JP3897717B2 - 細胞移植治療材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯周病治療等に用いられる細胞移植治療材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、歯周病治療は、病原菌に感染した部位を対症療法による手段で対処することにより行われてきた。しかし、歯周病は大きな組織崩壊を伴うので、自然修復は難しく、治療後の組織再生が問題となる。現在までに、ゴアテックス膜もしくはポリ乳酸膜などの人工材料を用いた再生療法が開発され、一部の臨床ケースではその有効性が示されている。
【0003】
しかし、人工材料のみでは再生能力に限界があるため、近年では、細胞成長因子や異種動物より抽出製造された生理活性物質と人工材料とを併用した歯周組織再生療法が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、生理活性物質を用いても、欠損の少ない部位にその有効性を示すことができるが、大きな組織崩壊を伴うケースについては、その欠損部位を補うまでには至っていない。また、創傷部位の細胞のみに生理活性物質を作用させ、組織修復の全てを託すことにも限界がある。
【0005】
歯周組織は、セメント質、歯根膜および歯槽骨により構成され、咀嚼機能を支持する重要な役割を果たしている。特に、歯根膜は、セメント質と歯槽骨を結合するコラーゲン繊維束(シャーピー繊維)により強大な咬合力に耐え得るため、重要な役割を果たしている。
【0006】
従って、歯周病により崩壊した組織の修復には、細胞移植治療を併用した再生療法を確立することが望まれている。特に、セメント質形成能を有する細胞を歯根表面に供給し、歯周組織独特のシャーピー繊維構造を再構築することが重要になる。そのためには、セメント質形成能力を有するセメント芽細胞前駆体を採取する技術開発が必要になる。しかし、現在まで、培養セメント芽細胞前駆体に関する報告は見られていない。
【0007】
本発明は、このような事情の下になされ、組織崩壊を伴う歯周病に対しても、歯周組織の修復を可能とする細胞移植治療材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、歯周病治療に用いられる細胞移植治療材料において、歯小嚢組織または歯根膜組織から採取された歯周組織幹細胞を含むことを特徴とする細胞移植治療材料を提供する。
【0009】
このような本発明の細胞移植治療材において、歯周組織幹細胞は、歯小嚢組織または歯根膜組織の酵素消化により単離され、更にこれに遺伝子を導入して不死化することにより、セメント質形成能を有する細胞が得られる。
【0010】
本発明の細胞移植治療材は、このような歯周組織幹細胞を、生体吸収性材料からなる担体に複合させたものとすることが出来る。生体吸収性材料としては、リン酸カルシウム系セラミックス材料、例えば水酸化アパタイトセラミックス(以下、HAP)やβ−リン酸三カルシウムセラミックス(以下、β−TCP)を用いることが出来、特にβ−TCPを好ましく用いることが出来る。
【0011】
本発明はまた、歯周病治療等に用いられる細胞移植治療材料の製造方法において、歯小嚢組織または歯根膜組織を採取する工程、前記歯小嚢組織または歯根膜組織を酵素消化し、歯周組織幹細胞を得る工程、前記歯周組織幹細胞を遺伝子導入により不死化する工程、および前記不死化した歯周組織幹細胞を生体吸収性材料からなる担体に複合する工程を備えることを特徴とする細胞移植治療材料の製造方法を提供する。
【0012】
以上のように構成される本発明によれば、組織崩壊を伴う歯周病に対しても、歯周組織の修復を可能とする細胞移植治療材料が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の細胞移植治療材料は、歯周組織幹細胞を含むことを特徴とする。歯周組織幹細胞は、歯胚の歯根部分に付着している歯小嚢組織または歯根膜から採取される。なお、好ましくは歯小嚢組織から採取するものがよいが、歯根膜組織から採取した細胞集団内にも歯周組織幹細胞が存在することが確認されている。
本発明において歯周組織幹細胞を採取する生物は、任意の生物を意図し、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。また、歯周組織幹細胞は、移植治療を受ける生物個体と同一の個体から採取したものが好ましいが、移植治療を受ける生物個体と同一の種に属する別の個体から採取したものでもよい。
【0015】
