(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車両周囲監視装置について説明する。なお、図1は、当該車両周囲監視装置の構成を示すブロック図である。
図1において、車両周囲監視装置は、センサ1、伝送部2、処理部3、表示部4、記憶部5、および車速センサ6を備えている。センサ1は、車両側方に存在する障害物あるいは別の車両等の物体との距離、またはその有無を検出する。例えば、センサ1は、レーダ、光(赤外線を含む)、音等の波動を用いたセンサである。センサ1が検出した情報は、伝送部2を介して車両内部に設置された処理部3に伝送される。例えば、伝送部2は、無線等を用いてセンサ1の情報を処理部3へ伝送する。
処理部3は、伝送部2から伝送された情報を記憶部5に蓄積する。また、処理部3には、必要に応じて車速センサ6から車速情報が入力する。処理部3は、記憶部5に蓄積されたセンサ1の情報に基づいて、車両周囲の物体を検出する。また、処理部3は、検出した物体との衝突等の危険度を判断し、表示部4や警告器(図示せず)にその結果を出力することによって運転者に判断結果を報知する。なお、車両100に予め車速を計測する装置が設置されている場合は、車速センサ6を省略してその装置からの車速情報を用いてもかまわない。
次に、図2を用いて、以下の説明を具体的にするために、車両周囲監視装置が設置される車両における座標軸について説明する。なお、図2は、車両周囲監視装置が設置される車両100に定義される座標軸を示す図である。
図2において、典型的には車両100は、自動車である。以下の説明においては、車両100の前後方向をX軸とし、左右方向をY軸とし、鉛直方向をZ軸として定義する。そして、Y軸周りの角度を角度θとし、Z軸周りの角度を角度φとして定義する。なお、角度θはX軸方向がθ=0°であり、角度φはX軸方向がφ=0°である。
次に、図3および図4を用いて、センサ1の設置位置について説明する。なお、図3は、車両100を横方向から見てセンサ1の設置位置を示す図である。図4は、車両100を上方向から見てセンサ1の設置位置を示す図である。なお、車両周囲監視装置を構成する伝送部2、処理部3、表示部4、記憶部5、および車速センサ6は、車両100に設けられているが、図示を省略する。
図3および図4において、センサ1は、物体の存在を検知する、または物体までの距離を計測するセンサである。センサ1は、車両100の後輪RT側面に固設される。したがって、センサ1は、後輪RTの回転に応じて共に回転する。一般的に、波動を用いたセンサ1は、その検出領域において所望の距離および方位を満たす分解能に応じて、細いビーム形状、より具体的には半球より狭いビーム形状になる。本実施例においては、センサ1は、そのビームBの中心軸が車両100の前後方向(X軸)と略平行になるように固設される。つまり、上記角度φを用いて説明すると、その出射方向が後輪RTの回転によって水平方向となるようにセンサ1が配置されているとき、当該センサ1から出射されるビームBの中心軸とX軸とが形成する角度φsがφs≒0°となる(図4参照)。したがって、後輪RTの回転に応じて、センサ1から出射されるビームBの中心軸も後輪RTの回転軸を中心に回転することになる。なお、センサ1から出射されるビームBの照領域の中心軸は、後輪RTの回転軸に対して平行でなければ、他の配置方向でもかまわない。
このように、センサ1を車両100の後輪RT側面に、そのビームBの照領域の中心軸が後輪RTの回転軸に対して平行でないように固設することにより、車両100が走行し後輪RTが回転することによって、センサ1のビーム照射領域が拡大し、車両100周囲のより広い範囲を1つのセンサ1で監視することができる。以下、センサ1を利用した検出対象物体の例を説明する。
図5に示すように、車両100の上方向に存在する物体Hoを想定する。例えば、車両100がガードの下を走行する場合や立体駐車場に駐車する場合、当該車両100の上方向に物体Hoが存在する。この場合、車両100の後輪RTに固設されたセンサ1のビームBの出射方向が上方向になると、物体Hoがセンサ1のビームB照射領域に含まれる。そして、センサ1が物体Hoを検出した情報に基づいて、車両100と物体Hoとが衝突の危険性がある場合に、処理部3が運転者に警報を出すことが可能となる。
