JP4496569B2 - 永久磁石型同期電動機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍空調機器用電動圧縮機やその他の一般産業用に使用される永久磁石型同期電動機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷凍空調機器用電動圧縮機やその他の一般産業用に使用される永久磁石型同期電動機は、回転子鉄心の外周部に永久磁石が配置されている表面配置型と回転子鉄心の内部に永久磁石が埋め込まれている埋め込み型に大別されるが、本発明は埋め込み型の永久磁石型同期電動機に関するものである。
【0003】
埋め込み型の永久磁石型同期電動機において、電動機特性その他の条件により、回転子鉄心の軸方向長さに対して、永久磁石の軸方向長さを短くする必要が生じることがある。その際に、一般的には回転子鉄心の軸方向長さの中心と永久磁石の軸方向長さの中心とを合致させて、固定子と回転子との磁気吸引による回転子の軸方向の振れを抑える必要がある。
【0004】
回転子鉄心の軸方向長さに対して、永久磁石の軸方向長さを短くする場合の永久磁石の保持方法として、特開平9ー182332号公報に示されているものがある。
【0005】
以下、図面を参照しながら上記従来の永久磁石の保持方法を説明する。
【0006】
図9は従来の埋め込み型の回転子の軸方向部分断面図である。図9において、回転子1の回転子鉄心2に設けられた永久磁石埋め込み用穴3に永久磁石4が埋め込まれている。永久磁石4はホルダ5により保持され、永久磁石埋め込み用穴3を2枚の端板6で塞ぐことにより、回転子鉄心2の中で永久磁石4の位置決めがなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成は、永久磁石の位置決めをするためのホルダを必要とし、組み立ておよび部品のコストが高くなるという欠点があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するもので、ホルダを使用せずに回転子鉄心のみで永久磁石の位置決めを可能とする安価な永久磁石型同期電動機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明は、複数個の永久磁石埋め込み用穴を有する回転子鉄板Aを前記永久磁石の軸方向の長さ以上に積層し、且つ前記永久磁石埋め込み用穴と連通するように配置した磁束短絡防止用穴を有する回転子鉄板Bを、積層された前記回転子鉄板Aの軸方向端面の一方に1枚または複数枚積層し、さらに前記回転子鉄板Bの軸方向端面に軸穴だけを有する回転子鉄板Cを1枚または複数枚積層して回転子鉄心を形成し、前記永久磁石が埋め込まれている前記回転子鉄板Aと前記回転子鉄板Bとの当接面における磁束短絡防止用穴の外縁部が、前記永久磁石の軸方向端面に当接することにより、ホルダを使用せずに回転子鉄心のみで前記永久磁石の軸方向の位置決めをすることができるので、組み立ておよび部品のコストを低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、固定子鉄心に巻線を巻装した固定子と、前記固定子鉄心の内径円筒面に対向して回転自在に回転し、複数個の永久磁石が埋め込まれている回転子を有する電動機であって、回転子鉄心が複数個の永久磁石埋め込み用穴を有する回転子鉄板Aを前記永久磁石の軸方向の長さ以上に積層し、且つ前記永久磁石埋め込み用穴と連通するように配置した磁束短絡防止用穴を有する回転子鉄板Bを、積層された前記回転子鉄板Aの軸方向端面の一方に1枚または複数枚積層し、さらに前記回転子鉄板Bの軸方向端面に軸穴だけを有する回転子鉄板Cを1枚または複数枚積層して形成されるとともに、前記永久磁石が埋め込まれている前記回転子鉄板Aと前記回転子鉄板Bの当接面における前記磁束短絡防止用穴の外縁部が、前記永久磁石の軸方向端面に当接することにより、前記回転子鉄心のみで前記永久磁石の軸方向の位置決めをすることができ、組み立ておよび部品のコストを低減することができるという作用を有する。
【0011】
なお、上記において、さらに、回転子鉄心に始動用かご形導体を配設することにより、自己始動形の永久磁石型同期電動機を構成するとともに、この場合でも前記回転子鉄心のみで前記永久磁石の軸方向の位置決めをすることができるので、組み立ておよび部品のコストを低減することができる
【0012】
なお、上記において、さらに、永久磁石が希土類磁石で形成されていることにより、強い磁力を得ることができるため、回転子や電動機全体を小型軽量化することができる
【0013】
【実施例】