採取した歯小嚢組織または歯根膜組織を、例えば細菌性コラゲナーゼで酵素消化することにより、歯周組織幹細胞を単離することが出来る。なお、酵素消化法としては、段階的酵素消化法を用いることが望ましく、1回法では、セメント質形成能を有する歯周組織幹細胞を十分に得ることが困難である。同様に、細胞の採取方法としてのカバーガラスを用いて組織を固定し、細胞をアウトグロース(outgrowth)させる方法によっても、セメント質形成能を有する歯周組織幹細胞を得ることは困難である。
【0016】
本発明において不死化操作は、細胞を不死化するために使用可能であることが知られている任意の遺伝子を導入することにより行うことができる。具体的には、細胞のがん化を誘導するがん遺伝子とテロメラーゼ活性を付与する遺伝子を遺伝子導入することにより、細胞を不死化することができる。より具体的には、上述のとおり単離して得られた歯周組織幹細胞は、ヒトパピローマウイルスE6、E7cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAの遺伝子導入により、その形質を維持したまま不死化される(後述の実施例1参照)。また、上述のとおり単離して得られた歯周組織幹細胞は、ヒトbmi−1cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAの遺伝子導入により、その形質を維持したまま不死化される(後述の実施例2参照)。これら不死化操作により、クローン化されたセメント質形成能を有する歯周組織幹細胞(セメント芽細胞前駆体)の増殖能を維持することが出来る。
【0017】
なお、不死化されていないプライマリー細胞を増殖した場合、繊維芽細胞が細胞集団の大半を占めてしまい、セメント芽細胞前駆体が除外されてしまう可能性が大きい。実際に、継代を繰り返した細胞では、セメント質形成能は見られない。従って、歯周組織の再生には、不死化により得られたセメント芽細胞前駆体を用いることが必要となる。
【0018】
以上のように不死化・増殖した歯周組織幹細胞を生体吸収性材料からなる担体に複合させ、培養することにより、歯周組織幹細胞を複合した細胞移植治療材料を得ることが出来る。
【0019】
生体吸収性材料からなる担体への不死化した歯周組織幹細胞の複合は、歯周組織幹細胞を含む懸濁液中に担体粉末を添加し、歯周組織幹細胞を培養することにより行うことが出来る。
生体吸収性材料からなる担体への不死化した歯周組織幹細胞の複合は、1×104〜107個/mlの細胞浮遊液に担体粉末を十分に浸すことで行うことができる。例えば、1×104〜107個/mlの細胞浮遊液1mLに担体粉末を約40mg浸すことで行うことができる。
【0020】
本発明に使用される生体吸収性材料としては、有機材料として、例えば、乳酸、グリコール酸、ラクトンの重合体もしくは共重合体、コラーゲン、アルブミン、デキストラン、脂肪酸エチルエステル、ゼラチン、キチン、キトサン、フィブロイン等を挙げることが出来る。なお、天然由来材料も、抗原性の無い材料を用いることができる。
【0021】
また、セラミックスとして、生体適合性および骨伝導性に優れたリン酸カルシウム系セラミックス材料を用いることができる。水酸化アパタイトセラミックス(HAP)やβ−リン酸三カルシウムセラミックス(β−TCP)は、その代表的な材料である。これらセラミックス材料は、公知の手法により作製することができる。以下、水酸化アパタイトセラミックスおよびβ−リン酸三カルシウムセラミックスを、それぞれHAPおよびβ−TCPと称する。本発明で細胞浮遊液に添加される担体粉末は、担体であるセラミックスを公知の手法で粉砕することにより得ることができる。
HAPは、優れた骨伝導性を有し、骨組織と直接結合するが、非吸収性で長期的に生体内に残存してしまう。一方、β−TCPは、優れた骨伝導能を有し、骨組織と直接結合する上、骨組織中で経時的に吸収され、自家骨に置換されるという性質を有する。これらの材料は、骨補填の用途に応じて使い分けることが出来る。
【0022】
特に、β−TCPは、生体適合性、骨形成に優れている上、生体吸収性にも優れ、骨欠損部などに充填する場合、経時的に自家骨に置換するという特徴を有する。そのため、本発明に使用されるリン酸カルシウム系セラミックス材料としては、β−TCPが最も好ましい。
【0023】
β−TCPは、メカノケミカル法で作製したβ−TCPであって、気孔率50〜90%、連通する気孔径50〜1000μmと5μm以下の気孔を有するものであることが好ましい。なお、β−TCPは、一般的に骨伝導能と生体吸収性の性質を併せ有するが、その合成プロセスによりその性能は左右され、メカノケミカル法により合成されたβ−TCPが最も骨補填材として優れている。
【0024】
また、多孔質の気孔性状は、β−TCP内部への細胞の進入などに寄与する50〜1000μmの気孔と、生体内での吸収を効率良くさせる5μm以下の気孔とを有することが望ましい。
【0025】
以下、本発明の実施例を示し、本発明についてより具体的に説明する。
実施例1
1.歯周組織幹細胞の採取
