JP4505578B2 - インプラント材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内で骨組織の代替となるインプラント材料、およびその製造方法に関するものである。
チタンおよびチタン合金は、その生体無毒性,耐食性,機械的強度から、人工骨や人工関節構造部材といったインプラント部材の材料としてよく用いられている。ところが、この様な優れた特性の一方で、チタンとチタン合金には、骨組織との結合性に乏しいという欠点がある。そこで、チタン等をインプラント材料とする場合には、ポリメチルメタアクリレートからなる骨セメントを用いてインプラント部材を生体骨組織に固定することが行なわれている。しかし、この骨セメントには、硬化時に発熱して生体にダメージを与えたり、手術時に患者の血圧を低下させたり、また、長期間使用するとセメント部に割れや緩みを生じるといった問題がある。
そこで、斯かる骨セメントを用いることなくチタンやチタン合金製インプラント部材を生体骨組織に固定するために、骨など生体硬組織の主成分であるヒドロキシアパタイトをインプラント表面に溶射することが行なわれている。
また、特許文献1には、基材(非生体活性な人工材料)に骨芽細胞等を付着させ、付着した細胞により骨マトリックスをコーティングさせたインプラント材料(移植材料)が開示されており、生体骨組織との速やかな接合や生体親和性の向上が謳われている。しかし、当該技術においては、基材と骨マトリックスコーティング層との接合力は比較的弱いものであり、この界面で剥離し易いといった問題がある。
非特許文献1では、チタン板を5M 水酸化ナトリウムで処理し、更に600℃で加熱処理した上で、骨髄細胞をチタン板上で分化させ培養している。しかし、この培養(骨髄細胞の分化と培養)の結果、表面にコーティングされたアパタイト(リン酸カルシウム)は、薄膜X線回折法(TF−XRD)では検出できないものである。その理由は、当該コーティング層が検出できない程薄いものか、或いはアモルファスのものであると考えられている(参照:非特許文献1の第654頁の「RESULTS」項)。一方、上記加熱処理に続いて、擬似体液(simulated body fluid,SBF)により処理することによってアパタイト層をコーティングした上で同様の分化培養を行なった場合には、骨髄細胞の分化増殖は極めて活発であり、その指標となるオステオカルシン(骨の非コラーゲン性タンパク質の一種)やα1(I)コラーゲンをコードする遺伝子の発現は高いとの結果が出ている。しかし、この基材表面へアパタイトをコートしたのみでは、やはり基材とコーティング層との接合力は弱いと考えられる。
国際公開第01/34218号公報(請求の範囲) ケン・ニシオら,ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアル・リサーチ(Journal of Biomedical Material Research),第52巻4号,第652〜661頁(2000年)
上述した様に、表面処理をしたチタン板上で骨髄細胞を分化増殖させ、アパタイトやアパタイトを含む層をコーティングすることによって、骨組織との親和性を高める技術は公知のものである。しかし、従来のインプラント材料では、基材とアパタイトとの親和性の低さから、基材上に十分な骨マトリックスを形成させることができなかったり、基材とアパタイトとの結合力が比較的弱いことから、やはりインプラント部材と生体骨組織との界面で剥離するおそれがあるという問題がある。
そこで、本発明が解決すべき課題は、基材に十分なコーティング層を形成させ、これらの結合力を高めることで、生体骨組織と速やかに且つ強固に結合し得るインプラント材料を提供することにある。また、本発明では、この様なインプラント材料を製造する方法を提供することも目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、基材表面へ骨マトリックスをコーティングするにあたり、基材の表面処理条件やコーティング条件等につき種々検討した。その結果、基材表面にアナターゼ型酸化チタン結晶を存在せしめれば、表面上に骨マトリックスを効率的かつ強固にコーティングできることを見出して本発明を完成した。
即ち、本発明のインプラント材料は、生体内で骨組織の代替となるものであって、チタンまたはチタン合金を原材料とする基材と、アパタイトと有機構造体とを含む表面層(以下、「第1層」という)を有し、当該基材と当該第1層との間に、当該基材由来の網目構造とアパタイトを含み、アナターゼ型酸化チタン結晶を含有し、且つ基材側から第1層側へ向かうにつれ元素としてのチタンに対するアパタイトの割合が連続的または段階的に増加する傾斜複合層(以下、「第2層」という)が存在することを特徴とする。