また、図6に示すように、車両100の下方向に存在する溝Loを想定する。例えば、車両100の後輪RTの近傍に溝Loが存在する場合、車両100の後輪RTに固設されたセンサ1のビームBの出射方向が下方向になると、溝Loがセンサ1のビームB照射領域に含まれる。そして、センサ1が溝Loを検出した情報に基づいて、車両100が溝Loへ脱輪する危険性がある場合に、処理部3が運転者に警報を出すことが可能となる。
さらに、図7に示すように、車両100の後方に存在する物体Roを想定する。例えば、隣接車線を後方から車両100に接近する他の車両が存在し、当該車両が車両100の前方で車線変更する場合、車両100の後輪RTに固設されたセンサ1のビームBの出射方向が後方向になると、後方から接近する物体Roがセンサ1のビームB照射領域に含まれる。そして、車両100の後輪RTに固設されたセンサ1のビームBの出射方向が前方向になると、前方で車線変更する物体Roがセンサ1のビームB照射領域に含まれる。そして、センサ1が物体Roを検出した情報に基づいて、車両100と物体Roとが割り込みや追突などによる衝突の危険性がある場合に、処理部3が運転者に警報を出すことが可能となる。
次に、図8〜図16を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車両周囲監視装置の動作について説明する。なお、図8は、当該車両周囲監視装置の処理部3の動作を示すフローチャートである。図9は、センサ検知距離情報Lsおよび路面反射テンプレートTPの一例を示す図である。図10は、各検知範囲の一例を説明するための図である。図11は、車両100の上方に存在する物体Hoを検出する位置関係を示す図である。図12は、上方検知範囲UAに設定される上方警報領域の一例を示す図である。図13は、車両100の下方に存在する物体Loを検出する位置関係を示す図である。図14は、下方検知範囲LAに設定される下方警報領域の一例を示す図である。図15は、車両100の後方に存在する物体Roを検出する位置関係を示す図である。図16は、前方および後方検知範囲FAおよびRAにそれぞれ設定される前方および後方警報領域の一例を示す図である。なお、処理部3の動作を具体的にするために、物体までの距離を計測するセンサ1が車両100の後輪RTに固設されている一例を用いて説明する。
図8において、処理部3は、センサ1から伝送部2を介して送信されるセンサ検知距離情報Lsの所定時間分を記憶部5に保持する(ステップS1)。ここで、センサ検知距離情報Lsとは、検出時間に応じてセンサ1が検出した距離情報である(図9(a)参照)。例えば、車両100が走行している場合、センサ1が後輪RTと共に回転するため、車両100の周囲に検知対象の物体がなくても定期的に路面や車両100のドアミラーなどを検出する。そして、図9(a)に示すように、これらの距離が一定であるため、路面を検出した路面距離データSrおよびドアミラー距離データMrは、距離数値が一定となったデータとして定期的に検出される。
次に、処理部3は、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsに対して、路面反射テンプレートTPによるマッチング探索を行い、センサ回転位相Tを算出する(ステップS2)。
ここで、車両100の運転者に検出した物体を報知する場合、車両100に対する検出した物体の方向を認識した方がより適切な報知が可能となる。例えば、図4に示したように、センサ1のビーム形状が非常に細く、ビームBの中心軸が後輪RTの回転軸に対してより垂直に近い方向に設置されている場合、センサ1がどちらの方向を向いているか(センサ回転位相)を把握する必要がある。例えば、図9(a)に示すように、センサ1からのセンサ検知距離情報Lsは、車両100が走行し後輪RTが回転する毎に路面を検知する。具体的には、路面の距離を示す路面距離データSrの値は、検出後だんだん小さくなり、センサ1と路面とが最も近づいた場合にその距離を示す最小の値になり、その後だんだん大きくなる。この変化が後輪RTの1回転毎に現れる。この路面距離データSrの変化は、車両100が走行している限り同様に現れるが、車両100の速度の変化に応じて周期も変化する。そこで、処理部3は、この路面距離データSrを抽出することによってセンサ回転位相Tを得て、センサ1の向きを判断する。例えば、処理部3は、路面の距離変化を示したテンプレートをセンサ検知距離情報Lsの時間軸上(図9(a)では、横軸)で伸縮しながら、センサ1が検知したセンサ検知距離情報Ls上で、相関処理の一例であるマッチング処理を行って、センサ回転位相Tを算出する。
