JP4497668B2 - 義歯用人工臼歯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、義歯に関し、更に詳しくは、微妙な高低差や傾斜角度差により発生する咬合不正を防止できる義歯に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、補綴には義歯、ブリッジ、義歯とブリッジの中間にあたるアタッチメント、或いは骨に直接、植歯するインプラント等の手段がある。
これらの中で、義歯には、生体歯が一本も無い場合に使用する総義歯と、残っている生体歯にクラスプをかけて取り付ける局部義歯がある。
総義歯及び局部義歯のいずれにおいても、その構造は、本来、生体歯が生えている土台である粘膜質の歯槽部に装着する義歯床と、その義歯床に植歯される人工歯とで構成される。
【0003】
人工歯としてはレジン歯、陶歯、金属歯等があり、これらの1ブロックの人工歯を直接、義歯床に植歯して義歯を得ていた。
ところが、1ブロック型義歯の場合、如何に高精度に製造しても、微妙な高低差や傾斜角度差が生じたり、その結果、咬合圧や咀嚼圧が一箇所に集中する等の問題が発生する。
そこで、これらの解決策として、義歯床と歯槽部間に軟質材を用いる方法が提案されている。
【0004】
例えばその一つに、特開平11−76269号に開示されるような、1ブロックの人工歯を固定部と咬合部に分割した分割型に構成し、その間に弾性材を用いて、この弾性材の伸縮により、咬合圧や咀嚼圧の集中を吸収する手段がある。
また、特開平11−99162号に開示されるように人工歯と義歯床間に弾性材を用いる手段もある。
更には、実開平6−75420号に開示されるように、歯冠部を弾性材を介して歯軸により義歯床に固定する手段等も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
元来、歯槽部に生える正常な生体歯は、上顎部の歯と下顎部の歯が最適な高さと傾斜角を有し、これらが咬合する際、咬合圧や咀嚼圧が一部の歯に集中しない構造となっている。
【0006】
しかし、補綴に義歯を用いる場合は、咬合する相手側の歯との傾斜角が合わなかったり、人工歯が並列する他の歯よりも微妙に突出しているケースが生ずる。
これを放置すると、咬合する際、或いは食物を咀嚼する際、その咬合圧や咀嚼圧が突出した人工歯に集中して、人工歯やその相手側の歯を摩耗するなどの問題が生ずる。
その結果、人工歯の下の歯槽部に過度の圧力が加わり、疼痛等の発生原因となり、極端には使用に耐えないものとなる。
【0007】
そこで、義歯製造時、或いは使用による経時変化によって発生する人工歯の傾斜角度差や高低差を解消する手段が必要となる。
この手段としては、上述したように幾つかの提案がなされているが、いずれの提案にも問題がある。
【0008】
前述の1ブロックの人工歯を固定部と咬合部に分割した分割型とし、その間に弾性材を用いる方法においては、咬合部の固定部に対する固定力は弾性材の強度に依存するために大きい固定力は得られず耐久性に欠けるものである。
更に、歯冠部を弾性材を介して歯台により義歯床に固定する手段においても、同様に歯冠部の歯茎や歯台に対する固定力は弾性材の強度に依存しているため大きい固定力は得られず耐久性にも欠けるものとなる。
【0009】
また義歯床と人口歯の間に弾性材を用いる方法においても、人口歯の固定力は弾性材の強度に依存するために同様の欠点がある。
更に、これらのいずれの義歯も、主に上下移動による緩衝機能を有するが、積極的に傾斜を許す機能とはなっていない。
以上のように、従来の対応策においては、弾性材を使用することの十分な効果が発揮されていなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたもので、微妙な高低差や傾斜角度差により発生する咬合不正を防止できる義歯を提供するものであり、更なる目的は、義歯床に十分な固定力で取り付けることができ、また耐久性もあり、且つ積極的に傾斜が可能な義歯用人工臼歯を提供することを目的とする。
【0011】
【問題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、鋭意研究した結果、本発明者は、歯軸を設けることにより首振り自在(傾斜自在)になることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0012】
即ち、本発明は、(1)、義歯床と、該義歯床に固定した結合部と、結合部に支持させた咬合部とを備えた義歯用人工臼歯であって、咬合部の下方に円錐台形状の突出部を有し、該突出部に歯軸を植設させ、該歯軸の他端に設けた球体部を、結合部に形成された深めの内包部に、間隙部を設けて上下方向の移動が可能であるように取り付け、該内包部がすり鉢状開口部を有し、前記結合部と咬合部との間に弾性材を介在させてなり、該弾性材は、前記咬合部の突出部の円錐台形状に対応する凹部と、前記内包部のすり鉢状開口部に対応する突出部とを形成されて、前記結合部及び咬合部の全表面に接触状態で配置され、咬合部が結合部に対して圧縮復元及び首振り復元自在とした義歯用人工臼歯に存する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の義歯用人工臼歯は、義歯床と該義歯床に固定した結合部と結合部に支持された咬合部とを備える義歯用人工臼歯である。
