JP4510602B2 - ディフューザ付風車 - Google Patents

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Description

本発明は、ディフューザ付風車に関する。
現在、水平軸風車の発電量を増大させる手段として、流路面積が漸次拡大するように形成されたディフューザ(拡大管)が採用されている。ディフューザの入口(小面積開口部)を風上側に配置するとともに出口(大面積開口部)を風下側に配置し、ディフューザの入口近傍に水平軸風車のロータを配置することにより、ロータに流入する風速を高めて発電量の増大を図ることができる。
また、近年においては、ディフューザの出口近傍の圧力を低下させることにより、さらに集風効果を高める技術が種々提案されている。例えば、ディフューザの出口に「つば」を付けてカルマン渦を発生させ、ディフューザ出口付近に低圧域を発生させることにより、ディフューザ入口における流入風速を増大させる試みがなされている(例えば、非特許文献1参照。)。
大屋裕二、他5名、「風レンズ(風の局所集中効果)による風力発電の高出力化」、第33回流体力学講演会講演集、日本航空宇宙学会、2001年、p.229-232
しかし、非特許文献1に記載された技術は、ディフューザの出口付近で積極的にカルマン渦を発生させるものであるため、図4に示すようにディフューザ100の出口120の付近で境界層が剥離してしまい、実質的に流路が拡張しない。このため、ディフューザ100の入口110への流入風速が低くなり、発電効率が低下するおそれがあった。
本発明の課題は、ディフューザ付風車において、ディフューザ出口付近の境界層の剥離を抑制することにより、ディフューザ入口の流入風速を高めて発電効率を向上させることである。
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、流路面積が漸次拡大するように形成され小面積開口部が風上側に大面積開口部が風下側に各々配置されたディフューザと、前記ディフューザによって囲われた流路空間の前記小面積開口部近傍に配置され水平方向に延在する回転軸を中心に回転するロータと、前記回転軸を支持するナセルと、を備えるディフューザ付風車において、前記ディフューザと前記ナセルとを連結する連結部と、前記ディフューザの前記大面積開口部近傍の内壁に設けられた孔と、前記孔から前記ディフューザ内及び前記連結部内を経由して前記ナセルの内部にいたる連通流路と、前記ナセルに設けられた排気口と、前記連通流路から前記排気口へと向かう気流を生成する気流生成手段と、を備えることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ディフューザの出口(風下側の大面積開口部)近傍の内壁に孔を設け、この孔からナセルの内部にいたる連通流路を設けるとともに、この連通流路からナセルに設けられた排気口へと向かう気流を気流生成手段で生成する。このため、ディフューザの出口近傍の空気を、連通流路を経由させてナセルの内部に導いて排気口から排出することができる。従って、ディフューザの出口内壁における境界層の剥離を抑制することができるので、ディフューザ出口付近の流路を実質的に拡張することができる。この結果、ディフューザ入口の流入風速を高めることができ、発電効率を向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディフューザ付風車において、前記ロータの回転力を電力に変換する発電機と、前記発電機から放出される熱を前記排気口から前記ナセルの外部に排出する発電機用冷却ファンと、を備え、前記発電機用冷却ファンは、前記気流生成手段として機能することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、発電機から放出される熱を排気口からナセルの外部に排出して発電機を冷却する発電機用冷却ファンを気流生成手段として機能させる。