JP4465812B2 - 機能性膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性膜に関する。本発明において機能性膜は、以下のように定義される。すなわち、機能性膜とは機能を有する膜であり、機能とは物理的及び/又は化学的現象を通じて果たす働きのことを意味する。機能性膜には、導電膜、磁性膜、強磁性膜、誘電体膜、強誘電体膜、エレクトロクロミック膜、エレクトロルミネッセンス膜、絶縁膜、光吸収膜、光選択吸収膜、反射膜、反射防止膜、触媒膜、光触媒膜等の各種の機能を有する膜が含まれる。
【0002】
とりわけ本発明は、透明導電膜に関する。透明導電膜は、エレクトロルミネッセンスパネル電極、エレクトロクロミック素子電極、液晶電極、透明面発熱体、タッチパネルのような透明電極として用いることができるほか、透明な電磁波遮蔽膜として用いることができる。
【0003】
【従来の技術】
従来より、各種の機能性材料からなる機能性膜は、真空蒸着、レーザアブレーション、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的気相成長法(PVD)や、熱CVD、光CVD、プラズマCVD等の化学的気相成長法(CVD)によって製造されている。これらは、一般に大掛かりな装置が必要であり、中には大面積の膜の形成には不向きなものもある。
【0004】
また、ゾル−ゲル法を用いた塗布による膜の形成も知られている。ゾル−ゲル法では、大面積の膜の形成にも適するが、多くの場合、塗布後に高温で無機材料を焼結させる必要がある。
【0005】
例えば、透明導電膜について見れば以下の通りである。現在、透明導電膜は主にスパッタリング法によって製造されている。スパタッリング法は種々の方式があるが、例えば、真空中で直流または高周波放電で発生した不活性ガスイオンをターゲット表面に加速衝突させ、ターゲットを構成する原子を表面から叩き出し、基板表面に沈着させ膜を形成する方法である。
【0006】
スパッタリング法は、ある程度大きな面積のものでも、表面電気抵抗の低い導電膜を形成できる点で優れている。しかし、装置が大掛かりで成膜速度が遅いという欠点がある。今後さらに導電膜の大面積化が進められると、さらに装置が大きくなる。このことは、技術的には制御の精度を高めなくてはならないなどの問題が発生し、別の観点では製造コストが大きくなるという問題が発生する。また、成膜速度の遅さを補うためにターゲット数を増やして速度を上げているが、これも装置を大きくする要因となっており問題である。
【0007】
塗布法による透明導電膜の製造も試みられている。従来の塗布法では、導電性微粒子がバインダー溶液中に分散された導電性塗料を基板上に塗布して、乾燥し、硬化させ、導電膜を形成する。塗布法では、大面積の導電膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高く、スパッタリング法よりも低コストで導電膜を製造できるという長所がある。塗布法では、導電性微粒子同士が接触することにより電気経路を形成し導電性が発現される。しかしながら、従来の塗布法で作製された導電膜では導電性微粒子同士の接触が不十分であり、そのため、得られる導電膜の電気抵抗値が高い(導電性に劣る)という欠点があり、その用途が限られてしまう。
【0008】
従来の塗布法による透明導電膜の製造として、例えば、特開平9−109259号公報には、導電性粉末とバインダー樹脂とからなる塗料を転写用プラスチックフィルム上に塗布、乾燥し、導電層を形成する第1工程、導電層表面を平滑面に加圧(5〜100kg/cm2 )、加熱(70〜180℃)処理する第2工程、この導電層をプラスチックフィルムもしくはシート上に積層し、熱圧着させる第3工程からなる製造方法が開示されている。
【0009】
この方法では、バインダー樹脂を大量に用いている(無機質導電性粉末の場合には、バインダー100重量部に対して、導電性粉末100〜500重量部、有機質導電性粉末の場合には、バインダー100重量部に対して、導電性粉末0.1〜30重量部)ため、電気抵抗値の低い透明導電膜は得られない。
【0010】
