JP4493995B2 - 導電性ペースト、導電機能部材、印刷回路部材 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性ペースト、並びにそれを用いた導電機能部材及び印刷回路部材に関する。
導電性ペーストは、金属粉末等の導電性材料と樹脂バインダとの混合物であり、前記導電性ペーストを、樹脂フィルムや基板等の基材に塗布後、加熱等を行い硬化させることによって、基材に導電性を付与させることができる。
このため、RF−ID(Radio Frequency-Identification:電波方式認識)用のアンテナコイル,プリント回路基板の回路,液晶ディスプレイの電極,キーボードのメンブレン回路等の印刷回路基板を形成する際に利用されている。
また、印刷回路基板以外にも、電子部品の端子やリード線の接着や、積層セラミックコンデンサの内部導体膜(層間接続導電層)の形成等にも利用されている。
従来より、導電性ペーストとしては、金属粉末を主成分とし、この金属粉末が樹脂ビヒクル(樹脂バインダ)中に分散されたものが用いられている(特許文献1,2御参照。)。
このような導電性ペーストが用いられた印刷回路基板や電子部品を廃棄する際、導電性ペーストを構成する金属粉末と、樹脂ビヒクルなどの有機成分とを分離することが困難であるため、資源のリサイクルがほとんどなされることなく埋め立てや焼却により廃棄されている。
特に、従来の導電性ペーストは、金属粉末を主成分としており、この導電性ペーストを用いた印刷回路基板や電子部品を焼却しても金属成分は残留してしまうため、環境負荷は多大なものとなってしまう。
特開平1−159906号公報 特開平9−306240号公報
本発明の目的は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわち金属粉末の含有量が低く、環境負荷が低減される導電性ペースト、並びにそれを用いた導電機能部材及び印刷回路基板を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る導電性ペーストは、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとから少なくとも構成されてなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴としている。
これにより、十分な導電性を得るために必要となる導電性粉末の含有量を従来に比べて低減できる。また、導電性ペースト中の導電性高分子ゲルは、樹脂バインダと同じ高分子化合物(有機化合物)であり、なじみ易く相容性に優れる。
かかる導電性ペーストの構成において、前記導電性共役系高分子は、ドーパントがドーピングされており、該ドーパントはポリスチレンスルホン酸であることを特徴としている。
これにより、導電性高分子ゲルのキャリヤの濃度を高めることができ、導電性を向上させることができる。
本発明に係る導電機能部材は、基材と、該基材の少なくとも一面に設けられた導電性ペーストからなる導電部とを少なくとも備え、前記導電性ペーストは、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとからなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴としている。
本発明に係る印刷回路部材は、基材と、該基材の少なくとも一面に設けられた導電性ペーストからなる導電部とを少なくとも備え、前記導電部は、線状の形態をなしており、前記導電性ペーストは、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとからなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴としている。
これにより、前記した導電機能部材と印刷回路部材では、十分な導電性を得るために必要となる導電性粉末の含有量を従来に比べて低減できる。
かかる印刷回路部材の構成において、線状の形態のアンテナをなし、該アンテナにICチップが接続されていることを特徴としている。
これにより、非接触型ICメディアとして使用できる。
本発明に係る導電性ペーストによれば、従来に比べて金属成分(導電性粉末)を低減できるため、導電性ペーストを用いた印刷回路基板や電子部品を廃棄した際、環境負荷を低減できる。
また、本発明に係る導電機能部材と印刷回路部材によれば、配線が本発明の導電性ペーストから構成されたことによって、従来に比べて金属成分(導電性粉末)の含有量が少なく、印刷回路基板を廃棄した際、環境負荷を低減できる。
[導電性ペースト]