すなわち、気流生成手段を別途設けることなく従来から使用されている発電機用冷却ファンを有効に利用して本発明の作用効果(集風作用及び発電量増大効果)を得ることができるので、低コスト化を達成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のディフューザ付風車において、前記ロータの回転力を電力に変換する発電機と、前記ロータの回転数を増加させて前記発電機に伝達する増速機と、前記増速機から放出される熱を前記排気口から前記ナセルの外部に排出する増速機用冷却ファンと、を備え、前記増速機用冷却ファンは、前記気流生成手段として機能することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、増速機から放出される熱を排気口からナセルの外部に排出して増速機を冷却する増速機用冷却ファンを気流生成手段として機能させる。すなわち、気流生成手段を別途設けることなく従来から使用されている増速機用冷却ファンを有効に利用して本発明の作用効果(集風作用及び発電量増大効果)を得ることができるので、低コスト化を達成することができる。
本発明によれば、ディフューザの出口近傍の内壁に孔を設け、この孔からナセルの内部にいたる連通流路を設けるとともに、この連通流路から排気口へと向かう気流を生成することにより、ディフューザの出口近傍の空気をナセルの内部に導いて排気口から排出することができる。この結果、ディフューザの出口内壁における境界層の剥離を抑制してディフューザ内の気流の円滑化を達成することができ、ディフューザ入口の流入風速を高めて発電効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。
まず、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係るディフューザ付風車1の構成について説明する。本実施の形態に係るディフューザ付風車1は、図1及び図2に示すように、所定の場所に設置されるタワー10、タワー10の頂部に取り付けられたディフューザ20、ディフューザ20によって囲われる流路空間に配置されたロータ30及びナセル40、ディフューザ20とナセル40と連結する連結部50、ナセル40の内部に搭載された発電機60及び冷却ファン70等を備えて構成されている。
ディフューザ20は、図1及び図2に示すように、流路面積が漸次拡大するように形成された拡大管であり、風上側に配置される小面積開口部21と、風下側に配置される大面積開口部22と、を有している。ディフューザ20の大面積開口部22近傍の内壁22aには、図2に示すように、複数のオリフィス(孔)23が設けられている。また、ディフューザ20の内部には、図2に示すように、各オリフィス23に連通するとともに後述する連結部内流路51に連通接続されるディフューザ内流路24が設けられている。
ロータ30は、図1及び図2に示すように、風力を回転力に変換する2枚のブレード31及びハブ32を有しており、ハブ32に固定された水平方向に延在する回転軸33を中心に回転するように構成されている。ロータ30は、ディフューザ20によって囲われる流路空間の風上側(すなわち小面積開口部21の近傍)に配置されている。
ナセル40は、図1及び図2に示すように、ロータ30の風下側に配置された状態で連結部50によってディフューザ20に連結される。ナセル40の内部には、発電機60、冷却ファン70及び図示されていないコントローラ等の各種機器が搭載される。ナセル40の風上側端部には、ロータ30の回転軸33が回転自在に取り付けられており、ナセル40の風下側端部には、ナセル40内の空気を外部に排出するための図示されていない排気口が設けられている。また、ナセル40の上下面には、後述する連結部内流路51に位置合わせされる図示されていない貫通孔が設けられている。
ディフューザ20とナセル40とを連結する連結部50は、図1及び図2に示すように、ディフューザ20によって囲われる流路空間でナセル40の姿勢を一定に保持する。本実施の形態においては、連結部50として、所定の厚さを有しナセル40の上下に配置される2枚の板状部材を採用している。連結部50の内部には、図2に示すように、ディフューザ20内に設けられたディフューザ内流路24に連通接続され、ナセル40に設けられた貫通孔に位置合わせされる連結部内流路51が設けられている。ディフューザ内流路24と連結部内流路51とナセル40に設けられた貫通孔とによって、ディフューザ20のオリフィス23からナセル40内部にいたる連通流路が構成されることとなる。
