本発明は、発熱抵抗式空気流量測定装置の最大の課題である内燃機関のシステムコストの低減を達成するために、回路部と副流路部を一体化したモジュールに発熱抵抗式空気流量測定装置のほとんどの機能を持たせ、そのモジュールをひとつの製品として取り扱えるようにしたものである。また、これを真に実用化可能とするために、小形,軽量化,環境変化や取付ばらつきによる計測精度悪化の低減を図り、さらに取り扱い性の向上を図ったものである。
内燃機関のシステムコストを低減するために、発熱抵抗式空気流量測定装置のコスト低減と他の吸気系部品との一体化によるシステムの部品点数の削減を図っている。まず、回路部と副流路部を一体化したモジュールとすることによって、比較的コストの高い流量計ボディを単純管路である主流路と主流路の壁面に設けた穴と回路の固定面で構成し、大幅なコスト低減を可能とした。また、副流路を構成する部品の形状も単純化及び小型化し、回路部との一体化も容易とし、回路部と副流路部を結合する部品の一体化を図り空気流量測定装置のコスト低減を達成した。さらに、流量計ボディの形状が単純化されたため、流量計ボディを別部材で作成せず他の吸気系部品と一体に形成することを可能とし、システムの部品点数を削減した。また、主流路の設定される位置や主流路の大きさが変わっても標準化したモジュールを適用可能としている。
小形・軽量化のためには、副流路をその機能を損なうことなく、副流路形状の単純化,曲がり流路による通路全長の維持,感温抵抗体の副流路の直角曲がり部への配置,副流路の主流方向に垂直な第2通路を主流方向より主流と垂直な方向が長い断面形状とすることなどで副流路の主流方向長さを低減し、副流路の主流方向に垂直な第2通路も短く抑えて副流路を構成する部材を小型・軽量化するとともに、主流路中の副流路構成部材の占める割合を小さくし、副流路形状も圧力損失を生じにくくすることで主流路の断面積を大きくせずにすむ構造として主流路の小型・軽量化を可能としている。また、副流路を挿入するための主流路壁面の穴は、副流路を構成する部材の幅と長さの比を大きくしないようにして径の小さい円形とすることを可能として、挿入穴の形成を容易化し、回路の小型化に対応できるようにした。
環境変化への対応としては、主流路内の空気の流れが吸気系の位置によって変化することへの対応と、空気流量測定装置の置かれる位置による温度変化への対応を図っている。主流路中に脈動流が生じることによる計測誤差に対しては、副流路をL字形の曲がり流路とし、主流方向に平行な第1通路と垂直な第2通路の長さの比を最適化しており、逆流の発生に対しては、副流路の出口開口面を主流方向と平行な面に形成し、出口部の上流にひさし状の突起を設けている。主流路の偏流による計測誤差に対しては、副流路の入口開口面を受皿状とし、出口上流に傾斜面を設けるとともに、主流路中の副流路の出入口の配置を最適化している。主流路の乱流,旋回流に対しては、副流路の全長を十分長くし、第1通路の断面積に対して第2通路の断面積を大きくすることを可能とし、出口上流に両側に壁のある傾斜面を設けている。温度変化に対しては、吸入空気の温度を計測する感温抵抗体をベース部材から離れた位置で副流路の直角曲がり部の内側コーナの近くに固定し、発熱抵抗体は感温抵抗体よりもベース部材に近い位置に固定している。また、発熱抵抗体の固定位置による計測精度の悪化を防止するために、副流路の入口開口部の受皿状の底面と第1通路が作るコーナから発熱抵抗体の間隔を適正化している。
モジュールの主流路への取付ばらつきに対しては、副流路を構成する部材の副流路部のベース部材と平行な断面の外形を長方形あるいは台形等副流路の入口開口面のある主流方向と垂直な面と主流方向と平行な面が設けられる形状とすること、副流路の出口開口面を主流方向と平行な面に形成し、入口開口面の出口方向を堀り込んだ受皿状としていることにより対応している。
