JP4504747B2 - タワークレーンを用いた建物の施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タワークレーンを用いた建物の施工方法に関し、特に、鉄筋コンクリート造の高層建物を対象とした、フロアクライミング式タワークレーンを用いた施工方法に関する。
高層建物の施工には、クライミング式タワークレーンが用いられることが多い。クライミング式タワークレーンには、マストクライミング方式、すなわち、建物の外部に伸縮可能なマストを立て、建物の施工の進捗に応じてマストを伸ばし、マストに支持されたクレーン本体の高さを調整する方式と、フロアクライミング方式、すなわち、建物の内部に昇降可能なマストを立て、建物の施工の進捗に応じてマストを上昇させて、マストに支持されたクレーン本体の高さを調整する方式とがある。
このうち、マストクライミング方式は、(1)クレーンを建物の外部に設置するため、建物周辺にクレーン設置ヤードが必要となり、狭あいな建設現場には不適、(2)マストの伸長量の制約から、施工できる建物の高さに限界がある、(3)資材の吊り込みのために建物の外部から建物の内部までのクレーンリーチが必要となり、クレーンの大容量化につながる、等の理由から、有効に適用できない場合もある。マストクライミング型のタワークレーンを建物の内部に設置する工法も考えられるが、タワークレーン設置エリアの仮開口が長期間存在し、工程への影響が大きすぎる。これに対して、フロアクライミング方式はこのような問題が緩和されるため、施工条件によっては有効な工法である。
フロアクライミング方式のクライミング式タワークレーンでは、一般的に以下の手順で躯体の施工が行なわれる。
(1)タワークレーンのマストを所定の高さに支持させながら、クレーンの周辺躯体を構築する。
(2)タワークレーンを、上階の施工済みの梁に一時的に支持させる。
(3)タワークレーンがステップ(2)の梁で支持されている状態で、マストを上方に引き上げる。
(4)マストを上階の施工済みの梁(ステップ(2)の梁とは別の梁)に支持させる。
(5)タワークレーンを、ステップ(4)の梁で支持させながら、ステップ(2)の梁から解放する。その後、ステップ(1)以下の工程を繰り返す。
従来高層建物の主流であった鉄骨造(以下、S造という。)や鉄骨鉄筋コンクリート造(以下、SRC造という。)においては、タワークレーンを本設の鉄骨梁に支持させていた。一方、近年では、住宅用などの用途に鉄筋コンクリート造(以下、RC造という。)を用いた高層建築が脚光を浴びており、RC造の高層建築物を対象に、フロアクライミング式タワークレーンによる施工方法の改良が検討されている。
例えば、クレーンを施工済みの躯体の最上階(N階)よりも下層階(N−1階)に支持させた状態で、マストの下端部を下層階(N−2階)まで上昇させ、下層階(N−2階)の躯体に支持させる工法が開示されている(特許文献1参照。)。これによれば、コンクリート強度が発現した階でタワークレーンの荷重を支持できるので、RC造への適用が容易となる。
また、クレーンの受け架台を盛変え可能に設置し、コンクリート強度の発現した下層階に受け架台を設置してクレーンの支持および盛変えを行い、施工の進捗とともに受架台も上階へと順次盛変えていく工法が開示されている(特許文献2参照。)。これによれば、特許文献1と同様に、コンクリート強度が発現した階でタワークレーンの荷重を支持できるので、RC造への適用が容易となり、また、受け架台は再利用できるので、コスト面の影響も緩和できる。
特開2004−59321号公報 特開2004−99195号公報
しかしながら、従来技術においては以下のような問題があった。
まず、従来技術は、タワークレーンの支持に梁を用いているが、コンクリートは引張力を負担できないため、曲げによる引張力が生じる梁の下半分は鉄筋のみによって強度を負担しなければならず、コンクリートの強度が発現してもそれを有効に利用することができない。また、コンクリートは、せん断抵抗に対しても本来的に十分な抵抗力を有していないため、所定の強度を確保するためには、本設梁の断面を増やしたり、仮設鉄骨梁を設置したりといった対策が必要となる。このように、梁は、鉛直荷重の支持構造物として必ずしも理想的なものとはいえない。
