JP4494604B2 - 金属薄帯の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高速で回転する冷却ロールへ金属の溶湯をストリップキャストする時の溶湯の供給速度を一定に維持することが可能な金属薄帯の製造装置および形成される厚さと幅が均一で酸化物を副生しない金属薄帯の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属の溶湯を急冷して帯状の鋳造物を製造することは既に行われているところであり多くの技術が提案され実用化されている。その中で、特開平5ー222488号、特開平6ー84624号、特開平8ー229641号、特開2000−79449号の各公報の実施例に示されている方法、すなわち、溶湯をそのヘッドによってタンディッシュから冷却ロールに供給する方法では、厚さが0.05mm以下のような極薄の金属薄帯は得られない。極薄の金属薄帯を得るためにタンディッシュのノズルのスロット幅を小さくすると、粘度の高い溶湯がスロットから流れ出さなくなるからである。
【0003】
上記のような極薄の金属薄帯を得る装置、製造方法については以下に示すものを含め多くの技術が提案されている。
【0004】
(従来例1)
特公昭59−42586号公報には、厚さ0.05mm×50mmの金属薄帯を製造する装置として、(a)100〜2000m/minの表面速度で移動する可動性冷却体、(b)溶湯を融点以上に維持するための加熱手段を含み、スロット付きノズルと連絡している溜め、(c)冷却表面に近接して配置され、冷却表面の運動方向に0.2ないし1mmの幅を有するスロットを備えたノズル、(d)溜めの中の溶湯をノズルから排出させる手段、を構成要素とする金属の連続ストリップ製造装置が公告されている。この装置は溶融スピン法として従来から知られている方法、すなわち、加圧オリフィスから溶湯を冷却ブロックに噴射させて冷却する方法によるものであり、加圧の方法として、不活性ガスによる加圧、溶湯の静水頭の利用が知られていることは、特公昭59−42586号公報にも述べられている。
【0005】
そして、その発明の具体的な説明のなかでは、冷却表面が約700m/minの速度で動くことができるとき、スロットの幅は0.5〜0.8mmとすることができ、溜めの中の金属は約0.5〜2psig(0.035〜0.141kg/cm2 )の圧力に加圧されるべきとされている。そして真空中で実施する場合には100〜3000ミクロンHg、より好ましくは約200〜約2000ミクロンHgの範囲内で行うことが推奨されている。また、冷却固化の過程で金属の酸化物が形成されると、これらの微片が冷却ロールの表面に付着し、供給されてくる溶湯内に混入したり、形成される金属薄帯の表面を不均質化させるようになるので、これを防ぐためにノズルの前方となる冷却ロールの冷却表面に不活性ガスの吹き付けが行われる。そして、その製造例1は、真空下でのストリップキャストであるとの記述はなく、冷却ロールの冷却表面に不活性ガスの吹き付けが行われる装置を使用し、約700rpmの速度で回転させた直径16インチ(40.6cm)の冷却ロール、すなわち、表面速度約895m/minの冷却ロールに対して、1000℃の温度に保持された溶融金属(Fe40Ni40P14B6 )の溜めに、アルゴンガスで約0.7psig(0.049kg/cm2 )の圧力をかけて、溜めの下端部に設けられた幅0.9mm、長さ51mmのスロット状オリフィスから溶融金属を供給し、厚さ0.005mm、幅5cmのストリップが形成されている。
【0006】
(従来例2)
特開平5ー47538号公報には、真空チャンバー内で、先端が矩形スリットである噴出ノズルより軟磁性合金溶湯を噴出させ、噴出ノズルに接近して配置された冷却ロールで急冷を行う減圧液体急冷方法において、溶湯に加える噴出圧力を大気圧未満の圧力にする極薄軟磁性合金薄帯の製造方法が開示されており、更にまた、溶湯に加える噴出圧力と真空チャンバーの圧力との差圧を0.02〜0.10MPaとすることが述べられている。そして、その実施例1においては、軟磁性合金溶湯を石英ノズルに設けた3.3×0.2mmの矩形スリットから圧力約3×10-3Paの真空チャンバー内の水冷の冷却ロール上へ間隔0.2mmで噴出させて急冷薄帯を作製しており、溶湯に加える噴出圧力が大気圧より低いほど表面性のよい均一な薄帯が得られるとし、このような方法によれば、従来よりも低速の冷却ロールを使用して、しかも従来より広いスリット先端−冷却ロール間隔を使用して一定の膜厚の薄帯を安定に製造できるとしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1の製造例1に示されている装置は、真空中の操作とは読み取り難く、従って、ストリップキャストされる溶湯が固化する部分に不活性ガスを吹き付けるような手段を適用しない限り溶湯は酸化され易いほか、ルツボをアルゴンガスで約0.7psigに加圧してノズルから溶湯を供給しているが、連続的な供給によってルツボ内の溶湯量は必然的に少なくなってくるので、ノズルからの溶湯の供給速度を一定に維持し難く、従って、得られる金属薄帯は厚さが不均等になり易いと言う問題がある。更には、金属が酸化されることを防ぐために冷却表面へ不活性ガスを吹き付けているが、単なる不活性ガスの吹き付けだけではストリップキャストが行われている場所の雰囲気を常に一定に制御することは困難である。