回路部と副流路部を一体化したモジュールとし、そのモジュールに発熱抵抗式空気流量測定装置のほとんどの機能を持たせたことにより、モジュールはひとつの製品として取り扱えるものとなった。これにより、内燃機関を取りまとめる企業、例えば自動車メーカは、安価な発熱抵抗式空気流量測定装置を得ることができ、また、吸気系の自由なレイアウトが可能となる。
モジュールは、電子回路を回路ハウジング及びカバーにより保護し、発熱抵抗体及び感温抵抗体は副流路構成部材により保護されているため、取り扱いによる事故を防止している。
発熱抵抗体を第1通路中に、感温抵抗体を直角曲がり部に配置するのは、第1通路の長さを短く抑えることを可能とするためで、両抵抗体を近接して配置することによる熱的流れ的干渉を防止し、発熱抵抗体は流れの安定化を図りやすい第1通路に配置することで計測誤差を低減している。第1通路の長さを短くして副流路構成部材の主流と変更な長さを短くできると、その長さを、副流路構成部材の幅が空気流量計の圧力損失の増加が問題とならない程度に小さくても2倍以内とすることができるため、主流路の壁面に設ける副流路を差し込むための挿入穴を比較的小さな円形とできるため、挿入穴の形成が容易となり、主流路形成の複雑化,大型化を防止できる。また、挿入穴はベース部材に覆いかくされる大きさにできるため、回路部のさらなる小型化に対する余裕を確保でき、ベース部材の底面と主流路の外壁の回路部固定面の間を、Oリング,パッキン,ガスケットなどでシールし、挿入穴部から主流路内外の空気もれを防止でき、空気もれによる計測誤差を防止できる。また、挿入穴を円形としているのでOリングによる径シールも可能である。
副流路の入口開口面の出口方向を堀り下げた受皿状にしているのは、主流路の広範囲の部分から副流路に空気を取り込むようにし、主流路中に偏流が生じた時の計測誤差を低減することが第1の目的である。この偏流時の計測誤差の低減作用は、副流路出口上流の傾斜面にもある。偏流により、出口上流の流速が速くなると傾斜面の下流に生じるはく離域が広がり、副流路出口の吸い出し効果が大きくなって副流路に流入する空気流量が増加し、反対に出口上流の流速が遅くなると出口のはく離域が小さくなり副流路に流入する空気流量が減少するため、副流路の入口開口面の上流流速の変化による副流路流入流量の影響度とうまく相殺し合う位置関係に出入口を設置すると偏流による計測誤差が低減できる。この作用が最も有効となるのは、第1通路を主流路の中心から偏心した位置に設け、主流路の中心付近を含む範囲に受皿状の部分を広げ、副流路の出口を主流路の中心に対して入口の反対部分に設けた時である。また、この受皿状の入口開口部は、回路固定面や主流路壁面の挿入穴が傾いたことによる副流路構成部材の上下流方向の傾きばらつきによる計測誤差の低減効果がある。副流路の出口方向が主流路の上流方向に傾くと、出口開口面は主流路の上流側から見えるようになる方向に傾くため、出口開口面に若干の動圧が生じる、あるいは負圧が減少するため、副流路の出入口間の圧力差が小さくなり副流路へ流入する空気流量が減少し、マイナスの計測誤差を生じるように作用する。一方、受皿状の開口面は第1通路が下流になる方向に傾くため、主流路の中心付近の流れをより副流路へ導きやすくするとともに、第1通路中に生じるはく離域が大きくなり発熱抵抗体付近の流速を速めるためプラス側の計測誤差を生じるように作用する。この両作用は互いに相殺し合うため、上記の副流路構成部材の傾きばらつきによる計測誤差を低減できる。反対に出口が下流側になるように傾くと、出口部は負圧が大きくなり、入口部は副流路に空気の取り入れにくい方向に傾くとともに第1通路内のはく離域を小さくするため、出入口の作用が相殺し合って計測誤差を低減できる。
