JP4502476B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および電気・電子機器部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略称することがある)樹脂組成物と、該組成物を用いて封止または被覆された電気・電子機器部品に関する。さらに詳しくは、長期信頼性を有する電気・電子機器部品を得るための封止剤または被覆剤として好適なPAS樹脂組成物と、該組成物を用いて封止または被覆された電気・電子機器部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性や難燃性、電気的特性、機械的特性に優れたエンジニアリングプラスチックであることから、電気機器や電子機器における各種部品の封止用材料、被覆用材料として広く用いられることが知られている〔例えば、特開昭61−266461号公報、特開昭61−296062号公報、特開昭62−150752号公報、特開平2−45560号公報、特開平5−202245号公報など〕。しかしながら、このPAS樹脂を封止用材料や被覆用材料に用いた電気・電子機器部品においては、ヒートサイクルの履歴後に、その動作の信頼性が低下するという問題がある。
【0003】
また、一般に封止や被覆を必要とする電気・電子機器部品は、シリコンチップやリードフレームなどからなり、通電のために、ボンディングワイヤーによりチップ上の端子とリードフレームとを接続した構造がとられている。このような構造の電気・電子機器部品にPAS樹脂を用いて封止する場合、通常、シリコンチップなどの部品を、予め金型内にインサートした後、PAS樹脂をスクリューインライン型射出成形機などに供給して、封止成形する方法がとられている。
【0004】
このような電気・電子機器部品用の封止材料や被覆材料には、長期信頼性を有する電気・電子機器部品を得るために、線膨張係数が小さく、かつ耐湿熱性や耐熱衝撃性が良好であることが要求される。また、射出成形時にボンディングワイヤーが変形したり切断することを回避するために、流動性が良好であることが要求されており、さらにパッケージ破損がないことも要求されている。
【0005】
このような状況から、これら電気・電子機器部品の封止材料や被覆材料に求められる上記の基本的な要求特性を充分に満足し得るPAS樹脂およびPAS樹脂組成物の開発が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期信頼性を有する電気・電子機器部品用の封止剤または被覆剤に用いる線膨張係数が小さく、かつ耐湿熱性や耐熱衝撃性に優れたPAS樹脂組成物と、この組成物を用いて封止または被覆された電気・電子機器部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂に対して、特定の化学構造からなるグラフト共重合体および特定の無機物質を配合してなるPAS樹脂組成物によれば、上記目的が達成できることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
〔1〕(a)ポリアリーレンスルフィド樹脂18〜35質量%と、(b)熱可塑性エラストマーセグメント80〜50質量%とビニル系重合体セグメント20〜50質量%とからなるグラフト共重合体2〜10質量%、(c)シリカおよび/または疎水化された酸化マグネシウム55〜80質量%からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔2〕ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物100質量部に対して、(d)シランカップリング剤またはエポキシ樹脂0.1〜3質量部を配合してなる前記〔1〕に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔3〕熱可塑性エラストマーセグメントがポリスチレン系エラストマーセグメントであり、ビニル系重合体セグメントがポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体である、前記〔1〕または〔2〕に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物により封止または被覆されてなる電気・電子機器部品。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のPAS樹脂組成物は、(a)PAS樹脂18〜35質量%と、(b)熱可塑性エラストマーセグメント80〜50質量%とビニル系重合体セグメント20〜50質量%とからなるグラフト共重合体2〜10質量%、(c)シリカおよび/または疎水化された酸化マグネシウム55〜80質量%からなるPAS樹脂組成物である。
【0010】
