JP4503175B2 - モラクセラ・カタラーリス(Moraxellacatarrhalis)由来の化合物 - Google Patents

モラクセラ・カタラーリス(Moraxellacatarrhalis)由来の化合物 Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、ポリヌクレオチド(本明細書中で「BASB020ポリヌクレオチド」と呼ぶ)、それによりコードされるポリペプチド(本明細書中で「BASB020」または「BASB020ポリペプチド」と呼ぶ)、組換え物質およびその生産方法に関する。別の態様において、本発明は、細菌感染に対するワクチンを含む、前記ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法に関する。更なる態様では、本発明は特定の病原体の感染を検出するための診断アッセイに関する。
【0002】
発明の背景
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis; M.catarrhalis)(カタル球菌(Branhamella catarrhalis)とも称される)はヒト上気道から頻繁に単離されるグラム陰性細菌である。この細菌は、乳児および小児における中耳炎、ならびに高齢者における肺炎を主なものとするいくつかの病状の原因である。それはまた、副鼻腔炎、院内感染、およびまれな侵襲性疾患の原因でもある。
【0003】
中耳炎は、症例数の点でもその可能性のある後遺症の点でも重要な小児期の疾患である。米国においては毎年350万以上の症例が記録され、小児の80%が、3歳になる前に少なくとも1度は耳炎を起こした経験があると推定されている(Klein. JO(1994) Clin. Inf. Dis 19:823)。処置せずに放置したり慢性化したりすると、この疾患は一過性(中耳内に体液が蓄積する場合)または永久的(聴覚神経が損傷を受ける場合)であり得る聴覚障害を起こす可能性がある。乳児においては、このような聴覚障害は言語学習遅延の原因にもなり得る。
【0004】
中耳炎を患っている小児の中耳からは、主として3種の細菌が単離される。ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae; S.pneumoniae)、分類不能型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(NTHi)、およびM.カタラーリスである。これらは症例の60〜90%に存在している。最近の研究の概説では、中耳炎の症例の内、S.ニューモニエとNTHiがどちらも約30%、M.カタラーリスが約15%であることが示されている(Murphy, TF (1996) Microbiol. Rev. 60:267)。その他の細菌も中耳から単離されることがあるが(インフルエンザ菌B型、S.ピオゲネス(S. pyogenes)等)、頻度はずっと低い(症例の2%以下)。
【0005】
中耳にみられる病原菌についての疫学的データは、上気道でのコロニー形成が耳炎の発症に対する絶対的必要条件であることを示す。しかしながら、疾患が引き起こされるには、その他の事象も必要になる(Dickinson, DPら (1988) J. Infect. Dis. 158:205、Faden, HLら (1991) Ann. Otorhinol. Laryngol. 100:612)。それらは、エウスタキオ管を経た中耳への細菌の移動を誘発し、続いて炎症性経過を開始させるために、とても重大である。それら要因は今日まで分かっていない。ウイルス感染後の免疫系の一時的な異常が、例えば気道のコロニー形成に対する抑制不能を引き起こす可能性が仮定されている(Faden, HLら (1994) J. Infect. Dis. 169:1312)。別の説明は、環境因子への曝露によって、一部の小児でより重大なコロニー形成が引き起こされるというものである。というのも、中耳の病原菌が継続的に存在しているため、そのような小児はそれに引き続いて中耳炎を起こしやすくなるのである(Murphy, TF (1996) Microbiol. Rev. 60:267)。
【0006】
M.カタラーリスに対する免疫応答は十分に特徴付けられていない。幼児の鼻咽頭から、0〜2歳まで追跡して経時的に単離した株の分析によって、幼児がしばしば新しい株を獲得しまた排除していることが示される。このことは、この細菌に対する有効な免疫応答が、コロニー形成された小児によって備えられることを示している(Faden, HLら (1994) J. Infect. Dis. 169:1312)。
【0007】
調べた大部分の成人で、殺菌性抗体が確認されている(Chapman, AJら (1985) J. Infect. Dis. 151:878)。M.カタラーリスの株には、血清の殺菌活性に対する耐性能力にばらつきが存在する。一般に、罹患個体からの単離株は、単にコロニー形成した個体由来のものを上回る耐性がある(Hol, Cら (1993) Lancet 341:1281, Jordan, KLら (1990) Am. J. Med. 88 (増補5A):28S)。従って血清耐性は、細菌のビルレンスの1つとして考えることができる。オプソニン化活性が中耳炎から回復しつつある小児の血清中に見出される。
【0008】
ヒトにおけるこれらの様々な免疫応答により標的とされるその抗原は、OMP B1、UspA1およびUspA2(Chen D.ら (1999), Infect. Immun. 67:1310)を除いては同定されていない。このOMP B1は、発現が鉄により調節される84kDaのタンパク質であり、肺炎を患っている患者の血清により認められる(Sethi. S.ら (1995) infect. Immun. 63:1516)。
【0009】
M.カタラーリスの表面上に存在するその他の2〜3の膜タンパク質が、生化学的手法を用いて、または防御免疫の誘導における潜在的関連性に対して、特徴付けられている(概説としては、Murphy, TF (1996) Microbiol. Rev. 60:267を参照のこと)。マウス肺炎モデルにおいて、それらのうちの一部(UspA、CopB)に対して産生された抗体の存在が、肺感染のより速い浄化に有利にはたらく。別のポリペプチド(OMP CD)はM.カタラーリス株間で高度に保存され、また緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のポーリンとの相同性を示し、動物モデルで本細菌に対する有効性が示されている。
【0010】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の感染頻度は過去数十年の間に劇的に上昇している。これは、複数の抗生物質に耐性な株の出現および免疫系が弱められた人口数の増大を原因とする。幾つかのまたは全ての標準的な抗生物質に耐性であるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株が単離されることは、もはや珍しいことではない。この現象は、新たな抗菌剤、ワクチン、薬剤のスクリーニング法、およびこれらの生物用の診断試験に対する、今までに経験したことの無い医薬の要求および需要を生み出した。
【0011】
発明の概要
本発明は、BASB020、特にBASB020ポリペプチドおよびBASB020ポリヌクレオチド、組換え物質およびその生産方法に関する。別の態様において、本発明は、特に微生物性疾患の予防および治療を含む、前記ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法に関する。更なる態様では、本発明は、微生物感染に関連する疾患およびかかる感染に関連する症状を検出するための診断アッセイ、例えば、BASB020ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの発現または活性を検出するためのアッセイに関する。
【0012】
開示された発明の精神および範囲内での種々の変更および修飾は、後述の説明を読むことにより、また本開示内容の他の部分を読むことにより、当業者には容易に明らかとなろう。
【0013】
発明の説明
本発明は、以下により詳細に記載するように、BASB020ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関する。特に、本発明は、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のBASB020ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関し、該ポリペプチドはセルプリナ・ヒオジセンテリアエ(Serpulina hyodysenteriae)のTlyC溶血素タンパク質とそのアミノ酸配列相同性により関連付けられる。本発明は特に、それぞれ配列番号1,3,5,または7および配列番号2,4,6,または8に示す、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するBASB020に関する。後述の配列表に「DNA」として列挙した配列は、当業者であればかかる配列を一般にリボポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドに有効に使用し得ることが理解されることから、本発明の1実施形態の例示にすぎないことが理解されよう。
【0014】
ポリペプチド
本発明の1態様において、本明細書中で「BASB020」および「BASB020ポリペプチド」と呼ぶモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のポリペプチド、そして生物学上、診断上、予防上、臨床上または治療上有用なその変異体、ならびにそれらを含む組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明は、
(a) 配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかまたは完全に同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離されたポリペプチド、
(b) 配列番号1,3,5,または7のポリヌクレオチド配列に対して、それぞれその配列番号1,3,5,または7の全長にわたって少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかまたは完全に同一であるポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、
(c) 配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかまたは完全に同一であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、
を提供する。
【0016】
配列番号2,4,6,または8に示すBASB020ポリペプチドは、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のMC2931株(ATCC 43617)、MC2912株、MC2913株、およびMC2969株から得たBASB020ポリペプチドである。
【0017】
また本発明は、BASB020ポリペプチドの免疫原性断片、すなわち配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列を含むBASB020ポリペプチドと同一または実質的に同一の免疫原活性を有する該ポリペプチドの連続した部分、を提供する。すなわち、前記断片(必要であれば、担体に結合されている)は、BASB020ポリペプチドを認識する免疫応答を引き出すことができる。こうした免疫原性断片には、例えば、N末端のリーダー配列、および/または膜貫通ドメインおよび/またはC末端のアンカードメインを欠くBASB020ポリペプチドが含まれる。好ましい態様において、本発明のBASB020の免疫原性断片は、配列番号2の全長にわたる配列番号2,4,6,または8のポリペプチド配列に対して少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するポリペプチドの実質的に全ての細胞外ドメインを含む。
【0018】
断片は、本発明の任意のポリペプチドの任意のアミノ酸配列と部分的には完全に同一であるが全てが同一ではないアミノ酸配列を有するポリペプチドである。BASB020ポリペプチドに関して言えば、断片は「フリースタンディング」であっても、または該断片がその部分または領域を形成するより大きなポリペプチド中に、最も好ましくは単一のより大きなポリペプチド中の単一の連続した領域として含まれていてもよい。
【0019】
好ましい断片は、例えば、配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列またはその変異体の部分(例えば、アミノ末端および/もしくはカルボキシ末端アミノ酸配列を含む連続した一連の残基)を有するトランケーションポリペプチドを含む。宿主細胞により、または宿主細胞内で生産される本発明のポリペプチドの分解形態も好ましい。さらに好ましいのは、αヘリックスおよびαヘリックス形成領域、βシートおよびβシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、フレキシブル領域、表面形成領域、基質結合領域、および高抗原性指数(high antigenic index)領域を含む断片などの、構造的および機能的特性により特徴付けられる断片である。
【0020】
さらに好ましい断片には、配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列に由来する少なくとも15、20、30、40、50もしくは100個の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列から末端切断された(truncated)もしくは欠失した少なくとも15、20、30、40、50もしくは100個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、を含む。
【0021】
本発明のポリペプチドの断片を使用して、ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを生産することができる。従って、これらの断片を中間体として使用して、本発明の全長ポリペプチドを生産することができる。
【0022】
特に、数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加されている変異体が好ましい。
【0023】
本発明のポリペプチドまたは免疫原性断片は「成熟」タンパク質の形であっても、前駆体または融合タンパク質等のより大きいタンパク質の一部であってもよい。しばしば、追加のアミノ酸配列を含めることが有利であり、このようなアミノ酸配列には、分泌またはリーダー配列、プロ配列、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、または組換え体生産の間の安定性を確保する付加的配列が含有される。さらに、外来ポリペプチドまたは脂質テイル(lipid tail)またはポリヌクレオチド配列の追加により最終的な分子の免疫原としての可能性を高めることも考慮される。
【0024】
1つの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその断片と、各種サブクラス(IgG、IgM、IgA、IgE)の免疫グロブリンのH鎖またはL鎖の定常領域の様々な部分と、を含んでなる遺伝子工学的に作製された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとしてはヒトIgG、特にIgG1のH鎖の定常部が好ましく、その場合は融合がヒンジ領域で起こる。特定例では、血液凝固因子Xaで開裂され得る開裂配列を組み込むことで、Fc部分を簡単に除去できる。
【0025】
さらに、本発明は、これら融合タンパク質の遺伝子工学的作製方法、ならびに薬物スクリーニング、診断および治療におけるそれらの使用に関する。また、本発明の更なる態様はこのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。融合タンパク質技術の例は国際特許出願 WO94/29458 およびWO94/22914に見いだせる。
【0026】
前記タンパク質を化学的に結合するかまたは組換え融合タンパク質として発現させることにより、発現系において該タンパク質が非融合タンパク質に比べて増大されたレベルで産生される。融合パートナーはTへルパーエピトープ、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープの提供を助ける(免疫学的融合パートナー)か、または前記タンパク質の、元の組換えタンパク質より高い産生量での発現を助ける(発現エンハンサー)ことができる。好ましくは、前記融合パートナーは免疫学的融合パートナーおよび発現エンハンサーパートナーの両方である。
【0027】
融合パートナーには、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)由来のプロテインDおよびインフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質NS1(赤血球凝集素)が含まれる。別の融合パートナーはLytAとして知られるタンパク質である。好ましくは、該分子のC末端部分を使用する。LytAは、N-アセチル-L-アラニンアミダーゼであるアミダーゼLytA(lytA遺伝子によりコードされる[Gene. 43(1986) page 265-272])、すなわちペプチドグリカン骨格内の特定の結合を特異的に分解する自己分解酵素を合成するストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)から得られる。前記LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン、またはDEAE等の数種のコリン類似体に対する親和性に関与している。この性質を融合タンパク質の発現に有用な大腸菌(E.coli)C-LytA発現プラスミドの開発に利用した。そのアミノ末端に前記C-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製については、Biotechnology:10. (1992) page 795-798に記載されている。前記LytA分子のC末端に見出され、残基178から始まる反復部分(例えば残基188〜305)を使用することができる。
【0028】
また、前記ポリペプチドの変異体、すなわち保存的アミノ酸置換(ある残基が性質の似ている他の残基により置換される)により基準ポリペプチドと相違しているポリペプチドも本発明に含まれる。典型的なこうした置換は、Ala, Val, Leu および Ileの間;Ser とThr の間;酸性残基 AspとGlu の間;Asn とGln の間;塩基性残基 LysとArg の間;または芳香族残基 PheとTyr の間で起こる。
【0029】
本発明のポリペプチドは任意の適当な方法で生産することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然のポリペプチド、組換え的に生産されたポリペプチド、合成的に生産されたポリペプチド、またはこれらの方法の組合せにより生産されたポリペプチドが含まれる。こうしたポリペプチドを生産するための手段は当技術分野でよく理解されている。
【0030】
本発明のポリペプチドはモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)由来であることが最も好ましいが、好ましくは同じ分類学上の属に含まれるその他の生物から得ることができる。また、本発明のポリペプチドは、例えば同じ分類学上の科または綱の生物から得ることもできる。
【0031】
ポリヌクレオチド
本発明の目的は、BASB020ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に本明細書中でBASB020と呼ぶポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,または7に示した配列を含むBASB020ポリペプチドをコードする領域を含み、これには全長遺伝子またはその変異体が含まれる。
【0033】
配列番号1,3,5,または7で示されるBASB020ポリヌクレオチドは、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のMC2931株(ATCC 43617)、MC2912株、MC2913株、およびMC2969株に由来するBASB020ポリヌクレオチドである。
【0034】
本発明の更なる態様では、BASB020ポリペプチドおよびポリヌクレオチド、特にモラクセラ・カタラーリスのBASB020ポリペプチドおよびポリヌクレオチドをコードする、ならびに/または発現する単離された核酸分子が提供され、これには例えば、プロセシングされていないRNA、リボザイムRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、B−およびZ−DNAが含まれる。本発明の更なる実施形態には、生物学上、診断上、予防上、臨床上または治療上有用なポリヌクレオチドおよびポリペプチド、およびその変異体、ならびにそれらを含む組成物が含まれる。
