以下、本発明の第1実施形態を図1乃至11を参照して説明する。図1(A)に、本実施形態の手術用顕微鏡2の概略構成を示す。この手術用顕微鏡2は、術部を観察するための鏡体4を有する。この鏡体4は、鏡体4を所望の位置に移動保持可能に支持する支持部(支持手段)6の先端部に配設されている。この支持部6は、鏡体4を上下方向に移動させる先端側の懸架アーム8と、鏡体を前後方向に移動させるようになっている基端側の水平動アーム10とを有する。懸架アーム8と水平動アーム10との動きを組み合わせることにより、鏡体4を所望の位置に移動させるようになっている。
懸架アーム8は、鉛直方向に延び互いに平行な第1、第2及び第3のリンク12,14,16と、水平方向に延び互いに平行な第4及び第5のリンク18,20とを有する。鏡体4は、連結部材22を介して第1のリンク12に接続されている。第1のリンク12の中心軸は、鏡体4の中心軸と同一である。連結部材22は、鏡体4が第1のリンク12に対して自身の中心軸(以下、第1の回転軸O1と称する)を中心として軸回り方向に回転自在となるように第1のリンク12に回転自在に接続されている。
第1のリンク12の上端部には、第4のリンク18の一端部が第1の枢支軸A1を介して枢支され、第1のリンク12の中央部には、第5のリンク20の一端部が第2の枢支軸A2を介して枢支されている。また、第4のリンク18の他端部は、第2のリンク14の上端部に第3の枢支軸A3を介して枢支されている。第5のリンク20は、第2のリンク14の中央部を横切って延びており、この交差部で、第5のリンク20は第2のリンク14に第4の枢支軸A4を介して枢支されている。第5のリンク20の他端部は、第3のリンク16の上端部に第5の枢支軸A5を介して枢支されている。
懸架アーム8の第2及び第3のリンク14,16の下端部は、第6のリンク24の一端側に第6及び第7の枢支軸A6,A7を介して枢支されている。この第6のリンク24は水平方向に延びており、その中心軸と第1の回転軸O1との交点が、鏡体4、連結部材22及び第1のリンク12の重心と略一致するように位置されている。また、第6のリンク24は、第2及び第3のリンク14,16の下端部が枢支されている一側方の第1の部分と他側方の第2の部分とを有する。第1の部分は、第2の部分に対して自身の中心軸(以下、第2の回転軸O2と称する)を中心として軸回り方向に回転自在である。
水平動アーム10は、互いに接続されている第6乃至9のリンク24,26,28,30を有する。なお、第6のリンク24は、懸架アーム8を形成すると共に水平動アーム10を形成する。ここで、第6のリンク24と第7のリンク26とは互いに平行に水平方向に延びており、また、第8のリンク28と第9のリンク30とは互いに平行に鉛直方向に延びている。さらに、第10のリンク32が、第9のリンク30を下方に延長するように延びている。
第6のリンク24の第2の部分の鏡体4側の端部に、第8のリンク28の上端部が第8の枢支軸(以下、第3の回転軸O3と称する)を介して枢支されている。第8のリンクの下端部は、水平動アーム10を支持する支柱34及び第7のリンク26の一端部に、第9の枢支軸(以下、第4の回転軸O4と称する)を介して枢支されている。また、第6のリンク24の第2の部分の他端部に、第9のリンク30の上端部が第10の枢支軸A10を介して枢支されている。第9のリンク30の下端部は、第7のリンク26の他端部及び第10のリンク32の上端部に第11の枢支軸A11を介して枢支されている。
支柱34には、後述する第1及び第2の制限機構(制限手段)52,54の第1及び第2のツマミ部36,38が配設されている。また、支柱34には、突出部39が形成されている。さらに、支柱34は、鉛直方向に延びる自身の中心軸(以下、第5の回転軸O5と称する)を中心として軸回り方向に回転可能にベース部40に接続されている。
このベース部40の下部には、手術用顕微鏡2の全体を床等上で移動するためのキャスタ42a,42b,…が配設されている。また、このベース部40には、ベース部40を床等に対して固定する図示しない固定手段が配設されている。
図1(B)に、水平動アーム10の下部及び支柱34の内部構成を示す。第8のリンク28の下部と支柱34との間には、鏡体4及び支持部6(図1(A)参照)の自重による第4の回転軸O4回りの回転モーメントを相殺するための第1のガススプリング44が配設されている。この第1のガススプリング44は第8のリンク28の長手方向に配設されている。第1のガススプリング44の上端部は、第8のリンク28に第12の枢支軸A12を介して枢支されており、下端部は、支柱34に第13の枢支軸A13を介して枢支されている。
第10のリンク32の下端部は、三角リンク46の第1の角部に第14の枢支軸A14を介して枢支されている。この三角リンク46の第2の角部は、第4の回転軸O4の鉛直下方に配置され、支柱34に第15の枢支軸A15を介して枢支されている。
三角リンク46の第3の角部には、鏡体4及び支持部6(図1(A)参照)の自重による第3の回転軸O3(図1(A)参照)回りの回転モーメントを相殺するための第2のガススプリング48の一端部が第16の枢支軸A16を介して枢支されている。この第2のガススプリング48は、突出部39内に配設されている。この第2のガススプリング48の他端部は、支柱34に第17の枢支軸A17を介して枢支されている。
第8のリンク28と支柱34との間に、第1の制限機構52が配設されている。この第1の制限機構52は、支柱34に対する第8のリンク28の可動範囲を制限することで、水平動アーム10の第4の回転軸O4回りの回動範囲を制限し、鏡体4(図1(A)参照)の移動範囲を制限するためのものである。また、第10のリンク32と支柱34との間に、第2の制限機構54が配設されている。この第2の制限機構54は、支柱34に対する第10のリンク32の可動範囲を制限することで、懸架アーム8の第3の回転軸O3回りの回動範囲を制限し、鏡体4(図1(A)参照)の移動範囲を制限するためのものである。