例えば、図9(b)に示すように、路面反射テンプレートTPは、横軸を後輪RTの一回転としてセンサ1が路面を検出した距離データSrtpを縦軸に示したデータであり、横軸の幅Wが伸縮可能に構成されている。そして、上記ステップS2において、処理部3は、路面反射テンプレートTPの幅Wをセンサ検知距離情報Lsの横軸上で伸縮しながら、センサ1が検知したセンサ検知距離情報Ls上で路面反射テンプレートTPとのマッチング処理を行って、センサ回転位相Tを算出する。そして、例えば、車両100の後方から物体Roが近づいてきた場合、その距離データRrを検出することにより、車両100に対してどの方向にどれくらいの距離に物体Roが存在するかを検知することが可能となる。
なお、上述した説明では、テンプレートとして路面反射テンプレートTPを用いたが、車両100の側面における突起物であり、センサ1との位置関係が一定となるドアミラーやサイドミラーに対する距離データ(例えば、図9(a)におけるミラー距離データMr)に基づいて、センサ1の向きを算出してもかまわない。
また、処理部3が車速センサ6から入力する車速情報を用いて、上記ステップS2のマッチング処理を行ってもかまわない。上記車速情報を用いれば、路面反射テンプレートTPの時間軸方向の伸縮度合いを定量的に決定できるため、より簡単にセンサ回転位相Tを算出できる。さらに、車両100が発進直後等の低速走行時は、マッチング処理を行えるデータ数がほとんどないことから、上記車速情報に基づいて処理することは非常に有効である。例えば、車両100の近傍に溝が存在し、車速情報に基づいて車両100が低速で移動していることが認識されている状態で、センサ1による路面からの反射情報が通常のように得られない場合は、車両100の近傍に溝が存在していることを判断することができる。また、車両100が極めて低速の場合、距離データSrtpを縦軸に示し、横軸が後輪RTの一回転に満たない路面反射テンプレートTPを用いれば、センサ検知距離情報Lsが後輪RT一回転分のデータに満たない場合であっても、センサ回転位相Tを算出できる。
次に、処理部3は、センサ回転位相Tに基づいて、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsをセンサ角度θsに応じて解析する(ステップS3)。ここで、センサ角度θsは、図2を用いて説明した座標系における角度θで示され、センサ1が鉛直上方向に向いたときがセンサ角度θs=0°で定義される。図10に示すように、処理部3は、センサ回転位相Tに対してセンサ角度θs=0°〜360°を割り当てる。そして、処理部3は、センサ角度θsに応じて、上方検知範囲UA、下方検知範囲LA、前方検知範囲FA、および後方検知範囲RAに分割して、センサ検知距離情報Lsをそれぞれ解析する。一例として、処理部3は、300°≦θs<360°および0°≦θs<60°のセンサ角度θsの範囲を上方検知範囲UAとする。処理部3は、120°≦θs<240°のセンサ角度θsの範囲を下方検知範囲LAとする。処理部3は、60°≦θs<120°のセンサ角度θsの範囲を前方検知範囲FAとする。そして、処理部3は、240°≦θs<300°のセンサ角度θsの範囲を後方検知範囲RAとする。
次に、処理部3は、上方検知範囲UAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS4)。例えば、図11に示すように、センサ1が設置される路面からの高さを基準に、当該高さから距離L1より低い位置に存在する上方物体Hoを、運転者に報知する対象であるとする。例えば、距離L1=(車両100の車高)−(センサ1の路面からの高さ)で設定される。そして、センサ1が上方検知範囲UAにおいて距離Lsに存在する物体を検出する。この場合、図12に示すように、センサ検知最大距離以下の上方検知範囲UAで、かつLs=L1/cosθsで示される上方警報ラインより下の領域が上方警報領域に設定される。なお、上記上方警報ラインは、正確にはLs=L1/(cosθs・cosφs)で設定されるが、上述したようにセンサ1の取付角度φs≒0°であるため、上方警報ラインをLs=L1/cosθsで設定している。そして、処理部3は、上方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の上方向近傍に接触の可能性のある上方物体Hoが存在すると判断する。