【0035】
本発明の別の態様は、配列番号2,4,6,または8の推定アミノ酸配列を有するBASB020ポリペプチドをコードする、少なくとも1つの全長遺伝子を含む単離されたポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドと密接に関連するポリヌクレオチドならびにその変異体に関する。
【0036】
本発明の別の特に好ましい実施形態としては、配列番号2,4,6,もしくは8のアミノ酸配列を含むかまたは該配列からなるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)由来のBASB020ポリペプチド、またはその変異体がある。
【0037】
本明細書中で提供される情報を用いると、配列番号1,3,5,または7に示すポリヌクレオチド配列等の、BASB020ポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドは、標準的なクローニング法およびスクリーニング法、例えばモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)カトリン(Catlin)細胞を出発物質として用いて細菌から染色体DNA断片をクローニングおよび配列決定し、次いで全長クローンを得る方法等により得ることができる。例えば、配列番号1,3,5,または7に示すポリヌクレオチド配列等の本発明のポリヌクレオチド配列を得るためには、典型的には大腸菌またはある他の適当な宿主内のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)カトリンの染色体DNAクローンのライブラリーを、放射性標識したオリゴヌクレオチド、好ましくは部分配列由来の17マー以上の長さのものでプローブする。その後、該プローブのDNAと同一のDNAを担持するクローンを、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いて識別することができる。従って、ハイブリダイゼーションにより同定された個々のクローンを、元のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列から設計した配列決定用プライマーを用いて配列決定することにより、その後ポリヌクレオチド配列を両方向に伸長して全長遺伝子配列を決定することが可能である。そうした配列決定は、例えばプラスミドクローンから調製した変性二本鎖DNAを用いて都合よく実施する。適当な技術はManiatis,T., Fritsch,E.F.およびSambrookら、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL,第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1989)に記載されている(特にScreening By Hybridization 1.90 およびSequencing Denatured Double-Stranded DNA Templates 13.70を参照されたい)。また、直接ゲノムDNA配列決定を行って全長遺伝子配列を得ることもできる。本発明の具体例である配列番号1,3,5,または7に示した各ポリヌクレオチドは、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)由来のDNAライブラリー中に見出された。
【0038】
さらに、配列番号1,3,5,または7に示す各DNA配列は、当業者に周知のアミノ酸残基の分子量値を用いて算出しうる推定分子量を有する、配列番号2,4,6,または8に示すおおよその数のアミノ酸残基を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有する。
【0039】
配列番号1のポリヌクレオチド(配列番号1のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号841で始まる終結コドンとの間)は、配列番号2のポリペプチドをコードする。配列番号3のポリヌクレオチド(配列番号3のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号841で始まる終結コドンとの間)は、配列番号4のポリペプチドをコードする。
【0040】
配列番号5のポリヌクレオチド(配列番号5のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号841で始まる終結コドンとの間)は、配列番号6のポリペプチドをコードする。配列番号7のポリヌクレオチド(配列番号7のヌクレオチド番号1の開始コドンとヌクレオチド番号841で始まる終結コドンとの間)は、配列番号8のポリペプチドをコードする。
【0041】
更なる態様において、本発明は、下記(a)または(b)のポリヌクレオチド配列を含む、または下記(a)または(b)のポリヌクレオチド配列からなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する;
(a) 配列番号1,3,5,または7のポリヌクレオチド配列に対して、それぞれその配列番号1,3,5,または7の全長にわたって少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性を有するかもしくは完全に同一であるポリヌクレオチド配列、または
(b) 配列番号2,4,6,または8のアミノ酸配列に対して、それぞれその配列番号2,4,6,または8の全長にわたって少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97〜99%の同一性もしくは100%きっかりの同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。
【0042】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)以外の種に由来する相同体およびオーソログ体を含む本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1,3,5,または7の配列もしくはその断片からなるもしくはそれらを含む標識されたプローブまたは検出可能なプローブを用いて、ストリンジェントな条件下で(例えば、45〜65℃の範囲の温度および0.1〜1%のSDS濃度を用いて)適当なライブラリーをスクリーニングし、該ポリヌクレオチド配列を含む全長遺伝子および/またはゲノムクローンを単離する各工程を含んでなる方法により得られる。
【0043】
本発明は、配列番号1,3,5,または7中のコード配列(オープンリーディングフレーム)に対して、その全長にわたり同一であるポリヌクレオチド配列を提供する。また、本発明により、成熟ポリペプチドもしくはその断片のコード配列単独、ならびに別のコード配列(例えば、リーダーまたは分泌配列、プレ−またはプロ−またはプレプロ−タンパク質配列をコードする配列)をそのリーディングフレーム内に有する成熟ポリペプチドもしくはその断片のコード配列が提供される。また、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、限定するものではないが、少なくとも1つの5'および3'非コード配列、例えば、転写されるが翻訳されない配列、終結シグナル(例えば、rho依存性およびrho非依存性終結シグナル)、リボソーム結合部位、Kozak配列、mRNA安定化配列、イントロン、ならびにポリアデニル化シグナル、を含む少なくとも1つの非コード領域を含有していてもよい。また、このポリヌクレオチド配列は、追加のアミノ酸をコードする追加のコード配列を含んでいてもよい。例えば、融合ポリペプチドの精製を容易にするマーカー配列がコードされ得る。本発明の特定の実施形態では、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen, Inc.)により提供されかつ Gentzら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824(1989)に記載されるような、ヘキサ−ヒスチジンペプチド、またはHAペプチドタグ(Wilsonら、Cell 37:767(1984))であり、いずれもそれらに融合させたポリペプチド配列を精製する際に有用でありうる。また、本発明のポリヌクレオチドは、限定するものではないが、構造遺伝子および該遺伝子がその自然状態において関連する遺伝子発現制御配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0044】
配列番号2,4,6,または8のBASB020ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1,3,5,または7のそれぞれのヌクレオチド番号1〜840中に含まれるポリペプチドコード配列と同一であってもよい。あるいは、遺伝子コードの重複性(縮重)のため、やはり配列番号2,4,6,または8のポリペプチドをコードする配列であってもよい。
【0045】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、本発明のポリペプチド、特に細菌のポリペプチド、より特定的には配列番号2,4,6,または8に示すアミノ酸配列を有するモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリペプチド、をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。また、この用語は、前記ポリペプチドをコードする単一の連続領域または不連続領域(例えば、組み込まれたファージ、組み込まれた挿入配列、組み込まれたベクター配列、組み込まれたトランスポゾン配列により、またはRNAエディティングもしくはゲノムDNA再構成により分断されたポリヌクレオチド)を、やはりコード配列および/または非コード配列を含有しうる追加の領域と共に含むポリヌクレオチドを包含する。
【0046】
本発明はさらに、配列番号2,4,6,または8の推定アミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体をコードする、本明細書中に記載されたポリヌクレオチドの変異体に関する。本発明のポリヌクレオチドの断片を使用して、例えば、本発明の全長ポリヌクレオチドを合成することができる。
【0047】
更にとりわけ好ましい実施形態としては、配列番号2,4,6,または8のBASB020ポリペプチドのアミノ酸配列を有するBASB020変異体をコードするポリヌクレオチドであって、数個、2〜3個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、2個、1個、または0個のアミノ酸残基が任意の組合せで置換、修飾、欠失および/または付加されているポリヌクレオチドがある。これらのうち特に好ましいのは、BASB020ポリペプチドの特性および活性を変更しないサイレント置換、付加および欠失である。
【0048】
本発明の更に好ましい実施形態としては、配列番号2,4,6,または8に示すアミノ酸配列を有するBASB020ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、その全長にわたり、少なくとも85%の同一性を有するポリヌクレオチド、ならびにかかるポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドがある。あるいは、BASB020ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびそれに対する相補的ポリヌクレオチドに対して、その全長にわたり、少なくとも90%の同一性を有する領域を含んでなるポリヌクレオチドが、最高に好ましい。これに関して、上記同様に、その全長にわたり、少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドが特に好ましい。更に、少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドのうち少なくとも97%の同一性を有するものが一層好ましく、これらのうち少なくとも98%および少なくとも99%の同一性を有するものが特に一層好ましく、少なくとも99%の同一性を有するものが最も好ましいものである。
【0049】
好ましい実施形態としては、配列番号1,3,5,または7のDNAによりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能または活性を保持しているポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドがある。
【0050】
本発明の特定の好ましい実施形態に従って、特にストリンジェントな条件下で、配列番号1,3,5,または7のポリヌクレオチド等のBASB020ポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドが提供される。
【0051】
更に、本発明は、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。これに関して、本発明は特に、ストリンジェントな条件下で本明細書中に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本明細書中で使用する場合、用語「ストリンジェントな条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、配列間に少なくとも95%の同一性、および好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合にのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の特定の具体例は、50% ホルムアミド、5×SSC (150mM NaCl, 15mM クエン酸三ナトリウム) 、50mMリン酸ナトリウム (pH7.6)、5×Denhardt溶液、10% デキストラン硫酸および20μg/mlの変性し剪断したサケ精子DNAを含有する溶液中42℃で一夜インキュベートし、次いでハイブリダイゼーション支持体を 0.1×SSC 中約65℃で洗浄することである。ハイブリダイーゼションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor, N.Y.,(1989)中、特に第11章に例示されている。また、溶液ハイブリダイゼーションを、本発明により提供されるポリヌクレオチド配列と共に使用することができる。
【0052】
また、本発明は、配列番号1,3,5,または7に示すポリヌクレオチド配列またはその断片の配列を有するプローブを用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で完全な前記遺伝子を含有する適当なライブラリーを配列番号1,3,5,または7に示すポリヌクレオチド配列についてスクリーニングし、前記ポリヌクレオチド配列を単離することにより得られるポリヌクレオチド配列からなる、または該ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。かかるポリヌクレオチドを得るために有用な断片には、例えば、本明細書中の他の箇所において十分に記載したプローブおよびプライマーが含まれる。
【0053】
本発明のポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中の他の箇所において論じたように、例えば、本発明のポリヌクレオチドをRNA、cDNAおよびゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして使用して、BASB020をコードする完全長cDNAおよびゲノムクローンを単離したり、BASB020遺伝子に対して高い同一性、特に高い配列同一性を有する別の遺伝子のcDNAおよびゲノムクローンを単離することができる。このようなプローブはたいてい少なくとも15個のヌクレオチド残基または塩基対を含む。好ましくは、このようなプローブは少なくとも30個のヌクレオチド残基または塩基対を有し、少なくとも50個のヌクレオチド残基または塩基対を有していてもよい。特に好ましいプローブは少なくとも20個のヌクレオチド残基または塩基対を有し、かつ30個未満のヌクレオチド残基または塩基対を有するものである。
【0054】
BASB020遺伝子のコード領域を配列番号1,3,5,または7に示すDNA配列を用いてスクリーニングすることにより単離し、オリゴヌクレオチドプローブを合成することができる。次いで、本発明の遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを使用してcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAのライブラリーをスクリーニングし、該ライブラリーのどのメンバーに前記プローブがハイブリダイズするかを決定することができる。
【0055】
完全長DNAを得るための、または短鎖DNAを伸長させるための、当業者に周知で利用可能な方法がいくつかあり、例えば、cDNA末端高速増幅法(RACE)に基づいた方法がある(例えば、Frohmanら, PNAS USA 85, 8998-9002, 1988を参照のこと)。例えばMarathonTM技術(Clontech Laboratories Inc.)により例示されるような、上記技法の最近の改良により、より長いcDNAの検索が大いに簡便化された。MarathonTM技術では、所定の組織より抽出されたmRNAからcDNAを作製し、各末端に「アダプター」配列を連結する。続いて、遺伝子特異的およびアダプター特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いて核酸増幅(PCR)を行い、前記DNAの「欠失」5'末端を増幅する。次に、「ネステッド(nested)」プライマー、すなわち増幅産物の内部にアニールするように設計されたプライマー(典型的には、アダプター配列のさらに3'側にアニールするアダプター特異的プライマーおよび選択された遺伝子配列のさらに5'側にアニールする遺伝子特異的プライマー)を用いてPCR反応を繰り返す。その後、この反応の産物をDNA塩基配列決定により解析し、この産物を既存のDNAに直接結合して完全な配列とするか、または5'プライマー設計用の新たな配列情報を用いて別の全長PCRを行うことにより、全長DNAを構築することができる。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを、本明細書中でポリヌクレオチドアッセイについてさらに論じたように、例えば、疾患(特にヒトの疾患)用の治療薬および診断薬を発見するための、研究試薬ならびに材料として使用することができる。
【0057】
配列番号1〜8の配列に由来するオリゴヌクレオチドである本発明のポリヌクレオチドを本明細書中に記載した方法、好ましくはPCRにおいて使用して、本発明で同定されたポリヌクレオチドの全体または部分が感染組織中の細菌にて転写されるか否かを確認することができる。また、病原体が到達した感染段階および感染型を診断する際にそのような配列が有用であることは理解されよう。
【0058】
また、本発明は、成熟タンパク質に追加のアミノもしくはカルボキシ末端アミノ酸を、または(例えば、成熟形態が2以上のポリペプチド鎖を有する場合は)該成熟タンパク質内部に追加のアミノ酸を付け加えたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。そのような配列は、タンパク質を前駆体から成熟形態にプロセシングする際に何らかの役割を果たし、タンパク質の輸送を可能とし、タンパク質の半減期を延長するかまたは短縮し、あるいは特にアッセイまたは生産のためのタンパク質の操作を容易にすることができる。in vivoの場合は一般に、前記の追加のアミノ酸を細胞内酵素により前記成熟タンパク質から除去することができる。
【0059】
本発明の各々どのポリヌクレオチドについても、それに相補的なポリヌクレオチドが提供される。これらの相補的なポリヌクレオチドは、それらが相補性を示す各ポリヌクレオチドに対して十分に相補的であることが好ましい。
【0060】
前駆体タンパク質は、そのポリペプチドの成熟形態が1以上のプロ配列に融合されている場合、該ポリペプチドの不活性形態であってもよい。プロ配列が除去されると、通常そのような不活性前駆体は活性化される。前記プロ配列のいくつかまたは全ては、活性化の前に除去され得る。一般に、そのような前駆体はプロタンパク質と呼ばれる。
【0061】