そして咬合部が結合部に対して弾圧的な上下移動自在(すなわち圧縮復元自在)及び弾圧的な首振り回動自在(すなわち首振り復元自在)となっている。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態における義歯用人工臼歯の構造を模式的に示した図である。
図2は、図1のX−X´断面図、また図3は仕上がり外観図を示す。
本実施の形態における義歯用人工臼歯1は、義歯床2に結合部3を固定し、該結合部3は、すり鉢状開口部32を有する円筒形の内包部31を有する。
咬合部5は、その下方に円錐台形状の突出部51を有し、その突出部51には歯軸6が植設されている(図4参照)。
【0021】
この場合、突出部51は歯軸6をより強く支持固定するためのものであり、必ずしも必要ではない。
咬合部5の歯軸6の下端には、球体部61が形成されており、この球体部61が前記結合部3の内包部31に嵌合することで、咬合部5は結合部3に支持される。
ここで球体部61を内包部31に嵌合した状態にするには、内包部31の後部壁を取り外し自在にしてそこから嵌め込む方法等があり、その他の適宜の方法も採用される。
ここではその具体的な方法は省略する。
このような状態では、図5に示すように、咬合部5は結合部3に対して全方向に回動(すなわち首振り回動)自在に支持されたものとなる。
【0022】
また咬合部5と結合部3との間には弾性材4が設けられており、このため咬合部5は弾圧的に首振り回動が自在となる。
結合部3と咬合部5の間に弾性材4を設けていない状態では、咬合部5は抵抗なく首振り回動や上下移動とを行うことができ使用するには必ずしも充分でないが、このように弾性材4を設けることにより、使用に都合の良い範囲内で高精度の弾圧的な運動を行うことができる。
【0023】
弾性材4としては、弾圧力を付与できるものであれば使用可能であるが、飲食物や水分等に充分な耐性を有し、人体に無害な医療用シリコン〔例えば、VOCO社(独)製のユフィ・シェルC(商品名)〕等を用いることが好ましい。
【0024】
また、咬合部5、結合部3及び歯軸6の素材としては、セラミック、陶器材、金属材、硬質合成樹脂材等が使用可能である。
ここで、結合部に形成された内包部31を前記歯軸の球体部61より大きくして歯軸の動きに自由度を与えるようにすると咬合部5の挙動は、前述のような弾圧的な首振り回動自在となるだけでなく、弾圧的に上下方向にも動き得るものとなる。
【0025】
例えば、内包部31に間隙部を設けてやや深めとすることで球体部61の上下移動を可能にすることもできる(図2の破線参照)。
もっとも、内包部31全体をやや大きくして球体部61の上下移動に加え多少の左右移動も可能とすることができる。
咬合部5の首振り運動の傾斜角度は、結合部3の球体部入口に設けたすり鉢状開口部32の大きさで調節可能であるし(通常、最大30度程度が好ましい)、上下動の移動範囲は、内包部31の大きさ、すなわち隙間部33の深度で調節することが可能である。
【0026】
本実施の形態では、咬合部5への圧縮力P1が弾性材4の圧縮、伸張挙動となり、咬合、咀嚼時の咬合部5の最適な圧縮・復元及び首振り・復元運動が保証される。
しかも、これらの挙動は、原則的に歯軸6の球体部61を支点とした運動となるので大きい横ずれ等の余分な運動が排除され、的確な動きとなる。
【0027】
図11は歯列を示したもので、本実施の形態の義歯用人工臼歯1は、図に示すように、歯列方向d1と歯列交叉方向d2の挙動が当然可能であり、また、他の歯より高い位置にある場合や、硬い物を噛んだ場合には適宜な位置まで降下し、圧縮・復元運動を行うことができる。
そして、咬合部5の結合部3に対する取付け力は、弾性材4ではなく歯軸6に依存するため、強度が大となり耐久性も十分担保される。
【0028】
〔第2の実施の形〕
次に、第2の実施の形態を示す。
図6は、第2の実施の形態における義歯用人工臼歯の構造を模式的に示した図である。
図7は、義歯用人工臼歯の展開図、また図8は、歯軸の植設された咬合部5を示す。
【0029】
本実施の形態における義歯用人工臼歯1は、義歯床2に結合部3を固定し、該結合部3は歯列交叉方向の四角錐台状開口部34を備えた円筒形の内包部31を有する。
咬合部5は、その下方に四角錐台形状の突出部51を有し、その突出部から歯軸6が植設されている(図8参照)。
【0030】
また、咬合部5は、歯軸6の下端に形成された球体部61が結合部に形成された内包部31に嵌合することで支持される。
また結合部3と咬合部5間には弾性材4が設けられており、この弾性材4の機能は第1の実施の形態と同じである。
【0031】
この実施の形態では、咬合部5は、その下方に歯列方向に形成された四角錐台形状の突出部51を有することから、首振り回動方向は、図9に示すように、歯列方向(d1方向)より歯列交叉方向(d2方向)がし易くなることが理解できよう。
【0032】
また結合部3の内包部入口に設けた四角錐台状開口部34は、歯列交叉d2方向に伸びる縦長に形成されることから、同様に、首振り回動方向は歯列交叉方向(d2方向)に大きく、歯列方向(d1方向)に小さいものとなる。
また、内包部31を球体部61より大きくする、例えば、隙間部33を設けることで、咬合部5の上下動が可能となる。