以下本発明による永久磁石型同期電動機の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお従来と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また固定子は一般的な永久磁石型同期電動機と同様の構成であるため、固定子についての説明も省略する。
【0014】
(実施例1)
図1から図4を用いて説明する。図1は本発明の実施例1による永久磁石型同期電動機の回転子の軸方向断面図である。図1において1は回転子、2は回転子鉄心である。2aは回転子鉄板Aを積層した回転子鉄心であり、図2に回転子鉄板Aの平面図を示す。図2において3は永久磁石埋め込み用穴であり、回転子鉄板Aを積層することにより、図1に示すように永久磁石埋め込み用穴3は軸方向に連なり、永久磁石4が埋め込まれる。また図1の2bは回転子鉄心2aの軸方向端面に回転子鉄板Bを積層した回転子鉄心であり、図3に回転子鉄板Bの平面図を示す。図3において7は磁束短絡防止用穴であり、図2の回転子鉄板Aの永久磁石埋め込み用穴3と同じ位置に配置されており、且つ穴の幅Qは永久磁石埋め込み用穴3の幅Pよりも狭く設定されている。回転子鉄板Bを回転子鉄心2aの軸方向端面に積層することにより、図1に示すように磁束短絡防止用穴7は永久磁石埋め込み用穴3と連通した形で軸方向に連なる。図1において、2cは回転子鉄心2bの軸方向端面にさらに回転子鉄板Cを1枚または複数枚積層した回転子鉄心であり、図4に回転子鉄板Cの平面図を示す。回転子鉄板Cは中心に軸穴だけを設けてある。回転子鉄心2cを回転子鉄心2の端部に積層することにより図1に示すように回転子鉄心2の永久磁石埋め込み用穴3および磁束短絡防止用穴7の片側は塞がれることとなる。また図1において、6は非磁性体からなる端板であり、永久磁石4を永久磁石埋め込み用穴3に埋め込む際に発生する永久磁石4の破片が回転子1の外部へ流出したり、外部の異物が磁石埋め込み用穴3に侵入したりするのを防ぐために、永久磁石埋め込み用穴3を塞ぐ形状に設定されている。また12は軸が装着される軸穴である。
【0015】
また図1において、永久磁石4の軸方向端面9が回転子鉄心2bの回転子鉄心2aとの当接面における磁束短絡防止用穴7の外縁部8に当接することにより、永久磁石4の軸方向端部のNS両面の間の漏れ磁束10bは、回転子鉄心2aから回転子鉄心2bを通り、さらに磁束短絡防止用穴7を横切って、再び回転子鉄心2bと回転子鉄心2aを通って永久磁石4に戻る。漏れ磁束10cは、回転子鉄心2aから回転子鉄心2bを通りさらに回転子鉄心2cを通り、再び回転子鉄心2b、回転子鉄心2aを通り永久磁石4に戻る。ここで、回転子鉄心2cを1枚または永久磁石の位置決めが可能な限り少ない枚数の回転子鉄板Cで構成することにより漏れ磁束10cが通る磁気回路の磁気抵抗が大きくなり漏れ磁束10cを少なくすることができ、また回転子鉄板Bには磁束短絡防止用穴7を設けてあるので、回転子鉄心2bを回転子鉄板Cで構成した場合に比べて漏れ磁束10bの磁気回路の磁気抵抗は大きくなり漏れ磁束10bを少なくすることができるため、電動機の特性を向上させることができる。また、永久磁石4は回転子鉄心2bの磁束短絡防止用穴7の外縁部8に吸着するので、ホルダを使用せずに回転子鉄心2のみで永久磁石4の軸方向の位置決めをすることができ、また回転子鉄板Cで永久磁石埋め込み用穴3および磁束短絡防止用穴の片側が塞がれるので端板6は他方側に使用するだけで済ませるので、組み立ておよび部品のコストを大幅に低減することができる。
【0016】
なお、ここで回転子鉄板Bの積層枚数は回転子鉄心2の軸方向長さの中心と永久磁石4の軸方向長さの中心が合致するように設定されており、以下の各実施例についても同様に設定されている。
【0017】
(実施例2)
図5から図8を用いて説明する。図5は、本発明の実施例2による自己始動形の永久磁石型同期電動機の回転子の軸方向断面図である。図5において、13は回転子、14は回転子鉄心である。14aは回転子鉄板Dを積層した回転子鉄心であり、図6に回転子鉄板Dの平面図を示す。図6において15は、図5の始動用かご形導体の導体バー16aを配設するためのスロットであり、3は永久磁石埋め込み用穴である。また図5において、14bは回転子鉄板Eを積層した回転子鉄心であり、図7に回転子鉄板Eの平面図を示す。図7において17は、図5の始動用かご形導体の導体バー16aを配設するためのスロットであり、図6の回転子鉄板Dのスロット15と同じ形状で且つ同じ位置にある。また7は磁束短絡防止用穴であり、図6の回転子鉄板Dの永久磁石埋め込み用穴3と同位置にあり、且つ磁束短絡防止用穴7の幅Qは永久磁石埋め込み用穴3の幅Pよりも狭く設定してある。