JP4498028B2 - 印刷機 - Google Patents

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Description

本発明は印刷機に関し、特に、給紙部と排紙部との間に配置されて、刷版を版胴に設けたくわえクランプ装置に向けて供給して版胴に巻付けるようにした印刷部の構造に関する。
一般に枚葉印刷機は、給紙部と排紙部との間に印刷部を有している。この印刷部は、版胴に刷版を巻付けて印刷を行う部分である。該印刷機は、版胴に刷版を巻付けるために、版胴に設けたくわえクランプ装置に手動で挿入した刷版を自動で巻付ける刷版巻付け装置を備えることが一般的である。しかし近年では、作業者が刷版(新版)を所定位置にセットした後はその刷版をくわえクランプ装置に自動的に供給する給版装置を備えた印刷機が提案されている。
また、印刷終了後に刷版(旧版)を排版方向へ排版するための排版装置を備えたものもある。一例として、ローダ内で刷版の尻側を版掛けで係止して、この版掛けをコンベックスに巻掛けた板ばねに連結し、板ばねの弾性復元力によって刷版を排版方向へ引出すようにした印刷機の技術が提案されている(特許文献1参照)。この排版装置において、版掛けは支軸回りに傾動可能に設けられており、非排版時にはコイルばねによってローダの案内壁側に係止して起立した起立姿勢に保持されている。排版時には、版掛けが案内壁側から離間するよう、別に設けたシリンダ装置を駆動してこのシリンダ装置のロッドで版掛けを押圧する。そうすると、版掛けが支軸回りに傾動して傾動姿勢となり、案内壁と版掛けとの間に刷版の尻側が進入可能な空間ができる。版胴の回転により、刷版の尻側が版掛けと案内壁との間に進入した後に、シリンダ装置の押圧を解除して版掛けを支軸回りに傾動させて再び起立姿勢とし、刷版の尻側を版掛けに係止する。このとき、版掛けと案内壁との間には刷版が介在するので、版掛けが案内壁に係止されなくなり、版掛けは板ばねの弾性力によって排版方向へ引出される。この装置の場合、コンベックスから版掛けの版掛け位置までの距離によっては、刷版を充分な距離だけ排版方向へ引出すことが可能となる。
特許2844231号公報
上記従来の印刷機の排版装置では、刷版を充分な距離だけ排版方向へ引出すことが可能である。しかしこの排版装置は、板ばねを巻掛けたコンベックス、版掛け、版掛けを起立姿勢に保持するコイルばね、版掛けを押圧するためのシリンダ装置、版掛けを案内壁に係止しておくための手段を有しており、装置全体の構造が複雑になっている。そこで、例えば刷版の尻側を挟持するローラを設け、このローラを、シリンダ装置を用いて排版方向へ移動させるといった簡単な構成で、刷版を排版することが考えられる。しかし、刷版を充分に排版方向へ移動させるためには、ストロークの長いシリンダ装置が必要になり、装置全体が大型化してしまう。そして、装置全体が大型化すると、付設されているインキツボの下流側が塞がれ、インキツボの操作性(インキの供給、清掃、メンテナンス)が低下してしまうといった課題がある。
そこで本発明は、排版装置の大型化を抑えつつ、かつ刷版を充分な距離だけ排版方向へ引出すことのできる印刷機の提供を課題とする。
本発明は、刷版を巻付ける版胴に、刷版の端部を把持するためのくわえクランプ装置が設けられ、くわえクランプ装置の把持状態が解除された後に、刷版をその尻側端部から順次排版方向へ移動させるための排版装置が設けられた印刷機であって、前記排版装置は、排版方向に沿って排版路を形成する排版案内体と、排版路に配置されて刷版に連結されるとともに、刷版を排版方向に搬送する搬送体と、この搬送体を排版案内板に沿って往復移動させる伸縮装置と、刷版に搬送体を連結した状態で伸縮装置の伸縮量に加算して刷版を排版方向に搬送させる搬送量加算手段とが設けられ、前記搬送体は刷版を表裏側から対で挟持して伸縮装置の伸縮動作に伴って前記搬送量加算手段によって回転する挟持ローラであることを特徴としている。
上記構成の印刷機によれば、排版時の刷版の移動量として、伸縮装置の伸縮量に基づく刷版の移動量に搬送量加算手段による移動量が加算されるので、伸縮装置そのものを大型化することなく排版時の刷版の移動量を多くすることが可能となり、簡単な構成の排版装置でもって、排版作業が容易になる。
特に、排版装置に、伸縮装置の伸縮動作に伴い、挟持ローラどうしを離間させて挟持体間に刷版が進入可能な進入姿勢と、挟持体どうしを接近させて刷版を挟持することで刷版に連結する挟持姿勢とに、挟持体の姿勢を切替えるための切替手段を設けることが好ましい。