図2(A)に示されるように、第1の制限機構52は、第8のリンク28の下端部に形成されているガイド溝56を有する。このガイド溝56は、第4の回転軸O4の周方向に延設されている。このガイド溝56の鏡体4(図1(A)参照)に近い側には長溝状の可動溝部58が配設され、反対側にはほぼ円形の固定溝部60が配設され、可動溝部58と固定溝部60との間には瓢箪状にくびれている制限溝部62が配設されている。可動溝部58の幅及び固定溝部60の直径は、第1のツマミ部36の後述する軸部66の太径部68の直径よりも僅かに大きく、制限溝部62の最小幅は太径部68の直径よりも僅かに小さい。
図2(B)に示されるように、支柱34の外壁には台座64が配設されている。この台座64には、第1のツマミ部36が装着されている。この第1のツマミ部36は、支柱34の外壁に垂直な自身の中心軸を中心として軸回り方向に回転自在、かつ、軸方向に突没可能である。また、第1のツマミ部36の中心部には、中心軸方向に軸部66が配設されている。この軸部66は、第1のツマミ部36にねじによって固定されている。軸部66は、台座64及び支柱34に形成されている貫通孔に挿通されている。
軸部66の末端部には太径部68が配設されている。この太径部68と台座64のフランジ部との間に弾性部材、例えばばね70が配設されている。このばね70によって、第1のツマミ部36が台座64に対して軸方向内向きに付勢されている。第1のツマミ部36にはストッパピン72が配設されている。軸部66は台座64及び支柱34の貫通孔を介して支柱34の内部へと突出し、太径部68は可動溝部58に嵌入されている。
ここで、可動溝部58の深さと制限溝部62の深さとはほぼ等しく、固定溝部60の深さは、これらの深さよりも深くなっている。
図2(C)に示されるように、台座64にはロック穴74が形成されている。このロック穴74は、軸部66の軸方向に延びる縦溝部と、この縦溝部の基端部から軸部の周方向に延びる横溝部とから形成されている。これら縦溝部及び横溝部の幅は、前記ストッパピン72の径よりも僅かに大きくなっている。
第2の制限機構54は、第1の制限機構52とほぼ同様な構成となっている。即ち、図2(D)に示されるように、第2の制限機構54は、第10のリンク32の下部に形成され、第10のリンク32の長手方向に緩やかにカーブして延びているガイド溝76を有する。このガイド溝76には、上側に長溝状の可動溝部78が配設され、下部にはほぼ円形の固定溝部80が配設され、可動溝部78と固定溝部80との間に制限溝部82が配設されている。可動溝部78の幅及び固定溝部80の直径は、第2のツマミ部38の後述する軸部88の太径部90の直径よりも僅かに大きい。また、制限溝部82の形状はくびれておらず、可動溝部78の幅及び固定溝部80の直径とほぼ同じ幅を有する。
図2(E)に示されるように、可動溝部78の深さと固定溝部80の深さとはほぼ等しく、制限溝部82の深さはこれらの深さよりも浅くなっている。また、第2の制限機構54は、第1の制限機構52と同様な第2のツマミ部38及び台座84を有する。さらに、第2のツマミ部38は軸部88を有し、軸部88は太径部90を有する。
次に、上記構成の本実施形態の手術用顕微鏡2の作用について説明する。手術用顕微鏡2を使用して術部の観察を行う際には、まず、ベース部40を床等上で移動して手術用顕微鏡2を適切な位置に配置し、固定手段によりベース部40を床等上に固定する。この後、以下に述べるように、鏡体4を手動により観察に適した所望の位置に移動させる。
図3(A)に示されるように、鏡体4を前方に移動させる場合には、鏡体4を前方に引く。この結果、懸架アーム8を介して、水平動アーム10は、第4の回転軸O4を中心にして図において時計回りに回動される。水平動アーム10は、平行四辺形リンクを構成しているため、第6のリンク24は水平状態を保ったまま前方へと移動される。なお、第8及び第9のリンク28,30は平行に保たれている。
ここで、鏡体4を前方の所望の位置に移動した後、鏡体4から手を離すと、第1のガススプリング44の作用により第4の回転軸O4回りの回転モーメントが相殺されるため、鏡体4はその位置で静止される。
鏡体4の前方への移動中、図3(B)及び(C)の矢印A,A’に示されるように、第1のツマミ部36の軸部66の太径部68は、第8のリンク28のガイド溝56の可動溝部58内で固定溝部60とは逆の方向に相対的に移動される。そして、太径部68が可動溝部58の端部壁に当接されると、第8のリンク28の第4の回転軸O4を中心とする回動が制限される。このようにして、鏡体4の前方への移動が制限される。この状態が、鏡体4の使用時の前方への使用時移動限界である。
図4(A)に示されるように、鏡体4を後方に移動させる場合には、上記した鏡体4の前方への移動と逆の作用が生じる。図4(B)及び(C)に示されるように、太径部68が制限溝部62のくびれ形状に当接されると、第8のリンク28の第4の回転軸O4を中心とする回動が制限される。この状態が、鏡体4の使用時の後方への使用時移動限界である。
ここで、第8のリンク28の支柱34に対する使用時可動範囲は、太径部68が可動溝部58の端部壁に当接された状態と制限溝部62のくびれ形状に当接された状態とによって規定される。また、鏡体4の前方への使用時移動限界と後方への使用時移動限界とによって、鏡体4の前後方向への使用時移動範囲が規定される。
図7(A)に示すように、鏡体4を上方に移動させる場合には、鏡体4を真上へと押し進める。この結果、懸架アーム8は、第3の回転軸O3を中心として図において反時計回りに回動される。なお、懸架アーム8は平行四辺形リンクを構成しているため、第1、第2及び第3のリンク12,14,16は、鉛直状態に保たれたまま上方へと移動される。そして、懸架アーム8の第6のリンク24は、平行四辺形リンクを構成する水平動アーム10の第9のリンク30と連結されている第10のリンク32を駆動して下方へと移動させる。そして、第10のリンク32は、第14の枢支軸A14を介して三角リンク46の第1の角部を駆動して、第15の枢支軸A15を中心として下方へと回動させる。
ここで、鏡体4を上方の所望の位置に移動した後、鏡体4から手を離すと、第2のガススプリング48の作用により第3の回転軸回りの回転モーメントが相殺されるため、鏡体はその位置で静止される。