ヌクレオチドを示す標準的な記号A、G、C、T/Uに加えて、用語「N」を本発明の特定のポリヌクレオチドを記載する際に使用することもできる。「N」は4種のDNAまたはRNAヌクレオチドのうちの任意のものが、DNAまたはRNA配列中のその示された位置にみられることを意味する。ただし、隣接するヌクレオチド位置と組み合わせて用いられる場合や正しいリーディングフレームで読まれる場合には、Nはそのようなリーディングフレーム内に早期終結コドンを生じる効果を有する核酸ではないことが好ましい。
【0062】
まとめると、本発明のポリヌクレオチドは成熟タンパク質、成熟タンパク質にリーダー配列を付け加えたもの(プレタンパク質とも呼ばれる)、プレタンパク質のリーダー配列ではない1以上のプロ配列を有する成熟タンパク質の前駆体、またはプレプロタンパク質(通常はポリペプチドの活性形態および成熟形態を生産するプロセシング工程の間に除去される1以上のプロ配列、およびリーダー配列を有する、プロタンパク質の前駆体)をコードするものであってよい。
【0063】
本発明の態様に従うと、本発明のポリヌクレオチドの治療または予防目的での使用、特に遺伝子的免疫感作(genetic immunization)における使用が提供される。
【0064】
遺伝子的免疫感作における本発明のポリヌクレオチドの使用では、好ましくは、プラスミドDNAの筋内への直接注射(Wolffら、Hum Mol Genet(1992)1:363, Manthorpeら、Hum. Gene Ther.(1983)4:419)、特定のタンパク質担体と複合体化させたDNAの送達(Wuら、J Biol Chem.(1989)264:16985)、DNAとリン酸カルシウムとの共沈殿(BenvenistyおよびReshef, PNAS USA, (1986)83:9551)、DNAの種々の形態のリポソームへの封入(Kanedaら、Science(1989)243:375)、粒子撃ち込み(particle bombardment)(Tangら、Nature(1992)356:152, Eisenbraunら、DNA Cell Biol(1993)12:791)ならびにクローン化レトロウイルスベクターを用いたin vivo感染(Seegerら、PNAS USA(1984)81:5849)等の適切な送達方法を使用する。
【0065】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明の該ベクターにより遺伝子操作された宿主細胞ならびに組換え法による本発明のポリペプチドの生産に関する。本発明のDNA構築物から誘導されたRNAを用いてこの種のタンパク質を生産するために、無細胞翻訳系を使用することもできる。
【0066】
本発明の組換えポリペプチドは、当業者に周知の手法により、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から調製することができる。従って、更なる態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現系、かかる発現系を用いて遺伝子操作された宿主細胞、ならびに組換え法による本発明のポリペプチドの生産に関する。
【0067】
本発明のポリペプチドの組換え生産のために、宿主細胞を遺伝子操作して発現系もしくはその部分または本発明のポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、例えば、Davisら, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1986) および Sambrookら, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989) などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載された方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)および感染などによって行うことができる。
【0068】
適当な宿主の代表的な例として、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、エンテロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌、ナイセリア・マニンギチジス(Neisseria meningitidis)およびモラクセラ・カタラーリス)、真菌細胞(例:酵母であるクルベロミセス(Kluveromyces)、サッカロミセス、また担子菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス)、昆虫細胞(例:ショウジョウバエS2、スポドプテラSf9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV−1およびBowes メラノーマ細胞)および植物細胞(例:裸子植物または被子植物の細胞)が挙げられる。
【0069】
多種多様な発現系を使用して、本発明のポリぺプチドを生産することができる。そのようなベクターとして、特に、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入因子由来、酵母染色体エレメント由来、ウイルス(例:バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびアルファウイルス)由来のベクター、ならびにこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものがある。発現系構築物は発現を調節するだけでなく発現を起こさせる制御領域を含んでいてもよい。一般的に、宿主内でポリヌクレオチドを維持し、増やすかもしくは発現するのに適した系もしくはベクター、および/またはポリペプチドを発現するのに適した系もしくはベクターはどれもこの点に関して発現のために使用しうる。例えば、Sambrookら, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL (前掲) に記載されるような、周知で日常的に用いられる種々の技法のいずれかにより、適当なDNA配列を発現系に挿入することができる。
【0070】
真核細胞における組み換え発現系の場合、翻訳されたタンパク質を小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを発現されるポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは該ポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。
【0071】
組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた周知の方法を用いることができる。最も好ましくは、イオン金属アフィニティークロマトグラフィー(ion metal affinity chromatography:IMAC)が精製に用いられる。ポリペプチドが細胞内合成、単離および/または精製中に変性されるときは、タンパク質を再生させるための周知の技法を用いて、活性のあるコンフォメーションを復元することが可能である。
【0072】
また、前記発現系はウイルスまたは細菌等の組換え生存微生物であってもよい。目的とする遺伝子を組換え生存ウイルスまたは細菌のゲノム内に挿入することができる。この生存ベクターを用いての接種またはin vivo感染により、抗原のin vivo発現および免疫応答の誘導がもたらされる。この目的のために使用するウイルスおよび細菌としては、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス)、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ヴェネズエラウマ脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス)、ヘルペスウイルス(水痘-帯状ヘルペスウイルス等)、リステリア、サルモネラ、シゲラ、ナイセリア、BCG、がある。これらのウイルスおよび細菌は有毒であっても、または生ワクチンを得るために種々の方法により弱毒化されていてもよい。そのような生ワクチンもまた、本発明の一部を成すものである。
【0073】
診断アッセイ、予後アッセイ、血清型判別 (serotyping) アッセイおよび変異アッセイ
また、本発明は、本発明のBASB020ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの診断用試薬としての使用に関する。真核生物(特に哺乳動物、とりわけヒト)におけるBASB020ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの検出により、疾患、疾患の段階または薬剤に対する感染生物の応答を診断するための診断方法が提供される。真核生物(特に哺乳動物、とりわけヒト、特にBASB020遺伝子もしくはタンパク質を含む生物に感染した、または感染した可能性のあるヒト)を、種々の周知の技法および本明細書中で示す方法により核酸レベルまたはアミノ酸レベルで検出することができる。
【0074】
予後、診断または他の分析用のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、感染したと思われる個体および/または感染した個体の生体材料から得ることができる。これらのいずれかの供給源に由来するポリヌクレオチド、特にDNAまたはRNAを検出のために直接使用してもよいし、分析前にPCRまたは他の増幅法を使って酵素的に増幅してもよい。また、RNA(特にmRNA)、cDNAおよびゲノムDNAを同様の方法で使用することもできる。増幅を用いて、個体に存在する感染生物または常在生物の種および系統を、該生物の選択したポリヌクレオチドの遺伝子型の分析により特徴付けることができる。欠失および挿入は、近縁の生物(好ましくは同じ属で異なる種の生物または同じ種で異なる系統の生物)から選択された基準配列の遺伝子型と比較したときの増幅産物のサイズの変化により検出できる。点突然変異は増幅DNAを標識したBASB020ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズさせることで同定できる。完全にもしくは有意にマッチした配列と、不完全にもしくはより有意にミスマッチである二重鎖とは、DNAまたはRNAそれぞれについて、DNアーゼまたはRNアーゼ消化により、または融解温度もしくは再生キネティクスの差を検出することにより区別できる。また、ポリヌクレオチド配列の差異は、基準配列と比較した場合のゲルでのポリヌクレオチド断片の電気泳動の移動度の変化により検出できる。これは変性剤を用いても用いなくても実施できる。また、ポリヌクレオチドの差異は、直接DNAまたはRNA塩基配列決定によっても検出できる(例えば、Myersら, Science 230:1242(1985) を参照のこと)。特定位置での配列変化はヌクレアーゼプロテクションアッセイ(例えば、RNアーゼ、V1およびS1プロテクションアッセイ)または化学的開裂法によっても確認できる(Cottonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397-4401(1985)を参照のこと)。
【0075】
別の実施形態において、BASB020ヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、例えば、遺伝的突然変異、血清型、分類学的な分類または同定の効率的なスクリーニングを実施することができる。アレイ技法は周知であって一般に適用可能であり、これを使用して遺伝子発現、遺伝的連鎖、および遺伝的多様性を含む分子遺伝学における疑問に取り組むことができる(例えば、Cheeら, Science, 274:610 (1996)を参照のこと)。
【0076】
かくして、別の態様において、本発明は、
(a) 本発明のポリヌクレオチド(好ましくは、配列番号1,3,5,または7のヌクレオチド配列)もしくはその断片、
(b) (a) のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、
(c) 本発明のポリペプチド(好ましくは、配列番号2,4,6,または8のポリペプチド)もしくはその断片、または
(d) 本発明のポリペプチド(好ましくは、配列番号2,4,6,または8のポリペプチド)に対する抗体、
を含む、診断用キットに関する。
【0077】
このようなキットにおいて、(a)、(b)、(c)または(d)が実質的な構成成分であることが理解されよう。このようなキットは疾患または疾患への罹りやすさなどを診断するうえで有用である。
【0078】
本発明はまた、診断薬としての本発明のポリヌクレオチドの使用に関する。疾病または病原性と関連した、本発明のポリヌクレオチド、好ましくは配列番号1,3,5,または7の変異型の検出は、該ポリヌクレオチドの過少発現、過剰発現または改変した発現により生ずる疾病、疾病の進行の予後、疾病のステージの決定、またはその疾病への罹りやすさの診断に追加しうる、またはその診断を下しうる診断用ツールを提供するだろう。該ポリヌクレオチドに突然変異がある生物、特に感染症の生物を、本明細書の他に記載されているさまざまな技法によりポリヌクレオチドレベルで検出することができる。
【0079】
また本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドにおいて突然変異または多型性(対立遺伝子変異)を有する生物由来の細胞を、種々の技法によってポリヌクレオチドレベルまたはポリペプチドレベルで検出することができ、それにより例えば血清型別にすることができる。例えば、RT−PCRを使用して、RNAにおける突然変異を検出することができる。特に好ましくは、RT−PCRを、例えばGeneScanなどの自動検出システムと組み合わせて使用する。RNA、cDNAまたはゲノムDNAもまた同じ目的でPCRに使用することができる。例えば、BASB020ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的なPCRプライマーを使用して、突然変異を同定し、解析することができる。
【0080】
更に本発明は、5’末端および/または3’末端から取り除いた1、2、3または4個のヌクレオチドを有するプライマーを提供する。これらのプライマーは特に、生体材料などの個体由来のサンプルから単離したBASB020 DNAおよび/またはRNAを増幅するのに使用しうる。該プライマーを使用して感染した個体から単離されたポリヌクレオチドを増幅することができ、次いでそのポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の解明のための種々の技法に付すことができる。このようにして、ポリヌクレオチド配列における突然変異を検出し、かつ使用して、感染症または該感染症のステージもしくは進行を診断および/または予後判定するか、あるいは該感染因子を血清型に分ける、および/または分類することができる。
【0081】
本発明は更に、疾患、好ましくは細菌感染症、より好ましくはモラクセラ・カタラーリスにより引き起こされる感染症を診断する方法を提供する。該方法には、生体材料などの個体由来のサンプルから、配列番号1,3,5,または7の配列を有するポリヌクレオチドの発現レベルの上昇を測定することが含まれる。BASB020ポリヌクレオチドの発現の増加または低下は、当業界で公知のポリヌクレオチドの定量法、例えば増幅、PCR、RT−PCR、RNaseプロテクション、ノーザンブロッティング、分光測定法、その他のハイブリダイゼーション法などの方法のいずれか1つにより測定することができる。
【0082】
更に、正常な対照組織サンプルと比較した場合のBASB020ポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明の診断アッセイを使用して、例えば感染症の有無を検出しうる。宿主から得られたサンプル中(生体材料など)のBASB020ポリペプチドのレベルを測定するのに使用しうるアッセイ法は当業者によく知られている。こうしたアッセイ法として、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、抗体サンドイッチアッセイ、抗体検出、ELISAアッセイなどがある。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドアレイ、好ましくは高密度アレイまたはグリッドの構成成分として使用することができる。これらの高密度アレイは、診断用途および予後判定の用途に特に有用である。例えば、それぞれが異なる遺伝子を含み、更に本発明のポリヌクレオチドを含むスポットの1セットを、生体サンプルから得たまたは生体サンプルから誘導したプローブを利用して、ハイブリダイゼーションまたは核酸増幅などにより、プロービングすることに使用することができ、それによって個体中の特定のポリヌクレオチド配列または関連配列の存在を決定することができる。そのような配列の存在は、病原体の存在、特にモラクセラ・カタラーリスの存在を示し得るものであり、疾患もしくは疾患の進行を診断および/または予後判定するのに有用でありうる。配列番号1,3,5,または7のポリヌクレオチド配列のいくつかの変異体を含むグリッドが好ましい。また、配列番号2,4,6,または8のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列のいくつかの変異体を含むグリッドが好ましい。
【0084】
抗体
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、もしくはそれらの変異体、またはそれらを発現する細胞は、該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドにそれぞれ免疫特異的な抗体を製造するための免疫原として使用することができる。
【0085】
本発明の特定の好ましい実施形態において、BASB020ポリペプチドまたはポリヌクオチドに対する抗体が提供される。
【0086】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して生成された抗体は、慣用のプロトコルを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に本発明のポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド、またはそのどちらかもしくは両方のエピトープ含有断片、どちらかもしくは両方の類似体、あるいはどちらかもしくは両方を発現する細胞を投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により抗体を産生させる当技術分野で公知の任意の技法を用いることができる。例を挙げると、Kohler, G.およびMilstein, C.の方法(Nature 256:495-497(1975))、Kozborらの方法(Immunology Today 4:72(1983))およびColeらの方法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pg77-96, Alan R. Liss, Inc.(1985))など種々の方法がある。
【0087】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対する一本鎖抗体を産生するために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)も適用することができる。また、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに免疫特異的なヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウスまたは他の生物もしくは他の哺乳動物などの動物を利用することができる。
【0088】
あるいは、ファージディスプレイ法を利用して、抗BASB020の保持についてスクリーニングしたヒト由来のリンパ球のPCR増幅したv遺伝子のレパートリー、あるいは天然ライブラリー(McCaffertyら、(1990)Nature 348, 552-554;Marksら、(1992)Biotechnology 10, 779-783)のいずれかから、本発明のポリペプチドに対し結合活性を有する抗体遺伝子を選択することができる。これらの抗体の親和性を、例えば、チェーンシャフリング(chain shuffling:Clacksonら、(1991)Nature 352:628)により改良することもできる。
【0089】
前述の抗体を用いて、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを発現するクローンを単離または同定したり、例えばアフィニティークロマトグラフィーでそのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを精製することもできる。
【0090】
従ってその中でも、BASB020ポリペプチドまたはBASB020ポリヌクレオチドに対する抗体を使用して、感染症、特に細菌感染症を治療しうる。
【0091】
ポリペプチド変異体には、抗原的に、エピトープ的にまたは免疫学的に本発明の特定の態様を形作る等価変異体が含まれる。
【0092】