感温抵抗体を第1通路の中心線よりベース部材から離れる位置に固定するのは、感温抵抗体を直角曲がり部の中で最も流速の速い内側コーナ近くに位置させ、吸気温度の検出精度を向上させるとともに、吸入空気温度と空気流量測定装置の周囲の温度に差が生じるような温度環境下において、ターミナルやホルダを介しての熱伝導により、例えば周囲温度が高い時、周囲からホルダ及びターミナルを伝わった熱により感温抵抗体の温度が吸気温度より高くなるような吸気温度検出誤差を減少する作用を持たせるためである。感温抵抗体が吸気温度より高く誤計測するとプラス側の流量計測誤差を生じる。一方、発熱抵抗体は、周囲温度が高い環境下ではターミナル及びホルダへの熱伝導による放熱量が減少するためマイナス側の流量計測誤差を生じるように作用する。従って、両抵抗体への影響度を等しくすれば吸気温度と周囲温度が異なる環境での計測誤差を低減できる。実際には、両抵抗体の温度の違いにより、熱伝導の影響度及び空気への熱伝達による影響度が異なるため、単純に発熱抵抗体と感温抵抗体のターミナル及びホルダの熱抵抗を等しくしても不十分であり、感温抵抗体側は熱抵抗を大きくし、発熱抵抗体側は感温抵抗体側より熱抵抗を小さくすると良い。感温抵抗体をベース部材より離れた位置に固定し、発熱抵抗体を感温抵抗体よりベース部材に近づけて固定することにより、上記の温度環境下での計測誤差を低減するための両抵抗体の適切な熱的バランスを容易に得ることができる。
発熱抵抗体の第1通路内の配置位置は、第1通路内の主流内、すなわち流速が速く安定した流れの中に配置する必要がある。従って、上記のような温度環境を考慮した発熱抵抗体の配置に際しても、感温抵抗体との位置関係のみでなく第1通路中の位置に対しても配慮しなければならない。単純円管通路であれば主流はその中心付近となるが、受皿状の開口面を持つ直角曲がり通路での第1通路中の主流の位置を決定する要因として、受皿状入口開口面の底面と第1通路によって形成される第1のコーナにより生じるはく離流により主流を管路中心よりもベース部材方向に動かす作用と、直角曲がり部で内側コーナ(第2のコーナ)近くの流速が速くなることにより主流を管路中心よりもベース部材から離れる方向に動かす作用がある。すなわち、前記第1のコーナと第2のコーナの位置関係が第1通路内の主流の位置に影響し、両コーナを結ぶ壁面である第1通路のベース部材から最も離れた内壁と発熱抵抗体との間隔を適切にとれば、発熱抵抗体を第1通路の主流中に配置することができる。一般的な副流路の大きさでは、第1通路のベース部材から最も離れた内壁から上記第1のコーナと第2のコーナの間隔の1/2〜1倍ベース部材方向に離れた部分が第1通路の主流の範囲となる。
以上のように、本発明の副流路部の構成には、環境変化や取付ばらつき及び装着性に対する多くの機能を持たせているが、副流路構成部材は、複数の部品を組み合わせる必要が無く、ひとつのプラスチック成形品として形成可能な単純な形状を維持している。従って、モジュール自体のコストを安く抑えることを可能としている。また、主流路の形状を単純化できたこと、モジュールがひとつの製品として取り扱うことが可能な機能,構造となっていること、環境変化や取付ばらつきにも対応できること等から、他の吸気系部品に主流路を一体化することが可能となり、また、モジュールの標準化も可能なことから内燃機関のシステムコストの低減も達成できる。さらに、モジュールは、回路部を主流路外壁に取り付けるだけで主流路に固定可能としているので装着性が良く、着脱可能に固定することも容易である。着脱可能な固定とすれば、市場での故障等への対応もモジュール部のみを交換することで容易に対応できる。
