JP4509367B2 - 結露インジケータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は結露すると損壊を招く精密機器に載置または貼付して使用されるものであって、結露の発生の有無を明瞭な変色により確認するインジケータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器や家電製品等の精密機器は、結露が発生してその内部の回路が水で濡れると、損壊を招く。精密機器には結露が発生していないことを目視で確認する結露インジケータが用いられる。
【0003】
本出願人は、結露した水により変色し、変色後に乾燥しても元の色調に戻らず、簡便に結露発生の有無を確認できる結露インジケータを、特願2000−29439号において出願している。このインジケータは、結露した水により色相が濃くなって結露の発生を表示するというものである。変色前後の色相は同系色である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、精密機器の結露発生の有無が、異なる色相の明瞭な変色により目視で、一層確認し易い結露インジケータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明の結露インジケータ1は、実施例に対応する図1の(A)を参照して説明すると、酸性染料と塩基性染料と反応染料とから選ばれる少なくとも一種類であって表面に一部露出している粉末状の水溶性染料4と、該表面で結露した水により該水溶性染料4を拡散するインキビヒクルとを含んで基材2上に設けられている変色層3が、紫外線で予め照射されていることによって、該露出した該水溶性染料4の分解により、その変色層3深部での未分解であって該拡散して現れる該水溶性染料4の色相とは別な色相になっているものである。
【0006】
水溶性染料としては、酸性染料、塩基性染料、反応染料が用いられる。具体的には、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドブルー74、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド27、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド94、C.I.アシッドグリーン5、C.I.アシッドオレンジ56から選ばれる酸性染料、C.I.ベーシックブルー5、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー19、C.I.ベーシックレッド12、C.I.ベーシックバイオレット21、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブラウン1から選ばれる塩基性染料、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド20、C.I.リアクティブブルー31、C.I.リアクティブグリーン5から選ばれる反応染料のうちの少なくとも一種類であることが好ましい。これらの水溶性染料はいずれも鮮やかな色相の粉末である。
【0007】
変色層3中の粉末状の水溶性染料4は、図1の(A)に示すようにその一部が表面に露出している。紫外線の照射前の変色層3表面は、この露出した粉末状の水溶性染料4によりこの鮮やかな色相に着色している。変色層3の表面に紫外線を照射すると、同図(B)に示すように露出した粉末状の水溶性染料4は化学変化を起こして分解し、くすんだ別な色相の分解物5になる。変色層3表面は鮮やかな色相からくすんだ別な色相へ変色する。このとき変色層3の深部の粉末状の水溶性染料4は適量な紫外線照射では分解しない。変色層3表面で結露した水10が同図(C)に示すように変色層3内へ浸透する。すると、変色層3深部の未分解の粉末状水溶性染料4は、同図(D)に示すようにこの水に溶解して変色層3中のインキビヒクルへ拡散する。変色層3は、その表面に現れる溶解した水溶性染料分子4aにより、くすんだ色相から、水溶性染料の示す鮮やかな濃い色相へ変色する。これを目視で観察することにより結露発生の有無を正確に確認することができる。溶解や拡散が不可逆的なので、インジケータ1は乾燥しても、変色前のくすんだ色相に戻らない。
【0008】
紫外線の照射線量は、30mJ/cm2〜20kJ/cm2が適量である。照射線量が30mJ/cm2未満であると、露出した水溶性染料が分解しないので、変色層3表面は水溶性染料の示す鮮やかな色相のままである。一方20kJ/cm2よりも多いと、変色層3深部の水溶性染料まで分解されてしまい、結露した水が変色層3に付着しても変色が起こらない。
【0009】
変色層3は、水溶性染料を0.1〜20重量%含むインキにより形成されたものであることが好ましい。この量を増減することにより、変色層3の変化を目視で観察し易い色調に調整することができる。水溶性染料が0.1重量%未満であると染料の拡散の濃度が希薄すぎて変色層3の色相変化は小さくなり、一方20重量%より多いと露出した染料が多すぎて紫外線で予め照射しても鮮やかな濃い色相のままとなり拡散による色相変化は小さくなり、いずれも誤認が起こり易い。変色層3は、このインキを基材2に印刷、塗布、噴霧、または被膜化して形成される。
