JP4491910B2 - 多層機能性膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に少なくとも2層の機能性層が形成された多層機能性膜に関する。機能性層とは機能を有する層であり、機能とは物理的及び/又は化学的現象を通じて果たす働きのことを意味する。機能性層には、導電層、強磁性層、誘電体層、強誘電体層、絶縁層、光吸収層、光選択吸収層、反射層、反射防止層、触媒層、光触媒層、発色層、EL発光層等の各種の機能を有する層が含まれる。
【0002】
多層機能性膜は、異なる機能を発現する複数の機能性層を多層構造としたものである。複数の機能性層を組み合わせることによって、高機能を発現する機能性膜が得られる。多層機能性膜には、例えば、エレクトロクロミック膜、エレクトロルミネッセンス膜等が含まれる。光電効果を有する層と透明導電層とが組み合わされた太陽電池も多層機能性膜に含まれる。
【0003】
機能性微粒子として導電性微粒子を用いると、透明導電層を有する機能性膜が得られる。透明導電膜は、エレクトロルミネッセンスパネル電極、エレクトロクロミック素子電極、液晶電極、透明面発熱体、タッチパネルのような透明電極として用いることができるほか、透明な電磁波遮蔽膜として用いることができる。
【0004】
【従来の技術】
従来より、各種の機能性材料からなる機能性膜は、真空蒸着、レーザアブレーション、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的気相成長法(PVD)や、熱CVD、光CVD、プラズマCVD等の化学的気相成長法(CVD)によって製造されている。これらは、一般に大掛かりな装置が必要であり、中には大面積の膜の形成には不向きなものもある。
【0005】
また、ゾル−ゲル法を用いた塗布による膜の形成も知られている。ゾル−ゲル法では、大面積の膜の形成にも適するが、多くの場合、塗布後に高温で無機材料を焼結させる必要がある。
【0006】
例えば、透明導電膜について見れば以下の通りである。現在、透明導電膜は主にスパッタリング法によって製造されている。スパタッリング法は種々の方式があるが、例えば、真空中で直流または高周波放電で発生した不活性ガスイオンをターゲット表面に加速衝突させ、ターゲットを構成する原子を表面から叩き出し、基板表面に沈着させ膜を形成する方法である。
スパッタリング法は、ある程度大きな面積のものでも、表面電気抵抗の低い導電膜を形成できる点で優れている。しかし、装置が大掛かりで成膜速度が遅いという欠点がある。今後さらに導電膜の大面積化が進められると、さらに装置が大きくなる。このことは、技術的には制御の精度を高めなくてはならないなどの問題が発生し、別の観点では製造コストが大きくなるという問題が発生する。また、成膜速度の遅さを補うためにターゲット数を増やして速度を上げているが、これも装置を大きくする要因となっており問題である。
【0007】
塗布法による透明導電膜の製造も試みられている。従来の塗布法では、導電性微粒子がバインダー溶液中に分散された導電性塗料を基板上に塗布して、乾燥し、硬化させ、導電膜を形成する。塗布法では、大面積の導電膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高く、スパッタリング法よりも低コストで導電膜を製造できるという長所がある。塗布法では、導電性微粒子同士が接触することにより電気経路を形成し導電性が発現される。しかしながら、従来の塗布法で作製された導電膜は接触が不十分で、得られる導電膜の電気抵抗値が高い(導電性に劣る)という欠点があり、その用途が限られてしまう。
【0008】
従来の塗布法による透明導電膜の製造として、例えば、特開平9−109259号公報には、導電性粉末とバインダー樹脂とからなる塗料を転写用プラスチックフィルム上に塗布、乾燥し、導電層を形成する第1工程、導電層表面を平滑面に加圧(5〜100kg/cm2 )、加熱(70〜180℃)処理する第2工程、この導電層をプラスチックフィルムもしくはシート上に積層し、熱圧着させる第3工程からなる製造方法が開示されている。
この方法では、バインダー樹脂を大量に用いている(無機質導電性粉末の場合には、バインダー100重量部に対して、導電性粉末100〜500重量部、有機質導電性粉末の場合には、バインダー100重量部に対して、導電性粉末0.1〜30重量部)ため、電気抵抗値の低い透明導電膜は得られない。
【0009】
例えば、特開平8−199096号公報には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粉末、溶媒、カップリング剤、金属の有機酸塩もしくは無機酸塩からなる、バインダーを含まない導電膜形成用塗料をガラス板に塗布し、300℃以上の温度で焼成する方法が開示されている。この方法では、バインダーを用いていないので、導電膜の電気抵抗値は低くなる。しかし、300℃以上の温度での焼成工程を行う必要があるため、樹脂フィルムのような支持体上に導電膜を形成することは困難である。すなわち、樹脂フィルムは高温によって、溶融したり、炭化したり、燃焼してしまう。樹脂フィルムの種類によるが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでは130℃の温度が限界であろう。
【0010】
塗布法以外のものとしては、特開平6−13785号公報に、導電性物質(金属又は合金)粉体より構成された骨格構造の空隙の少なくとも一部、好ましくは空隙の全部に樹脂が充填された粉体圧縮層と、その下側の樹脂層とからなる導電性皮膜が開示されている。その製法について、板材に皮膜を形成する場合を例にとり説明する。同号公報によれば、まず、樹脂、粉体物質(金属又は合金)及び被処理部材である板材を皮膜形成媒体(直径数mmのスチールボール)とともに容器内で振動又は攪拌すると、被処理部材表面に樹脂層が形成される。続いて、粉体物質がこの樹脂層の粘着力により樹脂層に捕捉・固定される。更に振動又は攪拌を受けている皮膜形成媒体が、振動又は攪拌を受けている粉体物質に打撃力を与え、粉体圧縮層が作られる。粉体圧縮層の固定効果を得るために、かなりの量の樹脂が必要とされる。また、製法は塗布法に比べ、煩雑である。
【0011】
多層機能性膜の例として、特開平7−38128号公報に、透明絶縁体基板上に形成された透明導電膜上に透明絶縁膜が形成され、透明絶縁体膜上にI族 III族IV族からなるカルコパルライト構造半導体が形成され、半導体上に金属電極が形成された太陽電池が開示されている。そして、透明導電膜として、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛を使用でき、透明絶縁体膜として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムを使用できることが開示されている。半導体膜や金属電極は、蒸着により形成されている。