また、RC造特有の問題として、コンクリートを現場打設した場合、コンクリート強度の発現に時間を要することが挙げられる(一般的には、4週間程度必要とされる場合が多い。)。このため、強度が発現するまで、タワークレーンのような大きな鉛直荷重を支持させることができず、たとえ下層階の強度の発現したコンクリートに支持させるとしても、工事の工程によっては強度の発現を待てず、タワークレーンの受梁用として、仮設鉄骨梁を設ける必要が生ずる。この結果、仮設鉄骨梁の追加コストや、設置・撤去に要する労務コストが発生し、工程に影響することも起こり得る。
仮設鉄骨を撤去しなければ撤去に伴うコストは不要となるが、仮設鉄骨の残置を考慮した設計が必要となり、以下のようなデメリットにつながる。(1)住宅用建物などの階高が小さい建物では、仮設鉄骨を避けた建築設備設計等が困難となる場合が生じる。(2)住宅用建物は、各階の仕様が共通している場合が多く、各階のディテール設計や、建築設備設計の共通化が図りやすいという特徴があるが、仮設鉄骨があることで共通化が阻害される。(3)近年柔構造を基本とした制震構造や免震構造が多く採用されており、剛性の高い仮設鉄骨を残すことは、構造上も不利である。また、梁をタワークレーンの支持に用いようとすると、梁の補強が必要となり、せっかくの合理的な設計が生かされない。このような点から、コンクリートの強度発現に要する時間が制約とならない工法が望まれている。
本発明は、以上の事情に基づき、特にRC造高層建物を対象に、梁をタワークレーンの支持部材として用いる必要のない、しかも、コンクリートの強度発現に要する時間が制約とならない、タワークレーンを用いた施工方法を提供することを目的とする。
本発明の、タワークレーンを用いた建物の施工方法は、タワークレーンが、マストの下端部で施工済みの躯体または仮設の構造物に支持され、施工の進捗に伴って、下端部が上昇することによって上方に盛変えられていく、鉄筋コンクリート造の建物の施工方法である。
本発明の施工方法は、タワークレーンを、マストの下端部で第1の高さに支持させながら、タワークレーンの設けられたクレーン設置区画の周辺躯体を構築し、かつ、クレーン設置区画を構成する柱を第1の高さより上方の第2の高さまで構築するステップと、タワークレーンを、マストの下端部とは異なる部位で、柱の頂部に、荷重伝達部材を介して支持させるステップと、マストの下端部を、第1の高さと第2の高さとの中間にある第3の高さまで引き上げるステップと、クレーン設置区画の、少なくとも第3の高さに、タワークレーンを支持可能な支持構造物を構築するステップと、タワークレーンを、マストの下端部で、第3の高さの支持構造物に支持させるステップとを有している。柱を構築するステップは、柱軸長方向の第1の端面から柱主筋が突出し、第2の端面に柱主筋を受け入れる柱継手部材が埋込まれ、第2の端面が平坦であるプレキャストコンクリート製の柱部材同士を、第2の端面を上面として、柱主筋を柱継手部材に挿入して接合することを含み、タワークレーンを支持させるステップは、上側に位置する柱部材の第2の端面上に荷重伝達部材を設置するステップを含んでいる。
このように構成された建物の施工方法においては、盛変え時に、タワークレーンを荷重伝達部材を介して柱に支持させることができる。このため、従来技術のように、タワークレーンを梁に支持させる必要がなく、本設梁の断面増加や仮設鉄骨梁による梁の強度確保が不要となる。柱はもともと自重等の鉛直荷重を支持するのに適し、十分な強度を有しているため、タワークレーンを支持させるための補強が不要であり、補強を行なうとしても梁の補強に比べると軽微なものですむ。
タワークレーンを支持させるステップは、タワークレーンを、一方の梁がクレーン設置区画を構成する2本の柱の頂部の間を渡り、他方の梁がクレーン設置区画を構成する別の2本の柱の頂部の間を一方の梁と交差しないように渡る、2本の梁からなる荷重伝達部材で支持させるステップを有するものであってもよい。
タワークレーンを支持させるステップは、タワークレーンに可動に備えられた荷重伝達部材を柱の頂部に設置する方法であってもよい。
以上説明したように、本発明のタワークレーンを用いた建物の施工方法によれば、鉛直荷重を支持するのに適した柱をタワークレーンの支持部材として用いるので、梁をタワークレーンの支持部材として用いる必要がない。このため、本設梁の補強、仮設鉄骨梁の設置に要するコストや、仮設鉄骨梁設置に伴う現場作業を抑え、ひいては工期への影響も緩和することができる。また、仮設鉄骨梁を設けた後にこれを撤去しない場合に生ずる可能性のある、設計への悪影響を回避することも可能となる。