上記構成において、くわえクランプ装置の把持状態が解除された後に刷版は、切替手段によって進入姿勢となっている挟持ローラ間に進入し、その後、切替手段によって挟持姿勢として刷版を表裏側から挟持された状態で、伸縮装置の伸縮量に基づく移動量に、搬送量加算手段による移動量が加算されて挟持ローラが排版方向へ移動するから、刷版を充分な量だけ排版方向に搬送することが可能となる。
搬送量加算手段として、伸縮装置の伸縮部に連結された回転自在なピニオンと、ピニオンが噛合するラックとを用い、少なくとも一方の挟持ローラをピニオンと一体回転可能に設けることが好ましい。この構成によれば、伸縮装置の伸縮動作に伴ってピニオンが回転し、このピニオンの回転に伴って挟持ローラが回転することで、伸縮装置の伸縮量に、挟持ローラの回転量に相当する量の搬送距離が加算されて刷版が搬送されるから、刷版を充分な量だけ排版方向に搬送することが可能となる。
伸縮装置として、シリンダ装置を用いることによれば、伸縮装置としての構成が簡単であり、かつその伸縮量に基づく刷版の移動量に搬送量加算手段による移動量が加算されるので、特に、伸縮方向の長さの大きいシリンダ装置を用いることなく、刷版を充分な量だけ排版方向に搬送することが可能となる。
本発明の印刷機によれば、伸縮装置の伸縮量に、刷版の搬送量を加算する搬送量加算手段を設けているので、特別に伸縮装置そのものを大型化して伸縮量を確保することなく刷版を充分な量だけ排版方向に搬送することが可能となる。そして、装置全体の大型化を抑制できるから、付設されているインキツボの下流側が塞がれるといった状態を回避して、インキツボの操作性が低下してしまうのを防止することができる。
以下、本発明の実施形態に係る印刷機を、枚葉印刷機を例に図面に基づいて説明する。図1および図2は枚葉印刷機の印刷部の概略側面断面図、図3は給版装置の構造を示す刷版案内板の背面図、図4は下流側前板の正面図、図5は給版装置の構造を示す側面断面図、図6は図3の一部破断拡大図、図7〜図9は排版装置の動作図である。
一般に、枚葉印刷機は、上流側に給紙部を有し、下流側に排紙部を有し、その中間に印刷部(印刷ユニットとも呼ばれる)を配置している。これらの図は、何れも当該印刷部1の構造を示す図である。この実施形態では、一個の印刷部1を代表して記載しているが、印刷部1は、印刷に使用するインキの色の数に応じた数だけ給紙部と排紙部との間に並べて配置されている。
図1および図2に示すように、印刷部1は、本体カバー2と、この本体カバー2に内装され刷版3を巻付けるための版胴4と、版胴4にインキを供給する複数のインキローラ6を含むインキ装置と、刷版3を版胴4側に供給するための給版装置Aとを有している。なお、版胴4は両側板8,9に支軸4aを介して回転自在に支持されている。符号5は、版胴4に転接可能なゴム胴(ブランケット胴)を示す。
本体カバー2は、両側板8,9間の下流側B1に配置される下流側前板10を備え、下流側前板10は、両側板8,9間に上下動可能に取付けられることで、両側板8,9間の下流側B1を開閉可能に構成されている。
版胴4は、刷版3をくわえるための公知のくわえクランプ装置15を有し、このくわえクランプ装置15は、刷版3のくわえ側端部20をくわえるくわえ側版締部21と、版胴4の尻側端部22をくわえる尻側版締部23とを周方向に対で有している。図3に示すように、くわえ側版締部21は、版胴4の軸心方向B(以下「幅方向B」という)に互いに所定距離だけ離間した円柱状で一対の突起25,26を備える。刷版3のくわえ側端部20に、突起25,26に嵌合する切欠27,28が形成されている。これら切欠27,28の少なくとも一方は、突起25,26の外周面25a,26aの曲率に実質的に等しい曲率を有する半円状に形成された底面27b,28bと、底面27b,28bの両側から直線状に延長される側壁面27a,28aを有する。