好ましくは、前記抗体またはその変異体を改変し、個体におけるその免疫原性がより低くなるようにする。例えば、該個体がヒトである場合、該抗体は「ヒト化」されているのが最も好ましく、その際、ハイブリドーマ化された抗体の相補性決定領域は、例えばJonesら(1986)Nature 321, 522-525、またはTempestら(1991)Biotechnology 9, 266-273に記載のようにヒトモノクローナル抗体中に導入される。
【0093】
アンタゴニストおよびアゴニスト−アッセイおよび分子
また本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを用いて、例えば、細胞、無細胞調製物、化学ライブラリーおよび天然産物混合物中の、小分子基質とリガンドとの結合を評価することができる。これらの基質およびリガンドは、天然基質およびリガンドであってもよいし、または構造的もしくは機能的にミメティックであってもよい。例えば、Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):5章(1991)を参照のこと。
【0094】
スクリーニング法では、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを担持する細胞もしくは膜、または該ポリペプチドの融合タンパク質、への候補化合物の結合を、該候補化合物に直接または間接的に結合される標識を用いて簡単に測定できる。あるいは、スクリーニング法では標識した競合物質との競合を用いることもある。さらに、こうしたスクリーニング法では、該候補化合物が該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化または抑制により生ずるシグナルを結果的にもたらすか否かを、該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含有する細胞に適した検出系を用いて試験することができる。一般的には、既知のアゴニストの存在下で活性化のインヒビターをアッセイして、アゴニストによる活性化に該候補化合物の存在が与える影響を観察する。アゴニストまたはインヒビターの不在下で、該候補化合物が該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化を抑制するか否かを調べることによる反アゴニストまたはインヒビターのスクリーニング法では、場合によっては、構成的に活性のあるポリペプチドならびに/または構成的に発現されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドが用いられる。さらに、これらのスクリーニング法は、候補化合物と本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含む溶液とを混ぜ合わせて混合物をつくり、この混合物中のBASB020ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド活性を測定し、そしてこの混合物のBASB020ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド活性をスタンダードと比較する各ステップを単に含みうる。本発明のポリペプチド、ならびに系統学的におよび/または機能的に関連するポリペプチドのアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイでは、上記のようなFc部分とBASB020ポリペプチドから作製されるような融合タンパク質も使用することができる(D. Bennettら, J. Mol. Recognition, 852-58 (1995) およびK. Johansonら, J. Biol. Chem., 270(16):94599471 (1995)を参照のこと)。
【0095】
また、本発明のポリペプチドに結合するおよび/または該ポリペプチドと相互作用するポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体を用いて、細胞内でのmRNAおよび/またはポリペプチドの産生に及ぼす添加化合物の作用を検出するためのスクリーニング法を組み立てることができる。例えば、当業界で公知の標準方法によりモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、ポリペプチドの分泌レベルまたは細胞結合レベルを測定するためのELISAアッセイを構築することができ、これは適切に操作された細胞または組織からのポリペプチドの産生を抑制または増強する物質(それぞれアンタゴニストまたはアゴニストともいう)の探索に用いることができる。
【0096】
本発明はまた、BASB020ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの作用を増強する(アゴニスト)もしくはブロックする(アンタゴニスト)化合物、特に静菌性および/もしくは殺菌性の化合物を同定するための、該化合物のスクリーニング法を提供する。該スクリーニング法は、ハイスループット技術を伴いうる。例えば、アゴニストまたはアンタゴニストについてスクリーニングするために、BASB020ポリペプチドおよび該ポリペプチドの標識基質もしくはリガンドを含有する、合成反応混合物、細胞構成成分(膜、細胞エンベロープ、もしくは細胞壁)またはそれらの任意の調製物を、BASB020のアゴニストもしくはアンタゴニストでありうる候補分子の不在下または存在下でインキュベートする。該候補分子の、BASB020ポリペプチドを作動させるまたは拮抗阻害する能力は、標識リガンドの結合が減少すること、または該基質からの産物の生成が減少することに反映される。むやみに結合する、すなわちBASB020ポリペプチドの作用を誘導することなく結合する分子は、最も有望な、有効なアンタゴニストである。十分に結合する分子、および場合により基質からの産物の生成速度を上昇させる分子、シグナル伝達を増強する分子、または化学チャネル活性を増加させる分子は、アゴニストである。場合により、基質からの産物の生成、シグナル伝達、または化学チャネル活性の速度もしくはレベルの検出を、レポーター系を用いて強化させることができる。この点において有効でありうるレポーター系には、限定するものではないが、産物に変換される比色用標識基質、BASB020ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド活性の変化に反応するレポーター遺伝子、および当技術分野で公知の結合アッセイが含まれる。
【0097】
BASB020アゴニストについてのアッセイの他の例は、競合阻害アッセイに適切な条件下で、BASB020と、BASB020結合分子、組換えBASB020結合分子、天然基質もしくはリガンド、または基質もしくはリガンドミメティックを有する潜在的なアゴニストとを結合させる、競合アッセイである。BASB020を、放射性または比色用化合物などで標識することができ、それにより結合分子に結合したまたは生成物に変換されたBASB020分子数を正確に決定して、潜在的なアンタゴニストの有効性を評価しうる。
【0098】
潜在的なアンタゴニストには他に、本発明のポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチドに結合し、それによりその活性または発現を抑制または無効にする、有機小分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。潜在的なアンタゴニストはまた、BASB020誘導性活性を誘導することなく、結合分子などの結合分子の同じ部位に結合し、それによりBASB020ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチドが結合するのを排除してBASB020ポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチドの作用または発現を妨害する、有機小分子、ペプチド、非常に近縁なタンパク質または抗体などのポリペプチドでありうる。
【0099】
潜在的なアンタゴニストには、前記ポリペプチドの結合部位に結合しかつその部位を占有して、それにより細胞性結合分子に結合するのを妨害することにより正常な生物学的活性を妨げる小分子が含まれる。小分子の例としては、限定するものではないが、有機小分子、ペプチドまたはペプチド様分子が含まれる。他の潜在的なアゴニストには、アンチセンス分子(これらの分子についての記載は、Okano, J. Neurochem. 56: 560(1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press, Boca Raton, FL(1988)を参照のこと)が含まれる。好ましい潜在的なアンタゴニストには、BASB020に関連した化合物およびBASB020の変異体が含まれる。
【0100】
更なる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその断片と、各種サブクラス(IgG、IgM、IgA、IgE)の免疫グロブリンのH鎖またはL鎖の定常領域の様々な部分と、を含む遺伝子工学的に作製された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとしてはヒトIgG、特にIgG1のH鎖の定常部が好ましく、その場合は融合がヒンジ領域で起こる。特定の実施形態では、血液凝固Xa因子で切断され得る切断配列を組み込むことで、Fc部分を簡単に除去できる。さらに、本発明は、これら融合タンパク質の遺伝子工学的作製方法、ならびに薬物スクリーニング、診断および治療におけるそれらの使用に関する。また本発明の更なる態様は、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。融合タンパク質技術の例は、国際特許出願 WO94/29458 およびWO94/22914に記載されている。
【0101】
本明細書に示したポリヌクレオチド配列のそれぞれは、抗菌性化合物の発見および開発に使用することができる。コード化タンパク質は発現の際に、抗菌薬のスクリーニングの標的として使用されうる。それに加えて、それぞれのmRNAのコード化タンパク質またはシャイン・ダルガルノもしくはその他の翻訳促進配列のアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列を使用して、アンチセンス配列を構築し、目的のコード化配列の発現を制御することができる。
【0102】
また本発明は、病原体(1種または複数種)と、感染の続発症の原因となる真核生物(好ましくは哺乳動物)宿主との間の最初の物理的相互作用を妨害するための、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニストまたはアンタゴニストの使用を提供する。特に、本発明の分子を使用して、細菌(特にグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌)の、留置デバイス上の真核生物(好ましくは哺乳動物)細胞外マトリックスタンパク質または創傷内の細胞外マトリックスタンパク質への付着を妨害すること、真核生物(好ましくは哺乳動物)の細胞外マトリックスタンパク質と組織損傷を媒介する細菌性BASB020タンパク質との間の細菌性付着をブロックすること、および/または、留置デバイスの移植またはその他の外科的手法以外により開始される感染症の病理発生の正常進行をブロックすること、ができる。
【0103】
更に本発明の他の態様により、BASB020アゴニストおよびアンタゴニスト、好ましくは静菌性または殺菌性のアゴニストおよびアンタゴニストが提供される。
【0104】
本発明のアンタゴニストおよびアゴニストを使用して、例えば、疾病を予防し、阻害し、および/または治療しうる。
【0105】
更なる態様において本発明は、本発明のポリペプチドのミモトープ(mimotope)に関する。ミモトープは、天然ペプチドと(配列的または構造的に)十分に類似しているペプチド配列であり、該天然ペプチドを認識する抗体により認識され得るか、あるいは適切な担体に結合した場合に該天然ペプチドを認識する抗体を生じさせることができる。
【0106】
ペプチドミモトープは、特定の目的のために、選択されたアミノ酸の付加、欠失または置換によって設計することができる。従って、該ペプチドは、タンパク質担体への結合を容易にするために改変しても良い。例えば、いくつかの化学結合法については、末端システインを含有させることが好ましい。更に、タンパク質担体に結合させたペプチドについては、該ペプチドの結合末端から遠い位置に疎水性末端を含有させて、該ペプチドの非結合末端が担体タンパク質の表面に結合したままにすることが好ましい。それにより、インタクトな天然分子の場合にみられるようなペプチドのコンホメーションと最も近似しているコンホメーションで該ペプチドを提示する。例えば、該ペプチドは、N末端システインおよびC末端疎水性アミド化テールを含有するように改変しうる。あるいは、1以上のアミノ酸のD立体異性体の付加または置換を行うことにより、例えば該ペプチドの安定性を向上させる、有益な誘導体を作製しうる。
【0107】
あるいは、ファージディスプレイ法(EP 0 552 267 B1)などの技法を利用して、それ自体が本発明のポリペプチドに結合する能力のある抗体を用いてペプチドミモトープを同定することができる。この方法により、天然ペプチドの構造を模擬した多数のペプチド配列が生成され、またそれゆえ該配列は、抗天然ペプチド抗体に結合する能力を有するが、該配列自体が該天然ポリペプチドと有意な配列相同性を共有する必要はない。
【0108】
ワクチン
本発明の別の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて免疫学的応答を誘導する方法に関するものであり、この方法は、抗体および/またはT細胞免疫応答を生じさせて該個体を感染、具体的には細菌感染、最も具体的にはモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)感染から防御するのに十分なBASB020ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはその断片もしくは変異体を該個体に接種することを含んでなる。また、そのような免疫学的応答によって細菌複製を遅延させる方法も提供する。本発明のさらに別の態様は、個体において免疫学的応答を誘導する方法であって、BASB020ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド、またはその断片もしくは変異体をin vivo発現させるためにBASB020ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはその断片もしくは変異体の発現を指令する核酸ベクター、配列またはリボザイムを該個体に送達することにより、免疫学的応答を誘導して(例えば、抗体および/またはT細胞免疫応答(例えばサイトカイン産生T細胞または細胞傷害性T細胞を含む)を生じさせて)該個体、好ましくはヒトを疾病から防御する(この疾病がすでに該個体において確立されていようがいまいが防御する)ことを含んでなる方法に関する。遺伝子投与は、例えば、遺伝子を粒子またはその他のものにコーティングしてそれを所望の細胞に高速で射入することにより行われる。そのような核酸ベクターは、DNA、RNA、リボザイム、改変型核酸、DNA/RNAハイブリッド、DNA-タンパク質複合体またはRNA-タンパク質複合体を含み得る。
【0109】
本発明のさらなる態様は、免疫学的応答を誘導する能力を有している個体、好ましくはヒトに導入した場合に、そのような個体においてBASB020ポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに対して免疫学的応答を誘導する免疫学的組成物に関するものであり、該組成物は、組換えBASB020ポリヌクレオチドおよび/または該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含むか、および/または本発明の該BASB020ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、またはその他のポリペプチドの抗原をコードし、発現するDNAおよび/またはRNAを含む。この免疫学的応答は、治療または予防に使用し得るものであり、抗体免疫および/または細胞性免疫、例えばCTLもしくはCD4+T細胞から生ずる細胞性免疫のような形態をとり得る。
【0110】
BASB020ポリペプチドまたはその断片は、協同タンパク質(co-protein)または化学成分(それ自体抗体を産生してもしなくてもよいが、第1のタンパク質を安定化させ、抗原性および/または免疫原性、好ましくは防御特性を有する融合タンパク質または改変タンパク質を産生させ得る)と融合してもよい。したがって、融合組換えタンパク質は、好ましくは、抗原性協同タンパク質(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のリポタンパク質D、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)もしくはβ-ガラクトシダーゼ)、またはタンパク質を可溶化して、その産生および精製を容易にする任意のその他の比較的大きい協同タンパク質をさらに含む。さらに、協同タンパク質は、該タンパク質を投与される生物の免疫系に全身性刺激(generalized stimulation)をもたらすという意味でアジュバントとして作用し得る。協同タンパク質は、第1のタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に結合され得る。
【0111】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに免疫刺激性DNA配列(例えば、Sato, Yら, Science 273:352(1996)に記載されているものなど)を含む組成物、特にワクチン組成物、ならびに方法を提供する。
【0112】
また、本発明は、細菌細胞表面タンパク質の非可変領域をコードすることが分かっている既知のポリヌクレオチドまたはその特定の断片を、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)に感染した動物モデルでのそのような遺伝子による免疫感作実験に用いられるポリヌクレオチド構築物において使用する方法も提供する。そのような実験は、予防または治療的免疫応答を生起させ得るタンパク質エピトープを同定するのに特に有用である。この手法により、その後、哺乳動物、特にヒトにおける細菌感染、特にモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)感染の予防剤または治療的処置の開発のために、感染しないことまたは感染を除去することに成功している動物の必須の器官に由来する特定価のモノクローナル抗体の調製が可能になると考えられる。
【0113】
また本発明は、本発明の免疫原性組換えポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに製薬上許容される担体などの適当な担体を含むワクチン製剤も提供する。このポリペプチドおよびポリヌクレオチドは胃の中で分解される可能性があるので、どちらも非経口的に(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または皮内注射により)投与することが好ましい。非経口投与に適した製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌性化合物およびこの製剤を受容者の体液、好ましくは血液と等張にする溶質を含みうる水性および非水性の無菌注射液、並びに懸濁化剤または増粘剤を含みうる水性および非水性の無菌懸濁液がある。こうした製剤は1回量容器または数回量容器(例えば、密閉アンプルおよびバイアル)で提供することができ、また、使用直前に無菌の液状担体を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保管することもできる。
【0114】
また、本発明のワクチン製剤は該製剤の免疫原性を増強するためのアジュバント系を含んでいてもよい。好ましくは、前記アジュバント系は優先的にTH1型の応答を生じさせる。
【0115】
免疫応答は極端な2つのカテゴリー(体液性または細胞媒介性免疫応答[慣例では、それぞれ抗体による、および細胞エフェクターによる防御機構によって特徴付けられている])に大まかに区別することができる。これらの応答カテゴリーは、TH1型応答(細胞媒介性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。
【0116】
極端なTH1型免疫応答は、抗原特異的でハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球の生成およびナチュラルキラー細胞の応答により特徴付けられる。マウスではTH1型応答はIgG2aサブタイプの抗体の生成により特徴付けられることが多いが、ヒトではこれらはIgG1型抗体に相当する。TH2型免疫応答はマウスIgG1、IgAおよびIgMを含む広範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成により特徴付けられる。
