JP4511692B2 - 引出しのスライド構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばプラスチック製収納ボックスにおいて、特に成型や組み立てが容易な引出しの二段スライド構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、書類や文具だけでなくFDやCDといった記録メディアを含め、多種多様に亘る物品を整然と収納できる引出し式の収納ボックスは種々存在するが、その中でもボックス全体あるいは筐体を除く部材(特に引出し)をプラスチック成型したものが広まりつつある。
【0003】
その理由は、第一にプラスチック製の収納ボックスは近年のプラスチック成型技術の発達によりステンレス製や木製の収納ボックスに比べて生産性がよく、比較的安価に購入できること、第二に必要に応じて事後的に買い足したり、また引出しの組み合わせもカスタマイズしやすいこと、第三に着色透明の樹脂を用いて成型することによりモダンなデザインを施しやすいことなどが挙げられ、これらはステンレス製や木製の収納ボックスではなし得ないプラスチック製収納ボックス特有の特徴といえる。また、重厚感を除けば、強度や耐久性の面でもステンレス製などと遜色ない機能をもっていることも基本的な理由に挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種収納ボックスにおいて物品の出し入れを容易に行うためには、引出し全体を引き出せることが好ましい。しかしながら従来のプラスチック製収納ボックスは、構造の簡易なものが殆どで、特に引出しについては次のような課題があった。すなわち、従来において引出しは筐体の内部側壁に設けたレールに沿ってスライドさせるのみの構造を採用しており、特に書類やファイルを縦に収容するような深い引出しの場合には、滑りが悪いという課題があった。
【0005】
また、上記従来のスライド構造であると、引出しを引き出すにつれその荷重がレールの筐体前方寄りに移動し、引出し全体を引き出したときには全体の重心がボックスの前方に位置することになって不安定であった。これは特に相当荷重がかかる深い引出しについて指摘される課題である。
【0006】
他方、従来から引出しと筐体側レールの間に別途スライドレールを介在させ、引出しをスライドレールに沿って一定長さスライドさせた後、スライドレール自身を筐体側レールに沿ってスライドさせることで、引出し全体を引き出せるようにした二段階式のスライド構造は公知であり、例えば事務用机の引出しに採用されている。この二段スライド構造によれば、引出しの荷重はスライドレールに、スライドレールの荷重は筐体側レールにそれぞれ分散されることになるため、滑りもよく、特に引出しを全部引き出したときの重心もスライドレールの後端、つまり筐体側レールのほぼ中央に位置することになるため安定性に優れるという利点がある。
【0007】
しかし、このような二段スライド構造は上述のように主として事務用机などの比較的高価なオフィス家具に採用されるもので、その構造はコマを内蔵するなど極めて複雑で、しかも組み立てが専門的であり、特にスライドレールは板金により成型されるものであったから、同一の構造をプラスチック成型することは実質的に不可能であり、プラスチック製ボックスに採用されることはなかったのである。
【0008】
本発明は上述した課題に基づきなされたもので、その目的は例えばプラスチック製の収納ボックスにおいて、滑りがよく、重心の安定性に優れた二段階式のスライド構造を採用するにあたり、成型および組み立てが容易な新規なスライド構造を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために本発明では、引出しを二段スライド構造によって全部を引き出せる構成を採用した。即ち、引出しと、引出しをスライド可能に支持する左右のスライドレールと、さらにこのスライドレールをスライド可能に支持する左右のレール支持棚とから構成する。これらの部材は主としてプラスチックにより一体成型する。レール支持棚はスライドレールの支持段部を有し、筐体の左右側壁に組み付けられるもので、支持段部を数段形成したレール支持棚を用いることで複数個の引出しをも支持することができる。さらに、本発明の特徴はスライドレールとレール支持棚の組み付け構造にある。即ち、レール支持棚の各支持段部間には長手方向に所定長のスライド溝を設ける一方、スライドレールには前記スライド溝に沿ってスライドするスライド片を設ける。スライド片はスライド溝に挿入されスライド可能に支持され、且つスライドレールの引出し方向の抜けが防止された状態となる。ここで本発明ではさらに、スライド片には平板状の抜け防止片を両者断面略T字状となるように形成し、これをレールストッパとする一方、レール支持棚には前記スライド溝上に前記抜け防止片が挿通可能な嵌め込み孔を設けた。これにより二段スライド構造の引出しをプラスチックでも成型でき、またその組み付けも容易となる。なお、引出しとスライドレールとのスライド構造は、引出しをスライド可能に支持できるものであればよく、適宜構造を採用する。また、同様に引出しの抜け防止構造も適宜構造を採用することができるが、具体的な手段としては次のようになる。