図3および図4に示すように、下流側前板10の下部に、刷版3挿入用の矩形の開口部30が形成されている。前記給版装置Aは、開口部30を開閉するための刷版案内板31を有する。刷版案内板31(開口部30)の幅方向長さL1は、刷版3の幅方向長さL2に比べて長く設定されている。刷版案内板31は、下流側前板10の裏面側の上部両側に設けた支軸31aを介して傾動自在に取付けられている。下流側前板10の側部35に、刷版案内板31を、開口部30を覆う刷版設置姿勢C1と、くわえクランプ装置15側に向けて傾動した給版姿勢C2とに切替えるためのシリンダ装置36が回動自在に組付けられている。このシリンダ装置36のロッド36aの先端部は、刷版案内板31の姿勢を操作するための、幅方向Bに平行な操作軸部材31bに取付けられている。この操作軸部材31bは、刷版案内板31の回動中心となる幅方向に平行な支軸31aに連結部材31cを介して連結されている。支軸31aは下流側前板10の側部35に回動自在に組付けられている。そして、シリンダ装置36を駆動してロッド36aを伸縮させることで操作軸部材31bを操作すると、刷版案内板31は、連結部材31cを介して支軸31aと一体に回動し、前記刷版設置姿勢C1と、給版姿勢C2とに切替えられる。刷版案内板31の板面に、刷版案内板31の板面に沿って幅方向Bと直交する方向(以下、上下方向という)に長い長孔40が幅方向Bに並べて複数個形成されている。
給版装置Aは、下流側前板10の表面側に、開口部30の下縁に対して下流側に重なって刷版案内板31と同等の幅方向長さに形成された受け枠部材42を有する。受け枠部材42の刷版案内板31側には、一対の位置決め部(突起42a,42b)が設けられており、刷版3の被位置決め部(切欠27,28)と係止できるようになっている。刷版案内板31で開口部30を閉じた状態で、刷版案内板31の下部と受け枠部材42との間に、刷版3のくわえ側端部20が挿入可能な隙間を設けている。下流側前板10の表面側上部に、刷版3に比べて幅方向Bに長い上下一対の刷版案内杆45,46がブラケット45c,46cを介して互いに平行、かつ回転可能に掛渡されている。これら刷版案内杆45,46は、上下に所定の離間幅を有し、それぞれ下流側前板10の表面から刷版3が通過可能な距離δの隙間を有して配置されている。各刷版案内杆45,46の幅方向途中には、杆本体45a,46aよりわずかに大径の環状大径部45b,46bが複数個設けられている。
給版装置Aは、刷版3の版裏面を吸引吸着するための吸引装置(「サッカー」ともいう)50を有する。吸引装置50は、刷版案内板31の裏面側に設けられている。吸引装置50は、刷版案内板31に比べて小さい幅方向長さを有する吸引パイプ51と、この吸引パイプ51の前面に突出するよう設けられて、前記長孔40それぞれに挿入される複数個の吸引器52とを備える。この吸引装置50は、吸引器52が長孔40の上方に位置して刷版3を吸引する吸引位置E1と、刷版3を吸引した状態で長孔40の下方、すなわちくわえクランプ装置15側に位置する給版位置E2とに切替え自在とされている。なお、吸引パイプ51はその途中に接続される吸引継手53を介して不図示の吸引ポンプに接続され、吸引パイプ51の両側は閉塞されている。
図5に示すように、吸引器52それぞれは、その吸引口部54が刷版案内板31の前面からわずかに突出するよう吸引パイプ51に組付けられ、吸引器52それぞれの中心に吸引パイプ51に連通する吸引孔52aが形成されている。図6に示すように、長孔40の幅b1は、吸引器52の吸引口部54の最大径b2に比べて大きく設定され、これにより、長孔40の両側周壁面40bと吸引口部54との間に、幅b3を有する隙間40aが設けられている。
吸引パイプ51を上下方向に往復移動可能に支持するとともに、吸引パイプ51を刷版案内板31の板面に沿って幅方向Bに往復移動可能に支持する支持装置55が設けられている。この支持装置55は、刷版案内板31の裏面側で吸引装置50の幅方向B両側に一対で配置され、それぞれ同様の構成を有している。したがって、ここでは一方の支持装置55の構成を説明する。支持装置55は、刷版案内板31の側部に折曲して形成した折曲板部56にボルト・ナット57によって固定されたブラケット60と、このブラケット60の上板部61に固定されたシリンダ装置(エアシリンダ装置)37と、このシリンダ装置37のロッド62の先端部に固定された支持ブロック体65と、この支持ブロック体65とブラケット60の上板部61とに設けられたブロック位置決め機構72とを有する。
ブラケット60は、折曲板部56に前記ボルト・ナット57を介して固定される取付け部66と、この取付け部66の上部に折曲形成された前記上板部61と、取付け部66の下部に形成されて後述のストッパ70を有する下板部71とから正面視してコ字形に形成されている。シリンダ装置37は、そのシリンダ部73が上下方向に沿って上板部61に固定されることで、ロッド62が上下方向に往復移動可能に構成されている。シリンダ部73の長手方向両側の側部に、給気継手74,75が接続されている。