【0008】
また、従来例2の製造方法は、実施例の説明の項に記述されているように、噴出ノズル内の溶湯に大気圧未満の一定の圧力を加える方法であり、この従来例2においても噴出時間の経過による噴出ノズル内の溶湯の湯面の高さの変化の影響は考慮されていない。更には、実施例1において溶湯に大気圧未満の圧力を加えて0.02〜0.10MPaの差圧を得るために真空チャンバーは約3×10-3Paの高真空を必要としている。また、従来よりも低速の冷却ロールを使用し得るとしているが、実施例1で膜厚10μmの薄帯を得る場合の冷却ロールの周速は20〜80m/secの範囲にあり、必ずしも低速であるとは言えない領域である。
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、金属の溶湯をタンディッシュまたはルツボのノズルから高速回転する冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を製造するに際し、ノズルから冷却ロールへの溶湯の供給速度を一定に維持することの可能な金属薄帯の製造装置、および厚さと幅が均一で酸化物を副生しない金属薄帯の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題の解決手段を説明すれば、次の如くである。
【0011】
本発明の金属薄帯の製造装置は、真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を形成させる金属薄帯の製造装置において、
隔壁によって画成され前記ノズルによって連通された、前記タンディッシュを含む金属の溶解室と、前記冷却ロールを含む溶湯の冷却固化室とを有する溶解鋳造室と、
前記タンディッシュ内の溶湯の湯面の高さを検出する検出手段と、
前記検出手段の出力に基づいて溶湯量の減少した前記タンディッシュへ溶湯を間欠的または連続的に補給する溶解炉体と、
前記タンディッシュ内の溶湯の自重による圧力すなわちヘッドをPh、前記溶解室の圧力すなわち前記タンディッシュ内の溶湯へ印加される圧力をPm、前記冷却固化室の圧力を一定のPcとして、
Ph + Pm = Pk(所定値)
Ph + Pm > Pc
Pk − Pc = 一定
が成立するように、前記タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhの変化に応じて前記溶解室の圧力Pmを制御する手段とを備えた装置である。
【0012】
このような金属薄帯の製造装置は、金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を製造するに際して、タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和、すなわち、溶湯の供給圧力Pkが常に所定の値にあり、かつ冷却固化室の圧力Pcよりは高い圧力となるように、溶解室の圧力Pmの圧力が制御されるので、溶湯はタンディッシュ内における湯面の高さとは無関係に、ノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さが均等な金属薄帯を形成させる。また、このストリップキャストが真空下または真空排気した後に不活性ガスを所定の圧力まで導入した不活性ガスの雰囲気下に行われるので、冷却固化の過程にある溶湯が酸化されることはなく、酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着するようなトラブルを発生させない。
【0013】
本発明の金属薄帯の製造装置は、圧力の異なる溶解室と冷却固化室との間がタンディッシュの本体と隔壁との間でシールされている装置である。本発明の金属薄帯の製造装置はタンディッシュのノズルと隔壁との間で差圧がシールされていることを要するが、ノズルより径の大きいタンディッシュの本体と隔壁との間でシールされてもよく、このような金属薄帯の製造装置は安定かつ確実なシールを可能にする。本発明の金属薄帯の製造装置は、ノズルに設けられるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満として、溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和Pkと、冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内の一定の値に維持して溶湯をノズルから冷却ロールへ供給する手段が設けられている装置である。このような金属薄帯の製造装置は、粘度の高い溶湯をノズルから円滑に供給させ、かつ必要以上に供給させない。
【0014】
本発明の金属薄帯の製造装置は、溶湯量の減少したタンディッシュへ溶湯を補給するための溶解炉体が溶解室内に設けられている装置である。このような金属薄帯の製造装置は、タンディッシュ内の溶湯の湯面の高さ、すなわち溶湯のヘッドPhの変化を抑制するので、制御される溶解室の圧力Pmの変化を小さくし、ノズルからの溶湯の供給速度を一層安定化させるほか、溶解鋳造の1サイクル当りの全鋳造量を増大させる。
【0015】
本発明の金属薄帯の製造方法は、真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷する金属薄帯の製造方法において、
