JP2012090822A - インプラント定着補助剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】骨形成能を有する細胞、好ましくは、骨分化誘導された骨髄間質細胞と、医薬として許容可能な担体とを含むインプラント定着補助剤並びに、骨分化誘導剤を含む培地で骨髄間質細胞を培養すること、培養後の骨髄間質細胞を、基材と混合すること、を含むインプラント定着補助剤の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、埋入されたインプラントの定着率を簡便に高めるインプラント定着補助剤を提供することにある。
[1] 骨形成能を有する細胞と医薬として許容可能な担体とを含むインプラント定着補助剤。
[2] 前記骨形成能を有する細胞が、骨分化誘導された骨髄間質細胞である[1]に記載のインプラント定着補助剤。
[3] 海綿骨に対して適用される[1]又は[2]に記載のインプラント定着補助剤。
[4] 前記骨分化誘導が、骨芽細胞への分化誘導である[1]〜[3]のいずれかに記載のインプラント定着補助剤。
[5] 骨分化誘導剤を含む培地で骨髄間質細胞を培養すること、培養後の骨髄間質細胞を、担体と混合すること、を含む[1]〜[4]のいずれかに記載のインプラント定着補助剤の製造方法。
[6] 前記骨分化誘導剤が、骨芽細胞への分化を誘導しうる[5]のいずれかに記載のインプラント定着補助剤の製造方法。
[7] 前記骨分化誘導剤が、アスコルビン酸、β−グリセロリン酸及びデキサメタゾンからなる群より選択された少なくとも1種である[5]又は[6]のいずれかに記載のインプラント定着補助剤の製造方法。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
骨系細胞への分化を誘導する条件下とは、各細胞を、骨系細胞への分化誘導因子の存在下で培養することであってもよい。
このような分化誘導因子としては、タンパク質、ペプチド、又はその他の生理活性物質を用いることができ、具体的には、デキサメタソン、ビタミンD3、β−グリセロリン酸、アスコルビン酸及びその塩、L−グルタミン、BMP−2、BMP−4、BMP−7、グルココルチコイド、インスリン、トランスフェリン、インドメタシン、Fibroblast growth factor(FGF)、Epidermal growth factor(EGF)、Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、Hepatocyte growth factor (HGF)、Tumor necrosis factor(TNF−α)、並びにニコチンアミドからなる群より選択される少なくとも1種以上の物質を使用することができる。ただし、これらの誘導因子に限定されず、骨髄間質細胞を骨系細胞、好ましくは骨芽細胞へ分化誘導可能な物質であれば、特に制限されずに使用できる。
このような足場を提供可能な成分としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコシド)などの合成高分子材料、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどのタンパク質材料、ヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、象牙質、サンゴなどの天然由来の材料、リン酸カルシウム(β−TCP)などの無機材料を挙げることができる。本発明におけるインプラント定着補助剤では、これらの成分を、三次元構造を維持するために適用する濃度で用いる場合は排除される。
投与時のインプラント定着補助剤は、細胞量として、部位あたり、1×105〜1×106細胞で投与されればよい。この場合、例えば、1×107細胞/mlの濃度に細胞懸濁液を調製して、インプラント埋入時に局所注入すればよい。これにより、周囲骨に浸潤する量の細胞を投与できる。
これにより、インプラントの定着率を高め安定性を高めることができる。
従って、本発明は、インプラント用に制限されず、広く骨量を改善する必要がある患者に対して適用可能な、骨形成能を有する細胞と、医薬として許容可能な担体とを含む骨量改善組成物も包含する。
このような患者としては、骨粗鬆症患者、骨折患者、外傷後に再建が必要な患者等を挙げることができる。
本発明の骨量改善組成物については、上述したインプラント定着補助剤において記載した事項をそのまま適用することできる。
骨量改善方法に用いられる骨量改善組成物については、上述したインプラント定着補助剤において記載事項をそのまま適用することができる。