以下、本発明の建物の施工方法を図面を用いて説明する。図1には、本発明に用いるタワークレーンとタワークレーンの盛変えに用いる荷重伝達部材の概略側方図を示す。タワークレーン1は、資材の揚重をおこなうクレーン本体2と、クレーン本体2を支持するマスト3とを有している。
クレーン本体2は、旋回部21と、旋回部21に固定されたブーム22と、マスト3の周囲に設けられたマスト昇降機構23とを有している。ブーム22は旋回部21を中心に回転し、これによって、タワークレーン1は、建設用の資材を、ブーム22に設けられたフック(図示せず)で、所定の位置で吊り上げ、所定の位置まで搬送することができる。マスト昇降機構23は、クレーン本体2をマスト3に支持させるとともに、たとえば油圧によって、クレーン本体2をマスト3に対して上下方向に相対運動させる。クレーン本体2は、さらに、タワークレーン1の盛変えの際にクレーン本体2の自重を一時的に荷重伝達部材41に伝達させる受材25を有している。
マスト3は、下端部31でクレーン本体2の自重および揚重荷重を支持する。下端部31には、マスト3を周辺の躯体に固定する固定装置(図示せず)が備えられている。マスト3は、本実施形態では全体が昇降するマスト長固定長方式としているが、マストが伸縮する方式でもかまわない。
図2には、図1のA部に示す荷重伝達部材周辺の詳細図を示す。また、図3には、図2の3−3方向からみた平面図を示す。荷重伝達部材41は、図3に示すように、互いに平行に延びる2本の梁(第1の梁41a、第2の梁41b)からなり、H型鋼、ボックス鋼などを用いることができる(図2,3ではH型鋼を示している。)。第1の梁41aおよび第2の梁41bは、建物の梁12には支持されず、施工中の柱11の頂面に支持されて、互いに隣接する柱11の間を延びている。固定部材42は、ボルト、ナット、座金等により適宜構成され、第1の梁41aおよび第2の梁41bを柱11に固定する。第1の梁41aおよび第2の梁41bは、クレーン本体2とは独立した部材であるが、クレーン本体2に可動に設けられた、クレーン本体2の一構成要素であってもよい。
クレーン本体2は、第1の梁41aおよび第2の梁41bの上部をこれらと直交する方向に延びる2本の受材25を有している。受材25は、荷重伝達部材41と異なり、クレーン本体2に固定されている。受材25も同様に、H型鋼、ボックス鋼などの梁を用いることができる(図2,3ではH型鋼を示している。)。受材25の各々は、第1の梁41aと第2の梁41bとの間を延び、両端部がこれらの上面に支持されている。受材25は、固定部材42と同様の固定手段である固定部材27で、荷重伝達部材41に固定される。この結果、荷重伝達部材41と受材25とは、中央部に開口のある2段積みの架構を構成し、マスト3がその開口の内側を通ることができる。
なお、受材25は、クレーン本体2と荷重伝達部材41とを連結するための部材であるので、クレーン本体2が荷重伝達部材41と直接連結可能であれば、省略してもよい。同様に、受材25を柱11に直接連結可能であれば、荷重伝達部材41は省略してもよい。この場合は受材25が荷重伝達部材としての機能を持つ。また、荷重伝達部材41および受材25は、クレーン本体2がマスト3によらずに躯体に支持される位置であれば、図示の位置に限定されない。
図4には、タワークレーンの設置場所の平面図の一例を示す。建物は、主柱・主梁の設置位置で画定される複数の通り芯(図中1点鎖線で示す。)によって、複数の平面的な区画に分割されている。タワークレーン1は、複数の区画のうち、建物外の荷取りヤードとの位置関係等を考慮して適切な区画に設置される。本明細書では、タワークレーン1が設置される区画をクレーン設置区画と呼ぶ。図4では2基のタワークレーンが用いられており、各々がクレーン設置区画13a、13bに設置されている(図中×印で示す。以下の説明では、クレーン設置区画13aで代表する。)。なお、クレーン設置区画13aは、後述するように、周囲の他の区画に比べて施工が遅れるため、床が未施工の縦方向空間が生ずる。本明細書では、この縦方向空間を仮開口14という。
次に、タワークレーン1を用いた建物の施工方法を、図5のフロー図および図6A〜6Gのステップ図を参照しながら説明する。なお、図6A〜6Gにおいて躯体の破線部分は未施工部、躯体の実線部分は施工済部を示す。
