JP4494000B2 - 医薬用カプセル - Google Patents

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Description

本発明は、医薬品用途、食品用途、化粧品用途、工業用途等として有用なセルロース成形体を用いた医薬用カプセルおよびその製造方法に関する。特に、ガスバリア性と水崩壊性をあわせもつセルロースカプセルに関する。
セルロースから成る成形体に関しては、特許文献1(特公昭46−24783号公報)に、湿った結晶セルロースを圧縮脱水し、乾燥すれば、非常に硬い成形体できることが開示されている。しかし、薄いフイルム状にすると、もろく割れやすく、かつ水崩壊性を示さない。特許文献2(特表2003−523934号公報)に水崩壊性を示す成形体として、結晶セルロース、カラギーナン、強化ポリマーを含む可食性コーティング組成物が開示されている。しかし、発明者らの追試の結果、ガスバリア性はない。また、特許文献3(特公平7−121200号公報)に、ミクロフィブリル化セルロースとポリヒドロキシ化合物を固結剤として含有する可食性フイルムが開示されている。ミクロフィブリル化セルロースは、粗大な繊維状物が残存しているため、食する際、口中でのざらつきなど不良な食感がある。また、ガスバリア性はない。また、特許文献4(特公平7−61239号公報)には、アルカリ金属水酸化物水溶液から再生されたセルロースIIの結晶形をもつセルロースとポリペプチド及び食用多糖類の中から選ばれた少なくとも1種のゲスト成分とを含む構造体からなる可食体であって、その構造体中でセルロースII又はセルロースIIと食用多糖類の均質体が海成分または連続体として少なくとも10%以上存在することを特徴とする可食体が開示されている。また、特許文献5(特開昭63−240752号公報)にアルカリ金属水酸化物水溶液から再生されたセルロースIIの結晶形をもつセルロースとポリペプチド及び食用多糖類の中から選ばれた少なくとも1種のゲスト成分とを含む構造体からなる可食体であって、その構造体中でセルロースII又はセルロースIIと食用多糖類の均質体が海成分または連続体として少なくとも10%以上存在することを特徴とする水可溶性フイルムが開示されている。水崩壊性可食体として有用であるが、カプセルや崩壊性フイルムに必要な崩壊性を得るためには、食用多糖類の配合比率を50%以上とする必要があるため、強度、ガスバリア性が不十分となる。
以上から、強度および水崩壊性、ガスバリア性を兼ね備えたセルロース成形体が望まれていた。
特公昭46−24783号公報 特表2003−523934号公報 特公平7−121200号公報 特公平7−61239号公報 特開昭63−240752号公報
強度および水崩壊性、ガスバリア性を兼ね備えた医薬用カプセルおよびその製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意研究の結果、セルロースをアルカリ金属水酸化物水溶液等溶媒に溶解した後、酸または水で凝固再生し、その後、スラリー状態で再生セルロースを粉砕して特定の粒度とし、親水性物質を添加して乾燥することにより、強度および水崩壊性、ガスバリア性を兼ね備えた可食性のセルロース成形体となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.セルロースII型分率が0.4以下、セルロースI型分率が0.1以下の結晶的性質を有し、かつ水分散液中の平均粒径が5μmを超え20μm以下で、かつ水保持力が1000%以上のセルロースを、親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体とともに水性分散液とした後、乾燥させてなる医薬用カプセル、
2.親水性の天然酸多糖類がカラギーナンであり、親水性のセルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の医薬用カプセル、
3.セルロースの水分散液中の平均粒径が5μmを超え15μm以下であることを特徴とする1.又は2.記載の医薬用カプセル。
4.セルロースが60重量%以上99重量%以下で、親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体が1重量%以上40重量%以下であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の医薬用カプセル。
5.セルロースの水保持力が2000%以上であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の医薬用カプセル。