骨量改善方法において投与される骨量改善組成物の投与量としては、ラットの大腿骨遠位骨幹端部に直径1mm×深さ1mmの骨欠損に対して、1×107細胞/mlとすることができる。
(1)骨形成能を有する細胞の調製
骨髄間質細胞(BMSCs)は、168日齢のメスSDラット大腿骨の骨髄腔から採取した。全身麻酔下で大腿骨近位骨端および、遠位骨端を除去し、骨髄を10mL採取し、10v/v%牛胎児血清、抗菌薬(ペニシリン1000U/mL、ストレプトマイシン0.1mg/mL)を添加したDMEM培地中で37℃、5%CO2条件下で3継代培養した。培地は3日毎に交換した。その後、50μg/mLのアスコルビン酸、10mMのβ−グリセロリン酸及び50nMのデキサメタゾンを加えた骨分化誘導培地培地で14日間培養し、80%コンフレントになったところで、0.05%トリプシン−EDTA溶液によって剥がし、移植用細胞として調製した。
具体的には、未処理のBMSCsと、骨分化誘導培地で培養したBMSCsからそれぞれトータルRNAを抽出し、RT−PCR法にてcDNA合成を行い、得られたcDNAに対して、骨形成関連遺伝子であるALP、ON、OP、OC、Runx2およびCollagen type1の6つのプライマー(表1)を用いて、常法に従ってPCRを行ない、アガロースゲル電気泳動を用いて、遺伝子発現を確認した。
36匹の生後84日齢メスSDラット(体重220〜230g、プラスチックゲージに入れ、食餌と飲料水は任意に与えた)を使用した。
これらの36匹のSDラットを、無作為に、卵巣摘出群(OVX;n=12)、偽手術群(SHAM;n=12)、さらに、OVXにBMSCsを移植した群(OVX−BMSCs;n=12)の3群に分類した。
卵巣摘出による骨粗鬆症の発症は、手術後84日で各群から2匹のラットを屠殺し、遠位大腿骨骨端と子宮角の病理組織標本によって評価した。標本は10%緩衝バッファー・ホルマリンで固定したのち、大腿骨は脱灰液(カルキトックス[登録商標]:Wako)で脱灰し、トリミングし、パラフィン包埋した。子宮角の切片と大腿骨の縦軸方向5μ厚の切片は、光学顕微鏡で評価するためヘマトキシリン−エオジン染色で染色した。
卵巣摘出および、偽手術の84日後における遠位大腿骨の骨量変化については、マイクロCT(Scan Xmate−A090S:コムスキャンテクノ)を電圧31kV、電流100μAの条件下で使用して、観察した。大腿骨の断層スライス幅は18.03μm、400枚の画像から再構成した(n=3)。
対照的にSHAM群では大腿骨の密度は高く、規則正しく配列していた。また、マイクロCT画像において、OVX群はSHAM群と比較し、著しい海綿骨の微小構造の劣化および骨量減少が観察された。SHAMにおいて、緊密に海綿骨領域に充実した骨組織が認められた。
このように、OVX群では、大腿骨遠位骨幹端および、子宮角の組織学的評価において、腺組織の萎縮や骨量の減少が認められ、骨粗鬆症を誘発したことが確認された。
このOVX群を、以下の細胞移植及びインプラント移植に供した。
全身麻酔下で遠位大腿皮膚を10mm切開し、骨を露出させた。その後、生理食塩水による持続的注水下で大腿骨遠位骨端から7mmの位置に、バイコルチカルに上皮質骨から海面骨、下皮質骨に向けてインプラント床を、歯科用バー(直径1mm、深さ1mm)で1500rpm以下の回転数で形成した。
OVX−BMSCs群では、生理食塩水中に1×105cell/mLで調整されたBMSCs懸濁液100μLを、インプラント窩より海綿骨に注入した。その後、超音波浴槽中で無水エタノール洗浄し、滅菌した全長5mm、スレッド径2mm、ピッチ1mmのスクリュー型チタンインプラント(ATSM F67、Grade2、西島メディカル株式会社)を、スレッドが完全に皮質骨内に隠れるように埋入し、軟組織を元の位置で縫合した。
以下に示すように、研磨標本の写真画像を用いて、インプラントスレッド内部における骨とインプラントが接触している表面全体の長さと、インプラント全体における骨とインプラントが接触している長さとの割合(接触率:BIC)および、スレッド内部の骨面積(ねじ溝に侵入した骨の面積)(BA)の割合を求めた。さらに、インプラント表面(ねじ最端部の外周)から側方へ500μmの幅にある石灰化基質の割合を骨密度(BD)とし、インプラント画像の左右双方に対してそれぞれの計算した(Image−Pro[登録商標]:Media Cybernetics)。データは皮質骨および海綿骨において計測し、骨密度は海綿骨においてのみ測定した。なお、インプラントスレッド(ネジ山)から、インプラントスレッドスレッド(ネジ山)までの凹部を、「スレッド内部」又は「インプラントスレッド内部」と称することがある。
1)組織形態学的結果
