本発明は、前記した点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、棚構造体の如き支持構造体の分解や棚の如き被支持体の高さ位置の変更が容易に行われ得る支持構造体を提供することにある。
本発明の支持構造体は、前記目的を達成すべく、外表面に係合部を備える支柱と、内周側に支柱の係合部で係合される被係合部を備え下側ほど厚くなるようなテーパ部を有する係止手段と、係止手段の上端側から支柱に嵌合され係止手段の厚肉部で係止される嵌合孔を含む嵌合部を備え、該嵌合部の嵌合孔の上端側の周面に雌ねじ部を備えた被支持体と、支柱に嵌合される中心孔を備えると共に被支持体の嵌合孔の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を外周に備え、回し工具に係合されるトルク入力用被係合部を上端部に備えた環状部材とを有する。
本発明の支持構造体では、「外表面に係合部を備える支柱と、内周側に支柱の係合部で係合される被係合部を備え下側ほど厚くなるようなテーパ部を有する係止手段と、係止手段の上端側から係合手段付き支柱に嵌合され係止手段の厚肉部で係止される嵌合孔を含む嵌合部を備えた被支持体と」が設けられているので、被係合部が支柱の所望高さの係合部に係合されるように係止手段を支柱の係合部に取付け、該係止手段の係合された支柱に対して嵌合部を上端側から嵌めて係止手段に嵌合・係止させることにより、被支持体を支柱に対して所望の高さ位置に容易に取付け得る。
また、本発明の支持構造体では、特に、「被支持体が、嵌合部の嵌合孔の上端側の周面に雌ねじ部を備え」、且つ「支柱に嵌合される中心孔を備えると共に被支持体の嵌合孔の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を外周に備え、回し工具に係合されるトルク入力用被係合部を上端部に備えた環状部材」が設けられているので、環状部材を回し工具で回すことにより、被支持体の嵌合部の雌ねじ部に雄ねじ部で螺合した環状部材を下向きに変位させ、環状部材の環状奥端部(環状下端部)で係止手段の上端面を押すことにより、その反作用として被支持体の嵌合部を係止手段に対して上向きに移動させ得、被支持体の嵌合部とテーパ付き係止手段との間の嵌合を(たとえ強固であっても)容易に解除し得る。従って、被支持体をテーパ付き係止手段に対して容易に変位させ得る。また、本発明の支持構造体では、この嵌合部と係止手段との嵌合の解除に際してハンマー等で叩く必要がないことから、騒音の発生の虞れがなく、夜間の住宅の如く騒音が忌避される時や場所でも作業可能である。更に、ハンマー等で叩く必要がないことから、被支持体の材料等にかかわらず、嵌合を容易に解除し得る。例えば、被支持体の本体部がワイヤ等からなる場合でも、変形の虞れがなく、被支持体の本体部がガラスのような脆い材料部分を含む場合でも、破損の虞れがない。
なお、支柱が複数本ある場合には、このような操作を各箇所で順次行うことにより、被支持体を各支柱の関連する各テーパ付き係止手段に対して自由に変位可能な状態にし得る。ここで、嵌合部と対応するテーパ付き係止手段との強固な嵌合が解除された箇所では、環状部材が嵌合部を嵌合解除位置に保つから、他の箇所の嵌合を解除している際、テーパ付き係止手段との強固な嵌合が一旦解除された嵌合部が該係止手段に対して再度強固に嵌合されてしまう虞れはない。
ここで、注意されるべきは、本発明の支持構造体では、嵌合部の嵌合孔と支柱の外表面との間にテーパ付き係止手段の取付用に元々生じ得る実質的に環状の隙間をそのまま環状体の配設箇所として利用していることである。すなわち、環状体の配設のために、新たに大きな隙間を形成しなくても、単に、嵌合孔の周面の一部(上部)に雌ねじ部を形成し、該雌ねじ部に環状体の雄ねじ部が螺合されるようにするだけで、棚構造体の如き支持構造体の分解や棚の如き被支持体の高さ位置の変更が容易に行われ得る。
すなわち、本発明の支持構造体では、嵌合部の嵌合孔は、少なくとも、上端側に横断面が一定の円筒状の孔部を備え、該円筒状孔部の少なくとも一部に雌ねじ部が形成されている。嵌合部の嵌合孔は、典型的には、下部に下方程径が大きくなるようなテーパのある孔(円錐台状の孔)を有する。孔のテーパ形状は、典型的には、係止手段のテーパ形状と相補的である。但し、場合によっては、下方部分が、テーパ孔の代わりに、径一定の円柱状(円筒状)の孔であってもよい。