また図5において、14cは回転子鉄心14bの軸方向端面にさらに回転子鉄板Fを1枚または複数枚積層した回転子鉄心であり、図8に回転子鉄板Fの断面図を示す。図8において18は導体バー16aを配設するためのスロットであり、前記回転子鉄板Dのスロット15および回転子鉄板Eのスロット17と同じ位置に設けられ、且つ同一の寸法形状になっている。そして、以上のように形成された回転子鉄心14はアルミダイカストにより導体バー16aと短絡環16bとが一体成型されて始動用かご形導体を形成する。回転子13に始動用かご形導体を配設することにより、始動時には誘導電動機として作動し、同期速度付近に達すると同期速度に引き込まれて同期電動機として作動する自己始動形の永久磁石型同期電動機が構成されることとなる。この場合も実施例1と同様に磁束短絡防止用穴7を有する回転子鉄心14bを配設し、さらに回転子鉄板Cを積層しているので永久磁石4の軸方向端部のNS両面の間の漏れ磁束が少なくなり、電動機の特性を向上させることができる。
【0018】
本実施例のような始動用かご形導体を配設した自己始動形の永久磁石型同期電動機においても、前記した実施例1のように、ホルダを使用せずに回転子鉄心14のみで永久磁石4の軸方向の位置決めをすることができるとともに、端板も片側だけで済ませるので、組み立ておよび部品のコストを大幅に低減することができる。
【0019】
(実施例3)
永久磁石がネオジウム・鉄・ボロン系の希土類磁石で形成されていることにより、希土類磁石は強い磁力を得ることができるので、回転子や電動機全体を小型軽量化することができる。
【0020】
なお、上記の全ての実施例においては、4極の例を用いたが、これに限られるものではなく、例えば2極等の他の磁極数を形成するような回転子についても同様である。
【0021】
また、上記の全ての実施例において、永久磁石が平板状のものを用いたが、これに限られるものではなく、例えば円弧状等他の形状の永久磁石を用いた回転子についても同様である。
【0022】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載の発明によれば、回転子鉄心が複数個の永久磁石埋め込み用穴を有する回転子鉄板Aを積層し、且つ前記永久磁石埋め込み用穴と連通した幅の狭い磁束短絡防止用穴を有する回転子鉄板Bを、積層された前記回転子鉄板Aの軸方向端面の一方に1枚または複数枚積層し、さらに前記回転子鉄板Bの軸方向端面に軸穴だけを有する回転子鉄板Cを1枚または複数枚積層して形成されるとともに、前記回転子鉄板Bの前記回転子鉄板Aとの当接面における永久磁石埋め込み用穴の外縁部が、前記永久磁石の軸方向端面に当接することにより、ホルダを使用せずに前記回転子鉄心のみで前記永久磁石の軸方向の位置決めをすることができ、また端板も1枚で済ませるので、組み立ておよび部品のコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における回転子の軸方向断面図
【図2】 回転子鉄板Aの平面図
【図3】 回転子鉄板Bの平面図
【図4】 回転子鉄板Cの平面図
【図5】 本発明の実施例2における回転子の軸方向断面図
【図6】 回転子鉄板Dの平面図
【図7】 回転子鉄板Eの平面図
【図8】 回転子鉄板Fの平面図
【図9】 従来の埋め込み型の回転子の軸方向部分断面図
【符号の説明】
1 回転子
2 回転子鉄心
3 永久磁石埋め込み用穴
4 永久磁石
7 磁束短絡防止用穴
8 磁束短絡防止用穴の外縁部
9 永久磁石の軸方向端面

Claims (1)

  1. 固定子鉄心に巻線を巻装した固定子と、前記固定子鉄心の内径円筒面に対向して回転自在に回転し、複数個の永久磁石が埋め込まれている回転子を有する電動機において、回転子鉄心が複数個の永久磁石埋め込み用穴を有する回転子鉄板Aを前記永久磁石の軸方向の長さ以上に積層し、つ前記永久磁石埋め込み用穴と連通するように配置した磁束短絡防止用穴を有する回転子鉄板Bを、積層された前記回転子鉄板Aの軸方向端面の一方に1枚または複数枚積層し、さらに前記回転子鉄板Bの軸方向端面に軸穴だけを有する回転子鉄板Cを1枚または複数枚積層して形成されるとともに、前記永久磁石が埋め込まれている前記回転子鉄板Aと前記回転子鉄板Bの当接面における前記磁束短絡防止用穴の外縁部が、前記永久磁石の軸方向端面に当接することにより、前記永久磁石の軸方向の位置決めされ、さらに前記永久磁石埋め込み用穴を片側だけ塞ぐ端板を有する永久磁石型同期電動機。
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