支持ブロック体65は、ブラケット60の取付け部66の長手方向高さに比べて小さく形成されるとともに上板部61と下板部71との間に配置される。この支持ブロック体65は、ロッド62の先端部に固定される本体部80と、この本体部80の長手方向(上下方向)両側にそれぞれ上板部61、下板部71に略平行に配置される支持片81,82とから正面視してコ字形に形成される。前記ストッパ70は、支持ブロック体65の本体部80に長手方向で対向する位置に、ブラケット60の下板部71から支持ブロック体65の本体部80側に突出するよう設けられている。
ブロック位置決め機構72は、ブラケット60の上板部61に取付けられた突起85と、支持ブロック体65の支持片81,82に渡すように組付けられた遊動部材86と、支持片81,82に形成されて遊動部材86の胴部86aを幅方向Bに遊動可能に挿通する長孔41とを有する。
突起85はその基端部85aがブラケット60の上板部61に挿入して組付けられ、突起85の先端部85bは順次縮小された円錐形状に形成されている。遊動部材86の頭部86bは、長孔41に比べて大径に形成されて、その中心に、前記突起85の先端部85bが嵌合離脱可能な凹部86cを有する。遊動部材86の端部に、遊動部材86の胴部86aが長孔41から抜けるのを防止する抜止め具86dが組付けられている。前記吸引パイプ51の端部は、支持ブロック体65の支持片81,82間に配置され、遊動部材86の胴部86aを外嵌し吸引パイプ51の端部を閉塞する閉塞部材87が一体化されている。
給版装置Aは、給版、排版時に、刷版3を案内する補助案内装置96を有する。この補助案内装置96は、下流側前板10の軸方向両側部に支軸96aを介して支持された傾動板97と、この傾動板97の先端部に配置された杆部材98の途中に複数個配置されて給版時にのみ刷版3の表面に接触してこれを案内する給版案内ローラ99と、排版時にのみ刷版3の表面に接触してこれを案内する不図示の排版案内部材を備えている。傾動板97は、不図示のリンク機構等を用いて、給版時と排版時とで水平面Pに対する傾斜角度が異なるよう構成されている。具体的には、排版時の傾動板97は水平面Pに略平行であり、給版時には水平面Pに対する傾斜角度は角度θだけ上方向に傾斜するよう構成されている。このような傾動板97の動作により、給版時と排版時とで刷版3に給版案内ローラ99を接触させるか排版案内部材を接触させるかを選択している。このようにする理由は、給版時に刷版3(新版)に刷版3(旧版)のインキが付着するのを防止するためであり、インキは排版時に排版案内部材に付着するのみで、給版案内ローラ99に付着することはないから、供給する刷版3にインキが付着するのを防止できる。
図1および図2に示すように、印刷部1は、下流側前板10に、版胴4に巻付いた刷版3を下流側前板10の上部から排出するための排版装置90を有する。この排版装置90は、下流側前板10の裏面側に配置されるとともに排版方向Cに沿って排版路58を形成する前後一対の板状の排版案内体91,92を有する。排版案内体91,92は、下流側前板10に固定されている。排版案内体91,92の下部は、排版案内体91,92間に刷版3を導入し易いよう互いに離間する方向に傾斜して形成されることで導入口9aが形成され、上部は互いに平行に配置されてその上端部に排版口9bが形成されている。
排版装置90は、搬送体として、刷版3を前後両側(表裏面側)から挟持する挟持ローラ93,94を有する。挟持ローラ94は、挟持ローラ93に離間して挟持ローラ93,94間に刷版3が進入可能な進入姿勢D1と、挟持ローラ94が挟持ローラ93に接近して刷版3を挟持する挟持姿勢D2とに切替え自在とされている。
排版装置90は、挟持ローラ93,94を排版路58に沿って上下方向に往復動自在に支持する伸縮装置としてのシリンダ装置(エアシリンダ装置)68を有する。挟持ローラ93は、シリンダ装置68のロッド76の先端に組付けられた取付け部材67に、支軸93aを介して回転自在に支持されている。挟持ローラ94は、取付け部材67の途中にピン67aを介して揺動自在に取付けられたアーム77の先端に、別のピン77aを介して回転自在に取付けられている。
排版装置90は、挟持ローラ93,94を進入姿勢D1と挟持姿勢D2とに切替えるための切替手段59を有する。切替手段59は、アーム77と、挟持ローラ94を挟持ローラ93に向けて弾発付勢するコイルばね(引張ばね)78と、挟持ローラ94の外周面が当接離間(離着座する)する断面矩形のステー79とから構成されている。ステー79は、排版案内体92の下部に固定されている。コイルばね78の一端部は、ピン77aに係止され、他端部は取付け部材67の先端部に配置したピン67bに係止されている。