発熱抵抗式空気流量測定装置としてのほとんどの機能をモジュールに持たせることにより、モジュールを1つの製品として扱え、例えば、エアクリーナの一部や、吸気ダクトの一部等にモジュールを取り付けることにより、発熱抵抗式空気流量測定装置としての機能を十分に果すことができさらに、1種類のモジュールを各エンジンに流用できるためマッチング等が容易となり、内燃機関のシステムコストの低減を達成することが可能となる。
また、小形,軽量化,環境変化や取付ばらつきによる計測精度悪化の低減が可能となる。
以下、本発明の実施例を図3〜図14により説明する。
図1は参考例の一実施例の横断面図であり、図2はその上流側(左側)から見た外観図である。
ベース部材7の上面には、電子回路8及び回路ハウジング9が固定され、外部機器と電気的に接続するためのコネクタ11は回路ハウジング9に一体化され、回路ハウジング9の上面はカバー10によって覆われている。電子回路8と電気的に接続しているターミナル13はベース部材7の下面方向に引き出され、発熱抵抗体1と感温抵抗体2がターミナル13と電気的に接続されて固定されている。副流路3は、ベース部材7と垂直な面に開口する入口開口面301と、入口開口面からベース部材と平行に延びる第1通路302と、ベース部材と垂直な方向に延びる第1通路の約2倍の長さを有する第2通路304と、ベース部材と垂直な面に開口する出口開口面305及び第1通路302と第2通路304の交点部分にあたる直角曲がり部303によって構成されるL字形の流路であり、発熱抵抗体1が第1通路302内に、感温抵抗体2が直角曲がり部303内に位置するように、副流路構成部材4がベース部材7に固定される。上記によって、発熱抵抗式空気流量測定装置の回路部と副流路部を一体化したモジュールが構成される。
一方、主流路5を構成する流量計ボディ6の壁面には、副流路構成部材4を差し込むための挿入穴14及びベース部材7を取り付ける取付固定面15が設けられている。この流量計ボディ6に、副流路3の第1通路302が主流路5の流れ方向17と平行になるように副流路構成部材4を挿入穴14から主流路5内に差し込み、挿入穴14の周囲がシールされるように取付固定面15とベース部材7の底面の間にゴムパッキン16をはさんでベース部材7が主流路外壁にネジ18により固定されている。
上記実施例に対して、さらに種々の環境下における計測精度の悪化を低減する構成及び副流路構成部材とベース部材の固定法を具体化した本発明の一実施例の横断面図を図3に、その上流側(左側)から見た外観図を図4に示す。
ターミナル13がホルダ19の内部を貫通するようにターミナル13をホルダ19と一体化し、ベース部材7の穴部を通してベース部材7とホルダ19が固定される。ここで、ターミナル13とホルダ19及びベース部材7の種々の固定法を挙げると、ターミナル13及びベース部材7が金属製でホルダ19がプラスチック製で、ホルダ19の成形時にターミナル13とベース部材7をインサート成形することにより3者を一体化する方法,ターミナル13とホルダ19をインサート成形しベース部材7と接着等により固定する方法、あるいは、図3では別部材として示しているが、ベース部材7とホルダ19をひとつのプラスチック成形品としてターミナル13をインサート成形する方法、及び、最も部品点数を少なくするために、回路ハウジング9とベース部材7とホルダ19をひとつのプラスチック成形品としてターミナル13をインサート成形する方法等がある。電子回路8は、ベース部材7あるいはホルダ19の上面に固定され、ターミナル13とワイヤ等の導電性部材22を介して電気的に接続される。また、回路ハウジング9もベース部材7の上面に固定され、回路ハウジング9の上面はカバー10を固定することによって覆われる。
