JP4512746B2 - 金属微粒子分散複合体及びその製造方法 - Google Patents
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従来、ナノサイズ金属微粒子を作製する技術として各種の方法が知られている。たとえば、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが知られている。
また、微粒子(たん白質、酸化物、金属、ラテックス、ポリマー)を展開し、これを組織制御して構成する方法として、微粒子を平面に塗布する方法(スピンコート法など)や、微粒子を粉末として平面に散布する方法(噴霧法など)、分散媒から気液界面、液々界面に微粒子を析出する方法等が知られている。
しかし、これらはその製造方法から見ても、微粒子のサイズをコントロールすることは難しい技術である。このように、膜厚と均一性の制御が可能であり、微粒子のサイズを均一に作製する技術はこれまでに確立されていない。
1)真空成膜装置を使用して形成された透明又は不透明な膜中に、銀を主成分としランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ金属微粒子が分散していることを特徴とする金属微粒子分散複合体。
2)前記金属微粒子の直径が2〜20ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の金属微粒子分散複合体。
3)前記ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素が0.3〜5.0原子%含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の金属微粒子分散複合体。
4)真空成膜装置を使用して形成された透明または不透明な膜が、金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類の膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体。
5)金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなるターゲットと、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ銀を主成分とするターゲットを用いて、高周波スパッタリングにより、基板上に、前記金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなる透明又は不透明な膜中に、前記銀を主成分とする金属微粒子が分散した複合体を形成することを特徴とする金属微粒子分散複合体の製造方法。
6)前記成膜された透明又は不透明な膜中に分散した銀を主成分とする金属微粒子の直径が2〜20ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項5記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
7)前記銀を主成分とするターゲット中及び成膜された銀を主成分とする金属微粒子に、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素が、0.3〜5.0原子%含有していることを特徴とする請求項5又は6記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
8)金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなるターゲットと、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ銀を主成分とするターゲットがモザイクターゲットであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
9)前記高周波スパッタリングにおけるそれぞれのターゲットを蒸着源に替え、電子ビーム蒸着法による成膜法を使用して成膜することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
このスパッタリング法又は電子ビーム蒸着法を用いて成膜する際に発生する最も大きな問題は、銀の微粒子が成膜中に自己凝集することである。
本発明において、この銀微粒子の自己凝集を抑制する手法として、ランタノイド元素(例えばネオジウム等)又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を銀に添加することであり、これは本願発明の大きな特徴の一つである。
これらのランタノイド元素(例えばネオジウム等)又はビスマスから選択した添加元素は、成膜中における銀からなる微粒子の凝集を抑制し、金属微粒子サイズを均一化すると共にナノメーターサイズの粒子を均一に分散させる効果を有する。
前記銀を主成分とするターゲット中及び成膜された銀を主成分とする金属微粒子においては、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素が、0.3〜5.0原子%含有していることが望ましい。0.3原子%未満であると銀微粒子の凝集を抑制する効果が弱く、また5.0原子%を超えると銀の微粒子を形成するという初期の目的外となるので、0.3〜5.0原子%の範囲とすることが好ましいと言える。なお、ランタノイド元素又はビスマスの添加に特に問題がなければ、それ以上の添加も可能である。用途に応じて、その添加量を任意に変更できることは理解されるべきである。
当然ではあるが、電子ビーム蒸着法による成膜法を使用して成膜する場合には、前記高周波スパッタリングにおけるそれぞれのターゲットを蒸着源に替えることにより容易に達成できる。
このようにして得られた金属微粒子分散複合体は、例えば光の波長350nm〜450nmの範囲において、著しい光吸収スペクトルを有することが分かった。
このような優れた特性を持つ本発明の金属微粒子分散複合体は、プラズモン光境界条件を用いた分子センサー、バイオセンサー、微粒子応用発光素子・受光素子などの狭光学スペクトル化等への適用が可能である。
膜厚と均一性の制御が可能であり、微粒子のサイズを均一に作製する方法として、RFマグネトロンスパッタ法を用いた。一方のターゲットとしてSiO2ターゲットを作製し、さらにその上に他方のターゲット、すなわち凝集制御材としてネオジウム(Nd)を0.4at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタリングした。