鏡体4の上方への移動中、図7(B)及び(C)で矢印B,B’で示されるように、第2のツマミ部38の軸部88の太径部90は、第10のリンク32のガイド溝76の可動溝部78内で固定溝部80とは逆の方向に相対的に移動される。太径部90が可動溝部78の上方端部壁に当接されると、第9及び第10のリンク30,32の下方への移動が制限され、第6のリンク24の回動が制限される。このようにして、鏡体4の上方への移動が制限される。この状態が、鏡体4の使用時の上方への使用時移動限界である。
図8(A)に示されるように、鏡体4を下方に移動させる場合には、上記した鏡体4の上方への移動と逆の作用が生じる。図8(B)及び(C)に示されるように、太径部90が可動溝部78の下方端部壁に当接されると、第9及び第10のリンク30,32の上方への移動が制限され、第6のリンク24の回動が制限される。この状態が、鏡体4の使用時の下方への使用時移動限界である。
ここで、第10のリンク32の支柱34に対する使用時可動範囲は、太径部90が可動溝部78の上方端部壁に当接された状態と下方端部壁に当接された状態とによって規定される。また、鏡体4の上方への使用時移動限界と下方への使用時移動限界とによって、鏡体4の上下方向への使用時移動範囲が規定される。
上述した説明では、説明を簡単にするために鏡体4の前後方向の移動と上下方向の移動とを分けて説明したが、これらの移動は組み合わされ得る。鏡体4の上下方向への使用時移動範囲と前後方向への使用時移動範囲とを組み合わせることにより、鏡体4の使用時移動範囲が規定される。
上記した鏡体4の前後方向及び上下方向の移動に加えて、さらに、連結部材22が第1のリンク12に対して第1の回転軸O1を中心として周方向に回転され、第6のリンク24の第1の部分が第2の部分に対して第2の回転軸O2を中心として軸回り方向に回転され、支柱34がベース部40に対して第5の回転軸O5を中心として軸回り方向に回転されることにより、鏡体4が所望の位置に移動される。そして、所望の位置に保持された鏡体4によって術部の観察を行う。
手術用顕微鏡2を使用した後、手術用顕微鏡2を収納する際には以下に述べる収納操作を行う。以下では説明を簡単にするために、鏡体を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体を下方へ移動することによる収納操作とを分けて説明する。
鏡体4を後方へ移動させることによる収納操作では、鏡体4を図4(A)、(B)及び(C)に示されるような後方への使用時移動限界とする。そして、第1のツマミ部36を軸方向外向きに移動させて、軸部66の太径部68を制限溝部62から引き抜く。この状態で、鏡体4を後方へ移動させて第8のリンク28の上端部を第4の回転軸O4を中心として後方へと回動させて、図5(A)及び(B)に示されるように、太径部68をガイド溝56に沿って可動溝部58から固定溝部60へと制限溝部62を越えて相対的に移動させる。
さらに図6(A)に示されるように鏡体4を後方に移動させて第8のリンク28の上端部を第4の回転軸O4を中心として後方へと回動させて、図6(B)に示されるように、太径部68を固定溝部60にアラインメントする。この後、第1のツマミ部36を台座64に対して軸回り方向に回転させてストッパピン72をロック穴74の縦溝にアラインメントし、第1のツマミ部36を台座64に対して軸方向内向きに没入してストッパピン72を縦溝内で軸方向内向きに摺動させる。この際、図6(C)に示されるように、太径部68は固定溝部60内へと嵌入される。そして、第1のツマミ部36を台座64に対して軸回り方向に回転させてストッパピン72を横溝内で周方向に摺動させて、図6(D)で示されるように、第1のツマミ部36を台座64にロックする。このようにして、支柱34と第8のリンク28とがロックされる。この状態が、鏡体4の収納時の後方への収納時移動限界である。
ここで、第8のリンク28の支柱34に対する収納時可動範囲は、太径部68が制限溝部62のくびれ形状に当接された状態と固定溝部60内へと嵌入された状態とによって規定される。また、鏡体4の後方への使用時移動限界と収納時移動限界とによって、鏡体4の前後方向への収納時移動範囲が規定される。
鏡体4を下方へ移動することによる収納操作では、支持部6を図8(A)、(B)及び(C)に示されるような下方への使用時移動限界とする。そして、第2のツマミ部38を台座84に対して軸方向外向きに移動させて、軸部88の太径部90を可動溝部78の端部壁に当接されないように軸方向外向きに引き抜く。この状態で、鏡体4を下方へと移動させて第9及び第10のリンク30,32を上方へと移動させ、図9(A)及び(B)に示されるように、太径部90を可動溝部78から固定溝部80へと制限溝部82を通して相対的に移動させる。
さらに図10(A)に示されるように鏡体4を下方へと移動させて第9及び第10のリンク30,32を上方へと移動させ、図10(B)に示されるように、太径部90をガイド溝76の端部壁に当接させて固定溝部80にアラインメントする。この後、第1の制限機構52の場合と同様に、図10(C)で示されるように、太径部90を固定溝部80に嵌入し、第2のツマミ部38を台座84にロックして、支柱34と第10のリンク32とをロックする。この状態が、鏡体4の収納時の下方への収納時移動限界である。
ここで、第10のリンク32の支柱34に対する収納時可動範囲は、太径部90が可動溝部78の下方端部に当接された状態と固定溝部80内へと嵌入された状態とによって規定される。また、鏡体4の下方への使用時移動限界と収納時移動限界とによって、鏡体4の上下方向への収納時移動範囲が規定される。
実際の収納操作では、上記した鏡体4を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体4を下方へ移動することによる収納操作とを組み合わせる。鏡体4の上下方向への収納時移動範囲と前後方向への収納時移動範囲とを組み合わせることにより、鏡体4の収納時移動範囲が規定される。