6.セルロースII型分率が0.4以下、セルロースI型分率が0.1以下の結晶的性質を有し、かつ水分散液中の平均粒径が5μmを超え20μm以下で、かつ水保持力が1000%以上のセルロースを溶媒に溶解し、水および/または酸で凝固再生させ、水洗し、ついで得られたセルロースを水分散状態で粉砕し、さらに水存在下で親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体を混合し、半円状に成形し、乾燥することを特徴とする医薬用カプセルの製造方法。
強度および水崩壊性、ガスバリア性を兼ね備えたセルロース成形体を提供できる。
以下、本発明について、その好ましい形態を中心に、詳しく説明する。
本発明では、セルロースの結晶的性質は、広角X線回折法により、セルロースI型およびII型分率を、下記手順で算出する。
セルロースI型結晶成分の分率(Χ )は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、理学電機製Rint−2500(商品名)型X線回折測定装置で得られるX線回折図において、2θ=15.0゜における絶対ピーク強度h と、ベースライン(接線)からのピーク強度h から、下記(1)式によって求められる値を用いる。同様に、セルロースII型結晶成分の分率(Χ II )は、2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h と、スペクトルのベースライン(接線)からのピーク強度h から、下記(2)式によって求められる値を用いる。
Χ =h /h (1)
Χ II =h /h (2)
図1に、Χ II を求める模式図を示す。Χ も同様に求めることができる。
本発明において、セルロースの平均粒径は、以下のとおり求める。
セルロース水分散体を、株式会社堀場製作所製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置L
A910型で、相対屈折率1.20、超音波分散処理1分実施後、測定し、メジアン径と
して算出される数値で平均粒径とする。
本発明でいう水保持力は以下の方法で求める。
セルロースの0.5重量%の水懸濁液を作成、TKホモジナーザー(商品名)0000
rpm5分間分散処理後、久保田製作所製遠心分離機6930型、ローターRA400(商品名)を用い、3600rpm(1600g)で10分間遠心沈降を実施、上澄みを捨て、沈降層を秤量瓶に移して重量W1を測定する。ついで105℃4時間乾燥して乾燥減量W2を測定する。水保持力は(3)式で算出する。
水保持力(%)={(W1−W2)/W2}×100 (3)
本発明で使用されるセルロースは、結晶化度が低いため、粒子に柔軟性があり、水および/または親水性物質存在下での粒子のからみあいが容易となり、乾燥するにしたがい、緻密で均一な成形体となる。特に、フィルム形成性に優れる。結晶セルロースやミクロフィブリル化セルロースなどは、結晶化度であるセルロースI型分率が0.6以上で結晶化度が高く、粒子が比較的剛直なため、フィルム形成性に難がある。
本発明で使用されるセルロースは、平均粒径が20μm以下である。20μmを越すと、成形体が不均一になり、フィルムにしたとき、強度が不足し、ガスバリア性がない。好ましくは、5μmを超え15μm以下である。
本発明で使用されるセルロースは、水分散状態で、数10μmの大きな凝集体をなし、凝集体には、数10μm長さの繊維状物に、10〜0.1μm以下の棒状微粒子が集まり、絡まっている。図2(500倍)、図3(2000倍)、図4(10000倍)に走査型電子顕微鏡写真を示す。このようなセルロースの水性分散液から水を除去し乾燥することにより、柔軟性がある繊維状および棒状粒子同士がからみあい、均一な構造を形成するため、強度があり、かつガスバリア性を有する成形体となる。
本発明で使用されるセルロースの水保持力はきわめて高く、1000%以上である。理由は明確でないが、低結晶性であること、1μm以下の微粒子が相当量含有していることから、親水性が大きいためと推定される。結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製アビセル<登録商標>PH−101)が260%、特開平4−348144号公報実施例記載のセルロースが670〜900%と比較しても、高いことが特徴である。
また、本発明の成形体は、セルロースと親水性物質からなる。親水性物質との複合化により、セルロース成形体に適度な水崩壊性を賦与できる。本発明のセルロース100%の懸濁液を乾燥させて生成させた成形体の場合、セルロース粒子同士の結合力が強いため、水崩壊性がない。親水性物質とともに乾燥させることによって、はじめて水崩壊性が得られる。
本発明の成形体とは、通常の環境下で固体であり、粒子状(球状、不定形状、円板
状、棒状)、フイルム状、棒状、容器状などの形態をもつものをいう。