【0033】
ここで、第1の実施の形態における義歯用人工臼歯1と第2の実施の形態における義歯用人工臼歯1とを比較すると、前者においては、前述したように咬合部5の突出部が51が円錐台形状に形成され、しかも、結合部3はすり鉢状開口部32となっているので、咬合部5は全ての方向への首振りの自由度が均等に確保される。
【0034】
これに対し、後者は、前述したように咬合部5の突出部51が四角錐台形状で、しかも結合部3は歯列交叉方向の四角錐台状開口部34となっており、咬合部5の方向性の強い傾斜運動が可能である。
すなわち、首振り回動の自由度は歯列交叉方向d2が大きく、歯列方向d1はそれより小さくなる。
【0035】
以上、本発明についてその詳細を説明したが、本義歯用人工臼歯1は、これらの実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で他の変形、組合わせが可能であることは言うまでもない。
【0036】
例えば、咬合部5の突出部の形状は、図10(A)に示すようにお椀型形状に、図10(B)に示すように、四角錐台形状に、或いは図10(C)に示すようにを蒲鉾型形状にと応用変形が可能である。
【0037】
また咬合部の突出部51や結合部の開口部34の形状を変更させることと、弾性材の弾性度を変えること、弾性材の厚みを変えること等の、適宜、組み合わせにより多様な挙動の義歯用人工臼歯1を得ることが可能である。
また、歯軸6は咬合部5に植設されたものとして例示したが咬合部5と一体化したものであってもよい。
【0038】
また、内包部に隙間部を設けないで、上下移動を行わないようにすることも当然可能である。
更にまた、本義歯用人工臼歯1は骨に直接、植歯するインプラント技法等にも充分応用可能であることは言うまでもない。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、生体歯と義歯、或いは義歯同士の咬合圧や咀嚼圧の適正な分散を得ることができる。
また、咬合部5の結合部3に対する取付け力は、弾性材4ではなく歯軸6に依存するため、強度が大となり耐久性も十分担保される。
【0040】
本発明の義歯用人工臼歯1は、義歯床と該義歯床に固定した結合部と結合部に支持させた咬合部とを備えた義歯用人工臼歯であって、咬合部に歯軸を突設させ、歯軸を結合部に回動自在に取り付け、該結合部と咬合部との間に弾性材を介在させた構造となっているので、咬合部5の自由な首振り運動や、上下運動が可能であり、しかも歯軸6により横ずれが防止でき、咬合の際や、咀嚼時に適宜な咬合面の傾斜が得られ、使用者の歯肉への過度の衝撃が回避できる。
【0041】
本発明の義歯用人工臼歯1において、結合部3にすり鉢形状、或いは四角錐台形状開口部32、34が設けられている場合には、咬合部5の最大首振り自由度が限定確定され、咀嚼時の大きな衝撃に対して、咬合部が必要以上に傾斜するなどの問題が回避できる。
【0042】
本発明の義歯用人工臼歯1において、内包部は歯軸の球体部の上下方向の移動が可能であるように形成されている場合には、咬合部5への圧縮力を充分吸収でき、上下運動を自在にし得る効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1実施の形態に係る義歯用人工臼歯の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態に係る義歯用人工臼歯の模式図の断面図である。
【図3】図3は、義歯用人工臼歯の外観図である。
【図4】 図4は、歯軸の植設された咬合部を示す。
【図5】図5は、咬合部の結合部の首振り回動を示す図である。
【図6】図6は、第2実施の形態に係る義歯用人工臼歯の構造を示す模式図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態に係る義歯用人工臼歯の義歯用人工臼歯の展開図、
【図8】図8は、歯軸の植設された咬合部を示す。
【図9】図9は、咬合部の結合部の首振り回動を示す図である。
【図10】図10は、他の実施の形態に係る各咬合部の外観図である。
【図11】図11は、歯列を示す図である。
【符号の説明】
1…義歯用人工臼歯
2…義歯床
3…結合部
31…内包部
32…すり鉢状開口部
33…隙間部
34…四角錐台状開口部
4…弾性材
5…咬合部
51…突出部
6…歯軸
61…球体部
d1…歯列方向
d2…歯列交叉方向
P1…圧縮力
Claims (1)
- 義歯床と、該義歯床に固定した結合部と、結合部に支持させた咬合部とを備えた義歯用人工臼歯であって、咬合部の下方に円錐台形状の突出部を有し、該突出部に歯軸を植設させ、該歯軸の他端に設けた球体部を、結合部に形成された深めの内包部に、間隙部を設けて上下方向の移動が可能であるように取り付け、該内包部がすり鉢状開口部を有し、前記結合部と咬合部との間に弾性材を介在させてなり、該弾性材は、前記咬合部の突出部の円錐台形状に対応する凹部と、前記内包部のすり鉢状開口部に対応する突出部とを形成されて、前記結合部及び咬合部の全表面に接触状態で配置され、咬合部が結合部に対して圧縮復元及び首振り復元自在としたことを特徴とする義歯用人工臼歯。
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