鏡体4を収納時移動範囲内で移動させて、支持部6を図11に示されるような収納状態に移行させる。この収納状態では、支持部6の複数のリンクがコンパクトに折畳まれ、鏡体4はベース部40の上方で充分に低い位置に配置され、支持部6の高さは適切な高さとなっている。また、第8及び第10のリンク28,32が支柱34に対して固定されることにより、支持部6が収納状態で保持されている。即ち、第1及び第2の制限機構52,54は、支持部6を収納状態で保持するための固定機構を兼ねている。
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。鏡体を使用する際には、第1及び第2の制限機構52、54によって、第8のリンク28と支柱34との、及び、第10のリンク32と支柱34との相対的な可動範囲を使用時可動範囲に制限し、鏡体4を使用時移動範囲で移動保持している。また、鏡体4を収納する際には、第1及び第2の制限機構52、54によって、第8のリンク28と支柱34との、及び、第10のリンク32と支柱34との相対的な可動範囲を使用時可動範囲とは異なった収納時可動範囲に制限し、鏡体4を使用時可動範囲とは一部異なった収納時可動範囲で移動させて、支持部6をコンパクトに折畳まれた収納状態へと移行させている。
即ち、支持部6をコンパクトに折畳むための専用の接続部が設けられておらず、支持部6の大型化又は重量の増大による支持部6の操作性の低下が防止されている、従って、鏡体4を使用する際には、支持部6により鏡体4を容易かつ精密に移動させることが可能であり、かつ、鏡体4を収納する際には、支持部6をコンパクトに折畳むことが可能となっている。
なお、ガイド溝56,76の形状は、鏡体4の使用時に太径部68,90が移動される可動溝部58,78と、鏡体4の収納時に太径部68,90が移動される固定溝部60,80とが、制限溝部62,82によって分離されていればどのような形状であってもよい。また、可動溝部58,78の形状は、鏡体4の使用時に太径部68,90の移動を妨げないものであればどのようなものであってもよい。これは、以下の実施形態においても同様である。
図12乃至18は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と同様な構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。図12に、本実施形態の手術用顕微鏡92の概略構成を示す。この手術用顕微鏡92の支持部93は、第1実施形態と同様な鏡体4、懸架アーム8及び第6のリンク24を有する。この第6のリンク24の第2の部分の鏡体4側の端部には、第7のリンク94の上端部が第8の枢支軸A8を介して接続されている。第6のリンク24の第2の部分の他端部には、支持部材96の先端部が第9の枢支軸(以下、第3の回転軸O3と称する)を介して枢支されている。ここで、第1の回転軸O1と第3の回転軸O3とに垂直に延びる軸を第1の軸L1と称する。また、第1の回転軸O1と第3の回転軸O3との間の距離をl1と称する。
この支持部材96は、支柱98の頂部に接続されている。支持部材96は、基端部から先端部へと、鉛直方向かつ鏡体4から離間する方向に延びている。支持部材96は、支柱98に対して、支柱98の頂部の中央を通り鉛直方向に延びる第4の回転軸O4を中心として軸回り方向に回転自在である。ここで、第3の回転軸O3と第4の回転軸O4とに垂直に延びる軸を第2の軸L2と称する。また、第3の回転軸O3と第4の回転軸O4との間の距離をl2と称する。
支柱98はほぼ逆L字形状となっている。即ち、支柱98は、鉛直方向に延びている上側の第1の部分と水平方向に延びている下側の第2の部分とによって形成されている。第1の部分には、第1実施形態と同様な構成のツマミ部100が配設されている。第2の部分の端部の上方には、斜めに切り欠いた切り欠き部102が形成されている。また、支柱98は、ベース部40に対して自身の中心軸(以下、第5の回転軸O5と称する)を中心として軸回り方向に回転自在となっている。ここで、第4の回転軸O4と支柱の第5の回転軸O5とに垂直に延びる軸を第3の軸L3と称する。また、第4の回転軸O4と第5の回転軸O5との間の距離をl3と称する。
図14(A)に示すように、支持部材96の下部には、鉛直下向きに突出するフランジ筒部104が配設されている。一方、支柱98の頂部にはフランジ部106が配設されている。支持部材96のフランジ筒部104が支柱98のフランジ部106に嵌合されることにより、上述したように、支持部材96は、支柱98に対して第4の回転軸O4を中心として軸回り方向に回転自在に接続されている。
上記第7のリンク94は、支持部材96内で鉛直方向に延びている。第7のリンク94の下端部は、第9のリンク108の上端部に第10の枢支軸A10を介して枢支されている。第9のリンク108は、支持部材96のフランジ部106の内部に鉛直方向に延設されているガイド孔に挿通されている。第9のリンク108は、ガイド構内で鉛直方向に摺動自在である。
第9のリンク108の下端部は、支柱98の頂部と支持部材96の下端部との接続と同様に、第10のリンク110の上端部に接続されている。即ち、第9のリンク108は、第10のリンク110に対して自身の中心軸を中心として軸回り方向に回転自在となっている。
第10のリンク110は、支柱98の第1の部分内で鉛直方向に延び、支柱98の第2の部分内で鉛直下向きかつ鏡体4から離間する方向に延びている。さらに、第10のリンク110の下端部は、水平方向に延びている。この下端部には、下端部の長手方向に延びているリンク穴112が形成されている。
第10のリンク110の下端部には、第11のリンク114の一端部が接続されている。即ち、第11のリンク114の一端部に第11のリンク114の長手方向に垂直に突設されたリンク軸116が、第10のリンク110のリンク穴112に摺動自在に挿通されている。第11のリンク114の中央部は、支柱98に第11の枢支軸A11を介して枢支されている。第11のリンク114の他端部には、鏡体4及び支持部93の自重による発生する第3の回転軸O3回りの回転モーメントを相殺するためのカウンターバランス118が配設されている。