本発明で使用される親水性物質とは、水との親和性が高く、溶解性、膨潤性、吸湿性を有する物質のことであり、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グルコース、マルトース、フラクトース、トレハロース、水溶性デキストリン、セルロースオリゴマー等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、クインスシードガム、カラヤガム、アラビアガム、トラガントガム、ガティガム、アラビノガラクタン、寒天、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム等の天然産多糖類、アルギン酸およびその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等の水溶性合成高分子類、カルボキシチルセルロースおよびそのナトリウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートサクシネート等のセルロース誘導体類、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシメチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルなどの非イオン性界面活性剤、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類のことである。
これらの親水性物質を一種または二種以上組み合わせて選択することにより、種々の水崩壊性を賦与することができる。セルロースと親水性物質の配合比率に制限はないが、成形体の組成としてセルロース60〜99重量%、親水性物質1〜40重量%が好ましい範囲である。特に好ましくは、カラギーナンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を5〜30重量%、セルロース70〜95重量%を含む成形体である。カラギーナンを選ぶと、純水、酸性水(日本薬局方一液)で崩壊する成形体となる。つまり、胃溶解性のカプセルやコーティング剤として応用することができる。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を選ぶと、純水および日本薬局方二液で崩壊する成形体となる。つまり、腸溶性カプセル素材やコーティング剤として応用することができる。
次に、セルロース成形体の製造方法を説明する。
本発明で使用されるセルロースは、あらかじめ溶媒に溶解し、酸または水中で凝固再生
させることにより製造できる。溶解前の原料セルロースとして、例えば、木材パルプ、リ
ンター、綿、麦わら、麻、再生セルロース、結晶セルロースなどが挙げられる。これらの
原料そのままでは、溶媒への溶解性が低い場合がある。必要に応じ、溶解性を高めるため
、爆砕、加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解等の前処理を行う。溶媒としては、例え
ば、硫酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、液化アンモニア、銅アンモ
ニア、N−methylmorpholine−N−oxide、DMSO、二硫化炭素
などが挙げられる。医薬用途、食品用途等経口用途に使用するためには、金属水酸化物水
溶液または硫酸が好ましい。特に好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液である。水酸化ナ
トリウム水溶液にセルロースを溶解するには、たとえば繊維学会誌52巻6号310〜3
17ページ記載の方法で行うことができる。セルロースを2〜6重量%の水酸化ナトリウ
ム水溶液中で−3℃で攪拌し、ついで、−10℃に冷却した所定濃度の水酸化ナトリウム
水溶液を加え、最終の水酸化ナトリウム濃度を6〜9%、セルロース濃度4重量%以上の
セルロース水溶液とする。この水溶液を、酸性水溶液中に攪拌しながら添加してゆき、凝
固再生させる。酸性水溶液としては、例えば、硫酸、酢酸、塩酸、リン酸の1種又は2種以上の混合物、または、これらの酸の塩が含まれていてもよい。好ましくは、リン酸またはその塩である。凝固再生したセルロースは、そのままでは、イオン類を多量に含有するため、水洗浄をする。水洗浄装置としては既知のものでよいが、例えば、遠心式洗浄機、フィルター式洗浄機が挙げられる。得られるセルロースの平均粒径は、約100μm程度である。また、水分散状態で光学顕微鏡で観察すると、最大で約1mmの繊維状物が存在する。このままで乾燥させ成形体にすると、凸凹があり、不均一で、ガスバリア性がない。
このため、粉砕操作で粒子を小さくする。水懸濁状態の再生セルロースを、高圧ホモジナイザーにて、5〜500MPaの圧力で粉砕処理することにより、平均粒径20μm以下とする。必要に応じ、複数回処理してもよい。高圧ホモジナイザーとして、例えば、圧力式ホモジナイザー(インベンシスシステムス株式会社、株式会社イズミフードマシナリー)、エマルジフレックス(AVESTIN,Inc.)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.)などが挙げられる。