支柱は、例えば、横断面が円形で長手方向の部位によらず一定の径の円柱状である。但し、その代わりに、横断面が多角形状(典型的には正多角形状)であってもよい。横断面が正多角形状でない場合、典型的には、支柱の横断面の輪郭は少なくとも三点で円に内接する(外接円をもつ)形態である。
支柱の係合部は、典型的には、溝からなる。横断面が円形の場合、溝は、典型的には、全周にわたって延びた環状の周溝からなる。但し、所望ならば、周方向に間隔をおいて形成された溝ないし穴からなっていてもよい。支柱が多角柱状(横断面が多角形状)の場合、典型的には角部に溝が形成される。支柱の係合部は、溝の代わりに、突出部ないし突起部であってもよい。
支柱は、長手方向に一定の形状(長手方向の部位によらず一定の横断面形状(大きさを含めて一定))である代わりに、横断面の大きさが長手方向の部位によって異なっていてもよい。例えば、数珠の如く大径部分と小径部分とが繰返す形状(但し、多数回)であってもよい。その場合、大径部分又は小径部分自体が、係止手段の被係合部を係合させる係合部として用いられてもよい。支柱は、全体が一体物であっても複数の部品を分離可能に繋いだものであってもよい。
係止手段の被係合部は、典型的には、支柱の係合部と実質的に相補的形状を有する。但し、支柱の係合部に係合されて係止手段の支柱に対する長手方向変位を禁止し得る限り、係合部の一部に被係合部が係合されるようになっていても、被係合部がその一部で係合部に係合されるようになっていてもよい。
係合部が溝部からなる場合、該溝は突部の形態の被係合部が嵌り込んでその上下方向変位が禁止される限りどのような横断面形状でもよく、典型的には、ほぼ半円状である。但し、所望ならば、該係合溝部に対する被係合突部の下向きの変位を禁止するに適するような横断面形状でもよく、場合によっては、被係合突部が係合溝部に一旦嵌り込むと、被係合突部が斜め上向き以外の向きには外れないような形状であってもよい。係合部が突部からなり、被係合部が溝部からなる場合であっても、同様である。係止手段が、特に、周方向に間隔をおいて係合部に係合される複数の係止片からなる場合には、このような外れ難い係合構造を採ることが好ましい。
環状部材は、長手方向の少なくとも一部に雄ねじ部を備える。雄ねじ部は、実質的にその全長にわたって形成されていても、係止手段に当接する奥端部(下端部)とは反対側の端部(上端部)に近い部分に形成されていてもよい。後者の場合、係止手段に当接する奥端部近傍の部分は、雄ねじ部が形成されている部分よりも小径でもよい。その場合、小径部の外周は、典型的には円形断面を有するけれども、所望ならば、非円形でもよい。
本発明の支持構造体では、典型的には、係止手段が、組合わされた際全体として支柱の外周に嵌る筒状体を形成する複数の部分円筒状部を備えたスリーブからなり、該スリーブが、支柱の係合部に係合される被係合部を内周面に備えると共に外周が全体として下端側ほど太くなるようなテーパを備え、被支持体の嵌合部の嵌合孔が、スリーブの小径端部よりも大径で該スリーブの大径端部よりも小径である。嵌合孔のうち雌ねじ部よりも下の部分がテーパのある孔でその周面が円錐台状の形状を有する場合、嵌合孔の下部の最大径部(下端部)及び最小径部(上端部)のいずれも、スリーブの小径端部よりも大径で該スリーブの大径端部よりも小径である。但し、所望ならば、係止手段が全体としてほぼ円筒状(厳密には、ほぼ中空円錐台状)のスリーブからなる代わりに、周方向に間隔をおいて支柱の係合部に係合される被係合部を備えた複数の係止片からなっていてもよい。
スリーブは、典型的には、その全体が、円錐台の周面に相当する外周面を有する。但し、所望ならば、スリーブの外周面の一部のみが円錐台の周面に相当する外周面部を備えていてもよい。また、テーパのある形状としては、厳密には、円錐台形とは異なっていてもよい(例えば、母線が外向きに凸状に湾曲していても凹状に湾曲していていも、母線が折れ線の形態であってもよい)。
スリーブを構成する複数の部分円筒状部は、典型的には別体であるけれども、所望ならば、蝶番の如く開かれ得るように、可撓性の薄片でつながっていてもよい。なお、スリーブは、典型的には、樹脂からなる。ここで、スリーブの構成部分について、「部分円筒状」とは、おおまかな形状をいい、厳密には、スリーブにはテーパがあることから、外周面が少なくとも部分的には円錐台の周面に近い形状を有することになることは前述のとおりである。なお、部分的に中空円錐台状に近い形状であればよいことも、前述のとおりである。