当該インプラント材料は、特に第2層にアナターゼ型酸化チタン結晶が存在していることから、骨芽細胞および前駆骨芽細胞のうち少なくとも1種の細胞が網目構造の凹部にアパタイトを沈着させる際に有利に働き、アパタイトを析出させ易く、且つ両者の結合は強固であるという特性を有する。
上記網目構造の深さとしては、0.2〜5μmが適切である。0.2μm未満では、骨マトリックスコーティング層を基材上に固定するためのアンカー効果が十分でない一方で、5μmを超えると表面網目構造等の凹部の最深部までアパタイトの沈着が起こらず、網目構造や凸凹構造の深部で空隙が生じるおそれがあるからである。
上記基材の表面構造としては、上記網目構造が表面凸凹構造上に形成されており、上記基材の表面凸凹構造においては、凸部と凹部の高さの差が10〜1000μmであり、また、隣り合う凸部同士の距離が10〜1000μmであることが好ましい。凹部への骨マトリックス侵入によるアンカー効果によって、インプラント材料と生体骨組織との強固な接合が期待できるからである。
また、本発明に係るインプラント材料の製造方法は、チタンまたはチタン合金を原材料とする基材を強アルカリ水溶液または強酸に浸漬した後、600℃超,800℃未満で加熱する工程、加熱処理した基材表面に間葉系幹細胞を播種し培養することによって、当該間葉系幹細胞を骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞へ分化させる工程、および分化した骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞を培養し、基材表面の凹部にアパタイトを形成させ、更にアパタイトと有機構造体を含む表面層を形成させる工程、を含むことを特徴とする。
上記製造方法においては、強アルカリ水溶液または強酸に浸漬する前に、基材を、ショットブラスト法,酸エッチング法,またはプラズマ溶射法により表面処理することが好ましい。これら表面処理による凸凹構造上に上記網目構造を形成させることによって、基材と骨マトリックスとの結合力がより一層高められたインプラント材料を製造できるからである。
本発明のインプラント材料は、基材上に骨マトリックスが十分にコーティングされており且つこれらの結合力は高いことから、これを材料として製造された人工骨や人工関節は、生体内に移植されると生体骨組織と速やかに且つ強固に結合し得る。また、本発明に係るインプラント材料の製造方法は、斯かるインプラント材料を製造できるものとして、産業上極めて有用である。
以下に、本発明の実施形態とその効果について説明する。
本発明のインプラント材料は、骨形成能を有し得、生体内で骨組織の代替となるものであり、基材と、表面層(第1層)と、基材と第1層の間に存在する第2層を有する。このインプラント材料は、主に人工骨や人工関節の材料として利用されるものであるが、生体内で骨組織の代替となるものであればその用途は特に限定されるものではなく、また、インプラント材料を使用する対象は、ヒトに限られず動物も含むものとする。以下、基材,第1層,第2層について説明する。
基材としては、チタンまたはチタン合金を原材料とするものを使用する。チタンとチタン合金は、耐食性と強度に優れるのみならず生体に対して不活性であることから、本発明で好適に用いるものである。より具体的には、純チタンや、Ti−6Al−4V,Ti−6Al−2Nb−1Ta,Ti−15Mo−5Zr−3Al等の合金を好適に使用できる。
本発明のインプラント材料の表面層(第1層)は、アパタイトと有機構造体とを含む。この第1層は、骨芽細胞や前駆骨芽細胞により形成されたものであって、生体骨とほぼ同様の組成と構造を有することから、生体内において生体骨と速やかに結合することが期待される。ここで、アパタイトは骨の主成分であるが、有機構造体には、骨芽細胞等が産生するオステオカルシンやコラーゲン等のタンパク質のみならず、細胞成長因子や骨形成促進因子等も含まれるものとする。更に、有機構造体と共にこれを形成した骨芽細胞や前駆骨芽細胞が存在すると、より好ましい形態となる。
この第1層は、薄膜でも存在すれば上記効果を発揮することができるが、その膜厚は、2μm以上であることが好ましい。一方、好ましい上限は20μmとする。厚膜化するには培養時間を長くする必要があることや、厚くし過ぎると移植時に剥離し易くなることによる。
基材と第1層との存在する第2層は、基材由来の網目構造とアパタイトとを含み、アナターゼ型酸化チタン結晶を含有し、基材側から第1層側へ向かうにつれ元素としてのチタンに対するアパタイトの割合が連続的または段階的に増加する傾斜複合層である。この第2層は、アンカー効果によって、基材と骨マトリックスとを強固に接合する作用効果を有するものである。