排版装置90は、挟持ローラ93,94が刷版3に連結した状態、この場合、挟持した状態でシリンダ装置68のロッド76のストローク量(伸縮量)に加算して刷版3を排版方向Cに移動させるための搬送量加算手段88を有する。搬送量加算手段88として、ラック・ピニオン機構が用いられ、これは、シリンダ装置68の軸心方向と平行に配置されて所定の長さを有するラック29と、支軸93aの外周に設けられてラック29に噛合するピニオン47とから構成されている。ラック29は排版案内体91の下部に固定されている。
上記構成を有する印刷部1において、まず版胴4に刷版3を巻付ける動作を説明する。この場合作業者は、刷版案内板31を、開口部30を閉じた刷版設置姿勢C1とした状態で、刷版3を下流側前板10の表面と刷版案内杆45との隙間に挿入する。受け枠部材42には位置決め部(突起42a,42b)が設けられており、刷版3のくわえ側端部20に形成された被位置決め部(切欠27,28)を係止させることで刷版3の位置決めを行う。続いて、さらに刷版3を降ろして下流側前板10の表面と下方の刷版案内杆46との隙間に送り、刷版3のくわえ側端部20を刷版案内板31と、受け枠部材42との間に挿入する。
次に、作業者が不図示の吸引スイッチを操作すると、吸引装置50の吸引ポンプが駆動し、吸引ポンプの吸引力が吸引パイプ51を介して各吸引器52に伝わり、これらが刷版3の版裏面を吸引し、刷版3のくわえ側端部20側が刷版案内板31に沿った状態となる。この場合、吸引パイプ51は長孔40に対してその上部領域に位置付けられており、したがって各吸引器52も長孔40に対してその上部領域に位置付けられた吸引位置E1にある。
次に、作業者が不図示の給版スイッチを操作すると版胴4のくわえ側版締部21が刷版3のくわえ側端部20を挿入する位置で停止した後、刷版3のくわえ側端部20領域を刷版案内板31に沿わせた状態で、続いてシリンダ装置36が駆動すると、それまで開口部30を塞いでいた刷版案内板31が支軸31a回りに、版胴4側に傾動(図1の反時計方向)し、給版姿勢C2となる。この動作により、刷版3のくわえ側端部20が版胴4のくわえクランプ装置15、特にくわえ側版締部21に接近することになる。一方で、刷版案内板31が版胴4側に傾動する動作に伴い、それまでほぼ水平姿勢だった補助案内装置96の傾動板97が、仮想線で示すように、水平面Pに対して角度θだけ上方に傾斜し、その先端部に設けられた給版案内ローラ99が刷版案内板31のくわえ側端部20に接近する。
続いて、シリンダ装置37が駆動し、そのロッド62が伸長する。そうすると、支持ブロック体65は、その本体部80がロッド62に取付けられているので、支持ブロック体65が刷版案内板31に沿って、ストッパ70側に移動する。一方で、それまで互いに嵌合していた突起85と遊動部材86の頭部86bとが嵌合を離脱し、吸引装置50は、各吸引器52が長孔40の下方領域に位置する給版位置E2に移動する。すなわち、吸引パイプ51は、遊動部材86および閉塞部材87を介して支持ブロック体65に取付けられており、各吸引器52は吸引パイプ51に組付けられているので、支持ブロック体65が刷版案内板31に沿ってストッパ70側に移動すると、各吸引器52は、刷版3を吸着したまま長孔40に沿ってくわえクランプ装置15のくわえ側版締部21に移動する。
吸引装置50が給版位置E2に移動すると、刷版3と版胴4の幅方向B位置が正しく位置合わせされている場合では、刷版3のくわえ側端部20に形成した切欠27,28が、それぞれくわえ側版締部21に設けた突起25,26に嵌合する。このように、刷版3のくわえ側端部20の切欠27,28が、それぞれくわえ側版締部21の突起25,26に嵌合すると、シリンダ装置37がその嵌合力による負荷により、ロッド62が伸長を停止し、この状態でくわえ側版締部21が駆動して刷版3のくわえ側端部20をくわえる。
このように、刷版3の切欠27,28がくわえ側版締部21の突起25,26に嵌合すれば、支持ブロック体65が刷版案内板31に沿って、ストッパ70側に移動しても、支持ブロック体65がストッパ70に当接する前にシリンダ装置37が停止し、吸引装置50は所定の給版位置E2に移動して停止することになる。しかし、例えば刷版3が下流側前板10の表面と受け枠部材42との隙間に挿入されていない状態で作業者が吸引スイッチを誤操作したような場合では、刷版3の切欠27,28がくわえ側版締部21の突起25,26に嵌合することはないから、シリンダ装置37に負荷が働かずロッド62が伸長し続ける。しかし、ブロック体65がストッパ70に当接することでシリンダ装置37に負荷が働くから、これによりシリンダ装置37のロッド62の伸長が停止される。
