JP4511695B2 - 探傷方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、探傷方法および装置に係り、特に被測定物に生じた欠陥(クラック)を発見するのに好適な探傷方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、対象部材の内部に生じた欠陥の有無を調査する探傷方法が知られている。図6は、測定対象物の内部に欠陥が存在するかを検査する方法の説明図である。同図に示すような方法では、送信子1を用いコンクリート壁2の壁面から超音波を壁内に送出する。そして壁内に送出された超音波の反射波を壁面上方からレーザドップラ3を用いて測定し、その測定波形から遅れ時間や波形強さを求め、コンクリート壁2の内部に欠陥が生じているかの判定を行うようにしている。
そしてこのような探傷方法は、上述したようなコンクリート壁2だけでなく、半導体素子を製造するための半導体ウェハの検査にも用いられる。
【0003】
図7は、半導体ウェハに欠陥が存在するかを検査する方法の説明図である。同図に示すような方法では、加振手段としてレーザ照射装置4を用いる。そして当該レーザ照射装置4を稼働させ、絞り込みによってエネルギを高めたレーザ光を半導体ウェハ5の表面に1パルスだけ照射する。このようにレーザ光を半導体ウェハの表面に照射すると、前記レーザ光の持つエネルギによって、レーザが照射された半導体ウェハ5の表面が加熱される。そしてこの加熱によって半導体ウェハ5を構成するシリコンが瞬時に膨張収縮することで、半導体ウェハ5自体に弾性波が生じる。これによって生じた弾性波をレーザドップラを用いて測定し、その測定波形から遅れ時間や波形強さを求め、半導体ウェハ5に欠陥が生じているかの判断を行うようにしている。
【0004】
このように測定対象物に何らかの衝撃を与え、その反射波を解析することで前記測定対象物の欠陥を探す方法(いわゆる反射法)は、上述したように種々の探傷用として用いられている。なお反射波の検出は、接触式あるいは非接触式に限定されることもなく、レーザドップラ以外にも加速度ピックアップ等を用いるようにしてもよい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上述した探傷方法は、下記の点で問題があった。
すなわち同方法では、反射波は測定対象物全体から出され、さらに複数回反射されるので、当該反射波の数値が正常な範囲にあるのか、あるいは範囲外であるのかを判別し、壁内に欠陥が存在するかの判定はできるものの、その欠陥が壁面のどこに存在しているのか特定することが難しいという問題点があった。
【0006】
ところで測定対象物における任意の場所を特定する方法として、地震探査が知られている。これは測定対象物上に3つの計測点を設置し、この範囲内で発生した震源の位置を求める方法であるが、この場合地中を進む波の伝達速度があらかじめ計算用として解っていなければならない。このため同方法を適用するためには、その都度測定対象物における波の伝達速度を求めなくてはならず、測定対象物の材質が種々変更する場合には不向きであった。
【0007】
なおレーザドップラを用いた対象表面の振動を検出する場合に、振動を生じさせる手段として対象表面に強力なレーザを照射する方法もあるが、もっと簡単に何らかの物質で打撃すればよい。非接触式のレーザドップラに相応しい打撃法として、鋼球(パチンコ玉)をぶつけるなどがあるが、被計測対象がトンネル内面などの大型建造物のコンクリート壁の場合、回収して再利用することが困難である。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に着目し、測定対象物の材質(音の伝達速度)に依存することなく、前記測定対象物における欠陥の位置を特定することのできる探傷方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、測定対象物に欠陥が無く密の状態であるならば、衝撃を加えた点から計測点までその表面を伝達する波は一様に伝搬するという知見に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち本発明に係る探査方法は、被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を与え、前記被測定物の表面に複数設定した計測点を通過する弾性波の表面上下動を検出し、前記計測点におけるこれら表面上下動の変位が前記加振点を中心とした一様な伝搬であるかを判断基準として探傷判別を行うよう構成した。
【0011】