図1は、本発明の導電性ペースト1の一例を示す模式図である。この導電性ペースト1は、導電性高分子ゲル2と、導電性粉末3と、樹脂バインダ4とを少なくとも含有している。前記した導電性高分子ゲル2と導電性粉末3とが導電性ペースト1中の導電性材料である。
前記導電性高分子ゲル2は、水21を主成分とし、導電性共役系高分子22、界面活性剤23及び/又はアルコールを含んでなる。
導電性高分子ゲル2は、導電性共役系高分子22自体が、界面活性剤23及び/又はアルコールによってゲル化して形成されたものであり、例えば特願2003−19120にて提案されたものなどが適用できる。
図2は、導電性共役系高分子22の分子構造の一例を示す模式図である。この導電性共役系高分子22は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、PEDOT/PSSとも言う。)であり、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTとも言う。)に、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(以下、PSSとも言う。)がドープされたものである。
図3(A)は、PEDOT/PSSのコロイド水分散液を模式的に示す説明図であり、図3(B)は、図3(A)に示したPEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23を添加してゲル化して得られた本発明の導電性高分子ゲル2の一例を模式的に示す説明図である。
図3(A)に示したように、PEDOT/PSSのコロイド水分散液は、水21中にPEDOT/PSS分子が分散している。このPEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23を添加してゲル化条件に置くことにより図3(B)に示したように、界面活性剤23を介して3次元的なネットワークが形成され、その中に水21を包含して容易にゲル化し、本発明の導電性高分子ゲル2が得られる。
このようにPEDOT/PSSのコロイド水分散液に、界面活性剤23(および/またはアルコール)を添加してゲル化条件に置くことによりゲル化するのは、物理的あるいは化学的に3次元的なネットワークが形成されることによるものと考えられ、また、得られたゲルが導電性を示すのは電子伝導性および/またはイオン伝導性によるものと考えられる。勿論これらの考え方に限定されるものではない。
前記導電性共役系高分子22としては、例えばポリアセチレン,ポリフェニレン,ポリピロール,ポリチオフェン,ポリフラン,ポリセレノフェン,ポリイソチアナフテン,ポリフェニレンスルフィド,ポリアニリン,ポリフェニレンビニレン,ポリチオフェンビニレン,ポリペリナフタレン,ポリアントラセン,ポリナフタリン,ポリピレン,ポリアズレン、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1つが挙げられるが、中でも、安定性や信頼性が高く、入手も容易であることから、ポリピロール又は図2に示したポリチオフェンが好適に用いられる。
前記導電性共役系高分子22は、ドーパントでドーピングされていることが好ましく、これにより導電性高分子ゲル2のキャリヤの濃度が高くなり、導電性を向上させることができる。
前記ドーパントとしては、例えばヨウ素,フッ化砒素,塩化鉄,過塩素酸,スルホン酸,パーフルオロスルホン酸,ポリスチレンスルホン酸,硫酸,塩酸,硝酸、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1つが挙げられるが、中でも、高い導電性を容易に調整できることから、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
前記導電性共役系高分子22のコロイド分散液としては、具体的には、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェンをトルエンスルホン酸鉄(III)などの触媒の存在下で重合して得られるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)コロイド水分散液(以下、PEDOT/PSSと称す)(商品名:BaytronP、導電性ポリマー(PEDOT/PSS)の濃度約1.3質量%、バイエル社製)を挙げることができる。