粉砕後のセルロース懸濁液は、既存のベルト真空ろ過機、加圧型ろ過機、ヌッチェ、遠心分離機、セントル等で脱水し、ケーク状物として取得する。このケーク状物に、水溶性物質を添加し、任意の形に成形し乾燥することにより、本発明のセルロース成形体を得る。乾燥方法としては、既存の熱風棚段乾燥機、ドラム乾燥機、スプレー乾燥機などが使用できる。ガラス板または金属板、樹脂板等にキャストし乾燥すればフイルム、先端が半円状になったピンに付着させ、乾燥させればカプセル形となる。
ところで、特公平7−61239記載の可食体は、セルロースをアルカリ水溶液に溶解し、そこに親水性物質を加えてドープとし、酸または水で再生させて可食体としたものである。したがって粒子状態は存在せず、生成した成形体は海島構造の連続体である。このため、水崩壊性がないかあるいは劣る。本発明において、セルロース成形体は、水分散状態で特定の結晶化度、保水性、粒径のセルロース粒子と親水性物質を共存させて乾燥することによって成る成形体である。
本発明では、特定のセルロース粒子を選択することよりはじめて、成形体の強度と水崩壊性を両立できることを見出し、発明を完成させたものであり、先の特公平7−61239記載の可食体とは本質的に異なるものである。
セルロース成形体は、種々の用途に使用できる。すなわち、医薬用途では、例えばカプセルに使用できる。従来、医薬用カプセルとして、ゼラチンが用いられてきたが、動物性であることで、反応性のある薬物には使用できないこと、ガスバリア性が低く酸素に弱い薬剤には使えないこと、動物性素材の使用を忌避される傾向から、植物性素材のカプセル素材が望まれていた。本発明のセルロースカプセルでは、ガスバリア性のある非動物性カプセルとして、きわめて有用である。また親水性物質を適宜選択することにより、体内での溶解特性、カプセルの物性を自在に創出できるため、既存のカプセル(ゼラチン、HPMC)にはない特徴を有し、きわめて有用である。また、常温固体で存在する物質のガスバリア、水崩壊性コーティング剤として使用できる。例えば食品、食品素材、酵素、微生物、医薬品、種子、農薬、肥料、香料、顔料等を挙げることができる。食品、食品素材では、例えば、澱粉質食品、錠剤型食品、洋菓子類 (キャンディ、あめ類、チョコレート、チュウインガム 等)、和菓子類(せんべい等)、焼菓子類(カステラ、 クッキー、クラッカー等)、グミ製剤、油菓子(ポテト 等チップス類、スナック類)、各種ソース・しょうゆ・ みそ・マヨネーズ・ドレッシング類を粉末・固形化したもの、各種飲料(果汁飲料、ネクター飲料、清涼飲料、 スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココア、スープ類、アルコール飲料類等)を粉末・固形化したもの、各種エキス粉末(ビーフ・ポーク・チキン等畜産、エビ・ホタテ・ シジミ・昆布等水産、野菜・果樹類、植物、酵母等)、 油脂類・香料類(バニラ、かんきつ類、かつお、きのこ等)を粉末・固形化したもの、粉末スパイス・ハーブ類(唐辛子、コショウ、サンショ、ユズ、バジル等)、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ・味噌汁等)、各種乳製品類(チーズ等)、各種栄養・栄養補助食品素材類 (ビタミンA・B群・C・D・E等ビタミン類、ビフィ ズス菌・乳酸菌・酪酸菌等有用菌類、クロレラ、Ca・ Mgミネラル類、プロポリス、DHA等)、ふりかけ、フレーク類、トッピング類(クルトン等)、豆類加工食品(豆腐 ・おから等)を固形化したもの、生鮮食品・調理加工 (カレー、シチュー類)食品を固形化したもの・冷凍食品(具材・ころも類)、各種加工食品を挙げることができる。化粧品では、香料、薬剤、洗顔料等の包材やコーティング剤として使用できる。工業用途では、例えば農薬、肥料等の包材として、使用できる。特に、酸素に弱い薬剤、有効成分を含む農薬、肥料の包材とすると、使用時に開封することなく使用できるため、きわめて有用である。また、内包成分と本発明のセルロース/水溶性物質懸濁液をあらかじめ混合し、そのまま乾燥して、各種形態のブロック体、フイルム、顆粒、粉体とすることができるため、応用範囲はきわめて広い。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。測定は以下のとおり行った。
<フィルム厚み>
マイクロメータで測定した。
<引っ張り強度>
試作したフィルムを、10mm×35mmの大きさに切り出し、専用のクランプにはさみ山電株式会社製レオメーター(RE−33005(商品名)型)にて、引っ張り速度0.1mm/secで引っ張り試験を実施し、サンプルが破断したときのロードセル指示値Y1(kg)を読み取った。このときのフイルム厚みをマイクロメーターで測定し、Y2(μm)とした。張り強度は(4)式で算出した。
引っ張り強度(MPa)=(0.0981×Y1)/(Y2/10000) (4)