例えば、特開平8−199096号公報には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粉末、溶媒、カップリング剤、金属の有機酸塩もしくは無機酸塩からなる、バインダーを含まない導電膜形成用塗料をガラス板に塗布し、300℃以上の温度で焼成する方法が開示されている。この方法では、バインダーを用いていないので、導電膜の電気抵抗値は低くなる。しかし、300℃以上の温度での焼成工程を行う必要があるため、樹脂フィルムのような支持体上に導電膜を形成することは困難である。すなわち、樹脂フィルムは高温によって、溶融したり、炭化したり、燃焼してしまう。樹脂フィルムの種類によるが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでは130℃の温度が限界であろう。
【0011】
塗布法以外のものとしては、特開平6−13785号公報に、導電性物質(金属又は合金)粉体より構成された骨格構造の空隙の少なくとも一部、好ましくは空隙の全部に樹脂が充填された粉体圧縮層と、その下側の樹脂層とからなる導電性皮膜が開示されている。その製法について、板材に皮膜を形成する場合を例にとり説明する。同号公報によれば、まず、樹脂、粉体物質(金属又は合金)及び被処理部材である板材を皮膜形成媒体(直径数mmのスチールボール)とともに容器内で振動又は攪拌すると、被処理部材表面に樹脂層が形成される。続いて、粉体物質がこの樹脂層の粘着力により樹脂層に捕捉・固定される。更に振動又は攪拌を受けている皮膜形成媒体が、振動又は攪拌を受けている粉体物質に打撃力を与え、粉体圧縮層が作られる。粉体圧縮層の固定効果を得るために、かなりの量の樹脂が必要とされる。また、製法は塗布法に比べ、煩雑である。
【0012】
塗布法以外のものとしては、特開平9−107195号公報に、導電性短繊維をPVCなどのフィルム上にふりかけて堆積させ、これを加圧処理して、導電性繊維−樹脂一体化層を形成する方法が開示されている。導電性短繊維とは、ポリエチレンテレフタレートなどの短繊維にニッケルメッキなどを被着処理したものである。加圧操作は、樹脂マトリックス層が熱可塑性を示す温度条件下で行うことが好ましく、175℃、20kg/cm2 という高温・低圧条件が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このような背景から、大面積の機能性膜を容易に形成しやすく、装置が簡便で生産性が高く、低コストで機能性膜を製造できるという塗布法の利点を生かしつつ、電気抵抗が低い導電膜など、高性能な機能性膜が得られる方法の開発が望まれる。
【0014】
そこで、本発明は、生産性が高く、製造の際に高温の加熱操作を必要とせず、しかも高性能な機能性膜を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の構成により達成される。
(1) 機能性微粒子を含有する微粒子含有層を含み、前記微粒子含有層が溶剤を10〜1500g/m3含有する機能性膜であって、機能性微粒子を溶剤に分散した機能性塗料を塗布、乾燥して、微粒子含有塗膜を形成し、前記微粒子含有塗膜を圧縮して、微粒子含有層を形成し、前記機能性微粒子が導電性微粒子であり、前記微粒子含有層が、樹脂の含有量が前記導電性微粒子の体積を100としたとき、25体積%未満であり、焼成工程を経ることなく、形成される導電膜としての機能を有する機能性膜。
(2) 前記支持体が樹脂である上記(1)に記載の機能性膜。
(3) 前記導電性微粒子が、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から選択される導電性無機微粒子である上記(1)または(2)に記載の機能性膜。
【0016】
従来、塗布法において、バインダー樹脂を大量に用いなければ機能性膜を成膜できず、あるいは、バインダー樹脂を用いない場合には、機能性物質を高温で焼結させなければ機能性膜が得られないと考えられていた。
【0017】
ところが、本発明者は鋭意検討した結果、驚くべきことに、大量のバインダー樹脂を用いることなく、かつ高温で焼成することもなく、機能性微粒子を含有する塗膜を圧縮するだけで機能性膜が形成できることを見いだした。