前記界面活性剤23としては、特に限定されるものではなく、公知のカチオン性界面活性剤,アニオン性界面活性剤,両性界面活性剤,非イオン性界面活性剤あるいはこれらの2種以上の混合物から選択された少なくとも1つの界面活性剤を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば第4級アルキルアンモニウム塩,ハロゲン化アルキルピリジニウムなどを挙げることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸またはそのエステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩,アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩,アルキルナフタレンスルホン酸またはその塩,アルキルスルホコハク酸またはその塩,アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸またはその塩,脂肪酸またはその塩,ナフタレンスルホン酸またはそのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン,アミンオキサイド,加水分解コラ−ゲンなどを挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレン,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンルビトール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン硬化ひまし油,ポリオキシエチレンアルキルアミン,アルキルアルカノールアミド、あるいはこれらの誘導体などを挙げることができる。
これらの界面活性剤23の中でも、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸がゲル化効率が向上するため特に好ましく使用できる。
本発明で用いる界面活性剤23の導電性高分子ゲル中の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、導電性高分子1質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
0.1質量部未満ではゲル化しない恐れがあり、30質量部を超えるとやはりゲル化しない恐れがあり好ましくない。
前記アルコールとしては、特に限定されるものではなく、公知の1価アルコールおよび多価アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物から選択された少なくとも1つのアルコールを用いることができる。
1価アルコールとしては、例えば、エタノール,イソプロピルアルコール,ブタノールなどの分枝状あるいは直鎖状アルコール,環状アルコール,ポリマー状アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール,プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン,エリスリトール,キシリトール,ソルビト−ルなどの鎖状多価アルコール、グルコース,スクロールなどの環状多価アルコール、ポリエチレングリコール,ポリビニルアルコールなどのポリマー状多価アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
これらのアルコールの中でも、イソプロピルアルコール,エチレングリコール,ポリエチレングリコールが好ましく使用できるが、中でも多価アルコールであるエチレングリコールやポリエチレングリコールは次の理由から好適である。エチレングリコールは低濃度でもゲル化させる効果があり、また、揮発性がないため特に好ましく使用できる。また、ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されないが、分子量400のものより分子量1000のものの方が添加量が少なくてもゲル化するので好ましい。
本発明で用いるアルコールの導電性高分子ゲル2中の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、導電性高分子1質量部に対して1〜70質量部が好ましく、さらに好ましくは10〜50質量部である。1質量部未満ではゲル化しない恐れがあり、70質量部を超えると薄くなり過ぎてやはりゲル化しない恐れがあり好ましくない。
本発明において界面活性剤23とアルコールは、単独で使用することができるが、両者を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
本発明において界面活性剤23とアルコールを併用する場合の両者の比率は特に限定されるものではない。
導電性共役系高分子22を、界面活性剤23および/またはアルコールによってゲル化する方法としては、以下の方法が適用できる。