この第2層の網目構造は、材料として用いた基材の表面に形成されていたものである。従って、第2層に含まれる元素としてのチタンは、基材の材料であるチタンやチタン合金由来のものであるが、これらが酸化された酸化チタン等も含むものとする。網目構造の凹部には、骨マトリックスの主成分であるアパタイトが入り込むことによって、基材と骨マトリックスとが強固に接合されることになる。また、第2層のアパタイトは、骨の主成分であって骨芽細胞や前駆骨芽細胞により形成されるものをいうものとする。
網目構造とは、主に約10nm程度の針状構造体が三次元的且つ網目状に配列したものをいうものとする。これら構造は、凹部に骨マトリックスが侵入することによって、基材と骨マトリックス部分とのアンカー効果を発揮するものである。従って、当該網目構造を凸凹構造上に形成させることによって、基材と骨マトリックス部分との結合力をより一層高めることが可能になる。
この網目構造の深さとしては、0.2〜5μmが好ましい。0.2μm未満では、骨マトリックスコーティング層を基材上に固定するためのアンカー効果が十分でない一方で、5μmを超えると表面網目構造の凹部の最深部までアパタイトの沈着が起こらず、網目構造深部で空隙が生じるおそれがあるからである。
凸凹構造においては、凸部と凹部の高さの差が10〜1000μm(更に好適には、100〜500μm)であり、また、隣り合う凸部同士の距離が10〜1000μm(更に好適には、100〜500μm)であることが好ましい。凹部への骨マトリックス侵入によるアンカー効果によって、インプラント材料と生体骨組織との強固な接合が期待できるからである。また、凸凹構造として、多孔構造であり且つこれら孔が連通して連通多孔層が形成されている場合には、孔内へも血管新生が起こり、本発明インプラント材料の骨マトリックス部分への生体骨の侵入が促進される可能性が高いことから、より好ましい。更に、マクロ的な凸凹構造の表面にミクロ的な凸凹構造が形成されていると、基材と骨マトリックスとの接合が高まる。
この第2層中、基材に由来する部分の表面の少なくとも一部には、アナターゼ型酸化チタン結晶が存在する。アナターゼ型酸化チタン(110)の結晶構造には、酸素原子配列が原子間距離の点でアパタイトのc面とほぼ一致する部分がある。この様に原子配列が類似していると、両者間の界面エネルギーが小さくなることによって、アナターゼ型酸化チタン結晶の表面にアパタイトが析出し易くなり、骨芽細胞等が網目構造または凸凹構造にアパタイトを沈着させる際に優位に働くと考えられるからである。斯かる効果が発揮されるには、アナターゼ型酸化チタン結晶は、基材表面に、局所的ではなく均一に存在することが好ましく、また、X線入射角1°で薄膜X線回折データを取得したときに、2θが約25°のアナターゼ型結晶由来のピーク強度と約28°のルチル方結晶のピーク強度との比(アナターゼ/ルチル)で1/3以上であることが好ましい。
第2層は、基材側から第1層側へ向かうにつれ元素としてのチタンに対するアパタイトの割合が連続的または段階的に増加する傾斜複合層である。即ち、本発明で使用する基材の表面には三次元的網目構造が形成されており、斯かる構造中の隙間に、骨芽細胞等により産生されたアパタイト顆粒が実質的に空隙無く入り込むため、基材側ほど元素としてのチタンの割合が多く、第1層側ほどアパタイトの割合が多い傾斜複合層となる。ここで、元素としてのチタンとは、基材由来のチタンまたはチタン合金のみならず、表面等において酸化されたチタン合金等も含むものである。
上記インプラント材料は、(1)チタンまたはチタン合金を原材料とする基材を強アルカリ水溶液または強酸に浸漬した後、600℃超,800℃未満で加熱する工程、(2)加熱処理した基材表面に間葉系幹細胞を播種し培養することによって、当該間葉系幹細胞を骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞へ分化させる工程、および(3)分化した骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞を培養し、基材表面の凹部にアパタイトを形成させ、更にアパタイトと有機構造体を含む表面層を形成させる工程、を含む方法により製造することができる。