【0012】
多層機能性膜の例として、エレクトロルミネッセンス(EL)素子も挙げられる。例えば、分散型直流動作ELは、透明導電膜上にEL発光層が形成され、EL発光層上に背面電極が形成された多層構造である。このように、エレクトロルミネッセンス素子は、EL発光層を含む多層構造とされている。
【0013】
多層機能性膜の例として、エレクトロクロミック(EC)素子も挙げられる。エレクトロクロミック素子は、例えば、透明導電膜上に、第1発色層、誘電体層、第2発色層及び透明導電膜がこの順で形成された構造である。第1発色層及び第2発色層が、エレクトロクロミズムを有する層である。このように、エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミズムを有する層を含む多層構造とされている。
【0014】
これらの多層機能性膜の製造においては、スパッタリング法が主として用いられている。また、無機材料を高温で焼結させる方法も提案されている。しかし、これらの製法では、上述したような種々の問題がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
このような背景から、支持体上に大面積の機能性膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高く、低コストで機能性膜を製造できるという塗布法の利点を生かしつつ、各種機能を発現し得る多層機能性膜、例えば電気抵抗値の低い透明導電層を含む多層機能性膜が低温工程で得られる方法の開発が望まれる。
【0016】
そこで、本発明の目的は、塗布法による各種機能を発現し得る多層機能性膜、例えば電気抵抗値の低い透明導電層を含む多層機能性膜を提供することにある。また、本発明の目的は、塗布法によって前記多層機能性膜を低温で簡便に製造する方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
従来、塗布法において、バインダー樹脂を大量に用いなければ機能性層を成膜できず、あるいは、バインダー樹脂を用いない場合には、機能性物質を高温で焼結させなければ機能性層が得られないと考えられていた。
導電膜について見れば、バインダー樹脂を大量に用いなければ導電層を成膜できず、あるいは、バインダー樹脂を用いない場合には、導電性物質を高温で焼結させなければ導電層が得られないと考えられていた。
【0018】
ところが、本発明者は鋭意検討した結果、驚くべきことに、大量のバインダー樹脂を用いることなく、かつ高温で焼成することもなく、圧縮によって機械的強度を有し且つ各種の機能を発現し得る機能性層が得られることを見いだした。そして、異なる機能を有する複数の機能性層を組み合わせて多層構造とすることにより、多層機能性膜が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0019】
本発明は、支持体上に少なくとも2層の機能性層を有する多層機能性膜であって、前記少なくとも2層の機能性層のうちの少なくとも2層は、機能性微粒子の圧縮層であり、
前記機能性微粒子の圧縮層は、目的とする各機能性層に応じた機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体又は機能性層上に塗布、乾燥して形成された機能性微粒子含有層を圧縮することにより得られたものである、多層機能性膜である。前記少なくとも2層の機能性層において、互いに接する2層は組成が異なる。このことにより、複合された機能が発現される。
【0020】
多層機能性膜の用途にもよるが、本発明の多層機能性膜において、前記機能性微粒子の圧縮層のうちの少なくとも1層は、導電性微粒子の圧縮層であることも好ましい。前記導電性微粒子の圧縮層は透明導電層であることが好ましい。多層機能性膜の用途に応じて、各層の機能性材料を選択する。
【0021】
本発明の多層機能性膜において、前記機能性微粒子の圧縮層は、44N/mm2 以上の圧縮力で圧縮することにより得られたものであることが好ましい。
【0022】
本発明は、支持体上に少なくとも2層の機能性層を有し、前記少なくとも2層の機能性層のうちの少なくとも2層は機能性微粒子の圧縮層である多層機能性膜を製造する方法であって、
目的とする各機能性層に応じた機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体又は機能性層上に塗布、乾燥し、機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記機能性微粒子含有層を圧縮し、少なくとも2層の機能性微粒子の圧縮層を形成することを含む、多層機能性膜の製造方法である。
【0023】
本発明の製造方法の一形態は、支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第1機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第1圧縮層を形成し、
次に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、形成された前記第1圧縮層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第2機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む。
【0024】
本発明の製造方法の一形態は、支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を分散した液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、
次に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、形成された前記第1機能性微粒子含有層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、
その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む。
【0025】
本発明の製造方法の一形態は、支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体上に塗布し、塗布された層が湿潤状態の内に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、前記塗布層上に塗布し、乾燥して、第1及び第2機能性微粒子含有層を形成し、
その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む。
【0026】
本発明の製造方法において、44N/mm2 以上の圧縮力で圧縮することが好ましい。本発明の製造方法において、圧縮を常温で行うことが好ましい。圧縮を常温で行うことができるので、前記支持体が樹脂フィルムである場合に、本発明の効果が大きい。