スリーブを構成する複数の部分円筒状部は、典型的には、相互に同一の形状を有する。すなわち、典型的には、同一形状の部分円筒状部を複数個組合わせてスリーブを形成する。従って、部分円筒状部は、典型的には、その周方向に向いた側面に、相補的形状の凹凸部を有する。但し、複数の部分円筒状体は、全体としてスリーブを形成し得る限り、相互に異なる形状を有していてもよい。スリーブを構成する部分円筒状体の数は、典型的には、二つである。但し、所望ならば、三つでも、四つ以上でもよい。但し、部分円筒状体を支柱の周りで組合わせてスリーブにしておいて被支持体の嵌合部を嵌め得るように、スリーブが支柱に取り付けられた状態でその形状を確実に保ち得るように、部分円筒状体の数は、過度に多くない方が好ましい。
被支持体の嵌合部は、典型的には、管状部からなる。但し、被支持体が厚みのある板状体などの場合、嵌合孔及び嵌合部は、該板状体に形成された貫通孔及びその周壁部自体であってもよい。
被支持体は、典型的には、棚からなる。ここで、棚は、物を載置する棚本体と、該棚本体の複数箇所に一体的に形成された嵌合部とを有する。棚本体は、板であっても、格子状等の形態の平面状支持部であっても、周囲に壁部を有する等他のいかなる形態でもよい。被支持体は、支柱で支えられるものである限り、棚の代わりに柵や塀等でも他の構造体でもよい。柵や塀のような上下方向の長さ(高さ)のある被支持体の場合、上下方向の複数箇所に前記嵌合部を備えていてもよい。
従って、本発明の支持構造体は、前記目的を達成すべく、典型的には、長手方向に間隔をおいて外表面に係合部を備える複数本の支柱と、組合わされた際全体として支柱の外周に嵌る筒状体を形成する複数の部分円筒状部からなり、各支柱の係合部に係合される被係合部を内周面に備えると共に外周が全体として下端側ほど太くなるようなテーパのある複数のスリーブと、各スリーブの小径端部よりも大径で該スリーブの大径端部よりも小径の嵌合孔を含む複数の嵌合部を備え、該嵌合部の嵌合孔の上端側の周面に雌ねじ部を備えた被支持体と、各支柱に嵌合される中心孔を備えると共に被支持体の嵌合孔の雌ねじ部に螺合される雄ねじ部を外周に備え、回し工具に係合されるトルク入力用被係合部を上端部に備えた複数の環状部材とを有する。
この場合、支柱が複数本あることにより、嵌合部を別途押えておかなくても、環状部材を回す際に嵌合部の方がまわってしまう虞れがない。なお、この支持構造体が、本発明の支持構造体について、最初に指摘した利点の全てを備えていることは、明らかであろう。なお、支柱について、複数本とは、典型的には、四本をいうけれども、二本や三本でも、五本以上でもよい。
本発明の支持構造体では、典型的には、環状部材のトルク入力用被係合部が、該環状部材の上端面に形成された凹凸からなる。
本発明を、回し工具の観点から言えば、本発明の回し工具は、上記のような支持構造体の環状部材を回すための回し工具であって、支柱の外表面の外接円の一部をなすように支柱に嵌め合わされる半円形状凹部を備えた本体部を有し、環状部材のトルク入力用被係合部に係合されるトルク入力用係合部が該凹部の周壁に周方向に間隔をおいて形成されている。
これにより、回し工具のトルク入力用係合部が、環状部材の嵌っている環状部分に丁度はまり込んで、環状部材のトルク入力用被係合部に係合され得る。ここで、トルク入力用係合部は、典型的には、少なくとも、直径方向の両端に形成される。これにより、大きなトルクが確実に付与され得る。なお、係合部は、周方向に90度間隔でも、60度間隔でも、周方向により狭い角度間隔でもより広い角度間隔でもよい。
なお、典型的には、支柱が上端部に凹部を備え、該凹部に、回し工具の本体部が収納される。回し工具の本体部は、支柱の外周に嵌め合わされる半円形状凹部を備えることから、支柱の外径(外接円の径)の1/2よりも僅かに大きい程度の太さないし幅があればよいので、回し工具の本体部は、支柱が円筒状等である場合には、その内径よりも小さくし得る。従って、回し工具の本体部は、本質的に、支柱の凹部又は支柱の中央孔に嵌合され得ることになる。回し工具の本体部が、このようにして、支柱の上端部に収納される場合、回し工具が紛失することなくいつでも利用可能に保たれ得る。なお、この場合、回し工具の柄の基端部部分は、典型的には、支柱の上端において、装飾的形状を与えるべく、円盤状や球状その他の任意の形状を採り得る。
なお、環状部材が、半径方向に突出したフランジ(鍔)状部を上端部に備える場合には、レンチなどが係合されるトルク入力用被係合部が該フランジ(鍔)状部の外周面に形成されていてもよい。その場合、回し工具は、例えばレンチ等からなる。