支柱98及び第10のリンク110には、第1実施形態の第2の制限機構54と同様な制限機構111が配設されている。即ち、図14(B)に示されるように、第10のリンク110には、第10のリンク110の長手方向に延びているガイド溝120が形成されている。このガイド溝120には、下側に長溝状の可動溝部122が配設され、上部にはほぼ円形の固定溝部124が配設され、可動溝部122と固定溝部124との間に制限溝部126が配設されている。可動溝部122の幅及び固定溝部124の直径は、ツマミ部100の後述する軸部130の太径部132の直径よりも僅かに大きい。また、制限溝部126は、可動溝部122の幅及び固定溝部124の直径とほぼ同じ幅を有する。
また、図14(C)に示されるように、支柱98にはツマミ部100及び台座128が配設されている。ツマミ部100は軸部130及び太径部132を有する。台座128と太径部132との間には、ばね70が配設されている。本実施形態では、ツマミ部100にストッパピンは配設されておらず、また、台座128にロック穴は配設されていない。代わって、ツマミ部100は、ツマミ部100に形成された雄ねじを台座128に形成された雌ねじに螺合することにより、軸方向に突没自在に台座128に装着されている。
次に、上記構成の本実施形態の手術用顕微鏡92の作用について説明する。手術用顕微鏡92を使用する際には、以下に述べるように、鏡体4を手動により観察に適した所望の位置に移動させる。
鏡体4を前後に移動させる場合には、支持部材96は支柱98に対して第4の回転軸O4を中心として軸回り方向に回転され、また、支柱98はベース部40に対して第5の回転軸O5を中心として軸回り方向に回転される。このようにして、第2の軸L2と第3の軸L3とのなす角が変化されることにより、鏡体4の前後方向への移動が実現される。
図12に示されるように、鏡体4が支柱98の第1の部分側に配置され、第2の軸L2と第3の軸L3とが平行に配置されている状態が、鏡体4の前方への移動限界である。このとき、第1の回転軸O1と第5の回転軸O5との間の距離は、l1+l3−l2となる。
この状態で第2の軸L2と第3の軸L3とのなす角を180°とする。鏡体4を後方へと移動させると、支柱98がベース部40に対して一回転され、図13に示されるように、鏡体4が支柱98の第2の部分の端部側に配置され、第2の軸L2と第3の軸L3とのなす角が0°まで減少される。この状態が、鏡体4の後方への使用時移動限界である。鏡体4の前方への使用時移動限界と後方への使用時移動限界とによって、鏡体4の前後方向への使用時移動範囲が規定される。このとき、第1の回転軸O1と第5の回転軸O5との間の距離は、l1−l2−l3となる。
図15(A)に示すように、鏡体4を上方に移動させる場合には、鏡体4を真上へと押し進める。この結果、懸架アーム8は、第3の回転軸O3を中心として図において反時計回りに回動される。そして、第7,9及び10のリンク94,108,110は上方へと移動され、第11のリンク114の一端部は、第11の枢支軸A11を中心として上方へと回動させる。この結果、第11のリンク114の他端部のカウンターバランス118は、第11の枢支軸A11を中心として下方へと回動される。
ここで、鏡体4を上方の所望の位置に移動した後、鏡体4から手を離すと、カウンターバランス118の作用により第3の回転軸O3回りの回転モーメントが相殺されるため、鏡体4はその位置で静止される。
鏡体4の上方への移動中、図15(B)及び(C)で矢印C,C’により示されるように、ツマミ部100の太径部132は、第10のリンク110の可動溝部122内で固定溝部124とは逆の方向に相対的に移動される。太径部132が可動溝部122の端部壁に当接されると、第7、第9及び第10のリンク94,108,110の上方への移動が制限され、第6のリンク24の回動が制限される。このようにして、鏡体4の上方への移動が制限される。この状態が、鏡体4の上方への使用時移動限界である。
図16(A)に示されるように、鏡体4を下方に移動させる場合には、上記した鏡体の上方への移動と逆の作用が生じる。図16(B)及び(C)に示されるように、太径部132が可動溝部122の端部壁に当接されると、第7、第9及び第10のリンク94,108,110の下方への移動が制限され、第6のリンク24の回動が制限される。この状態が、鏡体4の下方への使用時移動限界である。
ここで、第10のリンク110の支柱98に対する使用時可動範囲は、太径部132が可動溝部122の上方端部壁に当接された状態と下方端部壁に当接された状態とによって規定される。鏡体4の上方への使用時移動限界と下方への使用時移動限界とによって、鏡体4の上下方向への使用時移動範囲が規定される。
第1実施形態と同様に、鏡体4の前後方向の移動と上下方向の移動とは組み合わされ得る。また、鏡体4の前後方向への使用時移動範囲と上下方向への使用時移動範囲とを組み合わせることにより、鏡体4の使用時移動範囲が規定される。第1実施形態と同様に、鏡体4の前後方向及び上下方向の移動に加えて、連結部材22、第6のリンク24の第1の部分が回転操作されることにより、鏡体は所望の位置に移動される。
鏡体4を使用した後、鏡体4を収納する際には以下に述べる収納操作を行う。以下では説明を簡単にするために、鏡体4を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体を下方へ移動することによる収納操作とを分けて説明する。
鏡体4を後方へ移動することによる収納操作では、鏡体4を後方への使用時移動限界とする。この状態は、鏡体4の後方への収納時移動限界でもある。即ち、鏡体4の前後方向への収納時移動範囲は設けられていない。