【0027】
本発明の方法において、前記機能性微粒子の分散液は、樹脂を含まない。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の多層機能性膜は、支持体上に形成された少なくとも2層の機能性層を有する。前記少なくとも2層の機能性層のうちの少なくとも2層は、機能性微粒子の圧縮層である。機能性層には、特に限定されることなく、導電層、強磁性層、誘電体層、強誘電体層、絶縁層、光吸収層、光選択吸収層、反射層、反射防止層、触媒層、光触媒層、発色層、EL発光層等の各種の機能を有する層が含まれる。
【0029】
多層機能性膜の目的や用途に応じて、異なる機能を有する複数の機能性層を組み合わせて多層構造とするとよい。複数の機能性層の組み合わせによって、例えば、太陽電池用、エレクトロルミネッセンス素子用、エレクトロクロミック素子用等の多層機能性膜が得られる。
【0030】
具体的には、太陽電池用としては、図1を参照して、基板側から示して、透明絶縁体基板(11)、透明導電層(12)、透明絶縁体層(13)、I族 III族IV族からなるカルコパルライト構造半導体層(14)、金属電極(15)という多層構造が例示される。
分散型直流動作エレクトロルミネッセンス素子用としては、図2を参照して、基板側から示して、ガラス基板(21)、透明導電層(22)、EL発光層(23)、背面電極(24)という多層構造が例示される。
透過型エレクトロクロミック素子用としては、図3を参照して、入射光側から示して、透明導電層(31)、第1発色層(32)、誘電体層(33)、第2発色層(34)、透明導電層(35)という多層構造が例示される。
これら以外にも、種々の用途に応じた種々の多層構造が考えられる。
【0031】
本発明において、目的とする各機能性圧縮層に応じた機能性微粒子が用いられる。機能性微粒子は、特に限定されることなく、凝集力を有する主として無機の微粒子が用いられる。いずれの機能性層の製造においても、本発明の方法を適用することにより、十分な機械的強度を有する機能性塗膜が得られると共に、バインダー樹脂を大量に用いていた従来の塗布法におけるバインダー樹脂による弊害を解消することができる。その結果、目的とする機能がより向上する。
【0032】
例えば、透明導電層の場合においては、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の導電性無機微粒子が用いられる。あるいは、有機質の導電性微粒子が用いられてもよい。本製造方法の適用によって、優れた導電性が得られる。
【0033】
ここで、透明とは可視光を透過することを意味する。光の散乱度合いについては、多層機能性膜の用途により要求されるレベルが異なる。本発明では、一般に半透明といわれるような散乱のあるものも含まれる。
【0034】
強磁性層の場合においては、γ−Fe2 O3 、Fe3 O4 、Co−FeOx、Baフェライト等の酸化鉄系磁性粉末や、α−Fe、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Co−Ni、Co、Co−Ni等の強磁性金属元素を主成分とする強磁性合金粉末等が用いられる。本製造方法の適用によって、磁性塗膜の飽和磁束密度が向上する。
【0035】
誘電体層や強誘電体層の場合においては、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)、ジルコン酸鉛系、ランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛系(PLZT)、ケイ酸マグネシウム系、鉛含有ペロブスカイト化合物等の誘電体ないしは強誘電体の微粒子が用いられる。本製造方法の適用によって、誘電体特性ないしは強誘電体特性の向上が得られる。
【0036】
各種機能を発現する金属酸化物層の場合においては、酸化鉄(Fe2 O3 )、酸化ケイ素(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al2 O3 )、二酸化チタン(TiO2 )、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タングステン(WO3 )等の金属酸化物の微粒子が用いられる。本製造方法の適用によって、層における金属酸化物の充填度が上がるため、各機能が向上する。例えば、触媒を担持させたSiO2 、Al2 O3 を用いた場合には、実用強度を有する多孔質触媒層が得られる。TiO2 を用いた場合には、光触媒機能の向上が得られる。また、WO3 を用いた場合には、エレクトロクロミック表示素子での発色作用の向上が得られる。
【0037】
エレクトロルミネッセンス素子のEL発光層においては、硫化亜鉛(ZnS)微粒子が用いられる。本製造方法の適用によって、塗布法による安価なエレクトロルミネッセンス素子の製造を行うことができる。
【0038】
機能性微粒子の粒子径は、用途や粒子の形状によるので一概には言えないが、一般に5nm〜10μm程度である。例えば、導電性微粒子の粒子径は、機能性膜の用途に応じて必要とされる散乱の度合いにより異なり、また、粒子の形状により一概には言えないが、一般に10μm以下であり、1.0μm以下が好ましく、5nm〜100nmがより好ましい。
【0039】
本発明において、各層の機能に応じて、上記各種の機能性微粒子から選ばれる機能性微粒子を分散した液を機能性塗料として用いる。この機能性塗料を支持体又は下層となる機能性層上に塗布、乾燥し、機能性微粒子含有層を形成する。その後、前記機能性微粒子含有層を圧縮し、機能性微粒子の圧縮層を形成して、機能性膜を得る。
【0040】
導電性微粒子などの機能性微粒子を分散する液体としては、特に限定されることなく、既知の各種液体を使用することができる。例えば、液体として、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。これらのなかでも、極性を有する液体が好ましく、特にメタノール、エタノール等のアルコール類、NMP等のアミド類のような水と親和性のあるものは、分散剤を使用しなくても分散性が良好であり好適である。これら液体は、単独でも2種以上の混合したものでも使用することができる。また、液体の種類により、分散剤を使用することもできる。
【0041】
また、液体として、水も使用可能である。水を用いる場合には、支持体が親水性のものである必要がある。樹脂フィルムは通常疎水性であるため水をはじきやすく、均一な膜が得られにくい。支持体が樹脂フィルムの場合には、水にアルコールを混合するとか、あるいは支持体の表面を親水性にする必要がある。
【0042】
用いる液体の量は、特に制限されず、前記微粒子の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、前記微粒子100重量部に対して、液体100〜100,000 重量部程度である。前記微粒子と液体の種類に応じて適宜選択するとよい。
