従って、本発明の目的は、2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化により3−ペンテンニトリルを製造する方法であって、異性化の触媒を簡易な手法で反応混合物から取り除いて、これを再循環させることができ、そして2−メチル−3−ブテンニトリルからの(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの除去と(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを低減させた2−メチル−3−ブテンニトリルの再循環との両方を可能にする方法を提供することにある。上記の方法は、簡易且つ経済的に行われ、そしてアジポニトリルを製造する方法全体に取込可能であることが望ましい。
上記目的は、本発明に基づく3−ペンテンニトリルの製造方法によって達成される。
(第1実施の形態)(Embodiment I)
第1実施の形態において、本発明の方法は、以下の処理工程:
(a)2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流を、少なくとも1種の溶解又は分散状態の異性化触媒上で異性化して、少なくとも1種の異性化触媒、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ1を得る工程、
(b)流れ1を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ2を頂部生成物として得て、そして少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得る工程、
(c)流れ2を蒸留して、流れ2における全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ4を頂部生成物として得て、そして流れ2における全てのペンテンニトリルの合計に対して3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ5を底部生成物として得る工程、
(d)流れ5を蒸留して、3−ペンテンニトリルを含む流れ6を底部生成物として得て、そして2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ7を頂部生成物として得る工程、
を含むことを特徴とする。
[反応物質流]
処理工程(a)において、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流の異性化は、少なくとも1種の異性化触媒上で行われる。
本発明の方法における特定の実施の形態において、反応物質流は、以下の処理工程:
(e)1,3−ブタジエンを少なくとも1種のヒドロシアン化触媒上でシアン化水素を用いてヒドロシアン化して、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、1,3−ブタジエン及びシアン化水素の残留物を含む流れ8を得る工程、
(f)流れ8を1回以上蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流れ9と、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を含む流れ10と、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11と、を得る工程、
(g)流れ11を蒸留して、3−ペンテンニトリルを含む流れ12を底部生成物として得て、そして2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ13を頂部生成物として得る工程、
により得られる。
処理工程(e)において、反応物質流は、1,3−ブタジエンを少なくとも1種のシアン化触媒上でシアン化水素を用いて最初にヒドロシアン化して、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル及び未転化1,3−ブタジエンを含む流れ8を得ることによって調製される。
ヒドロシアン化触媒として、リン配位子で安定化された均一系ニッケル(0)触媒を使用するのが好ましい。
ニッケル(0)錯体のリン配位子及び遊離リン配位子は、単座配位又は二座配位のホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット及びホスホニットから選択されるのが好ましい。
これらのリン配位子は、式I:
本発明において、化合物Iは、単一の化合物又は上記式の異なる化合物の混合物である。
本発明によると、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立に酸素又は単結合を表わす。X1、X2、及びX3の全部が単結合の場合には、化合物(I)は式P(R1R2R3)で表わされるホスフィンである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
X1、X2、及びX3のうちの2個が単結合であり、1個が酸素である場合には、化合物(I)は式P(OR1)(R2)(R3)又はP(R1)(OR2)(R3)又はP(R1)(R2)(OR3)で表わされるホスフィニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
X1、X2、及びX3のうちの1個が単結合であり、2個が酸素である場合には、化合物(I)は式P(OR1)(OR2)(R3)又はP(R1)(OR2)(OR3)又はP(OR1)(R2)(OR3)で表わされるホスホニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
好ましい実施の形態において、X1、X2、及びX3の全てが酸素である。すなわち、化合物(I)は式P(OR1)(OR2)(OR3)で表わされるホスフィットであるのが好ましい。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
本発明によれば、R1、R2、及びR3はそれぞれ互いに独立に同一であっても異なっていても良い有機基である。R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基、好ましくは炭素原子数が1〜10個であるアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アリール基、例えばフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、又はヒドロカルビル基、好ましくは炭素原子数が1〜20個のヒドロカルビル基、例えば1,1’−ビフェノール、1,1’−ビナフトールである。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していても良く、すなわち中心のリン原子を介して単独で結合していなくとも良い。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していないのが好ましい。
好ましい実施の形態において、基R1、R2、及びR3は、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリルからなる群から選択される基である。特に好ましい形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がフェニル基である。
他の好ましい形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がo−トリル基である。
使用可能な特に好ましい化合物Iは、式Ia:
で表わされる化合物である。式中のw、x、y、zはそれぞれ自然数であるが、w+x+y+z=3であり、w、z≦2である。
かかる化合物Iaとしては、例えば、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)P、又はこれらの化合物の混合物が挙げられる。
(m−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、及び(p−トリル−O−)3Pを含む混合物は、例えば、原油を蒸留精製して得られるm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物、特に2:1のモル比でm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物を、三ハロゲン化リン、例えば三塩化リンと反応させることによって得ることができる。
他の同様に好ましい形態では、リン配位子はDE−A−19953058に詳細に記載されているような、式Ib:
但し、上記の式中のR1は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に縮合芳香族環を有している芳香族基を表し、
R2は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位に縮合芳香族環を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
R3は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してパラ位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してパラ位に芳香族置換基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
R4は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo、m、及びパラ位にR1、R2及びR3に対して上述した基以外の基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
xは1又は2を表し、
y、z、pはそれぞれ独立に0、1又は2を表し、x+y+z+p=3である。
式(Ib)で表わされる好ましいホスフィットは、DE−A−19953058号公報に記載されている。R1は、好ましくはo−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピルフェニル、o−n−ブチルフェニル、o−s−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニル又は1−ナフチルであっても良い。
R2は、m−トリル、m−エチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−s−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニル、又は2−ナフチルであるのが好ましい。
有利なR3基は、p−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピルフェニル、p−n−ブチルフェニル、p−sec−ブチルフェニル、p−tert−ブチルフェニル又は(p−フェニル)フェニル基である。
R4基は、フェニルが好ましい。pは0(ゼロ)が好ましい。化合物Ib中の指数x、y、z及びpに関し、以下のものが可能である。
式(Ib)で表わされる好ましいホスフィットは、pが0であり、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル、及びp−トリルから選択され、R4がフェニルである化合物である。
式(Ib)で表わされる特に好ましいホスフィットは、R1がo−イソプロピルフェニル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、更にR1が1−ナフチル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、そしてR1がo−イソプロピルフェニル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物並びにこれらのホスフィットの混合物である。
式(Ib)で表わされるホスフィットは、
a)三ハロゲン化リンをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させて、ジハロゲン化リンモノエステルを得る工程、
b)得られたジハロゲン化リンモノエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、モノハロゲン化リンジエステルを得る工程、
c)得られたモノハロゲン化リンジエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、式(Ib)で表わされるホスフィットを得る工程、
ことにより得ることができる。
反応は、3工程の独立した工程で行うことができる。同様に、上述の3工程のうちの2工程、すなわち、a)工程とb)工程又はb)工程とc)工程、を組み合わせることもできる。また、a)、b)、c)工程の全てを互いに組み合わせることもできる。
R1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの量及び反応に適したパラメーターは、数回の簡単な予備実験により決定することができる。
有用な三ハロゲン化リンは、原則として全ての三ハロゲン化リンであるが、使用されるハロゲンがCl、Br、I、特にClである化合物又はこれらの混合物が好ましい。三ハロゲン化リンとして、種々の同一の又は異なるハロゲンで置換されたホスフィンの混合物を使用することもできる。特に好ましいのはPCl3である。ホスフィット(Ib)の製造における反応条件及び精製に関する詳細は、DE−A−19953058号公報に記載されている。
ホスフィット(Ib)は、異なるホスフィット(Ib)の混合物の形態で、配位子として使用することもできる。このような混合物は、例えばホスフィット(Ib)の製造において得ることができる。
しかしながら、多座、特に二座のリン配位子が好ましい。従って、使用される配位子は、好ましくは、式II:
(但し、X11、X12、X13、X21、X22、X23が、それぞれ独立して、酸素又は単結合であり、
R11、R12が、それぞれ独立して同一又は異なる、分離した又は橋状結合した有機基であり、
R21、R22が、それぞれ独立して同一又は異なる、分離した又は橋状結合した有機基であり、
Yが、橋状結合基である。)を有している。
本発明の場合、化合物IIは、単一化合物又は上述した式の異なる化合物の混合物である。
好ましい実施の形態では、X11、X12、X13、X21、X22、X23は、それぞれ酸素であって良い。このような場合、橋状結合した基Yは、ホスフィット(ホスファイト:phosphite)基に結合される。
他の好ましい実施の形態では、X11及びX12は、それぞれ酸素であり、及びX13が単結合であり、又はX11及びX13がそれぞれ酸素であり、及びX12が単結合であり、従って、X11、X12及びX13に囲まれたリン原子が、ホスファイトの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23が、それぞれ酸素、又はX21とX22がそれぞれ酸素でX23が単結合で良く、又はX21とX23がそれぞれ酸素でX22が単結合で良く、又はX23が酸素でX21とX22がそれぞれ単結合で良く、又はX21が酸素でX22とX23がそれぞれ単結合で良く、又はX21、X22及びX23が、それぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、又はホスフィン、好ましくはホスホナイトの中心原子である。
他の好ましい実施の形態では、X13が酸素であり、及びX11とX12がそれぞれ単結合で良く、又は、X11が酸素であり、及びX12とX13がそれぞれ単結合で良く、従って、X11、X12及びX13に囲まれたリン原子が、ホスホナイトの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23がそれぞれ酸素で良く、又はX23が酸素であり、及びX21とX22がそれぞれ単結合で良く、又は、X21が酸素であり、及びX22とX23がそれぞれ単結合で良く、又は、X21、X22及びX23がそれぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスフィナイト、又はホスフィン、好ましくはホスフィナイトの中心原子である。
他の好ましい実施の形態では、X11、X12及びX13がそれぞれ単結合で良く、従って、X11、X12及びX13囲まれたリン原子がホスフィンの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23がそれぞれ酸素、又はX21、X22及びX23がそれぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子がホスファイト、又はホスフィン、好ましくはホスフィンの中心原子である。
橋状結合した基Yは、例えば、C1−C4−アリール、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリールによって置換されたアリール基であることが好ましく、又は好ましくは6個〜20個の炭素原子を芳香族系に有する無置換のアリール基、特にピロカテコール、ビス(フェノール)又はビス(ナフトール)が好ましい。
R11及びR12基は、それぞれ独立して、同一又は異なる有機基であって良い。有利なR11及びR12基はアリール基であり、このアリール基は6個〜10個の炭素原子を有していることが好ましく、このアリール基は、無置換又は、特にC1−C4−アリキル、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリール、又は無置換のアリール基によって単一置換(モノ置換)、又は多置換(ポリ置換)されたアリール基であって良い。
R21及びR22基は、それぞれ独立して、同一又は異なる有機基であって良い。有利なR21及びR22基は、好ましくは6個〜10個の炭素原子を有するアリール基であり、アリール基は、無置換又は、特にC1−C4−アリール、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリール、又は無置換のアリール基によって置換されたアリール基である。
R11及びR12基は、それぞれが分離されて良く、又橋状結合して良い。R21及びR22基も、それぞれが分離されて良く、又橋状結合して良い。R11、R12、R21及びR22基は、それぞれが分離されて良く、2種が橋状結合し、そして2種が分離されて良く、又は4種全てが橋状結合して良く、その方法は上述のものである。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5723641に記載された式I、II、III、IV、及びVのものである。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5512696に記載された式I、II、III、IV、V、VI、及びVIIのものであり、特に、実施例1〜31に使用されている化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5821378に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV及びXVのものであり、特に実施例1〜73に使用されている化合物である。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5512695に記載された式I、II、III、IV、V及びVIのものであり、特に、実施例1〜6に使用された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5981772に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII及びXIVのものであり、特に実施例1〜66に使用された化合物である。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US6127567に記載された化合物であり、及び実施例1〜29に使用された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US6020516に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX及びXのものであり、特に実施例1〜33に記載された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5959135に記載された化合物であり、及び実施例1〜13に使用された化合物である。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5847191に記載された式I、II及びIIIのものである。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、US5523453に記載されたものであり、特に同文献に式1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20及び21で説明された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、WO01/14392に記載されたものであり、好ましくは、同文献に式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、XXIIIで説明された化合物である。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、WO98/27054に記載された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、WO99/13983に記載された化合物である。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、WO99/64155に記載された化合物である。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10038037に記載されたものである。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10046025に記載されたものである。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10150285に記載されたものである。
特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10150286に記載されたものである。特に好ましい実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10207165に記載されたものである。本発明の更に特に好ましい実施の形態では、有用なリンキレート配位子は、US2003/0100442A1に記載されたものである。
本発明の更に特に好ましい実施の形態では、有用なリンキレート配位子は、ドイツ特許出願の参照番号DE10350999.2(10.30.2003)に記載されたものであるが、同文献は、先の優先日を有しており、しかし本出願の優先日の時点では非公開であった。
上記化合物I、Ia、Ib及びII及びその製造はそれ自体公知である。使用するリン配位子は、化合物I、Ia、Ib及びIIの少なくとも2種を含む混合物でも良い。
本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、ニッケル(0)錯体のリン配位子及び/又は遊離(free) リン配位子は、トリトリルホスファイト、二座のリンキレート配位子及び式Ib:
(但し、R1、R2、及びR3が、それぞれ独立してo−イソプロピルフェニル、m−トリル及びp−トリルから選ばれ、R4が、フェニルであり;xが1又は2であり、及びy、z、pが、x+y+z+p=3を条件として、それぞれ独立して0、1又は2である。)で表されるホスファイト、及びこれらの混合物から選択される。
本発明に従う方法の工程(a)は、当業者に公知である好適な装置で行なうことができる。従って、反応のための有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第4版.第20巻,John Wiley&Sons,New York 1996, 1040〜1055頁に記載されているような通常の装置であり、例えば、攪拌タンク反応器、ループ反応器、ガス循環反応器、バブルカラム反応器(気泡塔反応器)、又はチューブ反応器(管型反応器)等であり、各場合において、適宜、反応熱を除去する装置を有していても良い。反応は、2又は3基等の複数の装置で行なっても良い。
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、有利な反応器は、逆混合(backmixing)特性を有するもの、又は逆混合特性を有する反応器群に見出される。逆混合特性を有する有利な反応器群は、シアン化水素の計量に関し、クロス流モード(crossflow mode)で運転されるものであることがわかった。
ヒドロシアン化(hydrocyanation)は、溶剤の存在下又は不存在下に行なわれて良い。溶剤が使用される場合、溶剤は所定の反応温度及び反応圧力において液体であり、そして不飽和化合物及び少なくとも1種の触媒に対して不活性であるべきである。通常、使用する溶剤は、炭化水素、例えばベンゼン、又はキシレン、又はニトリル、例えば、アセトニトリル、又はベンゾニトリルである。しかしながら、溶剤として配位子を使用することが好ましい。
反応は、非連続方式(バッチ方式)、連続方式、又は準非連続方式(半バッチ方式)で操作されても良い。
ヒドロシアン化反応は、装置に全ての反応物を充填して行なって良い。しかしながら、装置に触媒、不飽和有機化合物、及び所望により溶剤が充填されることが好ましい。気体状シアン化水素は、反応混合物の表面に浮くか、又は反応混合物に通されることが好ましい。装置に充填する別の手順は、装置に触媒、シアン化水素、及び所望により、溶剤を充填し、そして反応混合物に徐々に不飽和化合物を計量導入することである。この代わりに、反応物を反応器に導入し、そして反応混合物が反応温度とされ、この温度で、シアン化水素が液体状態で混合物に加えられることも可能である。更に、反応温度に加熱する前にシアン化水素を加えても良い。反応は、温度、雰囲気、反応温度等に関して通常のヒドロシアン化条件で行なわれる。
ヒドロシアン化を、1段階以上の撹拌処理工程で連続して行なうことが好ましい。複数の工程が使用される場合、直列状に連結された工程が好ましい。この場合、製造物は、ある工程から次の工程へと直接的に移される。シアン化水素は、最初の工程に直接的に、又は個々の工程間に供給されて良い。
本発明の方法が半バッチ方式で行なわれる場合、最初に触媒化合物を充填し、そして1,3−ブタジエンを反応器に充填し、この間にシアン化水素が反応時間にわたって、反応混合物に計量導入されることが好ましい。
反応は、好ましくは、0.1〜500MPaの絶対圧、より好ましくは、0.5〜50MPaの絶対圧、特に1〜5MPaの絶対圧で行なわれる。反応は、好ましくは、273K〜473Kの温度、より好ましくは、313K〜423Kの温度、特に333K〜393Kの温度で行なわれる。液体反応相(liquid reactor phase)での有利な平均滞留時間は、0.001〜100時間の範囲、好ましくは0.05〜20時間の範囲、より好ましくは0.1〜5時間の範囲に見出され、この時間は、各場合において反応器ごとものものである。