図1には、本発明の支持構造体の好ましい一実施例として、棚構造体1が示されている。この棚構造体1は、棚3と、支柱10と、スリーブ40と、環状部材60とを有する。四本の支柱10は、同一の構造及び形状を有する。支柱10の本数は、二本又は三本でも、五本以上でもよく、場合によっては、一本でもよい。また、この例では、二つの棚3も同一の構造及び形状を有する。勿論、各支柱10のや各棚3は、相互に異なる構造や形状であってもよい。
図1及び図2等からわかるように、各支柱10は、全体として、円筒状であり、円筒状本体部11の外周12には、長手方向に間隔をおいて、係合部としての周溝ないし環状溝13が形成されている。溝13は、支柱本体部11の外周12の全周に形成される代わりに、周方向の一部のみにあってもよい(なお、支柱10が円柱状の代わりに角柱状等であるような場合には、典型的には、角部の近傍のみに溝部が形成される)。溝13は、該溝13に嵌る相補的形状の突起部が該溝13から外れるのを禁止し得る限り、どのような横断面形状でもよい。溝13は、支柱10が該溝13の存在により実質的に弱化されてしまうことのない程度に浅いものでよい。係合部は、溝(凹部)13の代わりに凸部でもよい。支柱10は、例えば、金属製であるけれども、場合によっては、その一部又は全体が樹脂等のような金属以外の材料で出来ていてもよい。以下では、支柱10の全体が金属製であるとして説明する。
図1及び図6の(a)に示したように、この例では、支柱10の上端部14に、回し工具70が取外し可能に取付けられる。そのため、支柱10は、上端部14に雌ねじ部15を備える。
各支柱10は、下端部(図示せず)が床等の表面上に載置されている。棚構造体1がラック式の棚のように壁面に沿って配設・静置されるものである場合、下端部は、床に安定に載置され得るように、面積の大きい足部を有していてもよく、場合によっては、床面に固定され得るようになっていてもよい。一方、棚構造体1が、移動可能性の高い棚やワゴンの如く可動性が要求されるものである場合、各支柱10は、下端部に、例えば、回転禁止構造を備えたキャスタ等を有していてもよい。
また、各支柱10は、図示の例では全体が管状体からなるけれども、少なくとも上端に回し工具70が取付可能なように上端部に凹部があれば、他の部分は中実でもよい。また、回し工具70は、この例のように支柱10が複数本ある場合には、少なくとも一箇所の支柱10の上端だけに設けられてもよく、その場合、残りの支柱10の上端部は、飾りとなる装飾体であってもよい。勿論、所望ならば、装飾体もなくてもよく、その場合四本の支柱10のうち一本だけに回し工具70が取り付けられていてもよい。なお、回し工具70を支柱10の上端部の穴に螺合させる代わりに他の取付手段で支柱10の上端部や他の箇所に取付ける場合には、支柱10の上端部に開口がなくてもよい。
被支持体としての棚3は、棚本体20と、嵌合部としての管状部30とを有する。管状部30は、全体としてほぼ長方形状の棚本体20の四隅に該棚本体20と一体的に形成されている。棚本体20の平面形状は、長方形の代わりに、円形や楕円形や三角形や五角形以上の多角形等いかなる形状でもよい。棚3は、典型的には、金属製であるけれども、場合によっては、その一部又は全体が樹脂やガラス等のような金属以外の材料で出来ていてもよい。以下では、棚3の全体が金属製であるとして説明する。棚本体20と管状部30とは、典型的には、溶接などで一体化されている。但し、所望ならば、棚本体20と管状部30とは、相互に一体的になるようにねじの如き締結手段や嵌合などで固定されていてもよい。
棚本体20は、例えば、全体として長方形を形成する枠体21と、該枠体21により囲われた長方形状部分に拡がった格子状載置部22とを有する。図示の例では枠体21は隅部で管状部30に溶接されて長方形状になっているけれども、枠体21だけで長方形に形成されていてもよい。棚本体20は、その上に物品を載置し得る限り、どのような形状や構造でもよい。例えば、棚本体20が深さを有し得るように、枠体21に沿って側壁が形成されていてもよい。その場合、側壁が中実な壁面であっても格子状になっていても、図示した枠体21と同様な枠体部分が上下に間隔を置いて複数本並置されていても、他の形態でもよい。載置部22も、格子状の代わりに、中実な板状体からなっていてもよい。なお、棚本体20が比較的厚みのある板状体からなる場合、嵌合部は、管状部30の代わりに、板状体の隅(例えば四隅)に形成された貫通孔とその周壁部とからなっていてもよい。板状体は、内部にハニカム構造を有するようなものでもよい。