また他の本発明に係る探査方法は、被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を与え、前記被測定物の表面に設定した計測点を通過する弾性波の表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分を求めるとともに、前記被測定物の表面に設定した平面座標軸に沿って前記弾性波の空間微分を求め、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式の解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなすよう構成した。
【0012】
またさらに具体的には、被測定物の表面に3つの計測点を設定した後、前記被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を与え、任意の計測点を通過する弾性波の表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分を求めるとともに、前記表面上下動と他の計測点における表面上下動との差により前記弾性波の空間微分を求め、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式の解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなすよう構成した。
ここで前記衝撃は、前記被測定物の表面に水玉をぶつけることにより与えるようにしてもよい。
【0013】
さらに前記弾性波の表面上下動を複数の周波数帯域に分割し、前記被測定物の傷の大きさに応じて、前記表面上下動の前記周波数帯域を適時選択することが望ましい。
【0014】
そして本発明に係る探傷装置は、被測定物の表面に衝撃を加える加振手段と、当該加振手段の衝撃にて生じる弾性波の表面上下動を検知する計測手段とを有し、当該計測手段に前記表面上下動の時間微分をなす第1演算部を設けるとともに、前記被測定物の表面に設定した平面座標軸に沿って前記弾性波の空間微分をなす第2演算部を設け、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式を解き解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなす解析判定部を設けるよう構成した。
【0015】
ここで前記加振手段は、前記被測定物の表面に水玉をぶつける噴水装置としてもよい。
さらに前記計測手段にバンドパスフィルタを取り付けることが望ましい。
【0016】
ここで本発明の計測原理を以下に示す。
図8は、被測定物の表面に設定した加振点と計測点および平面座標軸を示す説明図である。
【0017】
同図に示すようにまず被測定物6の表面に、加振点7と、3つの計測点8A、8B、8Cを設定し、さらに計測点8Aを原点とした平面座標系を被測定物の表面に設定する。そして座標系等の設定後、加振点7に衝撃を加えると、当該加振点7から被測定物6に沿って等法的に進行する縦方向の波が発生していく。
【0018】
ここで平面座標系の軸心方向の変位をUxおよびUyで表し、鉛直方向の変位をUzで表す。
【数式1】
とすると、ハンマ等を用いて加振点7に衝撃を加えた場合、計測点8Aでの被測定物6の法線方向の変動Uzは、
【0019】
【数式2】
で近似することができる。またこの数式2は、加振点7を中心に波紋が同心円状に広がっていく現象を式で表現したものである。また本数式2における時間微分は、次式のように表現される。
【0020】
【数式3】
【0021】
さらに各平面座標軸に沿った空間微分は、下記の2式のように表現される。
【数式4】
【数式5】
【0022】
そして以上の数式2〜数式5によって、加振点7から計測点8まで欠陥が無く均一な材質ならば、数式2〜数式5は、互いに線形従属の関係にあると言える。すなわち、
【数式6】
【数式7】
で示される。そして数式6および数式7における係数τx、τy、ξx、ξyは、下記の式で示される。
【0023】
【数式8】
【数式9】
【数式10】
【数式11】
【0024】
そしてこれらの係数τx、τy、ξx、ξyが観測信号により独立に計測することができれば、数式8〜数式11より、衝撃を加えた点の位置roおよび端数ベクトルkを得ることが出来る。
【0025】
ところで本発明では、リアルタイムで被測定物6の表面または、その内部に存在する欠陥の有無を検出するため、以下に示す手順で均質性の指標が導入された。まず下記に示すように短時間共分散を考える。
【数式12】
【数式13】
【数式14】
【0026】
そしてこれら数式12〜数式14を数式6および数式7に代入すると
【数式15】
【0027】
で示される関係が成立する。このとき係数τx、τy、ξx、ξyは一意に定まるためには共分散行列S12およびS22の行列式が零であってはならない。そこで以下の関係が成り立つ。
【数式16】
これはQ0が閾値Q0minより大きい場合、有意な信号が観測されたことを示す。そして閾値は非衝撃時の背景雑音レベルで決定される。すなわち