次に、仮に刷版3と版胴4の幅方向B位置が正しく位置合わせされていない場合を説明する。この場合、切欠27,28と突起25,26とは幅方向Bにずれ、両者が嵌合しない場合が発生することになる。しかし、ブロック位置決め機構72では、遊動部材86の胴部86aを幅方向Bに遊動可能に挿通する長孔41を支持片81,82に有し、吸引装置50の給版位置E2では、突起85と遊動部材86の頭部86bとは嵌合を離脱しているから、遊動部材86は長孔41に沿って遊動可能な状態となっている。
したがって、刷版案内板31が開口部31を開放するようにくわえクランプ装置15側に傾動した給版姿勢C2において、刷版3のくわえ側端部20がくわえ側版締部21に向けて移動したときに、切欠27,28と突起25,26とが幅方向Bにずれていたとすると、切欠27,28と突起25,26との掛かりがあれば、円柱状の突起25,26の外周面25a,26aでもって切欠27,28の側壁面27a,28aが、刷版3と版胴4とが幅方向Bで正しい位置に矯正される方向に押圧されることになる。
そして、吸引器52は刷版3を吸引してこれに密着しているから、吸引装置50の吸引器52および吸引パイプ51が刷版3とともに幅方向Bに移動しながらくわえ側版締部21に向けて移動し、上記のように、刷版3のくわえ側端部20は、くわえ側版締部21の駆動によってくわえられる。ところで、一般に、刷版3と版胴4の幅方向B位置が正しく位置合わせされていない場合であってもそのずれ量はわずかであると考えられる。したがって、切欠27,28と突起25,26との掛かりであっても、突起25,26の外周面25a,26aでもって切欠27,28の側壁面27a,28aを押圧することができ、刷版3を幅方向Bに位置矯正することができる。
くわえ側版締部21が駆動して刷版3のくわえ側端部20をくわえて版胴4が図1の反時計方向に回転すると、刷版3は版胴4に巻取られ、このとき傾動板97が水平面Pに対して角度θだけ上方向に傾斜していることで、傾動板97に設けた給版案内ローラ99に沿って刷版3が案内される。そして、くわえクランプ装置15の尻側版締部23が版胴4の尻側端部22をくわえ、刷版3は版胴4に密着し、印刷作業が可能な状態となる。一方で、刷版3の版胴4への巻取りが終了すると、シリンダ装置37はロッド62をシリンダ部73側に戻すよう再び駆動し、これにより吸引装置50全体が上動してその吸引器52が次に給版する刷版3を吸引する吸引位置E1に戻り、ブロック位置決め機構72の突起85と、遊動部材86の頭部86bとが嵌合し、吸引装置50全体が幅方向Bに移動不可能に固定される。また、ほぼ同時に刷版案内板31はシリンダ装置36の駆動により給版姿勢C2から刷版設置姿勢C1へ戻る。このとき、補助案内装置96の傾動板97が略水平な姿勢に復帰する。
次に、印刷が終了した後、排版装置90によって刷版3を排版する動作を説明する。印刷が終了した時点で、図7に示すように、シリンダ装置68は、そのロッド76が最も伸長した状態になる。したがって、取付け部材67が、導入口9aに最も近い最下方位置にある。取付け部材67が最下方位置にあるから、挟持ローラ93の支軸93aのピニオン47は、ラック29の最下方位置で噛合している。また、挟持ローラ94も最下方位置でステー79に当接しており、コイルばね78の弾性に抗してステー79で押圧されて取付け部材67の中心67cとアーム77の中心77bとのなす角が大きくなっており、挟持ローラ94が挟持ローラ93から離間した進入姿勢D1となっている。
また、印刷が終了すると、不図示の制御装置が必要に応じてくわえクランプ装置15が所定の位置に戻すよう版胴4を回転させるよう制御し、尻側版締部23における版胴4の尻側端部22くわえ状態を解除する。そうすると、版胴4の尻側端部22がその弾性によって版胴4から外れ、ほぼ水平姿勢にある傾動板97の排版案内部材に当たる。次に、版胴4を図2の時計方向に回転させると、刷版3の途中部分は順次版胴4から離れ、まず刷版3の尻側端部22が排版案内体91,92間の導入口9aに導入され、続いて刷版3の尻側端部22が挟持ローラ93,94間に導入される。