一実施の形態において、反応は、気体相の存在下に、及び所望により固体懸濁相の存在下に、液体相中で行なわれて良い。出発材料、シアン化水素、及び1,3−ブタジエンは、それぞれ、液体又は気体状態で計量導入されて良い。
他の実施の形態では、反応は、液体相中で行なわれ、この場合、反応器内の圧力は、1,3−ブタジエン、シアン化水素、及び少なくとも1種の触媒等の全供給原料が、液体状態で計量導入されるものであり、そして、反応混合物内の液相中に存在するものである。固体の懸濁相は、反応混合物中に存在して良く、及び少なくとも1種の触媒と共に計量導入しても良いが、触媒は、例えば特にニッケル(II)を含む触媒組成物の分解生成物から成るものである。
処理工程(e)において、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、少なくとも1種の触媒及び未転化の1,3−ブタジエンを含む流れ8(流8)を得る。
次いで、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、少なくとも1種の触媒及び未転化の1,3−ブタジエンを含む流れ8を処理工程(f)において蒸留装置に移す。この蒸留装置では、流れ8を1回以上蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流れ9と、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を含む流れ10と、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11と、を得る。
処理工程(f)の蒸留は、DE−A102004004720に記載されている処理工程(b)及び(c)のように、二段階で行っても良い。処理工程(f)の蒸留は、DE−A102004004729に記載されている処理工程(b)及び(c)のように行うことも可能である。
処理工程(f)の蒸留は、当業者にとって公知である如何なる好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば落下フィルム(falling-film)蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置とが設けられている。個々の蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、好ましくは単一の装置で行なって良い。
供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(f)の圧力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜1バール、特に0.02〜0.5バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃、特に60〜120℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜150℃、より好ましくは−15〜60℃、特に5〜45℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
次いで、流れ11を他の処理工程(g)において蒸留に付す。蒸留は、当該分野で公知の好適な装置で行っても良い。蒸留に好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版., 第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、更に蒸気流の凝縮のための装置とが設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、単一の装置で行うのが有利である。給流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(g)の圧力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜20バール、特に0.05〜2バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に60〜180℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜180℃、特に15〜160℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
処理工程(g)において、流れ12を、3−ペンテンニトリルを含む底部生成物として得て、流れ13を、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む頂部生成物として得る。流れ13は、3−ペンテンニトリルを調製する本発明の方法において反応物質流として使用されるのが好ましい。
本発明の方法により他の好ましい実施の形態において、処理工程(e)で得られる流れ8を、処理工程(g)に直接移す。かかる処理工程(g)において、その後に、3−ペンテンニトリル及び少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を実質的に含む流れが底部を介して得られる。更に、2−メチル−3−ブテンニトリル及び1,3−ブタジエンを実質的に含む流れが頂部を介して得られる。この、2−メチル−3−ブテンニトリル及び1,3−ブタジエンが豊富に含まれる流れは、同様に、3−ペンテンニトリルを製造する本発明の方法において反応物質流として用いられても良い。かかる反応物質流を本発明の方法で使用する場合、この流れにおける2−メチル−3−ブテンニトリル含有量は、各々の流れに対して、10〜90質量%であり、更に好ましくkは20〜85質量%であり、特に30〜80質量%である。
或いは、処理工程(e)で得られる流れ8を、処理工程(f)において1,3−ブタジエンのみ低減させることも可能である。その後、処理工程(f)での底部を介して、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル及び少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を実質的に含む流れ11aを得る。その場合、次いで、流れ11aを処理工程(g)で更に後処理して、一方で3−ペンテンニトリル及び少なくとも1種のヒドロシアン化触媒が除去され、他方で、2−メチル−3−ブテンニトリルが更に除去される。蒸留の頂部において処理工程(g)から得られる流れ13aは、2−メチル−3−ブテンニトリルを実質的に含む。かかる流れ13aも同様に、3−ペンテンニトリルを製造する本発明の方法において反応物質流として用いられても良い。
他の実施の形態において、処理工程(f)において、処理工程(e)より得られる流れ8から1,3−ブタジエンを取り除き(低減させ)、そしてしょりこうて(g)に移し、そこで、3−ペンテンニトリル及びヒドロシアン化触媒を含む流れ12を底部から得る。
本発明の他の実施の形態において、処理工程(e)のヒドロシアン化及び次の処理工程(f)における後処理から生ずる反応物質流を使用し、その場合、適宜、1,3−ブタジエンの低減を処理工程(f)で行う。これにより得られる流れ11bを、次いで、本発明の方法における処理工程(a)に移す。その後、流れ11bに含まれるヒドロシアン化触媒を、本発明の方法における処理工程(a)での少なくとも1種のヒドロシアン化触媒として使用するのが好ましい。更に、好適なルイス酸、例えばDE−A102004004696に記載されているようなルイス酸を添加することも可能である。
本発明の他の実施の形態において、本発明の処理工程(a)で使用される反応物質流は、処理工程(f)の流れ11に相当していても良く、これにより、処理工程(g)の分離を省略しても良い。
本発明の方法における他の実施の形態において、使用される反応物質流は、処理工程(e)から生ずる流れ8である。この場合、処理工程(f)及び(g)は、本発明の方法の反応物質流の製造において省略しても良い。
[処理工程(a)]
処理工程(a)において、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流を、少なくとも1種の異性化触媒上で異性化する。これにより、異性化触媒、未転化2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ1を得る。
本発明によれば、異性化は、以下の成分:
a)ニッケル(0)、
b)三価のリンを含み、配位子としてニッケル(0)をキレート化する化合物、適宜、
c)ルイス酸、
を含む組成物(系)の存在下で行われる。
ニッケル(0)含有触媒系は、それ自体公知の方法によって製造することができる。
異性化触媒の配位子は、処理工程(e)で使用されるヒドロシアン化触媒に使用されるのと同じリン配位子であっても良い。従って、ヒドロシアン化触媒は、異性化触媒と同一であっても良い。しかしながら、処理工程(a)及び(e)における反応に用いられる配位子の選択は、同一とする必要はない。
更に、組成物は、適宜ルイス酸を含む。
本発明の場合、ルイス酸は、単一のルイス酸又は複数、例えば2種、3種若しくは4種のルイス酸の混合物である。
有用なルイス酸は、カチオンが、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、レニウム及びスズから成る群より選択される無機又は有機金属化合物である。かかる化合物の例示は、例えば米国特許第6127567号、同第6171996号及び同第6380421号に記載されているに、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF3)2、CoCl2、CoCl2、FeI2、FeCl3、FeCl2、FeCl2(THF)2、TiCl4(THF)2、TiCl4、TiCl3、ClTi(O−イソプロピル)3、MnCl2、ScCl3、AlCl3、(C8H17)AlCl2、(C8H17)2AlCl、(i−C4H9)2AlCl、(C6H5)2AlCl、(C6H5)AlCl2、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MoCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF3)3、Yb(O2CCF3)3、SmCl3、B(C6H5)3、TaCl5が挙げられる。例えば、米国特許第3496217号、同第3496218号及び同第4774353号に記載されているような、金属塩、例えばZnCl2、CoI2及びSnCl2、そして有機金属化合物、例えばRAlCl2、R2AlCl、RSnO3SCF3およびR3B(但し、Rは、アルキル又はアリール基である)も有用である。米国特許第3773809号によると、助触媒(促進剤)として、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、エルビウム、ゲルマニウム、スズ、バナジウム、ニオブ、スカンジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、パラジウム、トリウム、鉄およびコバルト、好ましくは、亜鉛、カドミウム、チタン、スズ、クロム、鉄およびコバルトから成る群より選択されるカチオン形態の金属を使用しても良く、その化合物のアニオン部分は、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物、2〜7個の炭素原子を有する低級脂肪酸のアニオン、HPO3 2-、H3PO2-、CF3COO-、C7H15OSO2 -またはSO4 2-から成る群より選択することができる。米国特許第3773809号により開示されている他の好適な助触媒は、ホウ素化水素、有機ホウ素化水素、ならびに式R3BおよびB(OR)3(但し、Rは、水素、6から18個の炭素原子を有するアリール基、1から7個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたアリール基、および1から7個の炭素原子を有するシアノ置換アルキル基で置換されたアリール基から成る群より選択される。)で表されるホウ酸エステルであり、有利にはトリフェニルボロンである。さらに、米国特許第4874884号に記載されているように、触媒組成物の活性を増大させるために、ルイス酸の相乗活性化合物を使用することができる。好適な助触媒は、例えば、CdCl2、FeCl2、ZnCl2、B(C6H5)3およびB(C6H5)3SnX(この場合、X=CF3SO3、CH3C6H4SO3または(C6H5)3BCNである。)から成る群より選択することができ、ニッケルに対する助触媒の好ましい比率は、約1:16から約50:1である。
本発明の場合、ルイス酸なる用語は、米国特許第3496217号、同第3496218号、同第4774353号、同第4874884号、同第6127567号、同第6171996号および同第6380421号に規定されている助触媒も含む。
上述したルイス酸の中で特に好ましいルイス酸は、特に金属塩、更に好ましくはハロゲン化金属、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、特に塩化物であり、これらの中で塩化亜鉛、塩化鉄(II)及び塩化鉄(III)が特に好ましい。
異性化は、液体の希釈剤、
−例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、ベンゼン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素、
−例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル、
−例えば、酢酸エチル、安息香酸メチル等のエステル、又は
−例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、又は
−上記の希釈剤の混合物
の存在下で行うことができる。
特に好ましい実施の形態において、有用な異性化は、上記の液体の希釈剤の不存在下である。
さらに、処理工程(a)の異性化が非酸化雰囲気下、例えば、窒素または希ガス(例えばアルゴン)から成る保護気体雰囲気下で行われる場合に有利であることが判明した。
処理工程(a)は、当業者に公知の好適な装置で行うことができる。この反応に有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第20巻、John Wiley&Sons、New York、1996、1040〜1055頁に記載されているように、攪拌タンク反応器、ループ反応器、ガス循環反応器、バブルカラム反応器(気泡塔反応器)又はチューブ反応器(管型反応器)等の一般的な装置である。反応は、複数の装置、例えば2基又は3基の装置において行うことができる。
本発明の方法における好ましい実施の形態において、異性化は、区画化管型反応器(compartmented tubular reactor)において行われる。
本発明の方法における他の好ましい実施の形態において、異性化は、直列に連結させた少なくとも2基の反応器において行われ、その場合、第1の反応器は、実質的に撹拌タンク特性を有しており、第2の反応器は、実質的に管型特性を有するように設計される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、異性化は、2〜20基の撹拌槽、特に3〜10基の撹拌槽に対応する撹拌槽群の特性を有する反応器中で行われる。
本発明の一実施の形態において、反応は、1基の蒸留装置において行われも良く、その場合、異性化反応は、蒸留装置の少なくとも底部領域で起こる。当業者等に公知の蒸留装置が適当であり、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器か、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。併発反応を伴う蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、好ましくは単一の装置で行なって良い。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(a)は、0.1mbar(ミリバール)〜100bar(バール)の絶対圧下で行われるのが好ましく、さらに好ましくは1mbar〜16barであり、特に10mbar〜6barの絶対圧である。処理工程(a)の温度は、好ましくは25〜250℃、さらに好ましくは30〜180℃、特に40〜140℃である。
直鎖のペンテンニトリルに対する2−メチル−3−ブテンニトリルのモル比及びこれにより得られる、使用された2−メチル−3−ブテンニトリルの転化率に関して、取り出された流れの組成は、供給物流の組成に応じて、温度、触媒濃度、滞留時間及び反応器の形態に基づき技術的に簡易な手法で調節することができる。本発明の方法における好ましい実施の形態において、転化率は、3回の測定により、10〜99%の範囲、更に好ましくは30〜95%の範囲、特に60〜90%の範囲の値に調節される。
[処理工程(b)]
処理工程(b)では、処理工程(a)で得られた流れ1を蒸留する。これにより、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ2を頂部生成物として得る。更に、処理工程(b)において、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得る。
本発明の方法における処理工程(b)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(b)の圧力は、好ましくは0.1ミリバール〜100バール、より好ましくは1ミリバール〜6バール、特に10ミリバール〜500ミリバールの絶対圧である。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは25〜250℃、より好ましくは40〜180℃、特に60〜140℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における温度が、好ましくは−15〜200℃、より好ましくは5〜150℃、特に10〜100℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の特に好ましい実施の形態において、処理工程(b)で行われる流れ1の蒸留は、混合物中に存在する異性化触媒が処理工程(a)のときより低い活性となるか、又は不活性となるような圧力及び温度の条件下で行われる。
本発明の好ましい実施の形態において、処理工程(b)で得られ、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を少なくとも部分的に処理工程(a)に再循環させる。
本発明の方法における他の実施の形態において、処理工程(a)及び(b)を同一の装置で行う。少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を処理工程(b)から取り出さず、処理工程(a)及び(b)の共通の装置に残すことも可能である。
或いは、少なくとも1種の異性化触媒を含み、処理工程(b)から得られる流れ3の少なくとも一部を用いて、本発明に従う処理工程(e)で使用される反応物質流を製造することも可能である。処理工程(e)において、かかる少なくとも1種の異性化触媒は、その後にヒドロシアン化触媒として機能する。
[処理工程(c)]
処理工程(c)において、流れ2を蒸留する。これにより、流れ2に含まれる全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ4を頂部生成物として得る。更に、流れ2に含まれる全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より少なく含む流れ5を底部生成物として得る。
処理工程(c)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(c)の圧力は、好ましくは0.1ミリバール〜100バール、より好ましくは1ミリバール〜6バール、特に10ミリバール〜500ミリバールの絶対圧である。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは25〜250℃、より好ましくは40〜180℃、特に60〜140℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における温度が、好ましくは−15〜200℃、より好ましくは5〜150℃、特に10〜100℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、処理工程(b)及び(c)を1基の蒸留装置で同時に行い、その場合、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得て、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ4を頂部生成物として得て、そして3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ5を塔の側部取り出し部から得る。
本発明の方法における他の好ましい実施の形態において、処理工程(a)、(b)及び(c)を1基の蒸留装置で同時に行う。その場合、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ4を頂部生成物として得る。3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ5を蒸留塔の側部取り出し部から得る。この実施の形態において、異性化触媒は、蒸留塔の底部に残留しているのが好ましい。
[処理工程(d)]
3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含み、処理工程(c)で得られる流れ5を、その後、他の蒸留装置に移す。かかる蒸留装置において、流れ5を、底部生成物として取り出される3−ペンテンニトリル流と、頂部生成物として取り出される2−メチル−3−ブテンニトリル流と、に分離する。
処理工程(d)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(d)の絶対力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜20バール、特に0.05〜2バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に60〜180℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜180℃、特に15〜160℃の範囲となるように行なわれる。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、処理工程(d)及び(g)を同じ蒸留装置で行う。その場合、流れ6及び12並びに流れ7及び13が同時に生じる。更に、かかる好ましい実施の形態において、流れ5を、処理工程(d)及び(g)の共通の装置に直接誘導する。この場合、流れ5及び11の導入位置は、蒸留装置として蒸留塔の場合、同一であっても又は異なっていても良い。
本発明の方法における他の実施の形態において、処理工程(c)及び(g)を共通の蒸留塔で行う。その場合、処理工程(d)が省略され、処理工程(b)から得た流れ2及び処理工程(f)から得た流れ11を処理工程(g)に導き、そして処理工程(g)において、流れ4を、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む頂部生成物として得て、流れ12を、3−ペンテンニトリルを含む底部生成物として得て、流れ13を、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む側部取り出し流として得る。
本発明に従う方法の第1実施の形態において、流れ2を処理工程(g)に直接再循環させ、反応物質流を処理工程(c)に直接導き、その場合、処理工程(c)から得られた流れ5aを処理工程(a)の異性化に再循環させることが可能である。
或いは、流れ2を処理工程(g)に直接再循環させ、そして反応物質流を処理工程(c)に導き、その場合、処理工程(c)から得られた流れ5を処理工程(f)に再循環させることも可能である。
或いは、流れ2を処理工程(g)に直接再循環させ、そして反応物質流を処理工程(c)に導き、そして処理工程(c)から得られた流れ5を処理工程(e)に再循環させることも可能である。
(第2実施の形態)
更に本発明は、第2実施の形態(embodiment II)に基づく3−ペンテンニトリルの製造方法であって、以下の処理工程:
(a’)2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流を、少なくとも1種の溶解又は分散状態の異性化触媒上で異性化して、少なくとも1種の異性化触媒、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ1’を得る工程、
(b’)流れ1’を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ2’を得て、それを処理工程(a’)に再循環させ、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3’を底部生成物として得て、それを異性化工程(a’)に再循環させ、そして3−ペンテンニトリルを含む流れ4’を蒸留塔の側部取り出し部から得る工程、
を有することを特徴とする3−ペンテンニトリルの製造方法を提供する。
本発明の方法における第2実施の形態により処理工程(a’)で用いられる反応物質流は、本発明の方法における第1実施の形態による反応物質流を製造する上述の方法によって得ることができる。
第2実施の形態による処理工程(a’)の場合、第1実施の処理工程(a)と同一の条件が適用され、特に使用される触媒錯体と遊離配位子に関して同条件が用いられる。
処理工程(b’)の絶対圧は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜20バール、特に0.1〜2バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは25〜250℃、より好ましくは40〜180℃、特に60〜140℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜150℃、特に10〜100℃の範囲となるように行われる。
(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの蓄積を防ぐために、流れ2’の部分排出が適当な場合もある。残留流を工程(a’)に再循環させる。
本発明の方法における第2実施の形態の一変体において、反応物質流を処理工程(a’)に導く代わりに、処理工程(b’)に導く。