【0010】
即ち、引出しはスライド段部を有し、且つ該スライド段部の一箇所には係止突部を形成してなると共に、スライドレールは前記スライド段部をスライド可能に抱持するレール部を有し、且つ該レール部には前記係止突部と係合する引出しストッパを形成してなり、さらに前記引出しストッパは弾性を持たせるという手段を用いた。
【0011】
さらに請求項2では、左右のスライドレールは別体に成型され、これらスライドレールは後方に設けた連結軸に連結棒を嵌合することによって連結するという手段を用いた。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係るスライド構造を収納ボックスに適用した分解斜視図を示したものであり、図中、10は筐体、20は引出し、30は筐体内部の左右側面に組み付けられるレール支持棚、40は引出し20とレール支持棚30との間に介在させるスライドレールである。
【0013】
各部をさらに詳細に説明すると、先ず、筐体10はステンレスなどの金属を板金成型して前方を開放した箱型の形状を呈し、主たる特徴は後述するレール支持棚30を組み付けるために、左右側壁の前縁を内側にコ字状に折曲して前方係止部11をなすと共に、その奥部には後壁に板体を溶接等によって固着して後方係止部12としていることである。なお、この実施形態では筐体10を金属製としたがプラスチックにより成型することも可能である。
【0014】
次に、引出し20は、前方に取り手21を有する比較的深めの箱体22からなり、その左右側板23のそれぞれには上方スライド段部24および下方スライド段部25を平行に長手方向に突設している。各スライド段部24、25の主たる特徴は後方にあり、図2に従って説明すると、上方スライド段部24は横部を開放したコ字状の構造からなる一方、下方スライド段部25は底部を開放した逆U字状の構造からなる。このうち上方スライド段部24はリブ26によって補強されると共に、その中途にはリブ26よりも突出して係止突部27を形成している。なお、リブ26を形成するときは少なくとも後述する引出しストッパと係止しない突出量に調整することが必要であるが、当初より省略することも可能である。
【0015】
また各スライド段部24、25の後端上面にはなだらかな登りテーパからなる膨出部28を設けており、さらに引出し20の後板の上縁には溝29を凹陥設している。
【0016】
続いて、レール支持棚30は、図3に示すように、一枚のプラスチック板に上下等間隔に略逆コ字状の支持段部31…31を連続して突設してなる。各支持段部31の間には、略四角形の嵌め込み孔32…32を横切る状態でスライド溝33を嵌め込み孔32と共に打ち抜き形成している。ここでスライド溝33はレール支持棚30の横全幅に設けるのではなく、その前方寄り終点がレール支持棚30の中途となるように設定される。なお、34はレール支持棚30の前後縁に複数設けたV字状の弾性爪であり、筐体10の係止部11、12と係合する。また、35…35はそれぞれ打ち抜きであり、デザイン性を持たせる意味と軽量化を図る意味を兼ね備える。
【0017】
最後にスライドレール40は、図4に示すように、引出し20の各スライド段部24、25をスライド可能に抱持する断面コ字状の上方レール部41と下方レール部42とを中板43と共に一体成型したものであって、断面は略「弓」字状を呈する。各レール部41、42の前方には、ガイド片44、45を対向した状態で突設している。このうち上方レール部41のガイド片44は、
引出し20の後端上縁に形成した溝29を通って引出し20の側板23を内側からガイドするのに対し、下方レール部42のガイド部片45は、引出し20の下方スライド段部25の内部空間に入り込んだ状態でガイドする。
【0018】
また、各レール部41、42の前方において、その上部水平材41a、42aには、図5に示すように、なだらかな傾斜のテーパ膨出部41b、42bを形成している。
【0019】