まず、導電性共役系高分子22を、水21中にコロイド状に分散させたコロイド分散液および/または導電性共役系高分子溶液に、添加物として前記した界面活性剤23および/またはアルコールを気泡などが発生しないように注ぎ入れて添加する。
次いで、通常の大気圧雰囲気にある開放空間あるいは密閉空間内に、所定時間振動が加わらない状態で放置(以下、静置と称する)する。
以上により、3次元的なネットワークが形成されて容易にゲル化し、導電性ペースト1の構成成分となる導電性高分子ゲル2が安定して得られる。
ここで、前記導電性共役系高分子溶液は、前記導電性共役系高分子22を例えば水あるいは有機溶剤などに溶解したものである。本発明において導電性共役系高分子コロイド分散液や導電性共役系高分子溶液は、単独で使用することができるが、両者を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
また、導電性ペースト1の構成成分である導電性粉末3としては、導電性カーボンや金属粉末等が挙げられる。
前記導電性カーボンとしては、ファーネス法やチャンネル法により製造されたカーボンブラックやアセチレンカーボンブラック等が適用でき、導電グレードとして市販されているものが好ましく使用できる。
前記金属粉末としては、銀粉末が好ましく、優れた導電性が得られる。
なお、導電性や半田食われ性を調整するために、銀に、金,白金,パラジウム,ロジウム等を添加し合金粉末として用いても構わない。
前記導電性粉末3には、予め表面処理を施しておき、導電性粉末3の分散性を向上させておくことが好ましい。これにより導電性粉末3は樹脂バインダ4中に均一に分散され、導電率等の特性のムラをなくすことができる。導電性粉末3の表面処理剤としては、通常の界面活性剤やカップリング剤等が適用できる。
また、導電性ペースト1の構成成分である樹脂バインダ4としては、例えば、フェノール樹脂,メラミン樹脂,ユリア樹脂,キシレン樹脂,アルキッド樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,ポリイミド樹脂,フラン樹脂,ウレタン樹脂,ポリイソシアネート樹脂等の架橋性樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル,ABS樹脂,ポリメタクリル酸メチル,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルアルコール,ポリアセタール,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリフェニレンオキサイド,ポリスルフォン,ポリイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリアリレート,ポリエーテルケトン,ポリ4フッ化エチレン,シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらから選択された1種又は2種以上が使用できる。
なお、前記架橋性樹脂を用いる場合、公知の硬化剤や硬化触媒を適宜使用しても構わない。
通常、導電性ペースト1には、溶剤が添加されて粘度等が調整され、通常の印刷技術によって、樹脂フィルムや基板等の基材に塗布できるようになっている。
前記溶剤としては、公知のものが使用できるが、特に導電性ペースト1を加熱することによって硬化させた際、溶剤が残留せずほぼ完全に気化するように、沸点が250℃以下のものが好ましく使用できる。
例えば、トルエン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,n−ヘキンサン,ペンタン等の炭化水素系溶媒、イソプロピルアルコール,ブチルアルコール等のアルコール類、シクロヘキサノン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,ジエチルケトン,イソホロン等のケトン類、酢酸エチル,酢酸プロピル,酢酸ブチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート等のグリコールモノエーテル類とそれらのアセテート化物から選択された1種又は2種以上の混合物等が挙げられる。
前記樹脂バインダ4として、熱硬化性の架橋性樹脂や熱可塑性樹脂が含有されている場合、導電性ペースト1を基材に塗布後、加熱することによって硬化させることができる。前記加熱方法としては、ヒータを用いた加熱手段だけでなく、これに赤外線や高周波を加える手段を併用して使用することも可能である。