この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
この場合の、SiO2ターゲットのサイズはφ76mmであり、銀合金チップは10mm×10mm角サイズのチップである。成膜雰囲気はアルゴン、成膜パワーは200Wを使用した。
図1の(b)は凝集制御材としてネオジウムを添加した銀合金チップを用いて作製した銀微粒子である。図1の(b)より、凝集制御材としてネオジウムを添加した銀微粒子の直径サイズは10nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が実現できることが確認できた。
図2に、本実施例1にて作製した銀微粒子の光学特性を示す。本実施例1にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、プラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が確認できた。
これにより、本発明はエレクトロニクス、バイオマテリアル、セラミック、金属材料等の諸野において新たな機能性材料の創製において、有用な金属微粒子分散複合体を提供することができる。
凝集制御材としてネオジウム(Nd)を0.7at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタ膜を形成した。成膜方法は実施例1と同様である。この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
実施例1と同様に、凝集制御材としてネオジウムを0.7at%添加した銀微粒子の直径サイズは10nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が得られた。
図2に、本実施例2にて作製した銀微粒子の光学特性を示す。本発明にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、プラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が確認できた。
凝集制御材としてネオジウム(Nd)を1.0at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタ膜を形成した。成膜方法は実施例1と同様である。この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
実施例1と同様に、凝集制御材としてネオジウムを1.0at%添加した銀微粒子の直径サイズは10nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が得られた。
本実施例3にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、図示しないが、実施例2と同様にプラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が分った。
凝集制御材としてネオジウム(Nd)を2.0at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタ膜を形成した。成膜方法は実施例1と同様である。この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
実施例1と同様に、凝集制御材としてネオジウムを2.0at%添加した銀微粒子の直径サイズは12nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が得られた。
本実施例3にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、図示しないが、実施例2と同様にプラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が分った。
凝集制御材としてネオジウム(Nd)を3.0at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタ膜を形成した。成膜方法は実施例1と同様である。この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
実施例1と同様に、凝集制御材としてネオジウムを3.0at%添加した銀微粒子の直径サイズは14nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が得られた。
本実施例3にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、図示しないが、実施例2と同様にプラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が分った。
凝集制御材としてネオジウム(Nd)を4.5at%添加した銀合金チップからなるターゲットを、SiO2ターゲットの上に載置してSiO2基板上にスパッタ膜を形成した。成膜方法は実施例1と同様である。この結果、基板上にSiO2スパッタ膜にAg-Nd合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
実施例1と同様に、凝集制御材としてネオジウムを4.5at%添加した銀微粒子の直径サイズは15nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が得られた。
本実施例3にて作製した銀微粒子は粒子サイズが極めて均一であるため、図示しないが、実施例2と同様にプラズモン光共鳴条件が均一になり、銀微粒子の光学スペクトルはより狭くなる事が分った。
本発明の実地例1と同様にNdをBiに変更して実験を行った。
実施例1と同様に作成法として、RFマグネトロンスパッタ法を用いた。また、一方のターゲットとしてSiO2ターゲットを作製し、さらにその上に凝集制御材としてビスマスを添加した銀合金チップ(ターゲット)を、SiO2ターゲットの上に載置し、SiO2基板上にスパッタリングした。
この結果、基板上にSiO2スパッタ膜中にAg-Bi合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。