次に、処理部3は、下方検知範囲LAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS5)。例えば、図13に示すように、センサ1が設置される路面からの高さを基準に、当該高さから距離L2より低い位置に存在する下方物体Loを、運転者に報知する対象であるとする。例えば、距離L2=(センサ1の路面からの高さ)で設定され、路面から凹となった溝などを報知対象とする。そして、センサ1が下方検知範囲LAにおいて距離Lsに存在する物体を検出する。この場合、図14に示すように、センサ検知最大距離以下の下方検知範囲LAで、かつLs=−L2/cosθsで示される下方警報ラインより上の領域が下方警報領域に設定される。なお、上記下方警報ラインは、正確にはLs=−L2/(cosθs・cosφs)で設定されるが、上述したようにセンサ1の取付角度φs≒0°であるため、下方警報ラインをLs=−L2/cosθsで設定している。そして、処理部3は、下方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の下方向近傍に脱輪する可能性のある溝などの下方物体Loが存在すると判断する。
次に、処理部3は、前方および後方検知範囲FAおよびRAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS6)。例えば、図15に示すように、センサ1が設置される位置を基準に、当該位置から距離L3より近い位置に存在する前方または後方物体Roを、運転者に報知する対象であるとする。例えば、距離L3は、車両100が停止するために必要な空走距離や制動距離などに応じて設定される。そして、センサ1が前方および後方検知範囲FAおよびRAにおいて距離Lsに存在する物体を検出する。この場合、図16に示すように、センサ検知最大距離以下の前方および後方検知範囲FAおよびRAで、かつLs=L3/|sinθs|で示される前方および後方警報ラインより下の領域がそれぞれ前方および後方警報領域に設定される。なお、上記前方および後方警報ラインは、正確にはLs=L3/(|sinθs|・cosφs)で設定されるが、上述したようにセンサ1の取付角度φs≒0°であるため、前方および後方警報ラインをLs=L3/|sinθs|で設定している。そして、処理部3は、前方または後方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の前方に追突する、または後方から追突される可能性のある物体Roが存在すると判断する。
なお、上述した前方および後方警報ラインは、それぞれ別に設けてもかまわない。一般的に、車両100は、後退走行に対して前進走行で車速が高くなるため、前方警報ラインを高く形成して前方警報領域を後方警報領域より大きく設定してもかまわない。
また、車速センサ6(図1参照)からの車両100の車速情報に応じて、前方および後方警報ラインを設定してもかまわない。例えば、車両100が停止するまでの停止距離は、当該車両100の車速に応じて変化する。一般的に、車両の停止距離は、停止距離=空走距離+制動距離=運転者の反応時間×車速+車速2/2gμで示される(μは摩擦係数)。例えば、路面をぬれたアスファルトとして摩擦係数μ=0.45で設定すると、停止距離は、車速20km/hに対して7.7m、車速30km/hに対して14.1mとなる。この場合、処理部3は、これら車速に応じて変化する停止距離以上となるように、車速センサ6からの車速情報に応じて上記距離L3を設定する。
そして、処理部3は、上記ステップS4〜S6で行った危険性の判断に基づいて、運転者に表示や警報などを用いて車両100の周囲情報を報知し(ステップS7)、当該フローチャートによる処理を終了する。なお、上記ステップS7においては、処理部3は、運転者への周囲情報の報知だけでなく、車両100の走行制御(例えば、ブレーキによる車両100の停止)を行ってもかまわない。
このように、車両周囲監視装置は、センサを車輪の側面にその検出領域(ビームB)が車輪の回転と共に回転するように設置することにより、車両が走行し車輪が回転することによってセンサのビーム照射領域が拡大し、1つのセンサで車両周囲の広い領域が監視可能にすることができる。
(第2の実施形態)