(ステップ51)まず、図6Aに示すように、タワークレーン1をクレーン設置区画13aの第1の高さEL1に設置する。第1の高さEL1は、建物を施工する最初の段階では建物の基礎レベルであるが、地上階その他のレベルであってもよい。マスト3の下端部31は第1の高さEL1にあり、マスト3がタワークレーン1の全重量および揚重荷重を支持している。この状態で、必要に応じてクレーン本体2を徐々に上昇させながら、周辺の躯体の施工をおこなう。図6Bは周辺躯体の施工が進んできたときの状況を示す。周辺躯体は第2の高さEL2の1層下の階まで施工が終了し、クレーン設置区画13aを構成する柱11は高さEL2まで、梁12は第2の高さEL2の1層下の階まで施工されている。このとき、クレーン設置区画13aの下部は仮開口14となっている。なお、第2の高さEL2と第1の高さEL1との間隔は、マスト3の長さその他の施工条件によって適宜定めればよく、図6Bの間隔に限定されるわけではない。
ここで、柱11の施工方法について説明する。図7は柱の構造を示す概略図であり、図8は柱の施工方法を示す概念図である。
柱11はプレキャストコンクリート(PCa)製の柱部材が高さ方向に順次接合されて施工される。図7(a)には、施工済みの柱部材と、その上方にこれから施工される柱部材の側方図を示す。また、図7(b)には、図7(a)のA方向、B方向から各々みた各柱部材の斜視図を示す。柱部材11a、11bは、いずれも柱軸長方向に第1の端面11eと第2の端面11fとを有している。第1の端面11eは略平坦な面をなし、外周に沿って柱主筋11cが突出している。第2の端面11fは略平坦な面をなし、外周に沿って柱継手部材11dが埋込まれている。柱継手部材11dは、柱部材11aと柱部材11bとが接合されたときに、柱主筋11cが挿入される位置に形成されている。
次に、図8によって、柱11の施工方法を説明する。なお、ここで用いる方法は、特許第3400364号明細書に示される工法に従ったものである(以下、逆差工法という場合がある。)。
まず、図8(a)に示すように、第2の端面11fを上面に向けて施工された柱部材11bの上方に、柱主筋11cと柱継手部材11dとが対向するように、柱部材11aを位置決めする。また、柱部材11a、11bに接合される梁部材12a、12bを、各々の梁主筋12c、12dが互いに対向するように、柱部材11a、11bの側方に位置決めする。なお、梁部材12a、12bと直交する方向にも同様に梁部材が設置されるが、図示は省略している。
次に、図8(b)に示すように、梁部材12a、12bを、側方から柱部材11bに隣接させ、梁主筋12c、12d同士を梁主筋継手12eで接合する。梁部材12a、12bと直交する方向の梁部材の梁主筋は、梁主筋12c、12dと異なるレベルに設けられているので、梁主筋12c、12dと干渉することなく、相互に隙間を通って接合される。
次に、図8(c)に示すように、柱部材11aの第1の端面11eが梁部材12a、12bの上端と略一致する位置まで、柱部材11aを上方から下ろす。柱主筋11cは、梁主筋12c、12dおよびこれと直交する梁主筋の間を通って下がるので、これらと干渉することなく、柱継手部材11dに挿入される。この結果、柱部材11a、11bと梁部材12a、12b(および、梁部材12a、12bと直交する梁部材)とに囲まれた接合空間15が形成される。そして、接合空間15にコンクリートやモルタル等を充填し、上下の柱部材11a、11b(および、梁部材12a、12bと、これらと直交する梁部材)を接合する。
(ステップ52)次に、図6Cに示すように、柱11の頂部に荷重伝達部材41を設置する。荷重伝達部材41は、前述のとおり第1の梁41aと第2の梁41bとを有し、各々がクレーン設置区画13aを構成する4本の柱11の隣り合う2本づつの間を渡って設置される。その後、固定部材42で荷重伝達部材41を柱11に固定する。このように、柱11の頂部に荷重伝達部材41を設置することができる理由は、(1)強度が既に発現しているPCa製の柱部材を用いており、柱の施工後直ちに荷重をかけられること、(2)上記の逆差工法を採用しているため、柱11の頂部に鉄筋が突出しておらず、平坦であるため、荷重伝達部材41の設置が容易であることである。