【0043】
前記微粒子の液体中への分散は、公知の分散手法により行うとよい。例えば、サンドグラインダーミル法により分散する。分散に際しては、微粒子の凝集をほぐすために、ジルコニアビーズ等のメディアを用いることも好ましい。また、分散の際に、ゴミ等の不純物の混入が起こらないように注意する。
【0044】
本発明において、前記微粒子の分散液は、樹脂を含まない(すなわち樹脂量=0)ことが特に好ましい。あるいは、樹脂を含む場合には、前記樹脂の含有量は、分散前の体積で表して、前記機能性微粒子の体積を100としたとき、25未満の体積であることが好ましい。このような分散液を用いることによって、得られる前記機能性微粒子の圧縮層中の樹脂量が、0又は前記機能性微粒子の体積を100としたとき、25未満の体積となる。
【0045】
導電層においては、樹脂を用いなければ、樹脂によって導電性微粒子同士の接触が阻害されることがない。従って、導電性微粒子相互間の導電性が確保され、得られる導電層の電気抵抗値が低い。導電性を損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能であるが、その量は上記上限のように従来技術におけるバインダー樹脂としての使用量に比べると少ない。従来技術においては、強い圧縮を行わないので、塗膜の機械的強度を得るためにバインダーを多く用いなければならなかった。バインダーとしての役割を果たす程度の量の樹脂を用いると、導電性微粒子同士の接触がバインダーにより阻害され、微粒子間の電子移動が阻害され導電性が低下する。
【0046】
一方、樹脂には導電膜のヘイズを向上させる効果がある。しかしながら、導電性の点からすると、樹脂は、分散前の体積で表して、前記導電性微粒子の体積を100としたとき、25未満の体積の範囲内で用いられることが好ましく、20未満の体積の範囲内で用いられることがより好ましい。また、ヘイズの向上効果は少なくなるが、導電性の点からすれば、樹脂を用いないことが最も好ましい。
【0047】
WO3 微粒子やTiO2 微粒子などを用いた機能性層においても、樹脂を用いなければ、樹脂によって各微粒子同士の接触が阻害されることがないため、各機能の向上が図られる。微粒子間の接触が阻害されず各機能を損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能であるが、その量は、前記各微粒子の体積を100としたとき、例えば約80以下の体積である。
【0048】
Al2 O3 微粒子などを用いた触媒層においては、樹脂を用いなければ、樹脂によって触媒機能を有する微粒子の表面が覆われることがない。このため、触媒としての機能の向上が図られる。触媒層においては、膜の内部に空隙が多い方が、触媒としての活性点が多くなるので、この観点からもなるべく樹脂を用いないことが好ましい。
【0049】
このように多層機能性膜を構成する各機能性圧縮層には樹脂を用いないことが好ましく、用いるとしても少量が好ましい。用いる場合の樹脂量は、機能性層の目的に応じて、ある程度変化し得るので、適宜決定するとよい。
【0050】
本発明において、前記機能性微粒子の体積及び前記樹脂の体積とは、みかけの体積ではなく、真体積である。真体積は、JIS Z 8807に基づきピクノメーターのような機器を使用して密度を求め、使用する材料の重量を密度で割って求められる。このように、樹脂の使用量を重量ではなく体積で規定するのは、圧縮後に得られる機能性層において、機能性微粒子に対して樹脂がどのようにして存在するのか、を考えた場合に、より現実を反映するからである。
【0051】
本発明において樹脂を用いる場合には、特に限定されることなく、熱可塑性樹脂またはゴム弾性を有するポリマーを、1種または2種以上を混合して用いることができる。樹脂の例としては、フッ素系ポリマー、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−三フッ化エチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。また主鎖の水素をアルキル基で置換した含フッ素系ポリマーも用いることができる。樹脂の密度が大きいものほど、大きな重量を用いても、体積がより小さく、前述の要件を満たしやすい。
【0052】
前記微粒子の分散液には、各機能性層に要求される性能を満たす範囲内で、各種の添加剤を配合してもよい。例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、分散剤等の添加剤である。
【0053】
支持体としては、特に限定されることなく、樹脂フィルム、ガラス、セラミックス、金属、布、紙等の各種のものを用いることができる。しかしながら、ガラス、セラミックス等では、後工程の圧縮の際に割れる可能性が高いので、その点を考慮する必要がある。また、支持体の形状は、フィルム状の他、箔状、メッシュ状、織物等が使用可能である。
【0054】
支持体として、圧縮工程の圧縮力を大きくしても割れることがない樹脂フィルム(樹脂シートを含む)が好適である。樹脂フィルムは、導電性微粒子などの機能性微粒子層の該フィルムへの密着性が良い点でも好ましく、また軽量化を求められている用途にも好適である。本発明では、高温での加圧工程や、焼成工程がないので、樹脂フィルムを支持体として用いることができる。
【0055】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。
【0056】
前記各機能性層用の機能性微粒子の分散液を、前記支持体又は下層となる機能性層上に塗布、乾燥し、機能性微粒子含有層を形成する。
前記支持体又は下層となる機能性層上への前記微粒子分散液の塗布は、特に限定されることなく、公知の方法により行うことができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョンノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。また、噴霧、吹き付けなどにより、支持体上へ分散液を付着させることも可能である。
【0057】
乾燥温度は分散に用いた液体の種類によるが、10〜150℃程度が好ましい。10℃未満では空気中の水分の結露が起こりやすく、150℃を越えると樹脂フィルム支持体が変形する。また、乾燥の際に、不純物が前記微粒子の表面に付着しないように注意する。
【0058】
塗布、乾燥後の機能性微粒子含有層の厚みは、次工程の圧縮条件や最終導電膜などの各機能性膜の用途にもよるが、0.1〜10μm程度とすればよい。
【0059】