【0028】
【数式17】
Q1はS11、S22によって正規化されており、[0、1]の値をとる。Q1が1のとき被測定物6が均質であることを示す。閾値Q1minは1に近い値に実験的に固定することにより、欠陥の有無を判断する指標として用いることができる。ここで被測定物6に欠陥が無い場合、各係数は、
【数式18】
【数式19】
【数式20】
【数式21】
で求められる。また位相速度V、加振点7までの距離、そしてその方向余弦はそれぞれ、
【数式22】
【数式23】
【数式24】
【数式25】
で与えられる。
【0029】
【作用】
上記構成によれば、被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を加えると、当該衝撃によるエネルギは、その大半が被測定物の表面を伝わる波となる。そしてこの波は、被測定物に欠陥が存在しなければ加振点を中心に同心円状に伝搬する。一方、被測定物の前記複数の測定点間に欠陥が存在するならば前記波は、加振点を中心とした同心円状に伝搬せず、その波形は欠陥のところで歪んだ形態となって伝搬する。
【0030】
この様な現象をふまえて、計測点における表面上下動とこの時間微分を求めるとともに、被測定物の表面に設定した平面座標軸(直交座標でなくてもよい)に沿って表面上下動が変化する状態、すなわちそれぞれの座標軸に沿った微分(空間微分)を求める。
【0031】
そして計測点における表面上下動と、この時間微分、そして座標軸に沿った空間微分との間には、被測定物の前記複数の計測点との間に欠陥が存在しなければ、一定の関係(線形従属方程式)が成り立つ。このため被測定物に衝撃を与え、求められた要素から方程式を解くことができるならば、前記複数の計測点間には欠陥が存在しないという判断をすることができる。一方、求められた要素から方程式を解くことができなければ、前記複数の間に欠陥が存在すると判断することができる。
【0032】
さらに具体的には、座標軸に沿った空間微分を求めるには、被測定物の表面に3つの計測点を設定し、任意の計測点を平面座標軸の原点とするとともに他の2点をそれぞれの座標軸上になるよう設定する。こうして平面座標軸上に計測点を設定した後は、原点となる計測点の表面上下動と、他の計測点における表面上下動との差をとり弾性波の空間微分を求めるようにすればよい。このように座標軸上に配置した計測点間での差をとれば空間微分を得ることが出来るのである。
【0033】
また本発明では、平面座標軸上に計測点を配置するようにしたが、この形態に限定されることもなく、例えば平面四辺形となるよう計測点をそれぞれ配置し、一対の平行線分の空間微分をとり、これらの平均を求め、平行四辺形の重心に位置する計測点の空間微分となるようにしてもよい。このように一対の平行線分の空間微分をとり、これの平均化処理を行うようにすれば、より精度の高い空間微分を得ることができる。
【0034】
なお加振点において、被測定物の表面に水玉をぶつけることにより衝撃を与えることにより弾性波の表面上下動を生じさせるようにすれば、入手が非常に容易で、衝撃付与後の回収が不要とすることができる。
【0035】
また被測定物の表面上下動を採取する際、その周波数帯域を複数に分割し、表面上下動の周波数帯域を適時選択すれば、被測定物の傷の大きさに応じた探傷を行うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る探傷方法および装置に好適な具体的実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る探傷装置の構成を示すブロック図であり、図2は、同装置を鋼板における欠陥検出に適用した場合の状態説明図である。これらの図に示すように、本実施の形態に係る探傷装置10では、被測定物となる鋼板12に衝撃を加える加振手段14と、この加振手段14によって生じた衝撃を検知し種々演算をなす計測側16とで構成されている。
前記加振手段14は、外部からの信号によって鋼板12に対しその上方から鋼球15を落下させる構造となっている。
【0037】
一方、探傷装置10を構成する計測側16では、鋼板12における表面の上下動を観測する計測手段となるレーザドップラ18が3台程設けられている。そしてこれらレーザドップラ18は、鋼板12の平面に沿って平面座標軸20を構成するよう配置される(すなわち3台のレーザドップラ18が一直線状にならないよう配置される)。そしてこの平面座標軸20の原点に置かれたレーザドップラ18Aには、第1演算部22が接続される。当該第1演算部22は、レーザドップラ18Aにて計測した表面上下動を取り込み、これについて時間微分を行うことが可能になっており、表面上下動とこの時間微分とを後段側に出力可能にしている。
【0038】