鏡体4を下方へ移動することによる収納操作では、鏡体4を図16(A)、(B)及び(C)に示されるような下方への使用時移動限界とする。そして、ツマミ部100を台座128に対して軸回り方向にねじって雄ねじを雌ねじから引き抜く。この結果、ばね70の付勢力により、ツマミ部100は台座128に対して軸方向外向きに移動される。また、軸部130の太径部132は、軸方向外向きに移動され、可動溝部122の端部壁との当接が解除される。この状態で、鏡体4を下方へと移動させて、第7、第9及び第10のリンク94,108,110を上方へと移動させて、図17(A)及び(B)に示されるように、太径部132を可動溝部122から固定溝部124へと制限溝部126で相対的に移動させる。
さらに鏡体4を図18(A)に示されるように下方へと移動させて第7、第9及び第10のリンク94,108,110を下方へと移動させ、図18(B)に示されるように、太径部132をガイド溝120の端部壁に当接させて固定溝部124にアラインメントする。この後、ツマミ部100を台座128に対して軸回り方向にねじることにより軸方向内向きに移動させて、図18(C)で示されるように、太径部132を固定溝部124に嵌入させ、支柱98と第10のリンク110とをロックする。この状態が、鏡体4の下方への収納時移動限界である。
ここで、第10のリンク110の支柱98に対する収納時可動範囲は、太径部132が可動溝部122の上方端部に当接された状態と固定溝部124内へと嵌入された状態とによって規定される。また、鏡体4の下方への使用時移動限界と収納時移動限界とによって、鏡体4の上下方向への収納時移動範囲が規定される。
第1実施形態と同様に、実際の収納操作では、上記した鏡体4を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体4を下方へ移動することによる収納操作とを組み合わせる。また、鏡体4の上下方向への収納時移動範囲によって、鏡体4の収納時移動範囲が規定される。
鏡体4を収納時移動範囲内で移動させて、手術用顕微鏡92を図19に示されるような収納状態に移行させる。この収納状態では、支持部93の複数のリンクがコンパクトに折畳まれ、鏡体4は切り欠き部102の上方で充分に低い位置に配置され、支持部93の高さは適切な高さとなっている。また、第10のリンク110が支柱98に対して固定されることにより、手術用顕微鏡92が収納状態で保持されている。即ち、本実施形態の制限機構111は、手術用顕微鏡92を収納状態で保持するための固定機構を兼ねている。
そこで、上記構成のものにあっては第1実施形態の効果に加えて次の効果を奏する。ツマミ部100がベース部40に対して高い位置に配置されている。このため、操作者は楽な姿勢でツマミ部100を操作することが可能となっている。
また、ツマミ部100は、ツマミ部100と台座128とを螺合することにより、軸方向に突没自在に台座128に装着されている。そして、鏡体4の収納時には、ツマミ部100を台座128に対して軸回り方向にねじることにより軸方向内向きに移動させて、太径部132を固定溝部124に嵌入させ、支柱98と第10のリンク110とをロックして、支持部93を収納状態に保持するようになっている。このため、支持部93は収納状態に確実に保持される。
図20乃至26は、本発明の第3実施形態を示す。第2実施形態と同様な構成には、同一の参照符号を付して説明を省略する。図20に示されるように、本実施形態の手術用顕微鏡134は、第2実施形態とほぼ同様な鏡体4及び支持部136を有する。即ち、この支持部136は、懸架アーム8、第6のリンク138、第7のリンク94、支持部材140、支柱146、及び、ベース部40を有する。
但し、第6のリンク138と支持部材140との間には、後述する制限機構142のツマミ部144が配設されている。また、支柱146は、鉛直方向に対して傾斜している斜め形状であり、支柱146には制限機構は配設されていない。
図21(A)に示されるように、本実施形態の手術用顕微鏡134は、第2実施形態と同様な第9のリンク108を有する。この第9のリンク108の下端部に、第10のリンク148の上端部が第2実施形態と同様に接続されている。この第10のリンク148の下端部は、水平方向に延びており、この下端部には、下端部の長手方向に延びているリンク穴150が形成されている。
このリンク穴150に、三角リンク152の第1の角部に突設されたリンク軸154が摺動自在に挿通されている。この三角リンク152の第2の角部は、第1の角部の側方に配置され、第11の枢支軸A11を介して支柱146に枢支されている。また、三角リンク152は支柱146の上部に配設されている。
三角リンク152の第3の角部は、第1及び第2の角部の下方に配置されている。三角リンク152の第3の角部に、ガススプリング156の一端部が第12の枢支軸A12を介して枢支されている。このガススプリング156は、支柱146内で支柱146の長手方向に配設されている。ガススプリング156の他端部は、第13の枢支軸A13を介して支柱146の下部に枢支されている。
第1実施形態の第1の制限機構52と同様な制限機構142が、第6のリンク138と支持部材140との間に配設されている。制限機構142のガイド溝158は、図21(B)に示されるように、第3の回転軸O3の周方向に形成されている。このガイド溝158には、鏡体4から離間した側に可動溝部160が配設され、反対側に固定溝部162が配設され、可動溝部160と固定溝部162との間には、瓢箪状にくびれている制限溝部164が配設されている。可動溝部160の幅及び固定溝部162の直径は、ツマミ部144の軸部66の太径部68の直径よりも僅かに大きく、制限溝部164の最小幅は太径部68の直径よりも僅かに小さい。
次に、上記構成の本実施形態の手術用顕微鏡134の作用について説明する。手術用顕微鏡134を使用する際には、以下に述べるように、鏡体4を手動により観察に適した所望の位置に移動させる。鏡体4を前後に移動させる作用は、第2実施形態の作用と同様である。
図22(A)に示すように、鏡体4を上方に移動させる場合には、懸架アーム8並びに第6、第7及び第9のリンク138,94,140は、第2実施形態と同様に作用する。そして、第9のリンク108は、第10のリンク148を駆動して上方へと移動させる。第10のリンク148は、三角リンク152の第1の角部のリンク軸154を駆動して、第11の枢支軸A11を中心として上方へと回動させる。