この場合の、SiO2ターゲットのサイズはφ76mmであり、銀チップは10mm×10mm角サイズのチップである。成膜雰囲気はアルゴン、成膜パワーは200Wを使用した。
その結果、凝集制御材を用いない銀微粒子は、直径およそ5nm〜200nmのサイズをもつ極めて不均一な銀微粒子が構成された薄膜であるが、凝集制御材をとしてビスマスを添加した銀微粒子の直径サイズは15nm程度であり、極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が実現できることが確認できた。
さらに、本製造方法を用いて作製した薄膜の膜厚は、成膜時間に対して線形に膜厚が制御されるため、容易に膜厚制御が可能であり、成膜した薄膜の膜厚むらは3インチのサイズで、およそ5%以内であった。また、SiO2ターゲット以外にSiなどの他の材料を用いても同様のことが確認できた。
比較のために、銀単独のチップからなるターゲットを作製し、同様にSiO2ターゲットの上に載置し、SiO2基板上にスパッタリングした。
この結果、基板上にSiO2スパッタ膜中にAgの金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。他の条件は、実施例1と同様である。
図1の(a)に、凝集制御材を添加してない銀チップを用いて作製した銀微粒子の透過電子顕微鏡像を示す。この図1の(a)に示すように、凝集制御材を用いない銀微粒子は、直径およそ5nm〜200nmのサイズをもつ極めて不均一な銀微粒子を持つ薄膜となった。
実施例1のNdをランタノド元素でないあるMnに変更して実験を行った。成膜法としてRFマグネトロンスパッタ法を用いた。また、一方のターゲットとしてSiO2ターゲットを作製し、さらにその上に凝集制御材としてMnを添加した銀合金チップ(ターゲット)を、SiO2ターゲットの上に載置し、SiO2基板上にスパッタリングした。
この結果、基板上にSiO2スパッタ膜中にAg-Mn合金の金属微粒子が分散した複合体からなるスパッタ膜が形成された。この場合の、SiO2ターゲットのサイズはφ76mmであり、銀合金チップは10mm×10mm角サイズのチップである。成膜雰囲気はアルゴン、成膜パワーは200Wを使用した。
しかし、凝集制御材を用いない銀微粒子は、直径およそ5nm〜200nmのサイズをもつ極めて不均一な銀微粒子が構成された薄膜であるが、凝集制御材をとしてMnを添加した銀微粒子の直径サイズは5〜150nm30nm程度であり、均一分散効果は認められなかった。極めて均一な銀微粒子が構成された薄膜が実現できることが確認できた。
さらに、本製造方法を用いて作製した薄膜の膜厚は、成膜時間に対して線形に膜厚が制御されるため、容易に膜厚制御が可能であり、成膜した薄膜の膜厚むらは3インチのサイズで、およそ5%以内であった。また、SiO2ターゲット以外にSiなどの他の材料を用いても同様のことが確認できた。
本発明はエレクトロニクス、バイオマテリアル、セラミック、金属材料等の諸分野における新たな機能性材料の展開又は創成において有用である。特に、プラズモン境界条件を用いた分子センサーや微粒子応用発光素子・受光素子などの、狭光学スペクトル化等への適用が可能である。
Claims (9)
- 真空成膜装置を使用して形成された透明又は不透明な膜中に、銀を主成分としランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ金属微粒子が分散していることを特徴とする金属微粒子分散複合体。
- 前記金属微粒子の直径が2〜20ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の金属微粒子分散複合体。
- 前記ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素が0.3〜5.0原子%含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の金属微粒子分散複合体。
- 真空成膜装置を使用して形成された透明または不透明な膜が、金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類の膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体。
- 金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなるターゲットと、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ銀を主成分とするターゲットを用いて、高周波スパッタリングにより、基板上に、前記金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなる透明又は不透明な膜中に、前記銀を主成分とする金属微粒子が分散した複合体を形成することを特徴とする金属微粒子分散複合体の製造方法。
- 前記成膜された透明又は不透明な膜中に分散した銀を主成分とする金属微粒子の直径が、2〜20ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項5記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
- 前記銀を主成分とするターゲット中及び成膜された銀を主成分とする金属微粒子に、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素が、0.3〜5.0原子%含有していることを特徴とする請求項5又は6記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
- 金属酸化物若しくは窒化物、半導体酸化物若しくは半導体窒化物又は非金属酸化物若しくは非金属窒化物から選択した少なくとも1種類からなるターゲットと、ランタノイド元素又はビスマスから選択した少なくとも1種類の元素を含んだ銀を主成分とするターゲットがモザイクターゲットであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
- 前記高周波スパッタリングにおけるそれぞれのターゲットを蒸着源に替え、電子ビーム蒸着法による成膜法を使用して成膜することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
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