ここで、この(a)成分のPAS樹脂は、その重合体鎖が直鎖構造、分岐構造あるいは架橋構造のいずれの構造を有するものであってもよい。そして、このPAS樹脂を構成する単位であるアリーレンスルフィド基としては、p−フェニレンスルフィド基、m−フェニレンスルフィド基、o−フェニレンスルフィド基、p,p’−ジフェニレンケトンスルフィド基、p,p’−ジフェニレンスルホンスルフィド基、p,p’−ビフェニレンスルフィド基、p,p’−ジフェニレンエーテルスルフィド基、p,p’−ジフェニレンメチレンスルフィド基、p,p’−ジフェニレンクメニルスルフィド基、ナフチルスルフィド基などが挙げられる。これらアリーレンスルフィド基の中でも、p−フェニレンスルフィド基およびm−フェニレンスルフィド基が特に好適な構成単位である。さらに、この(a)成分として用いるPAS樹脂としては、p−フェニレンスルフィド基のみを構成単位とするポリフェニレンスルフィドや、p−フェニレンスルフィド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有し、残余の構成単位がm−フェニレンスルフィド基からなるポリフェニレンスルフィド共重合体が、物理的特性に優れることから好適に用いられる。
【0011】
そして、この(a)成分のPAS樹脂は、通常の製造方法、例えばp−ジクロロベンゼンやm−ジクロロベンゼンなどのジハロゲノ芳香族化合物と、硫化ナトリウムなどの硫黄化合物を有機極性溶媒中で重縮合反応させて得られたPAS樹脂を用いることができる。さらに、このPAS樹脂の溶融粘度は、温度300℃、剪断速度200秒-1の条件下での測定値において、5〜100Pa・sの範囲にあるものが好適に用いられる。
【0012】
つぎに、(b)成分としては、熱可塑性エラストマーセグメント80〜50質量%とビニル系重合体セグメント20〜50質量%とからなるグラフト共重合体が用いられる。そして、このグラフト共重合体の形態としては、一方のセグメントによって形成される連続相中に、他方のセグメントからなる粒子径0.01〜5μmの微細な粒子が、分散相を形成した多相構造を有するグラフト共重合体が好適に用いられる。
【0013】
また、この(b)成分中の熱可塑性エラストマーセグメントとしては、さらに具体的には、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマーなどからなるものが挙げられる。そして、この(b)成分中の熱可塑性エラストマーセグメントの含有割合を、80〜50質量%の範囲内とする。それは、この熱可塑性エラストマーセグメントの含有割合が50質量%未満であると、(b)成分の柔軟性が不足し、(b)成分を配合して得られるPAS樹脂組成物の耐衝撃性の向上効果を充分に発現することができなくなり、また、この熱可塑性エラストマーセグメントの含有割合が80質量%を超えると、(b)成分を配合して得られるPAS樹脂組成物の耐熱性や成形性の向上効果を充分に発現できなくなることがあるからである。
【0014】
そして、この(b)成分中の各種熱可塑性エラストマーセグメントの中でも、ポリスチレン系エラストマーからなるものが特に好ましい。このポリスチレン系エラストマーの製造に用いられる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどのビニル芳香族化合物と、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンとからなるブロック共重合体やその水素化物が好ましい。
【0015】
そして、この(b)成分中のビニル系重合体セグメントとしては、スチレンやα−置換スチレン、核置換スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリルアミド類;無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド類;マレイン酸エステル類などによって形成される重合体成分や共重合体成分が好適に用いられる。
【0016】
これら種々の重合体成分や共重合体成分の中でも、ポリメタクリル酸メチルやポリメタクリル酸グリシジルなどのポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体からなるビニル系重合体セグメントを有するものが、PAS樹脂組成物を製造する際に、他の成分との分散性が良好であることから特に好ましい。
【0017】
また、この(b)成分中のビニル系重合体セグメントの含有割合は、20〜50質量%の範囲内とする。それは、このビニル系重合体セグメントの含有割合が20質量%未満であると、(b)成分を配合して得られるPAS樹脂組成物の耐熱性や成形性の向上効果を充分に発現できなくなることがあり、また、このビニル系重合体セグメントの含有割合が50質量%を超えると、(b)成分を配合して得られるPAS樹脂組成物の耐衝撃性の向上効果を充分に発現することができなくなることがあるからである。
【0018】