【0018】
しかも、圧縮により得られる機能性膜は、十分に高い機械的強度を有し、かつ、電気抵抗が低いなどの高い機能を有する。
【0019】
また、本発明の機能性膜は、微粒子含有層中の溶剤含有量が少ない。したがって、微粒子含有塗膜を圧縮して微粒子含有層を形成する際に、ロール等の圧縮手段への塗膜の付着が生じにくく、その結果、高品質の微粒子含有層が得られると共に、圧縮手段のクリーニングなどメンテナンスの手間が軽減して生産性が高くなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明では、十分に高い機械的強度を有し、かつ、高機能を有する機能性膜が、大量のバインダー樹脂を用いることなく、かつ高温で焼成することもなく得られる。
【0021】
本発明の機能性膜は、機能性微粒子を含有する微粒子含有層を有する。この微粒子含有層は、機能性微粒子を溶剤に分散させて機能性塗料を調製し、これを塗布し、乾燥した後、圧縮することにより形成される。
【0022】
本発明の機能性膜の特徴として、膜中の溶剤含有量が10〜1500g/m3、好ましくは100〜1200g/m3であることが挙げられる。本発明の機能性膜は、このように残留溶剤量が少ない。そのため、塗膜を圧縮して機能性膜を製造する際に、ロール等の圧縮手段への塗膜の付着が生じにくいという利点がある。また、そのため、膜強度が高くなるほか、基体への付着強度も高くなる。なお、微粒子含有層を形成する際には、機能性微粒子を溶剤に分散した機能性塗料を用いるため、層中の溶剤量をゼロにすることはできず、上記程度の溶剤は残留する。
【0023】
本発明の機能性膜は、少なくとも圧縮時に、バインダーとしての樹脂を全く含有しないか、または、バインダーとして機能としない程度の樹脂しか含有しないため、本発明を例えば導電膜に適用すれば、その導電膜の抵抗値を極めて低くすることができる。
【0024】
本発明において、機能性膜が有する機能は特に限定されない。本発明の機能性膜には、例えば、導電膜、磁性膜、強磁性膜、誘電体膜、強誘電体膜、エレクトロクロミック膜、エレクトロルミネッセンス膜、絶縁膜、光吸収膜、光選択吸収膜、反射膜、反射防止膜、触媒膜、光触媒膜等の各種の機能を有する膜が包含される。
【0025】
微粒子含有層が含有する機能性微粒子は、目的とする機能に応じて、無機粒子および/または有機粒子から適宜選択すればよく、特に限定されないが、凝集力を有する無機の微粒子が好ましい。本発明ではいずれの機能性微粒子を用いた場合でも、十分な機械的強度を有する機能性膜が得られると共に、バインダー樹脂を大量に用いていた従来の塗布法におけるバインダー樹脂による弊害を解消することができる。その結果、目的とする機能がより向上する。
【0026】
透明導電膜の製造に用いる導電性微粒子としては、導電膜の透明性を大きく損なうものでなければ特に限定されることなく、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の導電性無機微粒子が用いられる。また、ATO、ITO等の無機材料を硫酸バリウム等の透明性を有する微粒子の表面にコーティングしたものを用いることもできる。これらのうちでは、より優れた導電性が得られる点でITOが好ましい。これらのほか、有機質の導電性微粒子を用いてもよい。有機質の導電性微粒子としては、例えば、金属材料を樹脂微粒子表面にコーティングしたもの等が挙げられる。本発明の適用によって、優れた導電性が得られる。
【0027】
なお、本発明において、透明とは可視光を透過することを意味する。光の散乱度合いについては、導電膜の用途により要求されるレベルが異なる。本発明では、一般に半透明といわれるような散乱のあるものも含まれる。
【0028】
強磁性膜の製造においては、γ−Fe2 O3 、Fe3 O4 、Co−FeOx 、Baフェライト等の酸化鉄系磁性粉末や、α−Fe、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Co−Ni、Co、Co−Ni等の強磁性金属元素を主成分とする強磁性合金粉末等が用いられる。本発明の適用によって、磁性塗膜の飽和磁束密度が向上する。