また、樹脂バインダ4として、光硬化性の架橋性樹脂が含有されている場合、導電性ペースト1を基材に塗布後、マイクロ波,赤外線,可視光,紫外光,真空紫外線,X線,電子線等の電磁波を照射することによって硬化させることができる。
以上のようにして導電性ペースト1を硬化させることができ、配線等を形成することができる。
前述した導電性ペースト1は、公知の攪拌機等を用いて、導電性高分子ゲル2,導電性粉末3,樹脂バインダ4等の構成成分を混合することによって製造される。
例えば、まず、ホモジナイザ等の攪拌機を用いて導電性ペースト1の構成成分を撹拌、混合し、次いで得られた混合物を、3本ロール又はニーダ等の混練機を用いて混合し、構成成分を更に均質に分散させて導電性ペースト1とする方法等が挙げられる。
なお、構成成分を均質に分散させるために、超音波や高周波などを加えながら混合したり、攪拌機や混練機内に圧力を印加しこの印加圧力を変化させながら混合しても構わない。
本発明の導電性ペースト1によると、導電性材料として、金属粉末等の導電性粉末3と共に導電性高分子ゲル2が含有されたことによって、十分な導電性を得るために必要となる導電性粉末3の含有量を従来に比べて低減できる。このように従来に比べて金属成分(導電性粉末3)を低減できるため、導電性ペースト1を用いた印刷回路基板や電子部品を廃棄した際、環境負荷を低減できる。
導電性ペースト1中の導電性高分子ゲル2の含有量(G)と導電性粉末3の含有量(P)との和(G+P)に対する導電性高分子ゲル2の含有量(G)と導電性粉末3中の炭素成分(C)の含有量との和(G+C)の比((G+C)/(G+P))は、0.07以上が好ましく、更に好ましくは0.13以上、0.24以下であり、最も好ましくは0.5以上である。
前記比(G+C)/(G+P)は、導電性材料のうち、金属成分以外の炭素等の有機化合物成分の含有比率を表しており、この比率を0.07以上とすることによって、環境負荷を低減できる。
また、樹脂バインダ4の含有量(B)に対する導電性高分子ゲル2の含有量(G)と導電性粉末3の含有量(P)との和(P+G)の比((G+P)/B)が、3/7以上、9/1以下であることが好ましく、更に好ましくは4以上、6以下である。
前記比(G+P)/Bは、樹脂バインダ4に対する導電性材料の比を表しており、この比(G+P)/Bが3/7以上の場合、導電性ペースト1に要求される導電性が得られ、この導電性ペースト1を用いて十分な導電性を有する配線、電極等が形成でき、また電子部品の端子やリード線の接着等も行うことができる。
また、前記比(G+P)/Bが9/1以下の場合、十分な結着性が得られ、この導電性ペースト1を用いて剥れにくい配線、電極等が形成できる。
また、一般に導電性粉末3は、金属粉末等の無機化合物から構成されており、樹脂バインダ4(有機化合物)との相容性に劣る。このため、従来のように導電性ペースト1中の導電性粉末3の含有量が多く、樹脂バインダ4の含有量が少ない場合、導電性粉末3と樹脂バインダ4とがなじみにくく相分離等が生じ、導電性ペースト1の基材に対する結着性や可撓性が大幅に低下する問題があった。このため、導電性ペースト1を基材に塗布、硬化して配線を形成した場合、配線が基材から剥がれたり、また十分な可撓性が得られず、基材を折り曲げた際、基材の屈曲部にて配線が折れて断線する場合があった。
これに対して、本発明によると、導電性高分子ゲル2は、樹脂バインダ4と同様に、高分子であるため、その分子が導電性粉末3の表面に絡まり、導電性粉末3を保持することになる。また、前記したように導電性高分子ゲル2は、導電性材料として機能するため、導電性高分子ゲル2の分、導電性粉末3の含有量を低減できる。
以上により、従来に比べて導電性粉末3と樹脂バインダ4との相分離等を抑え、導電性ペースト1の基材に対する結着性や可撓性を向上させることができる。このため、導電性ペースト1を用いて形成された配線は、基材との結着性に優れ剥がれにくく、かつ可撓性に優れ基材が曲げられた際に基材の屈曲部にて断線しにくい。
更に、従来に比べて金属成分(導電性粉末3)の含有量が少なく、印刷回路基板を廃棄した際、環境負荷を低減できる。
また、導電性高分子ゲル2は、樹脂バインダ4と同じ高分子化合物(有機化合物)であり、なじみ易く相容性に優れ、容易に導電性高分子ゲル2と樹脂バインダ4とを均質に混合でき、導電性ペースト1を容易に製造できる。
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、使用用途によっては、導電性ペースト1には、導電性粉末3が含有されておらず、導電性高分子ゲル2と樹脂バインダ4とから構成されていても構わない。導電性ペースト1中の導電性材料が導電性高分子ゲル2のみであっても、導電性が得られるため、前記導電性ペースト1を基材等に塗布後、加熱等を行うことにより硬化させることによってパターン配線等を形成することができる。