(1) 先ず、チタン板またはチタン合金板等から所望の形状を切出す等し、表面に三次元的網目構造を形成するために、強アルカリ水溶液または強酸により処理する。ここで使用できる強アルカリ水溶液としては、3〜10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液を挙げることができ、強酸としては、5〜10mol/Lの塩酸や硫酸を挙げることができる。この際の処理温度と処理時間は、予備実験により厚さ0.2〜5μmの三次元的網目構造が形成される条件を検討して決定すればよいが、例えば、50〜70℃で12〜48時間とする。
処理後は、網目構造中に入り込んだナトリウムイオンまたはカリウムイオンを除去するために、水やアセトン等の有機溶媒により表面を洗浄するのが好ましい。ナトリウムイオン等が残存すると、後に続く加熱処理の際に、これらイオンがチタンと反応してチタン酸ナトリウム等を形成し、アナターゼ型酸化チタン結晶の形成を阻害するおそれがあるからである。ナトリウムイオンやカリウムイオンの量は、エネルギー分散型元素分析で測定可能であり、基材表面の残存量は、5原子%以下とすることが好ましい。斯かる洗浄をより効果的にするために、水や有機溶媒を40〜80℃に加温することや、超音波洗浄機を用いてもよい。好適には、40〜80℃の温水を用いる。
次に、大気中600℃超,800℃未満の温度で加熱処理することによって、三次元的網目構造をより強固なものとする。強アルカリ水溶液等による上記処理の段階でも三次元的網目構造は形成されているが、比較的柔らかなものなので、加熱処理でより強固なものとする。また、600℃を超える熱処理によって、アナターゼ型の酸化チタン結晶が形成され易くなるという効果もある。好適な加熱温度は610℃以上であり、より好ましくは620℃以上であり、最適には630℃以上とする。一方、上限については、過剰に温度が高いとルチル型酸化チタン結晶の生成が支配的となるおそれがあるので、700℃とすることが好ましい。
(2) 次に、基材上へ間葉系幹細胞を播種し培養することによって、基材上で間葉系幹細胞を骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞へ分化させる。間葉系幹細胞は、生体から骨髄細胞を採取して培養した上で、トリプシン溶液で処理することによって浮遊液としたものを使用すればよい。この間葉系幹細胞の浮遊液を基材上で培養しつつ、骨芽細胞若しくは前駆骨芽細胞またはこれらの混合細胞へと分化させる。具体的には、細菌等の感染を防止するための抗生物質等と共に、デキサメサゾン,β−グリセロリン酸,アスコルビン酸等の1種または2種以上の混合物を、分化誘導因子として加え、標準的な培養条件(例えば、5% CO2雰囲気下で37℃)で培養する。
(3) そして、この分化した骨芽細胞または前駆骨芽細胞を更に培養し、基材表面の凹部にアパタイトを形成させ、更にアパタイトと有機構造体を含む表面層を形成させる。この培養は、上記分化工程(2)と連続的なものであり、特に境目はない。即ち、上記(2)工程の条件で10〜20日程度培養を継続することによって、基材表面の三次元的網目構造の凹部へ、コラーゲンを主成分とすると思われる繊維状構造体を形成すると同時に、その繊維状構造体の中にアパタイト顆粒を産生することによって、骨マトリックスを形成する。また、培養の際には、培養液中に細胞成長因子や骨形成促進因子等を添加することによって、骨マトリックスの形成を更に促進することも推奨される。
(4) 上記製造工程において、強アルカリ水溶液または強酸に浸漬する前には、基材表面を、ショットブラスト法,酸エッチング法,またはプラズマ溶射法により表面処理することによって、凸凹構造を形成させることが好ましい。凸凹構造の上に三次元的網目構造を形成させることによって、基材と骨マトリックスとの結合力をより一層高めることができるからである。これら方法については、従来法を応用することができる。
以上の様にして製造されたインプラント材料は、その基材表面の三次元的網目構造等によるアンカー効果によって基材と骨マトリックスとが強固に結合している上に、その表面が生体由来の骨マトリックスによりコートされ、更には骨芽細胞や前駆骨芽細胞も存在し得ることから、生体内へ移植された際に隣接する生体骨組織に対して非常に高い親和性を有し、異物として認識されることなく速やかに骨結合することから、長期にわたって安定して使用できるものと期待される。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
製造例1 本発明に係るインプラント材料の製造