一方、ターミナル13の電子回路8の反対端部には、発熱抵抗体1及び感温抵抗体2が電気的に接続固定される。本実施例では、感温抵抗体2を副流路3の直角曲がり部303の内部でその内側コーナ近くに位置するように固定し、発熱抵抗体1は副流路3の第1通路302内で感温抵抗体2よりもベース部材7に近い位置になるように固定して、温度変化の激しい環境においても計測誤差を低減できる構成としている。
副流路構成部材4には、前記参考例の実施例と同様に入口開口面301,第1通路302,直角曲がり部303,第2通路304,出口開口面305から構成されるL字形の流路に加えて、副流路3内に取り込む空気を広範囲、特に主流路5の中心付近から導くことを目的とした周囲に壁を残して堀り込んだ受皿状入口306,出口部の流れを安定化することを目的とした両側に壁のある傾斜面307とその傾斜面の先端を出口開口面305より下方に出張らせた出口庇308、及び、ホルダ19を挿入する穴401とホルダ19との接合面402が設けられている。また、副流路3の第1通路302は、発熱抵抗体1の固定位置を温度影響を優先して第1通路302の中心よりもベース部材7に近付く方向として、第1通路302の流れと垂直な断面中で流速が比較的速く流れの安定した範囲を発熱抵抗体1の固定部に持ってくるために、半円形と長方形を合わせた断面形状とし、受皿状入口306の底面と第1通路302の作るコーナと直角曲がり部303の内側コーナの間隔に対して前記両コーナをつなぐ第1通路302の内壁と発熱抵抗体1の間隔が1/2から1(同間隔)となるようにしている。さらに、第2通路304と平行な肉盗み穴403を設け、副流路構成部材4を均肉化しプラスチック成形のひけによる形状変化を防止するとともに、材料費及び重量を低減している。
この副流路構成部材4は、ホルダ挿入穴401にホルダ19を差し込み、接合面402でホルダ19と接着固定される。ここで、ホルダ19に設けた段差と副流路構成部材の接合面402により溝部404が形成される。この溝部404はOリング20の装着溝であり、Oリング20により主流路壁面の挿入穴14がシールされる構成となっている。上記により、回路部と副流路部及び挿入穴シール用のOリングが一体化したモジュールが構成される。
これを前記参考例の実施例と同様に流量計ボディ6に固定することにより、発熱抵抗式空気流量測定装置が完成される。本実施例では挿入穴シール用のOリングがモジュールに装着されているため、ゴムパッキンは不要である。本実施例では、回路ハウジング9をベース部材7とともにネジ18にて固定し回路ハウジングの固定強度を増加したものを示しており、また、流量計ボディ6の主流路5の入口面に整流格子21を装着し、さらに計測精度を改善したものを示している。
図5は本発明の一実施例で示した発熱抵抗式空気流量測定装置の回路部と副流路部を一体化したモジュールの横断面図で、図6はその下方(出口方向)から見た外観図である。
副流路構成部材4のベース部材7と平行な断面の外形は、ホルダ19の挿入部が円形で、副流路部が第1通路の流れ方向と垂直な辺の長さに対して第1通路の流れ方向と平行な辺の長さが1〜2倍になっている長方形としている。また、ホルダ19の主流路壁面の挿入穴14に差し込まれる部分の外形も円形としており、その直径を副流路部の長方形断面の対角線の長さとほぼ等しくしているため、主流路壁面に設ける挿入穴を比較的小さな円形とすることができる。さらに、副流路の入口開口面301の第2通路304の流れ方向と垂直な開口幅は、前記副流路部の長方形断面の第1通路302と平行な辺の長さの約1/2としており、第2通路304の断面形状は、第1通路302と平行な辺より垂直な辺の方が長い長方形としている。
図7及び図8は、図6と同様に図5の下方から見た外観図である。図7は、ホルダ19の主流路壁面の挿入穴14に差し込まれる部分のベース部材7と平行な断面の外形は図6と同じ直径の円形とし、副流路の第2通路304の形状も図6と等しくして、副流路構成部材4の副流路部のベース部材7と平行な断面の外形を台形と長方形を組み合わせた形状としたものである。図8は、さらに第2通路の下流側底面及び副流路部の断面外形の下流側底面を円弧状としたものである。