またレーザドップラ18A、18B、18Cには、第2演算部24が接続されている。当該第2演算部24は、レーザドップラ18Aとレーザドップラ18Bおよびレーザドップラ18Aとレーザドップラ18Cにおける表面上下動の差分を演算するようになっており、これにより平面座標軸20の座標軸に沿った空間微分を得るようにしている。そして2つの座標軸に沿った空間微分を後段側へと出力可能にしている。
【0039】
なおレーザドップラ18A、18B、18Cにおける直後には、それぞれバンドパスフィルタ26が設けられており、レーザドップラ18A、18B、18Cにて計測された表面上下動の波形のうち、任意の周波数帯域を取り出し可能にしている。このため被測定物の持つホワイトノイズを除去することや、探査する傷の大きさに応じて周波数を適宜選択することができるようになっている。
【0040】
第1演算部22および第2演算部24の後段には、解析判定部28が設置されており、第1演算部22と第2演算部24で算出された値を取り込み可能にしている。そして解析判定部28の内部にて取り込んだ値から演算を行い、加振手段14にて衝撃を加えた点からレーザドップラ18による計測地点の範囲までに欠陥が無いかの判定を行うようになっている。
【0041】
なお加振手段14と計測側16とは、図示しないXYテーブルに搭載されており、鋼板12の表面上を移動可能となっている。このため鋼板12における任意の範囲を連続して探傷することができるようになっている。
【0042】
このように構成された探傷装置10を用いて、鋼板12の欠陥の有無を調査する手順を説明する。なお鋼板12には、その中央部にボルト挿通用の貫通孔30が形成されており、前記探傷装置10を用いた探傷は、前記貫通孔30の周辺に沿って行うものとする。
【0043】
まず図示しないXYテーブルを動作させ、加振手段14と計測側16とを鋼板12の貫通孔30の付近に移動させる。そして測定位置を決定した後は、バンドパスフィルタ26にて探査する傷の大きさに応じて採取する周波数帯域の設定を行う。
【0044】
ここで微小な欠陥に対して低域側の周波数を用いると、加振点32から伝搬する表面波は微小欠陥によって影響を受けることがなく、鋼板12における表面波は一様に伝搬し、前記微小欠陥を検出することができなくなる。ゆえに欠陥を確実に検出する目的から、検出用周波数の1/4波長長さが、探査の対象となる傷の大きさに対して短くなるよう周波数帯域の設定を行う。またこのように微小欠陥用の周波数帯域に設定すると高域周波数は減衰が大きいことから、たとえその近傍に貫通孔30が存在していても、高域周波数が前記貫通孔30によって歪むのを防止することができる。
【0045】
このようにバンドパスフィルタ26にて透過周波数の設定を行った後は、加振手段14に外部より信号を与え、前記加振手段14から鋼球15を鋼板12の表面に落下させるとともに、レーザドップラ18A、18B、18Cを用いて鋼板12における表面上下動を計測する。
【0046】
平面座標軸20の原点に設置されたレーザドップラ18Aにおいては、その直下の表面上下動を採取するとともに、第1演算部22にて前記表面上下動の時間微分を行う。そして表面上下動とともに、その時間微分値を後段の解析判定部28に送出する。
【0047】
また平面座標軸20の軸上に置かれたレーザドップラ18B、18Cにおいては、表面上下動におけるレーザドップラ18Aとの差分を演算するようになっており、これにより平面座標軸20の座標軸に沿った空間微分を得るようにしている。そして2つの座標軸に沿った空間微分を後段の解析判定部28へと送出するようにしている。
【0048】
そして解析判定部28に上記の計測値が取り込まれると、前記解析判定部28にて、表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、座標軸に沿った空間微分からなる線形方程式を解き(数式6)、この線形方程式が解を有するならば加振点32と計測点34との間に欠陥は無いと判定することができる。一方、この線形方程式が解を有しないならば、加振点32と計測点34との間に何らかの欠陥が存在すると判定することができる。
【0049】
このように計測を行った後は、XYテーブルを稼働させて隣接する次の領域で同様の探傷検査を行う。そして鋼板12における貫通孔30の周囲を連続して検査すれば、鋼板12における欠陥の有無を検査することができる。
【0050】
なお本実施の形態に係る探傷方法は、3つの計測点34を与えるだけでよく、加振点32の位置および、鋼板12における表面波の進行速度が不明であっても探傷検査(欠陥の場所の特定)をおこなうことができる。このため鋼板12ではなく他の材質であっても何ら問題なく探傷検査をおこなうことができる。
なお本実施の形態では、鋼板の探傷を例にとり説明を行ったが、この形態に限定されることもなく、種々の対象物に対して探傷を行うことが可能である。
【0051】