本発明の方法における第2実施の形態の処理工程(b’)から出た流れ2’を、適宜、他の任意の処理工程(c’)において、蒸留に付しても良い。これにより、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルが豊富な流れ5’と、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルが少ない流れ6’とを形成するのが好ましく、そして流れ5’を処理工程(a’)に再循環させるのが好ましい。
適宜行われる処理工程(c’)は、処理工程(a’)の装置で行われても良く、その場合、蒸留装置をその後に処理工程(a’)で使用し、その蒸留装置の底部で、異性化反応が生じ、流れ1’が蒸留装置の底部から取り出され、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの豊富な流れ6’が蒸留装置の頂部から取り出される。
本発明によれば、第1実施の形態及び第2実施の形態による方法において、3−ペンテンニトリルを得る。本発明の場合、3−ペンテンニトリルなる用語は、3−ペンテンニトリルの単一の異性体、又は2種、3種、4種又は5種の相互に異なる上記の異性体の混合物である。異性体には、cis−2−ペンテンニトリル、trans−2−ペンテンニトリル、cis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル又はこれらの混合物が含まれ、好ましくはcis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル又はこれらの混合物であり、これらは、個々に、そして混合物として、3−ペンテンニトリルとして本願発明に取り込まれる。
本発明の方法は、利点を有している。例えば、アジポニトリルの製造する統合法において、異性化により得られる未転化2−メチル−3−ブテンニトリルの再循環は経済的に必要である。なぜなら、3−ペンテンニトリルへの2−メチル−3−ブテンニトリルの転化率が熱力学的平衡によって制限されるからである。かかる再循環では、2−メチル−3−ブテンニトリル循環で蓄積する(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの除去を必要とする。本発明の方法において、除去は蒸留によって行われ、これにより、工程(c)において、工程(a)が行われた後だけ2−メチル−3−ブテンニトリルと(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを分離して、価値ある生成物の損失を制御された手法で最小限にすることができる。
第1実施の形態の好ましい説明に基づく本発明の方法を、図1を参照しつつ詳細に説明する。
反応器R1において、シアン化水素及び1,3−ブタジエンをニッケル(0)触媒の存在下に供給する。反応器において、ヒドロシアン化が起こって、流れ8を形成する。この流れ8は、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、ヒドロシアン化触媒及び未転化1,3−ブタンジエンを含んでいる。次に、流れ8を蒸留塔K1に移し、そこで、1,3−ブタジエン(流れ9)を頂部において流れ8から除去する。蒸留塔K1の底部において、ヒドロシアン化触媒を含む流れ10を得る。蒸留塔K1の側部取り出し部において、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11を得る。次いで、流れ11を蒸留塔K2に移す。
蒸留塔K2において、流れ11を、3−ペンテンニトリルを含む流れ12と、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ13と、に分離する。
次いで、流れ13を異性化装置R2に移す。この異性化装置R2において、流れ13に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルが異性化触媒上で異性化される。この異性化から得られる流れ1は、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、そして更に異性化触媒を含んでいる。
次いで、流れ1を蒸留塔K3において分離する。これにより、異性化触媒を含む流れ3を形成する(底部)。蒸留塔K3の頂部において、流れ2が取り出される。かかる流れ2は、3−ペンテンニトリル、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含んでいる。次いで、この流れ2を蒸留塔K4に移す。
蒸留塔K4において、流れ2を、異性化中に形成した(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルに分離する(流れ4)。更に、流れ5を蒸留塔K4の底部で得て、これは、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含んでいる。この流れ5を蒸留塔K2に移し、そしてこの蒸留塔において、3−ペンテンニトリルを流れ5から得る。
流れ9と10を反応器R1に部分的に又は完全に再循環させるか、或いは全く再循環させなくても良い。同様のことが、反応器R2の方向の流れ3にも適用される。これらの変体は、図1に示されていない。
第2実施の形態の好ましい説明に基づく本発明の方法を、図2を参照しつつ詳細に説明する。
反応器R1において、シアン化水素及び1,3−ブタジエンをニッケル(0)触媒の存在下に供給する。反応器において、ヒドロシアン化が起こって、流れ8を形成する。この流れ8は、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、ヒドロシアン化触媒及び未転化1,3−ブタンジエンを含んでいる。次に、流れ8を蒸留塔K1に移し、そこで、1,3−ブタジエン(流れ9)を頂部において流れ8から除去する。蒸留塔K1の底部において、ヒドロシアン化触媒を含む流れ10を得る。蒸留塔K1の側部取り出し部において、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11を得る。次いで、流れ11を異性化装置R2に移す。
異性化装置R2において、それぞれ蒸留塔K2から得られる異性化触媒(流れ3’)及び2−メチル−3−ブテンニトリル(流れ2’)を更に導入する。異性化装置R2において、異性化が起こる。次に、これにより得られる流れ1’を蒸留装置K2に移し、そこで流れ1’を、R2に再循環させる流れ2’(2−メチル−3−ブテンニトリル)と、R2に再循環させる流れ3’(異性化触媒)と、3−ペンテンニトリルを含む流れ4’と、に分離する。
異性化触媒を含む流れをR2に供給することにより、流れ3’からの必須の排出物を補填することができるので、R2におけるNi(0)含有量は一定となる。
流れ9と10を反応器R1に部分的に又は完全に再循環させるか、或いは全く再循環させなくても良い。
このような再循環及び排出の変体は、図2に示されていない。
(第3実施の形態)
第3実施の形態(embodiment III)において、処理工程a*)及びe*)に触媒作用を及ぼすヒドロシアン化及び異性化Ni(0)触媒の配位子を使用する。
触媒として好ましく使用され、リン配位子及び/又は遊離リン配位子を含むニッケル(φ)錯体は、均一に溶解したニッケル(φ)錯体であるのが好ましい。
ニッケル(0)錯体のリン配位子及び遊離リン配位子は、好ましくは単座又は二座のホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット及びホスホニットから選択され、単座又は二座のホスフィット、ホスフィニット及びホスホニットから選択されるのが好ましく、更に好ましくは単座又は二座のホスフィット及びホスホニットから選択され、特に単座のホスフィット、ホスフィニット及びホスホニットから選択され、最も好ましくは単座のホスフィット及びホスホニットから選択される。
これらのリン配位子は、式I:
本発明において、化合物Iは、単一の化合物又は上記式の異なる化合物の混合物である。
本発明によると、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立に酸素又は単結合を表わす。X1、X2、及びX3の全部が単結合の場合には、化合物Iは式P(R1R2R3)で表わされるホスフィンである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
X1、X2、及びX3のうちの2個が単結合であり、1個が酸素である場合には、化合物Iは式P(OR1)(R2)(R3)又はP(R1)(OR2)(R3)又はP(R1)(R2)(OR3)で表わされるホスフィニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
X1、X2、及びX3のうちの1個が単結合であり、2個が酸素である場合には、化合物Iは式P(OR1)(OR2)(R3)又はP(R1)(OR2)(OR3)又はP(OR1)(R2)(OR3)で表わされるホスホニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
一実施の形態において、X1、X2、及びX3の全てが酸素である。すなわち、化合物Iは式P(OR1)(OR2)(OR3)で表わされるホスフィットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
本発明によれば、R1、R2、及びR3はそれぞれ互いに独立に同一であっても異なっていても良い有機基である。R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基、好ましくは炭素原子数が1〜10個であるアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アリール基、例えばフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、又はヒドロカルビル基、好ましくは炭素原子数が1〜20個のヒドロカルビル基、例えば1,1’−ビフェノール、1,1’−ビナフトールである。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していても良く、すなわち中心のリン原子を介して単独で結合していなくとも良い。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していないのが好ましい。
一実施の形態において、基R1、R2、及びR3は、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリルからなる群から選択される基である。特に好ましい形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がフェニル基である。
他の実施の形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がo−トリル基である。
使用可能な化合物Iは、式Ia:
で表わされる化合物である。式中のw、x、y、zはそれぞれ自然数であるが、w+x+y+z=3であり、w、z≦2である。
かかる化合物Iaとしては、例えば、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)P、又はこれらの化合物の混合物が挙げられる。
(m−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、及び(p−トリル−O−)3Pを含む混合物は、例えば、原油を蒸留精製して得られるm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物、特に2:1のモル比でm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物を、三ハロゲン化リン、例えば三塩化リンと反応させることによって得ることができる。
一実施の形態では、リン配位子はDE−A−19953058に詳細に記載されているような、式Ib:
但し、上記の式中のR1は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に縮合芳香族環を有している芳香族基を表し、
R2は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してメタ位に縮合芳香族環を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
R3は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してパラ位にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してパラ位に芳香族置換基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
R4は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo、m、及びパラ位にR1、R2及びR3に対して上述した基以外の基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してオルト位に水素を有する芳香族基を表し、
xは1又は2を表し、
y、z、pはそれぞれ独立に0、1又は2を表し、x+y+z+p=3である。
式Ibで表わされる好ましいホスフィットは、DE−A−19953058号公報に記載されている。R1は、好ましくはo−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピルフェニル、o−n−ブチルフェニル、o−s−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニル又は1−ナフチルであっても良い。
R2は、m−トリル、m−エチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−s−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニル、又は2−ナフチルであるのが好ましい。
有利なR3基は、p−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピルフェニル、p−n−ブチルフェニル、p−sec−ブチルフェニル、p−tert−ブチルフェニル又は(p−フェニル)フェニル基である。
R4基は、フェニルが好ましい。pは0(ゼロ)が好ましい。化合物Ib中の指数x、y、z及びpに関し、以下のものが可能である。
式Ibで表わされる好ましいホスフィットは、pが0であり、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル、及びp−トリルから選択され、R4がフェニルである化合物である。
式Ibで表わされる特に好ましいホスフィットは、R1がo−イソプロピルフェニル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、更にR1が1−ナフチル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物、そしてR1がo−イソプロピルフェニル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上記の表に示された値を有する化合物並びにこれらのホスフィットの混合物である。
式Ibで表わされるホスフィットは、
a)三ハロゲン化リンをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させて、ジハロリンのモノエステルを得る工程、
b)得られたジハロリンのモノエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、モノハロリンのジエステルを得る工程、
c)得られたモノハロリンのジエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、式Ibで表わされるホスフィットを得る工程、
ことにより得ることができる。
反応は、3工程の独立した工程で行うことができる。同様に、上述の3工程のうちの2工程、すなわち、a)工程とb)工程又はb)工程とc)工程、を組み合わせることもできる。また、a)、b)、c)工程の全てを互いに組み合わせることもできる。
R1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの量及び反応に適したパラメーターは、数回の簡単な予備実験により決定することができる。
有用な三ハロゲン化リンは、原則として全ての三ハロゲン化リンであるが、使用されるハロゲンがCl、Br、I、特にClである化合物又はこれらの混合物が好ましい。三ハロゲン化リンとして、種々の同一の又は異なるハロゲンで置換されたホスフィンの混合物を使用することもできる。特に好ましいのはPCl3である。ホスフィットIbの製造における反応条件及び精製(後処理)に関する詳細は、DE−A−19953058号公報に記載されている。
ホスフィットIbは、異なるホスフィットIbの混合物の形態で、配位子として使用することもできる。このような混合物は、例えばホスフィットIbの製造において得ることができる。
同様に、多座、特に二座のリン配位子が好ましい。従って、使用される配位子は、好ましくは、式II:
(但し、X11、X12、X13、X21、X22、X23が、それぞれ独立して、酸素又は単結合であり、
R11、R12が、それぞれ独立して同一又は異なる、分離した又は橋状結合した有機基であり、
R21、R22が、それぞれ独立して同一又は異なる、分離した又は橋状結合した有機基であり、
Yが、橋状結合基である。)を有している。
本発明の場合、化合物IIは、単一化合物又は上述した式の異なる化合物の混合物である。
一実施の形態では、X11、X12、X13、X21、X22、X23は、それぞれ酸素であって良い。このような場合、橋状結合した基Yは、ホスフィット基に結合される。
他の実施の形態では、X11及びX12は、それぞれ酸素であり、及びX13が単結合であり、又はX11及びX13がそれぞれ酸素であり、及びX12が単結合であり、従って、X11、X12及びX13に囲まれたリン原子が、ホスファイトの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23が、それぞれ酸素、又はX21とX22がそれぞれ酸素でX23が単結合で良く、又はX21とX23がそれぞれ酸素でX22が単結合で良く、又はX23が酸素でX21とX22がそれぞれ単結合で良く、又はX21が酸素でX22とX23がそれぞれ単結合で良く、又はX21、X22及びX23が、それぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、又はホスフィン、好ましくはホスホナイトの中心原子である。
他の実施の形態では、X13が酸素であり、及びX11とX12がそれぞれ単結合で良く、又は、X11が酸素であり、及びX12とX13がそれぞれ単結合で良く、従って、X11、X12及びX13に囲まれたリン原子が、ホスホナイトの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23がそれぞれ酸素で良く、又はX23が酸素であり、及びX21とX22がそれぞれ単結合で良く、又は、X21が酸素であり、及びX22とX23がそれぞれ単結合で良く、又は、X21、X22及びX23がそれぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子が、ホスファイト、ホスフィナイト、又はホスフィン、好ましくはホスフィナイトの中心原子である。
他の実施の形態では、X11、X12及びX13がそれぞれ単結合で良く、従って、X11、X12及びX13囲まれたリン原子がホスフィンの中心原子である。このような場合、X21、X22及びX23がそれぞれ酸素、又はX21、X22及びX23がそれぞれ単結合で良く、従って、X21、X22及びX23に囲まれたリン原子がホスファイト、又はホスフィン、好ましくはホスフィンの中心原子である。
橋状結合した基Yは、例えば、C1−C4−アリール、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリールによって置換されたアリール基であることが好ましく、又は好ましくは6個〜20個の炭素原子を芳香族系に有する無置換のアリール基、特にピロカテコール、ビス(フェノール)又はビス(ナフトール)が好ましい。
R11及びR12基は、それぞれ独立して、同一又は異なる有機基であって良い。有利なR11及びR12基はアリール基であり、このアリール基は6個〜10個の炭素原子を有していることが好ましく、このアリール基は、無置換又は、特にC1−C4−アリキル、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリール、又は無置換のアリール基によってモノ置換、又はポリ置換されたアリール基であって良い。
R21及びR22基は、それぞれ独立して、同一又は異なる有機基であって良い。有利なR21及びR22基は、好ましくは6個〜10個の炭素原子を有するアリール基であり、アリール基は、無置換又は、特にC1−C4−アリール、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、トリフルオロメチル等のハロゲン化アルキル、フェニル等のアリール、又は無置換のアリール基によって置換されたアリール基である。
R11及びR12基は、それぞれが分離されて良く、又橋状結合して良い。R21及びR22基も、それぞれが分離されて良く、又橋状結合して良い。R11、R12、R21及びR22基は、それぞれが分離されて良く、2種が橋状結合し、そして2種が分離されて良く、又は4種全てが橋状結合して良く、その方法は上述のものである。
一実施の形態では、有用な化合物は、US5723641に記載された式I、II、III、IV、及びVのものである。一実施の形態では、有用な化合物は、US5512696に記載された式I、II、III、IV、V、VI、及びVIIのものであり、特に、実施例1〜31に使用されている化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、US5821378に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV及びXVのものであり、特に実施例1〜73に使用されている化合物である。
一実施の形態では、有用な化合物は、US5512695に記載された式I、II、III、IV、V及びVIのものであり、特に、実施例1〜6に使用された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、US5981772に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII及びXIVのものであり、特に実施例1〜66に使用された化合物である。
一実施の形態では、有用な化合物は、US6127567に記載された化合物であり、及び実施例1〜29に使用された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、US6020516に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX及びXのものであり、特に実施例1〜33に記載された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、US5959135に記載された化合物であり、及び実施例1〜13に使用された化合物である。
一実施の形態では、有用な化合物は、US5847191に記載された式I、II及びIIIのものである。一実施の形態では、有用な化合物は、US5523453に記載されたものであり、特に同文献に式1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20及び21で説明された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、WO01/14392に記載されたものであり、好ましくは、同文献に式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、XXIIIで説明された化合物である。
一実施の形態では、有用な化合物は、WO98/27054に記載された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、WO99/13983に記載された化合物である。一実施の形態では、有用な化合物は、WO99/64155に記載された化合物である。
一実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10038037に記載されたものである。一実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10046025に記載されたものである。一実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10150285に記載されたものである。
一実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10150286に記載されたものである。一実施の形態では、有用な化合物は、ドイツ特許出願DE10207165に記載されたものである。本発明の他の実施の形態では、有用なリンキレート配位子は、US2003/0100442A1に記載されたものである。
本発明の他の実施の形態では、有用なリンキレート配位子は、ドイツ特許出願の参照番号DE10350999.2(10.30.2003)に記載されたものであるが、同文献は、先の優先日を有しており、しかし本出願の優先日の時点では発行されていない。
上記化合物I、Ia、Ib及びII及びその製造はそれ自体公知である。使用するリン配位子は、化合物I、Ia、Ib及びIIの少なくとも2種を含む混合物でも良い。
本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、ニッケル(0)錯体のリン配位子及び/又は遊離リン配位子は、式Ib:
(但し、R1、R2、及びR3が、それぞれ独立してo−イソプロピルフェニル、m−トリル及びp−トリルから選ばれ、R4が、フェニルであり;xが1又は2であり、及びy、z、pが、x+y+z+p=3を条件として、それぞれ独立して0、1又は2である。)で表されるホスファイト、及びこれらの混合物、すなわち、式Ibで表される化合物の2種類以上、好ましくは2〜10種類、更に好ましくは2〜6種類の混合物から選択される。
第3実施の形態において、本発明の方法は、以下の処理工程:
(a*)2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流を、少なくとも1種の溶解又は分散状態の異性化触媒上で異性化して、少なくとも1種の異性化触媒、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ1を得る工程、
(b*)流れ1を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ2を頂部生成物として得て、そして少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得る工程、