さらに、上方レール部41の垂直材41cの中途には、引出し20の上方スライド段部24に形成した係止突部27と当接して引出し20のスライドを停止する引出しストッパ46を設けている。この引出しストッパ46は、図6に示すように、上方レール部41の垂直材41cの一部をコ字状に打ち抜いてなり、その残部46aに突部46bを形成することによって弾性を有するストッパとしている。
【0020】
また、各レール部41、42の後方には、図7に示すように、レールストッパ47をそれぞれ設けている。このレールストッパ47はレール支持棚30のスライド溝33をスライド可能なスライド片47aの端部に、レール支持棚30の嵌め込み孔32に挿通可能な抜け防止片47bを一体的に設けた断面T字状の構造を有する。
【0021】
さらにまた、スライドレール40の中板43の後方には、図8に示すように、上部の一部円弧を開放した連結軸48を形成しており、連結棒48aを嵌合する構造を有する。そして、左右のスライドレール40は前記連結軸48に連結棒48aを嵌合することによって一体とされる。
【0022】
なお、スライドレール40に形成した打ち抜き49は、レール支持棚30の打ち抜き35と同様にデザインと軽量化の意味を兼ね備える。
【0023】
ここで本実施形態では、筐体10および連結棒48aは金属により成型することを予定しており、少なくともこれらを除く引出し20、レール支持棚30およびスライドレール40は全てプラスチックにより成型することを必須とするが、上述のように筐体10および連結棒48aもプラスチックにより成型することは可能である。
【0024】
次に上述した構造からなる各部材の組み立てについて説明すると、先ずレール支持棚30を筐体10の左右側壁内部にそれぞれ組み付ける。このとき弾性爪34をその弾性力に抗して筐体10の係止部11、12に係合させることにより、レール支持棚30を筐体10に嵌め殺しの状態で組み付けることができる。
【0025】
次に、上記要領で組み付けられた左右のレール支持棚30それぞれにスライドレール40を組み付ける。ここでは図9に示すように、レールストッパ47の抜け防止片47bをレール支持棚30の嵌め込み孔32に挿入することで(図9(A)参照)、レール支持棚30の各支持段部31がスライドレール40の各レール部41、42を支持し(図9(B)参照)、スライドレール40はスライド溝33に沿ってスライド可能に支持される。そして、左右のスライドレール40の連結軸48に連結棒48aを嵌合することによって左右のスライドレール40を同期してスライドさせることができる。
【0026】
最後に引出し20をその各スライド段部24、25をスライドレール40の各レール部41、42の前方開放部から挿入する形でスライドレール40に組み付ける。ここでは図10に示したように、スライドレール40の上方レール部41におけるガイド片44を引出し20の溝29を通過させて、引出し20における側板23の内側に位置させると共に、下方レール部42におけるガイド片45を引出し20の下方スライド段部25の内部空間に位置させることによって、引出し20をスライドレール40にスライド可能に組み付けることができる。
【0027】
そして、引出し20の各スライド段部24、25を係止突部27がスライドレール40の引出しストッパ46を乗り越えるまで挿入することで引出し20の組み付けは完了し、全体の組み立ても完了する。この引出し20の組み付け時に係止突部27は引出しストッパ45と当接するが、引出しストッパ46は上述したように弾性を有するため、その弾性力に抗して引出し20を挿入することで、ストッパ46は係止突部27に押されて外側に一時的に変形し、引出し20を組み付けることができる。また、本実施形態では引出し20の各スライド段部24、25の後端上面に膨出部28を形成しているので、これがスライドレール40に設けたテーパ膨出部41b、42bと当接するため、引出し20の不用意な抜けを防止することができる。
【0028】
上記スライド構造によれば引出し20を半分程度引き出した段階、すなわち係止突部27が引出しストッパ46と当接するまでは引出し20のみがスライドレール40に沿ってスライドする。このときの荷重は各スライド段部24、25により2段の各レール部41、42に分散されるから、一点に荷重が集中することがなく、滑りよく引出し20を引き出すことができる。
【0029】