【0117】
これらの2タイプの免疫応答の発生を陰で駆動している力はサイトカインであると考えられる。高濃度のTH1型サイトカインは所与の抗原に対して細胞媒介性免疫応答を好んで誘導する傾向があるが、高濃度のTH2型サイトカインは前記抗原に対して体液性免疫応答を好んで誘導する傾向がある。
【0118】
TH1およびTH2型免疫応答の区別は絶対的なものではない。実際、ある人は、主にTH1であるとか、主にTH2であると記載されるような免疫応答を支持している。しかしながら、多くの場合、MosmannおよびCoffmanによりマウスCD4+veT細胞クローンについて記載された内容(Mosmann,T.R.およびCoffmann,R.L. (1989) TH1 and TH2 cells:differnt patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. Annual Review of Immnology, 7, p145-173)から、サイトカインのファミリーを考慮するのが都合がよい。慣例上、TH1型応答はTリンパ球によるINF-γおよびIL-2サイトカイン産生と関連している。TH1型免疫応答の誘導に直接関わることの多い他のサイトカインは、IL-12等のT細胞によっては産生されない。対照的に、TH2型応答はIL-4、IL-5、IL-6およびIL13の分泌に関連している。
【0119】
特定のワクチンアジュバントがTH1またはTH2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激にとりわけ適していることが知られている。慣例上、ワクチン接種または感染後の免疫応答におけるTH1:TH2平衡の最良の指標としては、抗原再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTH1もしくはTH2サイトカイン産生の直接測定、および/または抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0120】
従って、TH1型アジュバントは、抗原によりin vitroで再刺激された際に優先的に単離されたT細胞集団を刺激して高濃度のTH1型サイトカインを産生し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球の発生およびTH1型アイソタイプに関連した抗原特異的免疫グロブリン応答を促進するものである。
【0121】
TH1細胞応答を優先的に刺激し得るアジュバントは、国際特許出願番号WO94/00153およびWO95/17209に記載されている。
【0122】
3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)はそうしたアジュバントの1つである。これはGB2220211(Ribi)により知られている。化学的には、該アジュバントは3De-O-アシル化モノホスホリルリピドAと4、5、6本のアシル化された鎖との混合物であり、Ribi Immunochem. Montanaにより製造される。3De-O-アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許第0 689 454 B1号(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。
【0123】
好ましくは、3D-MPLの粒子は、0.22ミクロンの膜を通り抜けて滅菌ろ過されるのに十分な程度小さい(欧州特許第0 689 454 号)。3D-MPLは投与量あたり10μg〜100μg、好ましくは25〜50μgの範囲で存在する。この場合、抗原は通常投与量あたり2〜50μgの範囲で存在する。
【0124】
別の好ましいアジュバントは、QS21(Quillaja Saponaria Molinaの樹皮から得た、Hplc精製した毒性の無い画分)を含む。任意でこれを3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と、場合により担体と共に混合することもできる。
【0125】
QS21の製造方法は米国特許第5,057,540号に開示されている。
【0126】
QS21を含有する反応性の無いアジュバント製剤は以前に記載されている(WO96/33739)。QS21およびコレステロールを含むそうした製剤は、抗原と共に製剤する場合には良好なTH1刺激性アジュバントであることが示されている。
【0127】
TH1細胞応答の優先的刺激物質である別のアジュバントとしては、免疫調節性の(immunomodulatory)オリゴヌクレオチド、例えばWO96/02555に開示されている非メチル化CpG配列が挙げられる。
【0128】
また、前述したもののような異なるTH1刺激アジュバントの組み合わせも、TH1細胞応答の優先的な刺激物質であるアジュバントを提供する際に考慮される。例えば、QS21を3D-MPLと共に製剤化することができる。通常、QS21:3D-MPL比は1:10〜10:1であり、好ましくは1:5〜5:1であり、多くの場合は実質的に1:1である。最適な共働作用のために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1の3D-MPL:QS21である。
【0129】
好ましくは、本発明のワクチン組成物中に担体も存在する。前記担体は水中油型エマルジョンであっても、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム等のアルミニウム塩であってもよい。
【0130】
好ましい水中油型エマルジョンは代謝可能な油、例えばスクアレン、α-トコフェロールおよびTween80を含む。特に好ましい態様では本発明のワクチン組成物中の抗原をそのようなエマルジョン中でQS21および3D-MPLと組み合わせる。更に、前記水中油型エマルジョンはスパン85および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリン(tricaprylin)を含んでいてもよい。
【0131】
通常、ヒトへの投与の場合は、QS21および3D-MPLは投与量あたり1〜200μgの範囲内、例えば10〜100μg、好ましくは10〜50μgの範囲内でワクチン中に存在する。通常、水中油型エマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のα-トコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を含む。好ましくは、スクアレン:α-トコフェロール比は1以下であり、これによってより安定なエマルジョンが提供される。また、スパン85は1%という濃度で存在しうる。幾つかの場合、本発明のワクチンが更に安定化剤を含むことが有益であろう。
【0132】
毒性の無い水中油型エマルジョンは、好ましくは、毒性の無い油(例えばスクアランもしくはスクアレン)、乳化剤(例えばTween80)を水性担体中に含む。前記水性担体は、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水でありうる。
【0133】
水中油型エマルジョン中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に有効なアジュバント製剤はWO95/17210に記載されている。
【0134】
また本発明は、本発明のワクチン製剤を他の抗原、特に癌、自己免疫疾患および関連病態の治療に有用な抗原と組み合わせて含む多価ワクチン組成物を提供する。そのような多価ワクチン組成物は前記のTH1誘導性アジュバントを含みうる。
【0135】
本発明は、特定のBASB020ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関して記載されているが、本発明はその天然のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの断片、ならびに組換えポリペプチドまたはポリヌクレオチドの免疫原性に実質的に影響を及ぼさない付加、欠失または置換をもつ類似のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含むものと理解されるべきである。
【0136】
組成物、キットおよび投与
本発明のさらなる態様では、細胞または多細胞生物に投与するためのBASB020ポリヌクレオチドおよび/またはBASB020ポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0137】
また本発明は、本明細書で検討したポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドまたはそのアゴニストまたはアンタゴニストを含む組成物にも関する。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、細胞、組織または生物に使用するために、非滅菌担体または滅菌担体(例えば個体への投与に適した製薬用担体など)とともに用いてもよい。そのような組成物は、例えば、培地添加剤または治療有効量の本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに製薬上許容される担体または賦形剤を含む。かかる担体としては、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせが挙げられ得る。製剤は投与の様式に適合させるべきである。本発明はさらに、本発明の上記組成物の1種以上の成分を充填した容器を1以上含んでなる診断用および製剤用のパックおよびキットに関する。
【0138】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびその他の化合物は、単独で用いてもよく、治療用化合物などのその他の化合物とともに用いてもよい。
【0139】
医薬組成物は、任意の有効で都合のよい様式、例えば、特に局所投与、経口投与、肛門投与、膣内投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、鼻腔内投与、または経皮経路での投与によって投与し得る。
【0140】
治療または予防において、活性剤は注射可能な組成物として、例えば無菌水性分散液、好ましくは等張液として、個体に投与し得る。
【0141】
更なる態様においては、本発明は、治療に有効な量のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド(例えば可溶性形態の本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド)、アゴニストペプチド/アンタゴニストペプチド、または低分子化合物を、製薬上許容し得る担体または賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。そのような担体には、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明はさらに、前述の本発明の組成物の1種以上の成分を充填した容器を1以上含んでなる医薬用パックおよびキットに関するものである。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび他の化合物は、単独で用いてもよく、または治療用化合物等の他の化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0142】
医薬組成物は投与経路、例えば全身または経口による投与経路に適合させることができる。全身投与に適した形態は、注入(注射)、典型的には静注である。皮下、筋肉内または腹腔内のような他の注入経路も使用できる。全身投与の別の手段には、胆汁酸塩、フシジン酸、その他の界面活性剤などの浸透剤を用いた経粘膜および経皮投与がある。さらに、本発明のポリペプチドまたは他の化合物を腸溶剤またはカプセル剤として製剤化し得るのであれば、経口投与も可能である。これらの化合物を軟膏、ペースト、ゲル、溶液、粉末などの剤形で局所に投与しても、かつ/または局在化させてもよい。
【0143】
哺乳動物、特にヒトへの投与の場合、活性剤の日用量は0.01mg/kg〜10mg/kg、典型的には約1mg/kgであると予想される。医師は、任意の状況において、個体に最も適した実際の投与量(これは特定の個体の年齢、体重および応答により様々である)を決定するであろう。上記の投与量は、平均的な場合の代表例である。もちろん、より高いか低い投与量範囲にメリットがあるような場合もあり得る。そのような場合も本発明の範囲に含まれる。
【0144】
必要な投与量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、患者の状態の性質、そして治療する医師の判断に左右される。しかし、適当な投与量は患者の体重1kgあたり0.1〜100μgの範囲である。
【0145】
ワクチン組成物は、注射可能な形態であるのが都合がよい。通常のアジュバントを用いることにより免疫応答を高めることができる。ワクチン接種に適した単位投与量は、0.5〜5マイクログラム/kgの抗原であり、そのような投与量を1〜3週間間隔で1〜3回投与するのが好ましい。前記の投与量範囲で本発明の化合物を用いた場合、適当な個体への投与を不可能とするような有害な中毒作用は観察されない。
【0146】
しかしながら、入手可能な化合物が多様であること、投与経路の効率が異なることを考慮すれば、必要とされる投与量は広範に変動することが予測される。例えば、経口投与は静注による投与よりも高い投与量を必要とすると予想されよう。こうした投与量レベルの変動は、当業界でよく理解されているような、標準的経験的な最適化手順を用いて調整することができる。
【0147】
配列データベース、有形媒体 (tangible medium) における配列、およびアルゴリズム
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列は、その2次元構造および3次元構造を決定し、類似の相同性をもつ別の配列を同定する際の価値ある情報源を提供する。これらの手法は、コンピュータ読み取り可能媒体中に配列を保存し、次いで既知の巨大分子構造プログラムにおいて、またはGCGプログラムパッケージなどの公知の検索ツールにより配列データベースを検索するためにその保存データを用いることで、最大限促進される。
【0148】
また、本発明は、文字配列または列、特に遺伝子配列またはコード化タンパク質配列の解析方法も提供する。好ましい配列解析方法としては、例えば、同一性および類似性解析などの配列相同性解析法、DNA、RNAおよびタンパク質構造解析法、配列のアセンブリ方法、分岐解析法、配列モチーフ解析法、オープンリーディングフレーム決定法、核酸塩基呼出し(calling)法、コドン使用頻度解析法、核酸塩基トリミング(trimming)法、および配列決定クロマトグラムピーク解析法が挙げられる。
【0149】
相同性確認を行うためのコンピュータに基づく方法であって、コンピュータ読み取り可能媒体中に本発明のポリヌクレオチドの配列を含む第1ポリヌクレオチド配列を提供する工程、および該第1ポリヌクレオチド配列を少なくとも1つの第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を確認する工程を含む上記方法を提供する。
【0150】
相同性確認を行うためのコンピュータに基づく方法であって、コンピュータ読み取り可能媒体中に本発明のポリペプチドの配列を含む第1ポリペプチド配列を提供する工程および該第1ポリペプチド配列を少なくとも1つの第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を確認する工程を含む上記方法も提供される。
【0151】
限定するものではないが、特許および特許出願のような本明細書で引用した刊行物および参考文献は、あたかも各刊行物または参考文献がそれぞれ本明細書に参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に指摘されているように、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張している任意の特許出願も、刊行物および参考文献について上記したように、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
定義
当技術分野で知られた「同一性」とは、場合によっては、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の比較により決定された、2以上のかかる配列間の類縁性のことである。当技術分野ではまた、「同一性」は、場合によっては、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の鎖間の一致度(match)により決定された、このような配列間の配列類縁性の程度を意味する。「同一性」は公知の方法により難なく算出することができ、こうした方法として、例えば Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.編, Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W. 編, Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M. and Griffin, H.G. 編, Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J. 編, M Stockton Press, New York, 1991; および Carillo, H. and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) に記載された方法があるが、これらに限らない。同一性を決定するための方法は、検討する配列間で最大級のマッチングが得られるように設計される。同一性を決定する方法は一般に入手可能なコンピュータプログラムに編集されている。2配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム法としては、GCGプログラムパッケージにおけるGAPプログラム(Devereux, J.ら, Nucleic Acids Research 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTN(Altschul, S.F.ら, J. Molec. Biol. 215:403-410 (1990)) ならびにFASTA(PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85; 2444-2448(1988)があるが、これらに限らない。BLASTプログラムファミリーはNCBIおよび他のソースから一般に入手可能である (BLAST Manual, Altschul, S.ら, NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; Altschul, S.ら, J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。公知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用することができる。
【0153】
ポリペプチド配列を比較するためのパラメーターは次のものを含む:
アルゴリズム:Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)
比較マトリックス:BLOSSUM62 、Hentikoff and Hentikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919 (1992)
ギャップペナルティー:8
ギャップ長ペナルティー:2
これらのパラメーターを用いて有効なプログラムは Genetics Computer Group(Madison WI)から「gap」プログラムとして一般に入手可能である。前記のパラメーターはペプチド比較のためのデフォルトパラメーター(default parameter) である(末端ギャップのペナルティーは無し)。
【0154】
ポリヌクレオチド配列を比較するためのパラメーターは次のものを含む:
アルゴリズム:Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)
比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティー:50
ギャップ長ペナルティー:3
これらのパラメーターを用いて有用であるプログラムは Genetics Computer Group(Madison WI)から「gap」プログラムとして公に入手可能である。これらは核酸比較のためのデフォルトパラメーターである。
【0155】
ポリヌクレオチドとポリペプチドについての「同一性」の好ましい意味は、場合によっては、下記の(1)および(2)に示される。