(c*)流れ2を蒸留して、流れ2における全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ4を頂部生成物として得て、そして流れ2における全てのペンテンニトリルの合計に対して3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ5を底部生成物として得る工程、
(d*)流れ5を蒸留して、3−ペンテンニトリルを含む流れ6を底部生成物として得て、そして2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ7を頂部生成物として得る工程、
(h*)流れ3からの副流14及び流れ10からの副流16における触媒をニッケル(0)含有量を高めるために再生して、流れ18を生じさせる工程、
(i*)適宜、希釈剤Fを流れ18に添加して、流れ19を生じさせる工程、
(j*)ジニトリル流20及び炭化水素流21を添加することによって、流れ18又は流れ19が存在する場合には流れ18と流れ19から触媒成分及び/又は阻害成分を抽出して、2種類の非混和性相22及び23(但し、流れ22は、触媒成分を主割合で含み、流れ23は、阻害成分を主割合で含む。)を生じさせる工程、
(k*)流れ22の触媒成分から炭化水素を蒸留除去して、触媒成分を主割合で含む流れ25を生じさせ、適宜、流れ25を完全に又は部分的に処理工程(a*)又は(e*)に再循環させる工程、
を有することを特徴とする。
[反応物質流]
処理工程(a*)において、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流の異性化は、少なくとも1種の異性化触媒上で行われる。
本発明の方法における特定の実施の形態において、反応物質流は、以下の処理工程:
(e*)1,3−ブタジエンを少なくとも1種のヒドロシアン化触媒上でシアン化水素を用いてヒドロシアン化させて、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、1,3−ブタジエン及びシアン化水素の残留物を含む流れ8を得る工程、
(f*)流れ8を1回以上蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流れ9と、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を含む流れ10と、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11と、を得る工程、
(g*)流れ11を蒸留して、3−ペンテンニトリルを含む流れ12を底部生成物として得て、そして2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ13を頂部生成物として得る工程、
により得られる。
[処理工程(e*)]
処理工程(e*)において、反応物質流を製造するために、最初に、1,3−ブタジエンを少なくとも1種のヒドロシアン化触媒上でシアン化水素を用いてヒドロシアン化させて、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル及び未転化1,3−ブタジエンを含む流れ8を得る。
処理工程(e*)は、当業者に公知である好適な装置で行なうことができる。従って、反応のための有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第4版.第20巻,John Wiley&Sons,New York 1996, 1040〜1055頁に記載されているような通常の装置であり、例えば、攪拌タンク反応器、ループ反応器、ガス循環反応器、バブルカラム反応器(気泡塔反応器)、又はチューブ反応器(管型反応器)等であり、各場合において、適宜、反応熱を除去する装置を有していても良い。反応は、2基又は3基等の複数の装置で行なっても良い。
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、有利な反応器は、逆混合特性を有するもの、又は逆混合特性を有する反応器群に見出される。逆混合特性を有する有利な反応器群は、シアン化水素の計量に関し、クロス流モードで運転されるものであることがわかった。
ヒドロシアン化は、溶剤の存在下又は不存在下に行なわれて良い。溶剤が使用される場合、溶剤は所定の反応温度及び反応圧力において液体であり、そして、不飽和化合物及び少なくとも1種の触媒に対して不活性であるべきである。通常、使用する溶剤は、炭化水素、例えばベンゼン、又はキシレン、又はニトリル、例えば、アセトニトリル、又はベンゾニトリルである。しかしながら、溶剤として配位子を使用することが好ましい。
反応は、バッチ方式、連続方式、又は半バッチ方式で操作されても良い。
ヒドロシアン化反応は、装置に全ての反応物を充填して行なって良い。しかしながら、装置に触媒、不飽和有機化合物、及び所望により溶剤が充填されることが好ましい。気体状シアン化水素は、反応混合物の表面に浮くか、又は反応混合物に通されることが好ましい。装置に充填する別の手順は、装置に触媒、シアン化水素、及び所望により、溶剤を充填し、そして反応混合物に徐々に不飽和化合物を計量導入することである。この代わりに、反応物を反応器に導入し、そして反応混合物が反応温度とされ、この温度で、シアン化水素が液体状態で混合物に加えられることも可能である。更に、反応温度に加熱する前にシアン化水素を加えても良い。反応は、温度、雰囲気、反応温度等に関して通常のヒドロシアン化条件で行なわれる。
ヒドロシアン化を、1段階以上の撹拌処理工程で連続して行なうことが好ましい。複数の工程が使用される場合、直列状に連結された工程が好ましい。この場合、生成物は、所定の工程から次の工程へと直接的に移される。シアン化水素は、最初の工程に直接的に、又は個々の工程間に供給されて良い。
本発明の方法が半バッチ方式で行なわれる場合、最初に触媒化合物を充填し、そして1,3−ブタジエンを反応器に充填し、この間にシアン化水素が反応時間にわたって、反応混合物に計量導入されることが好ましい。
反応は、好ましくは、0.1〜500MPaの絶対圧、より好ましくは、0.5〜50MPaの絶対圧、特に1〜5MPaの絶対圧で行なわれる。反応は、好ましくは、273K〜473Kの温度、より好ましくは、313K〜423Kの温度、特に333K〜393Kの温度で行なわれる。液体反応相での有利な平均滞留時間は、0.001〜100時間の範囲、好ましくは0.05〜20時間の範囲、より好ましくは0.1〜5時間の範囲に見出され、この時間は、各場合において反応器ごとものものである。
一実施の形態において、反応は、気相の存在下に、及び所望により固体懸濁相の存在下に、液体相中で行なわれて良い。出発材料、シアン化水素、及び1,3−ブタジエンは、それぞれ、液体又は気体状態で計量導入されて良い。
他の実施の形態では、反応は、液相中で行なわれ、この場合、反応器内の圧力は、1,3−ブタジエン、シアン化水素、及び少なくとも1種の触媒等の全供給原料が、液体状態で計量導入されるものであり、そして、反応混合物内の液相中に存在するものである。固体の懸濁相は、反応混合物中に存在して良く、及び少なくとも1種の触媒と共に計量導入しても良いが、触媒は、例えば特にニッケル(II)を含む触媒組成物の分解生成物から成るものである。
処理工程(e*)において、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、少なくとも1種の触媒及び未転化1,3−ブタジエンを含む流れ8を得る。
[処理工程(f*)]
次いで、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、少なくとも1種の触媒及び未転化1,3−ブタジエンを含む流れ8を処理工程(f*)において蒸留装置に移す。この蒸留装置では、流れ8を1回以上蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流れ9と、少なくとも1種のヒドロシアン化触媒を含む流れ10と、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ11と、を得る。
処理工程(f*)の蒸留は、DE−A102004004720に記載されている処理工程(b*)及び(c*)のように、二段階で行っても良い。処理工程(f*)の蒸留は、DE−A102004004729に記載されている処理工程(b*)及び(c*)のように行うことも可能である。
処理工程(f*)の蒸留は、当業者にとって公知である好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、更に蒸気流の凝縮のための装置とが設けられている。個々の蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、好ましくは単一の装置で行なって良い。
供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(f*)の圧力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜1バール、特に0.02〜0.5バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃、特に60〜120℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜150℃、より好ましくは−15〜60℃、特に5〜45℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
次いで、流れ11を他の処理工程(g*)において蒸留に付す。蒸留は、当該分野で公知の好適な装置で行っても良い。蒸留に好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版., 第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、更に蒸気流の凝縮のための装置とが設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、単一の装置で行うのが有利である。給流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(g*)の圧力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜20バール、特に0.05〜2バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に60〜180℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜180℃、特に15〜160℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
処理工程(g*)において、流れ12を、3−ペンテンニトリルを含む底部生成物として得て、流れ13を、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む頂部生成物として得る。流れ13は、3−ペンテンニトリルを調製する本発明の方法において反応物質流として使用されるのが好ましい。
本発明の他の実施の形態において、本発明の処理工程(a*)で用いられる反応物質流は、処理工程(f*)の流れ11に対応することから、処理工程(g*)における流れ11の分離は省略される。
[処理工程(a*)]
処理工程(a*)において、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む反応物質流を、少なくとも1種の異性化触媒上で異性化する。これにより、異性化触媒、未転化2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ1を得る。
本発明によれば、異性化は、以下の成分:
・ニッケル(0)、
・三価のリンを含み、配位子としてニッケル(0)をキレート化する化合物、
を含む組成物(系)の存在下で行われる。
ニッケル(0)含有触媒組成物は、それ自体公知の方法によって製造することができる。
異性化触媒の配位子は、処理工程(e*)で使用されるヒドロシアン化触媒に使用されるのと同じリン配位子であっても良い。従って、ヒドロシアン化触媒は、異性化触媒と同一であっても良い。処理工程(a*)及び(e*)における触媒は、実質的にルイス酸非含有である、すなわち、ルイス酸を如何なるときも触媒に添加せず、そして触媒は、ルイス酸を含んでいないのが好ましい。
本発明の場合、ルイス酸は無機又は有機金属化合物であり、かかる化合物において、カチオンが、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、レニウム及びスズから成る群より選択される。かかる化合物の例示は、例えば米国特許第6127567号、同第6171996号、同第6380421号、同第3496217号、同第3496218号、同第4774353号、同第3773809号、同第3496217号及び同第4874884号に記載されているに、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF3)2、CoCl2、CoCl2、FeI2、FeCl3、FeCl2、FeCl2(THF)2、TiCl4(THF)2、TiCl4、TiCl3、ClTi(O−イソプロピル)3、MnCl2、ScCl3、AlCl3、(C8H17)AlCl2、(C8H17)2AlCl、(i−C4H9)2AlCl、(C6H5)2AlCl、(C6H5)AlCl2、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MoCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF3)3、Yb(O2CCF3)3、SmCl3、B(C6H5)3、TaCl5、RAlCl2、R2AlCl、RSnO3SCF3およびR3B(但し、Rは、アルキル又はアリール基である)、B(C6H5)3およびB(C6H5)3SnX(この場合、X=CF3SO3、CH3C6H4SO3または(C6H5)3BCNである。)が挙げられる。
異性化は、液体の希釈剤、
−例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、ベンゼン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素、
−例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル、
−例えば、酢酸エチル、安息香酸メチル等のエステル、又は
−例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、又は
−上記の希釈剤の混合物
の存在下で行うことができる。
特に好ましい実施の形態において、有用な異性化は、上記の液体の希釈剤の不存在下である。
さらに、処理工程(a*)の異性化が非酸化雰囲気下、例えば、窒素または希ガス(例えばアルゴン)から成る保護気体雰囲気下で行われる場合に有利であることが判明した。
処理工程(a*)は、当業者に公知の好適な装置で行うことができる。この反応に有用な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第20巻、John Wiley&Sons、New York、1996、1040〜1055頁に記載されているように、攪拌タンク反応器、ループ反応器、ガス循環反応器、バブルカラム反応器(気泡塔反応器)又はチューブ反応器(管型反応器)等の一般的な装置である。反応は、複数の装置、例えば2基又は3基の装置において行うことができる。
本発明の方法における好ましい実施の形態において、異性化は、区画化管型反応器において行われる。
本発明の方法における他の好ましい実施の形態において、異性化は、直列に連結させた少なくとも2基の反応器において行われ、その場合、第1の反応器は、実質的に撹拌タンク特性を有しており、第2の反応器は、実質的に管型特性を有するように設計される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、異性化は、2〜20基の撹拌槽、特に3〜10基の撹拌槽に対応する撹拌槽群の特性を有する反応器中で行われる。
本発明の方法における一実施の形態において、反応は、1基の蒸留装置において行われも良く、その場合、異性化反応は、蒸留装置の少なくとも底部領域で起こる。当業者等に公知の蒸留装置が適当であり、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。併発反応を伴う蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、好ましくは単一の装置で行なって良い。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(a*)は、0.1mbar(ミリバール)〜100bar(バール)の絶対圧下で行われるのが好ましく、さらに好ましくは1mbar〜16barであり、特に10mbar〜6barの絶対圧である。処理工程(a*)の温度は、好ましくは25〜250℃、さらに好ましくは30〜180℃、特に40〜140℃である。
直鎖のペンテンニトリルに対する2−メチル−3−ブテンニトリルのモル比及びこれにより得られる、使用された2−メチル−3−ブテンニトリルの転化率に関して、取り出された流れの組成は、供給物流の組成に応じて、温度、触媒濃度、滞留時間及び反応器の形態に基づき技術的に簡易な手法で調節することができる。本発明の方法における好ましい実施の形態において、転化率は、3回の測定により、10〜99%の範囲、更に好ましくは30〜95%の範囲、特に60〜90%の範囲の値に調節される。
[処理工程(b*)]
処理工程(b*)において、処理工程(a*)で得られた流れ1を蒸留する。これにより、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ2を頂部生成物として得る。更に、処理工程(b*)において、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得る。
本発明の方法における処理工程(b*)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(b*)の圧力は、好ましくは0.1ミリバール〜100バール、より好ましくは1ミリバール〜6バール、特に10ミリバール〜500ミリバールの絶対圧である。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは25〜250℃、より好ましくは40〜180℃、特に60〜140℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における温度が、好ましくは−15〜200℃、より好ましくは5〜150℃、特に10〜100℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の特に好ましい実施の形態において、処理工程(b*)で行われる流れ1の蒸留は、混合物中に存在する異性化触媒が処理工程(a*)のときより低い活性となるか、又は不活性となるような圧力及び温度の条件下で行われる。
本発明の好ましい実施の形態において、処理工程(b*)で得られ、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を少なくとも部分的に処理工程(a*)に再循環させる。
本発明の方法における他の実施の形態において、処理工程(a*)及び(b*)を同一の装置で行う。少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を処理工程(b*)から取り出さず、処理工程(a*)及び(b*)の共通の装置に残すことも可能である。
[処理工程(c*)]
処理工程(c*)において、流れ2を蒸留する。これにより、流れ2に含まれる全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より豊富に含む流れ4を頂部生成物として得る。更に、流れ2に含まれる全てのペンテンニトリルの合計に対して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを流れ2より少なく含む流れ5を底部生成物として得る。
処理工程(c*)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、そして更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
本発明の方法における処理工程(c*)の圧力は、好ましくは0.1ミリバール〜100バール、より好ましくは1ミリバール〜6バール、特に10ミリバール〜500ミリバールの絶対圧である。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは25〜250℃、より好ましくは40〜180℃、特に60〜140℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における温度が、好ましくは−15〜200℃、より好ましくは5〜150℃、特に10〜100℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、処理工程(b*)及び(c*)を1基の蒸留装置で同時に行い、その場合、少なくとも1種の異性化触媒を含む流れ3を底部生成物として得て、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ4を頂部生成物として得て、そして3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ5を塔の側部取り出し部から得る。
本発明の方法における他の好ましい実施の形態において、処理工程(a*)、(b*)及び(c*)を1基の蒸留装置で同時に行う。その場合、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流れ4を頂部生成物として得る。3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流れ5を蒸留塔の側部取り出し部から得る。この実施の形態において、異性化触媒は、蒸留塔の底部に残留しているのが好ましい。
[処理工程(d*)]
3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含み、処理工程(c*)で得られる流れ5を、その後、他の蒸留装置に移す。かかる蒸留装置において、流れ5を、底部生成物として取り出される3−ペンテンニトリル流と、頂部生成物として取り出される2−メチル−3−ブテンニトリル流と、に分離する。
処理工程(d*)は、当業者にとって公知の好適な装置でも行なうことができる。蒸留のために好適な装置は、例えば、Kirk−Othmer,Encyclopetia of Chemical Technology,第4版.,第8巻,John Wiley&Sons,New York,1996,334−348頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム等の装置であり、隔壁塔として稼働させることも可能である。これらの蒸留装置には、それぞれ、蒸発のための好適な装置、例えば流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、多相らせんチューブ蒸発器、自然循環蒸発器、又は強制循環フラッシュ蒸発器と、更に蒸気流の凝縮のための装置が設けられている。蒸留は、2又は3基等の複数の装置で行なって良く、有利には単一の装置で行われる。供給物流の部分蒸発を行う場合、蒸留は、一段階で更に行われても良い。
処理工程(d*)の絶対力は、好ましくは0.001〜100バール、より好ましくは0.01〜20バール、特に0.05〜2バールである。蒸留は、蒸留装置の塔底内の温度が、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に60〜180℃の範囲となるように行なわれる。蒸留は、蒸留装置の塔頂における凝縮温度が、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜180℃、特に15〜160℃の範囲となるように行なわれる。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、上述した温度範囲が、蒸留装置の塔頂及び塔底の両方で維持される。
本発明の方法における特に好ましい実施の形態において、処理工程(d*)及び(g*)を同じ蒸留装置で行う。その場合、流れ6及び12並びに流れ7及び13が同時に生じる。更に、かかる好ましい実施の形態において、流れ5を、処理工程(d*)及び(g*)の共通の装置に直接誘導する。この場合、流れ5及び11の導入位置は、蒸留装置としての蒸留塔の場合、同一であっても又は異なっていても良い。
本発明の方法における他の実施の形態において、処理工程(c*)及び(g*)を共通の蒸留塔で行う。その場合、処理工程(d*)が省略され、処理工程(b*)から得た流れ2及び処理工程(f*)から得た流れ11を処理工程(g*)に導き、そして処理工程(g*)において、流れ4を、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む頂部生成物として得て、流れ12を、3−ペンテンニトリルを含む底部生成物として得て、流れ13を、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む側部取り出し流として得る。
本発明に従う方法の第3実施の形態において、流れ2を処理工程(g*)に直接再循環させ、反応物質流を処理工程(c*)に直接導き、その場合、処理工程(c*)から得られた流れ5aを処理工程(a*)の異性化に再循環させることが可能である。
或いは、流れ2を処理工程(g*)に直接再循環させ、そして反応物質流を処理工程(c*)に導き、その場合、処理工程(c*)から得られた流れ5を処理工程(f*)に再循環させることも可能である。
或いは、流れ2を処理工程(g*)に直接再循環させ、そして反応物質流を処理工程(c*)に導き、そして処理工程(c*)から得られた流れ5を処理工程(e*)に再循環させることも可能である。
[処理工程(h*)]
処理工程(h*)は、少なくとも1種のニッケル(0)中心原子と少なくとも1種のリン配位子とを含むニッケル(0)−リン配位子錯体の製造方法を含む。
以下、還元触媒の合成/再生及びレドックス触媒の合成/再生なる用語は、同義である。
[処理工程(h1 *)]
処理工程(h*)の好ましい実施の形態において、処理工程(h1 *)として、本発明では、共沸蒸留(予め水性であるが、勿論、共沸蒸留後に乾燥する)によって乾燥された水性のハロゲン化ニッケル(II)を、少なくとも1種のリン配位子の存在下に還元する。
[共沸蒸留]
共沸蒸留では、水性のハロゲン化ニッケル(II)(水を含むハロゲン化ニッケル(II))を使用する。水性ハロゲン化ニッケル(II)は、塩化ニッケル、臭化ニッケル及びヨウ化ニッケル(これらは、少なくとも2質量%の水を含んでいる。)からなる群から選択されるハロゲン化ニッケルである。その例は、塩化ニッケル二水和物、塩化ニッケル六水和物、塩化ニッケルの水溶液、臭化ニッケル三水和物、臭化ニッケルの水溶液、ヨウ化ニッケル水和物又はヨウ化ニッケルの水溶液である。塩化ニッケルの場合、塩化ニッケル六水和物又は塩化ニッケルの水溶液を使用するのが好ましい。臭化ニッケル及びヨウ化ニッケルの場合、水溶液を使用するのが好ましい。塩化ニッケルの水溶液を使用するのが特に好ましい。