棚3の嵌合部としての管状部30は、図1に加えて特に図2並びに図5の(a)及び(b)からわかるように、夫々、孔31aを備えた円筒状の本体部31と、該本体部31の上部部分32に形成された雌ねじ部33とからなる。なお、この管状部30は、十分な剛性を有するように、肉厚に形成される。この例では、管状部30の本体部31のうち雌ねじの形成されていない下部部分34の内周面35は、下方ほど径が大きくなるようなテーパを備えた円錐台状である。内周面35は、下端部36において最大径D21を有し、上端部37において最小径D22を有する。この例では、上端部37の内径D22は雌ねじ部33の内径と同程度であるけれども、上端部37の内径D22は雌ねじ部33の内径よりも大きくてもよく、場合によっては、より小さくてもよい。所望ならば、下部部分34の内周面35は、径が一定の円筒状であってもよい。図5の(a)からわかるように、円筒状本体部31の最小径部36の内径D22は、支柱10の外径D1よりも所定長だけ大きい。なお、場合によっては、下部部分34は、中心軸線Cのまわりで回転対称な形状でなくてもよい。管状部30の外表面の形状は、棚構造体1の働きに直接関係しないので、強度を確保し得る限りどのような形状でもよい。
係止手段としてのスリーブ40は、図3の(a)において、実線及び想像線で示したような同一形状の一対(二つ)の半体50,50からなる。スリーブ半体50,50が組み合わされた状態では、図3の(a)の実線部分50及び想像線部分50の全体からかわるように、スリーブ40は、中空円錐台状の形状を有する。スリーブ40は、典型的には、樹脂製である。なお、スリーブ40は、所望ならば、管状部30より軟らかい金属材料で出来ていてもよく、場合によっては、管状部30と同程度又は管状部30よりも硬い材料で出来ていてもよい。
スリーブ40の外周面41は上方ほど細くなるようなテーパが形成された円錐台状(即ち円錐台の周面と同じ形状)である。この例では、テーパの角度がスリーブ40の全長にわたって一定であるけれども、テーパの角度がスリーブ40の高さ方向の部位によって異なっていてもよく、例えば、径が一定の円筒状部分が、上端部42の近傍や下端部43の近傍にあってもよい。スリーブ40のうち小径の上端部42の外径D3は管状部30の最小径部37の内径D22よりも小さく、且つスリーブ40のうち大径の下端部43の外径D4は管状部30の最大径部36の内径D21よりも大きい。すなわち、スリーブ40は、小径の環状端面42aと、大径の環状端面43aとを有する。
スリーブ40の中心孔44は、実質的に支柱10の外径D1に一致する径D1の円柱状ないし円筒状の孔からなる。なお、スリーブ40の孔44の周面45即ちスリーブ40の内周面45には、更に、小径の上端部42に近接する部位46に、円形の突条ないしリブ47が形成されている。すなわち、スリーブ40は部位46の全周に半径方向内向きに突出した被係合部としての突起ないし突条47を有する。この突起47は、典型的には、支柱10の環状溝13の横断面形状と相補的な横断面形状を有する。但し、スリーブ半体50,50が支柱10の周りでスリーブ40を形成するように組み合わされた際に、スリーブ40の突起47が支柱10の溝13に嵌り込み、支柱10に対するスリーブ半体50,50の軸線方向Aの下向きA1の変位が溝13と突起47との係合により禁止され得る限り、突起部47の横断面形状は溝13の横断面形状とは、異なっていてもよい。なお、支柱10の溝13が全周に形成されている場合でも、突起47が周方向の一部に形成されていてもよい。この例では、溝13に係合する突起47のA方向位置が実質的に棚3の高さ位置にほぼ対応することから、突起47がスリーブ40の上端部42の比較的近傍に形成されているけれども、その代わりに、例えば、スリーブ40のうち管状部30に丁度密接に嵌合される部位のうちの所望の高さ位置に突起47が形成されていてもよい。
なお、溝13が軸線方向Aに比較的狭い間隔で形成されている場合には、スリーブ40は、複数列の溝13に係合されるように、軸線方向Aに間隔をおいて複数列の突起ないし突条47を備えていてもよい。