金属を溶解し鋳造する溶解鋳造室を隔壁によって前記タンディッシュを含む金属の溶解室と前記冷却ロールを含む溶湯の冷却固化室とに画成して、前記溶解室と前記冷却固化室とを前記ノズルによって連通させ、
前記タンディッシュ内の溶湯の自重による圧力すなわちヘッドをPh、前記溶解室の圧力すなわち前記タンディッシュ内の溶湯へ印加される圧力をPm、前記冷却固化室の圧力を一定のPcとする時、
Ph + Pm = Pk(所定値)
Ph + Pm > Pc
Pk − Pc = 一定
が成立するように、前記タンディッシュ内の溶湯量の減少に応じて前記溶解室に設けられた金属の溶解炉体から前記タンディッシュへ溶湯を間欠的または連続的に補給し、かつ、前記タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhの変化に応じて前記溶解室の圧力Pmを制御する方法である。
【0016】
このような金属薄帯の製造方法は、金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を製造するに際して、タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和、すなわち溶湯の供給圧力Pkが常に所定の値にあり、かつ冷却固化室の圧力Pcよりは高い圧力となるように溶解室の圧力Pmの圧力を制御するので、溶湯はタンディッシュ内における溶湯面の高さとは無関係に、ノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さと幅が均一な金属薄帯を形成させる。また、このストリップキャストを真空下または真空排気した後に不活性ガスを所定の圧力まで導入した不活性ガスの雰囲気下に行うので、冷却固化過程にある溶湯が酸化されることはなく、酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着することによるトラブルを発生させない。
【0017】
本発明の金属薄帯の製造方法は、ノズルに設けるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満とし、溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和、すなわち溶湯の供給圧力Pkと、冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内として、溶湯をノズルから冷却ロールへ供給する方法である。このような金属薄帯の製造方法は、粘度の高い溶湯をノズルから円滑に供給させ、かつ必要以上に供給させない。本発明の金属薄帯の製造方法は、タンディッシュ内の溶湯の減少に応じて、溶解室に設けられた金属の溶解炉体から溶湯を補給する方法である。このような金属薄帯の製造方法は、タンディッシュ内の溶湯の湯面の高さ、すなわち溶湯のヘッドPhの変化を抑制するので、制御される溶解室の圧力Pmの変化を小さくし、ノズルからの溶湯の供給速度を一層安定化させるほか、溶解鋳造の1サイクル当りの全鋳造量を増大させる。
【0018】
本発明の金属薄帯の製造装置は、真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をルツボのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を形成させる金属薄帯の製造装置において、真空チャンバー内に溶湯の加圧が可能な密閉ルツボと冷却ロールとが設けられており、密閉ルツボにおける溶湯のヘッドをPh’、溶湯への印加圧力をPm’、真空チャンバー内の圧力を一定のPc’として、
Ph’ + Pm’ = Pk’(所定値) (式3)
Ph’ + Pm’ > Pc’ (式4)
の2式が成立するように、密閉ルツボにおける溶湯のヘッドPh’の変化に応じ溶湯への印加圧力Pm’を制御する手段が設けられている装置である。
【0019】
このような金属薄帯の製造装置は、金属の溶湯をルツボのノズルから高速回転する冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を製造するに際して、密閉ルツボ内の溶湯のヘッドPh’と溶湯への印加圧力Pm’との和、すなわち、溶湯の供給圧力Pk’が常に所定の値にあり、かつ真空チャンバー内の圧力Pc’よりは高い圧力となるように、溶湯への印加圧力Pm’が制御されるので、溶湯は密閉ルツボ内における湯面の高さとは無関係に、ノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さと幅が均一な金属薄帯を形成させる。また、このストリップキャストが真空下または真空排気した後に不活性ガスを所定の圧力まで導入した真空下に行われるので、冷却固化過程にある溶湯が酸化されることはなく、酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着することによるトラブルを発生させない。
【0020】
本発明の金属薄帯の製造方法は、真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をルツボのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷する金属薄帯の製造方法において、真空チャンバー内に溶湯の加圧が可能な密閉ルツボと冷却ロールとを設け、密閉ルツボにおける溶湯のヘッドをPh’、溶湯への印加圧力をPm’、真空チャンバー内の圧力を一定のPc’とする時、