つぎに、(c)成分として用いるシリカについては、特に制限はなく、例えば、破砕シリカのような不定形シリカや、溶融シリカや合成シリカのような球状シリカを用いることができる。また、これらの複数種を混合して用いることもできる。粒子径や粒度分布についても特に制限はないが、好ましくは、平均粒子径が50μm以下であるものが好ましい。そして、このシリカは、他の成分に配合するにあたって、予めその表面をシランカップリング剤などにより処理してあるものを用いるのが好ましい。この表面処理に用いるのに適したカップリング剤としては、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン、エポキシシランや、ビニルシラン、メルカプトシラン等を挙げることができる。
【0019】
また、(c)成分として用いる疎水化された酸化マグネシウムについては、この酸化マグネシウムが空気中の水分と結合して水酸化マグネシウムに転化する性質を充分に抑制し得るように疎水化処理してあるものが好ましい。この疎水化された酸化マグネシウムの種類には制約はないが、その形態については、球状に近いものを用いると充填率を向上させることから好ましい。また、この疎水化された酸化マグネシウムの粒子径は、50μm以下であるものが好ましい。
【0020】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、その基本的な構成成分として上記の(a)成分、(b)成分および(c)成分からなるが、さらに、(d)成分のシランカップリング剤またはエポキシ樹脂をそれぞれ単独で、あるいはこれらを混合して配合してもよい。
【0021】
このうち、シランカップリング剤としては、通常用いられている公知の化合物から適宜選択して使用することができる。例えば、アミノシランを用いる場合には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピル−メチル−ジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。また、エポキシシランを用いる場合には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。また、これらの他に、各種のビニルシラン類、メルカプトシラン類を使用してもよい。
【0022】
また、エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を1個または2個以上含むものであり、液体または固体状のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールAやレゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのビスフェノール類のグリシジルエーテルが用いられる。この他、ハロゲン化ビスフェノール類やブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系、フタル酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル系、N−グリシジルアニリンなどのグリシジルアミン系などのグリシジルエポキシ樹脂を用いてもよい。さらに、エポキシ化ポリオレフィン、ジシクロペンタジエンジオキサイドなどの環状系の非グリシジルエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、あるいはこれら樹脂の水素原子を塩素原子や臭素原子、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基などで置換したエポキシ樹脂を使用することができる。
【0023】
さらに、本発明のPAS樹脂組成物には、上記の各成分の他に、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。ここで用いる添加剤としては、一般に用いられる酸化防止剤や熱安定剤、滑剤、着色剤、可塑剤、導電性付与剤などを、このPAS樹脂組成物の使途において要求される特性に適合するように、その添加量を調整して添加すればよい。
【0024】
つぎに、上記各成分の配合割合については、(a)成分のPAS樹脂18〜35質量%と、(b)成分のグラフト共重合体2〜10質量%、(c)成分のシリカおよび/または疎水化された酸化マグネシウム55〜80質量%とする。
【0025】
ここで、(a)成分のPAS樹脂は、その配合割合を18〜35質量%とするが、それは、この(a)成分の配合割合が18質量%未満であると、得られるPAS樹脂組成物の流動性が低下し、成形加工性が劣るようになり、また、この(a)成分の配合割合が35質量%を超えると、得られるPAS樹脂組成物の耐湿熱性や耐熱衝撃性が劣るようになるからである。
【0026】