スリーブ半体50,50は、組み合われた際に上述のようなスリーブ40を形成し得るように、夫々、テーパの付いた部分円錐台状の外周面51,51、及び部分円筒状の内周面55,55を備える。内周面55,55には、組み合わされた際に円形の突起ないし突条47を形成すべく半円状に延びた突起ないし突条57,57が形成されている。スリーブ半体50,50は、夫々の一側縁58,58に凸部58a,58aを備え、他側縁59,59に凹部59a,59aを備える。一方のスリーブ半体50の側縁58,59が他方のスリーブ半体50の側縁59,58に当接するように組み合わされた際、夫々の凸部58a,58aが他方の凹部59a,59aに丁度嵌り込むように、スリーブ半体50,50の側縁58,59は、相補的形状を有する。スリーブ半体50の薄肉の上端部52,52の端面52a,52aにより、スリーブ40の端部42の環状の小径端面42aが形成される。
ここでは、スリーブ40が二つの同一形状のスリーブ半体50,50からなるとして説明したけれども、スリーブ40は三つ以上の同一形状の中空の部分円錐台状部からなっていてもよく、また、スリーブ40を形成する複数の中空の部分円錐台状部が、相互に側縁で組合せ可能である限り、相互に異なる形状を有していてもよい。
組立に際しては、例えば、支柱10の所望の高さ位置の溝13に突起57,57が嵌るようにスリーブ半体50,50を支柱10の溝13のまわりで相互に嵌合わせて支柱10の溝13のまわりにおいてスリーブ40を形成し、次に、スリーブ40の小径端部42側(上端側)から支柱10及びスリーブ40に対して下向きA1に管状部30を嵌装する。この嵌装に際して、スリーブ40の大径下端部43の外径D4と小径上端部42の外径D3との中間の内径D22〜D21を有する管状部30は、その内周面35がスリーブ40の外周面41に実質的に密接するようにスリーブ40に途中まで嵌った状態で止まる(図2又は図5の(a))。なお、上述のように、管状部30の内周面35は、径D4と径D3との中間の大きさで一定の径の円筒状形状を有していてもよい。
この状態では、スリーブ40の半体50,50の分離が管状部30によって禁止されるので、スリーブ40はその中空円錐台状の形状を保つ。一方、スリーブ40は、突起部47で支柱10の溝13に嵌っているので、スリーブ40の支柱に対するA1方向変位が禁止される。従って、各スリーブ40は、対応する管状部30を上向きA2に支える。その結果、棚3にA1方向の大きな荷重がかかり棚3の管状部30にA1方向に大きな荷重がかかっても、棚3が管状部30を介して安定に支持され得る。
環状部材60は、図2並びに図5の(a)及び(b)に加えて図4の(a)及び(b)に示したように、全体として概ね円筒状の形状を有する。円筒61の外周面62には、雄ねじ部63が形成され、上端面64側にはトルク入力用被係合凹部65が周方向に間隔をおいて形成されている。円筒61の下端面66は、中心軸線Cに垂直な平面をなす環状面になっている。環状部材60は、外周の雄ねじ部63で棚3の管状部30の雌ねじ部33に螺合されると共に、円筒61の中央孔部67で支柱10に嵌合されている。
すなわち、円筒61の外径D5は、棚3の管状部30の最小内径D22に実質的に一致し(但し、雄ねじ部63と雌ねじ部33との螺合深さ分は除く)、内径D6は支柱10の外径D1にほぼ一致する。なお、実際上は、環状部材60を支柱10の本体部11から容易に抜け易くするために、環状部材60の内径D6は支柱10の外径D1よりも十分に大きく、環状部材60が支柱10に多少の間隙をもって遊嵌されることが好ましい。
なお、支柱10に係合したスリーブ40に棚3の管状部30を嵌めてスリーブ40で棚3の管状部30を係止させた通常の使用状態では、図2や図5の(a)に示したように、環状部材60の奥側端面(下端面)66とスリーブ40の小径端部42の環状上端面42aとの間には、軸線Cの延在方向Aに間隙Gがある。なお、この状態では、環状部材60の上端部68は、典型的には、管状部30の孔の上端部内にほぼ収容された状態にある。但し、所望ならば、管状部30の上端部からA2方向に突出していてもよい。
この状態で、環状部材60をC1方向に回すと、雄ねじ部63と棚3の管状部30の雌ねじ部33との螺合により、環状部材60が棚3の管状部33及び支柱10に対してA1方向に変位される。環状部材60及び管状部30のねじ部63,33は、この例では右ねじであるけれども、所望ならば左ねじでもよい。環状部材60のC1方向回転に伴う環状部材60のA1方向変位は、環状部材60の下端面66がスリーブ40の小径環状上端面42aに当接するまで進行する。環状部材60の端面66がスリーブ40の小径環状端面42aに当接すると、環状部材60のA1方向の更なる変位がスリーブ40の小径環状端面42aにより禁止されるので、環状部材60が更にC1方向に回された場合、環状部材60の雄ねじ部63に雌ねじ部33で螺合された管状部30がA2方向に持上げられる(図5の(b))。すなわち、管状部30の下部の円錐台状内周面35がテーパのあるスリーブ40の外周面41に当初は密接され摩擦係合されて強く嵌合されていても、管状部30がスリーブ40からA2方向に容易に分離され得る。