このように、機能性微粒子を液に分散させて塗布し、乾燥すると、均一な膜を作成しやすい。前記微粒子の分散液を塗布して乾燥させると、分散液中にバインダーが存在しなくても微粒子は膜を形成する。バインダーが存在しなくても膜となる理由は必ずしも明確ではないが、乾燥させて液が少なくなってくると毛管力のため、微粒子が互いに集まってくる。さらに微粒子であるということは比表面積が大きく凝集力も強いので、膜となるのではないかと考えている。しかし、この段階での膜の強度は弱い。また、導電層においては抵抗値が高く、抵抗値のばらつきも大きい。
【0060】
次に、形成された機能性微粒子含有層を圧縮し、導電性微粒子などの機能性微粒子の圧縮層を得る。圧縮することにより、膜の強度を向上させる。すなわち、圧縮することで導電性微粒子などの機能性微粒子相互間の接触点が増え接触面が増加する。このため、塗膜強度が上がる。微粒子は元々凝集しやすい性質があるので圧縮することで強固な膜となる。
【0061】
導電層においては、塗膜強度が上がると共に、電気抵抗が低下する。触媒層においては、塗膜強度が上がると共に、樹脂を用いないか又は樹脂量が少ないので多孔質膜となる。そのため、より高い触媒機能が得られる。他の機能性層においても、微粒子同士がつながった高い強度の膜とすることができると共に、樹脂を用いないか又は樹脂量が少ないので、単位体積における微粒子の充填量が多くなる。そのため、より高いそれぞれの機能が得られる。
【0062】
圧縮は44N/mm2 以上の圧縮力で行うことが好ましい。44N/mm2 未満の低圧であれば、機能性微粒子含有層を十分に圧縮することができず、機能に優れた機能性層が得られにくい。135N/mm2 以上の圧縮力がより好ましく、180N/mm2 の圧縮力が更に好ましい。圧縮力が高いほど、塗膜強度が向上し、支持体又は下層との密着性が向上する。導電層においては、より導電性に優れた層が得られ、また、導電層の強度が向上し、導電層と支持体又は下層との密着性も強固となる。圧縮力を高くするほど装置の耐圧を上げなくてはならないので、一般には1000N/mm2 までの圧縮力が適当である。また、圧縮を常温(15〜40℃)付近の温度で行うことが好ましい。常温付近の温度における圧縮操作は、本発明の利点の一つである。
【0063】
圧縮は、特に限定されることなく、シートプレス、ロールプレス等により行うことができるが、ロールプレス機を用いて行うことが好ましい。ロールプレスは、ロールとロールの間に圧縮すべきフィルムを挟んで圧縮し、ロールを回転させる方法である。ロールプレスは均一に高圧がかけられ、また、ロールトゥーロールで生産できることから生産性が上がり好適である。
【0064】
ロールプレス機のロール温度は常温が好ましい。加温した雰囲気やロールを加温した圧縮(ホットプレス)では、圧縮圧力を強くすると樹脂フィルムが伸びてしまうなどの不具合が生じる。加温下で支持体の樹脂フィルムが伸びないようにするため、圧縮圧力を弱くすると、塗膜の機械的強度が低下する。導電層においては、塗膜の機械的強度が低下し、電気抵抗が上昇する。微粒子表面の水分の付着をできるだけ少なくしたいというような理由がある場合に、雰囲気の相対湿度を下げるために、加温した雰囲気としてもよいが、温度範囲はフィルムが容易に伸びてしまわない範囲内である。一般にはガラス転移温度(二次転移温度)以下の温度範囲となる。湿度の変動を考慮して、要求される湿度になる温度より少し高めの温度にすればよい。ロールプレス機で連続圧縮した場合に、発熱によりロール温度が上昇しないように温度調節することも好ましい。
支持体が金属製であれば、この金属が溶融しない温度範囲まで、加温した雰囲気にすることも可能である。
【0065】
なお、樹脂フィルムのガラス転移温度は、動的粘弾性を測定して求められ、主分散の力学的損失がピークとなる温度を指す。例えば、PETフィルムについて見ると、そのガラス転移温度はおよそ110℃前後である。
【0066】
ロールプレス機のロールは、強い圧力がかけられることから金属ロールが好適である。また、ロール表面が柔らいと、圧縮時に微粒子がロールに転写することがあるので、ロール表面を硬質膜で処理することが好ましい。
【0067】
このようにして、機能性微粒子の圧縮層が形成される。機能性微粒子圧縮層の膜厚は、多層機能性膜の用途にもよるが、0.1〜10μm程度とすればよい。また、10μm程度の厚い一つの圧縮層を得るために、微粒子の分散液の塗布、乾燥、圧縮の一連の操作を繰り返し行っても良い。さらに、本発明において、支持体の両面に導電層などの各機能性層を形成することも勿論可能である。
【0068】
本発明の支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造するに際して、主として3つの製造形態を用いることができる。
【0069】
本発明の製造方法の一形態(A法)は、(a) 機能性微粒子を分散した液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第1機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第1圧縮層を形成し、
(b) 次に、前記機能性微粒子とは異なる機能性微粒子を分散した液を、形成された前記第1圧縮層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第2機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第2圧縮層を形成することを含む。
3層以上の多層機能性膜を製造するには、第2圧縮層の形成後、(b) 工程を所望回数繰り返せばよい。
【0070】
本発明の製造方法の一形態(B法)は、(a) 機能性微粒子を分散した液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、
(b) 次に、前記機能性微粒子とは異なる機能性微粒子を分散した液を、形成された前記第1機能性微粒子含有層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、
(c) その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成することを含む。
3層以上の多層機能性膜を製造するには、第2機能性微粒子含有層の形成後、(b) 工程を所望回数繰り返し、その後(c) 工程を行えばよい。
【0071】
本発明の製造方法の一形態(C法)は、(a) 機能性微粒子を分散した液を支持体上に塗布し、塗布された層が湿潤状態の内に、前記機能性微粒子とは異なる機能性微粒子を分散した液を、前記塗布層上に塗布し、乾燥して、第1及び第2機能性微粒子含有層を形成し、
(b) その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成することを含む。
3層以上の多層機能性膜を製造するには、(a) 工程において、乾燥の前に、塗布されたすべての下層が湿潤状態の内に、更に上層用の機能性微粒子の分散液を、前記塗布層上に塗布すればよい。
【0072】
いずれの場合においても、上層用の機能性微粒子の分散液を塗布した際に、上層と下層の界面の混合を少なくするために、前記上層用分散液の固形分濃度を高めに設定してもよい。