水溶液の場合、水におけるハロゲン化ニッケル(II)の濃度は、それ自体重要ではない。ハロゲン化ニッケル(II)及び水の合計質量に対するハロゲン化ニッケル(II)の有利な割合は、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、更に好ましくは少なくとも0.25質量%、特に好ましくは少なくとも0.5質量%であると見出された。ハロゲン化ニッケル(II)及び水の合計質量に対するハロゲン化ニッケル(II)の有利な割合は、80質量%以下の範囲、好ましくは60質量%以下の範囲、更に好ましくは40質量%以下の範囲であると見出された。実用上の理由から、ハロゲン化ニッケル及び水の混合物におけるハロゲン化ニッケルの割合を過剰としないことにより、所定の温度及び圧力の条件下で溶液となるようにするのが有利である。従って、塩化ニッケルの水溶液の場合には、実用上の理由から、室温条件下で、塩化ニッケル及び水の合計質量に対するハロゲン化ニッケルの割合を31質量%以下に選択するのが有利である。より高温では、対応してより高濃度が選択されても良く、これにより塩化ニッケルの水に対する溶解性がもたらされる。
水性ハロゲン化ニッケル(II)を乾燥した後に、共沸蒸留により還元する。本発明の好ましい実施の形態において、共沸蒸留は、対応の水性ハロゲン化ニッケル(II)から水を除去する処理であり、この処理において、希釈剤と混合する。希釈剤(希釈液)の沸点は、その希釈剤が水と共沸混合物を形成しない場合、以下に述べる蒸留の圧力条件下で水の沸点より高く、そして希釈剤は、水の沸点において液体の状態で存在するか、又は以下に述べる蒸留の圧力及び温度の条件下で水と共沸混合物若しくは異相共沸混合物を形成し、そして、水性のハロゲン化ニッケル(II)と上記の希釈剤を含む混合物を蒸留して、水又は上述の共沸混合物又は上述の異相共沸混合物を上記の混合物から除去して、ハロゲン化ニッケル(II)及び上記の希釈剤を含む水性混合物を得る。
水性のハロゲン化ニッケル(II)に加え、出発混合物は、他の成分、例えばイオン性又は非イオン性の、有機又は無機化合物、特に、出発混合物と均一に又は単相を形成するように混和するか、又は出発混合物に溶解する化合物を更に含んでいても良い。
本発明によれば、水性のハロゲン化ニッケル(II)を、蒸留の圧力条件下での沸点が水の沸点より高く且つかかる水の沸点で液体である希釈剤と混合する。
その後の蒸留のための圧力条件は、それ自体重要ではない。有利な圧力は、少なくとも10-4MPa、好ましくは少なくとも10-3MPa、特に少なくとも5×10-3MPaであると見出された。有利な圧力は、1MPa以下、好ましくは5×10-1MPa以下、特に1.5×10-1MPa以下と見出された。
圧力条件及び蒸留すべき混合物の組成に応じて、その後に温度を確立する。この温度条件下で、希釈剤は液体の状態であるのが好ましい。本発明の場合、希釈剤なる用語は、個々の希釈剤、又は希釈剤の混合物であり、その場合、本発明で述べる物理的特性は、かかる混合物に関するものである。
更に、希釈剤は、このような圧力及び温度の条件下で、希釈剤が水と共沸混合物を形成しない場合に、水の沸点より高く、好ましくは少なくとも5℃高く、特に少なくとも20℃高く、そして好ましくは200℃以下、特に100℃以下の沸点を有していることが望ましい。
好ましい実施の形態において、水と共沸混合物又は異相共沸混合物を形成する希釈剤を使用しても良い。混合物における水の量と比較して、希釈剤の量はそれ自体重要ではない。有利には、共沸蒸留により蒸留除去される量に対応するより多くの液体希釈剤を使用し、これにより過剰の希釈剤が底部生成物として残留する。
水と共沸混合物を形成しない希釈剤を使用する場合、混合物における水の量と比較して、希釈剤の量はそれ自体重要ではない。
使用される希釈剤は、特に、有機ニトリル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び上述の溶剤からなる群から選択される。有機ニトリルに関して、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチルニトリル、n−バレロニトリル、シアノシクロプロパン、アクリロニトリル、クロトニトリル、アリルシアニド、cis−2−ペンテンニトリル、trans−2−ペンテンニトリル、cis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、Z−2−メチル−2−ブテンニトリル、E−2−メチル−2−ブテンニトリル、エチルスクシノニトリル、アジポニトリル、メチルグルタロニトリル又はこれらの混合物を使用するのが好ましい。芳香族炭化水素に関して、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン又はこれらの混合物を使用するのが好ましい。脂肪族炭化水素は、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素から選択されるのが好ましく、更に好ましくは脂環式化合物から選択され、例えばシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンであり、又はこれらの混合物であるのが好ましい。cis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、アジポニトリル、メチルグルタロニトリル又はこれらの混合物を溶剤として使用するのが特に望ましい。
使用される希釈剤が有機ニトリル又は少なくとも1種の有機ニトリルを含む混合物である場合、最終混合物におけるハロゲン化ニッケル(II)及び希釈剤の合計質量に対するハロゲン化ニッケル(II)の割合が少なくとも0.05質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、更に好ましくは少なくとも1質量%となるように希釈剤の量を選択することが有利であると見出された。
使用される希釈剤が有機ニトリル又は少なくとも1種の有機ニトリルを含む混合物である場合、最終混合物におけるハロゲン化ニッケル(II)及び希釈剤の合計質量に対するハロゲン化ニッケル(II)の割合が50質量%以下、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下となるように希釈剤の量を選択することが有利であると見出された。
本発明によれば、水性のハロゲン化ニッケル(II)及び希釈剤を含む混合物を蒸留して、この混合物から水を除去し、ハロゲン化ニッケル(II)及び上記の希釈剤を含む無水混合物を得る。好ましい実施の形態において、混合物を最初に調製し、次いで蒸留する。他の好ましい実施の形態において、水性のハロゲン化ニッケル、更に好ましくはハロゲン化ニッケルの水溶液を蒸留中に煮沸希釈剤(boiling diluent)に徐々に添加する。これにより、処理技術の観点から取り扱いが困難な脂肪性の固体の形成を実質的に防止することができる。
ペンテンニトリルを希釈剤として使用する場合、蒸留は、1MPa以下、好ましくは0.5MPa以下の条件下で有利に行うことができる。
ペンテンニトリルを希釈剤として使用する場合、蒸留は、少なくとも1kPa、好ましくは少なくとも5kPa、更に好ましくは少なくとも10kPaの条件で行われるのが好ましい。
蒸留は、単一段階蒸発により、好ましくは1基以上、例えば2又は3基の蒸留装置における分留によって有利に行うことができる。蒸留に有用な装置は、このために一般的な装置であり、例えば、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版, 第7巻, John Wiely & Sons, New York, 1979, 870-881頁に記載されているように、網目プレートカラム、バブルキャップトレイカラム(泡鐘トレイ塔)、構造化充填物又は不規則充填物を有するカラム、側部取り出し部を有するカラム又は隔壁塔である。
蒸留は、バッチ式又は連続的に行われても良い。
[還元]
少なくとも1種のニッケル(0)中心原子と少なくとも1種のリン配位子とを含むニッケル(0)−リン配位子錯体を還元によって製造する方法は、溶剤の存在下で行われるのが好ましい。溶剤は、特に、有機ニトリル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素及び上述の溶剤からなる群から選択される。有機ニトリルに関して、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチルニトリル、n−バレロニトリル、シアノシクロプロパン、アクリロニトリル、クロトニトリル、アリルシアニド、cis−2−ペンテンニトリル、trans−2−ペンテンニトリル、cis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、Z−2−メチル−2−ブテンニトリル、E−2−メチル−2−ブテンニトリル、エチルスクシノニトリル、アジポニトリル、メチルグルタロニトリル又はこれらの混合物を使用するのが好ましい。芳香族炭化水素に関して、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン又はこれらの混合物を使用するのが好ましい。脂肪族炭化水素は、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素から選択されるのが好ましく、更に好ましくは脂環式化合物から選択され、例えばシクロヘキサン又はメチルシクロヘキサンであり、又はこれらの混合物であるのが好ましい。cis−3−ペンテンニトリル、trans−3−ペンテンニトリル、アジポニトリル、メチルグルタロニトリル又はこれらの混合物を溶剤として使用するのが特に望ましい。
不活性溶剤を使用するのが望ましい。
溶剤の濃度は、最終反応混合物に対して、10〜90質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは20〜70質量%の範囲であり、特に30〜60質量%の範囲である。
本発明の特定の実施の形態において、溶剤は、ハロゲン化ニッケル(II)及び希釈剤を含む無水混合物を製造する上述の本発明の方法で使用される希釈剤と同一である。
本発明の方法において、溶剤中の配位子の濃度は、1〜90質量%の範囲であるのが好ましく、更に好ましくは5から80質量%の範囲であり、特に50〜80質量%の範囲である。
本発明の方法で使用される還元剤は、ニッケル、アルキル金属、電流、錯体水素化物(ヒドリド錯体)及び水素よりプラスに帯電した金属から選択されるのが好ましい。
本発明の方法で使用される還元剤がニッケルよりプラスに帯電した金属である場合、かかる金属は、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉛及びトリウムからなる群から選択されるのが好ましい。本発明の場合、鉄及び亜鉛が好ましい。使用される還元剤がアルミニウムである場合、触媒量の水銀(II)塩又はアルキル金属との反応により予備活性化されるのが有利である。予備活性化の場合、トリエチルアルミニウムを好ましくは0.05〜50モル%の量、更に好ましくは0.5から10モル%の量で使用することが望ましい。還元金属は、微細に分散されている(微粒子状である)ことが望ましく、「微細に分散」なる用語は、金属が10メッシュ未満、更に好ましくは20メッシュ未満の粒径で用いられることを意味する。
本発明の方法で使用される還元剤がアルキル金属を含む場合、かかる金属は、アルキルリチウム、アルキルナトリウム、アルキルマグネシウム、特にグリニャール試薬、アルキル亜鉛又はアルキルアルミニウムであるのが好ましい。アルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム又はこれらの混合物が好ましく、特にトリエチルアルミニウムである。アルキル金属を実質的に、ヘキサン、ヘプタン若しくはトルエン等の不活性有機溶剤に溶解させて使用しても良い。
本発明の方法で使用される還元剤が錯体水素化物を含む場合、水素化金属アルミニウム、例えば水素化リチウムアルミニウム、又は金属ボロヒドリド、例えばナトリウムボロヒドリドを用いるのが好ましい。
ニッケル(II)源と還元剤との間におけるレドックス当量(redox equivalent)のモル比は、好ましくは1:1〜1:100の範囲であり、更に好ましくは1:1〜1:50の範囲であり、特に1:1〜1:5の範囲である。
本発明の方法において、使用される配位子は、例えば工程e*)のヒドロシアン化反応又は例えば工程a*)の異性化反応における触媒溶液として既に用いられ、且つニッケル(0)が低減した配位子溶液(リガンド溶液)中に存在していても良い。かかる流れは、それぞれ流れ3と流れ10であり、工程h*)及び適宜以下の段階の工程i*)、j*)及びk*)が行われるときにはこれらの段階において、選択される副流14(副流3より得る)と副流16(副流10より得る)が部分的に又は個々に導入される。残りの副流15(流れ3より得る)と17(流れ10より得る)は、h*)、i*)、j*)及びk*)を通じて導かれず、むしろこれらを工程a*)又はe*)に直接再循環させる。このような「返還触媒溶液」は、以下の組成:
2〜60質量%、特に10〜40質量%のペンテンニトリル、
0〜60質量%、特に0〜40質量%のアジポニトリル、
0〜10質量%、特に0〜5質量%の他のニトリル、
10〜90質量%、特に50〜90質量%のリン配位子、及び
0〜20質量%、特に0〜1質量%のニッケル(0)、
を有しているのが一般的である。
従って、反感触媒溶液に含まれる遊離配位子を本発明の方法においてニッケル(0)錯体に再び転化しても良い。
本発明の特定の実施の形態において、リン配位子に対するニッケル(II)源の割合は、1:1〜1:100の範囲である。リン配位子に対するニッケル(II)源の他の好ましい割合は、1:1〜1:3であり、特に1:1〜1:2である。
本発明の方法は所定の圧力条件下で行われても良い。実用上の理由から、0.1バール〜5バールの圧力、好ましくは0.5バール〜1.5バールの圧力が好ましい。
本発明の方法は、バッチ式又は連続的に行うことができる。
本発明の方法において、過剰のハロゲン化ニッケル(II)又は還元剤、例えば亜鉛を用いることなく作業することが可能であり、これにより、これをニッケル(0)錯体の形成後に除去する必要がない。
本発明の特定の実施の形態において、本発明の方法は、以下の処理工程:
(1)共沸蒸留によって水性のハロゲン化ニッケル(II)を乾燥する工程、
(2)共沸により乾燥したハロゲン化ニッケル(II)をリン配位子の存在下に溶剤中で予備キレート化する工程、
(3)処理工程(2)から生じた溶液又は懸濁液に少なくとも1種の還元剤を20〜120℃の添加温度条件下で添加する工程、
(4)処理工程(3)から生じた懸濁液又は溶液を20〜120℃の反応温度で撹拌する工程、
を含む。
予備キレート化温度、添加温度及び反応温度は、それぞれ20〜120℃の範囲であっても良い。予備キレート化、添加及び反応を30〜80℃の範囲の温度で行うのが特に好ましい。
予備キレート化時間、添加時間及び反応時間は、相互に独立して1分〜24時間である。予備キレート化時間は、特に、1分〜3時間である。添加時間は、1分〜30分であるのが好ましい。反応時間は、20分〜5時間であるのが望ましい。
[処理工程(h2 *)]
処理工程(h*)の他の好ましい実施の形態は、本発明において処理工程(h2 *)として記載するものであり、流れ14又は16のニッケル(0)含有量を、例えばニッケル粉末での撹拌によって補充する工程を含む。これが行われる場合、流れ14又は16における遊離リン配位子を錯体形成相手として用いるか、又は新たな配位子を添加する。
触媒化合物は、開始剤としての好適なハロゲン化物源、例えばリン、ヒ素又はアンチモンのハロゲン化物又はアルキル置換ハロゲン化物、例えばCH3PCl2、CH3AsCl2又はCH3SbCl2、或いは好適な金属ハロゲン化物、元素のハロゲン、例えば塩素、臭素又はヨウ素、又は対応のハロゲン化水素又はハロゲン化チオニルを用いてニッケル粉末から調製可能である。本発明により使用される金属ハロゲン化物は、Cr、Ni、Ti、Cu、Co、Fe、Hg、Sn、Li、K、Ca、Ba、Sc、Ce、V、Mn、Be、Ru、Rh、Pd、Zn、Cd、Al、Th、Zr及びHfのハロゲン化物である。ハロゲン化物は、塩化物、臭化物又はヨウ化物であっても良い。特に好適なハロゲン化物源は、PX3、TiX4、ZrX4、HfX4又はHX(但し、Xは塩化物、臭化物又はヨウ化物を表す。)である。本発明の方法が行われる場合、2種以上の開始剤又は触媒の混合物を使用しても良い。
触媒の再生は、0〜200℃、好ましくは25〜145℃、更に好ましくは50〜100℃の温度条件下、バッチ、例えばUS3903120に類似のバッチ式で、又はUS4416825に類似した連続式で行われても良い。触媒の残留時間を、広範囲にて変更しても良く、一般に15分〜10時間の範囲であり、好ましくは20分〜5時間の範囲であり、更に好ましくは30分〜2時間の範囲である。
処理工程(h2 *)が処理工程(h1 *)の代わりに行われる場合、処理工程(i*)(j*)及び(k*)を、適宜、部分的に又は完全に行っても良い。
[処理工程(i*)]
必要により、流れ18を凝縮した後に、例えば0.1〜5000ミリバール(絶対圧)、好ましくは0.5〜1000ミリバール、特に1〜200ミリバールの圧力及び10〜150℃、好ましくは40〜100℃の温度条件での蒸留による工程i)を行うか、或いは他の好適な処置として、当初の体積に対して、50〜95%、好ましくは60〜90%を形成しても良い。特に好ましい実施の形態において、その後、かかる流れは、10質量%以下の濃度、すなわち0〜10質量%、好ましくは0.01〜8質量%のペンテンニトリルを含んでいる。
[工程i*)]無極性の非プロトン性液体Lの添加
工程i*)において、無極性の非プロトン性液体Lを流れ18に添加して、流れ19を得る。本発明の場合、液体は、化合物Lが工程i*)の圧力及び温度条件下で液体の状態で存在することを意味し;他の圧力及び温度条件下で、Lは、固体又は気体であっても良い。
好適な無極性(又は非極性)の非プロトン性液体Lは、工程i*)の条件下で全ての液体の化合物であり、これは、触媒、例えばリン配位子及び/又は遊離リン配位子を有するNi(0)錯体を化学的に又は物理的に僅かにだけ変更する。液体Lとして好適な化合物は、分子中にイオン化可能なプロトンを含まず、低い比誘電率(εr<15)と低い双極子モーメント(μ<2.5デバイ)を有しているのが一般的である。
特に好適なのは、例えば、ハロゲン化されていても良い炭化水素、更にアミン、特に第三級アミン、そして二硫化炭素である。
好ましい実施の形態において、液体Lは、炭化水素H*である。好適な炭化水素H*は、脂肪族、脂環式又は芳香族化合物である。好適な脂肪族炭化水素は、例えば、炭素原子数5〜30の範囲、好ましくは5〜16の範囲の直鎖又は分岐のアルカン又はアルケン、特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン及びドデカン(それぞれ全ての異性体を含む)である。
好適な脂環式炭化水素は、例えば、5〜10個の炭素原子を有しており、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン及びシクロドデカンである。置換、特にC1-10アルキル置換の脂環式化合物、例えばメチルシクロヘキサンも好適である。好適な芳香族炭化水素は、炭素原子数6〜20のものであり、特にベンゼン、トルエン、o−、m−及びp−キシレン、ナフタレン及びアントラセンである。置換、好ましくはC1-10アルキル置換の芳香族化合物、例えばエチルベンゼンを用いることも可能である。
炭化水素H*は、炭化水素Hに関して以下に述べる化合物から選択されるのが更に好ましい。炭化水素H*は、炭化水素Hと同一であるのが極めて好ましく、すなわち、同一の炭化水素を工程j)での抽出のために且つ液体Lとして使用する。
[液体の添加の形態]
無極性の非プロトン性液体Lを、通常の混合装置中において流れ18に添加しても良い。処理技術の観点から特に簡易であることから、無極性の非プロトン性液体Lを、撹拌容器又はポンプ循環系において工程i*)で流れ18と混合するのが好ましい。
無極性の非プロトン性液体を流れ18と密に混合することが好ましい。好適な撹拌容器(撹拌器付き容器)は、一般的な液体用混合機であり、激しい混合の混合機素子及び/又は静的若しくは可動性のインターナルが設けられていても良い。
同様に、ポンプ循環系(ポンプ循環装置)を用いることも好ましい。一般に、ポンプ循環系からの出力に対するポンプ循環における量の割合が0.1:1〜1000:1の範囲、好ましくは1:1〜100:1の範囲、更に好ましくは2:1〜25:1の範囲となるように操作される。好適な循環ポンプは、例えば3〜10バール(絶対圧)の所定の圧力下で開くオーバーフローバルブに対して働くのが好ましい。
同一の炭化水素を工程i*)及びj*)で使用する場合、両方の工程で、新鮮な炭化水素をそれぞれ使用することができる。同様に、工程i*)及びj*)で使用される炭化水素を再利用するか、又は工程i*)後に工程j*)で使用された炭化水素を循環させて、それを再利用しても良い。
極めて好ましい実施の形態において、液体Lは、工程j*)で得られる流れ22の副流(サブストリーム)(触媒を豊富に含む炭化水素H、以下を参照されたい)である。これは、流れ22の一部を工程j*)で分岐させて、分岐分を工程i*)で流れ18に添加することを意味する。かかる実施の形態において、流れ22の一部をそれに応じて循環させる。
他の、同様に好ましい実施の形態において、無極性の非プロトン性液体Lを遅延領域(以下を参照)、例えばその開始位置に直接計量導入する。
液体Lを、0〜150℃、好ましくは10〜100℃、特に20〜80℃の温度及び0.01〜100バール(絶対圧)、好ましくは0.1〜10バール、特に0.5〜5バールの圧力の条件下で添加するのが一般的である。
必要とされる液体Lの量は、広範囲にて変更可能である。一般に、工程j*)で行われる抽出において用いられる炭化水素Hの量より少ないが、多くても良い。液体Lの量は、工程j*)での抽出に使用される炭化水素Hの量に対して、0.1〜200体積%、特に1〜50体積%、更に好ましくは5〜30体積%とすることが望ましい。
[必要により行われるアンモニア又はアミンを用いた処理]
工程h*)がレドックス再生を含む場合、適宜、アンモニア又は第一級、第二級若しくは第三級の、芳香族若しくは脂肪族アミンを流れ18又は流れ19に、又は工程i*)中それ自体又は工程j*)中それ自体に添加しても良い。芳香族化合物には、アルキル芳香族化合物が含まれ、脂肪族化合物には、脂環式化合物が含まれる。
このようなアンモニア又はアミンでの処理により、ジニトリルが豊富に含まれる第2の相(流れ23)での抽出(工程j*))において、触媒、特にニッケル(0)錯体又は配位子の含有量を低減可能であること、すなわち、抽出において、2相間におけるNi(0)錯体又は配位子の分配を第1の相(流れ22)のためにシフトすることが見出された。アンモニア又はアミンでの処理により、流れ22における触媒の濃度が改善され、これは、触媒循環で触媒の損失が小さくなり、ヒドロシアン化の経済的な可能性を改善することを意味する。
従って、かかる実施の形態において、抽出前に、流れ18又は流れ19をアンモニア又はアミンで処理するか、かかる処理を抽出中に行う。抽出中の処理は抽出前の処理より望ましくない。
アンモニア又はアミンを無極性の非プロトン性液体Lと一緒に添加することが特に好ましい。特に、液体Lとアンモニア又はアミンを同一の混合装置中に添加する。
アミンとして、モノアミン、ジアミン、トリアミン又は更に高官能性アミン(ポリアミン)を使用する。モノアミンは、炭素原子数1〜30のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有しているのが一般的であり;好適なモノアミンは、例えば、第一級アミン、例えばモノアルキルアミン、第二級又は第三級アミン、例えばジアルキルアミンである。好適な第一級モノアミンは、例えば、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン及びフルフリルアミンである。有用な第二級モノアミンは、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジ−n−プルピルアミン及びN−メチルベンジルアミンである。好適な第三級アミンは、例えば、C1-10アルキル基を有するトリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミンである。
好適なジアミンは、例えば、式R1−NH−R2−NH−R3(但し、R1、R2及びR3は、相互に独立して、それぞれ水素又は炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表す。)で表されるジアミンである。アルキル基は、直鎖であっても、又は特にR2の場合、環式であっても良い。好適なジアミンは、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン(1,2−ジアミノプロパン及び1,3−ジアミノプロパン)、N−メチルエチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(メチルアミノ)プロパン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、3−(プロピルアミノ)プロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン及びイソホロンジアミン(IPDA)である。
好適なトリアミン、テトラアミン又はより高官能性アミンは、例えば、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−アミノプロピル)アミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、イソプロピレントリアミン、ジプロピレントリアミン及びN,N’−ビス(3−アミノプロピレンジアミン)である。2個以上のアミノ基を有するアミノベンジルアミン及びアミノヒドラジドも同様に好適である。
勿論、アンモニアと1種以上のアミンの混合物、又は複数のアミンの混合物を使用することも可能である。
アンモニア又は脂肪族アミン、特にアルキル基の炭素原子数が1〜10のトリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミン、そして更にジアミン、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン又は1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンを使用するのが好ましい。
アンモニアを単独で使用するのが特に好ましく、すなわち、アンモニアの他にアミンを使用しないのが特に好ましい。無水アンモニアが極めて好ましく、本発明の場合、無水は、1質量%未満、好ましくは1000質量ppm未満、特に100質量ppm未満の水含有量を意味する。
アンモニアに対するアミンのモル比は、広範囲内にて変更可能であり、10000:1〜1:10000の範囲が一般的である。