図9はエンジンの吸入空気量をコントロールするバルブ23を有するスロットルボディ24に図5に示したモジュールを挿入して成る発熱抵抗式空気流量測定装置を示したものである。流量計測部はバルブ上流に配置しており、空気の流れは図示左側から右側へ流れる。副空気通路を持つスロットルボディ一体形発熱抵抗式空気流量計は、既に製品化されているが、副空気通路部材がスロットルボディと一体で構成されているか、又は、モジュールの回路を覆うハウジング部材がスロットルボディと一体で構成されておりスロットルボディの構造がかなり複雑化してしまう。これに対し、図9に示す本発明の実施例によればハウジング部材及び副空気通路部材がモジュールと一体化されているため、スロットルボディの構造を簡素化することが可能となる。また、スロットルバルブを持たない吸気系(例えばディーゼル車)ではモジュールを直接インテークマニホールドへ装着することも可能である。
図10は、エンジンルーム内に配置されるエアクリーナの一部に図5に示したモジュールを取り付けた実施例を示したものである。エアクリーナは新規空気を取込むための導入ダクト25を有する上流側ケース部材26と吸気ダクト30とエアクリーナを接続するための接続ダクト28を有する下流側ケース部材27で空気中のダストを除去するためのフィルタ29をはさみ込んで固定する構造である。当然ではあるが空気の流れは図示矢印の様に流れ、接続ダクト28にはフィルタ29によりダストが除去されたクリーンな空気が流れる。ここで、接続ダクト28の一部に発熱抵抗式空気流量測定装置の副空気通路部を挿入するための挿入穴14があいており、これをネジ等を使って接続ダクト28とモジュールとを機械的に固定する。これにより、前記した主空気通路を構成するボディの代りに接続ダクト28の様なエアクリーナの一部分を使って主空気通路を構成することが可能となりボディを必要としないモジュール単体での安価な発熱抵抗式空気流量測定装置を提供することが可能となる。
図11に示す例は基本的には図10と同様にエアクリーナの一部に図5に示すモジュールを取り付けた実施例を示したものである。図10では下流側ケース部材27の外側に設けた接続ダクト28の一部に発熱抵抗式空気流量測定装置のモジュール部を取り付けたが、図11では、下流側ケース部材27の内側にダクト31が設けられており、ダクト31の一部に挿入穴14を設けモジュールを取り付けた例を示したものである。尚、図にはダクト31の先端部分は空気の流れを整流化するためにベルマウス状にしている。本構造の様に発熱抵抗式空気流量測定装置のモジュールをエアクリーナ内部に入れることにより図10に示した接続ダクト28に相当する部分の長さを短くできるため、吸気系のコンパクト化を図ることが可能である。尚図10に示した接続ダクト28及び図11に示したダクト31は図示ではエアクリーナ下流側ケース部材27と一体で記述したが各々別体で製作し後から機械的強度を保つ様に固定してもかまわない。
図12は別の実施例を示す発熱抵抗式空気流量測定装置の横断面であり、図13はその上流側(左側)から見た図である。図3〜図4との相違は主空気通路を構成するボディ32の内径を大きくしたものである。ボディ内径を大きくすると単純に考えれば、副空気通路の内、流量を計測するための発熱抵抗体1が配置される第1通路302及び入口開口面301がボディ壁面近くに片寄ってしまう。この場合、仮にボディ32の上流側の形状(エアクリーナ及びダクト形状)によりボディ32内において空気の流れに偏流が生じた場合、壁面に近い場所においてはその偏流によって発熱抵抗式空気流量測定装置の計測誤差を生じてしまう。