以上において、支柱10と棚3の管状部30との間にテーパのあるスリーブ40を配置することにより棚3の管状部30を支柱10に対して係止するに際して、スリーブ40の配設のために実際上必然的に生じる支柱10と棚3の管状部30との間の環状スペースSが、そのまま環状部材60の配設領域として用いられている。この例の場合、管状部30の構造で従来の構造とは最低限異ならせる必要があるのは、環状領域Sに配設される環状部材60が螺合され得るように、管状部30の上部に雌ねじ部33を有する点である。
環状部材60を回すための回し工具70の一例が、図6の(a)〜(c)に示されている。回し工具70は、係合突起部71を備えた回し工具本体72と、柄73と、飾り部74とを有する。
柄73は、実質的に円柱状で、外周に雄ねじ部75を備え、該雄ねじ部75で支柱10の上端近傍にある雌ねじ部15に螺合可能である。従って、円柱状の柄73は、支柱10の径D7の孔に丁度嵌る外径を有する。飾り部74は、回し工具70が支柱10の上端部の孔に挿入・螺合された際、孔の上端開口を閉じるようなほぼ円板状ないし円盤状の形状を有する。飾り部74が孔の上端開口を閉じ得る限り、飾り部74の形状は異なっていてもよい。所望ならば、飾り部74がなくてもよい。
回し工具本体72は、柄73の先端部に一体的に形成され、柄73の円柱のほぼ直径に沿って平面状当接面ないし基準面76を備えると共に該基準面76において半円状になるような切欠77を備える。切欠77の周面77aの径は、支柱10の外径D1に実質的に一致する(支柱10が円柱状の代わりに角柱状等である場合、周面77aの径は支柱10の外接円の径に実質的に一致することになる)。基準面76には、環状部材60のトルク入力用被係合凹部65に係合可能なトルク入力用係合突起部71が、切欠77の周壁に沿って90度間隔に形成されている。なお、基準面76は、柄73につながる側に、長さLの管状部受容領域78を有する。
なお、突起部71は、切削加工や鋳造で形成されても、曲げ加工で形成されても、溶接等で面76に一体化されてもよい。曲げ加工で形成される場合、回し工具70は、板金の打抜き体などであってもよい。
以上のように構成された回し工具70は、典型的には、一旦組立てた棚構造体1の少なくとも一つの棚3のA方向の高さ位置を変えるか少なくとも一つの棚3を取外すとき等に用いられる。
例えば、支柱10、スリーブ40、環状部材60及び棚3の管状部30が、図5の(a)に示すような状態おいて、棚構造体1が使用されている場合を想定する。
まず、回し工具70の円板状飾り部74を指先でつまんで回すことにより、回し工具70を支柱10の上端部14から外す(図1や図6の(a)参照)。
次に、回し工具70の基準面76が棚3の管状部30の上端面に向き合うように基準面76を下向きにした状態で、支柱10の外表面ないし外周面に回し工具70の切欠部77を当てると共に回し工具70の切欠77の周壁にあるトルク入力用係合突起部71を環状部材60のトルク入力用被係合凹部65に嵌込む(図5の(a))。これにより、回し工具70の係合突起部71は、直径方向の両端及びその中間の部位の三箇所において、対応する被係合凹部65に係合される。
次に、回し工具70を支柱10の中心軸線CのまわりでC1方向に回す。これにより、環状部材60がA1方向に変位してその奥端面66がスリーブ40の小径環状端面42aに当接し、回し工具70を更にC1方向に回すことにより、棚3の管状部30を支柱10及びスリーブ40に対してA2方向に変位させて、棚3の管状部30の円錐台状内周面35とテーパ付スリーブ40の外表面41との間の強固な摩擦係合を解除する(図5の(b))。このとき、環状部材60が奥端面(下端面)66でスリーブ40の上端面42aに押付けられた状態に保たれるから、一旦持上げられた管状部30が下にA2方向に落ちる虞れがない。
従って、回し工具70による棚3の管状部30とテーパ付スリーブ40との強固な係合の解除を他の支柱10のところでも同様に行うことにより、棚3の各管状部30と対応するスリーブ40との間の強固な係合が棚3の全ての管状部30において完全に解除され得、棚3を手等で持上げて支柱10から取外し得る。