<水崩壊性>
試作したフィルムを約2cm角に切り取り、常温の30ccの純水を入れた100mlの三角フラスコに入れ、振り混ぜながら崩壊する様子を観察した。
<酸素透過率>
フィルムを、酸素透過率測定装置(商品名MOCON:Modern Control社製)のOX−TRAN(商品名)を用い、試験面積5cm、温度20℃、湿度50%RHの条件下で測定した。
<走査型電子顕微鏡観察>
0.003%のセルロース水分散液をTKホモジナイザー(商品名)で10000rpmで5分間分散操作し後、サンプル台に滴下し、風乾した。Pt−Pdを約1.5nm蒸着後、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−5510LV(商品名)型で測定した。フィルムサンプルの場合、サンプル片をサンプル台に固定し、Pt−Pdを約1.5nm蒸着後、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−5510LVで測定した。
[実施例1]
市販の結晶セルロース12.5gを300mlステンレスビーカーに入れ、これに5℃に冷却した5%の水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーとした。これを−3℃まで冷却後、TKホモジナーザー(商品名)で12000rpm、2分間攪拌した。再び−3℃まで冷却後、−10℃に冷却した18%水酸化ナトリウム水溶液を加え、さらにTKホモジナイザーにて12000rpmで1分間攪拌し、透明のセルロース溶液を得た。このセルロース溶液を、20%のリン酸二水素ナトリウム水溶液500ml中に少しずつ攪拌しながら加えて中和し、凝固させて再生セルローススラリーを得た。このセルローススラリーを、遠心分離機で固液分離し、上澄みの液を捨てた。この操作を10回繰り返し、含有する無機物を洗浄除去した。再び、遠心分離機にかけ、沈降物をセルロース含水ケークA1として取得した。取得した含水ケークA1の固形分は6重量%であった。この含水ケークA1を40℃のパーフェクトオーブンで乾燥し、セルロース乾燥物を得た。このセルロース乾燥固形物の結晶化度を前掲の方法で測定したところ、セルロースI型分率は0、セルロースII型分率は0.3であった。
取得した含水ケークA1に再び水を加え、固形分濃度2%の懸濁スラリーとした。この懸濁スラリーを、マイクロフルイダイザーで、操作圧力100MPaで粉砕操作した。粉砕操作後の平均粒径は、12μmであった。遠心分離をかけ、沈降物を含水ケークA2として取得した。含水ケークA2の水保持力を測定したところ、3000%であった。含水ケークA2に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(第一工業製薬製セロゲンHP−8A(商品名))との重量比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分4%のペースト状の液とした。このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フイルム状成形物を得た。このフイルム状成形体の物性を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の方法でセルロース含水ケークA1を得た。取得した含水ケークA1に再び水を加え、固形分濃度2%の懸濁スラリーとした。この懸濁スラリーを、マイクロフルイダイザーを操作圧力100MPaで粉砕操作した。粉砕操作後の平均粒径は、12μmであった。遠心分離をかけ、沈降物を含水ケークA3として取得した。含水ケークA3に、セルロース固形分とκカラギーナン(中央フーズマテリアル製X−4115S(商品名))との重量比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分濃度4%のペースト状の液とした。このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フイルム状成形物を得た。このフイルム状成形体の物性を表1に示す。
[実施例3]
実施例1と同様の方法でセルロース含水ケークA1を得た。取得した含水ケークA1に再び水を加え、固形分濃度2%の懸濁スラリーとした。この懸濁スラリーを、マイクロフルイダイザーを操作圧力40MPaで粉砕操作した。粉砕操作後の平均粒径は、18μmであった。遠心分離をかけ、沈降物を含水ケークA4として取得した。含水ケークA4に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分濃度4%のペースト状の液とした。このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フイルム状成形物を得た。このフイルム状成形体の物性を表1に示す。
参考例1
市販結晶セルロースを−5℃で65%硫酸水溶液にセルロース濃度が5%となるよう1