2歳の成牛の下顎より永久犬歯歯胚(歯根部分に付着している歯小嚢組織)を採取し、このウシ歯小嚢組織を3mg/mlの細菌性コラゲナーゼ(Roche製)で10分間、10分間、および20分間の3回の処理を行い、歯小嚢組織周囲に付着している骨組織およびセメント質を取り除いた。その後、更に40分間の処理を5回行い、歯小嚢細胞を単離した。単離された歯小嚢細胞を、以後、歯周組織幹細胞と称する。
なお、本実施例では、このように段階的酵素消化法を用いているが、1回法で酵素消化を行うと、歯周組織幹細胞の採取が困難であるばかりか、骨芽細胞もしくは繊維芽細胞が主成分を占めてしまうので望ましくない。
【0026】
このようにして得た歯周組織幹細胞を10%ウシ胎児血清、50μg/mlのアスコルビン酸、100units/mlのストレプトマイシンとペニシリンを添加したα−最小必須培地(α−MEM:Life Technologies社製)に懸濁した。
【0027】
次いで、この懸濁細胞を35mm培養皿に単層培養した。単層培養は、細胞数に応じて、プラスチック製の6穴培養プレート、100mm培養皿を用いて行った。培養は、5%CO2および95%空気の雰囲気下で37℃にて行い、3日毎に培養液を新鮮なものに交換した。細胞が80%の集密状態になると、常法に従って、0.25%トリプシンおよび1mMのEDTAで処理を行い、継代培養した。
【0028】
2.歯周組織幹細胞の不死化
不死化は、清野らの方法(Nature,1998,396(6706)23−24)に従い、次のようにして行った。即ち、ヒトパピローマウイルスE6,E7cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAをそれぞれ(pLXSNおよびpLXSH)レトロウイルスベクターに組み込み、VSV−G pseud typed組み換えレトロウイルスを製作した。次に、これら組み換えレトロウイルスを用いて、20%集密状態の細胞に、ヒトパピローマウイルスE6、E7cDNA、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAの順に遺伝子導入を行った。なお、各遺伝子は、PCR法によりクローニングしたものを使用した。
【0029】
その後、TRAPアッセイ法によりテロメラーゼ活性を確認した。ここで、ヒトパピローマウイルスE6,E7の発現により、細胞周期回転が維持され、またテロメラーゼの活性化により、テロメア短小化に伴う細胞増殖の停止を回避することができる。つまり、上記二つの遺伝子導入により、細胞は無限増殖能を得て、不死化したことを示している。
【0030】
上述の実験により、細胞はヒトパピローマウイルスE6,E7の発現およびテロメラーゼ活性を得て、不死化したことを確認することができた。
【0031】
細胞のクローニングは、次のようにして行った。即ち、不死化した細胞を0.25%トリプシンおよび1mMのEDTAで処理し、懸濁させた後、96穴培養プレートに1穴あたり1個の細胞が入るように播種した。2週間の単層培養後、細胞1個からの増殖が確認されたプレートを顕微鏡下で選択し、0.25%トリプシンおよび1mMのEDTAで処理し、24穴プレート、35mm培養皿、100mm培養皿の順に継代培養した。最終的にクローン化された細胞は、100mm培養皿で培養を行った。
【0032】
3.クローン化した歯周組織幹細胞の担体への複合化
クローン化した細胞を1×106個の密度で1mlのα−MEM中に懸濁し、これにβ−TCPを加え、90分間培養した。β−TCPは、メカノケミカル法で作製したβ−TCPであって、気孔率75%、連通する気孔径50〜1000μmと5μm以下の気孔を有するものを用いた。β−TCPの添加量は、40mgであった。この培養により、本発明の細胞移植治療材料が作製された。
【0033】
4.細胞移植治療材料のセメント質形成能の評価
その後、この細胞とβ−TCPの混合物をマウスフィブリン糊で固め、重症複合型免疫不全症マウスの皮下へ移植した。なお、既に本発明者は、この方法により、ウシ歯胚、歯小嚢より採取した細胞がセメント質形成を誘導出来ることを確認している。
【0034】
移植して4週間後、移植片を取り出し、二つに分割し、一方を4%パラフィンにて固定した後、ギ酸で脱灰して組織標本を作製した。この組織標本について、坑セメント質由来細胞接着因子(CAP)モノクローナル抗体を用いた免疫染色により、セメント質形成の確認を行った。他方の移植片について、RT−PCR法でセメント質形成に関連する遺伝子である骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンの発現を確認した。ここで、CAPの発現は、セメント芽細胞であることを示し、骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンの発現は、セメント質基質の再生を示している。