また、導電性ペースト1には、シリカ,アルミナ,マイカ,炭素粉末等の充填剤、顔料,染料等の着色剤、重合禁止剤,酸化防止剤,増粘剤,チキソトロピー剤,沈殿防止剤,分散剤等の補助剤等が含有されていても構わない。
前記充填剤,着色剤,補助剤等の含有量は、導電性高分子ゲル2と導電性粉末3と樹脂バインダ4との総和に対して35質量%以下とすることが好ましく、これにより前述した本発明の作用効果を損うことがない。
[導電機能部材、印刷回路部材]
次に、本発明の導電機能部材と導電性回路部材5について説明する。
本発明の導電機能部材は、PET(polyethylene terephthalate)等の樹脂フィルムや紙等からなるシート状の基材と、この基材の少なくとも一面に設けられた導電性ペーストからなる導電部とを少なくとも備えたものである。
前記導電部は、前述した本発明の導電性ペースト1が基材に塗布、硬化されて形成されたものである。導電性ペースト1は、前述した通りであるため詳細の説明を省略する。
前記導電部の形成方法としては、例えばスクリーン印刷等の公知の印刷技術によって、本発明の導電性ペースト1を基材上に所定のパターン形状に塗布し、加熱や光等の電磁波照射などにより硬化させる方法等が適用できる。
なお、基材は、シート状のものに限定されず、導電性ペースト1を表面に塗布、硬化可能な部材であれば特に限定されず適用できる。
前述したように、導電性ペースト1は、公知の印刷技術によって、基材に塗布、硬化させることができ、微細な導電部であっても精度良く形成できる。
このため、導電部としては、形状等に限定されず、導電性ペースト1が、線状,面状等の形状で基材の少なくとも一面に塗布、硬化されたもの等が挙げられる。
ここで、前記線状とは、波線状等のパターン形状,直線,曲線,コイル状,三角形や四角形等の多角形状,円形状,楕円形状等やこれらを組み合わせた形状,文字,記号等のように1本又は複数本の直線や曲線からなる形状を言う。
線状の導電部を複数、ピッチ(間隔)無く形成することによって、面状の導電部とすることができる。
前記面状の導電部としては、その一面が三角形や四角形等の多角形状,円形状,楕円形状等やこれらを組み合わせた形状,記号等の形状をした導電部等が挙げられる。
また、導電部としては、基材表面に形成されたものに限定されず、例えば基材に設けられた孔部,窪み部,溝部等の内面に導電性ペースト1が塗布、硬化されて形成されたものでも構わない。
このため線状の導電部を1つ又は複数組み合わせることによって、一次元,二次元,三次元形状の導電部とすることができる。例えば、一次元形状の導電部は、配線等として利用でき、また二次元形状の導電部は、パターン配線,電極,電磁コイル,アンテナ等として利用できる。更に、三次元形状の導電部は、貫通電極等として利用することができる。
このような導電部は、その厚さ,幅,長さ,形状等を適宜決定することによって、そのインピーダンス特性や導電性等を調整でき、導電機能部材としては、前記導電部の導電性を利用した各種用途に適用可能である。
このため、導電機能部材は、例えば、配線基板として利用でき、基材上に発光素子、ICチップ等の種々の電子部品等を実装することによって、様々な電子機器に応用できる。また、ICタグ,ICラベル等としても利用できる。
前述した本発明の導電性ペースト1は、導電性高分子ゲル2を含有し、この導電性高分子ゲル2は、樹脂バインダ4と同じ高分子化合物(有機化合物)であり、なじみ易く相容性に優れ、導電性高分子ゲル2と樹脂バインダ4とが均質に混合された導電性ペースト1として得られる。
このように構成成分が均質の混合された導電性ペースト1は、その粘度がほぼ一定であり、基材に導電性ペースト1を塗布する際、均一の厚さ、線幅のパターン配線を精度良くかつ容易に形成することができる。このため、インピーダンス特性等の電気特性にばらつきの少ない導電部を有する導電機能部材が実現できる。
また、導電性ペースト1が硬化されて形成された導電部は、基材との結着性に優れ剥がれにくく、かつ可撓性に優れ基材が曲げられた際に基材の屈曲部にて断線しにくい。
本発明の印刷回路部材は、前記導電機能部材の一例であり、シート状の基材に設けられた導電部が線状の形態をなしているものである。
前記線状の導電部は、例えば、パターン配線,電極,貫通電極,電磁コイル,アンテナ等として利用することができる。このため、印刷回路部材は、配線基板やICタグ,ICラベル等として利用できる。
前述したように、本発明の導電性ペースト1を硬化させて形成された導電部は、可撓性に優れるため、キーボードのメンブレン回路等のように、基材がPET等の可撓性の樹脂シートから構成され、基材を折り曲げて使用する印刷回路基板であっても、基材の屈曲部にて配線は断線しにくく、好ましく使用できる。