Ph’ + Pm’ = Pk’(所定値) (式3)
Ph’ + Pm’ > Pc’ (式4)
の2式が成立するように、密閉ルツボにおける溶湯のヘッドPh’の変化に応じ溶湯への印加圧力Pm’を制御する方法である。
【0021】
このような金属薄帯の製造方法は、金属の溶湯をルツボのノズルから高速回転する冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を製造するに際して、ルツボ内の溶湯のヘッドPh’と溶湯への印加圧力Pm’との和、すなわち溶湯の供給圧力Pk’が常に所定の値にあり、かつ真空チャンバー内の圧力Pc’よりは高い圧力となるように溶湯への印加圧力Pmを制御するので、溶湯はルツボ内における湯面の高さとは無関係に、ノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さと幅が均一な金属薄帯を形成させる。また、このストリップキャストを真空下、または真空排気した後に不活性ガスを所定の圧力まで導入した不活性ガス雰囲気下に行うので、冷却固化過程にある溶湯が酸化されることはなく、酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着することによるトラブルを発生させない。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法は、上述したように、金属を溶解し鋳造する溶解鋳造室を、隔壁によってタンディッシュを備えた金属の溶解室と単一の冷却ロールを備えた溶湯の冷却固化室とに画成すると共に、溶解室と冷却固化室とをタンディッシュのノズルによって連通させて、タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和を冷却固化室の一定の圧力Pcよりも大とし、かつタンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和であるPkを所定の値とするように、溶湯のヘッドPhの変化に応じて溶解室の圧力Pmを調整する手段が設けられている装置であり、溶湯のヘッドPhの変化に応じて溶解室の圧力Pmを調整する製造方法である。すなわち、溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和である溶湯の供給圧力Pk(所定値)と冷却固化室の圧力Pcとの間に一定の差圧を与えてタンディッシュのノズルから冷却ロールの冷却面へ溶湯を供給させて金属薄帯をうる装置であり製造方法である。なお、ここに言う金属とは、急冷によって非晶質の薄帯が形成される金属および合金、および急冷によって均一な多結晶質の薄帯が形成される金属および合金を指す。
【0023】
溶解鋳造室は、一旦、真空排気した後、所定の圧力まで不活性ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスのような不活性ガスが導入される。溶解室の圧力Pmと冷却固化室の圧力Pcとの間に一定の差圧を与えるには、各室をそれぞれ独立した真空ポンプで排気して不活性ガスを導入することにより可能である。不活性ガスの導入後の溶解室、冷却固化室は必ずしも大気圧よりも減圧であることを要しないが、溶解を真空下で行うことにより溶湯からの脱ガスが完全に行われ、冷却固化を真空下に行うことによって、冷却固化された薄帯と冷却ロール表面との間に気体が殆ど存在しなくなり摩擦係数が大となることから、冷却ロール上における薄帯の冷却開始点から剥離点までの抱き角度が増大して冷却が一層進行するようになる。大気下または例え減圧下であっても大気が残存しているような雰囲気では、溶湯は冷却ロールへのストリップキャスト時に表面積が大幅に増大されることから酸化を受けて異物を形成し易い。
【0024】
そして、タンディッシュのノズルに設けた幅の狭いスロットや径の小さい孔から粘度の高い溶湯を供給させるために溶湯に一定の圧力を加えることを必要とするが、単位時間当り一定の溶湯量を継続して供給するには、単に溶湯に一定の圧力を加えるだけ、例えば溶解室の圧力Pmを一定に維持するだけでは不十分である。何故ならば、溶湯を供給させることによりタンディッシュ内での溶湯の液面の高さは低下するが、金属の溶湯の密度を例えば7g/cm3 とすると、約150mmの液面低下はヘッドに換算して約10kPaの低下となるからであり、溶湯の供給圧力は湯面の低下に応じて低下することになる。すなわち、溶湯の供給圧力Pkは溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和によって支配されるのであり、
Pk = Ph + Pm
溶湯の供給圧力Pkを所定の値に維持するには、溶湯のヘッドPhの変化に応じて溶解室の圧力Pmを調整するために、圧力計、圧力調整弁、圧力制御装置等の手段を必要とする。
【0025】
