒子径が0.3μm〜1μm、1μm〜3μm、3μm〜6μmの範囲からなる3種類の酸化アルミニウムを、前記順に15〜35質量部、25〜40質量部、25〜60質量部混合し、粉砕することによって、その加圧嵩密度が2.50g/cm3以上であり、又はこの粉体を前記分散液に分散して得たスラリーの粘度が500cP以下を与える酸化アルミニウム粉体を得ることができる。この酸化アルミニウムは、定型耐火物、不定型耐火物等の原料、電子部品、機械部品等のセラミックス原料、樹脂充填材料に適している。
【0037】
特に、本発明では、耐火物用途の微粒成分として酸化アルミニウムを使用した時に著しい減水効果を有する。
また、本発明では、該酸化アルミニウム粉体を電子材料部品及び機械用部品等のセラミックス用原料として使用した時に得られる成形体の密度が高くなり、また樹脂にこれを充填した際、高充填化できる。

Claims (5)

  1. 酸化アルミニウムの二次粒子粉体の、平均1次粒子径が夫々0.3μm〜1μmの粉体A、1μm〜3μmの粉体B、3μm〜6μmの粉体Cを併せて混合し、該混合粉体100質量部あたりのこれらの混合比を15〜35質量部(粉体A)、25〜40質量部(粉体B)、25〜60質量部(粉体C)とし、該混合粉体を粉砕強度(R比×粉砕時間)30以上にして粉砕する酸化アルミニウム粉体の製造方法であって、粉砕後の粉末を1t/cm 2 で加圧した圧粉体の密度(加圧嵩密度)が、2.50g/cm 3 以上となることを特徴とする酸化アルミニウム粉体の製造方法
  2. 粉体A、粉体B、粉体Cの夫々の平均二次粒子が、独立に30μm〜120μmの範囲にある請求項1に記載の酸化アルミニウム粉体の製造方法
  3. 粉砕後の酸化アルミニウム粉体100質量部に、クエン酸2.0gとナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ソーダ4.0gを600mlの精製水に溶かした分散剤を15質量部添加したとき、その粘度が500cP以下の特性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化アルミニウム粉体の製造方法
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法によって得られた酸化アルミニウム粉体。
  5. 請求項4に記載の酸化アルミニウム粉体が分散されたスラリー。
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