【0156】
(1) ポリヌクレオチドの実施形態は、配列番号1の基準配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドをさらに含む。ここで、該ポリヌクレオチド配列は、配列番号1の基準配列と同一であるか、または該基準配列に対して、一定の整数個までのヌクレオチド変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のヌクレオチドの欠失、置換(トランジションおよびトランスバージョンを含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ヌクレオチド配列の 5'もしくは 3'末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のヌクレオチドの間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。そのようなヌクレオチド変異の数は、配列番号1のヌクレオチドの総数に、同一性%を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号1のヌクレオチドの総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
≦x −(x・y)
により求めることができる。式中、nはヌクレオチド変異の数であり、xは配列番号1のヌクレオチドの総数であり、yは50%については0.50、60%については0.60、70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85、90%については0.90、95%については0.95、97%については0.97または100%については1.00であり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxとyの非整数の積は、その積をxから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の改変は、そのコード配列にナンセンス、ミスセンスまたはフレームシフト突然変異を生じさせ、それにより、こうした変異後に該ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドを改変させることができる。
【0157】
例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号1の基準配列と同一である、すなわち基準配列に対して100%の同一性を有し得るか、または同一性%が100%未満となるように該基準配列に対して一定の整数個までの核酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個の核酸の欠失、置換(トランジションおよびトランスバージョンを含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリヌクレオチド配列の 5'もしくは 3'末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中の核酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。所定の同一性%についての核酸変異の数は、配列番号1の核酸の総数に、同一性%値を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号1の核酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
≦x −(x・y)
により求めることができる。式中、nは核酸変異の数であり、xは配列番号1の核酸の総数であり、yは例えば70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85などであり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxとyの非整数の積は、その積をxから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
【0158】
(2) ポリペプチドの実施形態は、配列番号2のポリペプチド基準配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリペプチドを含む単離されたポリペプチドをさらに含む。ここで、該ポリペプチド配列は、配列番号2の基準配列と同一であるか、または該基準配列に対して、一定の整数個までのアミノ酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のアミノ酸の欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリペプチド配列のアミノまたはカルボキシ末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のアミノ酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。そのようなアミノ酸変異の数は、配列番号2のアミノ酸の総数に、同一性%を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号2のアミノ酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
a ≦xa −(xa・y)
により求めることができる。式中、naはアミノ酸変異の数であり、xaは配列番号2のアミノ酸の総数であり、yは50%については0.50、60%については0.60、70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85、90%については0.90、95%については0.95、97%については0.97または100%については1.00であり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxaとyの非整数の積は、その積をxaから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
【0159】
例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号2の基準配列と同一である、すなわち基準配列に対して100%の同一性を有し得るか、または同一性%が100%未満となるように該基準配列に対して一定の整数個までのアミノ酸変異を含んでいてもよい。そのような変異は少なくとも1個のアミノ酸の欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)または挿入よりなる群から選択され、こうした変異は基準ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置、またはこれらの末端位置の間のどこに存在してもよく、基準配列中のアミノ酸の間に個々に、または基準配列内に1以上の連続するグループとして散在する。所定の同一性%についてのアミノ酸変異の数は、配列番号2のアミノ酸の総数に、同一性%値を示す整数を100で割った値を掛け、次いでその積を配列番号2のアミノ酸の総数から差し引くことにより、すなわち、次式:
a ≦xa −(xa・y)
により求めることができる。式中、naはアミノ酸変異の数であり、xaは配列番号2のアミノ酸の総数であり、yは例えば70%については0.70、80%については0.80、85%については0.85などであり、・は掛算演算子の記号であり、さらにxaとyの非整数の積は、その積をxaから引く前に、最も近似する整数に切り下げる。
【0160】
「個体」は、本明細書で生物に関して用いられる場合、多細胞真核生物、例えば限定するものではないが、後生動物、哺乳動物、ヒツジ(ovid)、ウシ(bovid)、サル(simian)、霊長類、ヒトなどを意味する。
【0161】
「単離された」とは、天然の状態から「人間の手によって」改変されたことを意味し、すなわち「単離された」組成物または物質が天然に存在するのであれば、それはそのもとの環境から変化しているか分離されており、またはその両方である。例えば、生存している生物の体内に自然界で存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離された」ものではないが、その天然状態の共存物質から分離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書中で用いられるように、「単離された」ものである。さらに、形質転換、遺伝子操作または任意のその他の組換え法により生物に導入されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、該生物(生物は生きていても生きていなくてもよい)中に存在しているとしても「単離された」ものである。
【0162】
「ポリヌクレオチド」とは、一般に任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これは一本鎖および二本鎖の領域を含む、修飾されていないRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAであり得る。
【0163】
「変異体」とは、基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと異なるが、不可欠な性質を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドのことである。典型的なポリヌクレオチドの変異体は基準ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列の点で相違する。この変異体のヌクレオチド配列の変化は、基準ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しても、しなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、以下で述べるように、基準配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸の置換、欠失、付加、融合および末端切断(トランケーション)をもたらしうる。典型的なポリペプチドの変異体は基準ポリペプチドとアミノ酸配列の点で相違する。一般的には、基準ポリペプチドの配列と変異体の配列が全般的によく類似しており、多くの領域で同一となるような相違に限られる。変異体と基準ポリペプチドは任意に組み合わせた1以上の置換、欠失、付加によりアミノ酸配列が相違していてよい。置換または挿入されるアミノ酸残基は遺伝子コードによりコードされるものであっても、なくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は対立遺伝子変異体のように天然に存在するものでも、天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発法または直接合成により作製することができる。
【0164】
「疾患」は、細菌による感染によって引き起こされるか、該感染に関連した任意の疾病を意味する。そのような疾患としては例えば、乳児および小児における中耳炎、高齢者における肺炎、副鼻腔炎、院内感染および侵襲性疾患、聴覚障害、中耳内の体液蓄積、聴覚神経損傷、言語学習遅発、上気道の感染および中耳の炎症を伴う慢性中耳炎、が挙げられる。
【0165】
実施例
下記の実施例は、特に詳細に記載した場合を除き、当業者によく知られた常用の標準的方法により行った。これらの実施例は説明のためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0166】
実施例1: モラクセラ・カタラーリス (Moraxella catarrhalis) ATCC 43617 由来の BASB020 遺伝子の発見および DNA 配列決定による確認
配列番号1のBASB020遺伝子を、モラクセラ・カタラーリス株ATCC 43617(Mc2931株とも称される)の配列決定未終了のゲノムDNA配列を含むIncyte PathoSeqデータベースで初めて発見した。配列番号2に示した、BASB020ポリヌクレオチド配列の翻訳は、セルプリナ・ヒオジセンテリアエ(Serpulina hyodysenteriae)のTlyC溶血素タンパク質と有意な類似性(227個のアミノ酸オーバーラップにおいて36%の同一性)を示した。
【0167】
さらにBASB020遺伝子の配列を実験的に確認した。この目的のために、QIAGENゲノムDNA抽出キット(Qiagen Gmbh)を用いてゲノムDNAをM.カタラーリス(M.catarrhalis)細胞(ATCC 43617株)1010細胞から抽出し、その1μgをプライマーE475781a(5'-ACT TGA ATA AAA CCG AGT G-3')(配列番号9)およびE475782a(5'-GAC ATT GGC CGC AAC ATG C-3')(配列番号10)を用いるポリメラーゼ連鎖反応DNA増幅に供した。このPCR産物をBiorobot 9600(Qiagen Gmbh)装置で精製し、Big Dye Cycle Sequencingキット(Perkin-Elmer)およびABI 377/PRISM DNAシーケンサーを用いてDNA配列決定した。DNA配列決定は両方の鎖に関して2回重複して行い、完全長配列をSequencherTMソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて組み立てた。得られたDNA配列は配列番号1に対して100%の同一性を有していることが分かった。
【0168】
実施例2: 数種のモラクセラ・カタラーリス株間の BASB020 遺伝子の多様性解析
2A : 制限断片長解析( RFLP
ゲノムDNAは16のM.カタラーリス株(表1に示す)から以下に記載のように抽出した。M.カタラーリスをBHI寒天プレート上の単一コロニーに対してストリークし、37℃で一晩培養させた。3または4個の単一コロニーを拾って、それを用いて約1.5mlのBHI(脳-心臓浸出物)ブロス接種培養液に接種し、振とう培養機にて37℃、約300rpmで一晩培養した。約150mlのBHIブロスを入れた500mlエーレンマイヤーフラスコにその接種培養液を接種し、振とう培養機にて37℃、約175rpmで12〜16時間培養して、DNA単離用の菌体量を生じさせた。細胞は、室温にて15分間、Sorvall GSAローターで約2000×gで遠心分離することによって回収した。上清を除き、細胞ペレットを約5.0mlの無菌水に懸濁した。等量の溶解バッファー(200mM NaCl, 20mM EDTA, 40mM Tris-HCl, pH 8.0, 0.5%(w/v) SDS, 0.5%(v/v) 2-メルカプトエタノール, および250μg/mlのプロテイナーゼK)を加え、穏やかに攪拌し破砕することにより、細胞を懸濁させた。次いでその細胞懸濁液を50℃で約12時間インキュベートして細菌を溶菌させ、染色体DNAを放出させた。飽和NaCl(約6.0M、無菌水中)5.0mlを加え、室温にてSorvall SS34ローターで約5,500×gで遠心分離することによって、タンパク質材料を沈殿させた。清澄化された上清から、2容量の100%エタノールを加えることによって染色体DNAを沈殿させた。凝集したDNAを回収し、少量の70%エタノール溶液中で穏やかに攪拌して洗浄した。精製された染色体DNAを無菌水に懸濁し、4℃で一晩、穏やかに振動させることにより溶解/分散させた。溶解したDNAの濃度は、分光測定により、吸光係数を1.0 O.D.単位で約50μg/mlとして、260nmにて測定した。
【0169】
この物質を次にPCR増幅させた。この際、MC-Hly3-BamF(5'-AAG GGC CCA ATT ACG CAG AGG GGA TCC ATG CGT GGT CTT AGG CGT TGG TTA TCC ACC G-3')[配列番号11]オリゴヌクレオチド、およびMC-Hly3-SalRC(5'-AAG GGC CCA ATT ACG CAG AGG GTC GAC TTA TTA TTC AGC ATT CTC AAG CTG TGG TAT CAG-3')[配列番号12]オリゴヌクレオチドを使用した。次いで対応するBASB020遺伝子のアンプリコンを制限酵素(AciI、AluI、HphI、MseI、NlaIII、Tsp509I)を用いて独立して加水分解し、制限産物をアガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。ここでは、「Molecular Cloning, a Laboratory Manual,第2版,編者:Sambrook, Fritsch & Maniatis, Cold Spring Harbor Press 1989」に記載されているような、標準的な分子生物学的手法を用いた。得られた電気泳動ゲルの写真を図1に示す。各株について、6つの制限酵素に対応するRFLPパターンを得点化し、組合せた。次いで同一のRFLPパターンの組合せを共有する株のグループを定義した。この方法論により、本研究で調べた株は6つのゲノムグループに分類される(グループ1:Mc2904、Mc2905、Mc2906、Mc2969;グループ2:Mc2907、Mc2913;グループ3:Mc2908、Mc2909、Mc2931、Mc2975;グループ4:Mc2910、Mc2912、Mc2956;グループ5:Mc2911;グループ6:Mc2926)。これらのデータは、本研究に用いられたモラクセラ・カタラーリス母集団がBASB020遺伝子に関していくつかのヌクレオチド配列の多様性を示すことを裏付けるものである。
【0170】
2B : その他の株における DNA 配列決定
BASB020配列を決定するために用いたATCC 43617 (Mc2931)株は、RFLPによりグループ番号3に分類された。また、実施例1に記載したような実験的方法を用いて、BASB020遺伝子の配列を、その他の3つのRFLPゲノムグループ(Gr.1(Mc2969)、Gr.2(Mc2913、およびGr.4(Mc2912))を代表するモラクセラ・カタラーリス株について決定した。Mc2912、Mc2913、およびMc2969株のBASB020遺伝子のポリヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号3、5、および7に示す。これらのポリヌクレオチド配列はアミノ酸配列に翻訳され、その配列はそれぞれ配列番号4、6、および8に示される。DNASTAR Lasergene パッケージのMegAlignプログラムを用いて、配列番号1、3、5、および7のポリヌクレオチド配列のマルチプルアライメントを実施し、これを図2に示した。同一性のペアワイズ比較を表2にまとめており、これは4つのBASB020ヌクレオチド遺伝子配列が全て99%以上の同一性レベルの類似性を有することを示す。同プログラムを用いて、配列番号2、4、6、および8のポリペプチド配列のマルチプルアライメントを実施し、これを図3に示した。同一性のペアワイズ比較を表3にまとめており、これは4つのBASB020タンパク質配列が全て99%以上の同一性レベルの類似性を有することを示す。
【0171】
【表1】
表1:本研究で使用したモラクセラ・カタラーリス株の特徴
Figure 0004503175
【表2】
表2:BASB020ポリヌクレオチド配列間のペアワイズ同一性(%)
Figure 0004503175
【表3】
表3:BASB020ポリペプチド配列間のペアワイズ同一性(%)
Figure 0004503175
【0172】
実施例3: 組換え BASB020 を発現するプラスミドの構築
A BASB020 のクローニング
順方向増幅プライマー(配列番号11)および逆方向増幅プライマー(配列番号12)各々の内に遺伝子工学的に作製されたBamHIおよびSalI制限部位によって、504bpのPCR産物を市販の大腸菌発現プラスミドpQE30(QiaGen、アンピシリン耐性)中に方向性クローニングすることができるようになり、成熟BASB020タンパク質をそのN末端に(His)6アフィニティークロマトグラフィータグを含む融合タンパク質として発現させることができた。BASB020のPCR産物を、メーカーの説明書に従ってシリカゲルベースのスピンカラム(QiaGen)を使用して、増幅反応液から精製した。クローニングに必要な必須BamHIおよびSalI末端を生成するために、精製したPCR産物を、メーカー(Life Technologies)が推奨する通りに制限酵素BamHIおよびSalIを用いて連続的に完全消化した。第1の制限消化に続いて、PCR産物を上記のようにスピンカラムを通して精製して塩を除去し、第2の酵素消化の前に無菌水中に溶出させた。消化したDNA断片は、pQE30プラスミドとのライゲーションの前に、再びシリカゲルベースのスピンカラムを用いて精製した。
【0173】
B : 発現ベクターの生産