更には、ノズルから溶湯を一定の供給速度で供給するには、溶湯の供給圧力Pkと冷却固化室の圧力Pcとの間に一定の差圧を与えることを要するが、冷却固化室の圧力Pcは一定に維持されるので、差圧の大きさは溶解室に印加する圧力Pmの大きさによって定まる。当然のことながら、差圧が小さ過ぎると溶湯は供給されにくくなり、差圧が大き過ぎると溶湯が必要以上に供給されて冷却ロールの冷却面上で溢れるようになる。なお、供給を開始させるためにやや過剰気味の供給圧力を必要とすることもあるが、一旦、供給が始まれば所定の差圧を与えるように溶解室の圧力Pmが調整される。
また、金属の種類によっては溶湯の粘性挙動が異なり、例えばルツボでかなり低粘度とされた溶湯がタンディシュ内で粘度上昇する場合がある。このような場合には、ルツボからタンディシュへの出湯直後は、溶湯はノズルから冷却ロールへ勢いよく供給されるので、溶湯の供給圧力は小さくすることを必要とするが、粘度の上昇に伴って経時的に供給圧力を上昇させた後、所定の供給圧力Pkを与えるように溶解室の圧力Pmが調整される。
【0026】
図1は上記の溶解鋳造室の代表例を概略的に示す縦断面図である。すなわち、溶解鋳造室Vは隔壁WによってタンディッシュTを備えた圧力Pmの溶解室Mと冷却ロールRが設けられている圧力Pcの冷却固化室Cとに画成されており、隔壁Wに設けられた開口Whに上方からタンディッシュTが挿入されている。タンディッシュTには金属の溶湯Lが収容されている。そして、タンディッシュTの外周面に設けたフランジFと隔壁Wの開口Whの周縁部との間にシーリング部材Oを介在させて溶解室Mと冷却固化室Cとの間がシールされており、溶解室Mと冷却固化室CとはタンディッシュTのノズルNによって連通されている。すなわち、ノズルNに設けられたスロットまたは孔Sから溶湯Lが冷却ロールRへ供給される。その供給によってタンディッシュT内の溶湯Lの湯面の高さは時間的に変位するが、その溶湯のヘッドをPhとする。そして、溶湯LのヘッドPhと溶解室Mの圧力Pmとの和は溶湯Lの供給圧力Pkとなるが、溶湯Lの供給圧力Pk(=Ph+Pm)が常に所定の値であるように溶解室Mの圧力Pmが制御される。そして、溶湯の供給圧力Pkと冷却固化室Cの一定の圧力PcとはPk>Pcとして、一定の差圧が与えられる。
【0027】
図2は、溶湯Lの供給圧力Pkが常に所定の値となるように、溶湯面の高さの変化に応じて溶解室Mの圧力Pmを制御する場合における、溶湯LのヘッドPhの時間的な変化と、それに応じて変化させる溶解室Mの圧力Pmとの関係の一例を示すグラフであり、横軸は溶湯供給の経過時間、縦軸は溶湯の供給圧力Pk、すなわち、溶湯のヘッドPhと溶解室3の圧力Pmとの和である。図2に示すように、タンディッシュT内の溶湯面の高さが時間の経過と共に単純に低下し、そのヘッドPhが直線的に低下する場合には、溶湯の供給圧力Pkを一定に保つように溶解室Mの圧力Pmは直線的に増大される。そして、タンディッシュT内へ溶湯Lが補給される場合には、図2に示すように、溶湯LのヘッドPhは鋸歯状に変化するので、それに応じて溶解室Mの圧力Pmも変化される。なお、タンディッシュT内の湯面の高さは上方から照射するレーザの反射光を捉える方法によって求めることが可能であり、そのほか、撮像センサで捉える画像を画像処理して求めてもよい。何れの場合も湯面の高さは溶湯のヘッドPhに換算される。
【0028】
隔壁Wで画成された圧力Pmの溶解室Mと圧力Pcの冷却固化室Cとの圧力差は、両室を連通させるタンディッシュTのノズルNの外周と隔壁Wとの間でシールされてもよいが、径が大きいタンディッシュTの本体Bと隔壁Wとの間でシールすることにより、より安定で確実なシールが得られる。図3はそのようなシール例を示す図であり、図3のAは、タンディッシュTの本体Bの上端部の外周に設けたフランジFと隔壁Wの開口Whの周縁部との間にシーリング部材Oを介在させたシールを示し、図3のBは同じく本体Bの下端部の外周に設けたフランジF’と隔壁Wとの間にシーリング部材O’を介在させたシールを示す断面図である。また、図3のCはノズルNの外周に設けたフランジF”と隔壁Wとの間にシーリング部材O”を介在させたシールを示す断面図である。
【0029】
ノズルNには冷却ロールRの外周冷却面の走行方向と直角に細長の矩形状のスロットが設けられ、そのスロット幅すなわち矩形の短辺は0.2mmないし1mm、好ましくは0.3mmないし0.7mmとされ、スロット長さすなわち矩形の長辺は50mm以上、例えば300mmとされる。また、ノズルに丸孔を設ける場合(丸孔を冷却面の走行方向と直角に1列に並べるような場合も含まれる)には直径0.2mmφないし1mmφ、好ましくは0.3mmφないし0.7mmφとされる。勿論、丸孔以外の形状の孔であってもよい。なお、スロットまたは孔における溶湯の流路の長さはスロット幅または孔径に対して、短くとも2倍以上で40倍未満とされる。
【0030】
このようなスロットまたは孔から粘度の高い溶湯Lを供給するには、上述したように、溶湯LのヘッドPhと溶解室Mの圧力Pmとの和、すなわち供給圧力Pkを冷却固化室Cの圧力Pcより大とすることが必要であり、3kPa以上で100kPa未満の差圧が与えられる。差圧が3kPa未満ではスロットまたは孔から溶湯Lが供給されにくくなる。差圧を大きくし過ぎると溶湯Lが必要以上に供給されるようになるほか、表面が平滑で厚さと幅の均一な薄帯を得難くなるので、100kPa以上の差圧は必要でない。差圧を大きくするとスロット内または孔内における溶湯Lの流れが乱流化するためと思考される。そのような観点からは、溶湯Lを一定の供給速度で供給して厚さと幅が均一で表面の平滑な金属薄帯を得るには、スロット幅を可及的に大にし、小さい差圧によって供給することが好ましい。