【0073】
もちろん、上記の製造形態(A、B及びC法)を組み合わせて、3層以上の多層機能性膜を製造することも可能である。例えば、5層からなる多層機能性膜を製造する場合に、支持体から数えて第1、2及び3層をA法により形成し、形成された第3層上に、C法により第4及び5層を形成してもよい。種々の製造形態が可能であり、目的とする多層機能性膜の種類等に応じて適宜決定するとよい。本発明の多層機能性膜においては、構成する各層の全てが必ずしも圧縮層である必要はない。例えば、太陽電池用の場合に、透明導電層、透明絶縁体層、半導体層を圧縮により形成し、金属電極を蒸着により形成してもよい。
【0074】
本発明の多層機能性膜において、各層の圧縮層は優れた導電性等の各機能性を示し、バインダー樹脂を用いないか又はバインダーとしては機能しない程の少量の樹脂を用いて作成したにもかかわらず、実用上十分な膜強度を有し、支持体又は下層機能性層との密着性にも優れる。
【0075】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1:ITO/TiO2 多層機能性層]
(第1層の形成)
一次粒径が5〜30nmのITO微粒子SUFP−HX(住友金属鉱山(株)製)100重量部にエタノール300重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。
得られたITO塗布液を100μm厚のPETフィルム上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥した。得られたフィルムを、以降において、圧縮前ITOフィルムと称する。ITO含有塗膜の厚みは1.7μmであった。
【0077】
まず、圧縮圧力の確認のための予備実験を行った。
一対の直径140mmの金属ロール(ロール表面にハードクロムめっき処理が施されたもの)を備えるロールプレス機を用いて、ロールを回転させず且つ前記ロールの加熱を行わないで、室温(23℃)にて前記圧縮前ITOフィルムを挟み圧縮した。この時、フィルム幅方向の単位長さ当たりの圧力は660N/mmであった。次に、圧力を解放し、圧縮された部分のフィルム長手方向の長さを調べたら1.9mmであった。この結果から、単位面積当たりに347N/mm2 の圧力で圧縮したことになる。
【0078】
次に、予備実験に使用したものと同様の前記圧縮前ITOフィルムを金属ロール間に挟み前記条件で圧縮し、ロールを回転させ5m/分の送り速度で圧縮した。このようにして、圧縮されたITOフィルムを得た。ITO圧縮層の厚みは1.0μmであった。
【0079】
(第2層の形成)
一次粒径が30〜70nmのTiO2 微粒子100重量部にエタノール900重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。
得られたTiO2 塗布液を前記ITO圧縮層上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥した。次に、第1層の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。TiO2 圧縮層の厚みは0.5μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。
【0080】
(90度ピール試験)
多層機能性層の支持体フィルムとの密着性及び多層機能性層の強度を評価するため、90度ピール試験を行った。図4を参照して説明する。
多層機能性層が形成された試験サンプル(1) における支持体フィルム(1b)の多層機能性層(1a)が形成された面とは反対側の面に両面テープ(2) を貼った。これを大きさ25mm×100mmに切り出した。試験サンプル(1) をステンレス板(3) に貼った。試験サンプル(1) が剥がれないように、サンプル(1) の両端部(25mm辺)にセロハンテープ(4) を貼った。(図4(a))。
【0081】
試験サンプル(1) の多層機能性層(1a)面にセロハンテープ(幅12mm、日東電工製、No. 29)(5) をサンプル(1) の長辺と平行になるように貼った。セロハンテープ(5) とサンプル(1) との貼付の長さは50mmであった。セロハンテープ(5) の貼付されていない端を張力計(6) に取り付け、セロハンテープ(5) の貼付面と非貼付面(5a)との成す角が90度になるようにセットした。セロハンテープ(5) を、100mm/分の速度で引っ張って剥がした。このときテープ(5) を剥がす速度と試験サンプル(1) を貼り付けたステンレス板(3) が同じ速度で移動するようし、セロハンテープ(5) の非貼付面(5a)と試験サンプル(1) 面とが常に90度となるようにした。張力計(6) にて剥がすときに要した力(F) を計測した。(図4(b))。
【0082】
試験後、剥がされた多層機能性層表面とセロハンテープ表面を調べた。両方の表面に粘着剤がある場合は、多層機能性層が破壊されたのではなく、セロハンテープの粘着剤層が破壊されたこと、すなわち、粘着剤の強度が剥がすときに要した力(F) の値であったということになり、多層機能性層の強度はその値(F) 以上となる。
【0083】
本試験においては、粘着剤の強度上限が6N/12mmであるため、表1に6N/12mmと表示したものは、上記のように両方の表面に粘着剤がある場合であって、密着性と多層機能性層の強度が6N/12mm以上であることを表す。これより小さい値の場合は、多層機能性層表面に粘着剤がなくセロハンテープ表面に機能性層が一部付着しており、その値において、塗膜厚中で破壊が生じたことを表す。
【0084】
上記90度ピール試験の結果、実施例1では、セロハンテープを剥がすのに6N/12mmの力を要した。ピール試験後の塗膜表面を調べたところ、セロハンテープの粘着剤が付着していた。剥がしたセロハンテープの粘着面を調べたところ、粘着性があった。従って、塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、太陽電池として利用できる。
【0085】
[実施例2:ITO/WO3 多層機能性層]
(第1層の形成)
実施例1と全く同様に行った。
(第2層の形成)
一次粒径が50〜100nmのWO3 微粒子100重量部にエタノール400重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。
得られた塗布液を前記第1層(ITO圧縮層)上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥した。次に、第1層の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。WO3 圧縮層の厚みは0.6μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、エレクトロクロミック(EC)素子として利用できる。