【0029】
誘電体膜や強誘電体膜の製造においては、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)、ジルコン酸鉛系、ランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛系(PLZT)、ケイ酸マグネシウム系、鉛含有ペロブスカイト化合物等の誘電体ないしは強誘電体の微粒子が用いられる。本発明の適用によって、誘電体特性ないしは強誘電体特性の向上が得られる。
【0030】
各種機能を発現する金属酸化物膜の製造においては、酸化鉄(Fe2 O3 )、酸化ケイ素(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al2 O3 )、二酸化チタン(TiO2 )、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タングステン(WO3 )等の金属酸化物の微粒子が用いられる。本製造方法の適用によって、膜における金属酸化物の充填度が上がるため、各機能が向上する。例えば、触媒を担持させたSiO2 、Al2 O3 を用いた場合には、実用強度を有する多孔質触媒膜が得られる。TiO2 を用いた場合には、光触媒機能の向上が得られる。また、WO3 を用いた場合には、エレクトロクロミック表示素子での発色作用の向上が得られる。
【0031】
また、エレクトロルミネッセンス膜の製造においては、硫化亜鉛(ZnS)微粒子が用いられる。本発明の適用によって、塗布法による安価なエレクトロルミネッセンス膜の製造を行うことができる。
【0032】
これら機能性微粒子の粒子径rは、機能性膜の用途に応じて、例えば必要とされる散乱の度合い等により異なり、また、粒子の形状により一概には言えないが、一般に平均一次粒径r=10μm以下であり、1.0μm以下が好ましく、5nm〜100nmがより好ましい。
【0033】
微粒子含有層は、少なくとも圧縮時には樹脂を含まないことが好ましい。すなわち、樹脂量=0であることが好ましい。例えば導電膜においては、樹脂を用いなければ、樹脂によって導電性微粒子同士の接触が阻害されることがない。したがって、導電性微粒子相互間の導電性が確保され、得られる導電膜の電気抵抗値は低くなる。また、WO3 微粒子やTiO2 微粒子などを用いた微粒子含有層においても、樹脂を用いなければ、樹脂によって各微粒子同士の接触が阻害されることがないため、各機能の向上が図られる。また、Al2 O3 微粒子などを用いた触媒膜においては、樹脂を用いなければ、樹脂によって触媒機能を有する微粒子の表面が覆われることがない。このため、触媒としての機能の向上が図られる。触媒膜においては、膜の内部に空隙が多い方が、触媒としての活性点が多くなるので、この観点からもなるべく樹脂を用いないことが好ましい。
【0034】
ただし、本発明の機能性膜は、導電性等の機能を大きく損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能である。その量は、従来技術におけるバインダー樹脂としての使用量に比べると少ない。例えば、機能性膜中における樹脂の含有量の上限は、バインダーとして機能しない程度の量であり、具体的には、前記導電性微粒子の体積を100としたとき、好ましくは25未満、より好ましくは20未満、さらに好ましくは3.7未満の体積である。
【0035】
なお、電気抵抗などの機能の点からは、機能性膜は樹脂を含有しないことが好ましいが、樹脂には、機能性膜の光散乱を少なくするという効果もある。したがって、ヘイズの向上と機能向上との双方を考慮し、必要に応じて前記体積比の範囲内で樹脂を適宜添加すればよい。
【0036】
機能性膜が含有し得る樹脂の種類は特に限定されず、熱可塑性樹脂またはゴム弾性を有するポリマーを、1種または2種以上を混合して用いることができる。樹脂の例としては、フッ素系ポリマー、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0037】
フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−三フッ化エチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。また主鎖の水素をアルキル基で置換した含フッ素系ポリマーも用いることができる。樹脂の密度が大きいものほど、大きな重量を用いても、体積がより小さくなるため好ましい。
【0038】
本発明において、機能性膜を得るには、機能性膜の目的に応じて、上記各種の機能性微粒子から選ばれる機能性微粒子を溶剤に分散したものを機能性塗料として用いる。この機能性塗料を支持体上に塗布して乾燥することにより、微粒子含有塗膜を形成する。次いで、この微粒子含有塗膜を圧縮し、機能性微粒子の圧縮層、すなわち微粒子含有層を得る。
【0039】
機能性微粒子を分散する溶剤としては、特に限定されることなく、既知の各種溶剤を使用することができる。例えば、溶剤として、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、シクロヘキサノン等を挙げることができる。これらのなかでも、極性を有する溶剤が好ましく、特にメタノール、エタノール等のアルコール類、NMP等のアミド類のような水と親和性のあるものは、分散剤を使用しなくても分散性が良好であり好適である。これら溶剤は、単独でも2種以上の混合したものでも使用することができる。また、溶剤の種類により、分散剤を使用することもできる。
【0040】
また、溶剤として、水も使用可能である。水を用いる場合には、支持体が親水性のものである必要がある。樹脂フィルムは通常疎水性であるため水をはじきやすく、均一な膜が得られにくい。支持体が樹脂フィルムの場合には、水にアルコールを混合するか、あるいは支持体の表面を親水性にする必要がある。
【0041】
用いる溶剤の量は、特に制限されず、前記微粒子の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、前記微粒子100重量部に対して、溶剤100〜100,000重量部程度である。前記微粒子と溶剤の種類に応じて適宜選択するとよい。
【0042】
前記微粒子の溶剤中への分散は、公知の分散手法により行うとよい。例えば、サンドグラインダーミル法等により分散することができる。分散に際しては、微粒子の凝集をほぐすために、ジルコニアビーズ等のメディアを用いることも好ましい。また、分散の際に、ゴミ等の不純物の混入が起こらないように注意する。
【0043】
前記微粒子の分散液には、導電性や触媒作用などの各機能に要求される性能を満たす範囲内で、各種の添加剤を配合してもよい。例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、分散剤等の添加剤である。
【0044】
支持体としては、特に限定されることなく、樹脂フィルム、ガラス、セラミックス、金属、布、紙等の各種のものを用いることができる。しかしながら、ガラス、セラミックス等では、後工程の圧縮の際に割れる可能性が高いので、その点を考慮する必要がある。また、支持体の形状は、フィルム状の他、箔状、メッシュ状、織物等が使用可能である。
【0045】
支持体としては、圧縮工程の圧縮力を大きくしても割れることがない樹脂フィルムが好適である。樹脂フィルムは、次に述べるように、微粒子含有層の該フィルムへの密着性が良い点でも好ましく、また軽量化を求められている用途にも好適である。本発明では、微粒子含有層を形成するに際し、高温での加圧工程や、焼成工程が不要なので、樹脂フィルムを支持体として用いることができる。
【0046】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。
【0047】
PETフィルムのような樹脂フィルムでは、乾燥後の圧縮工程の際に、PETフィルムに接している機能性微粒子がPETフィルムに埋め込まれるような感じとなるので、微粒子含有層がPETフィルムに良く密着される。
【0048】
前記機能性微粒子の分散液を前記支持体上に塗布して乾燥し、微粒子含有層を形成する。前記支持体上への前記微粒子分散液の塗布は、特に限定されることなく、公知の方法により行うことができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョンノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。また、噴霧、吹き付けなどにより、支持体上へ分散液を付着させることも可能である。