【0031】
更には、溶解室MのタンディッシュT内の溶湯Lの量の減少に応じて溶湯Lを補給し得るように、溶解室M内にルツボを備えた溶解炉体を別途に設けてもよい。すなわち、溶解炉体で金属を溶解し、傾動軸の回りに傾動させてタンディッシュTへ溶湯L補給する。
【0032】
【実施例】
次に、本発明の金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法を実施例によって図面を参照して具体的に説明する。
【0033】
(実施例)
図4は金属薄帯の製造装置における溶解鋳造室1の縦断面図である。溶解鋳造室1は隔壁2によってタンディッシュ31が設けられている溶解室3と、銅製で水冷の冷却ロール41が設けられている冷却固化室4とに画成されており、溶解室3には真空排気配管38、不活性ガスとしてのアルゴン(Ar)ガス導入配管39が接続され、冷却固化室4には真空排気配管48、Arガス導入配管49が接続されている。また、隔壁2に設けられた開口2hに上方からタンディッシュ31が挿入されており、保温用の誘導加熱コイル37を備えたタンディッシュ31にはSm−Fe系の非晶質合金の温度1400℃の溶湯30が収容されている。そして、タンディッシュ31の外周面に設けたフランジ31fと隔壁2の開口2hの周縁部との間にシーリング部材34を介在させて溶解室3と冷却固化室4との間がシールされており、溶解室3と冷却固化室4とはタンディッシュ31のノズル32によって連通されている。
【0034】
更には、溶解室3内にはルツボ35を備えた溶解炉体36が設けられており、実線で示す位置で金属の溶解が行われ、図示を省略した機構によって一点鎖線で示すように傾動されて、溶湯量の減少したタンディッシュ31内へ溶湯が補給される。前述した図2は溶湯を間欠的に補給した場合の溶湯のヘッドPhの鋸歯状の変化の一部を示すものである。
【0035】
冷却固化室4にはタンディッシュ31のノズル32の直下に直径400mmφで水冷の冷却ロール41が設けられており、ノズル32の下端と冷却ロール41の外周冷却面との間隔は0.5mmとされている。そして冷却ロール41は回転速度1600rpmで矢印で示す方向へ回転されており、その周速度は33.5m/secと算出される。また、タンディッシュ31のノズル32には細長い矩形状のスロット33が冷却ロール41の冷却面の走行方向と直角に設けられ、そのスロット幅すなわち冷却面の走行方向である矩形の短辺は0.4mm、スロット長さすなわち矩形の長辺は50mm、そしてスロット33の内部の溶湯の流路長は8mmとされている。
【0036】
そして、冷却固化室4は真空排気して1×10-1Paの圧力に維持し、冷却固化室4との間に5kPaの差圧を与えるように供給圧力Pk(=Ph+Pm)を設定し、タンディッシュ31内の溶湯30のヘッドPhの変化に対応して、溶解室3の圧力Pmを制御して、溶湯30をノズル32のスロット33から冷却ロール41の冷却面へ単位時間当り14kg/minの溶湯が供給され、厚さと幅が長さ方向に均一で、表面の平滑な厚さ10μm、幅50mmのSm−Fe系非晶質合金の薄帯40が連続する長尺のリボン状として得られた。
【0037】
以上、本発明の金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法を実施の形態によって説明したが、勿論、本発明はこれに限られることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0038】
例えば実施例の図4においては、溶解炉体36を固定的に設ける場合を示したが、溶解炉体36を台車上に移動可能に設置してもよい。また、溶湯の補給の方法として、図2においては溶湯を間欠的に補給する場合を示したが、タンディッシュ31のノズル32から冷却ロール41への溶湯の供給量に応じて少量ずつ連続的に補給するようにしてもよい。
【0039】
また本実施の形態においては、溶解室3にタンディッシュ31を設け、タンディッシュ31内の溶湯のヘッドPhと溶解室3の圧力Pmとの和であるPkを所定値とする装置および製造方法を説明したが、同様な考え方に基づくものとして、真空チャンバー内に加圧の可能な密閉ルツボを設け、密閉ルツボ内の溶湯を加圧することにより所定の供給圧力で溶湯を供給するようにしてもよい。図5はそのような金属薄帯の製造装置を示す断面図である。すなわち真空チャンバー1’内に誘導加熱コイル37’を備えた密閉ルツボ31’が天井面との間をシーリング部材7でシールされた支持部材8によって懸吊されており、更には大気側の加圧Arガス源9と配管9pによって連結されている。密閉ルツボ31’内の溶湯30’のヘッドPh’と溶湯へのArガスによる印加圧力Pm’との和である供給圧力Pk’を所定の値とし、真空チャンバー1’内の圧力Pc’との間に一定の差圧を与えて、密閉ルツボ31’のノズル32’のスロット33’からその直下にある冷却ロール41’へ溶湯を供給してもよい。
【0040】
また本実施の形態においては、非晶質の軟磁性合金の溶湯を急冷して薄帯を製造する製造装置および製造方法を例示したが、本発明の金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法は、銅や銅合金、アルミニウム合金の溶湯を急冷して均一な多結晶質の金属薄帯を製造する場合にもそのまま適用され得る。