図17を参照して、本発明の第2の実施形態に係る車両周囲監視装置について説明する。なお、図17は、当該車両周囲監視装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る車両周囲監視装置は、第1の実施形態に係る車両周囲監視装置に対して、処理部3がさらに車両100のシフトレバー7からの変速情報を得て処理している。他の構成要素については、第1の実施形態と同様であるため、同一要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
図17において、処理部3には、車両100のシフトレバー7から変速情報が入力する。ここで、変速情報は、少なくとも車両100のシフトレバー7がリバースを選択しているか否かを区別できる情報であれば、どのようなものでもかまわない。例えば、車両100のバックランプと連動してリバースの選択を区別してもかまわない。
次に、図18〜図20を参照して、本発明の第2の実施形態に係る車両周囲監視装置の動作について説明する。なお、図18は、当該車両周囲監視装置の処理部3の動作を示すフローチャートである。図19は、各検知範囲の一例を説明するための図である。図20は、前方および後方検知範囲FAおよびRAにそれぞれ設定される前方および後方警報領域の一例を示す図である。なお、処理部3の動作を具体的にするために、当該実施形態でも物体までの距離を計測するセンサ1が車両100の後輪RTに固設されている一例を用いて説明する。
図18において、処理部3は、センサ1から伝送部2を介して送信されるセンサ検知距離情報Lsの所定時間分を記憶部5に保持する(ステップS51)。なお、ステップS51の処理は、上記ステップS1の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、処理部3は、シフトレバー7からの変速情報に基づいて、現在車両100のシフトレバー7がリバースを選択しているか否かを判断する(ステップS52)。そして、処理部3は、シフトレバー7がリバースを選択していない(車両100が前進)場合、処理を次のステップS53に進める。一方、処理部3は、シフトレバー7がリバースを選択している(車両100が後退)場合、処理を次のステップS63に進める。
ステップS53において、処理部3は、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsに対して、前進用の路面反射テンプレートTPによるマッチング探索を行い、センサ回転位相Tを算出する。ここで、前進用の路面反射テンプレートTPは、図9(b)と同様に、横軸を後輪RTが前進方向の一回転としてセンサ1が路面を検出した距離データSrtpを縦軸に示したデータであり、横軸の幅Wが伸縮可能に構成されている。このステップS53の処理では、前進用の路面反射テンプレートTPが用いられるが、処理内容は上記ステップS2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、処理部3は、センサ回転位相Tに基づいて、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsをセンサ角度θsに応じて解析する(ステップS54)。ここで、センサ角度θsは、図2を用いて説明した座標系における角度θで示され、センサ1が鉛直上方向に向いたときがセンサ角度θs=0°で定義される。図19に示すように、処理部3は、センサ回転位相Tに対してセンサ角度θs=0°〜360°を割り当て、さらにセンサ角度θs=0°〜180°を前方範囲、センサ角度θs=180°〜360°を後方範囲とする。そして、処理部3は、センサ角度θsに応じて、前上方検知範囲FUA、後上方検知範囲RUA、前下方検知範囲FLA、後下方検知範囲RLA、前方検知範囲FA、および後方検知範囲RAに分割して、センサ検知距離情報Lsをそれぞれ解析する。一例として、処理部3は、0°≦θs<60°のセンサ角度θsの範囲を前上方検知範囲FUAとする。処理部3は、60°≦θs<120°のセンサ角度θsの範囲を前方検知範囲FAとする。処理部3は、120°≦θs<180°のセンサ角度θsの範囲を前下方検知範囲FLAとする。処理部3は、180°≦θs<240°のセンサ角度θsの範囲を後下方検知範囲RLAとする。処理部3は、240°≦θs<300°のセンサ角度θsの範囲を後方検知範囲RAとする。そして、処理部3は、300°≦θs<360°のセンサ角度θsの範囲を後上方検知範囲RUAとする。