【0086】
[実施例3:ITO/WO3 /Ta2 O5 多層機能性層]
(第1層及び第2層の形成)
実施例2と全く同様に行った。
(第3層の形成)
一次粒径が100〜300nmのTa2 O5 微粒子100重量部にエタノール400重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。
得られた塗布液を前記第2層(WO3 圧縮層)上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥した。次に、第1層の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。Ta2 O5 圧縮層の厚みは0.6μmであった。
このようにして、第1層、第2層及び第3層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、エレクトロクロミック(EC)素子として利用できる。
【0087】
[実施例4:ITO/ZnS多層機能性層]
(第1層の形成)
実施例1と全く同様に行った。
(第2層の形成)
一次粒径が100〜400nmのZnS微粒子100重量部にエタノール400重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。
得られた塗布液を前記第1層(ITO圧縮層)上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、ZnS塗布層を形成し、圧縮前ZnSフィルムを得た。
この圧縮前ZnSフィルムをそのままロールプレスすると、ロールにZnSが付着することがある。そこで、以下の付着防止用フィルムを用いて、ロールプレスした。
50μm厚のPETフィルム上にシリコーン系ハードコート材:トスガード510(GE東芝シリコーン(株)製)を塗布、乾燥し、硬化(100℃、2時間)して、PETフィルム上にハードコートが形成された付着防止用フィルムを作成した。
前記ZnS塗布層面と前記ハードコート面が接するように圧縮前ZnSフィルムと付着防止用フィルムを重ね合わせて、これら2枚のフィルムを金属ロール間に挟み、第1層の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。付着防止用フィルムにはハードコートが形成されているので、ロールプレス後、これら2枚のフィルムが互いに付着することはなかった。ZnS圧縮層の厚みは1.0μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は4N/12mmであった。
得られた多層機能性膜は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子として利用できる。
【0088】
[実施例5:ITO/TiO2 多層機能性層]
(第1層の塗布・乾燥)
実施例1の第1層の形成で用いたのと同じITO塗布液を100μm厚のPETフィルム上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、ITO含有塗膜を形成した。塗膜の厚みは1.7μmであった。
【0089】
(第2層の塗布・乾燥)
実施例1の第2層の形成で用いたのと同じTiO2 塗布液を、前記ITO含有塗膜上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、TiO2 含有塗膜を形成した。
【0090】
(第1層及び第2層の圧縮)
得られたフィルムを、実施例1の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。圧縮後のITO圧縮層の厚みは1.0μmであり、TiO2 圧縮層の厚みは0.5μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、太陽電池として利用できる。
【0091】
[実施例6:ITO/TiO2 多層機能性層]
(第1層及び第2層の塗布・乾燥)
第1層用塗布液として、実施例1の第1層の形成で用いたのと同じITO塗布液を用い、第2層用塗布液として、実施例1の第2層の形成で用いたのと同じTiO2 塗布液を用いた。
100μm厚のPETフィルム上に、アプリケーターを用いて、前記第1層用塗布液を塗布し、第1層が湿潤状態のうちに、前記第2層用塗布液を塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、ITO含有塗膜及びTiO2 含有塗膜を形成した。
【0092】
(第1層及び第2層の圧縮)
得られたフィルムを、実施例1の圧縮と同じ条件でロールプレス機を用いて圧縮した。圧縮後のITO圧縮層の厚みは1.0μmであり、TiO2 圧縮層の厚みは0.5μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、太陽電池として利用できる。
【0093】
[実施例7:WO3 /Ta2 O5 多層機能性層]
(第1層の塗布・乾燥)
実施例2の第2層の形成で用いたのと同じWO3 塗布液を70μm厚のアルミニウム箔(質別はO)上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、WO3 含有塗膜を形成した。
【0094】
(第2層の塗布・乾燥)
実施例3の第3層の形成で用いたのと同じTa2 O5 塗布液を、前記WO3 含有塗膜上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、Ta2 O5 含有塗膜を形成した。
【0095】
(第1層及び第2層の圧縮)
得られたフィルムを、圧力を単位面積当たりに367N/mm2 (フィルム幅方向の単位長さ当たりの圧力を330N/mmとして、実施例1と同様の予備実験にて調べた圧縮された部分のフィルム長手方向の長さは0.9mmであった。)に変更した以外は実施例1の圧縮と同様にしてロールプレス機を用いて圧縮した。圧縮後のWO3 圧縮層の厚みは0.6μmであり、Ta2 O5 圧縮層の厚みは0.6μmであった。
このようにして、第1層及び第2層からなる多層機能性層を形成した。90度ピール試験を行った。塗膜の強度は6N/12mm以上であった。
得られた多層機能性膜は、エレクトロクロミック(EC)素子として利用できる。
【0096】
[比較例1:ITO/TiO2 層]
(第1層の形成)
実施例1と全く同様に行った。
(第2層の形成)
実施例1の第2層の形成において、圧縮を行わなかった。90度ピール試験を行った。塗膜の強度が低くて正確な値が測定できなかったが、0.1N/12mm以下であった。
【0097】
[比較例2:ITO/TiO2 層]
実施例5と同様にして、第1層の塗布・乾燥、第2層の塗布・乾燥を行った。第1層及び第2層の圧縮は行わなかった。90度ピール試験を行った。塗膜の強度が低くて正確な値が測定できなかったが、0.1N/12mm以下であった。