図3は、探傷装置を半導体ウェハにおける欠陥検出に適用した場合の状態説明図である。なお上述した実施の形態と同一の構成については同一の番号を付与して説明を行うものとする。
【0052】
同図に示すように、半導体ウェハ36において欠陥が有るか否かを探傷する場合は、加振手段として、レーザ照射器38を用いる。当該レーザ照射器38は、発射されるレーザ光を一点に絞り込めるようになっており、この絞り込みによるエネルギの集約にて半導体ウェハの表面を瞬間的に溶融可能にしている。このような絞り込みによってエネルギを高めたレーザ光を半導体ウェハ36の表面にパルス状(1パルス)に照射する。
【0053】
そしてレーザ光を半導体ウェハ36の表面に照射すると、前記レーザ光の持つエネルギによって、レーザが照射された半導体ウェハ36の表面が加熱される。するとこの加熱によって半導体ウェハ36を構成するシリコンが瞬時に膨張収縮することで、半導体ウェハ36自体に弾性波が生じる。これによって生じた弾性波をレーザドップラ18A、18B、18Cにて計測し、これらの計測値から欠陥の有無の判定を行えばよい。
【0054】
なおレーザドップラを用いた対象表面の振動を検出する場合に、振動を生じさせる手段として対象表面に強力なレーザを照射する方法もあるが、もっと簡単に何らかの物質で打撃をおこなうようにすればよい。すなわち非接触式のレーザドップラに相応しい打撃法として、鋼球(パチンコ玉)をぶつけるなどがある。また被計測対象がトンネル内面などの大型建造物のコンクリート壁の場合、上述した鋼球(パチンコ玉)の代わりに水玉(ウォータボール)を用いるようにして、回収を不要とすること望ましい(回収の手間が省ける)。さらに水玉に代えて回収不要の見地からみれば、氷やドライアイスも加振手段として用いることができる。そして前記水玉を用いるようにすれば、その入手は非常に容易になるとともに、トンネル内壁面の清掃ができるという副作用的効果も得られる。
【0055】
またもうひとつの非破壊検出手段である超音波を用いる場合、被測定物と空気層の界面にて音波が反射し、反射波を確実に採取することが難しくなるという問題がある。そこで従来の非破壊検査法を非接触で行う手段として、被測定物と検出手段との間に水柱を立て、当該水柱を媒体として、反射波を確実に採取することとした。
【0056】
図4は、鉄道車両が通過するトンネル壁面の欠陥探査に本実施の形態に係る探傷方法を用いた場合の状態説明図であり、図5は、噴水装置に取り付けられた計測手段の断面構造図である。これらの図に示すように、探傷装置40は、検査車両42に搭載されており、軌道に沿って走行しながらトンネルの内壁面44の探傷を行えるようにしている。
【0057】
検査車両42には内壁面44に沿って揺動可能なアーム46が備え付けられており、また当該アーム46の先端には噴水装置48が装着されている。ここで噴水装置48の噴射口50は内壁面44を向くよう設定されており、検査車両42に搭載された図示しない給水ポンプから供給された水を内壁面44に向かって噴射するようにしている。なお本噴射装置48においては噴射する水の中に気泡等(キャビテーション)が生じたり、あるいは噴射した水柱の形状が崩れるのを防止する目的から、吹き出し時の流速を水柱の外周側と内周側とで異ならせるなどといった処理が施されている。なお噴射装置48において噴射口50は4個設けられており、それぞれ後述する超音波発信子と超音波センサ用として用いられる。
【0058】
4個からなる噴射口50の奥部には、それぞれ加振手段となる超音波発信子52と、検出手段となる超音波センサ54が3台取り付けられている。このため給水ポンプの稼働により噴射口50から水を吹き出させ、噴水装置48と内壁面44との間に水柱56を形成させた後に、超音波発信子52を稼働させれば、当該超音波発信子52から発せられた超音波は、水柱56を媒体として進み、内壁面44の内部へと伝えることができる。一方、水柱56を介して超音波センサ54を稼働させれば、内壁面44に伝えられた超音波の反射波を再度水柱56を介して採取することが可能になる。
【0059】
このように内壁面44と、超音波発信子52および超音波センサ54との間に水柱56を形成し、これを媒体とし探傷を行うようにすれば、内壁面44と空気層の界面にて音波が反射し、反射波を採取することが難しくなるといった問題を解決することができる。なお水柱56を媒体として用いた以外は、上述した方法と同一の手順で探傷を行うものとする。
【0060】