また、(b)成分のグラフト共重合体は、その配合割合を2〜10質量%とするが、それは、この(b)成分の配合割合が2質量%未満であると、得られるPAS樹脂組成物の耐ヒートサイクル性が劣るようになり、また、この(b)成分の配合割合が10質量%を超えると、得られるPAS樹脂組成物の耐熱性が劣るようになるからである。そして、この(b)成分のより好ましい配合割合は3〜8質量%であり、さらに好ましくは4〜6質量%である。
【0027】
さらに、(c)成分のシリカおよび/または疎水化された酸化マグネシウムは、その配合割合を55〜80質量%とするが、それは、この(c)成分の配合割合が55質量%未満とすると、得られるPAS樹脂組成物の線膨張率が大きくなり、また、この(c)成分の配合割合が80質量%を超えると、得られるPAS樹脂組成物の流動性が劣るようになるからである。そして、この(c)成分のより好ましい配合割合は55〜75質量%であり、さらに好ましくは65〜73質量%である。
【0028】
そして、(d)成分のシランカップリング剤の配合割合は、上記(a)〜(c)成分の合計量100質量部に対し、0.1〜3質量部、好ましくは0.1〜1.0質量部、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部である。また、この(d)成分のエポキシ樹脂の配合割合は、上記(a)〜(c)成分の合計量100質量部に対し、0.1〜3質量部、好ましくは0.5〜2.0質量部、さらに好ましくは0.5〜1.0質量部である。
【0029】
つぎに、これら各成分および必要に応じて配合する添加剤成分を用いて、PAS樹脂組成物を製造するにあたっては、これら成分を混合した後、溶融混練することによって製造することができる。この溶融混練は、通常の樹脂組成物の製造と同様の方法によって行なうことができる。溶融混練装置としては、二軸押出機や単軸押出機が好適に用いられ、ここで上記各成分が均一に混合・分散されて所定の配合割合の樹脂組成物を得ることができる。この溶融混練の条件は、特に制限はないが、添加剤の分解や発泡を抑制するため、高温度で長く滞留することのないようにするのが好ましい。溶融混練温度は、通常、280〜350℃の範囲とするが、好ましくは285〜330℃である。このようにして、溶融混練により得られたPAS樹脂組成物は、射出成形などの二次加工用材料に適した形状および寸法に造粒し、得られたペレットを用いて電気・電子機器部品の封止成形や被覆成形に使用すればよい。
【0030】
そして、このPAS樹脂組成物を用いて封止または被覆するのに適した電気・電子機器用部品としては、特に制限はなく、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、トライアック、ダイアック、IGBT、IC、LSI、CCD、インテリジェントパワーモジュール、発光素子、半導体レーザー、フォトカプラー、フォトインタラプター、圧力センサー、水晶発振子、トランス、コイル、マイクロスイッチ、ディップスイッチなどの各種部品類が挙げられる。これら電気・電子機器部品に、封止や被覆を施す方法については、公知の封止成形法や被覆成形法にしたがって行うことができる。
【0031】
【実施例】
つぎに、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〜8、比較例1〜4〕
(1)PAS樹脂組成物の各成分の調製および入手
(a−1)成分
攪拌機を備えた重合槽に、含水硫化ナトリウム(Na2 S・5H2 O)833モルと、塩化リチウム830モル、およびN−メチル−2−ピロリドン500リットルを入れ、減圧下で、145℃に保持して1時間脱水処理をした。ついで、反応系を45℃に冷却した後、ジクロルベンゼン905モルを加え、260℃において3時間重合した。そして、得られた生成物を熱水で5回、170℃のN−メチル−2−ピロリドンで1回、水で3回の順に洗浄し、185℃で乾燥することにより、ポリフェニレンスルフィド樹脂(a−1)を得た。この樹脂の300℃、剪断速度200秒-1における溶融粘度は、12Pa・sであった。
【0032】
(a−2)成分
重合時間を4時間とした他は、(a−1)の製造法と同様にしてポリフェニレンスルフィド樹脂(a−2)を得た。この樹脂の300℃、剪断速度200秒-1における溶融粘度は、40Pa・sであった。
【0033】
(a−3)成分
300℃、剪断速度200秒-1における溶融粘度が11Pa・sである市販のポリフェニレンスルフィド樹脂〔トープレン社製;セミリニア型PPS H1〕を用いた。
【0034】
(b−1)成分
スチレン系熱可塑性エラストマーセグメント70質量%と、メタクリル酸アルキルからなるビニル系重合体セグメント30質量%とからなるグラフト共重合体〔日本油脂社製;ノフアロイAS300〕を用いた。
【0035】
(b−2)成分
スチレン系熱可塑性エラストマーセグメント70質量%と、スチレン−アクリロニトリル共重合体セグメント30質量%とからなるグラフト共重合体を用いた。
【0036】
(b’−1)成分
オレフィン系熱可塑性エラストマー〔住友化学工業社製;ボンダインAX8390〕を用いた。
【0037】
(b’−2)成分