図4は、印刷回路部材の一例としての非接触型ICメディアを示す平面図である。
この非接触型ICメディア(以下、導電性回路部材と同じ符号5を付す。)は、PET(polyethylene terephthalate)等の樹脂フィルムや紙等からなる基材6と、この基材6に設けられたRF−IDモジュール7(RF−ID:Radio Frequency-Identification(電波方式認識))とを少なくとも備えたものである。
前記RF−IDモジュール7は、基材6上に平面コイル状に1回又は複数回巻回されたパターン配線(線状の導電部)からなるアンテナコイル71と、このアンテナコイル71に接続されたICチップ72とから構成されている。
前記アンテナコイル71となるパターン配線(導電部)は、前述した本発明の導電性ペースト1が基材6に塗布、硬化されて形成されたものである。
前記アンテナコイル71の形成方法としては、例えばスクリーン印刷等の公知の印刷技術によって、本発明の導電性ペースト1を基材6上にアンテナコイル71となるパターン形状に塗布し、加熱や光等の電磁波照射などにより硬化させる方法等が適用できる。
アンテナコイル71によって無線通信を行うことが可能であり、外部よりデータを受信し、この受信したデータをICチップ72に保存したり、またICチップ72に保存されたデータを外部のリーダライタなどの受信装置に送信することができる。
なお、アンテナコイル71としては、図4に示された平面コイル状等の二次元形状の線状の導電部からなるものに限定されず、基材6に貫通孔が設けられ、この貫通孔内面と基材6の両面とに形成された螺旋状等の三次元形状の線状の導電部からなるもの等であっても構わない。
また、アンテナコイル71のようにコイル状のアンテナに限定されず、所定の周波数の電波の送受信が可能な形状の線状の導電部からなるアンテナであれば適用できる。例えば、直線状等の一次元形状や三角形状等の多角形状等の二次元形状等の線状の導電部からなるバイポーラアンテナや、線状の導電部が複数、ピッチ(間隔)無く形成された面状の導電部からなるアンテナ等であっても構わない。
このような非接触型ICメディア5としては、例えばカード,ラベル,葉書,封筒等のシート状の基材6にRF−IDモジュール7が備えられた非接触型ICタグ5や、ICラベル、段ボール等の基材6の少なくとも一面にRF−IDモジュール7が備えられたもの等が挙げられる。
以下に、本発明に係る具体例を示すが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
(実施例1乃至実施例4)
まず、導電性高分子ゲル2を以下に示す方法で作製した。
導電性共役系高分子22のコロイド分散液であるPEDOT/PSS[商品名:Baytron P、導電性ポリマー(PEDOT/PSS)の濃度約1.3質量%コロイド水分散液、バイエル社製]100質量部に、界面活性剤23としてドデシルベンゼンスルホン酸(Dodecylbenzene sulfonic acid:(C1225SOH):以下、DBSとも称す。)を1質量部混合し、約10分間攪拌した後に、密閉して静置温度50℃にて1日静置することによって導電性高分子ゲル2を作製した。
次に、表1に示された含有量(質量部)で、前記導電性高分子ゲル2,導電性粉末3としての銀粉,樹脂バインダ4,溶剤を混合して、導電性ペースト1を製造した。
ここで、表1では、導電性高分子ゲル2,導電性粉末3の銀粉,樹脂バインダ4,溶剤の和が100質量部となるように示している。
また、前記導電性粉末3の銀粉として、銀粉(商品名:シルベストE−20(徳力本店社製))と、銀粉(商品名:シルベストE−20(徳力本店社製))とを質量比で8:2の割合で混合されたものを用いた。
更に、前記樹脂バインダ4として、ポリエステル(商品名:バイロン500(東洋紡績社製))を用いた。
Figure 0004493995
スクリーン印刷法によって、前記導電性ペースト1を、基材6のPETフィルム(商品名:ルミラーS、東レ社製)に、平面コイル状に塗布した。
導電性ペースト1が塗布されたPETフィルムを、内部温度が150℃の熱風炉に静置し、150℃で30分加熱して導電性ペースト1を硬化させてアンテナコイル71を形成した。
次に、NCP(Non Conductive Resin Paste:無導電粒子ペースト)工法によって、ICチップ72(商品名:Mifare、フィリップス社製)を、その金メッキバンプが前記アンテナコイル71の両末端に電気的に接続されるように、基材6に実装した。