厚さ1mmのチタン板より直径34mmの円板を切り出した後、表面を400番の研磨紙により湿式研磨し、次いでアセトン中と超純粋中で順次超音波洗浄した。このチタン円板を、60℃の5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に24時間浸漬し、取出した後、純水中で10分間の超音波洗浄を2回繰返して行なった。その後、80℃の純水中で20時間浸漬洗浄し、室温で乾燥させた後、635℃で1時間加熱処理を行なってチタンよりなる基材を作製した。この基材表面を走査型電子顕微鏡(ニコン社製,ESEM 2700)により観察したところ、図1に示した通り、三次元網目状構造を有していた。また、薄膜X線分析を行なったところ、図2の通り、表層にはアナターゼ型酸化チタン結晶が含まれていることを確認することができた。
別途、間葉系幹細胞の調製を行なった。即ち、7週齢雄Fischer系ラットの大腿骨骨幹部より骨髄細胞を採取し、この細胞に、15%ウシ胎児血清(FBS)を含有するα-MEM(最小必須培養液)を加え、インキュベーター(37℃,5%CO2)内で7日間初期培養した。その後、0.01%トリプシン溶液で処理することによって1×106cells/mLの間葉系幹細胞浮遊液とした。
滅菌処理した上記チタン基材を直径35mmの培養皿に入れ、その上に間葉系幹細胞浮遊液2mLを注ぎ、インキュベーター(37℃,5%CO2)内で約6時間保温した。その後、このチタン基材を、上記培養液に抗生物質,10-8mol/L デキサメサゾン,10mmol/L β-グリセロリン酸ナトリウム,および50μg/mL アスコルビン酸を含む様に調製した培養液2mLを加えた直径35mmの培養皿に移し替え、インキュベーター(37℃,5%CO2)内で約2週間培養することによって、本発明のインプラント材料を製造した。尚、2日おきに培養液交換を行なった。
試験例1
上記製造例1で製造したインプラント材料について、骨髄由来の間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞と前駆骨芽細胞が表面に付着していることと、これら細胞が産生する骨マトリックスによりコーティングが為されていることを、アルカリフォスファターゼ活性染色とアリザリンレッド染色により確認した。
また、上記インプラント材料を、2.5%グルタルアルデヒド溶液中で固定し、エタノール脱水した後に凍結乾燥して電子顕微鏡観察用試料を作製した。その後、薄膜X線回折によって、骨マトリックスコーティング層を構成する化合物を同定した。結果を図3に示す。当該結果によれば、チタン基板由来のピーク以外にアパタイトに由来する明確なピークが確認され、本発明に係るインプラント材料の骨マトリックスコーティング層は、少なくともアパタイトにより構成されていることを確認した。
その後、集束イオンビームを用いて、本発明に係るインプラント材料のコーティング層の縦断面を露出させ、断面の走査型電子顕微鏡観察と元素分析を行なった。コーティング層の断面顕微鏡写真を図4に、元素分析結果を図5に示す。これら結果により、本発明に係るインプラント材料の第1層は繊維状構造体と、カルシウムおよびリンよりなるアパタイトにより構成されており、また、第1層と基材との間の第2層は、チタンとアパタイトによる傾斜的複合層であることが実証された。
更に、上記インプラント材料を10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬することによって、有機物を含む第1層を除去して第2層を露出させた。その後、深さ方向の元素組成変化を、オージュ電子分光分析によって分析した。結果を図6に示す。当該結果によれば、第2層の表面からおよそ1500nmの深さまで、第2層を構成するアパタイト由来のカルシウムとリンが傾斜的に減少する一方で、基材を構成するチタンが深部に向けて傾斜的に増加することが観察された。この結果からも、本発明に係るインプラント材料の第2層は、アパタイトとチタンの傾斜複合層であることが明らかにされた。
製造例2 本発明に係るインプラント材料の製造
上記製造例1で用いた同寸法のチタン円板表面に、ショットブラスト法,酸エッチング法,およびプラズマ溶射法によって凹凸構造を形成させた。それぞれの基板について表面を走査型電子顕微鏡により観察して、凹凸構造を確認した(図7-1〜7-3)。
これら各基材に対して、上記製造例1と同様の手法によって表面処理を行なった後、骨マトリックスを形成させた。得られた各インプラント材料を樹脂へ埋め込んだ後、研磨により断面を露出させ、走査型電子顕微鏡により断面観察することによって、凹凸面に沿って骨マトリックスのコーティング層が形成されていることを確認した。
製造例3と比較製造例1