(a)インプラント埋入後28日(図1参照)
皮質骨の領域では、各群とも、インプラント表面の多くは新生骨と直接接触しており、スレッド内も多くの部分が骨組織で満たされていた。各群の間に明らかな違いはみられなかった。
SHAM群においてはスレッド内に新生骨の形成がみられ、インプラント表面では新生骨は網状の構造を呈していた。スレッド内では、SHAM群の骨はOVX群に比べやや多くみられた。一方、OVX群ではスレッド内の骨は他群に比べ薄くまばらで、インプラント表面に接触する骨も少なかった。OVX−BMSCsは、OVX群よりやや多くの骨形成が見られた。
スレッド外ではSHAM群に比べ、OVX群は骨形成される領域が明らかに少なかった。また、OVX−BMSCs群では、OVX群に比べ、スレッド外でも高率に骨形成が見られた。
皮質骨の領域では、各群ともインプラント表面の新生骨と直接接触している領域が28日に比べ多くなり、スレッド内を満たす骨組織の量も増加したが、各群の間に明らかな違いはみられなかった。
海綿骨の領域において、インプラント表面では接触している骨が各群で増加した。SHAM群とOVX−BMSCsでは大きな違いはみられなかった。SHAM群、OVX群、OVX−BMSCs群の各群においては28日に比べスレッド内の新生骨がより多くみられた。
OVX−BMSCs群では、骨梁様構造を呈し、網状構造を呈していた。一方、OVX群ではスレッド内の骨形成とインプラント表面での骨の接触は28日に比べ多くみられたが、SHAM群、OVX−BMSCs群に比べ、少なかった。スレッド外では、SHAM群に比べOVX群の骨形成がより多く見られた。
図2(A)に示されるように、SHAM群、OVX群及びOVX−BMSCs群の各群は、皮質骨において、インプラント埋入後28日では有意な差はみられなかった(P>0.05)。図3(A)に示されるように、インプラント埋入後56日では、各群ともBIC値は増加した(P<0.01)。
一方、海綿骨については、図2(B)に示されるように、インプラント埋入後28日では、SHAM群、OVX−BMSCs群の各群の間に有意差はみられなかったが(P>0.05)、OVX群はSHAM群、OVX−BMSCs群に比べ明らかに低値であった(P<0.01)。また、図3(B)に示されるようにインプラント埋入後56日では、各群とも数値は増加した(P<0.05)。一方、OVX群は、SHAM群、OVX−BMSCs群に比べ明らかに低値であった(P<0.01)
皮質骨においては、図4(A)及び図5(A)に示されるように、インプラント埋入後28日及び56日では、共に、各群に有意差はみられなかった(P<0.05)
海綿骨においては、図4(B)に示されるように、インプラント埋入後28日では、OVX群はSHAM群、OVX−BMSCs群に比べ明らかに低値であった(P<0.01)。図5(B)に示されるように、インプラント埋入後56日では、各群とも数値の増加がみられたが、SHAMとOVX−BMSCsに有意差はみられなかった(P<0.05)。
4)インプラント周囲の骨密度(BD)
図6に示されるように、インプラント埋入後28日では、OVX群は他群と比較して、低値を示したが(P<0.01)、 OVX群と比べてOVX−BMSCs群ではOVX群と比べて、有意に高値を示した(P<0.01)。
図7に示されるように、インプラント埋入後56日では、各群とも数値は増加した(P<0.05)。OVX−BMSCs群では、OVX群と比べてほぼ高値であった(P<0.05)。
Claims (7)
- 骨形成能を有する細胞と医薬として許容可能な担体とを含むインプラント定着補助剤。
- 前記骨形成能を有する細胞が、骨分化誘導された骨髄間質細胞である請求項1記載のインプラント定着補助剤。
- 海綿骨に対して適用される請求項1又は請求項2記載のインプラント定着補助剤。
- 前記骨分化誘導が、骨芽細胞への分化誘導である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のインプラント定着補助剤。
- 骨分化誘導剤を含む培地で骨髄間質細胞を培養すること、
培養後の骨髄間質細胞を、担体と混合すること、
を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のインプラント定着補助剤の製造方法。 - 前記骨分化誘導剤が、骨芽細胞への分化を誘導しうる請求項5記載の製造方法。
- 前記骨分化誘導剤が、アスコルビン酸、β−グリセロリン酸及びデキサメタゾンからなる群より選択された少なくとも1種である請求項5又は請求項6記載の製造方法。
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