一方、係止突部27が引出しストッパ46と当接した後は、スライドレール40が連動スライドしてさらに引出し20を引き出すことができる。その最大量はスライドレール40のレールストッパ47がレール支持棚30のスライド溝33の終点に当接するまでであり、当該当接時に引出し20を筐体10から全部引き出すことができる。そして、引出し20の全部引出し時にはその荷重はほぼレール支持棚30におけるスライド溝33の終点位置にかかることになるため、ボックス全体の重心も前方寄りとなることはなく、安定性に優れるのである。
【0030】
また、本実施形態ではレール支持棚30を複数の支持段部31およびスライド溝33を上下等間隔に連設したユニット化構造としたので、引出し20およびスライドレール40の位置を適宜変更できる他、その間隔を基準として引出しの深さを設定すれば、同一深さの引出しはもちろん、深さの異なる数種の引出しを組み合わせた収納ボックスとすることができる。これは使用者が使用目的等に応じて引出しの組み合わせを選択することを可能とするものである。
【0031】
さらに本実施形態によれば全ての引出しを上述したスライドレール40による二段スライド方式とすることも可能であるし、例えばスライドレール40を省略できる比較的浅い引出し50については、図11に示すように、直接支持段部31に当該引出しをスライド可能に保持することもできる。このときは引出し50の後部上端にストッパ51を設けると共に、支持段部31の適宜個所に前記ストッパ51と当接する係止段部52を設けることで、引出し50の抜けを防止することができる。
【0032】
なお、引出し20、50、レール支持棚30およびスライドレール40は全てプラスチック成型により構成可能であるが、スライドレール40については左右を一体成型することが困難であるため、本実施形態では左右を別体とし、組み付け後に連結棒によって連結する方法をとった。従って、スライドレール40のプラスチック成型を容易なものとすると共に、その組み付けもそれぞれに行うことになって簡易である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、二段スライド構造をプラスチック成型により簡易に構成できると共に、その組み立ても簡単なものとすることができた。従って、従来ではなしえなかった二段スライド構造の引出しを有するプラスチック製収納ボックスを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の収納ボックス全体を示した分解斜視図
【図2】引出しの後方要部を示した部分拡大斜視図
【図3】レール支持棚を示した斜視図
【図4】スライドレールの前方要部を示した部分拡大斜視図
【図5】同、縦断面図
【図6】引出しストッパの拡大斜視図
【図7】スライドレールのレール支持棚側の後方要部を示した部分拡大斜視図
【図8】スライドレールの引出し側の後方要部を示した部分拡大斜視図
【図9】(A)はレールストッパとスライド溝との関係を示した斜視図(B)はスライドレールとレール支持棚との関係を示した斜視図
【図10】スライドレールと引出しとの関係を示した要部縦断面図
【図11】引出しの他の組み合わせを示した斜視図
【符号の説明】
10 筐体
20 引出し
24、25 スライド段部
27 係止突部
30 レール支持棚
31 支持段部
40 スライドレール
41、42 レール部
46 引出しストッパ
47 レールストッパ
Claims (2)
- 筐体の左右側壁に組み付け可能で複数の支持段部を有する左右のレール支持棚と、このレール支持棚の支持段部にスライド可能に支持される左右のスライドレールと、このスライドレールにスライド可能に支持される引出しとからなり、引出し全部を引き出すことができる二段スライド構造であって、前記レール支持棚、スライドレール及び引出しをプラスチックにより一体成型し、前記スライドレールは後方にスライド片の端部に抜け防止片を一体に設けたレールストッパを備えてなると共に、前記レール支持棚は前記各支持段部間に前記抜け防止片が挿通可能な嵌め込み孔と、前記スライド片をスライド可能に支持するスライド溝とを備え、前記引出しはスライド段部を有し、且つ該スライド段部の一箇所には係止突部を形成してなると共に、前記スライドレールは前記スライド段部をスライド可能に抱持するレール部を有し、且つ該レール部には前記係止突部と係合する引出しストッパを形成してなり、さらに該引出しストッパは弾性を有することを特徴とする引出しのスライド構造。
- 左右のスライドレールは別体に成型され、これらスライドレールは後方に設けた連結軸に連結棒を嵌合することによって連結する請求項1記載の引出しのスライド構造。
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