以上により、図4に示されたように、導電性ペースト1が硬化されて形成されたアンテナコイル71と、このアンテナコイル71に接続されたICチップ72とから構成されたRF−IDモジュール7を具備する非接触型ICメディア5が製造された。
(比較例)
導電性高分子ゲルを含有せず、表1に示された含有率の銀粉、樹脂バインダ、溶剤を含有する導電性ペーストを用いる以外は、実施例と同様にして非接触型ICメディアを製造した。
各非接触型ICメディア5のアンテナコイル71の電気抵抗を測定した。
また、ICチップ72が実装されていない状態の非接触型ICメディア5、すなわち基材6と、この基材6上に導電性ペースト1が塗布、硬化されて形成されたアンテナコイル71とから構成されたものを焼成し、その焼成後の金属残渣を定量した。得られた電気抵抗と金属残渣の結果を表2に示した。
Figure 0004493995
導電性高分子ゲル2の含有量が多くなるほど、電気抵抗が大きくなるが、実施例のように比(G+P)/Bが、4以上、6以下の場合、電気抵抗は11Ω/□以下であり、配線として十分な導電性が得られ、アンテナコイル71として使用できる。
また、導電性高分子ゲル2の含有量を多くすることによって、銀粉末の含有量を低減でき、環境負荷を抑制できる。特に、比((G+C)/(G+P))が0.07以上の場合、焼成後の金属残渣が68%以下となり、比較例に比べて環境負荷を抑制できる。
更に、比((G+C)/(G+P))が0.13以上の場合、焼成後の金属残渣が60%以下となり、比較例に比べて大幅に環境負荷を抑制できる。
各非接触型ICメディア5について、リーダライタ(フィリップス社製)を用いて、データの送受信を行った。全ての非接触型ICメディア5では、ICチップ72へのデータの送受信が行えることが確認された。
本発明の導電性ペーストは、基材に塗布して硬化させることによって基材に導電性を付与させることができ、例えば、RF−ID用のアンテナコイル,プリント回路基板の回路,液晶ディスプレイの電極,キーボードのメンブレン回路等の印刷回路基板を形成する際に利用できる。また、印刷回路基板以外にも、電子部品の端子やリード線の接着や、積層セラミックコンデンサの内部導体膜(層間接続導電層)の形成等にも利用できる。
本発明の導電性ペーストの一例を示す模式図である。 導電性共役系高分子の分子構造の一例を示す模式図である。 (A)は、PEDOT/PSSのコロイド水分散液を模式的に示す説明図であり、(B)は、本発明の導電性高分子ゲルの一例を模式的に示す説明図である。 本発明の印刷回路部材の一例を示す平面図である。
符号の説明
1‥‥導電性ペースト、2‥‥導電性高分子ゲル、3‥‥導電性粉末、4‥‥樹脂バインダ、5‥‥印刷回路部材(非接触型ICメディア)、6‥‥基材、21‥‥水、22‥‥導電性共役系高分子、23‥‥界面活性剤、71‥‥アンテナコイル、72‥‥ICチップ。

Claims (5)

  1. 水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとから少なくとも構成されてなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記導電性共役系高分子は、ドーパントがドーピングされており、該ドーパントはポリスチレンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 基材と、該基材の少なくとも一面に設けられた導電性ペーストからなる導電部とを少なくとも備え、
    前記導電性ペーストは、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとからなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴とする導電機能部材。
  4. 基材と、該基材の少なくとも一面に設けられた導電性ペーストからなる導電部とを少なくとも備え、
    前記導電部は、線状の形態をなしており、
    前記導電性ペーストは、水を主成分とし、導電性共役系高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含んでなる導電性高分子ゲルと、導電性粉末と、樹脂バインダとからなり、前記導電性共役系高分子はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)であることを特徴とする印刷回路部材。
  5. 前記線状の導電部は、線状の形態のアンテナをなし、該アンテナにICチップが接続されていることを特徴とする請求項4に記載の印刷回路部材。
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