さらに、版胴4が図2の時計方向に回転して所定の位置でくわえ側版締部21を解除する。そうすると、これまで伸長状態にあったシリンダ装置68のロッド76が後退(上方に移動)し始め、アーム77がコイルばね78の弾性復元力によって引かれ、挟持ローラ94がステー79の上面(着座面)79aを転動しながら、取付け部材67の中心67cとアーム77の中心77bとのなす角が小さくなる方向に、挟持ローラ93に近づく。さらにロッド76が後退すると、挟持ローラ94が挟持ローラ93に接近し、図8に示すように、挟持ローラ94は、挟持ローラ93とで刷版3の途中を版面両側から挟持するよう挟持姿勢D2となる。このとき、コイルばね78の弾性によって挟持ローラ94は挟持ローラ93側に付勢されるから、刷版3を版面両側から確実に挟持することができる。
さらにロッド76が後退する動作に伴い、刷版3はその途中を挟持ローラ93,94で挟持された状態で、排版案内体91,92沿って上動することになる。このとき、ラック29にはピニオン47が噛合しているから、挟持ローラ93は上動しながらピニオン47の回転とともに図9の反時計方向に回転することになる。そして挟持ローラ94は、コイルばね78の弾性力によって挟持ローラ93側に付勢されているから、挟持ローラ94は刷版3を介して回転するようになり、挟持ローラ93,94双方の回転に伴って、刷版3は排版方向Cに送られる。すなわち、挟持ローラ93,94で挟持された刷版3は、シリンダ装置68のロッド76が縮む方向に後退する後退量だけでなく、この後退量に、挟持ローラ93,94の回転量に相当する直線距離分を加算されながら排版方向Cに搬送排版されることになる。
上記のようにして排版方向Cへ搬送された刷版3は、例えば作業者の手によって本体カバー2の外部へ取出されるものである。刷版3を取出した後は、シリンダ装置68のロッド76が伸長し、これによって挟持ローラ93,94が下動する。挟持ローラ94がステー79に接触すると、挟持ローラ94がステー79によって押圧されることで、挟持ローラ94が、取付け部材67の中心67cからアーム77の中心77bとのなす角が大きくなるようピン67a回りに回動し、これによって挟持ローラ94は、挟持ローラ93から離間した進入姿勢D1に復帰する。
従来では、刷版3を充分な量だけ排版方向Cに搬送する場合、大きな伸縮量を有するシリンダ装置68を用いなければならず、排版装置全体の大型化につながっていた。しかし、本発明の実施形態によれば、刷版3の排版時、シリンダ装置68のロッド76を後退させると、この後退動作に伴ってラック29に噛合したピニオン47とともに挟持ローラ93が回転して、その回転量に相当する直線距離分がロッド76の後退量に加算される。したがって、伸縮量の大きなシリンダ装置68を用いることなく、刷版3を排版に必要な充分な量だけ排版方向Cに搬送することができ、排版作業(取出し)を楽に行うことができるようになる。
なお、上記実施形態では伸縮装置としてシリンダ装置68を示したがこれに限定されるものではない。例えば、シリンダ装置68の代わりに、上記ラック・ピニオン機構とは別のラック・ピニオン機構を設け、このピニオンを、モータ又はロータリーエアシリンダを用いてその場で回転させ、ピニオンの回転駆動によって上下方向(排版路58に沿う方向)に移動可能なラックを設け、このラックに前記取付け部材67を組付ける構成とすることもできる。他の構成は上記実施形態と同様であり、この場合も、装置全体を大型化することなく、刷版3を排版に必要な充分な量だけ排版方向Cに搬送することができる。
上記実施形態では、移動加算手段としてラック・ピニオン機構を用いたが、これに限定されない。例えば、ラック・ピニオン機構を用いる代わりに、ローラ93を支軸93a回りに回転させるモータ又はロータリーエアシリンダをローラ93に連結して、シリンダ装置68のロッド76の後退に伴ってこのモータを駆動するよう制御することもできる。この場合も、特別に装置全体を大型化することなく、刷版3を排版に必要な充分な量だけ排版方向Cに搬送することができる。
上記実施形態では、移動加算手段としてラック・ピニオン機構をロッド76側に設けて、ロッド76の後退動作とともに挟持ローラ93を回転させる機構とした。しかしラック・ピニオン機構をロッド76側に設ける代わりにシリンダ68a側に設けることもできる。具体的には、シリンダ68aの側部にラックを設け、このラックに噛合するよう例えばモータ又はロータリーエアシリンダによってその場回転駆動するピニオンを設ける。この場合、挟持ローラ93はロッド76の後退動作によっても回転しないが、ロッド76の後退量にシリンダ68aの移動量が加算されることになる。したがって、この場合もシリンダ装置68を特に大型化させることなく刷版3を排版に必要な充分な量だけ排版方向Cに搬送することができる。この場合、搬送体として必ずしもローラである必要はなく刷版3をその両側から平面でもって挟持する形状の搬送体であってよい。また、装置全体の大型化を抑制できるから、付設されている不図示のインキツボの下流側が塞がれるといった状態を回避して、インキツボの操作性が低下してしまうのを防止することができる。