また本実施の形態においては、不活性ガスとしてアルゴンガスを例示したが、アルゴンガス以外にネオン(Ne)ガスやヘリウム(He)ガス、ないしは窒素(N2 )ガスも使用し得ることは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
本発明の金属薄帯の製造装置および金属薄帯の製造方法は、以上に説明したような形態で実施され、次に述べるような効果を奏する。
【0042】
本発明の金属薄帯の製造装置によれば、タンディッシュ内における湯面の高さとは無関係に、溶湯がノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さと幅が均一な金属薄帯が形成されるので、トランス、磁気ヘッド、チョークコイル等に適した非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料の工業的規模による製造を可能にする。そしてこのように得られる非晶質の軟磁性合金の薄帯は例えばトランスへ適用された時、従来のトランスよりもエネルギーロスを大幅に低下させる。また、ストリップキャストが真空下または不活性ガス雰囲気下に行われ、溶湯の酸化による酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着するようなトラブルを発生させないので、非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料の低コストによる製造を可能にする。
【0043】
本発明の金属薄帯の製造装置によれば、タンディッシュのノズルより径の大きいタンディッシュの本体と隔壁との間でシールされているので、溶解室と冷却固化室との間の差圧を安定かつ確実にシールする。本発明の金属薄帯の製造装置によれば、ノズルに設けられるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満として、タンディッシュからの溶湯の供給圧力Pkと冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内の一定の値に維持して、溶湯をノズルから冷却ロールへ供給するので、溶湯がノズルから円滑に供給されて、厚さと幅が均一で表面の平滑な金属薄帯を与え、かつ冷却ロールから溢れる程に供給されることもない。本発明の金属薄帯の製造装置によれば、溶解室内に設けられた溶解炉体から溶湯量の減少したタンディッシュへ溶湯が補給されるので、溶湯のヘッドPhの変動を抑制して溶湯の供給を一層安定化させると共に、溶解鋳造の1サイクル当りの全鋳造量を増大させる。
【0044】
本発明の金属薄帯の製造方法によれば、タンディッシュ内における湯面の高さとは無関係に、溶湯がノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さと幅が均一な金属薄帯を形成させるので、トランス、磁気ヘッド、チョークコイル等に適した非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料の工業的規模による製造することができる。また、ストリップキャストを真空下または不活性ガス雰囲気下に行い、溶湯の酸化による酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着するようなトラブルを発生させないので、非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料を低コストで製造することができる。
【0045】
本発明の金属薄帯の製造方法によれば、ノズルに設けられるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満とし、タンディッシュからの溶湯の供給圧力Pkと冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内の一定の値に維持して、溶湯をノズルから冷却ロールへ供給するので、溶湯がノズルから円滑に供給されて、厚さと幅が均一で表面の平滑な金属薄帯が得られ、かつ冷却ロールから溢れる程に供給されることもない。本発明の金属薄帯の製造方法によれば、溶解室内に設けられた溶解炉体から溶湯量の減少したタンディッシュへ溶湯を補給するので、溶湯のヘッドPhの変動が抑制されて溶湯の供給が一層安定化されると共に、溶解鋳造の1サイクル当りの全鋳造量を増大させる。
【0046】
本発明の金属薄帯の製造装置によれば、密閉ルツボ内における湯面の高さとは無関係に、溶湯がノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さが均等な金属薄帯が形成されるので、トランス、磁気ヘッド、チョークコイル等に適した非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料の工業的規模による製造を可能にする。また、ストリップキャストが真空下または不活性ガス雰囲気下に行われ、溶湯の酸化による酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着するようなトラブルを発生させないので、非晶質の軟磁性金属材料または多結晶質の金属材料の低コストによる製造を可能にする。