【0035】
細胞形態は、ヘマトキシリン−エオジンによる染色により観察し、また免疫染色は常法に従って行った。細胞の固定と光学観察による形態観察を行った。即ち、クローン化した細胞の移植片をヘマトキシリン−エオジンによる染色により観察した。図1は、細胞移植片の組織を表す写真である。図1から明らかなように、細胞とβ−TCPは強固に接着しており、また細胞はβ−TCP周囲に石灰化物を産生し、その周囲には繊維組織の形成が観察された。なお、図1において、矢印は石灰化物を示す。また、坑CAPモノクローナル抗体を用いた免疫染色により、β−TCP周囲に形成された石灰化物がセメント質であることが確認された。
【0036】
また、移植片のRT−PCR法の結果より、骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンのmRNAの発現を確認することができたことから、この細胞がセメント質基質蛋白質を産生していることが認められた。
【0037】
以上のように、本実施例により、ウシ歯小嚢組織から単離し、不死化した細胞をβ−TCPに複合した材料は、優れたセメント質形成能を示し、歯周組織の修復に有効であることが確認された。
【0038】
実施例2
細胞を不死化するために導入する遺伝子として、ヒトbmi−1cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAを組合わせて用いた以外、実施例1と同様にして、細胞移植治療材料を作製し、そのセメント質形成能を評価した。
【0039】
1.歯周組織幹細胞の採取
実施例1の「1.歯周組織幹細胞の採取」の欄に記載したとおり、歯小嚢細胞を単離、培養し、歯周組織幹細胞を採取した。
【0040】
2.歯周組織幹細胞の不死化
不死化は、清野らの方法(Nature,1998,396(6706)23−24)に従い、次のようにして行った。即ち、ヒトbmi−1cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAをそれぞれ(pLXSNおよびpLXSH)レトロウイルスベクターに組み込み、VSV−G pseud typed組み換えレトロウイルスを製作した。次に、これら組み換えレトロウイルスを用いて、20%集密状態の細胞に、ヒトbmi−1cDNA、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAの順に遺伝子導入を行った。
【0041】
その後、抗ヒトbmi−1抗体を用いたimmunoblotting法でヒトbmi−1の発現を確認し、またTRAPアッセイ法によりテロメラーゼ活性を確認した。ここで、ヒトbmi−1の発現により、細胞周期回転が維持され、またテロメラーゼの活性化により、テロメア短小化に伴う細胞増殖の停止を回避することができる。つまり、上記二つの遺伝子導入により、細胞は無限増殖能を得て、不死化したことを示している。図2は、遺伝子導入により不死化されたウシ歯周組織幹細胞が、ヒトbmi−1を発現し、テロメラーゼ活性を獲得したことを示す。図2において、レーン1は、不死化されていないウシ歯小嚢細胞をサンプルとした場合を示し、レーン2は、遺伝子導入により不死化されたウシ歯周組織幹細胞をサンプルとした場合を示す。
【0042】
上述の実験により、細胞はヒトbmi−1の発現およびテロメラーゼ活性を得て、不死化したことを確認することができた。
【0043】
細胞のクローニングは、実施例1の「2.歯周組織幹細胞の不死化」の欄に記載したとおり行った。
【0044】
3.クローン化した歯周組織幹細胞の担体への複合化
クローン化した細胞は、実施例1の「3.クローン化した歯周組織幹細胞の担体への複合化」の欄に記載したとおり、β−TCPに複合化し、本発明の細胞移植治療材料を作製した。
【0045】
4.細胞移植治療材料のセメント質形成能の評価
作製された細胞移植治療材料を、実施例1の「4.細胞移植治療材料のセメント質形成能の評価」の欄に記載したとおり、重症複合型免疫不全症マウスの皮下へ移植し、移植4週間後の細胞移植片について、以下に記載するとおりセメント質形成能を評価した。
【0046】
移植して4週間後、移植片を取り出し、二つに分割し、一方を4%パラフィンにて固定した後、ギ酸で脱灰して組織標本を作製した。この組織標本について、坑セメント質由来細胞接着因子(CAP)モノクローナル抗体を用いた免疫染色により、セメント質形成の確認を行った。他方の移植片について、RT−PCR法でセメント質形成に関連する遺伝子である骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンの発現を確認した。ここで、CAPの発現は、セメント芽細胞であることを示し、骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンの発現は、セメント質基質の再生を示している。