発現プラスミドpQE30をライゲーション用に調製するために、該プラスミドを、BamHIおよびSalIの両方で同様に完全消化し、次いでセルフライゲーションを防ぐためにメーカーの指示する通りウシ腸管ホスファターゼ(CIP、5’末端1pmol当り約0.02単位、Life Technologies)で処理した。調製ベクターに対して、消化した断片を約5倍のモル過剰で使用して、ライゲーション反応液を設定した。標準的な約20μlのライゲーション反応(約16℃、約16時間)は、当技術分野で周知の方法を用いて、T4 DNAリガーゼ(約2.0単位/反応、Life Technologies)を使用して行った。このライゲーションのアリコート(約5μl)を使用して、当技術分野で周知の方法に従ってエレクトロコンピテントM15(pREP4)細胞を形質転換した。約1.0mlのLBブロス中、37℃で約2〜3時間の増殖時間に続いて、形質転換した細胞をカナマイシン(50μg/ml)およびアンピシリン(100μg/ml)を含むLB寒天プレート上に播いた。全ての形質転換細胞が、pQE30上のタンパク質のIPTG誘導性発現に対する発現抑制に必要とされるlacIq遺伝子を保持するpREP4プラスミド(KnR)と、pQE30-BASB020プラスミド(ApR)の両方を保有することを確実にするため、選択培地中に両方の抗生物質を含ませた。プレートを37℃で約16時間、一晩培養した。個々のKnR/ApRコロニーを滅菌済つまようじで拾い、それを用いて新鮮なLB KnR/ApRプレートに「パッチ」接種し、また同様に約1.0mlのLB KnR/AnRブロス培養液に接種した。パッチプレートおよびブロス培養液を両方とも、標準的なインキュベーター(プレートの場合)または振とうさせたウォーターバス中で、37℃にて一晩培養した。
【0174】
全細胞に基づくPCR解析を用いて、形質転換体がBASB020 DNAインサートを含むことを確認した。ここで、約1.0mlのLB Kn/Apブロス一晩培養液を1.5mlポリプロピレンチューブに移し、Beckmann微量遠心機中で遠心分離することにより(約3分間、室温、約12,000×g)細胞を回収した。この細胞ペレットを約200μlの無菌水に懸濁し、その約10μlアリコートを使用して、BASB020順方向および逆方向増幅プライマーを含む最終容量約50μlのPCR反応液を設定した。PCR反応液の成分の最終濃度は、Taqポリメラーゼ約5.0単位を使用したこと以外は、本質的には実施例2で指定されたものと同じであった。初めの95℃の変性ステップを3分間に増やして細菌細胞の熱破壊とプラスミドDNAの放出を確保した。ABI Model 9700 サーマルサイクラーを使用し、32サイクル、3ステップの熱増幅プロファイル(すなわち95℃, 45秒間、55〜58℃, 45秒間、72℃, 1分間)によって、溶解した形質転換体試料由来のMC-P6 PCR 断片を増幅した。熱増幅に続き、該反応液の約20μlアリコートをアガロースゲル電気泳動(Tris-アセテート-EDTA(TAE)バッファー中、0.8% アガロース)により分析した。ゲル電気泳動およびエチジウムブロマイド染色の後、DNA断片をUV照射により可視化した。DNA分子サイズ基準(1kbラダー、Life Technologies)を被験試料と平行して電気泳動し、PCR産物のサイズを見積もるのに用いた。504bpと予想されるPCR産物を生成する形質転換体を、BASB020発現構築体を含有する株として同定した。次に発現プラスミド含有株を組換えBASB020の誘導性発現について解析した。
【0175】
C PCR- 陽性形質転換体の発現解析
上記で同定された各PCR-陽性形質転換体について、パッチプレートに由来する細胞を、カナマイシン(50μg/ml)およびアンピシリン(100μg/ml)を含有する約5.0mlのLBブロスに接種し、37℃で振とう(約250rpm)しながら一晩培養した。一晩接種培養液(約1.0ml)のアリコートを、125mlエーレンマイヤーフラスコに入れた約25mlのLB Kn/Apブロスに接種し、培養液の濁度がO.D.600値約0.5に達するまで、すなわち中間対数期(mid-log phase)に達するまで(通常約1.5〜2.0時間)、37℃で振とう(約250rpm)しながら増殖させた。この時点でその培養液のおよそ半分(約12.5ml)を第2の125mlフラスコに移し、さらに最終濃度1.0mMになるようIPTG(無菌水中に調製した1.0Mストック、Sigma)を添加することにより組換えBASB020タンパク質の発現を誘導した。IPTG誘導性培養液および非誘導性培養液の両方を、さらに4時間、37℃で振とうしながら培養し続けた。誘導時間後、誘導性培養液および非誘導性培養液の両方の試料(約1.0ml)を取り出し、微量遠心機での室温にて約3分間の遠心分離によって細胞を回収した。それぞれの細胞ペレットを約50μlの無菌水に懸濁し、次いで2-メルカプトエタノールを含有する等量の2×Laemelli SDS-PAGEサンプルバッファーと混合して、沸騰しているウォーターバス中に約3分間置いてタンパク質を変性させた。粗IPTG誘導性細胞溶解物および粗非誘導性細胞溶解物の両方を等量ずつ(約15μl)、二重(duplicate)12%Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(1mm厚 Mini-gels, Novex)にロードした。誘導性および非誘導性溶解物サンプルを、標準SDS/Tris/グリシン泳動バッファー(BioRad)を使用し、慣用条件下で予め染色した分子量マーカー(SeeBlue, Novex)と共に電気泳動した。電気泳動後、一方のゲルをクーマシーブリリアントブルーR250(BioRad)で染色することで、新規のBASB020 IPTG誘導性タンパク質が可視化された。第2のゲルは、BioRad Mini-Protean II ブロッティング装置およびTowbinのメタノール(20%)トランスファーバッファーを使用して、PVDF膜(0.45ミクロン孔サイズ, Novex)上に、4℃にて約2時間かけてエレクトロブロットした。膜のブロッキングおよび抗体インキュベーションを、当技術分野で周知の方法に従って実施した。モノクローナル抗RGS(His)3抗体、続いてHRPに結合させた第2のウサギ抗マウス抗体(QiaGen)を用いて、BASB020組換えタンパク質の発現および正体(identity)を確認した。抗His抗体の反応パターンを、ABT不溶性基質を用いるか、またはAmersham ECL 化学蛍光システムを用いたHyperfilmを使用して、可視化することができた。
【0176】
D : 配列確認
発現されているIPTG誘導性組換えBASB020タンパク質が正しいオープンリーディングフレームにあり、クローニングによる人為現象(すなわちフレームシフト)から生じた偽の分子ではないことをさらに確認するために、クローン化されたインサートのDNA配列を決定した。M.カタラーリスのBASB020遺伝子のDNA配列は、従来の非対称PCRサイクルシークエンス法(ABI Prism Dye-Terminator Cycle Sequencing, Perkin-Elmer)を用いて片方の鎖から得た。シークエンス反応液は、鋳型として非消化発現プラスミドDNA(約0.5μg/rxn)、ならびに適切なpQE30ベクター特異的プライマーおよびORF特異的シークエンスプライマー(約3.5pmol/rxn)を用いて設定した。鋳型とシークエンスプライマーに加えて、各シークエンス反応液(約20μl)には4種の異なるdNTP(すなわちA、G、C、およびT)ならびに4種の対応するddNTP(すなわちddA、ddG、ddC、およびddT)終結因子ヌクレオチドを含めた。各終結因子は、4種の蛍光色素Joe、Tam、Rox、およびFamのうちの1つに結合させたものを使用した。一本鎖シークエンシング伸長産物は、その色素標識したddNTP終結因子を取り込むことによって、鋳型に沿ったランダムな部位で終結した。蛍光色素標識された終結産物を、微量遠心分離サイズ排除クロマトグラフィーカラム(Princeton Genetics)を使用して精製し、真空下で乾燥させ、キャピラリー電気泳動用のTemplate Resuspension Buffer(Perkin-Elmer) またはPAGE用の脱イオン化ホルムアミドに懸濁して、95℃で約5分間変性し、メーカーの推奨に従って高分解能キャピラリー電気泳動(ABI 310 Automated DNA Sequenator, Perkin-Elmer)または高分解能PAGE(ABI 377 Automated DNA Sequenator)により分析した。個々の反応から生成されたDNA配列データを集め、相対蛍光ピーク強度をABI Sequence Analysis Software(Perkin-Elmer)を用いてPowerMACコンピュータ上で自動解析した。AutoAssemblerソフトウェア(Perkin-Elmer)を用いて一本鎖コンセンサス配列「文字列(string)」に統合する前に、正確を期して、個々に自動解析したDNA配列を手作業で編集した。配列決定により、発現プラスミドが正しい配列を正しいオープンリーディングフレームで含むことを確定した。
【0177】
実施例4: 組換え BASB020 の生産
菌株
M.カタラーリス(M.catarrhalis)由来のBASB020をコードするプラスミド(pQE30)を含有する大腸菌M15組換え体発現株(pREP4)を使用して、組換えタンパク質精製用の細胞集団を生産した。この発現株を、50μg/mlのカナマイシン(「Kn」)および100μg/mlのアンピシリン(「Ap」)を含有するLB寒天プレート上で培養し、pREP4 lacIq制御プラスミドとpQE30-BASB020発現構築物との両方が共に確実に保持されるようにした。-80℃で凍結保存するために、この株を前記と同濃度の抗生物質を含有するLBブロス中で増殖させて、その後30%(w/v)グリセロールを含有する等量のLBブロスと混合した。
【0178】
培地
組換えタンパク質生産のために使用した発酵培地は、50μg/mlのKnおよび100μg/mlのApを含有する2X YTブロス(Difco)からなるものであった。消泡剤(Antifoam204、Sigma)を発酵槽(fermentor)に対して0.25ml/Lの濃度で培地に添加した。BASB020組換えタンパク質の発現を誘導するために、IPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド)を前記発酵槽に添加した(最終濃度1mM)。
【0179】
発酵
50ml実使用量(working volume)を含有する500mlのエーレンマイヤー接種用フラスコに、急速解凍した凍結培養物0.3mlまたは選択寒天プレート培養物から得た数個のコロニーを接種し、150rpmで試料台を振とうしながら37±1℃にて約12時間培養した(Innova2100、New Brunswick Scientific)。次に、この接種培養物を用いて、2X YTブロスならびに抗生物質KnおよびApの両方を含む5L実使用量の発酵槽に接種した。この発酵槽(Bioflo3000、New Brunswick Scientific)を、37±1℃、0.2〜0.4 VVMの空中散布(air sparge)、Rushton攪拌翼による250rpmにて、作動させた。フラスコ接種培養物中でも発酵槽中でも、pHは調整しなかった。発酵中、前記発酵槽におけるpHは6.5から7.3に変化した。培養物が対数増殖中期(O.D.600単位で約0.7)に達した時に、前記発酵槽にIPTG(滅菌水中で調製した1.0Mストック)を添加した。細胞を、2〜4時間誘導した後、28RS Heraeus(Sepatech)またはRC5C超高速遠心機(Sorvall Instruments)のいずれかを用いる遠心分離により回収した。細胞ペーストを、処理するまで-20℃で保存した。
【0180】
精製
化学物質および材料
バイオテクノロジー等級またはそれ以上の等級のイミダゾール、塩酸グアニジン、トリス(ヒドロキシメチル)、およびEDTA(エチレンジアミン四酢酸)は全てAmeresco Chemical,Solon,Ohioから入手した。トリトンX-100(t-オクチルフェノキシポリエトキシ-エタノール)、リン酸ナトリウム(一塩基のもの(monobasic))、および尿素は試薬等級またはそれ以上の等級であり、Sigma Chemical Company,St.Louis,Missouriから入手した。氷酢酸および塩酸はMallincrodt Baker Inc.,Phillipsburg,New Jerseyから入手した。メタノールはFisher Scientific,Fairlawn,New Jerseyから入手した。Pefabloc(登録商標)SC(4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド)、完全プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Complete protease inhibitor cocktail tablet)、およびPMSF(フェニルメチル−スルホニルフルオライド)はRoche Diagnostics Corporation,Indianapolis,Indianaから入手した。ベスタチン、ペプスタチンA、およびE-64プロテアーゼインヒビターはCalbiochem,LaJolla,Californiaから入手した。ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(1×PBS)はQuality Biological,Inc.,Gaithersburg,Marylandから入手した。ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(10×PBS)はBio Whittaker,Walkersville,Marylandから入手した。BSAを含まないPenta-His抗体はQiaGen,Valencia,Californiaから入手した。ペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgGはJackson Immuno Research,West Grove,Penn.から入手した。AEC単一溶液(AEC single solution)はZymed,South San Francisco,Californiaから入手した。他の全ての化学物質は試薬等級またはそれ以上の等級であった。
【0181】
Ni-NTA Superflow樹脂はQiaGen Inc.,Valencia,Californiaから入手した。既製のトリス-グリシン4〜20%および10〜20%ポリアクリルアミドゲル、全ての泳動用バッファーおよび溶液、SeeBlue Pre-Stained Standards、MultiMark Multi-Colored StandardsならびにPVDFトランスファー膜はNovex,San Diego,Californiaから入手した。SDS-PAGE銀染色キットはDaiichi Pure Chemicals Company Limited,Tokyo,Japanから入手した。クーマシー染色液はBio-Rad Laboratories,Hercules,Californiaから入手した。Acrodisc(登録商標)PF 0.2μmシリンジフィルターはPall Gelman Sciences,Ann Arbor,Michiganから入手した。GD/X 25mm使い捨てシリンジフィルターはWhatman Inc.,Clifton,New Jerseyから入手した。透析チューブ8,000 MWCOはBioDesign Inc.Od New York,Carmal New Yorkから入手した。BCAタンパク質アッセイ試薬およびSnake Skin透析チューブ3,500 MWCOはPierce Chemical Co.,Rockford,Illinoisから入手した。
【0182】
抽出プロトコル
細胞ペーストを室温にて30〜60分かけて解凍し、5〜6gの材料を量りとって50mlの使い捨て遠心チューブに入れた。これに5ml/gの塩酸グアニジン(Gu-HCl)バッファー(6M 塩酸グアニジン、100mM リン酸ナトリウム(一塩基のもの)、10mM トリスおよび0.05%のトリトンX-100、pH8.0)を加えた。細胞ペーストを、PRO300Dプロサイエンティフィックホモジナイザーを用いて1分間3/4パワーで再懸濁した。次に、得られた抽出混合物を、穏やかに揺らしながら60〜90分室温にて放置した。60〜90分後、前記抽出混合物を15,800×gで15分遠心した(Sorvall RC5C遠心機、11,500rpm)。得られた上清(S1)をデカントし、更なる精製のためにとっておいた。ペレット(P1)は解析用にとっておいた。
【0183】
BASB020 のニッケル -NTA 樹脂への結合
前記S1に3〜4mlのNi-NTA樹脂を添加した。次に、これを穏やかに揺らしながら1時間室温にて放置した。1時間後、S1/Ni-NTAをXK16ファルマシアカラムに詰めた。次いでこのカラムを1M Gu-HClバッファー(1M 塩酸グアニジン、100mM リン酸ナトリウム(一塩基のもの)、10mM トリスおよび0.05%トリトンX-100、pH8.0)で洗浄した。これをさらにリン酸バッファー(100mM リン酸ナトリウム(一塩基のもの)、10mM トリスおよび0.05%トリトンX-100、pH6.3)で洗浄した。その後、250mM イミダゾールバッファー(250mM イミダゾール、100mM リン酸ナトリウム(一塩基のもの)、10mM トリスおよび0.05%トリトンX-100、pH5.9)を用いて、前記カラムからタンパク質を溶出させた。
【0184】
最終生成物
0.1%トリトンX-100および1×PBS、pH7.4の3種の変更に対して一晩透析を行い、残留するGu-HClおよびイミダゾールを除去することにより、BASB020を生成した。この精製タンパク質を特性付けし、これを用いて以下に記載するように抗体を製造した。
【0185】
生化学的特徴付け
SDS-PAGE およびウェスタンブロット解析
組換え精製タンパク質を4〜20%ポリアクリルアミドゲル上で分解し、以前に記載されたように(Thebaineら、1979, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:4350-4354)、100Vで1時間電気泳動することによりPVDF膜に移した。次に、このPVDF膜を5%の脱脂粉乳を含有する25mlのダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水で前処理した。その後の全てのインキュベーションは、この前処理バッファーを用いて行った。
【0186】
PVDF膜を、予備免疫血清またはウサギ抗His免疫血清の1:500希釈物25mlと共に室温にて1時間インキュベートした。次に、PVDF膜を洗浄バッファー(20mM トリスバッファー、pH7.5、150mM 塩化ナトリウムおよび0.05%Tween20を含む)で2回洗浄した。PVDF膜をペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)の1:5000希釈物25mlと共に室温にて30分インキュベートした。次に、このPVDF膜を洗浄バッファーで4回洗浄し、Zymed(San Francisco,CA)から供給された3-アミノ-9-エチルカルバゾールおよび過酸化尿素を用いて各々10分間展開した。
【0187】
SDS-PAGEの結果(図4)は、約32〜35kDaのタンパク質が90%以上精製されたことを示しており、またこのSDS-PAGEのウェスタンブロット(図5)から、該タンパク質が抗RGS(His)抗体に対して反応性であることが示された。
【0188】
タンパク質の配列決定
モデル1090 LCを備えたHewlett-PackardモデルG1000Aシーケンサーおよびモデル1100 LCを備えたHewlett-Packardモデル241シーケンサーに関して十分に定められた化学プロトコルを用いて前記精製タンパク質のアミノ末端のアミノ酸配列を決定することにより、正しい組換えタンパク質が生産されたことを確認した。
【0189】
実施例5: 組換え BASB020 に対する抗血清の生産
2羽のウサギに前記精製組換えBASB020タンパク質をワクチン接種することにより、該BASB020タンパク質に対する多価抗血清を作製した。約20μg/注射のBASB020タンパク質をおよそ21日間隔で筋肉内注射(i.m.)(最初は完全フロイントアジュバントを使用し、次いで不完全フロイントアジュバントを使用する)することにより、各動物を全部で3回免疫した。最初の免疫前(「採血前(pre-bleed)」)および35日目と57日目に動物から採血した。
【0190】
抗BASB020タンパク質の力価を、精製組換えBASB020タンパク質(0.5μg/ウェル)を用いるELISAにより測定した。力価は、次の式: 抗血清の2つの試験サンプルの平均OD − バッファーの2つの試験サンプルの平均OD、を用いて算出した場合に0.1以上となる最も高い希釈率であると定義した。3回免疫後の力価は3000から8000の間であった。
【0191】
抗血清を第1の抗体として使用し、上記実施例4で記載したようにして、ウェスタンブロット中の前記タンパク質を確認した。ウェスタンブロットにより、免疫した動物の血清中の抗BASB020抗体の存在が示された。
【0192】
実施例6: 免疫学的特徴付け
ウェスタンブロット解析