通常管内を流れる流速分布は管の中心部分が最も流速が速く、壁面に近づくにつれておそくなる様に放物線に近い分布を示す。すなわち管内の中心では平均流速より流速は速く壁面ではおそくなり、流速の平均値は中心よりズレた位置で計測することが望まれる。このため、本発明品においては副空気通路の出入口を管中心からズラして平均流速の値を副空気通路に取込む様にしている(副空気通路内を流れる流速値を決めるのは出入口の圧力差であり出入口共に管中心よりズラす必要が有る)。しかし、偏流の大部分はこの最も流速の速い位置が中心位置からズレてしまい、中心に対し一方が速い流速の値を示し、他方はおそい流速の値を示してしまう。このため速い流速分布の位置に副空気通路の入口開口面301が有ると、平均流速よりプラス側の計測誤差が生じ、逆におそい位置に有るとマイナス側の計測誤差を生じる。
この様にボディ32の内径を大きくした場合においても偏流による計測誤差をおさえるためにボディ32にベース部材7を取り付ける取付面33を図示の様にボディ32外径より掘下げて、かつ、ボディ32内壁がモジュール取付部において異径となる様な形状とし、ボディ32内径の中心に対し出入口までの各々の距離がほぼ同じ様になる様な構造としたものである。尚この場合、ボディ32内壁がモジュール取付部において内壁が凸となる様になるため、その部分の上下流は空気の流れを極力乱さない様に図示34,35の様にゆるやかに傾斜させることが望まれる。
最後に、図14を使い電子燃料噴射方式の内燃機関に本発明品を適用した一実施例を示す。
エアクリーナ100から吸入された吸入空気101は、発熱抵抗式空気流量測定装置102のボディ,吸気ダクト103,スロットルボディ104及び燃料が供給されるインジェクタ105を備えたマニホールド106を経て、エンジンシリンダ107に吸入される。一方エンジンシリンダで発生したガス108は排気マニホールド109を経て排出される。
発熱抵抗式空気流量計の回路モジュール110から出力される空気流量信号,スロットル角度センサ111から出力されるスロットルバルブ開度信号,排気マニホールド109に設けられた酸素濃度計112から出力される酸素濃度信号及びエンジン回転速度計113から出力される回転速度信号を入力するコントロールユニット114はこれらの信号を演算して最適な燃料噴射量とアイドルエアコントロールバルブ開度を求め、その値を前記インジェクタ105及びアイドルエアコントロールバルブ115を制御する。
1…発熱抵抗体、2…感温抵抗体、3…副流路、4…副流路構成部材、5…主流路、6…流量計ボディ、7…ベース部材、8…電子回路、9…回路ハウジング、10…カバー、11…コネクタ、13…ターミナル、14…挿入穴、15…取付固定面、16…ゴムパッキン、17…流れ方向、18…ネジ、19…ホルダ、20…Oリング、21…整流格子、22…導電性部材、23…バルブ、24,104…スロットルボディ、25…導入ダクト、26…上流側ケース部材、27…下流側ケース部材、28…接続ダクト、29…フィルタ、30…吸気ダクト、31…ダクト、32…ボディ、33…取付面、100…エアクリーナ、101…吸入空気、102…発熱抵抗式空気流量測定装置、103…吸気ダクト、105…インジェクタ、106…マニホールド、107…エンジンシリンダ、108…ガス、109…排気マニホールド、110…回路モジュール、111…スロットル角度センサ、112…酸素濃度計、113…回転速度計、114…コントロールユニット、115…アイドルエアコントロールバルブ、301…入口開口面、302…第1通路、303…直角曲がり部、304…第2通路、305…出口開口面、306…受皿状入口、307…傾斜面、308…出口庇、401…ホルダ挿入穴、402…接合面、403…肉盗み穴、404…溝部。