【0010】
インキには水溶性染料を拡散するインキビヒクルも含まれる。インキビヒクルは、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、石油系樹脂、セルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種類のインキビヒクル用樹脂を含んでいることが好ましい。インキビヒクルは、これらの樹脂を水溶性染料非溶解性の有機溶剤に溶解したものである。この有機溶剤として、ジエチルベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレンの例示される芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンの例示される飽和炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの例示されるケトン類、クロロホルム、トリクロロエタンの例示されるハロゲン化炭化水素類、ミネラルスピリット、石油エーテルの例示される石油系溶剤のうちの少なくとも一種類を用いることが好ましい。インキビヒクルとして市販のインキメジウムを用いてもよい。
【0011】
インクには、隠蔽性粉体が含まれていてもよい。変色層3が隠蔽性粉体を含んでいると、水溶性染料の拡散前にはその色相が隠蔽され、この染料の拡散後には隠蔽性粉体が染料により染色されて変色し、その後乾燥しても変色が保持される。これにより変色層3の色相の変化を一層明瞭に観察することができる。隠蔽性粉体としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化白土、カオリン、ベントナイト、セリサイトのうちの少なくとも一種類が用いられることが好ましい。インキ中の隠蔽性粉体の量は70重量%以下であることが好ましい。70重量%を超えると基材への印刷等の際に塗工性が悪くなってしまう。
【0012】
インクには、色調調整剤、増量剤、増粘剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤の例示される添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
基材2は、インキの塗工性や保持性が良好であって、熱伝導性の良いものが用いられる。基材2は、例えば樹脂フィルム、紙、不織布が挙げられ、その厚さが10〜500μmであると好ましい。10μm未満であると強度が弱いうえインキの保持性が悪い。一方500μmより大きいと熱伝導性が悪くなって電子機器等の被検物と変色層3との間に温度差が生じ、被検物が結露しても変色層3表面に結露が発生しなくなってしまう。
【0014】
結露インジケータ1は、基材2の非観察面に粘着層が設けられていてもよく、さらに粘着層には剥離紙が付設されていてもよい。
【0015】
結露インジケータ1は、精密機器等の被検物に載置または貼付されて使用される。これにより結露発生の有無を正確に確認することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の結露インジケータの実施例を詳細に説明する。
結露インジケータ1は、具体的には以下のようにして製造される。
【0017】
インキビヒクル用樹脂を有機溶剤に溶解し、次いで水溶性染料と隠蔽性粉体とを加え、ボールミル、三本ロール、攪拌機、かいらい機、または分散機により混練し、インキを得る。紙製の基材2にこのインキを印刷することにより、変色層3を形成させる。この変色層3に適量の紫外線を照射すると、結露インジケータ1が得られる。
【0018】
前記実施例に従って本発明を適用する結露インジケータを試作した例を実施例1〜14に示し、本発明を適用外のインジケータを試作した例を比較例1〜3に示す。
【0019】
(実施例1)
樹脂であるエトセル(エチルセルロース:ダウケミカル社製の商品名)9重量部をジエチルベンゼン90重量部に溶解させたインキビヒクルに、水溶性染料であるC.I.アシッドブルー9(三栄化学工業(株)社製)1重量部を添加し、らいかい機で混練して変色層用のインキを調製した。基材である粘着剤付き合成紙ユポタック(大日本インキ化学工業(株)社製の商品名)に、このインキをスクリーン印刷し、変色層を形成した。紫外線照射装置により、変色層に紫外線を5分間照射し、結露インジケータが得られた。このとき紫外線強度計で測定した照射量は150mJ/cm2であった。
【0020】
(実施例2)
エトセル9重量部をジエチルベンゼン78重量部に溶解させたインキビヒクルに、C.I.アシッドブルー9の1重量部および隠蔽性粉体であるタルク10重量部を添加し、らいかい機で混練して変色層用のインキとした。粘着剤付き合成紙ユポタックに、このインキをスクリーン印刷し、変色層を形成した。紫外線照射装置を用いて5分間で照射線量150mJ/cm2の紫外線を変色層に照射すると、結露インジケータが得られた。
【0021】
(実施例3〜12)