【0098】
[比較例3:ITO/TiO2 層]
実施例6と同様にして、第1層及び第2層の塗布・乾燥を行った。第1層及び第2層の圧縮は行わなかった。90度ピール試験を行った。塗膜の強度が低くて正確な値が測定できなかったが、0.1N/12mm以下であった。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1〜7及び比較例1〜3の結果を表1に示す。実施例1〜7の機能性膜はいずれも、多層機能性層と支持体フィルムとの密着性に優れており、それぞれ目的とする機能も十分であった。
これに対して、比較例1〜3のものは、密着性に劣っていた。
【0101】
上記実施例では、数種の多層機能性膜を作製した例を示した。上記実施例と同様にして、種々の機能を発現する多層機能性膜を作製することができる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【0102】
【発明の効果】
本発明によれば、塗布法によって低温で簡便な操作で多層機能性膜が得られる。本発明による多層機能性膜は、十分な機械的強度を有すると共に、従来の塗布法におけるバインダー樹脂による弊害が解消され、その結果、目的とする機能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の機能性膜の多層構造の一例を示す図である。
【図2】 本発明の機能性膜の多層構造の一例を示す図である。
【図3】 本発明の機能性膜の多層構造の一例を示す図である。
【図4】 実施例における90度ピール試験を説明するための図である。
【符号の説明】
(11):透明絶縁体基板
(12):透明導電層
(13):透明絶縁体層
(14):カルコパルライト構造半導体層
(15):金属電極
(21):基板
(22):透明導電層
(23):EL発光層
(24):背面電極
(31):透明導電層
(32):第1発色層
(33):誘電体層
(34):第2発色層
(35):透明導電層
(1) :多層機能性層が形成された試験サンプル
(1b):支持体
(1a):多層機能性層
(2) :両面テープ
(3) :ステンレス板
(4) :固定用セロハンテープ
(5) :セロハンテープ
(5a):セロハンテープ非貼付面
(6) :張力計
Claims (12)
- 支持体上に少なくとも2層の機能性層を有する多層機能性膜であって、前記少なくとも2層の機能性層のうちの少なくとも2層は、機能性微粒子の圧縮層であり、
前記機能性微粒子の圧縮層は、目的とする各機能性層に応じた機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体又は機能性層上に塗布、乾燥して形成された機能性微粒子含有層を圧縮することにより得られたものである、多層機能性膜。 - 前記少なくとも2層の機能性層において、互いに接する2層は組成が異なる、請求項1に記載の多層機能性膜。
- 前記機能性微粒子の圧縮層のうちの少なくとも1層は、導電性微粒子の圧縮層である、請求項1又は2に記載の多層機能性膜。
- 前記導電性微粒子の圧縮層は透明導電層である、請求項3に記載の多層機能性膜。
- 前記機能性微粒子の圧縮層は、44N/mm2 以上の圧縮力で圧縮することにより得られたものである、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の多層機能性膜。
- 支持体上に少なくとも2層の機能性層を有し、前記少なくとも2層の機能性層のうちの少なくとも2層は機能性微粒子の圧縮層である多層機能性膜を製造する方法であって、
目的とする各機能性層に応じた機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体又は機能性層上に塗布、乾燥し、機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記機能性微粒子含有層を圧縮し、少なくとも2層の機能性微粒子の圧縮層を形成することを含む、多層機能性膜の製造方法。 - 支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第1機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第1圧縮層を形成し、
次に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、形成された前記第1圧縮層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、その後、前記第2機能性微粒子含有層を圧縮して機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む、多層機能性膜の製造方法。 - 支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を分散した液を支持体上に塗布、乾燥し、第1機能性微粒子含有層を形成し、
次に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、形成された前記第1機能性微粒子含有層上に塗布、乾燥し、第2機能性微粒子含有層を形成し、
その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む、多層機能性膜の製造方法。 - 支持体上に互いに接する2層の機能性微粒子の圧縮層を少なくとも有する多層機能性膜を製造する方法であって、
第1の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を支持体上に塗布し、塗布された層が湿潤状態の内に、前記第1の機能性微粒子とは異なる第2の機能性微粒子が分散され且つ樹脂を含まない分散液を、前記塗布層上に塗布し、乾燥して、第1及び第2機能性微粒子含有層を形成し、
その後、前記第1及び第2機能性微粒子含有層を圧縮して、機能性微粒子の第1圧縮層及び機能性微粒子の第2圧縮層を形成する
ことを含む、多層機能性膜の製造方法。 - 44N/mm2 以上の圧縮力で圧縮する、請求項6〜9のうちのいずれか1項に記載の多層機能性膜の製造方法。
- 圧縮を常温(15〜40℃)で行う、請求項6〜10のうちのいずれか1項に記載の多層機能性膜の製造方法。
- 前記機能性微粒子の1つは、導電性微粒子である、請求項6〜11のうちのいずれか1項に記載の多層機能性膜の製造方法。
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JP2000147399A JP4491910B2 (ja) | 2000-05-19 | 2000-05-19 | 多層機能性膜及びその製造方法 |
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