次に、処理部3は、前上方検知範囲FUAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS55)。そして、処理部3は、前下方検知範囲FLAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS56)。なお、上記ステップS55においては、処理部3は、前上方検知範囲FUAに設定された上方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の上方向近傍に接触の可能性のある上方物体Hoが存在すると判断する。また、上記ステップS56においては、処理部3は、前下方検知範囲FLAに設定された下方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の下方向近傍に接触の可能性のある下方物体Loが存在すると判断する。これら上方警報領域および下方警報領域の設定方法については、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、処理部3は、前方検知範囲FAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行い(ステップS57)、処理を次のステップS58に進める。例えば、センサ1が設置される位置を基準に、当該位置から距離L4より近い位置に存在する前方物体を、運転者に報知する対象であるとする。例えば、距離L4は、車両100が停止するために必要な空走距離や制動距離などに応じて設定される。そして、センサ1が前方検知範囲FAにおいて距離Lsに存在する物体を検出する。この場合、図20に示すように、センサ検知最大距離以下の前方検知範囲FAで、かつLs=L4/|sinθs|で示される前方警報ラインより下の領域がそれぞれ前方警報領域に設定される。なお、上記前方警報ラインは、正確にはLs=L4/(|sinθs|・cosφs)で設定されるが、上述したようにセンサ1の取付角度φs≒0°であるため、前方警報ラインをLs=L4/|sinθs|で設定している。そして、処理部3は、前方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の前方に追突する可能性のある物体が存在すると判断する。このように、ステップS55〜S57の処理においては、車両100の進行方向(前方)に対してのみ車両周囲を監視して解析することになる。
一方、上記ステップS52の判断において、シフトレバー7がリバースを選択している場合、処理部3は、処理を次のステップS63に進める。ステップS63において、処理部3は、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsに対して、後退用の路面反射テンプレートTPによるマッチング探索を行い、センサ回転位相Tを算出する。ここで、後退用の路面反射テンプレートTPは、図9(b)のテンプレートを左右逆にして構成され、横軸を後輪RTが後退方向の一回転としてセンサ1が路面を検出した距離データSrtpを縦軸に示したデータで、横軸の幅Wが伸縮可能に構成されている。このステップS63の処理では、後退用の路面反射テンプレートTPが用いられるが、処理内容は上記ステップS2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、処理部3は、センサ回転位相Tに基づいて、記憶部5に保持されたセンサ検知距離情報Lsをセンサ角度θsに応じて解析する(ステップS64)。ここで、センサ角度θsは、図2を用いて説明した座標系における角度θで示され、センサ1が鉛直上方向に向いたときがセンサ角度θs=0°で定義される。そして、処理部3は、後輪RTが逆回転しているため、センサ回転位相Tに対してセンサ角度θs=360°〜0°(つまり、センサ角度θsが時系列的に降順となるように)を割り当て、さらにセンサ角度θs=0°〜180°を前方範囲、センサ角度θs=180°〜360°を後方範囲とする。そして、上記ステップS54と同様に、処理部3は、前上方検知範囲FUA、後上方検知範囲RUA、前下方検知範囲FLA、後下方検知範囲RLA、前方検知範囲FA、および後方検知範囲RAに分割して、センサ検知距離情報Lsをそれぞれ解析する。一例として、処理部3は、0°≦θs<60°のセンサ角度θsの範囲を前上方検知範囲FUAとする。処理部3は、60°≦θs<120°のセンサ角度θsの範囲を前方検知範囲FAとする。処理部3は、120°≦θs<180°のセンサ角度θsの範囲を前下方検知範囲FLAとする。処理部3は、180°≦θs<240°のセンサ角度θsの範囲を後下方検知範囲RLAとする。処理部3は、240°≦θs<300°のセンサ角度θsの範囲を後方検知範囲RAとする。そして、処理部3は、300°≦θs<360°のセンサ角度θsの範囲を後上方検知範囲RUAとする。