M.カタラーリス(M.catarrhalis)の幾つかの菌株(例えば、ATCC49143およびATCC43617)ならびに様々な地理学的地域からの臨床分離株を、チョコレート寒天プレート上で5%CO2中35℃にて48時間増殖させた。数個のコロニーを使用して250mlフラスコ中のMuller Hintonブロス25mlに接種した。培養物を一晩増殖させて、遠心分離により回収した。次に、150μlのPAGEサンプルバッファー(360mM トリスバッファー、pH8.8、4%ドデシル硫酸ナトリウムと20%グリセロールを含有する)中に30μgの細胞を懸濁し、この懸濁物を100℃にて5分インキュベートすることにより、該細胞を可溶化した。可溶化した細胞を4〜20%ポリアクリルアミドゲル上で分解し、分離されたタンパク質を、以前に記載されたように(Thebaineら、1979, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:4350-4354)、100Vで1時間電気泳動することによりPVDF膜に移した。次に、このPVDF膜を5%の脱脂粉乳を含有する25mlのダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水で前処理した。その後の全てのインキュベーションは、この前処理バッファーを用いて行った。
【0193】
PVDF膜を、予備免疫血清またはウサギ免疫血清の1:500希釈物25mlと共に室温にて1時間インキュベートした。次に、PVDF膜を洗浄バッファー(20mM トリスバッファー、pH7.5、150mM 塩化ナトリウムと0.05%Tween20を含む)で2回洗浄した。PVDF膜をペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,West Grove,PA)の1:5000希釈物25mlと共に室温にて30分インキュベートした。次に、このPVDF膜を洗浄バッファーで4回洗浄し、Zymed(San Francisco,CA)から供給された3-アミノ-9-エチルカルバゾールおよび過酸化尿素を用いて各々10分間展開した。
【0194】
抗血清に対して反応性を示す約32〜35kDa(BSAB020の予想分子量に相当)のタンパク質が全てのモラクセラ(Moraxella)株で検出された。
【0195】
実施例7: 回復期のヒト血清における BASB020 に対する抗体の存在
精製組換えBASB020のウェスタンブロット分析を、M.カタラーリス(M.catarrharis)に感染した子供から得たヒト血清のプールを第1抗体調製物として使用したこと以外は上記実施例4および6に記載した通りに行った。結果から、図6に示すように、自然状態で感染した個体からの抗血清が前記精製組換えタンパク質と反応することがわかる。
【0196】
実施例8: BASB020 ワクチンの有効性:マウスにおける M. カタラーリス (M.catarrharis) の肺クリアランスの増大
精製組換えBASB020タンパク質の防御能をマウスモデルにおいて試験した。このマウスモデルはM.カタラーリス(M.catarrharis)の肺への侵入の解析とその後のワクチン接種マウスに対する標準的な鼻腔内チャレンジをベースとする。
【0197】
6匹のBALB/cマウス(雌、6週齢)よりなる群を、10μg用量に相当する100μlのワクチンを皮下に接種することにより免疫し、2週間後に追加免疫する。追加免疫の1週間後、麻酔下で50μlの細菌懸濁物(+/-106 CFU/50μl)を左外鼻孔に滴注することによりマウスをチャレンジする(マウスの麻酔には、ケタミンとキシラジン麻酔の組合わせ、すなわち0.24mgのキシラジン(Rompun)と0.8mgのケタミン(Imalgene)との組合わせ/100μlを用いた)。チャレンジの4時間後にマウスを犠牲にし、肺を無菌的に取り出して個別にホモジネートした。log10加重した(log10 weighed)肺当りのCFUの平均数は、前記ホモジネートの5連続希釈物20μlをプレーティングした後にMueller-Hinton寒天プレート上で増殖したコロニー数を計測することにより決定した。log10加重した肺当りのCFUの平均数の計算値および標準偏差を各群について算出した。
【0198】
分散の均等性(BrownおよびForsytheのテストによりチェックする)および正規性(Shapiro-Wilkテストによりチェックする)を仮定して、1方向ANOVA(1-way ANOVA)を適用することにより統計学的に解析した。群間での差異をDunnetテスト、Tukey’s studentised range test(HSD)およびStudent-Newman-Keulsテストを用いて解析した。
【0199】
この実験では、マウス群を、AlPO4上に吸着させたBASB020(100μgのAlPO4上に10μgのBASB020)またはAlPO4上に吸着させたM.カタラーリス(M.catarrharis)株ATCC43617の死滅させた全細胞(kwc)調製物(100μgのAlPO4上に5 108個の細胞)、または抗原をもたない100μgのAlPO4、のいずれかを用いて免疫した。106CFUの生存M.カタラーリス(M.catarrharis)ATCC43617菌株を用いてマウスをチャレンジした。チャレンジの4時間後に、log10加重した肺当りのCFUの平均数および標準偏差を各グループについて算出した。擬似免疫した(sham immunized)マウスはチャレンジの4時間後では5.5(+/-0.23)log10 CFU/肺であった。
【0200】
kwc調製物は、対照群と比較した場合に有意な肺クリアランスを誘導した(1.74 logの差異)。BASB020ワクチンは、対照群と比較した場合に肺クリアランスに0.62 logの差異を引き起こし、これは対照とは有意に異なっていた。
【0201】
精製組換えBASB020タンパク質およびBASB020タンパク質で免疫したマウスからチャレンジ前に回収してプールした血清を用いたウェスタンブロットにより、BASB020タンパク質に対する抗体の存在が示された(図7)。
【0202】
実施例9: BASB020 ペプチドの生産、抗血清およびその反応性
配列CNEEAWSQNRRAELSY(配列番号13)および配列YTGVAPLVDNDETV(配列番号14)を有する2つの短いアミノ酸BASB020特異的ペプチドを、一般によく知られた方法を用いて実験室で生産した。KLHに結合させたこれらのペプチドを使用して、12週齢のSPFニュージーランド雌ウサギ体内で抗体を産生させた。完全フロイントアジュバント中(1回目の注射)または不完全フロイントアジュバント中(2、3および4回目の注射)の200μgのペプチド-KLHを、約3週間隔で4回ウサギに注射した。初回免疫前および4回目の免疫の1月後に動物から採血した。
【0203】
抗ペプチド中央力価(anti-peptide mid-point titres)を遊離ペプチドを用いるELISAにて測定した。4回目の免疫から1月後の抗ペプチド中央力価は、41000を上回っていた。精製組換えBASB020のウェスタンブロットは、第1抗体として抗ペプチド抗体を用いて、実施例4および6に記載した通りに調製した。結果を図8に示す。
【0204】
寄託物
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)カトリン(Catlin)株を含む寄託物をAmerican Type Culture Collection(「ATCC」)に1997年6月21日に寄託し、寄託番号43617を得た。この寄託物は、カタル球菌(Branhamella catarrhalis)(FroschおよびKolle)として記載され、慢性気管支炎を患っている炭坑夫の経気管吸引液から得たM.カタラーリス分離株から構築した、凍結乾燥した1.5〜2.9kbのインサートライブラリーである。この寄託物は、Antimicrob. Agents Chemother. 21:506-508 (1982)に記載されている。
【0205】
該モラクセラ・カタラーリス株の寄託物は、本明細書では「寄託株」または「寄託株のDNA」と称する。
【0206】
該寄託株は、完全長BASB020遺伝子を含む。
【0207】
pQE30に挿入されたモラクセラ・カタラーリスDNAからなるベクターpMC-Hly3の寄託物を、American Type Culture Collection(ATCC)に1999年2月12日に寄託し、寄託受託番号207106を得た。
【0208】
万一本明細書の配列の記述と矛盾する場合、寄託株/クローンに含まれるポリヌクレオチドの配列、ならびにそれによってコードされる任意のポリペプチドのアミノ酸配列が優先される。
【0209】
寄託株の寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に基いてなされたものである。この寄託株は、変更できず、特許発行の際には無制限または無条件に一般に公開される。寄託株は、単に当業者の便宜のために提供されるものであり、寄託が米国特許法第112条で要求されるような実施可能要件を満たす上で必要であるということを承認するものではない。
【0210】
Figure 0004503175
【0211】
配列情報
BASB020 ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列
配列番号1
MC2931株に由来するモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリヌクレオチド配列
Figure 0004503175
配列番号2
MC2931株に由来するモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリペプチド配列
Figure 0004503175
配列番号3
Mcat 2912株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリヌクレオチド配列
Figure 0004503175
Figure 0004503175
配列番号4
Mcat 2912株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリペプチド配列
Figure 0004503175
配列番号5
Mcat 2913株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリヌクレオチド配列
Figure 0004503175
配列番号6
Mcat 2913株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリペプチド配列
Figure 0004503175
Figure 0004503175
配列番号7
Mcat 2969株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリヌクレオチド配列
Figure 0004503175
配列番号8
Mcat 2969株由来のモラクセラ・カタラーリスBASB020のポリペプチド配列
Figure 0004503175
配列番号9
Figure 0004503175
配列番号10
Figure 0004503175
配列番号11
Figure 0004503175
配列番号12
Figure 0004503175
配列番号13
Figure 0004503175
配列番号14
Figure 0004503175

【図面の簡単な説明】
【図1】 BASB020のRFLP解析において得られた電気泳動ゲルの写真。
【図2】 BASB020ポリヌクレオチド配列のアライメント。配列番号1と同一の塩基をドットで示す。
【図3】 BASB020ポリペプチド配列のアライメント。配列番号2と同一のアミノ酸をドットで示す。
【図4】 組換え精製BASB020についての、クーマシー染色したSDS-PAGEゲル
【図5】 抗His抗体でプローブした、精製組換えBASB020タンパク質のウェスタンブロット
【図6】 プールしたヒト回復期血清を1/100希釈したものでプローブした、精製組換えBASB020タンパク質のウェスタンブロット(レーン1:分子量マーカー)
【図7】 免疫感作マウス血清を用いた、精製組換えBASB020タンパク質のウェスタンブロット
【図8】 対応する抗ペプチド血清を用いた、精製組換えBASB020タンパク質のウェスタンブロット(レーン1:分子量マーカー)
【配列表】
Figure 0004503175
Figure 0004503175
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Figure 0004503175

Claims (33)

  1. 配列番号4および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、それぞれの配列の全長にわたって少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)感染症に対するワクチンに有効な単離されたポリペプチド。
  2. アミノ酸配列が、配列番号4および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、それぞれの配列の全長にわたって少なくとも95%の同一性を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 配列番号4および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  4. 配列番号4および配列番号6からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
  5. 配列番号4または配列番号6のポリペプチドの免疫原性断片であって、配列番号4または配列番号6の少なくとも15個の連続したアミノ酸からなり、配列番号4または配列番号6のポリペプチドを認識する免疫応答を引き起こすことができる、記断片。
  6. 配列番号4または配列番号6のポリペプチドの免疫原性断片であって、配列番号4または配列番号6の少なくとも15個の連続したアミノ酸からなり、担体と結合したときに配列番号4または配列番号6のポリペプチドを認識する免疫応答を引き起こすことができる、前記断片。
  7. 請求項5または6に記載の免疫原性断片を含むポリペプチド。
  8. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片を含む融合タンパク質。
  9. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
  10. モラクセラ・カタラーリス感染症に対するワクチンに有用で、かつ配列番号4または配列番号6のアミノ酸配列に対して、それぞれの配列の全長にわたって少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチド、または前記単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド
  11. 配列番号4または配列番号6のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して、そのコード領域全体にわたって少なくとも85%の同一性を有し、かつモラクセラ・カタラーリス感染症に対するワクチンに有用なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、または前記単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド
  12. 配列番号3または配列番号5のヌクレオチド配列に対して、それぞれの配列の全長にわたって少なくとも85%の同一性を有し、かつモラクセラ・カタラーリス感染症に対するワクチンに有用なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、またはその単離されたポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド
  13. 同一性が配列番号3または配列番号5に対して少なくとも95%である、請求項12のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  14. 配列番号4または配列番号6のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド。
  15. 配列番号3または配列番号5のポリヌクレオチドを含んでなる単離されたポリヌクレオチド。
  16. ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号3もしくは配列番号5の配列またはそれらの断片を有する標識プローブを用いて適当なライブラリーをスクリーニングすることによって得られる配列番号4または配列番号6のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチド。
  17. 請求項16のいずれか1項に記載の単離された組換えポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  18. 請求項9〜16のいずれか1項に記載の単離された組換えポリヌクレオチドを含む生存微生物。
  19. 請求項9〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現系。
  20. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質を発現できる請求項17に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  21. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質を含む請求項20に記載の宿主細胞の膜。
  22. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質の生産方法であって、請求項20に記載の宿主細胞を該ポリペプチド、免疫原性断片または融合タンパク質を産生させるのに十分な条件下で培養し、その培養培地から該ポリペプチド、免疫原性断片または融合タンパク質を回収することを含んでなる、記方法。
  23. 請求項16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現方法であって、宿主細胞を該ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む発現ベクターで形質転換し、該宿主細胞を該ポリヌクレオチドのいずれか1つを発現させるのに十分な条件下で培養することを含む、記方法。
  24. 有効量の請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質ならびに製薬上許容される担体を含むワクチン組成物。
  25. 有効量の請求項16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドおよび製薬上許容される担体を含むワクチン組成物。
  26. 少なくとも一の他のモラクセラ・カタラーリス抗原を含む、請求項24または25に記載のワクチン組成物。
  27. 請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片に対して生じ、かつ配列番号4または6のポリペプチドを認識する抗体。
  28. モラクセラ・カタラーリスに感染した疑いのある動物由来の生物学的サンプル中に存在する、請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項27に記載の抗体を同定することを含む、モラクセラ・カタラーリス感染の検出方法。
  29. 動物において免疫応答を引き起させるのに使用する薬剤の製造における、免疫学的に有効な量の請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質を含む組成物の使用。
  30. 動物において免疫応答を引き起させるのに使用する薬剤の製造における、免疫学的に有効な量の請求項16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組成物の使用。
  31. 請求項27に記載の少なくとも一の抗体および適当な製薬学的担体を含む、モラクセラ・カタラーリス疾患に罹患したヒトの治療に有効な治療用組成物。
  32. モラクセラ・カタラーリス感染症を治療または予防するための薬剤の製造における免疫学的に有効な量の請求項1〜4および7のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項5もしくは6に記載の免疫原性断片または請求項8に記載の融合タンパク質の使用。
  33. モラクセラ・カタラーリス感染症を治療または予防するための薬剤の製造における免疫学的に有効な量の請求項9〜16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの使用。
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