使用されるアンモニア又はアミンの量を決定する要素として、触媒、例えばニッケル(0)触媒の種類及び量、及び/又は配位子の種類及び量、使用される場合には、ヒドロシアン化の促進剤として使用されるルイス酸の種類及び量が含まれる。一般に、ルイス酸に対するアンモニア又はアミンのモル比は、少なくとも1:1である。かかるモル比の上限は、正当な判断基準に基づいていないのが一般的であり、例えば100:1であるが、過剰のアンモニア又はアミンは、Ni(0)錯体又はその配位子が分解するので望ましくない。ルイス酸に対するアンモニア又はアミンのモル比は、1:1〜10:1の範囲が好ましく、更に好ましくは1.5:1〜5:1の範囲であり、特に約2:1である。アンモニアとアミンの混合物を使用する場合、かかるモル比は、アンモニアとアミンの合計に対して適用される。
アンモニア又はアミンでの処理における温度は、一般に重要ではなく、例えば、10〜140℃、好ましくは20〜100℃、特に20〜90℃である。圧力も一般に重要ではない。
アンモニア又はアミンを、溶解において気体、液体(加圧下で)又は溶解状態で流れ18に添加する。好適な溶剤は、例えば、ニトリル、特にヒドロシアン化に存在するニトリル、そして更に、本発明の方法における抽出剤として使用されるような脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン又はn−オクタンである。
アンモニア又はアミンを通常の装置、例えば気体導入のための装置又は液体用混合機中に添加する。沈殿した固体は、多くの場合、流れ18に残る、すなわち懸濁液を抽出に供給するか、或いは以下に述べるように除去される。
[必要により行われる固体の除去]
好ましい実施の形態において、本発明の方法の工程i*)で沈澱した固体を流れ19から除去してから抽出(工程j*))を行う。
多くの場合、これにより本発明の方法における抽出性能が更に改善される。なぜなら、発生した個体は、屡々、抽出装置の分離性能を低下させるからである。再度の抽出前の固体除去により、多くの場合、望ましくないラグ(小片)の形成を明らかに減らすか、又は完全に抑制する。
5μmを超え、特に1μmを超え、更に好ましくは100nmを超える水力直径を有する固体粒子が取り除かれるように固体の除去を形作ることが好ましい。
固体の除去の場合、通常の処理方法、例えばろ過、交差流ろ過、遠心分離、沈降、分級又は好ましくはデカンテーションを用いることができ、そのために、共通の装置、例えばろ過器、遠心分離器又はデカンターを使用しても良い。
固体除去における温度及び圧力は、一般に重要ではない。例えば、上述の又は以下に述べる温度及び圧力の範囲で作用することが可能である。
固体の除去は、アンモニア又はアミンを用いた流れ18又は流れ19の任意の処理前、処理中又は処理後に行っても良い。アンモニア又はアミン処理中又は処理後に除去するのが好ましく、処理後に除去することが特に好ましい。
固体をアンモニア又はアミン処理中又は処理後に除去する場合、固体は、通常、ルイス酸又は促進剤を有するアンモニア又はアミンの化合物であり、これは、流れ18に対する溶解性が乏しい。例えば、ZnCl2を使用する場合、実質的に乏しい可溶性のZnCl2・2NH3がアンモニア処理中に沈澱する。
固体をアンモニア又はアミン処理前に除去するか、又はアンモニア又はアミンで全く処理しない場合、固体は、通常、+IIの酸化状態のニッケル化合物、例えばシアン化ニッケル(II)又は類似のシアニド含有ニッケル(II)化合物か、或いはルイス酸又はその化合物である。例えば、上述の化合物が沈澱しても良い。なぜなら、例えば温度を変えることによって溶解性を低下させるからである。
[必要により設けられている遅延領域]
工程e*)による溶出液としての流れ19を、例えば配管によって工程j*)に直接移しても良い。直接(的)とは、配管における流れ19の平均滞留時間が1分未満であることを意味する。
しかしながら、本発明の方法における好ましい実施の形態において、流れ19を、工程i*)後で且つ工程j*)前に遅延領域(delay zone)に通過させる。従って、遅延領域(ディレイ領域)は、液体Lの添加の下流側で且つ抽出の上流側に在る。
好適な遅延領域は、例えば、配管、静的混合機、撹拌又は非撹拌容器又は容器バッテリーであり、これらの素子の組み合わせでも良い。遅延領域は、その遅延領域での流れ19の平均滞留時間が少なくとも1分、好ましくは少なくとも5分となるように形作られるのが好ましい。
上述した任意の固体除去は、遅延領域で行われても良い。この場合、遅延領域は、固体が沈降可能な沈静化領域として働く。このようにして、遅延領域は、デキャンター又は交差流ろ過器のように機能する。固体の運搬及び/又は排出のための装置が設けられていても良い。
好ましい実施の形態において、上述したように、無極性の非プロトン性液体Lを遅延領域、例えばその開始位置に直接計量導入する。かかる実施の形態において、流れ18と液体Lの密な混合を保証する遅延領域を選択することが特に好ましい。同様に上述したように、遅延領域は、流れ19の相分離を引き起こしても良い。
遅延領域は、0〜200℃、好ましくは10〜150℃、特に20〜100℃の温度、及び0.01〜100バール(絶対圧)、好ましくは0.1〜10バール、特に0.5〜5バールの圧力の条件下で操作されるのが一般的である。
本発明の好ましい実施の形態において、本発明の方法で使用される全ての配管における流れ19の流速は、少なくとも0.5m/秒であり、特に少なくとも1m/秒であり、更に好ましくは少なくとも2m/秒である。
工程a)で得られた流れ19を、適宜、アンモニア又はアミン処理した後、及び/又は固体除去した後、及び/又は遅延領域に通過させた後、工程j*)で抽出する。
[処理工程j*)]
[処理原理]
本発明の処理方法は、C6−ジニトリル、例えばアジポニトリル(ADN)、2−メチルグルタロニトリル(MGN)又は2−エチルスクシノニトリル(ESN)を、ヒドロシアン化に対する影響を受けにくいC5−モノニトリルの形成を増大させる阻害成分、例えばE−2−メチル−2−ブテンニトリル及び/又はZ−2−メチル−2−ブテンニトリルに関して添加することによって、流れ19又は適宜、工程i*)が行われない場合には流れ18において、リン配位子及び/又は遊離リン配位子を含むNi(0)錯体の抽出精製に好適である。
更に、触媒損失は、供給物流18又は19の入口位置より抽出の出口位置に近い入口位置で流れ21に炭化水素Hを導入することによって抽出中に限定される。ジニトリル(流れ20)の入口位置は、供給物流18又は19の入口位置よりラフィネートの出口位置に近接している。この場合、近接しているとは、2カ所の間の理論段の数の意味において理解されるべきである。流れ18又は19の入口位置と流れ21の入口位置との間に、0〜10段階、好ましくは1〜7段階の理論抽出(分離)段階(触媒のための再抽出領域)が存在し;流れ18又は19の入口位置と流れ20の入口位置との間に、一般に1〜10段階、好ましくは1〜5段階の理論抽出(分離)段階(阻害成分に対する精製領域)が存在する。
一般に、第1の相[ラフィネート;流れ22]は、温度T(℃)で形成され、流れ18より上述のNi(0)錯体又は配位子が豊富であり、そして第2の相[抽出剤;流れ23;阻害成分が豊富]は、流れ18よりもジニトリルが豊富に含まれる。通常、第1の相がより軽い相である、すなわち、上相であり、第2の相がより重い相、すなわち下相である。
相分離の後、上相は、好ましくは50〜99質量%、更に好ましくは60〜97質量%、特に80〜95質量%の、抽出に用いられる炭化水素を含んでいる。
抽出の導入流に存在することもある(特に、レドックス触媒再生が処理工程h1 *)で行われた場合)ルイス酸は、下相に好ましくは殆ど、更に好ましくは完全に残っている。本発明において、完全とは、上相におけるルイス酸の残留濃度が好ましくは1質量%未満であり、更に好ましくは0.5質量%未満であり、特に500質量ppm未満であることを意味する。
阻害成分の排出により、処理の選択率が改善する。なぜなら、ヒドロシアン化に敏感に反応しないC5モノニトリルを殆ど形成しないからである(不正確な異性化の減少)。
第3実施の形態は、ジニトリル、例えばADN、MGN、ESN(これらは、処理工程e*)で少量形成するので、流れ10に蓄積する。)が抽出による下相と少なくとも部分的に排出される点において特に有効である。
更に、処理工程j*)の用いることは、処理工程e*)で使用される反応物質が安定剤含有ブタジエンであっても良い点において特に有効である。かかる安定剤は、抽出による下相を介して排出される。従って、触媒損傷濃度の安定剤が触媒循環路に蓄積することはない。
更に、h1 *)によるNi(0)値の補充のための触媒のレドックス再生を処理工程h*)で取りかかる点において特に有利である。なぜなら、このようにして形成したルイス酸が抽出による下相を介して排出されるからである。そうでなければ、かかるルイス酸により、第1のヒドロシアン化(処理工程e*))でジニトリルの形成が増大するであろう。
抽出による下相を適当に後処理しても良い。これにより、そこに残っているジニトリルを抽出への供給物として再び用いることができる。かかる後処理は、例えば、蒸留により行うことができる(DE−A102004004683;工程c)から得られる流れ7)。
[抽出の形態]
抽出作業は、再抽出領域を有する向流抽出塔を用いることによって達成されるのが好ましい。しかしながら、当業者等に知られている好適な装置、例えば向流抽出装置、混合機−沈澱器装置又は混合機−沈澱器装置とカラムとの組み合わせ、例えば直列連結の2基の向流抽出塔(例えば、一方は、阻害成分に対する精製に用いられ、他方は、触媒の再抽出のために用いられる。)の同一の機能を有する組み合わせであっても良い。特にシート状の金属充填物が分散素子として設けられている向流抽出塔を使用するのが特に好ましい。他の特に好ましい実施の形態において、抽出を、区画化された撹拌抽出塔において向流で行う。
分散の方向に関して、本発明の方法の好ましい実施の形態において、炭化水素を連続相として使用し、炭化水素の流れ18を分散相として使用する。これにより、一般に相分離時間が短縮され、そしてラグの形成が低減する。しかしながら、分散の逆方向も可能である、すなわち、流れ18を連続相として、炭化水素を分散相とする。後者は、固体除去(以下を参照)、抽出若しくは相分離での温度上昇又は好適な炭化水素の使用を先行させることによりラグの形成が少なくなるか、又は十分に抑制される場合に特に正確である。一般に、抽出装置の分離性能に更にプラスとなる分散の方向が選択される。
抽出において、供給物の以下の割合が設定される:
流れ18又は19と流れ21の合計に対する流れ20の割合は、0.01〜10kg/kg、好ましくは0.05〜5kg/kgである。流れ20に対する流れ21の割合は、0.05〜20kg/kg、好ましくは1〜10kg/kgである。流れ18又は19に対する流れ21の割合は、0.05〜20kg/kg、好ましくは0.5〜8kg/kgである。
抽出中の絶対圧は、10kPa〜1MPaの範囲が好ましく、更に好ましくは50kPa〜0.5MPaの範囲であり、特に75kPa〜0.25MPaの範囲である。
抽出は、−15〜120℃、特に20〜100℃、更に好ましくは30〜80℃の温度条件下で行われるのが好ましい。ラグの形成は、抽出の温度がより高温条件であるときに低減することが見出された。
[相分離の形態]
装置の形態に応じて、相分離は、空間及び時間の条件に関して抽出の最終部分として見なされても良い。相分離の場合、広範な圧力、濃度及び温度が選択されるのが一般的であり、反応混合物の特定の組成に関する最適なパラメータは、数種類の簡易な予備実験に基づき容易に決定可能である。
相分離における温度Tは、一般に少なくとも0℃であり、好ましくは少なくとも10℃であり、更に好ましくは少なくとも20℃である。一般に、温度は、120℃以下、好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。例えば、相分離は、0〜100℃、好ましくは60〜95℃で行われる。相分離の温度が高温である場合、ラグの形成が低減することが見出された。
相分離における圧力は、一般に少なくとも1kPaであり、好ましくは少なくとも10kPaであり、更に好ましくは20kPaである。一般に、圧力は、2MPa以下であり、好ましくは1MPa以下であり、更に好ましくは0.5MPa以下である。
相分離時間、すなわち、流れ18と炭化水素(抽出剤)とを混合してから均一な上相と均一な下相とが形成するまでの時間は、広範囲内にて変更しても良い。相分離時間は0.1〜60分の範囲が一般的であり、好ましくは1〜30分の範囲であり、特に2〜10分の範囲である。本発明の処理を工業的規模で行う場合、15分以下、特に10分以下の相分離時間が、一般に、技術的且つ経済的に実行可能である。
相分離時間は、特に長鎖の脂肪族アルカン、例えばn−ヘプタン又はn−オクタンを炭化水素Hとして使用した場合に有効な手法で短縮されることが見出された。
相分離は、かかる相分離のために当業者等に公知の1基以上の装置で行っても良い。有利な実施の形態において、相分離は、抽出装置、例えば1基以上の混合機−沈澱装置の組み合わせにおいてか、又は沈静領域を有する抽出塔を設けることによって行うことができる。
相分離において、2相の液相が得られ、そのうちの1相は、かかる相の全質量に対して、リン配位子及び/又は遊離リン配位子を有するニッケル(0)錯体を、他の相より高い割合で有している。他の相は、阻害成分を豊富に含んでいる。
[ジニトリル]
供給物流として抽出に導かれる流れ20は、主としてジニトリル、好ましくはC6ジニトリル、特に好ましくはアジポニトリル(ADN)、2−メチルグルタロニトリル(MGN)、2−エチルスクシノニトリル(ESN)又はこれらの混合物を含んでいる。かかる流れにおけるジニトリルの含有量は、50質量%を超えるのが好ましく、更に好ましくは70質量%を超え、特に好ましくは90質量%を超える。ジニトリル、特にC6ジニトリルを製造する方法はそれ自体公知である。かかる方法の実施可能な一法は、DE−A102004004683に記載されている。このようにして調製されたC6ジニトリルの流れ、特にDE−A102004004683の処理工程h)から得られる流れ15、16及び17は、本発明において、流れ20として使用されるのが好適である。
ジニトリルを、相分離が抽出段階k*)で行われる程度に添加するのが好ましい。
[炭化水素]
炭化水素は抽出剤である。それは、少なくとも30℃の沸点を有しているのが好ましく、更に好ましくは少なくとも60℃であり、特に90℃であり、そして好ましくは140℃以下であり、更に好ましくは135℃以下であり、特に130℃以下であり、各々場合での圧力条件は、105Pa(絶対圧)である。
炭化水素(本願発明で個々に、又はかかる炭化水素の混合物して参照される)は、アジポニトリルとNi(0)含有触媒を含む混合物からアジポニトリルを、特に抽出によって除去する場合に用いられるのが更に好ましく、上記の炭化水素の沸点は、90〜140℃の範囲である。除去後に、かかる方法により得られる混合物から、アジポニトリルを炭化水素の蒸留除去によって有利に得ることができ、且つ上述の範囲の沸点を有する炭化水素を用いることにより、川の水を用いて蒸留除去される炭化水素を凝縮する可能性という理由から、特に経済的に実行可能であり且つ技術的に簡易な除去を可能にする。
好適な炭化水素は、例えばUS3773809の第3欄の50〜62行目に記載されている。有用な炭化水素は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、異性体のヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、異性体のオクタン、例えば2,2,4−トリメチルペンタン、cis−及びtrans−デカリン又はこれらの混合物から選択されるのが好ましく、特にシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、異性体のヘプタン、n−オクタン、異性体のオクタン、例えば2,2,4−トリメチルペンタン、又はこれらの混合物から選択される。シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン又はn−オクタンを使用するのが特に好ましい。
n−ヘプタン又はn−オクタンを使用するのが極めて好ましい。これらの炭化水素の場合、望ましくないラグの形成が特に低い。ラグは、上相と下相との間の不完全な相分離の領域であり、通常、液/液混合物であり、これにおいて、固体が分散していても良い。過大なラグ形成は望ましくない。なぜなら、これにより、抽出を妨げ、そして抽出装置が、所定の周囲条件下で、ラグによって灌水されることがあり、その結果、分離作業をもはや実現できなくなるからである。
使用される炭化水素は無水であるのが好ましく、無水は、100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満、特に10質量ppm未満の水含有量を意味する。炭化水素を、当業者等に公知の好適な処理方法、例えば吸着又は共沸蒸留によって乾燥させても良い。乾燥は、本発明の処理に先行する工程で行っても良い。
[処理工程k*)]
処理工程k*)において、流れ22を蒸留して、少なくとも1種の触媒を含む流れ25と、抽出剤を含む流れ24と、を得る。
かかる処理工程は、触媒及び抽出剤を回収するために実質的に働く。
処理工程k*)は、当業者等に公知の適当な装置において行うことができる。処理工程k*)の蒸留は、1工程以上の蒸発段階で起こるのか、或いは精留塔/蒸留塔において起こるのが好ましい。
精留塔/蒸留塔に用いられるインターナルは、構造化シートメタル充填物、構造化織物充填物、泡鐘トレイ、二系統流れトレイ又は不規則充填物の床或いはこのような分離インターナルの2種類以上の組み合わせであるのが好ましい。処理工程k*)の精留塔/蒸留塔は、1種以上の液体又は気体の側部取り出し部を有して形成されていても良い。処理工程k*)の精留塔/蒸留塔は、1種以上の気体又は液体の側部取り出し部を有する隔壁塔として形成されても良い。
処理工程k*)における1工程以上の蒸発段階又は精留塔/蒸留塔には、特に、流下薄膜型蒸発器、薄厚フィルム蒸発器、自然循環蒸発器、強制循環フラッシュ蒸発器又は多相らせんチューブ蒸発器が設けられていても良い。
本発明の方法における他の実施の形態において、処理工程k*)の少なくとも1基の蒸発装置は、分割塔底部を有して運転されても良く、その場合、循環流、一般に底部取り出し流に対して豊富な流れは、当該蒸発段階の第1の塔底から蒸発器に誘導されるが、蒸発器からの液体の出力流(産出流)は塔底に直接戻されず、むしろ第1の塔底と別個の第2の塔底に集められ、底部取り出し流を第2の塔底から得て、蒸発器の循環流から得られる残りの過剰分により、第1の塔底へのオーバーフローは、第1の塔底から取り出された場合より低沸点物が少ない混合物を第2の塔底からの底部取り出し流として得ることができる。
処理工程k*)の絶対圧は、0.001〜2バールの範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5バールの範囲であり、特に0.09〜0.12バールの範囲である。蒸留は、蒸留装置の塔頂における温度が、好ましくは−15〜100℃、より好ましくは0〜60℃、特に20〜50℃の範囲となるように行なわれる。本発明に従う方法の特に好ましい実施の形態では、上述した温度範囲が、塔頂及び塔底の両方で維持される。
抽出物を除去して触媒を回収する処理工程k*)において、適宜、3−ペンテンニトリルを中位の沸点物として蒸留に添加しても良い。かかる溶剤変更は、高沸点触媒流からの抽出剤の有効な低減が蒸発器温度条件下で可能となる点において有効な場合がある。かかる蒸発器温度は、各々の場合に、特にキレート配位子を使用する場合に用いられるニッケル触媒の熱による損傷を受けないために十分に低く、そして単座配位子を使用した場合にニッケル触媒を熱の採用によって転化させないために十分に低く、その際に、圧力は更に十分に高くすることにより、触媒成分より比較的低沸点の抽出剤を、25〜50℃の一般的な冷却水温度条件下、蒸発段階又は蒸留塔の頂部で依然として凝縮可能となる。更に、溶剤変更は、触媒溶液の流動性及び単相形成性(monophasicity)を保証する点において有効な場合がある。なぜなら、温度及び抽出剤の残留量に応じて(3−ペンテンニトリルの添加無し)、触媒成分により、晶出が引き起こされる場合があるからである。この場合、例えば、圧力条件に応じて、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサン又はヘプタン又はn−ヘプタンの抽出剤から困難を伴って除去可能であるか、或いは最小蒸気圧の共沸混合物の形成に起因して完全に除去することができない3−ペンテンニトリルは、処理工程j*)における抽出塔への抽出剤導入流の合計量に対して、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に1質量%以下の含有量の条件下、本発明の方法に対して阻害効果を有していない。
本発明の方法の好ましい実施の形態において、処理工程k*)で得られ、抽出剤を含む流れ24を抽出工程j*)に少なくとも部分的に再循環させる。抽出工程j*)前に、再循環流24を適宜乾燥する。これにより、かかる流れにおける水含有量が好ましくは100質量ppm未満となり、更に好ましくは50質量ppm未満となり、特に10質量ppm未満となる。
本発明の方法における他の好ましい実施の形態において、処理工程k*)で得られ、触媒を含む流れ25を、処理工程e*)のヒドロシアン化か、又は処理工程a*)の異性化に少なくとも部分的に再循環させる。本発明の方法の好ましい実施の形態において、流れ25における抽出剤の割合は、流れ25の合計量に対して、10質量%未満であるのが好ましく、更に好ましくは5質量%未満であり、特に1質量%未満である。
処理工程a*)〜k*)を通じて触媒流を制御する好ましい実施の形態は、スキーム1〜5を参照しつつ以下に開示する。処理工程i*)は、スキーム1〜5に含まれていないが、処理工程h*)とj*)の間で行うことが可能である。スキーム1〜5において、処理工程h*)は、一例として、処理工程h1 *)としての実施の形態で記載されている。或いは、実施の形態は、処理工程h2 *)として行われても良い。これらの場合、塩化ニッケル(II)をニッケル粉末の代わりにとし、還元剤(red.)を使用しないか、或いはルイス酸(LA)を存在させないようにする。ADNは、ジニトリル流と同義であり、ヘプタンは、抽出剤としての炭化水素と同義である。Cat.は、触媒錯体と遊離配位子を意味する。スキーム1〜5の点線は、触媒流の任意のバイパス副流を示している。
触媒流の制御に関する処理の特定の実施の形態をスキーム1に示す。このスキームでは、触媒誘導段階を単一の触媒循環路に結合させる。第1のヒドロシアン化から出発する処理段階の順序は、e*)、f*)、a*)、b*)、c*)、h*)、適宜、e*)に戻される前にi*)、j*)、k*)である。適宜、触媒の副流を、過去の段階h*)、i*)、j*)及びk*)に再循環させ、そしてe*)に直接再循環させても良い。処理段階a*)では、2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルの未分離混合物が供給される、すなわち、a*)の後に、d*)又はg*)が行われる。
触媒流の制御に関する処理の他の実施の形態をスキーム2に示す。このスキームでは、触媒誘導段階を単一の触媒循環路に結合させる。第1のヒドロシアン化から出発して、処理段階の順序は、e*)、f*)、a*)、b*)、c*)、h*)、適宜、e*)に戻される前にi*)、j*)、k*)である。適宜、触媒の副流を、過去の段階h*)、i*)、j*)及びk*)に再循環させ、そしてe*)に直接再循環させても良い。処理段階a*)では、3−ペンテンニトリルが低減した2−メチル−3−ブテンニトリルが供給される、すなわち、a*)の前に、d*)又はg*)が行われる。
触媒流の制御に関する処理の他の実施の形態をスキーム3に示す。このスキームでは、触媒流を段階e*)及びf*)に通して循環させている。この流れから、副流を排出し、段階a*)の触媒供給物として用いる。次に、この流れを、完全に、適宜、部分的に段階b*)、c*)、h*)、適宜i*)、j*)及びk*)に通してe*)に供給している。異性化段階a*)では、3−ペンテンニトリルが低減した2−メチル−3−ブテンニトリルが供給される、すなわち、a*)の前に、d*)又はg*)が行われる。同様に、d*又はg*が、a*の後に行われても良い。
触媒流の制御に関する処理の他の特定の実施の形態をスキーム4に示す。このスキームでは、2種類の触媒循環路を形成する。触媒循環路1は、段階e*)及びf*)を含み、触媒循環路2は、段階a*)、b*)、c*)を含む。両方の流れから、副流、適宜特定の全触媒流が、段階h*)、適宜i*)、j*)及びk*)を介して誘導され、これにより、阻害成分の触媒を精製するか及び/又はNi(0)含有量を補充する。抽出を通じて導かれる触媒循環路2の割合は、触媒循環路1から導かれるときより大きいのが好ましい。適宜、触媒循環路2からの流れ全体が抽出を通じて誘導される。2種類の触媒循環路を、段階h*)、適宜i*)、j*)及びk*)を介して相互に結合させる。a*)又はe*)の供給のためにk*)からの流れの分割は、a*)及びe*)からのh*)に対する供給物流の割合に相当するのが一般的である。異性化段階a*)では、3−ペンテンニトリルが低減した2−メチル−3−ブテンニトリルが供給される、すなわち、a*)の前に、d*)又はg*)が行われる。同様に、d*又はg*が、a*の後に行われても良い。
触媒流の制御に関する処理の他の特定の実施の形態をスキーム5に示す。これによると、触媒循環路を、段階a*)、b*)、c*)、h*)、適宜i*)、j*)及びk*)を介して運転する。この触媒循環路から、h*)の前に、副流が取り出され、それを用いて第1のヒドロシアン化e*)が操作される。この流れを、f*)を介してh*)に再循環させ、適宜、直接a*)へ再循環させても良い。異性化触媒循環路の副流をc*)からa*)に直接再循環させても良い。異性化段階a*)では、3−ペンテンニトリルが低減した2−メチル−3−ブテンニトリルが供給される、すなわち、a*)の前に、d*)又はg*)が行われる。同様に、d*又はg*が、a*の後に行われても良い。
以下に詳細に記載された実施例を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
[使用実施例]
実施例において、以下の略語を使用した:
hydrogen cyanide:シアン化水素、
T3PN:trans−3−ペンテンニトリル、
C3PN:cis−3−ペンテンニトリル、
4PN:4−ペンテンニトリル、
E2M2BN:(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、
T2PN:trans−2−ペンテンニトリル、
C2PN:cis−2−ペンテンニトリル、
ADN:アジポニトリル、
MGN:メチルグルタロニトリル、
VAN:バレロニトリル、
VCH:4−ビニルシクロヘキセン、
BD:1,3−ブタジエン、
TBP:tert−ブチルピロカテコール、
C2BU:cis−2−ブテン、
LA:ルイス酸。
実施例において、処理工程を時間的順序で報告し、これにより明細書及び請求の範囲における意味から逸脱している。詳細に特徴付けがなされていない%又はppm単位のデータは、それぞれ質量%及び質量ppmである。
[実施例1]
図3を参照して実施例1を説明する。