次に、処理部3は、後上方検知範囲RUAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS65)。そして、処理部3は、後下方検知範囲RLAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行う(ステップS66)。なお、上記ステップS65においては、処理部3は、後上方検知範囲FUAに設定された上方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の上方向近傍に接触の可能性のある上方物体Hoが存在すると判断する。また、上記ステップS66においては、処理部3は、後下方検知範囲RLAに設定された下方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の下方向近傍に接触の可能性のある下方物体Loが存在すると判断する。これら上方警報領域および下方警報領域の設定方法については、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に、処理部3は、後方検知範囲RAで検出されたセンサ検知距離情報Lsに対して、物体検知、物体までの距離、およびその危険性の判断を行い(ステップS67)、処理を次のステップS58に進める。例えば、センサ1が設置される位置を基準に、当該位置から距離L5より近い位置に存在する後方物体を、運転者に報知する対象であるとする。そして、センサ1が後方検知範囲RAにおいて距離Lsに存在する物体を検出する。この場合、図20に示すように、センサ検知最大距離以下の後方検知範囲RAで、かつLs=L5/|sinθs|で示される後方警報ラインより下の領域がそれぞれ後方警報領域に設定される。なお、上記後方警報ラインは、正確にはLs=L5/(|sinθs|・cosφs)で設定されるが、上述したようにセンサ1の取付角度φs≒0°であるため、後方警報ラインをLs=L5/|sinθs|で設定している。そして、処理部3は、後方警報領域内にセンサ検知距離情報Lsが示された場合、車両100の後方が接触する可能性のある物体が存在すると判断する。このように、ステップS65〜S67の処理においては、車両100の進行方向(後方)に対してのみ車両周囲を監視して解析することになる。
ステップS58において、処理部3は、上記ステップS55〜S57またはS65〜S67で行った危険性の判断に基づいて、運転者に表示や警報などを用いて車両100の周囲情報を報知し(ステップS7)、当該フローチャートによる処理を終了する。
このように、第2の実施形態に係る車両周囲監視装置は、第1の実施形態に係る車両周囲監視装置の効果に加えて、車両の進行方向を中心として車両周囲を監視するため、監視不要な領域に対する処理を削減することができ、処理負担が軽減される。また、運転者に対しても、車両進行方向のみに対する報知が行われるため、より車両の運転に関わる危険に即した報知が行われる。また、車両前進用および車両後退用のテンプレートを使い分けることによって、それぞれの走行モードに応じてセンサ1が向いている方向を適切に把握することができる。
なお、第2の実施形態に係る車両周囲監視装置の動作では、上記ステップS57およびステップS67のいずれか一方を行うことによって、前方および後方検知範囲FAおよびRAのいずれか一方に対する監視を行っている。しかしながら、第1の実施形態と同様に、前方および後方検知範囲FAおよびRAの双方を同時に監視対象にしてもかまわない。この場合、車両100の走行方向に応じて、前方警報領域および後方警報領域(図20参照)を設定することも可能である。
例えば、車両100が前進走行している場合、後方の監視能力を低く(つまり、距離L5を相対的に小さな値にする)して、車両100の後方に異常に接近する物体のみを検知するようにしてもかまわない。また、車両100が後退走行している場合、前方の監視能力を低く(つまり、距離L4を相対的に小さな値にする)して、車両100の前方に異常に接近する物体のみを検知するようにしてもかまわない。