ここで、鏡体4を所望の位置に移動した後、鏡体4から手を放すと、ガススプリング156の作用により第3の回転軸O3回りの回転モーメントが相殺されるため、鏡体4はその位置で静止される。
鏡体4の上方への移動中、図22(B)で矢印D,D’により示されるように、ツマミ部144の太径部68は、第6のリンク138の可動溝部160内で固定溝部162とは逆の方向に相対的に移動される。図22(C)に示されるように、太径部68が可動溝部160の端部壁に当接されると、第6のリンク138の第3の回転軸O3を中心とした回動が制限される。このようにして、鏡体4の上方への移動が制限される。この状態が、鏡体4の上方への使用時移動限界である。
図23(A)に示されるように、鏡体4を下方に移動させる場合には、上記した鏡体の上方への移動と逆の作用が生じる。図23(B)及び(C)に示されるように、太径部68が制限溝部164のくびれ形状に当接されると、第6のリンク138の第3の回転軸O3を中心とした回動が制限される。この状態が、鏡体4の下方への使用時可動限界である。
ここで、第6のリンク138の支持部材140に対する使用時可動範囲は、太径部68が可動溝部160の端部壁に当接された状態と制限溝部164のくびれ形状に当接された状態とによって規定される。また、鏡体4の上方への使用時移動限界と下方への使用時移動限界とから、鏡体4の上下方向への使用時移動範囲が規定される。
第2実施形態と同様に、鏡体4の前後方向の移動と上下方向の移動とは組み合わされ得る。また、鏡体4の前後方向の使用時移動範囲と上下方向への使用時移動範囲とを組み合わせることにより、鏡体4の使用時移動範囲が規定される。第2実施形態と同様に、上記した鏡体4の前後方向及び上下方向の移動に加えて、連結部材22、第6のリンク138の第1の部分が回転操作されることにより、鏡体4は所望の位置に移動される。
鏡体4を使用した後、鏡体4を収納する際には以下に述べる収納操作を行う。以下では説明を簡単にするために、鏡体4を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体4を下方へ移動することによる収納操作とを分けて説明する。鏡体4を後方へ移動することによる収納操作は、第2実施形態と同様である。
鏡体4を下方へ移動させることによる収納操作では、鏡体4を図23(A)、(B)及び(C)に示されるような下方への使用時移動限界とする。そして、ツマミ部144を軸方向外向きに移動させて、軸部66の太径部68を制限溝部164から引き抜く。この状態で、鏡体4を下方に移動させて第6のリンク138を第3の回転軸O3を中心として回動させて、図24(A)及び(B)に示されるように、太径部68をガイド溝158に沿って可動溝部160から固定溝部162へと制限溝部164を越えて相対的に移動させる。
さらに図25(A)に示されるように鏡体4を下方に移動させて第6のリンク138を第3の回転軸O3を中心として回動させて、図25(B)に示されるように、太径部68を固定溝部162にアラインメントする。この後、第1実施形態の第1の制限機構52と同様に、図25(C)及び(D)に示されるように、太径部68を固定溝部162内へと嵌入させ、ツマミ部144を台座64にロックする。このようにして、第6のリンク138と支持部材140とがロックされる。この状態が、鏡体4の下方への収納時移動限界である。
ここで、第6のリンク138の支持部材140に対する収納時可動範囲は、太径部68が制限溝部164のくびれ形状に当接された状態と固定溝部162へと嵌入された状態とによって規定される。また、鏡体4の下方への使用時移動限界と収納時移動限界とによって、鏡体4の上下方向への収納時移動範囲が規定される。
第2実施形態と同様に、実際の収納操作では、上記した鏡体4を後方へ移動することによる収納操作と、鏡体4を下方へ移動することによる収納操作とを組み合わせる。また、鏡体4の上下方向への収納時移動範囲から、鏡体4の収納時移動範囲が規定される。
鏡体4を収納時移動範囲内で移動させて、支持部136を図26に示されるような収納状態に移行させる。この収納状態では、支持部136の複数のリンクがコンパクトに折畳まれ、鏡体4は支柱146の斜め形状とベース部40との交差部の上方で充分に低い位置に配置され、支持部136の高さは適切な高さとなっている。また、第6のリンク138が支持部材140に対して固定されることにより、支持部136が収納状態で保持されている。即ち、本実施形態の制限機構142は、支持部136を収納状態で保持するための固定機構を兼ねている。
そこで、上記構成のものにあっては第2実施形態の効果に加えて次の効果を奏する。支柱146が斜め形状を有しているため、操作者と支柱146との間に充分なスペースを確保することが可能となっている。このため、充分な手術スペースを確保することが可能となっている。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1−1) 術部を観察可能な鏡体と、
前記鏡体が先端部に設けられ、複数のアームの各々を接続部を介して相対的に可動に接続することにより形成され、前記鏡体を移動保持可能な支持部と、
前記接続部の少なくとも1つに設けられ、当該接続部を介して互いに接続されているアームの相対的な可動範囲を、前記鏡体の使用時には使用時可動範囲に制限して、前記鏡体の支持部による移動範囲を使用時移動範囲に制限し、前記鏡体の収納時には前記使用時可動範囲とは異なった収納時可動範囲に制限して、前記鏡体の支持部による移動範囲を前記使用時移動範囲とは少なくとも一部が異なった収納時移動範囲に制限する制限機構とを、
具備することを特徴とする手術用顕微鏡。
(付記項1−2) 前記制限機構は、前記鏡体の収納時に、前記制限機構が設けられている接続部を介して互いに接続されているアームを相対的に固定して、前記支持部の全体を固定する固定機構を有することを特徴とする付記項1−1の手術用顕微鏡。