(ステップ53)次に、タワークレーン1を荷重伝達部材41に支持させる。具体的には、図6Dに示すように、クレーン本体2を若干下降させ、クレーン本体2に固定された受材25を荷重伝達部材41に連結する。受材25は、固定部材27(図2参照。)によって荷重伝達部材41に固定される。これによってクレーン本体2の自重を、受材25および荷重伝達部材41を介して、柱11に伝えることが可能となる。なお、前述したとおり、荷重伝達部材41を省略する場合は、受材25の各々がクレーン設置区画13aを構成する4本の柱11の隣り合う2本づつの間を渡って、柱11に直接設置され、荷重伝達部材41と同様の構成を有する荷重伝達部材として機能する。
(ステップ54)次に、図6Eに示すように、マスト3を上昇させて、マスト3の下端部31を第1の高さEL1と第2の高さEL2の中間の第3の高さEL3まで引き上げる。この結果、クレーン設置区画13aの仮開口14は、第3の高さEL3より下方には、マスト3が存在しない状態となる。なお、第3の高さEL3は、図示した高さに限定されないが、タワークレーン1の盛変え回数を減らすためには第2の高さEL2に近い方が有利である。
(ステップ55)次に、仮開口14の少なくとも第3の高さEL3に、支持構造物16を構築する。支持構造物16は、図6Fに示すように、本設の床でもよいが、第3の高さEL3でタワークレーン1の自重および揚重荷重を支持することができれば、仮設構造物でもよく、それらの組合せでもよく、また支柱等を併用してもよい。なお、図6Fでは仮開口14の第3の高さEL3より下方のすべての階に床を設置しているが、必ずしもその必要はない。
(ステップ56)最後に、同じく図6Fに示すように、タワークレーン1を、マスト3の下端部31で、第3の高さEL3に構築された支持構造物16に支持させる。この結果、タワークレーン1は第3の高さEL3に支持され、図6Gに示すように、荷重伝達部材41と受材25は解放可能となる。図6Gに示した状態は、タワークレーン1の設置位置が第1の高さEL1から第3の高さEL3に引き上げられた点を除くと、図6Aと同じである。この後、必要に応じてステップ51〜56を繰り返すことによって、第2の高さEL2より上階の施工をおこなう。
本発明の施工方法の効果は以下の通りである。
(1)本施工方法では、柱の頂部でタワークレーンの荷重を支持しながら、タワークレーンの盛変えが可能である。柱は、建物の自重を支持するのに適し、特に高層建物においては支持する自重も大きいので強度の余裕もあり、特別の補強を必要としないですむ場合が多い。また、制震構造や免震構造のように構造の簡素化が可能な建物においても、柱の断面はそれほど小さくならないため、これらの建物への適合性も良好である。この結果、仮設鉄骨梁や、本設梁の補強等のコスト増加を抑えることが可能となる。
(2)補強用の仮設鉄骨梁が不要となることから、仮設鉄骨梁の取り付け、撤去の手間が不要となる。この結果、現場作業量が削減し、労務費や工期への影響を抑えることができる。また、仮設鉄骨梁の残置を考慮した設計が不要となり、設計の標準化の範囲が広がる。
以上、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下に他のいくつかの実施形態及び参考形態を述べる。
まず、柱の施工方法として、上記実施形態では逆差工法を前提としたが、柱主筋11cが上面に突出する場合の施工方法を参考形態として述べる。この場合には、図9(a)に示すように、柱主筋11cが上側に突出することになるが、図9(b)の柱部材の斜視図に示すように、柱主筋は通常、柱部材11aの外周部に設けられるので、内側は平坦である。そこで、その内側の平坦部に上面の平らな補助ステージ17を配置すれば、第1の梁41aおよび第2の梁41b(第2の梁41bは図示せず)を設置することができる。補助ステージ17は鋼製、PCa製のブロックなど、圧縮荷重を受けることのできる構造であれば特に制約はない。
また、PCa製の柱が必要となるのはクレーン設置区画を構成する柱だけであることから、それ以外の一般区画では、現場打設による通常のRC柱を用いることができる。
また、本発明の施工方法はRC造を対象とするものであるが、柱の強度を早期に確保できる構造であれば他の構造形式にも適用できる。例えば、SRC構造において、柱の鉄骨部材の先行建方をおこない、施工中の鉄骨柱の頭部を利用してタワークレーンを支持することも可能である。