一方、運転者は、車両100の進行方向に対しては、車両周囲の物体に注意することが容易であるが、進行方向の逆方向に対しては注意を怠ることが考えられる。このような危険性を防止するために、車両100が前進走行している場合、その逆方向となる後方の監視能力を高く(つまり、距離L5を相対的に大きな値にする)してもかまわない。また、車両100が後退走行している場合、その逆方向となる前方の監視能力を高く(つまり、距離L4を相対的に大きな値にする)してもかまわない。
また、上述した第1および第2の実施形態では、処理部3の動作を具体的にするために、物体までの距離を計測するセンサ1が車両100の後輪RTに固設されている一例を用いて説明した。この場合は、時間の変化に対して距離の情報が変化する2次元のセンサ検知距離情報Ls(図9参照)が得られる。一方、図21(a)に示すように、センサ1が検知センサ、すなわち物体が存在するか否かだけを検知する場合、センサ1から出力される情報は、時間の変化に対して物体が存在するか否かを示す1次元の情報になる。ここで、センサ1は、物体が存在する場合ON(信号「1」)、物体が存在しない場合OFF(信号「0」)を出力している。具体的には、路面の存在を検出した信号Srが後輪RTの1回転毎に現れる。また、車両100の側面における突起物であり、センサ1との位置関係が一定となるドアミラーやサイドミラーの存在を検出した信号Mrが後輪RTの1回転毎に現れる。この場合、処理部3は、これら信号SrやMrを抽出することによってセンサ回転位相Tを得て、センサ1の向きを判断する。例えば、処理部3は、路面およびミラーの存在を検出したテンプレートTP(図21(b)参照)を時間軸上(図21(a)では、横軸)で伸縮しながら、センサ1が検知した信号上で、マッチング処理を行って、センサ回転位相Tを算出する。そして、例えば、車両100の後方から物体Roが近づいてきた場合、その信号Rrを検出することにより、車両100に対してどの方向に物体Roが存在するかを検知することが可能となる。
また、第1および第2の実施形態に係る車両周囲監視装置は、周囲の物体の高さ情報を得ることができるので、物体の高さ情報を含めた立体的なものとしてある程度把握することが可能となり、表示部4を用いて運転者の報知する際、自車両と物体との位置関係が認識しやすい立体的な表示をするための情報として有効となる。図22は、表示部4に表示される自車両と物体との位置関係が認識しやすい立体的な表示の一例である。
例えば、図22(a)に示すように、車両100の後方に、センサ1のビームBの照射領域に含まれる人物Pが存在するとする。この場合、図22(b)に示すように、表示部4には、車両周囲監視装置からの距離データに基づいて、車両100を上方から鳥瞰した状態を画像で示す車両オブジェクトCobjを中心として、人物Pを示す人物マークPmkが当該距離データに対応した位置に表示される。また、図22(c)に示すように、表示部4には、車両周囲監視装置からの距離データおよび物体の高さデータに基づいて、車両100を斜視した状態を画像で示す車両オブジェクトCobjを中心として、人物Pを示す人物マークPmkが当該距離データおよび高さデータに対応した位置および大きさで表示される。また、図22(c)に示すように、表示部4には、車両周囲監視装置からの距離データおよび物体の高さデータがそれぞれ示す長さを表示することもできる。
また、上述した説明では、センサ1を車両100の後輪RTに設置したが、センサ1は、他の車輪に設置してもかまわない。例えば、車両100の操舵に係る前輪側面に固設されてもかまわない。この場合、図23に示すように、処理部3には、舵角センサ8からの舵角情報が入力する。ここで、舵角情報とは、車両100のステアリングホイールを左右に切ったときの前輪の切れ角度を示す情報である。この舵角情報を用いて処理部3が処理することによって、運転者の操舵によってセンサ1のビーム照射領域に干渉する車両100の車体(タイヤハウスなど)の影響を補正したり、操舵方向に対する監視を行ったりすることが可能となる。また、センサ1を車両100の2つの後輪共にそれぞれ設置し、処理部3が2つのセンサ1からの情報に基づいて車両周囲の監視を行ってもいいことは、言うまでもない。