実施例1において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をブタジエンのヒドロシアン化(シアン化水素付加)に使用した。ヒドロシアン化のための配位子混合物は、約60モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと40モル%のキレートのホスホニット1とを含んでいた。
段階(1)において、ノズルと、衝撃交換チューブと、外部ポンプ循環系(路)と、反応エネルギーを除去するために外部ポンプ循環路に設けられた熱交換器と、を備えた容量25Lのループ反応器R1に、以下の流れを誘導(導入)し、357Kに加熱した。
(1)10kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されていない液体シアン化水素、
(2)22kg/hの、水とTBP安定剤を除去するためにアルミナに接触させて処理し、0.25質量%のC2BUを含む市販のBD、
(3)工程(2)のK2aからの再循環された8kg/hのBD(流れ9)であって、これにより得られる反応器R1への全BD供給物は、90質量%のBD、5質量%のC2BU及び5質量%の1−ブテンを含む30kg/hの流れであり、
(4)この実施例において以下に記載したように、カラムK2bからの流れ10aとして得られた21kg/hのニッケル(0)触媒溶液。
反応器R1から取り出された流れ8(63kg/h)は、合計で11%のBD及びC2BUを含み(79%のBDを転化したことに相当)、そしてまた、合計で63%のペンテンニトリル、31%のT3PN、29%の2M3BN、少量のZ2M2BN及びE2M2BN、そして他のペンテンニトリル異性体(T2PN、C2PN、C3PN、4PN)、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物及びMGNを含んでいた。
工程(2)において、流れ8を蒸留塔K2aに供給したが、蒸留塔K2aは、精留部とストリッピング部とで操作されるもので、そして流下薄膜型蒸発器と分割されたカラム塔底が設けられており、そして塔のインターナルは10段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。塔K2aは、塔頂にて直接凝縮器を使用して操作され、直接凝縮器は、以下の構成のカラム部からなるものであり、すなわちカラム部は、構造化充填物が設けられ、そして総合収集カップ(total collecting cup)、ポンプ循環系及び外部熱交換器を有していた。塔K2aは、塔頂圧力が、絶対圧力で2.0バール、塔頂温度が288K、そして塔底取出し部の温度が363Kで操作された。
冒頭に述べたように、反応器R1への再循環流として計量導入された流れ9が、塔K2aの塔頂を介して得られた。塔K2aの塔頂での還流比は、流れ9が約100ppmの2M3BNを含むように調整された。
2.9%のBD、4.6%のC2BU、67%のペンテンニトリル、そして更に追加的に触媒成分を含む、59kg/hの流れ1bが塔K2aの塔底を介して得られた。供給物と比較して、BDに対して、C2BUを明らかに豊富に含んでいた。
工程(2)において、流れ1bが蒸留塔K2bに導入されるが、蒸留塔K2はストリッピング形式で操作され、そして流下薄膜型蒸発器、後凝縮器(postcondenser)を有する塔頂凝縮器を備え、塔のインターナルは、10段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。カラムは、絶対圧で150ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度329K、そして塔底取出し部の温度373Kで操作された。カラムの蒸気流を308Kで部分的に凝縮し、そして後凝縮器を使用して263Kで処理した。従って、2M3BNと他のペンテンニトリルが低減されたBD流2cを、コンプレッサーV2で絶対圧1.2バールに圧縮した。圧縮された気体流を、279Kで殆ど凝縮して、流れ2e(5kg/h)を得て、そして副流2d(47L(STP)/h、44質量%のC2BUを含む)を気体状態で処理した。流れ2eを、塔K2aの凝縮物収集容器に液体の状態で再循環させた。
カラムK2bの気体の側部取出し部において、約100ppmのBD、46%の2M3BN、及び48%のT3PN、そして少量のE2M2BN及びZ2M2BNを、他のペンテンニトリル異性体に加えて含む流れ11(40kg/h)を得た。側部取り出し部の位置は、側部取り出し部より下側のストリッピング部において、塔底を介して得られた流れ10内の2M3BN成分が、T3PNに対して低減されるように選択される。
カラムK2b内には、13kg/hの触媒流が導入され、この触媒流は、ドイツ特許出願(発明の名称:ジニトリルの製造方法、BASF AG(B03/0525))の実施例1に記載されているように、工程(4)で塔K4の側方取り出しとして得て、合計で73%のペンテンニトリル、0.5%のNi(0)、18%の配位子混合物、そして約5%のADNを含んでいた。
カラムK2bの塔底を介して触媒流10を得たが、触媒流10は、0.5%のNi(0)、約100ppmの2M3BN、そして73%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ10を、反応器R1に再循環させる副流10a(21kg/h)に分割した。他の部分(10b:5.4kg/h)を、DE−A−10351002に記載されている再生処理に供給し、再生処理の後、例えば、DE−A−102004004683の実施例1に記載されているように、3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用した。
工程(3)において、流れ11を蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、循環蒸発器及び塔頂凝縮器が設けられ、そして更に30段の理論段を生じさせる構造化充填物が設けられていた。塔K3は、絶対圧で180ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度345K、及び塔底取出し部の温度363Kで操作された。
工程(5)において、カラムK5から、39kg/hの循環流5がカラムK3に導入されるが、循環流5は、54%のT3PN、23%の2M3BN及び16%のZ2M2BN、そして少量の他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。
カラムK3の塔頂から、40kg/hの流れ13が得られ、流れ13は、10%のT3PN、68%の2M3BN及び16%のZ2M2BN、合計して0.1%のBD及びC2BU、そして少量の他のペンテンニトリル異性体(T2PN、C2PN、C3PN、4PN)を含んでいた。
カラムK3の塔底から、39kg/hの流れ12が得られ、流れ12は、合計して97%のT3PN、C3PN及び4PN、そして少量の他のペンテンニトリル異性体(T2PN、C2PN)、更に約100ppmの2M3BN及び約1%のE2M2BNを含んでいた。
実施例1において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体を基礎とする触媒組成物を、2M3BNのT3PNへの異性化に用いた。異性化のための配位子混合物(以下、異性化配位子と称する)は、m−トリル、p−トリル、o−イソプロピルフェニルからなる群から選択され、ランダムに分散させたR、R’、R’’を有するP(OR)(OR’)(OR’’)型の混合ホスフィット配位子を含み、そして基R、R’、R’’の合計の約40モル%がo−イソプロピルフェニル基である。かかる配位子混合物を、m−及びp−クレゾールの混合物(p−クレゾールに対してm−クレゾールを2:1の割合で有し、そして化学量論適合量のo−イソプロピルフェニルを有する)と三ハロゲン化リンとの反応において得た。
工程(4)において、流れ13を、触媒循環流3a及び触媒補足流(catalyst supplementation stream)と一緒に、管型反応器として設計され、393Kに加熱される反応器R2に導入した。循環触媒と新たな触媒の合計として、56kg/hの、20%のT3PN、5%の2M3BN及び他のペンテンニトリル異性体、55%の異性化配位子、そして0.5%のニッケル(0)、更に少量の触媒分解生成物を有する混合物を反応器R2に導入した。
反応器R2から得られる生成物として、96kg/hの流れ1を得たが、流れ1は、34%のT3PN、12.3%の2M3BN及び少量の他のペンテンニトリル異性体(T2PN、C2PN、C3PN、4PN)を含んでおり、60%の2M3BNの転化率に相当していた。
工程(5)において、流れ1を、精留塔として操作される蒸留塔K5に導入したが、蒸留塔K5には、流下薄膜型蒸発器、塔頂凝縮器、還流分割器、塔の底部領域に気体用の側部取り出し部が設けられており、塔のインターナルは、30段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。塔を、250ミリバールの絶対圧の塔頂圧、353Kの塔頂温度、そして373Kの塔底取り出し部温度で運転した。
カラムK5において、回収された触媒流3(56kg/h)を、底部を介して得たが、触媒流3は、他のペンテンニトリル、約5%のMGN、そして0.5%のNi(0)に加えて、20%のT3PN及び54%の異性化配位子を含んでいた。少量の流れ3を、流れ3bとして排出して、触媒失活成分及びMGNの蓄積を制限した。排出された触媒の量を補足するために、他のペンテンニトリル異性体に加えて、15%のT3PN、1%のNi(0)及び80%の異性化配位子を含む十分に新鮮な触媒を計量導入して、反応器R2への触媒供給物中におけるNi(0)含有量を0.5%に保持した。
カラムK5において、頂部を介して流れ4(0.8kg/h)を得たが、流れ4は、合計して0.5%のBD及びC2BU、50%の2M3BN、41%のZ2M2BN、そして少量のビニルシクロヘキサン(VCH)を含んでいた。ビニルシクロヘキサンは、最初に、BD出発材料中に微量存在し、その後、ブタジエンのヒドロシアン化で少量形成し、最後に、異性化の2M3BN循環において蓄積し、そしてこれを2M3BNと一緒に排出する必要がある。なぜなら、2M3BNとVCHの蒸気圧は、相互に非常に接近しているので、従来の蒸留による分離が不可能であるからである。カラムK5の還流比は、10ppmのT3PNが流れ4に存在するように調節された。カラムK5の頂部から得られる流れ4の取り出し割合は、合計して20%のZ2M2BNとVCHが蒸留塔K3の頂部取り出し流13に存在するように調節された。
カラムK5において、気体用の側部取り出し部を介して流れ5(39kg/h)を得たが、流れ5は、3−ペンテンニトリルの他に、異性化で未転化の2M3BNを実質的に含み、そして凝縮後、これを液体の状態で上述したようにカラムK3に再循環させた。
[実施例2]
図4を参照しつつ実施例2を説明する。
実施例2において、配位子としてキレートのホスフィット2を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をBDのヒドロシアン化に使用した。
工程(1)において、以下の流れを、それぞれ容量12Lの2基の反応器R1aとR1bからなる系に導入したが、それぞれノズルと、衝撃交換チューブと、外部ポンプ循環系と、反応エネルギーを除去するために外部ポンプ循環路に設けられた熱交換器と、が設けられており、以下の流れを363Kに加熱した。
(1)6kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1aに導入される液体シアン化水素、
(2)6kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1bに導入される液体シアン化水素、
(3)25kg/hの、水とTBP安定剤を除去するためにアルミナに接触させて処理し、0.25質量%のC2BUを含み、R1aに導入されるBD、
(4)工程(2)のカラムK2aから再循環され、R1aに導入される2kg/hのBD(流れ9)で、従って、これにより得られる反応器R1への全BD供給物は、98質量%のBD、合計して2質量%のC2BU及び1−ブテンを含む27kg/hの流れであり、
(5)この実施例において以下に記載したように、カラムK2bからの流れ10aとして得られ、R1aに導入される14kg/hのニッケル(0)触媒溶液。
反応器R1bから取り出された流れ8(54kg/h)は、合計で4%のBD及びC2BUを含み(94%のBDの転化率に相当)、そしてまた、合計で74%のペンテンニトリルを含み、そのうちの31%がT3PN、37%が2M3BN、そして少量のZ2M2BN及びE2M2BNであり、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物及びMGNを含んでいた。
工程(2)において、流れ8を精留塔として操作される蒸留塔K2aに供給したが、蒸留塔K2aには、流下薄膜型蒸発器が設けられており、そして塔のインターナルは4段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。塔K2aは、塔頂にて直接凝縮器を使用して操作され、直接凝縮器は、以下の構成のカラム部からなるものであり、すなわちカラム部は、不規則充填物が設けられ、そして総合収集カップ、ポンプ循環系及び外部熱交換器を有していた。塔K2aは、塔頂圧力が、絶対圧力で0.8バール、塔頂温度が263K、そして塔底取出し部の温度が393Kで操作された。
冒頭に述べたように、反応器R1aへの再循環流として計量導入された流れ9が、塔K2aの塔頂を介して得られた。塔K2aの塔頂での還流比は、流れ9が0.1%の2M3BNを含むように調整された。
0.3%のBD、0.1%のC2BU、76%のペンテンニトリル、そして更に追加的に触媒成分を含む、52kg/hの流れ1bが塔K2aの塔底を介して得られた。
工程(2)において、流れ1bが蒸留塔K2bに導入されるが、蒸留塔K2はストリッピング形式で操作され、そして流下薄膜型蒸発器、後凝縮器を有する塔頂凝縮器を備え、塔のインターナルは、4段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。カラムは、絶対圧で70ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度333K、そして塔底取出し部の温度373Kで操作された。
カラムK2bの気体用の側部取出し部において、0.4%のBD、54%の2M3BN及び48%のT3PN、そして少量のE2M2BN及びZ2M2BNを、他のペンテンニトリル異性体に加えて含む流れ11(40kg/h)を得た。
カラムK2b内には、3kg/hの触媒流が導入され、この触媒流は、合計で45%のペンテンニトリル、1.5%のNi(0)、そして、例えばニッケル(0)(シクロオクタジエニル)2錯体とキレートホスフィット2との反応より得られるキレート配位子を含んでいた。
カラムK2bの塔底を介して触媒流10を得たが、触媒流10は、1.2%のNi(0)、0.3%の2M3BN、そして17%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ10を、反応器R1に部分的に再循環させた(14kg/h)(流れ10a)。他の部分(流れ10b:3.8kg/h)を、DE−A−10351002に記載されている再生処理に供給し、DE−A−102004004683による3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用するか、又は適宜、本発明の方法によるBDのヒドロシアン化に再循環させた。
工程(3)において、流れ11を蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、循環蒸発器及び塔頂凝縮器が設けられ、そして更に45段の理論段を生じさせる構造化充填物が設けられていた。塔K3は、絶対圧で1.0バールの塔頂圧力、塔頂温度395K、及び塔底取出し部の温度416Kで操作された。
工程(5)において、カラムK5から、24kg/hの循環流5がカラムK3に導入されるが、循環流5は、70%のT3PN、14%の2M3BN及び7%のZ2M2BN、そして少量の他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。
カラムK3の塔頂から、30kg/hの流れ13が得られ、流れ13は、1%のT3PN、85%の2M3BN、8%のZ2M2BN、合計して3%のBD及びC2BUを、他のペンテンニトリル異性体及びVCHに加えて含んでいた。カラムK3の還流比は、1%のT3PNが塔頂で得られるように調節された。
カラムK3の塔底から、38kg/hの流れ12が得られ、流れ12は、合計して97%のT3PN、C3PN及び4PN、更に約10ppmの2M3BN及び約2%のE2M2BN、そして少量のMGN及び他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。
実施例2において、異性化に用いられる触媒は、この実施例においてBDのヒドロシアン化に関して上述したように、キレートホスフィット基礎ニッケル(0)錯体である。
工程(4)において、流れ13を、触媒循環流3a及び触媒補足流と一緒に、管型特性を有する区画化反応器として設計され、予備加熱器(これを用いて反応混合物を383Kに加熱する。)が設けたれた反応器R2に導入した。循環触媒と新たな触媒の合計として、12kg/hの、20%のT3PN、3%の2M3BN及び他のペンテンニトリル異性体、71%の配位子混合物、そして0.6%のニッケル(0)、更に少量の触媒分解生成物を有する混合物を反応器R2に導入した。
反応器R2から得られる生成物として、43kg/hの流れ1を得たが、流れ1は、53%のT3PN、12%の2M3BNを含んでおり、80%の2M3BNの転化率に相当していた。
工程(5)において、流れ1を、蒸留塔K5に導入したが、蒸留塔K5には、流下薄膜型蒸発器、塔頂凝縮器、還流分割器、塔の底部領域に気体用の側部取り出し部が設けられており、塔のインターナルは、30段の理論段を生じさせるものであった。塔を、377ミリバールの絶対圧の塔頂圧、355Kの塔頂温度、そして368Kの塔底取り出し部温度で運転した。
カラムK5において、回収された触媒流3(11kg/h)を、底部を介して得たが、触媒流3は、他のペンテンニトリルに加えて、20%のT3PN、約1%のMGN、そして0.6%のNi(0)及び54%の配位子を含んでいた。少量の流れ(流れ3b)を排出して、触媒失活成分及びMGNの蓄積を制限した。排出された触媒の量を補足するために、40%のペンテンニトリル異性体、1.2%のNi(0)及び55%の配位子混合物を含む十分に新鮮な触媒を計量導入して、反応器R2への触媒供給物中におけるNi(0)含有量を0.6%に保持した。
カラムK5において、頂部を介して流れ4(1.4kg/h)を得たが、流れ4は、合計して18%のBD及びC2BU、45%の2M3BN、28%のZ2M2BN、そして少量のビニルシクロヘキサン(VCH)を含んでいた。カラムK5の還流比は、10ppmのT3PNが流れ4に存在するように調節された。カラムK8の頂部から得られる流れ4の取り出し割合は、10%のZ2M2BNとVCHが蒸留塔K3の頂部取り出し流13に存在するように調節された。
カラムK5において、気体用の側部取り出し部を介して流れ5(24kg/h)を得たが、流れ5は、3−ペンテンニトリルの他に、異性化で未転化の2M3BNを実質的に含み、そして凝縮後、これを液体の状態で上述したようにカラムK3に再循環させた。
[実施例3]
図5を参照しつつ実施例3を説明する。
実施例3において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をブタジエンのヒドロシアン化に使用した。ヒドロシアン化のための配位子混合物は、約60モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと40モル%のキレートのホスホニット2とを含んでいた。
工程(1)において、以下の流れを、それぞれ容量12Lの2基の反応器R1aとR1bからなる系に導入したが、それぞれノズルと、衝撃交換チューブと、外部ポンプ循環系と、反応エネルギーを除去するために外部ポンプ循環路に設けられた熱交換器と、が設けられており、以下の流れを363Kに加熱した。
(1)6kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1aに導入される液体シアン化水素、
(2)6kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1bに導入される液体シアン化水素、
(3)25kg/hの、水とTBP安定剤を除去するためにアルミナに接触させて処理し、0.25質量%のC2BUを含み、R1aに導入される市販のBD、
(4)工程(2)のカラムK2aから再循環され、R1aに導入される2kg/hのBD(流れ9)で、従って、これにより得られる反応器R1への全BD供給物は、98質量%のBD、合計して2質量%のC2BU及び1−ブテンを含む27kg/hの流れであり、
(5)この実施例において以下に記載したように、カラムK2bからの流れ10aとして得られ、R1aに導入される14kg/hのニッケル(0)触媒溶液。
反応器R1bから取り出された流れ8(54kg/h)は、合計で4%のBD及びC2BUを含み(94%のBDの転化率に相当)、そしてまた、合計で74%のペンテンニトリルを含み、そのうちの31%がT3PN、37%が2M3BN、そして少量のZ2M2BN及びE2M2BNであり、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物及びMGNを含んでいた。
工程(2)において、流れ8を精留塔として操作される蒸留塔K2aに供給したが、蒸留塔K2aには、流下薄膜型蒸発器が設けられており、そして塔のインターナルは4段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。塔K2aは、塔頂にて直接凝縮器を使用して操作され、直接凝縮器は、以下の構成のカラム部からなるものであり、すなわちカラム部は、不規則充填物が設けられ、そして総合収集カップ、ポンプ循環系及び外部熱交換器を有していた。塔K2aは、塔頂圧力が、絶対圧力で0.8バール、塔頂温度が263K、そして塔底取出し部の温度が393Kで操作された。
冒頭に述べたように、反応器R1aへの再循環流として計量導入された流れ9が、塔K2aの塔頂を介して得られた。塔K2aの塔頂での還流比は、流れ9が0.1%の2M3BNを含むように調整された。
0.3%のBD、0.1%のC2BU、76%のペンテンニトリル、そして更に追加的に触媒成分を含む、52kg/hの流れ1bが塔K2aの塔底を介して得られた。
工程(2)において、流れ1bが蒸留塔K2bに導入されるが、蒸留塔K2はストリッピング形式で操作され、そして流下薄膜型蒸発器、後凝縮器を有する塔頂凝縮器を備え、塔のインターナルは、4段の理論段を生じさせる構造化充填物を有していた。カラムは、絶対圧で70ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度333K、そして塔底取出し部の温度373Kで操作された。
カラムK2bの気体用の側部取出し部において、0.4%のBD、54%の2M3BN及び42%のT3PN、そして少量のE2M2BN及びZ2M2BNを、他のペンテンニトリル異性体に加えて含む流れ11(40kg/h)を得た。
カラムK2b内には、5kg/hの触媒流が導入され、この触媒流は、DE−A102004004683の実施例1に記載されているように、実施例2の工程(4)で塔K4の底部取り出しとして得て、合計で45%のペンテンニトリル、1.1%のNi(0)、38%の配位子混合物及び約12%のADNを含んでいた。
カラムK2bの塔底を介して触媒流10を得たが、触媒流10は、1.2%のNi(0)、0.3%の2M3BN、そして17%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ10を、反応器R1に部分的に再循環させた(14kg/h)(流れ10a)。他の部分(流れ10b:3.8kg/h)を、DE−A−10351002に記載されている再生処理に供給し、DE−A−102004004683による3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用した。
工程(3)において、流れ11を蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、循環蒸発器及び塔頂凝縮器が設けられ、そして更に45段の理論段を生じさせる構造化充填物が設けられていた。塔K3は、絶対圧で1.0バールの塔頂圧力、塔頂温度395K、及び塔底取出し部の温度416Kで操作された。
工程(6)において、カラムK6からの28kg/hの循環流5がカラムK3に導入されるが、循環流5は、72%のT3PN、15%の2M3BN及び8%のZ2M2BN、そして少量の他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。
カラムK3の塔頂から、30kg/hの流れ13が得られ、流れ13は、1%のT3PN、85%の2M3BN、8%のZ2M2BN、合計して3%のBD及びC2BU、そして他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。カラムK3の還流比は、1%のT3PNが塔頂で得られるように調節された。
カラムK3の塔底から、38kg/hの流れ12が得られ、流れ12は、合計して97%のT3PN、C3PN及び4PN、更に約10ppmの2M3BN及び約2%のE2M2BN、そして少量のMGN及び他のペンテンニトリル異性体を含んでいた。
実施例3において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体を基礎とする触媒組成物を、2M3BNのT3PNへの異性化に用いた。異性化のための配位子混合物(以下、異性化配位子と称する)は、フェニル、m−トリル、p−トリル、o−トリルからなる群から選択され、ランダムに分散させたR、R’、R’’を有するP(OR)(OR’)(OR’’)型の混合ホスフィット配位子を含み、そして基R、R’、R’’の合計の少なくとも80モル%がm−トリル及びp−トリル基である。かかる配位子混合物を、m−及びp−クレゾールの混合物(2:1の混合比を有する)と三ハロゲン化リンとの反応において得た。異性化反応に用いられる促進剤は、US3676481、US3852329及びUS4298546に記載されているように塩化亜鉛であった。
工程(4)において、流れ13を、触媒循環流3a及び触媒補足流と一緒に、管型特性を有する区画化反応器として設計され、予備加熱器(これを用いて反応混合物を383Kに加熱する。)が設けたれた反応器R2に導入した。循環触媒と新たな触媒の合計として、12kg/hの、20%のT3PN、3%の2M3BN及び他のペンテンニトリル異性体、71%の異性化配位子、そして0.6%のニッケル(0)、更に少量の触媒分解生成物を有する混合物を反応器R2に導入した。
反応器R2から得られる生成物として、43kg/hの流れ1を得たが、流れ1は、53%のT3PN、12%の2M3BNを含んでおり、80%の2M3BNの転化率に相当していた。
工程(5)において、流れ1を、蒸発器段階B5に導入したが、蒸発器段階B5には、強制循環蒸発器及び塔頂凝縮器が設けられていた。蒸発器段階B5を、510ミリバールの絶対圧、403Kの底部取り出し温度及び366Kの凝縮温度で操作した。