なお本実施例の応用として、水玉を形成する手段に上記噴射口を共用すれば、対象物に応じて(必要に応じて)レーザドップラ式と超音波式とを任意に切り換えることが可能になり、探傷方法に関する一層の自由度を得ることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を与え、前記被測定物の表面に設定した計測点を通過する弾性波の表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分を求めるとともに、前記被測定物の表面に設定した平面座標軸に沿って前記弾性波の空間微分を求め、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式の解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなしたことから、測定対象物の材質(音の伝達速度)に依存することなく、前記測定対象物における欠陥の位置を特定することが可能となり、欠陥の修理を正確且つ確実に行うことができる。
【0062】
ここでレーザドップラを用いた対象表面の振動を検出する場合に、振動を生じさせる手段として対象表面に強力なレーザを照射する方法もあるが、もっと簡単に何らかの物質で打撃すればよい。すなわち非接触式のレーザドップラに相応しい打撃法として、鋼球(パチンコ玉)をぶつけるなどがあるが、被計測対象がトンネル内面などの大型建造物のコンクリート壁の場合、回収して再利用することが困難である。すなわち前記表面上下動を、前記被測定物の表面に形成される液柱を媒体として求めるようにしたことから、表面上下動の減衰量を抑えることが可能になり、表面上下動の状態を確実に捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同装置を鋼板における欠陥検出に適用した場合の状態説明図である。
【図3】探傷装置を半導体ウェハにおける欠陥検出に適用した場合の状態説明図である。
【図4】鉄道車両が通過するトンネル壁面の欠陥探査に本実施の形態に係る探傷方法を用いた場合の状態説明図である。
【図5】噴水装置に取り付けられた計測手段の断面構造図である。
【図6】測定対象物の内部に欠陥が存在するかを検査する方法の説明図である。
【図7】半導体ウェハに欠陥が存在するかを検査する方法の説明図である。
【図8】被測定物の表面に設定した加振点と計測点および平面座標軸を示す説明図である。
【符号の説明】
1………送信子、2………コンクリート壁、3………レーザドップラ、
4………レーザ照射装置、5………半導体ウェハ、6………被測定物、
7………加振点、8………計測点、10………探傷装置、12………鋼板、
14………加振手段、15………鋼球、16………計測側、
18………レーザドップラ、20………平面座標軸、22………第1演算部、
24………第2演算部、26………バンドパスフィルタ、
28………解析判定部、30………貫通孔、32………加振点、
34………計測点、36………半導体ウェハ、38………レーザ照射器、
40………探傷装置、42………検査車両、44………内壁面、
46………アーム、48………噴水装置、50………噴射口、
52………超音波発信子、54………超音波センサ、56………水柱
Claims (6)
- 被測定物の表面に設定した加振点に衝撃を与え、前記被測定物の表面に設定した計測点を通過する弾性波の表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分を求めるとともに、前記被測定物の表面に設定した平面座標軸に沿って前記弾性波の空間微分を求め、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式の解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなすことを特徴とする探傷方法。
- 前記衝撃は、前記被測定物の表面に水玉をぶつけることにより与えることを特徴とする請求項1に記載の探傷方法。
- 前記弾性波の表面上下動を複数の周波数帯域に分割し、前記被測定物の傷の大きさに応じて、前記表面上下動の前記周波数帯域を適時選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の探傷方法。
- 被測定物の表面に衝撃を加える加振手段と、当該加振手段の衝撃にて生じる弾性波の表面上下動を検知する計測手段とを有し、当該計測手段に前記表面上下動の時間微分をなす第1演算部を設けるとともに、前記被測定物の表面に設定した平面座標軸に沿って前記弾性波の空間微分をなす第2演算部を設け、前記表面上下動と、この表面上下動に対する時間微分と、前記弾性波の空間微分からなる線形方程式を解き解の有無にて前記被測定物の探傷判別をなす解析判定部を設けたことを特徴とする探傷装置。
- 前記加振手段は、前記被測定物の表面に水玉をぶつける噴水装置とすることを特徴とする請求項4に記載の探傷装置。
- 前記計測手段にバンドパスフィルタを取り付けたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の探傷装置。
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