【0047】
本発明の金属薄帯の製造方法によれば、密閉ルツボ内における溶湯面の高さとは無関係に、溶湯がノズルからは常に一定の供給速度で冷却ロールへ供給され、厚さが均等な金属薄帯を形成させるので、トランス、磁気ヘッド、チョークコイル等に適した非晶質の軟磁性金属材料、または多結晶質の金属材料を工業的規模で製造することができる。また、ストリップキャストを真空下または不活性ガス雰囲気下に行い、溶湯の酸化による酸化物等の異物の微片が冷却ロールへ付着するようなトラブルを発生させないので、非晶質の軟磁性金属材料または多結晶質の金属材料を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属の溶湯をストリップキャストする溶解鋳造室の代表例を概念的に示す縦断面図である。
【図2】タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと溶解室の圧力Pmとの和Pkを所定の値に維持するように、Phの変化に応じてPmを変化させる場合の一例を示すグラフである。
【図3】溶解室と冷却固化室との間の差圧のシールを示す図であり、Aはタンディッシュ本体の上端部と隔壁とにおけるシール、Bはタンディッシュ本体の下端部と隔壁とにおけるシール、Cはタンディッシュのノズルと隔壁とにおけるシールである。
【図4】実施例1の金属薄帯の製造装置における溶解鋳造室の縦断面図である。
【図5】変形例としての、真空チャンバー内に密閉ルツボを設けた金属薄帯の製造装置の縦断面図である。
【符号の説明】
1 溶解鋳造室
2 隔壁
3 溶解室
4 冷却固化室
30 溶湯
31 タンディッシュ
32 ノズル
33 スロットまたは孔
36 溶解炉体
37 誘導加熱コイル
41 冷却ロール
Ph 溶湯のヘッド
Pm 溶解室の圧力
Pc 冷却固化室の圧力
Pk 溶湯の供給圧力
Claims (5)
- 真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷して金属薄帯を形成させる金属薄帯の製造装置において、
隔壁によって画成され前記ノズルによって連通された、前記タンディッシュを含む金属の溶解室と、前記冷却ロールを含む溶湯の冷却固化室とを有する溶解鋳造室と、
前記タンディッシュ内の溶湯の湯面の高さを検出する検出手段と、
前記検出手段の出力に基づいて溶湯量の減少した前記タンディッシュへ溶湯を間欠的または連続的に補給する溶解炉体と、
前記タンディッシュ内の溶湯の自重による圧力すなわちヘッドをPh、前記溶解室の圧力すなわち前記タンディッシュ内の溶湯へ印加される圧力をPm、前記冷却固化室の圧力を一定のPcとして、
Ph + Pm = Pk(所定値)
Ph + Pm > Pc
Pk − Pc = 一定
が成立するように、前記タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhの変化に応じて前記溶解室の圧力Pmを制御する手段とを備えた金属薄帯の製造装置。 - 圧力の異なる前記溶解室と前記冷却固化室との間が前記タンディッシュの本体と前記隔壁との間でシールされている請求項1に記載の金属薄帯の製造装置。
- 前記ノズルに設けられるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満として、前記溶湯のヘッドPhと前記溶解室の圧力Pmとの和Pkと、前記冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内の一定の値に維持して溶湯を前記ノズルから前記冷却ロールへ供給する手段が設けられている請求項1または請求項2に記載の金属薄帯の製造装置。
- 真空または不活性ガスの雰囲気下に金属の溶湯をタンディッシュのノズルから高速回転する単一の冷却ロールの表面へ供給し急冷する金属薄帯の製造方法において、
金属を溶解し鋳造する溶解鋳造室を隔壁によって前記タンディッシュを含む金属の溶解室と前記冷却ロールを含む溶湯の冷却固化室とに画成して、前記溶解室と前記冷却固化室とを前記ノズルによって連通させ、
前記タンディッシュ内の溶湯の自重による圧力すなわちヘッドをPh、前記溶解室の圧力すなわち前記タンディッシュ内の溶湯へ印加される圧力をPm、前記冷却固化室の圧力を一定のPcとする時、
Ph + Pm = Pk(所定値)
Ph + Pm > Pc
Pk − Pc = 一定
が成立するように、前記タンディッシュ内の溶湯量の減少に応じて前記溶解室に設けられた金属の溶解炉体から前記タンディッシュへ溶湯を間欠的または連続的に補給し、かつ、前記タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhの変化に応じて前記溶解室の圧力Pmを制御することを特徴とする金属薄帯の製造方法。 - 前記ノズルに設けるスロットの幅または孔の径を0.2mm以上で1mm未満とし、前記タンディッシュ内の溶湯のヘッドPhと前記溶解室の圧力Pmとの和と、前記冷却固化室の圧力Pcとの差圧を3kPa以上で100kPa未満の範囲内として、溶湯を前記ノズルから前記冷却ロールへ供給する請求項4に記載の金属薄帯の製造方法。
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