厚さ1mmのチタン板より5×5mmの矩形板を切り出した後、表面を400番の研磨紙により湿式研磨し、次いでアセトン中と超純粋中で順次超音波洗浄した。このチタン板について、上記製造例1の水酸化ナトリウム処理と加熱処理による表面処理を施した実験群(製造例3)と、斯かる表面処理を施さない実験群(比較製造例1)を準備し、上記製造例1と同様の手法によって、それぞれの基材表面に骨マトリックスを形成させた。
製造例3と比較製造例1のインプラント材料を、集束イオンビームによる断面露出と走査型電子顕微鏡(SEM)/エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による断面観察および元素分析により観察したところ、製造例3では第1層と第2層が両方形成されていたが、比較製造例1では第1層のみで第2層は形成されていなかった。
試験例2
上記製造例3と比較製造例1のインプラント材料それぞれを、同系ラットの背部皮下に移植して、生体内で骨形成をさせた。移植から4週間後にインプラント材料を取り出したところ、何れの表面でも骨組織の新生が確認された。
これらインプラント材料を樹脂に埋め込んだ後、研磨によりその断面を露出させ、基材と骨部分(直接的には、基材と骨マトリックス)との密着状況を調べた。その結果、製造例3では、基材と骨マトリックスとの間に介在組織は認められず、良好に密着している様子が確認された。その一方で、比較製造例1では、基材と骨との間に繊維性の介在組織が存在しており、密着性は明らかに劣るものであった。
以上の結果より、基材と骨との密着性には、両者成分の傾斜複合層の存在が重要な働きを有しており、斯かる構造を有する本発明のインプラント材料は、生体内において生体骨と強固に結合できることが証明された。
本発明方法によって三次元網目構造層を形成させたチタン基材の表面の電子顕微鏡写真である。 本発明方法によって三次元網目構造層を形成させたチタン基材の薄膜X線分析結果を示す図である。 本発明に係るインプラント材料のコーティング層の薄膜X線回折結果を示す図である。 本発明に係るインプラント材料のコーティング層縦断面の電子顕微鏡写真である。 本発明に係るインプラント材料のコーティング層縦断面の元素分析結果である。上図における基材と第2層の境界、および第2層と第1層との境界は、下図の点線に相当する。 第2層から基材にかけての深さ方向の元素組成変化(オージェ電子分光分析結果)を示す図である。 (a)ショットブラスト法,(b)酸エッチング法,(c)プラズマ溶射法により凹凸構造を形成させたチタン基材表面の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (6)

  1. 生体内で骨組織の代替となるインプラント材料であって、
    チタンまたはチタン合金を原材料とする基材と、
    アパタイトと有機構造体とを含む表面層(以下、「第1層」という)を有し、
    当該基材と当該第1層との間に、当該基材由来の網目構造とアパタイトとを含み、アナターゼ型酸化チタン結晶を含有し、且つ基材側から第1層側へ向かうにつれ元素としてのチタンに対するアパタイトの割合が連続的または段階的に増加する傾斜複合層(以下、「第2層」という)が存在することを特徴とするインプラント材料。
  2. 上記網目構造の深さが0.2〜5μmである請求項1に記載のインプラント材料。
  3. 上記基材由来の網目構造が、表面凸凹構造上に形成されており、凸部と凹部の高さの差が10〜1000μmである請求項1または2に記載のインプラント材料。
  4. 上記表面凸凹構造において、隣り合う凸部同士の距離が10〜1000μmである請求項1〜3のいずれかに記載のインプラント材料。
  5. 生体内で骨組織の代替となるインプラント材料を製造するための方法であって、
    チタンまたはチタン合金を原材料とする基材を強アルカリ水溶液または強酸に浸漬した後、600℃超,800℃未満で加熱する工程、
    加熱処理した基材表面に間葉系幹細胞を播種し培養することによって、当該間葉系幹細胞を骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞へ分化させる工程、および
    分化した骨芽細胞および/または前駆骨芽細胞を培養し、基材表面の凹部にアパタイトを形成させ、更にアパタイトと有機構造体を含む表面層を形成させる工程、
    を含むことを特徴とするインプラント材料の製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法において、強アルカリ水溶液または強酸に浸漬する前に、基材を、ショットブラスト法,酸エッチング法,またはプラズマ溶射法により表面処理するインプラント材料の製造方法。

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