また、クレーン設置区画の小さな建物においては、2以上の区画を仮開口としてタワークレーンを設置してもよく、これによってタワークレーンの設置スペースの確保が容易となる。さらに、柱強度が十分でない場合に2以上の区画を仮開口とすれば、各々の荷重伝達部材を3以上の柱に支持させることが可能となり、柱の強度確保が容易となる。
また、荷重伝達部材41を、第1の梁41aおよび第2の梁41bで構成する代わりに、アウトリガー等の可動式部材をタワークレーンに備え、クレーン設置区画の大きさに応じて伸縮させるようにしてもよい。これによれば、建物毎に荷重伝達部材41を交換したり調整する必要がないので、現場作業の削減が可能となる。
本発明の建物の施工方法に係るタワークレーンと荷重伝達部材の概略側方図である。 図1に示すタワークレーンおよび荷重伝達部材の、荷重伝達部材周辺の詳細図である。 図1に示すタワークレーンおよび荷重伝達部材の、図2の3−3線に沿った平面図である。 本発明の建物の施工方法における、タワークレーンの平面的な配置を示す説明図である。 本発明の建物の施工方法を説明するフロー図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法を説明するステップ図である。 本発明の建物の施工方法における柱の概略構造図である。 本発明の建物の施工方法における柱の施工方法を説明する説明図である。 本発明の建物の施工方法の他の実施形態の説明図である。
符号の説明
1 タワークレーン
2 クレーン本体
21 旋回部
22 ブーム
23 マスト昇降機構
25 受材
27 固定部材
3 マスト
31 下端部
11 柱
11a、11b 柱部材
11c、11d 柱主筋
11e 第1の端面
11f 第2の端面
12 梁
12a、12b 梁部材
12c、12d 梁主筋
12e 梁主筋継手
13a、13b クレーン設置区画
14 仮開口
15 接合空間
16 支持構造物
17 補助ステージ
41 荷重伝達部材
41a 第1の梁
41b 第2の梁
42 固定部材

Claims (3)

  1. タワークレーンが、マストの下端部で施工済みの躯体または仮設の構造物に支持され、施工の進捗に伴って、該下端部が上昇することによって上方に盛変えられていく、タワークレーンを用いた鉄筋コンクリート造の建物の施工方法であって、
    前記タワークレーンを、前記マストの前記下端部で第1の高さに支持させながら、前記タワークレーンの設けられたクレーン設置区画の周辺躯体を構築し、かつ、該クレーン設置区画を構成する柱を前記第1の高さより上方の第2の高さまで構築するステップと、
    前記タワークレーンを、前記マストの前記下端部とは異なる部位で、前記柱の頂部に、荷重伝達部材を介して支持させるステップと、
    前記マストの前記下端部を、前記第1の高さと前記第2の高さとの中間にある第3の高さまで引き上げるステップと、
    前記クレーン設置区画の、少なくとも前記第3の高さに、前記タワークレーンを支持可能な支持構造物を構築するステップと、
    前記タワークレーンを、前記マストの前記下端部で、前記第3の高さの前記支持構造物に支持させるステップと
    を有し、
    前記柱を構築するステップは、柱軸長方向の第1の端面から柱主筋が突出し、第2の端面に該柱主筋を受け入れる柱継手部材が埋込まれ、該第2の端面が平坦であるプレキャストコンクリート製の柱部材同士を、前記第2の端面を上面として、前記柱主筋を前記柱継手部材に挿入して接合することを含み、
    前記タワークレーンを支持させるステップは、上側に位置する前記柱部材の前記第2の端面上に前記荷重伝達部材を設置するステップを含む、建物の施工方法。
  2. 前記タワークレーンを支持させるステップは、
    該タワークレーンを、一方の梁が前記クレーン設置区画を構成する2本の前記柱の前記頂部の間を渡り、他方の梁が前記クレーン設置区画を構成する別の2本の前記柱の前記頂部の間を前記一方の梁と交差しないように渡る、2本の梁からなる前記荷重伝達部材で支持させるステップを有する、請求項1に記載の建物の施工方法。
  3. 前記タワークレーンを支持させるステップは、前記タワークレーンに可動に備えられた前記荷重伝達部材を前記柱の頂部に設置するステップを有する、請求項1または2に記載の建物の施工方法。
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