さらに、上記実施形態では搬送体として、刷版3を挟持する挟持ローラ93,94を用いたがこれに限定されるものではない。例えば刷版3の所定の場所に係止する係止部材であってもよい。但しこの場合、係止部材を挟持ローラ93,94のように直接的に回転させることは考えにくいので、移動加算手段として、上記のようにラック・ピニオン機構を用いるのであれば、シリンダ装置68の後退量に加えてピニオン47の回転を排版方向Cに沿って直線的に移動させて移動させる機構が必要となる。
上記実施形態では、搬送量加算手段として、シリンダ装置68のロッド76にピニオン47を回転自在に連結し、ピニオン47が噛合するラック29を設け、挟持ローラ93をピニオン47と一体回転可能に設けた。しかし搬送量加算手段としてこれに限定されない。例えば、ピニオン47の代わりにスプロケットを用い、ラック29の代わりにチェーンを用いた構成とすることもできる。さらに、ピニオン47の代わりにプーリを用い、ラック29の代わりにタイミングベルトを用いた構成とすることもできる。何れの場合も、上記実施形態と同様にシリンダ装置68を特に大型化させることなく刷版3を排版に必要な充分な量だけ排版方向Cに搬送することができる。
本発明の実施形態を示す印刷機の給版時の動作を示す概略断面図。 同じく排版時の動作を示す概略断面図。 同じく給版装置を含めた刷版案内板の背面図。 同じく下流側前板の正面図。 同じく給版装置を含めた下流側前板の側面断面図。 同じく給版装置の一部破断拡大図。 同じく排版装置の挟持ローラの進入姿勢を示す動作図。 同じく排版装置の挟持ローラの挟持姿勢を示す動作図。 同じく排版装置での排版が終了したときの動作図。
符号の説明
1…印刷部、2…本体カバー、3…刷版、4…版胴、A…給版装置、
10…下流側前板、15…くわえクランプ装置、20…刷版のくわえ側端部、21…くわえ側版締部、25,26…突起、27,28…切欠、29…ラック、30…開口部、31…刷版案内板、37…シリンダ装置、40,41…長孔、47…ピニオン、50…吸引装置、51…吸引パイプ、52…吸引器、59…切替手段、65…支持ブロック体、68…シリンダ装置、72…ブロック位置決め機構、78…コイルばね、86…遊動部材、88…搬送量加算手段、90…排版装置、91,92…排版案内板、93,94…挟持ローラ、96…補助案内装置、97…傾動板、99…給版案内ローラ

Claims (4)

  1. 刷版を巻付ける版胴に、刷版の端部を把持するためのくわえクランプ装置が設けられ、くわえクランプ装置の把持状態が解除された後に、刷版をその尻側端部から順次排版方向へ移動させるための排版装置が設けられた印刷機であって、
    前記排版装置は、排版方向に沿って排版路を形成する排版案内体と、排版路に配置されて刷版に連結されるとともに、刷版を排版方向に搬送する搬送体と、この搬送体を排版案内板に沿って往復移動させる伸縮装置と、刷版に搬送体を連結した状態で伸縮装置の伸縮量に加算して刷版を排版方向に搬送させる搬送量加算手段とが設けられ、前記搬送体は刷版を表裏側から対で挟持して伸縮装置の伸縮動作に伴って前記搬送量加算手段によって回転する挟持ローラであることを特徴とする印刷機。
  2. 版装置に、伸縮装置の伸縮動作に伴い、挟持ローラどうしを離間させて挟持体間に刷版が進入可能な進入姿勢と、挟持体どうしを接近させて刷版を挟持することで刷版に連結する挟持姿勢とに、挟持体の姿勢を切替えるための切替手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の印刷機。
  3. 搬送量加算手段として、伸縮装置の伸縮部に連結された回転自在なピニオンと、ピニオンが噛合するラックとが用いられ、少なくとも一方の挟持ローラがピニオンと一体回転可能に設けられたことを特徴とする請求項2記載の印刷機。
  4. 伸縮装置としてシリンダ装置が用いられたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の印刷機。
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