50rpmの攪拌条件下で10分溶解してセルロースドープを得た。このセルロースドー
プを重量で2.5倍量の水中(5℃)に攪拌しながら注ぎ、セルロースをフロック状に凝
集させ、懸濁液を得た。ついで洗液のpHが4以上になるまで十分に水洗と減圧脱水を繰
り返し、セルロース濃度約6%の白色かつ透明性を帯びたゲル状物を得た。このゲル状物
を家庭用フードプロセッサー(ナイフカッター)で3分間混合、均一化処理した含水ケー
クA6を得た。取得したセルロースの結晶化度はセルロースI分率0、セルロースII分
率0.28、平均粒径は2.8μmであった。
含水ケークA6に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分濃度3%のペースト状の液とした。このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フィルム状成形物を得た。このフィルム状成形体の物性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同様の方法でセルロース含水ケークA1を得た。取得した含水ケークA1に再び水を加え、固形分濃度2%の懸濁スラリーとした。この懸濁スラリーを、マイクロフルイダイザー20MPaで粉砕操作した。粉砕操作後の平均粒径は、32μmであった。遠心分離をかけ、沈降物を含水ケークA5として取得した。含水ケークA5に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分4%のペースト状の液とした。
このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フィルム状成形物を得た。このフィルム状成形体の物性を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様の方法でセルロース含水ケークA1を得た。
取得した含水ケークA1の平均粒径は、100μmであった。含水ケークA1に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水して固形分4%のペースト状の液とした。このペーストをガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フイルム状成形物を得た。このフイルム状成形体の物性を表1に示す。
[比較例3]
結晶セルロース製剤(旭化成ケミカルズ株式会社製アビセル<登録商標>RC−591、結晶セルロース89%、CMCNa11%の複合製剤)6gおよび水294gを500mlステンレスビーカーに入れ、エースホモジナーザーで15000rpm、3分間攪拌、分散した。この分散液をガラス板上に1mm厚みとなるようキャストし、40℃で2時間通風乾燥させて、フイルム状成形物を得た。このフイルム状成形体の物性を表1に示す。アビセル<登録商標>RC−591を構成するセルロースの結晶化度を前掲の方法で測定したところ、セルロースI型分率は0.65、セルロースII型分率は0であった。また、水保持力は260%であった。
[比較例4]
市販の結晶セルロース5gを300mlステンレスビーカーに入れ、これに5℃に冷却した5%の水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーとした。これを−3℃まで冷却後、TKホモジナーザーで12000rpm、2分間攪拌した。再び−3℃まで冷却後、−10℃に冷却した18%水酸化ナトリウム水溶液を加え、さらにTKホモジナイザーにて12000rpmで1分間攪拌し、透明のセルロース溶液を得た。ここに、κカラギーナンを7.5gを加え、さらに攪拌して、粘調なアルカリドープを得た。このアルカリドープをガラス板に1mm厚にキャストした後、そのまま20%のリン酸二水素ナトリウム水溶液中に5分間浸漬した。さらに、数回水中に浸漬し水洗した。得られた湿フイルムを40℃
で2時間温風乾燥した。このフイルムの物性を表1に示す。
[実施例5]
実施例1と同様の方法で、含水ケークA2を取得した。含水ケークA2に、セルロース固形分とκカラギーナンとの比率で8/2となるよう添加し、加水して粘度を3000mPa・sとなるようにした。このペーストに先が半球状の8mmの径のテフロン(登録商標)製棒を浸し、取り出してさかさまにし、室温で12時間乾燥させた。その後、とりはずしカプセル形を得た。同様に、8mm径のテフロン製棒を使用して、カプセル形を得た。2種類のカプセル形の長さを調整して組み合わせ、空カプセルを得た。空カプセルに薬剤(アセトアミノフェン6.7%、コーンスタ−チ93.3%混合粉体)270mgを充填し、日本薬局方回転バスケット法にて、フロイント社DT610(商品名)型溶出試験機で溶出試験を実施した。試験液は、日本薬局方一液、バスケット回転数100rpmで実施した。試験10分で80%、20分で100%溶出した。
[比較例5]