表1に記載のとおりに、水溶性染料、隠蔽性粉体、インキビヒクル、および基材を用いたこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0022】
(実施例13)
1分間で照射線量30mJ/cm2の紫外線を照射したこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0023】
(実施例14)
直射日光により8時間で照射線量20kJ/cm2の紫外線を照射したこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0024】
(比較例1)
紫外線を照射しなかったこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0025】
(比較例2)
10秒間で照射線量5mJ/cm2の紫外線を照射したこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0026】
(比較例3)
直射日光により1日あたり8時間で3日間、照射線量50kJ/cm2の紫外線を照射したこと以外は実施例2と同様にして、結露インジケータを得た。
【0027】
(変色試験)
実施例1〜14、および比較例1〜3で試作した結露インジケータを、各々ステンレス板に貼付し5℃に冷却した後、30℃相対湿度70%の雰囲気下に暴露し、ステンレス板表面に結露を発生させた。このときのインジケータの変色層表面の色を観察した。さらにこのインジケータを50℃で24時間乾燥した後、変色層表面の色を観察した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、実施例1〜14の結露インジケータはいずれも、結露したときその変色層がくすんだ色相から鮮やかな別な色相へ明瞭に変色し、結露の発生を目視により確認できた。また変色後のインジケータを乾燥させてもその色調は保持されていた。比較例1〜3のインジケータはいずれも、結露したときその変色層が単に同系色の濃淡のみの変化であって観察し難いか未変化であった。
【0030】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明の結露インジケータは、結露した水によりくすんだ色相から鮮やかな別な色相へ明瞭に変色する。そのため、精密機器の結露発生の有無を、誤認することなく正確に確認することができる。インジケータの変色後に乾燥しても元の色に戻らず、記録として保存することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する結露インジケータの実施例途中を示す断面図である。
【符号の説明】
1は結露インジケータ、2は基材、3は変色層、4は粉末状の水溶性染料、4aは溶解した水溶性染料分子、5は分解物である。
Claims (4)
- 酸性染料と塩基性染料と反応染料とから選ばれる少なくとも一種類であって表面に一部露出している粉末状の水溶性染料と、該表面で結露した水により該水溶性染料を拡散するインキビヒクルとを含んで基材上に設けられている変色層が、紫外線で予め照射されていることによって、該露出した該水溶性染料の分解により、その変色層深部での未分解であって該拡散して現れる該水溶性染料の色相とは別な色相になっていることを特徴とする結露インジケータ。
- 前記水溶性染料が、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドブルー74、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド27、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド94、C.I.アシッドグリーン5、C.I.アシッドオレンジ56から選ばれる前記酸性染料、C.I.ベーシックブルー5、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー19、C.I.ベーシックレッド12、C.I.ベーシックバイオレット21、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブラウン1から選ばれる前記塩基性染料、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド20、C.I.リアクティブブルー31、C.I.リアクティブグリーン5から選ばれる前記反応染料のうちの少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1に記載の結露インジケータ。
- 前記紫外線は、その照射線量が30mJ/cm2〜20kJ/cm2であることを特徴とする請求項1に記載の結露インジケータ。
- 前記変色層は、前記水溶性染料を0.1〜20重量%含むインキにより形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の結露インジケータ。
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