発電機60は、図2(a)に示すようにナセル40の内部に搭載され、ロータ30の回転力を電力に変換する。冷却ファン70は、ナセル40の内部において風上側から風下側へと向かう気流を生成することにより、発電機60から放出される熱を排気口からナセル40の外部に排出して発電機60を冷却する。また、冷却ファン70は、前記したように風上側から風下側へと向かう気流を生成することにより、連通流路を介してオリフィス23から境界層を吸い込み、ナセル40内に流入した空気を排気口から排出する。すなわち、冷却ファン70は、本発明における気流生成手段として機能することとなる。
次に、図3及び表1を用いて、本実施の形態に係るディフューザ付風車1を採用した場合における集風作用及び発電量増大効果について説明する。
まず、図3に示すように、ディフューザ20の入口(小面積開口部21)における流路面積、気流の速度及び静圧を各々S、U、pとし、ディフューザ20の出口(大面積開口部22)における開口面積、気流の速度及び静圧を各々U、S、pとする。そして、断面積Sの流管における一様流の速度及び静圧を各々U、pとし空気密度をρとすると、ベルヌイの式(A)及び流量の式(B)は以下のようになる。
Figure 0004510602
Figure 0004510602
これらベルヌイの式(A)及び流量の式(B)を用いて、ロータ30に流入する気流の速度(ディフューザ入口における気流の速度:以下「流入風速」という)Uを求めると、流入風速Uは、式(C)に示されるようにディフューザ出口における圧力係数CP2の関数として表される。かかる式(C)により、ディフューザ出口における圧力が低くなるほど流入風速Uが増加することが明らかとなる(集風作用)。
Figure 0004510602
次に、ディフューザ付風車1の出力係数をη(定数)とすると、発電に利用できる単位時間当りの空気エネルギ(以下「出力」という)Eは以下の式(D)で表される。そして、式(D)のUに式(C)を代入することにより式(E)が得られる。式(E)に示されるように、出力Eはディフューザ出口における圧力係数CP2の関数として表されることとなる。
Figure 0004510602
Figure 0004510602
この式(E)を圧力係数CP2で微分すると、以下の式(F)が得られる。
Figure 0004510602
ここで、ディフューザ出口における圧力pが一様流の圧力pに充分近いことに着目すると、式(F)において「CP2≒0」と近似することができる。そして、式(F)において「dE」を出力変動「ΔE」とおき、「dCP2」を圧力係数変動「ΔCP2」とおくことにより、近似式(G)が得られる。かかる式(G)により、ディフューザ出口における圧力が低下した場合(ディフューザ出口における圧力係数変動ΔCP2が負となる場合)に、出力Eが増大する(出力Eの変動量ΔEが正となる)ことが明らかとなる(発電量増大効果)。
Figure 0004510602
<具体例>
一様流の速度Uを「8m/s」、出力係数ηを「0.35」、空気密度ρを「1.225kg/m」、ロータ30の面積(=ディフューザ入口における流路面積)Sを「200m」、ディフューザ出口における流路面積Sを「230m」とする。そして、本発明を適用しない場合におけるディフューザ出口の圧力係数CP2を「−0.4」、本発明を適用した場合におけるディフューザ出口の圧力係数CP2を「−0.6」として式(C)及び式(E)を用いて流入風速U及び出力Eの理論値を求め、その結果を表1に示した。
Figure 0004510602
表1に示されるように、ディフューザ出口の圧力係数CP2を「−0.4」から「−0.6」に低下させた場合には、流入風速Uの理論値が「0.8m/s」増加し、出力Eの理論値が「12.3kW」増加することとなった。
以上説明した実施の形態に係るディフューザ付風車1においては、ディフューザ20の出口(大面積開口部22)近傍の内壁22aにオリフィス23を設け、オリフィス23からナセル40の内部にいたる連通流路(ディフューザ内流路24、連結部流路51及び貫通孔)を設けるとともに、冷却ファン70で連通流路から排気口へと向かう気流を生成する。このため、ディフューザ20の出口近傍の空気を、連通流路を経由させてナセル40の内部に導いて排気口から排出することができる。従って、ディフューザ20の出口内壁22aにおける境界層の剥離を抑制することができるので、ディフューザ20の出口付近で実質的に流路を拡張することができる。この結果、ディフューザ20の入口の流入風速を高めることができ、発電効率を向上させることができる。