オレフィン系熱可塑性エラストマー〔住化アトケム社製;ロタダーAX8860〕を用いた。
【0038】
(b’−3)成分
水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体〔旭化成工業社製;タフテックH1041〕を用いた。
【0039】
(c−1)成分
平均粒子径31.5μmのシリカ〔電気化学社製;FB74〕を用いた。
(c−2)成分
平均粒子径30μmの酸化マグネシウム〔協和科学社製;パイロキスマ3310S〕を用いた。
【0040】
(d−1)成分
エポキシシランとして、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔東レ・ダウコーニングシリコーン社製;SH6040〕を用いた。
【0041】
(d−2)成分
エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔チバガイギー社製;ECN1288〕を用いた。
【0042】
(2)PAS樹脂組成物の製造
上記(1)で示す(a)〜(d)の各成分を、第1表および第2表に示すとおりの配合割合とした。
【0043】
そして、これら(a)〜(d)成分をヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した後、二軸押出機〔東芝機械社製;TEM35〕を用い、この押出機のシリンダ温度を280〜350℃に設定して溶融混練し、ペレットを製造した。
【0044】
(3)PAS樹脂組成物の物性評価
▲1▼ 流動性
30トン射出成形機〔東芝機械社製〕により、厚み1mmのスパイラルフロー金型を用いて、樹脂温度320℃,金型温度135℃,射出圧力100MPaの条件下に、厚さ1mmの試験片を作成し、その際のスパイラルフロー長さを測定した。測定結果を、第1表および第2表に示す。
【0045】
▲2▼ 曲げ強度
ASTM D790に準拠して、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。測定結果を第1表および第2表に示す。
【0046】
▲3▼ 線膨張係数の測定
ASTM E831に準拠して、線膨張係数の測定をした。測定結果を第1表および第2表に示す。
【0047】
▲4▼ 耐湿熱性
JIS C5030に準拠して、耐圧容器中、温度121℃,相対湿度100%,圧力0.2MPaの条件下で500時間の水蒸気加熱加圧処理を施した後の不良品発生率(%)を測定した。この場合の判定基準としては、90℃の赤インクに3時間試料を浸漬した後、24時間風乾し、パッケージを開封した際に、赤インクがチップに到達していたものを「不良」と判定した。測定結果を第1表および第2表に示す。なお、第1表および第2表中、この〔不良数/全試料数〕を、PCT(Pressure Cooker Test)不良率として表示した。
【0048】
▲5▼ 耐熱衝撃性
JIS C5030に準拠して、130℃で1時間加熱後、−40℃で1時間冷却する加熱冷却サイクルを、300回繰り返し施した後の不良品発生率(%)を測定した。この場合の判定基準としては、90℃の赤インクに3時間試料を浸漬した後、24時間風乾し、パッケージを開封した際に、赤インクがチップに到達していたものを「不良」と判定した。測定結果を第1表および第2表に示す。なお、第1表および第2表中、この〔不良数/全試料数〕を、TCT(Thermal Cycle Test)不良率として表示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、線膨張係数が小さく、かつ耐湿熱性や耐熱衝撃性に優れることから、電気・電子機器部品を得るための封止剤や被覆剤として有用性が高く、また、この組成物を用いて封止または被覆された長期信頼性の高い電気・電子機器部品を提供することができる。
Claims (3)
- (a)ポリアリーレンスルフィド樹脂18〜35質量%と、(b)ポリスチレン系エラストマーからなる熱可塑性エラストマーセグメント80〜50質量%と、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体からなるビニル系重合体セグメント20〜50質量%とからなるグラフト共重合体であって、前記熱可塑性エラストマーセグメントが幹ポリマーであり、前記ビニル系重合体セグメントが枝ポリマーであるグラフト共重合体2〜10質量%、(c)シリカおよび/または疎水化された酸化マグネシウム55〜80質量%からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物100質量部に対して、(d)シランカップリング剤またはエポキシ樹脂0.1〜3質量部を配合してなる請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物により封止または被覆されてなる電気・電子機器部品。
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