以上においては、環状部材60が、端面に90度間隔に四つのトルク入力用被係合凹部65を備え、回し工具70もこれに応じて、半円状切欠77の外周壁に沿って90度間隔に三つのトルク入力用係合突起71を備える例について説明したけれども、例えば、被係合凹部の数は異なっていてもよく、例えば、図4の(c)及び(d)に示したように、環状部材60Aが、端面に60度間隔に六つの係合凹部65Aを備えていてもよい。環状部材60Aは、その他の点は、環状部材60と同様に構成され得る。なお、環状部材60Aは、長さ方向Aの全長にわたって雄ねじ部63を有する代わりに、図4の(d)に示したように、その一部に雄ねじ部63Aを有していてもよい。図4の(c)及び(d)の変形例において、図4の(a)及び(b)の環状部材60とは異なる点のある要素の符号には最後に添字Aを付し、同様な要素には同一の符号を付すか符号を省いてある。
この変形例の場合、回し工具70Aは、典型的には、図6の(d)に示したように、半円状切欠77の外周壁に沿って60度間隔に四つの係合突起71Aを備える。回し工具70Aは、その他の点は、回し工具70と同様に構成され得る。
なお、環状部材のトルク入力用被係合凹部が周方向に等間隔に配置される代わりに、不等間隔に配置されていてもよく、その場合、回し工具は複数のトルク入力用被係合凹部のうち所望個数の被係合凹部に係合されるような配置でトルク入力用係合突起を備える。但し、回し工具により環状部材に回転トルクを有効に付与し易いように、切欠部77が半円形であり、直径方向の実質的に両端に係合突起が設けられることが好ましい。
また、所望ならば、環状部材60,60Aの端面に被係合凹部65,65Aを設け回し工具70,70Aに係合突起71,71Aを設ける代わりに、環状部材60,60Aの端面にトルク入力用被係合突起を設け回し工具71,71Aに相補的形状のトルク入力用係合凹部を設けてもよいけれども、回し工具の装着を容易にすると共に被係合突起が管状部の上端面から大きく突出するのを避けるためには、環状部材の端面に被係合凹部がある方が好ましい。
更に、以上においては、係止手段がスリーブ40からなる例、即ち、係止手段が全体として筒状である例について説明したけれども、係止手段は、棚3の管状部30をA1方向に支え得る限り、筒体でなくてもよい。すなわち、テーパ付き係止手段が、支柱10の溝部に係合されて管状部30のA2方向変位を規制し得る限り、図3の(b)に示したように、係止手段40Aが、周方向に間隔をおいて配置された複数の係止片50Aからなっていてもよい。その場合でも、各係止片50Aの端面52aAによって実質的に平面が規定され該平面で環状部材60,60Aの下端面66を受け得る限り、環状部材60のA2方向変位が該平面52aAで禁止されるので、環状部材60による棚3の管状部30のA1方向持上げが同様に行われ得る。但し、管状部30を嵌める前に係止片50Aが支柱10から外れる虞れがないようにしたりテーパのある外周面51Aに管状部30の孔31aの円錐台状周面35により加えられるA2方向力によって係合突起57Aが溝13から外れるのを避ける必要があるので、溝13及び係合突起57Aの形状に制約が生じる虞れがあることから、係止手段は全体として筒状の形態を自立的に保ち得るスリーブ40又は同様なものからなることが好ましい。図3の(b)及び(c)の変形例において、図3の(a)の例とは異なる点のある要素の符号には最後に添字Aを付し、同様な要素については同一の符号を付す代わりにその符号を省いてある。
なお、環状部材60は、典型的には、その全体が、管状部30よりも小径で(但し螺合部分の径の重なり合いは無視する)且つ支柱10よりも大径であり、管状部30と支柱10との間の環状間隙Sに収容され得るような円筒状体からなるけれども、場合によっては、その上端に半径方向外向きに突出したフランジ状部を有していてもよい。その場合、フランジ状部は、管状部30の上端よりも上において管状部30の外径と同程度の外径を有する(勿論、管状部30の外径よりも大きくてもよいけれども、過度な張出しを最低限に抑えるためには、フランジ状部の外径は管状部30の外径と同程度に抑えられる)。その場合、フランジ状部は、端面に凹凸部を備えていてもよいけれども、その代わりに、その外周縁で回し工具に係合され得るように、例えば、ボルト等の頭部を回すためのレンチないしスパナの如き回し工具が係合されるように厚肉円筒部の直径方向に対向する少なくとも二箇所がトルク入力用被係合部になるように平行な二平面で切欠かれた形状を有していてもよい。勿論、フランジ状部の外周面に間隔をおいてトルク入力用被係合凹部が形成されていてもよい。