比較例1と同様の方法で、含水ケークを取得した。含水ケークに、セルロース固形分とκカラギーナンとの比率で8/2となるよう添加し、加水して粘度を3000mPa・sとなるようにした。このペーストに先が半球状の8mmの径のテフロン製棒を浸し、取り出してさかさまにし、室温で12時間乾燥させた。裂けが発生し、カプセル形が出来なかった。
[実施例6]
実施例1と同様の方法で、含水ケークA2を取得した。含水ケークA2に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水して粘度を3000mPa・sとなるようにした。このペーストに先が半球状の8mmの径のテフロン(商品名)製棒を浸し、取り出してさかさまにし、室温で12時間乾燥させた。その後、とりはずし、カプセル形を得た。同様に、7mm径のテフロン製棒を使用して、カプセル形を得た。2種類のカプセル形の長さを調整して組み合わせ、空カプセルを得た。空カプセルに薬剤(アセトアミノフェン6.7%、コーンスタ−チ93.3%混合粉体)270mgを充填し、日本薬局方回転バスケット法、フロイント社DT610型溶出試験機で、バスケット回転数100rpmで溶出試験を実施した。試験液は、日本薬局方一液で60分実施して、溶出なしを確認後、試験液を日本薬局方二液に取り替えて試験を継続、二液取り替え20分後、100%溶出した。腸溶性カプセルとして有用である。
[実施例7]
実施例1と同様の方法で、含水ケークA2を取得した。含水ケークA2に、セルロース固形分とκカラギーナンとの比率で8/2となるよう添加し、加水してペースト状物を得た。このペーストに、マツタケ粉末香料を適当量加え、ガラス板に1mm厚みにキャストし、40℃2時間温風乾燥した。生成したフイルムを手でもんで砕き、板状顆粒を得た。板状顆粒は、マツタケの香りがしなかった。この顆粒を10日保存後、湯に投入すると、すみやかに崩壊し、マツタケの香りを再現した。
[実施例8]
実施例1と同様の方法で、含水ケークA2を取得した。含水ケークA2に、セルロース固形分とカルボキシメチルセルロースナトリウム塩との比率で8/2となるよう添加し、加水してペースト状物を得た。このペーストに、粉末ラーメンスープを適当量加え、ガラス板に1mm厚みにキャストし、40℃、2時間温風乾燥した。生成したフィルムを手でもんで砕き、板状顆粒を得た。この顆粒を、インスタントカップ麺にいれて湯を注ぐと、すみやかに崩壊した。
強度および水崩壊性、ガスバリア性を兼ね備えたセルロース成形体として医薬用カプセル素材、コーティング剤、食品用コーティング剤等に好適に利用できる。
セルロース乾燥サンプルの広角X線結晶回折パターンからセルロースII型分率を求める方法を示すグラフ。 本発明で用いられるセルロースの走査型電子顕微鏡写真(500倍)。 本発明で用いられるセルロースの走査型電子顕微鏡写真(2000倍)。 セルロースの走査型電子顕微鏡写真(10000倍)。

Claims (6)

  1. セルロースII型分率が0.4以下、セルロースI型分率が0.1以下の結晶的性質を有し、かつ水分散液中の平均粒径が5μmを超え20μm以下で、かつ水保持力が1000%以上のセルロースを、親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体とともに水性分散液とした後、乾燥させてなる医薬用カプセル。
  2. 親水性の天然産多糖類がカラギーナンであり、親水性のセルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースナトリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の医薬用カプセル。
  3. セルロースの水分散液中の平均粒径が5μmを超え15μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の医薬用カプセル。
  4. セルロースが60重量%以上99重量%以下で、親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体が1重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医薬用カプセル。
  5. セルロースの水保持力が2000%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医薬用カプセル。
  6. セルロースII型分率が0.4以下、セルロースI型分率が0.1以下の結晶的性質を有し、かつ水分散液中の平均粒径が5μmを超え20μm以下で、かつ水保持力が1000%以上のセルロースを、親水性の天然産多糖類又は親水性のセルロース誘導体とともに水性分散液とした後、半円状に成形し、乾燥することを特徴とする医薬用カプセルの製造方法。
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