【0047】
細胞形態は、ヘマトキシリン−エオジンによる染色により観察し、また免疫染色は常法に従って行った。細胞の固定と光学観察による形態観察を行った。即ち、クローン化した細胞の移植片をヘマトキシリン−エオジンによる染色により観察した。図3は、細胞移植片の組織を表す写真である。図3において、「BDFC」は、単に単離しただけの(不死化していない)ウシ歯小嚢細胞を細胞移植治療材料として用いた場合の移植片を示し、「BDFCBmi-1+hTERT」は、不死化したがクローン化していない歯周組織幹細胞を細胞移植治療材料として用いた場合の移植片を示し、「BCP−B8」は、不死化した後にクローン化した歯周組織幹細胞を細胞移植治療材料として用いた場合の移植片を示す。
図3から明らかなように、クローン化した歯周組織幹細胞BCP−B8は、ウシ歯小嚢細胞(BDFC)、不死化BDFC(BDFCBmi-1+hTERT)と同じくセメント質形成能を有しており、またこれらすべての細胞とβ−TCPは強固に接着しており、また細胞はβ−TCP周囲に石灰化物を産生し、その周囲には繊維組織の形成が観察された。なお、図3において、矢印は石灰化物を示す。また、坑CAPモノクローナル抗体を用いた免疫染色により、β−TCP周囲に形成された石灰化物がセメント質であることが確認された。
【0048】
また、移植片のRT−PCR法の結果より、骨シアロ蛋白質、オステオカルシン、オステオポンチンおよびI型コラーゲンのmRNAの発現を確認することができたことから、この細胞がセメント質基質蛋白質を産生していることが認められた。
【0049】
以上のように、本実施例により、ウシ歯小嚢組織から単離し、不死化した細胞をβ−TCPに複合した材料は、優れたセメント質形成能を示し、歯周組織の修復に有効であることが確認された。
本実施例のようにヒトbmi−1cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAを用いて不死化を行うと、実施例1と比較して歯周組織再生能力は高かった。
【0050】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、組織崩壊を伴う歯周病に対しても、歯周組織の修復を可能とする細胞移植治療材料を提供することができる。本発明に係る細胞移植治療材料により、いかなる歯周病をも克服し、咀嚼を介したQOLの向上に大きく貢献することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトパピローマウイルスE6,E7cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAを遺伝子導入して不死化した歯周組織幹細胞を移植した場合の細胞移植片の組織を表す写真。
【図2】 (a)抗ヒトbmi−1抗体を用いたimmunoblotting法によりヒトbmi−1の発現を確認した電気泳動写真、(b)TRAPアッセイ法によりテロメラーゼ活性を確認した電気泳動写真。
【図3】 ヒトbmi−1cDNAとヒトテロメラーゼ逆転写酵素サブユニットhTERTcDNAを遺伝子導入して不死化した歯周組織幹細胞を移植した場合の細胞移植片の組織を表す写真。
Claims (5)
- 歯周病治療に用いられる細胞移植治療材料であって、
歯小嚢組織を酵素消化することにより歯周組織幹細胞を採取し、採取された歯周組織幹細胞を遺伝子導入により不死化することにより得られる、セメント質形成能を有する不死化された歯周組織幹細胞を含む、細胞移植治療材料。 - セメント質形成能を有する不死化された前記歯周組織幹細胞を、生体吸収性材料からなる担体に複合してなることを特徴とする請求項1に記載の細胞移植治療材料。
- 歯周病治療に用いられる細胞移植治療材料の製造方法において、
歯小嚢組織を酵素消化し、歯周組織幹細胞を得る工程、
前記歯周組織幹細胞を遺伝子導入により不死化する工程、および
前記不死化した歯周組織幹細胞を生体吸収性材料からなる担体に複合する工程
を備えることを特徴とする細胞移植治療材料の製造方法。 - 前記不死化が、細胞のがん化を誘導するがん遺伝子とテロメラーゼ活性を付与する遺伝子を歯周組織幹細胞に遺伝子導入することにより行なわれることを特徴とする、請求項1または2に記載の細胞移植治療材料。
- 前記不死化工程が、細胞のがん化を誘導するがん遺伝子とテロメラーゼ活性を付与する遺伝子を歯周組織幹細胞に遺伝子導入することにより行なわれることを特徴とする、請求項3に記載の細胞移植治療材料の製造方法。
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