蒸発器段階B5において、回収された触媒流3(11kg/h)を、底部を介して得たが、触媒流3は、他のペンテンニトリルに加えて、20%のT3PN、約10%のMGN、そして0.5%のNi(0)及び61%の配位子混合物を含んでいた。少量の流れ(流れ3b)を排出して、触媒失活成分及びMGNの蓄積を制限した。排出された触媒の量を補足するために、約15%のペンテンニトリル異性体、約2.0%のNi(0)、約70%の異性化配位子、そして以下の濃度、すなわちニッケル(0)に対するZnCl2のモル比が約5に相当する濃度の塩化亜鉛促進剤を含む十分に新鮮な触媒を計量導入して、反応器R2への触媒供給物中におけるNi(0)含有量を0.6%に保持した。
蒸発器段階B5において、塔頂凝縮器から流れ2(25kg/h)を得たが、流れ2は、1%のBD、68%のT3PN、16%の2M3BN及び他のペンテンニトリル、そして更に少量のVCHを含んでいた。
工程(6)において、流れ2を蒸留塔K6に導入したが、蒸留塔K6は、精留塔として操作され、循環蒸発器、塔頂凝縮器、そして30段の理論段を生じさせる塔のインターナルが設けられていた。塔を、絶対圧で340ミリバールの塔頂圧、357Kの頂部温度、凝縮器において313K、そして373Kの底部取り出し温度で操作した。
カラムK6の凝縮器において、得られた気相は、BDから実質的になる約100L(STP)/hの流れであった。
カラムK6において、塔頂凝縮器から得られた液相は、流れ4(11kg/h)であったが、流れ4は、合計で5%のBD及びC2BU、50%の2M3BN、30%のZ2M2BN、そして更に少量のビニルシクロヘキサン(VCH)を含んでいた。カラムK6の還流比は、1ppmのT3PNが流れ4に存在するように調節された。カラムK6の頂部から得られた流れ4の取り出し割合は、合計で10%のZ2M2BN及びVCHが反応器R2への供給物に存在するように調節された。
カラムK6において、塔底部を介して流れ5(24kg/h)を得たが、流れ5は、3−ペンテンニトリルの他に、異性化で未転化の2M3BNを実質的に含み、そしてこれを上述したようにカラムK3に再循環させた。
[実施例4]
図6を参照しつつ実施例4を説明する。
実施例4において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をブタジエンのヒドロシアン化に使用した。ヒドロシアン化のための配位子混合物は、約80モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと20モル%のキレートのホスホニット2とを含んでいた(実施例2を参照)。
工程(1)において、以下の流れを、それぞれ容量が10Lであり、直列に接続した3基の連続撹拌槽R1a、R1b及びR1cからなる系に導入したが、以下の流れを373Kに加熱した。
(1)5.2kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1aに導入される液体シアン化水素、
(2)4.0kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、R1bに導入される液体シアン化水素、
(3)20kg/hの、工程(2)の蒸発器B1の凝縮器から流9として得られ、92%のBD、2%のT3PN、4%の2M3BN及び約2%のC2BUを含み、R1aに供給されるBD、
(4)4.1kg/hの、工程(5)の蒸発器段階B5から得られる流れ3aとしてこの実施例で以下に記載したように得られ、R1aに供給されるニッケル(0)触媒溶液、
(5)3.7kg/hの、実施例2の工程(4)でカラムK4から底部取り出しとして、BASF AGのドイツ国特許出願(発明の名称:ジニトリルの製造方法(B03/0525))の実施例3に記載のように得られ、合計で45%のペンテンニトリル、1.1%のNi(0)、38%の配位子混合物及び約12%のADNを含み、R1aに供給されるニッケル(0)触媒溶液。
反応器R1cは、353Kの条件下、反応器R1bからの溶出液を用いる後反応器(postreactor)として運転された。
反応器R1cから取り出された流れ8(37kg/h)は、1%のBD(98%のBDの転化率に相当)、そしてまた合計で82%のペンテンニトリルを含み、そのうちの36%がT3PN、44%が2M3BN、そして少量のZ2M2BN及びE2M2BNであり、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物及びMGNを含んでいた。
工程(2)において、流れ8を蒸発器段階B1に供給したが、蒸発器段階B1には、循環蒸発器が設けられていた。蒸発器段階B1は、塔頂において、還流容器から得られる凝縮材料でフラッシュされた凝縮器を用いて運転された。蒸発器段階B1は、塔頂圧力が、絶対圧力で0.6バール、凝縮温度が253K、そして塔底取出し部の温度が363Kで操作された。
蒸発器段階B1の凝縮物収集容器において、19.5kg/hの、0.25%のC2BUを含む市販のBDを計量導入し、分子篩と接触させることによって処理し、その際に、用いられたBDの水含有量は、10質量ppm未満の水まで取り除かれた。
蒸発器段階B1の凝縮物収集容器から、流れ9を、循環ブタジエンと新たに計量導入したブタジエンの合計として取り出し、上述したように反応器R1aに再循環させた。
蒸発器段階B1の底部を介して、37kg/hの流れ11bを得たが、流れ11bは、1%のBD、82%のペンテンニトリル、そして更に追加的な触媒成分を含んでいた。
工程(4)において、流れ11bを、383Kまで加熱され、下流側に遅延領域を有する撹拌槽として設計される反応器R2に導入し、そして2M3BNをニッケル触媒の存在下にT3PNに異性化した。
ペンテンニトリル循環流5を反応器R2(10kg/h)に導入し、工程(6)において、60%の2M3BN、合計で10%のT3PN並びに他のペンテンニトリル異性体、そして更にVCH及び少量のBDを含む底部生成物としてカラム6から得た。
反応器R2から、流れ1を得たが(45kg/h)、流れ1は、62%のT3PN及び14%の2M3BN(2M3BNのT3PNへの70%の転化率に相当)、そして更に触媒成分を含んでいた。
工程(5)において、流れ1を、蒸発器段階B5に導入したが、蒸発器段階B5には、流下薄膜型蒸発器及び凝縮器が設けられ、50ミリバールの絶対圧及び393Kの底部取り出し温度で操作した。
蒸発器段階B5の凝縮器から、流れ2を得たが(38kg/h)、91%のペンテンニトリル異性体及び約1%のBD、そして少量のE2M2BN、Z2M2BN及びVCHを含んでいた。
蒸発器段階B5の底部を介して、触媒流3を得たが(7.2kg/h)、1.2%のNi(0)、0.1%の2M3BN及び15%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ3を部分的に反応器R1に再循環させた(流れ3a;4.1kg/h)。残り(流れ3b)を、DE−A10351002による再生処理に供給し、そして再生処理の後、例えば、DE−A−102004004683の実施例2に記載されているように、3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用するか、或いは適宜、塩化亜鉛を除去した後に、ブタジエンをヒドロシアン化する本発明の方法の触媒として再び使用することができる。
工程(3)において、流れ2を蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、強制循環蒸発器及び塔頂凝縮器、そして更に30段の理論段を生じさせる塔のインターナルが設けられていた。塔K3は、絶対圧で120ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度334K、及び塔底取出し部の温度352Kで操作された。
塔K3の頂部から、10kg/hの流れ13を得たが、流れ13は、5%のT3PN、60%の2M3BN、4%のZ2M2BN、そして更に合計で4%のBD及びC2BU、そして主としてVCHの残留物を含んでいた。カラムK3の還流比は、5%のT3PNが塔頂から得られるように調節された。
カラムK3の塔底から、27kg/hの流れ12が得られ、流れ12は、合計して98%のT3PN、C3PN及び4PN、そして約1000ppmの2M3BN及び約2%のE2M2BNを含んでいた。
工程(6)において、流れ13を蒸留塔K6に導入したが、蒸留塔K6は、精留塔として操作され、強制循環蒸発器、塔頂凝縮器、還流分割器、そして15段の理論段を生じさせ、構造化充填物を有する塔のインターナルが設けられていた。カラムK6を、絶対圧で380ミリバールの塔頂圧、361Kの頂部温度、そして365Kの底部取り出し温度で操作した。
カラムK6において、塔頂から液体流4(0.6kg/h)を得たが、流れ4は、合計で4%のBD及びC2BU、54%の2M3BN、38%のZ2M2BN、そして更に2.5%のビニルシクロヘキサン(VCH)を含んでいた。カラムK6の頂部から得られた流れ4の取り出し割合は、合計で30%のZ2M2BN及びVCHがカラムK3の頂部取り出し流13に存在するように調節された。カラムK6において、部分凝縮器として操作される塔頂凝縮器において気体流(195L(STP)/h)を得たが、実質的にBDを含んでいた。
カラムK6において、塔底部を介して流れ5(9.4kg/h)を得たが、流れ5は、3−ペンテンニトリルの他に、異性化で未転化の2M3BNを実質的に含み、そしてこれを上述したように異性化反応器R2に再循環させた。
[実施例5]
図7を参照しつつ実施例5を説明する。
実施例5において、配位子の混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をBDのヒドロシアン化に使用した。ヒドロシアン化のための配位子混合物は、約80モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと20モル%のキレートのホスホニット1とを含んでいた(実施例1を参照)。
工程(1)において、以下の流れを、それぞれ容量が50Lであり、直列に接続した2基の連続撹拌槽R1a及びR1bからなる系に導入したが、以下の流れを363Kに加熱した。
(1)18kg/hの、蒸留によって水が除去された安定化されておらず、反応器R1a及びR1bに同じ分量で導入される液体シアン化水素、
(2)62kg/hの、工程(2)の蒸発器B1の頂部から流9として得られ、87%のBD、3%のT3PN、6%の2M3BN及び約2%のC2BUを含み、R1aに供給されるBD、
(3)61kg/hの、工程(5)の蒸発器段階B5から得られる流れ3aとしてこの実施例で以下に記載したように得られ、R1aに供給されるニッケル(0)触媒溶液、
(4)6.7kg/hの、実施例2の工程(4)でカラムK4から底部取り出しとして得られ、BASF AGのドイツ国特許出願(発明の名称:ジニトリルの製造方法)(B03/0525)の実施例1に記載のように、合計で45%のペンテンニトリル、1.1%のNi(0)、38%の配位子混合物及び約12%のADNを含み、R1aに供給されるニッケル(0)触媒溶液(但し、ブタジエン流及び触媒流を、シアン化水素と接触させる前に予備混合する。)。
反応器R1bから取り出された流れ8(177kg/h)は、11%のBD(BDの転化率が66%に相当する)、合計で64%のペンテンニトリルを含み、そのうちの32%がT3PN、30%が2M3BN、そして少量のZ2M2BN及びE2M2BNであり、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物を含んでいた。
工程(2)において、流れ8を蒸発器段階B1に供給したが、蒸発器段階B1には、流下薄膜型蒸発器が設けられていた。蒸発器段階B1は、塔頂において、還流容器から得られる凝縮材料(凝縮物質)でフラッシュされた凝縮器を用いて運転された。蒸発器段階B1は、塔頂圧力が、絶対圧力で1.3バール、凝縮温度が278K、そして塔底取出し部の温度が403Kで操作された。
蒸発器段階B1の凝縮物収集容器において、37kg/hの、0.25%のC2BUを含む市販のBDを計量導入し、分子篩と接触させることによって処理し、その際に、用いられたBDの水含有量は、5質量ppm未満の水まで取り除かれ、そして用いられたBDに含まれるTBP安定剤がppm規模の濃度で、凝縮物収集容器及び凝縮器のフラッシュ循環路に到達した。
蒸発器段階B1の凝縮物収集容器から、流れ9を、循環BDと新たに計量導入したBDの合計として取り出し、上述したように反応器R1aに再循環させた。
蒸発器段階B1の底部を介して、152kg/hの流れ11bを得たが、流れ11bは、0.9%のBD、16%の2M3BN、51%のT3PN、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に追加的な触媒成分を含んでいた。蒸発段階の底部溶出液の組成により、蒸発器B1の底部において、2M3BNのT3PNへの転化率が50%となる。
工程(5)において、流れ11bを、流下薄膜型蒸発器と凝縮器を備えかつ絶対圧が260ミリバール、塔底取り出し温度が383Kの条件下で操作される蒸発処理段階B5に導入した。
蒸発器段階B5から、流れ2を気体の状態で得たが(83kg/h)、93%のペンテンニトリル異性体及び約1%のBD、そして少量のE2M2BN、Z2M2BN及びVCHを含んでいた。流れ2を工程(3)において蒸留塔K3に導入した。
蒸発器段階B5の底部を介して、触媒流3を得たが(69kg/h)、0.6%のNi(0)、2%の2M3BN及び42%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ4の殆どを反応器R1に再循環させた(61.4kg/h)。残り(流れ3b)を、DE−A10351002による再生処理に供給し、そして例えば、DE−A−102004004683の実施例1に記載されているように、3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用することができる。
工程(3)において、流れ2を気体の状態で蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、強制循環フラッシュ蒸発器及び塔頂凝縮器、そして更に30段の理論段を生じさせる構造化充填物が設けられていた。塔K3は、絶対圧で80ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度375K、及び塔底取出し部の温度343Kで操作された。
塔K3の頂部から、36kg/hの流れ13を得たが、流れ13は、15%のT3PN、64%の2M3BN、3%のZ2M2BN、そして更に合計で4%のBD及びC2BU、そして主としてVCHの残留物を含んでいた。カラムK3の還流比は、15%のT3PNが塔頂から得られるように調節された。
カラムK3の塔底から、47kg/hの流れ12が得られ、流れ12は、合計して98%のT3PN、C3PN及び4PN、そして約100ppmの2M3BN及び約1%のE2M2BNを含んでいた。
工程(6)において、流れ13を蒸留塔K6に導入したが、蒸留塔K6は、精留塔として操作され、強制循環蒸発器、塔頂凝縮器、還流分割器、そして45段の理論段を生じさせ、構造化充填物を有する塔のインターナルが設けられていた。カラムを、絶対圧で320ミリバールの塔頂圧、288Kの頂部温度、そして363Kの底部取り出し温度で操作した。
カラムK6において、塔頂から液体流4を得たが(6.8kg/h)、流れ4は、合計で10%のBD及びC2BU、80%の2M3BN、8%のZ2M2BN、そして更に0.5%のビニルシクロヘキサン(VCH)を含んでいた。カラムK6の頂部から得られた流れ4の取り出し割合は、合計で15%のZ2M2BN及びVCHがカラムK3の頂部取り出し流3に存在するように調節された。カラムK6において、部分凝縮器として操作される塔頂凝縮器において気体流(263L(STP)/h)を得たが、実質的にBDを含んでいた。
カラムK6において、塔底部を介して流れ5(28.7kg/h)を得たが、流れ5は、3−ペンテンニトリルの他に、異性化で未転化の2M3BNを実質的に含み、そしてこれを上述したようにヒドロシアン化反応器R1に再循環させた。
[実施例6]
図8を参照しつつ実施例6を説明する。
実施例8において、配位子としてキレートのホスホニット1を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物をBDのヒドロシアン化に使用した(実施例1を参照)。
工程(1)において、363Kに加熱され、容量30Lの連続操作撹拌槽R1に、以下の流れを供給した。
(1)16kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)55kg/hの、87%のBD、3%のT3PN、6%の2M3BN及び約2%のC2BUを含み、工程(2)の蒸発器B1の頂部から得られる流れ9としてのBD、
(3)10kg/hの、工程(5)の蒸発器段階B5から得られる流3aとして、この実施例で以下に示すようにして得られ、合計で42%のペンテンニトリル、23%の配位子、0.9%のニッケル(0)、約10%のADN及びMGNを含むニッケル(0)触媒溶液、
(4)4kg/hの、合計で45%のペンテンニトリル、1.5%のニッケル(0)及び48%の配位子を含み、反応器R1に供給されるニッケル(0)触媒溶液。
反応器R1から取り出された流れ8(89kg/h)は、17%のBD(BDの転化率が71%に相当する)、合計で73%のペンテンニトリルを含み、そのうちの32%がT3PN、36%が2M3BN、そして少量のZ2M2BN及びE2M2BNであり、そして更に触媒成分及び触媒分解生成物を含んでいた。
工程(2)において、流れ8を蒸発器段階B1に供給したが、蒸発器段階B1には、流下薄膜型蒸発器が設けられていた。蒸発器段階B1は、塔頂において、還流容器から得られる凝縮材料でフラッシュされた凝縮器を用いて運転された。蒸発器段階B1は、塔頂圧力が、絶対圧力で1.3バール、凝縮温度が278K、そして塔底取出し部の温度が403Kで操作された。
蒸発器段階B1の凝縮物収集容器において、34kg/hの、0.25%のC2BUを含む市販のBDを計量導入し、アルミナと接触させることによって処理し、その際に、用いられたBDの水含有量は、10質量ppm未満の水まで取り除かれ、そしてTBP含有量は、10ppm未満にされた。
蒸発器段階の凝縮物収集容器から、流れ9を、循環ブタジエンと新たに計量導入したブタジエンの合計として取り出し、上述したように反応器R1aに再循環させた。
蒸発器段階B1の底部を介して、76kg/hの流れ5を得たが、流れ5は、0.8%のBD、12%の2M3BN、69%のT3PN、そして他のペンテンニトリル異性体、そして更に追加的な触媒成分を含んでいた。蒸発段階の底部溶出液の組成により、蒸発器B1の底部において、2M3BNのT3PNへの転化率が75%となった。
工程(5)において、流れ5を、流下薄膜型蒸発器と凝縮器を備えかつ絶対圧が220ミリバール、塔底取り出し温度が381Kの条件下で操作される蒸発処理段階B5に導入した。
蒸発器段階B5から、流れ2を気体の状態で得たが(58kg/h)、97%のペンテンニトリル異性体及び約1%のBD、そして少量のE2M2BN、Z2M2BN及びVCHを含んでいた。
蒸発器段階B5の底部を介して、触媒流3を得たが(17kg/h)、0.9%のNi(0)、0.3%の2M3BN及び42%の残留ペンテンニトリルを含んでいた。流れ3の殆どを反応器R1に再循環させた(10kg/h:流れ3a)。残り(流れ3b)を、US2003/0100442による再生処理に供給し、そして再生後に、例えば、3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化で使用するか、或いは本発明の方法において、BDのヒドロシアン化の工程に再循環させても良い。
流れ2を凝縮し、そして工程(3)において、流れ2を液体の状態で蒸留塔K3に導入したが、蒸留塔K3には、強制循環蒸発器及び塔頂凝縮器、そして更に50段の理論段を生じさせる構造化充填物が設けられていた。塔K3は、絶対圧で200ミリバールの塔頂圧力、塔頂温度342K、及び塔底取出し部の温度366Kで操作された。
塔K3の頂部から流れ4を得たが、流れ4は、10%のBD、18%のZ2M2BN、68%の2M3BN、そして更に他のペンテンニトリル異性体及びVCHを含んでいた。カラムK3の還流比は、頂部取り出し流が18%のZ2M2BNを含むように調節された。
カラムK3の液体用側部取り出し部において、8kg/hの流れ13を得たが、流れ13は、0.5%のT3PN、85%の2M3BN、5%のZ2M2BN、10%のBDを含んでいた。流れ13を蒸発器段階B1に再循環させた。
カラムK3の底部から47kg/hの流れ12を得たが、流れ12は、合計で98%のT3PN、C3PN及び4PN、そして更に100ppmの2M3BN及び約1%のE2M2BNを含んでいた。
以下の全ての実験は、保護ガス雰囲気下で行われた。
ニッケル(0)[o−イソプロピルフェニル0.8m−/p−トリル3.2ホスフィット]18(略して、イソプロピル触媒)は、19質量%の3PNと80質量%のo−イソプロピルフェニル0.8m−/p−トリル3.2ホスフィットとを有する1.0質量%のニッケル(0)の溶液に相当していた。
BDの2M3BN/3PNへの連続ヒドロシアン化の例:
[実施例7](比較実施例)
(BD/HCN比=1.4:1)
2.11モルの湿潤且つ安定化ブタジエン(100ppmの水、100ppmのTBP)、1.55モルのHCN及び14ミリモルの、イソプロピル触媒の形のNiを1時間ごとに加圧反応器(圧力:15バール、内部温度:105℃、滞留時間:約40分/反応器)に供給した。容量分析によれば、HCN転化率は、定量的であった(Vollhardt滴定)。反応流出液の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィにより決定した(GC面積%)。2M3BN/3PN比は、1.95/1であった。形成された価値ある生成物に対するNi(0)の損失は、価値ある生成物に対して、0.58kgのNi(0)/tであった。
[実施例8]
(BD/HCN比=1.4:1)
4オングストロームの分子篩の床で乾燥した2.13モルのブタジエン、1.53モルのHCN及び14ミリモルの、イソプロピル触媒の形のNiを1時間ごとに加圧反応器(圧力:15バール、内部温度:105℃、滞留時間:約40分/反応器)に供給した。容量分析によれば、HCN転化率は、定量的であった(Vollhardt滴定)。反応流出液の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィにより決定した(GC面積%)。2M3BN/3PN比は、1.95/1であった。形成された価値ある生成物に対するNi(0)の損失は、価値ある生成物に対して、0.14kgのNi(0)/tであった(3PN/2M3BN)。
[実施例9]
(BD/HCN比=1.2:1)
アルミナ床で乾燥した2.09モルのブタジエン、1.67モルのHCN及び14ミリモルの、イソプロピル触媒の形のNiを1時間ごとに加圧反応器(圧力:15バール、内部温度:105℃、滞留時間:約45分/反応器)に供給した。容量分析によれば、HCN転化率は、定量的であった(Vollhardt滴定)。反応流出液の2M3BN/3PN比は、ガスクロマトグラフィにより決定した(GC面積%)。2M3BN/3PN比は、1.95/1であった。形成された価値ある生成物に対するNi(0)の損失は、価値ある生成物に対して、0.10kg未満のNi(0)/tであった(3PN/2M3BN)。
2M3BNの3PNへの連続異性化の例:
[実施例10]
実施例8で調製されたヒドロシアン化溶出液を集め、過剰のBDを蒸留除去した。これにより得られた混合物を1時間で130℃に加熱した。0分、30分及び1時間後、GCサンプルを反応混合物から採取し、GCクロマトグラフィで分析した(GC面積%)。
循環ヒドロシアン化触媒を用いた2M3BNの2M2BNへの不正確な異性化の例:
[実施例11]
t=0時間において649gの新鮮なイソプロピルを充填した触媒触媒貯槽から、100gのイソプロピル触媒を連続的に取り出し、2.14モルの、アルミナ床で乾燥したブタジエン、そして更に1.67モルのHCNと一緒に、1時間ごとに加圧反応器(圧力:15バール、内部温度:105℃、滞留時間:約45分/反応器)に供給した。容量分析によれば、HCN転化率は、定量的であった(Vollhardt滴定)。価値ある生成物を、サンバイ蒸留(Sambay distillation)により触媒から連続的に除去し、これにより得られた返還触媒を貯槽に再循環させた。反応は50時間に亘って運転され、依然として在るヒドロシアン化活性触媒を、2M2BN副成分が形成開始したので排出した。これにより得られた触媒を異性化実験に付した。
[実施例12](比較実施例)
10gの異性化触媒に、2M3BN(15g)を補充し、120℃で5時間加熱した。2M3BNの89%の転化率で(GC面積%)、8.6%の不適当な異性体(2M2BN)を見出した。
[実施例13]
n−ヘプタン(100g)及びアジポニトリル(50g)を実施例11の異性化触媒(100g)に添加し、そして混合物を撹拌した(15分)。相分離の後(30分)、下相を排出した。上相の一部(50gのヘプタン+異性化触媒)に2M3BN(21g)を補充し、120℃で5時間加熱した。2M3BNの95%の転化率で(GC面積%)、2.0%の不適当な異性体(2M2BN)を見出した。
[実施例14]
第1の抽出(実施例12)から得た上相の残留物を、アジポニトリル(37.5g)と再び混合し、そして撹拌した。相分離の後、上相の一部をロータリエバポレータで再び凝縮し、残留物(9.3g)に2M3BN(14g)を補充した。120℃で5時間後、94%の2M3BNの転化率(GC面積%)及び0.7%の不適当な異性化を見出した。
連続的に使用される異性化触媒による2M3BNの2M2BNへの不適当な異性化の例:
[実施例15]
2Lの反応器に、450g/hの2M3BNと連続的に混合した300gのイソプロピル触媒を導入し、130℃に加熱した。60分の滞留時間で、反応器の内容物を取り出し、連続的に蒸留することによって後処理し、そして底部に残った異性化触媒を再循環させた。反応は50時間に亘って運転され、依然として在る異性化活性触媒を、2M3BNの不適当な異性化が開始したので排出した。これにより得られた触媒を異性化実験に付した。
[実施例16]
10gの異性化触媒に2M3BN(15g)を補充し、120℃で5時間加熱した。90%の2M3BNの転化率(GC体積%)で、9.8%の不適当な異性体(2M2BN)を見出した。
[実施例17]
n−ヘプタン(100g)及びアジポニトリル(50g)を実施例16の異性化触媒(100g)に添加し、そして混合物を撹拌した(15分)。相分離の後(30分)、下相を排出した。上相の一部(50gのヘプタン+異性化触媒)をロータリエバポレータで凝縮した。残留物(14g、異性化触媒)に2M3BN(21g)を補充し、120℃で5時間加熱した。2M3BNの93%の転化率で(GC面積%)、2.4%の不適当な異性体(2M2BN)を見出した。
[実施例18]
第1の抽出(実施例17)から得た上相の残留物を、アジポニトリル(37.5g)と再び混合し、そして撹拌した。相分離の後、上相の一部をロータリエバポレータで再び凝縮し、残留物(9.3g)に2M3BN(14g)を補充した。120℃で5時間後、93%の2M3BNの転化率(GC面積%)及び0.6%の不適当な異性化を見出した。