(付記項1−3) 前記支持部は、基端部の支柱と、この支柱の先端部に基端部が枢支されほぼ上下方向に延び前記支柱に対して回動されて前記鏡体を前後方向に移動させるようになっている水平動アームと、この水平動アームの先端部に基端部が枢支されほぼ前後方向に延び前記水平動アームに対して回動されて前記鏡体を上下方向に移動させる懸架アームとを有し、前記制限機構は、前記支柱前記水平動アームとの接続部に設けられ、前記収納時移動範囲は、前記使用時移動範囲の限界からさらに前記鏡体を下方又は後方に移動させる範囲であり、前記鏡体の収納時には水平動アームの上方に懸架アームがほぼ平行に配置され水平動アームと懸架アームとは鉛直方向に対して傾いていることを特徴とする付記項1−1の手術用顕微鏡。
(付記項1−4) 前記支持部は、床等に設置されるベース部に対して自身の中心軸を中心として軸回り方向に回転可能にベース部に接続されている支柱と、基端部を中心として水平面内で回動可能となるように前記支柱の先端部に基端部が接続され、前記支柱の前記ベース部に対する回転と組み合わされる基端部を中心とした水平面内の回動によって前記鏡体を前後方向に移動させるようになっている水平動アームと、この水平動アームの先端部に基端部が枢支されほぼ前後方向に延び前記水平動アームに対して回動されて前記鏡体を上下方向に移動させる懸架アームとを有し、前記制限機構は、前記水平動アームと前記懸架アームとの接続部に設けられ、前記収納時移動範囲は、前記使用時移動範囲の限界からさらに前記鏡体を下方に移動させる範囲であり、前記鏡体の収納時には、前記支柱に対する前記水平動アームの基端部を中心とした水平面内の回動によって前記支柱の上方に前記懸架アームが配置され、前記懸架アームは鉛直方向に対して傾いており、支柱は前記鏡体の収納時に前記懸架アームと干渉しない形状を有することを特徴とする付記項1−1の手術用顕微鏡。
(付記項1−5) 前記支柱は、鉛直方向に対して斜めに延び、前記鏡体の収納時には前記懸架アームとほぼ平行に延びる斜め形状を有することを特徴とする付記項1−4の手術用顕微鏡。
(付記項2−1) 術部を観察可能な鏡体と、前記鏡体を3次元的に移動可能に支持する鏡体支持手段とを備えた手術用顕微鏡において、
前記鏡体支持手段の可動部の少なくとも一つが、術部の観察時に鏡体を移動させるための使用時移動範囲と、前記使用時移動範囲とは異なる範囲で収納時に移動する収納時移動範囲を有することを特徴とする手術用顕微鏡。
(付記項2−2) 前記使用時移動範囲と前記収納時移動範囲を制限する移動制限手段を備えることを特徴とする付記項2−1記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−3) 前記移動制限手段が収納時の固定手段を兼用することを特徴とする付記項2−2記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−4) 前記鏡体支持手段が、手術室内に設置されるベースと前記ベースに対し鉛直回転軸周りに回転可能に保持された支持部と前記支持部に対し第1の水平回転軸周りに回転可能に保持された鏡体を水平方向に移動させるための水平動アームと前記水平動アームに対し第2の水平回転軸周りに回転可能保持された鏡体を鉛直方向に移動させるための鏡体懸架アームにより構成されることを特徴とする付記項2−1〜2−3記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−5) 前記鏡体支持手段が、手術室内に設置されるベースと、前記ベースに対し第1の鉛直軸まわりに水平回転する第1の支持部と、前記第1の支持部材に対し第2の鉛直軸まわりに水平回転する第2の支持部と、前記第2の支持部に対し水平軸まわりに回転することで鏡体を上下させる鏡体懸架アームと、からなる付記項2−1〜2−3手術用顕微鏡。
(付記項2−6) 前記鏡体懸架アームの移動が、術部の観察時に鏡体を移動させるための使用時移動範囲と、前記使用時移動範囲とは異なる範囲で収納時に移動する収納時移動範囲を有することを特徴とする付記項2−4、2−5記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−7) 前記使用時移動範囲は、鏡体懸架アームが水平位置を基準に上下方向に振り分けられる範囲であり、前記収納時移動範囲は前記使用時移動範囲の下端位置を始点として更に下方への移動をおこなう範囲であることを特徴とする付記項2−4〜2−6記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−8) 前記収納時移動範囲の終端位置で、前記鏡体が前記ベース上に位置することを特徴とする付記項2−4〜2−7記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−9) 手術室内に設置されるベースと、前記ベース上の水平摺動面を第1の鉛直軸まわりに水平回転する第1の支持部と、前記第1の支持部材に対し第2の鉛直軸まわりに水平回転する第2の支持部と、前記第2の支持部に対し水平軸まわりに回転することで鏡体を上下させる鏡体懸架アームと、からなる手術用顕微鏡。
(付記項2−10) 前記鏡体懸架アームが、術部の観察時に鏡体を移動させるための使用時移動範囲と、前記使用時移動範囲とは異なる範囲で収納時に移動する収納時移動範囲を備え、前記第1の支持部に前記鏡体懸架アームを上下方向に重ねた状態の時、前記第1の支持部の形状が鏡体懸架アームの収納時移動範囲内に入らないアーム回避形状であることを特徴とする付記項2−9記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−11) 前記第1の支持部のアーム回避形状が、第1の鉛直軸上方が低く、第2の鉛直軸上方が高い形状であることを特徴とする付記項2−10記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−12) 前記第1の支持部のアーム回避形状が略(逆)L字形状であることを特徴とする付記項2−10、2−11記載の手術用顕微鏡。
(付記項2−13) 前記第1の支持部のアーム回避形状が略斜め形状であることを特徴とする付記項2−10、2−11記載の手術用顕微鏡。