また、以上説明した実施の形態に係るディフューザ付風車1においては、発電機60から放出される熱を排気口からナセル40の外部に排出して発電機60を冷却する冷却ファン70を気流生成手段として機能させることができる。すなわち、気流生成手段を別途設けることなく従来から使用されている発電機60用の冷却ファン70を有効に利用して、本発明の作用効果(集風作用及び発電量増大効果)を得ることができるので、低コスト化を達成することができる。
なお、以上の各実施の形態においては、発電機60用の冷却ファン70のみを設けた例を示したが、ロータ30と発電機60の間に増速機を設けるとともに、増速機を冷却する増速機用冷却ファンを設け、増速機用冷却ファンによって風上側から風下側へと向かう気流を生成することもできる。かかる場合における増速機用冷却ファンは、本発明における気流生成手段として機能する。また、発電機用冷却ファンや増速機用冷却ファンとは別の専用ファンを気流生成手段としてナセル40の内部に搭載して、風上側から風下側に向かう気流を生成することもできる。
また、以上の実施の形態においては、連結部50(板状部材)をナセル40の上下に配置した例を示したが、連結部50の位置はこれに限られるものではなく、例えばナセル40の左右に連結部50を配置することもできる。また、以上の実施の形態においては、連結部50として「板状部材」を採用したが、ディフューザ20に対してナセル40を固定することができかつその内部に流路を設けることができる部材であればいかなる部材を用いることもできる。
また、以上の実施の形態においては、ディフューザ20の大面積開口部22近傍の内壁22aに複数のオリフィス23を設けた例を示したが、ディフューザ20の内壁22aに設けられる孔の形態はこれに限定されるものではない。例えば、オリフィス23に代えて溝孔を設け、この溝孔をディフューザ内流路24に連通させることもできる。
本発明の実施の形態に係るディフューザ付風車の概略斜視図である。 (a)は図1に示したディフューザ付風車のII−II部分の断面図であり、(b)は(a)に示したディフューザ付風車のディフューザ出口近傍の内壁の一部を矢印B方向から見た場合の拡大図である。 本発明の実施の形態に係るディフューザ付風車のディフューザ内の気流を表す概念図である。 従来のディフューザ付風車のディフューザ内の気流を表す概念図である。
符号の説明
1 ディフューザ付風車
20 ディフューザ
21 小面積開口部
22 大面積開口部
22a 内壁
23 オリフィス(孔)
24 ディフューザ内流路(連通流路の一部)
30 ロータ
33 回転軸
40 ナセル
50 連結部
51 連結部内流路(連通流路の一部)
60 発電機
70 冷却ファン(発電機用冷却ファン、気流生成手段)

Claims (3)

  1. 流路面積が漸次拡大するように形成され小面積開口部が風上側に大面積開口部が風下側に各々配置されたディフューザと、前記ディフューザによって囲われた流路空間の前記小面積開口部近傍に配置され水平方向に延在する回転軸を中心に回転するロータと、前記回転軸を支持するナセルと、を備えるディフューザ付風車において、
    前記ディフューザと前記ナセルとを連結する連結部と、
    前記ディフューザの前記大面積開口部近傍の内壁に設けられた孔と、
    前記孔から前記ディフューザ内及び前記連結部内を経由して前記ナセルの内部にいたる連通流路と、
    前記ナセルに設けられた排気口と、
    前記連通流路から前記排気口へと向かう気流を生成する気流生成手段と、
    を備えることを特徴とするディフューザ付風車。
  2. 前記ロータの回転力を電力に変換する発電機と、
    前記発電機から放出される熱を前記排気口から前記ナセルの外部に排出する発電機用冷却ファンと、を備え、
    前記発電機用冷却ファンは、
    前記気流生成手段として機能することを特徴とする請求項1に記載のディフューザ付風車。
  3. 前記ロータの回転力を電力に変換する発電機と、
    前記ロータの回転数を増加させて前記発電機に伝達する増速機と、
    前記増速機から放出される熱を前記排気口から前記ナセルの外部に排出する増速機用冷却ファンと、を備え、
    前記増速機用冷却ファンは、
    前記気流生成手段として機能することを特徴とする請求項1又は2に記載のディフューザ付風車。
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