【0049】
乾燥温度は分散に用いた溶剤の種類によるが、20〜150℃程度が好ましい。20℃未満では、微粒子含有層中の残留溶剤量が本発明で限定する範囲を越えやすくなり、150℃を越えると樹脂フィルム支持体が変形する。なお、乾燥の際に、不純物が前記微粒子の表面に付着しないように注意する。
【0050】
乾燥後の微粒子含有塗膜の厚さは、次工程での圧縮条件や機能性膜の用途に応じて適宜決定すればよいが、0.1〜10μm程度とすればよい。
【0051】
このように、機能性微粒子を液に分散させて塗布し、乾燥すると、均一な膜を作製しやすい。前記微粒子の分散液を塗布して乾燥させると、分散液中にバインダーが存在しなくても微粒子は膜を形成できる。バインダーが存在しなくても膜となる理由は必ずしも明確ではないが、乾燥させて液が少なくなってくると毛管力のため、微粒子が互いに集まってくる。さらに微粒子であるということは比表面積が大きく凝集力も強いので、膜となるのではないかと考えている。しかし、この段階での膜の強度は弱い。また、導電膜においては電気抵抗値が高く、そのばらつきも大きい。
【0052】
次に、微粒子含有塗膜を圧縮し、圧縮膜を得る。微粒子は元々凝集しやすい性質があるので、圧縮することで強固な膜となる。すなわち、圧縮することにより機能性微粒子相互間の接触点が増え接触面が増加し、膜強度が上がる。
【0053】
導電膜においては、塗膜強度が上がると共に、電気抵抗が低下する。触媒膜においては、塗膜強度が上がると共に、樹脂を用いないか又は樹脂量が少ないので多孔質膜となる。そのため、より高い触媒機能が得られる。他の機能性膜においても、微粒子同士がつながった高い強度の膜とすることができると共に、樹脂を含有しないか又は樹脂含有量が少ないので、単位体積における微粒子の充填量が多くなる。そのため、より高いそれぞれの機能が得られる。
【0054】
圧縮は44N/mm2 以上の圧縮力で行うことが好ましい。44N/mm2 未満の低圧であれば、微粒子含有層を十分に圧縮することができず、導電性に優れた導電膜など、高性能な機能性膜が得られにくい。135N/mm2 以上の圧縮力がより好ましく、180N/mm2 以上の圧縮力が更に好ましい。圧縮力が高いほど、塗膜強度が向上し、支持体との密着性が向上し、導電膜においては、より導電性に優れた膜が得られる。圧縮力を高くするほど装置の耐圧を上げなくてはならないので、一般には1000N/mm2 までの圧縮力が適当である。また、圧縮を常温(15〜40℃)付近の温度で行うことが好ましい。常温付近の温度において圧縮を行えることは、本発明の利点の一つである。
【0055】
圧縮は、特に限定されることなく、シートプレス、ロールプレス等により行うことができるが、ロールプレス機を用いて行うことが好ましい。ロールプレスは、ロールとロールの間に圧縮すべきフィルムを挟んで圧縮し、ロールを回転させる方法である。ロールプレスは均一に高圧がかけられ、また、ロールトゥーロールで生産できることから生産性が上がり好適である。
【0056】
ロールプレス機のロール温度は常温が好ましい。加温した雰囲気やロールを加温した圧縮(ホットプレス)では、圧縮圧力を強くすると樹脂フィルムが伸びてしまうなどの不具合が生じる。加温下で支持体の樹脂フィルムが伸びないようにするため、圧縮圧力を弱くすると、塗膜の機械的強度が低下し、導電膜においては電気抵抗が上昇する。微粒子表面の水分の付着をできるだけ少なくしたいというような理由がある場合に、雰囲気の相対湿度を下げるために、加温した雰囲気としてもよいが、温度範囲はフィルムが容易に伸びてしまわない範囲内である。一般にはガラス転移温度(二次転移温度)以下の温度範囲となる。湿度の変動を考慮して、要求される湿度になる温度より少し高めの温度にすればよい。ロールプレス機で連続圧縮した場合に、発熱によりロール温度が上昇しないように温度調節することも好ましい。
【0057】
なお、樹脂フィルムのガラス転移温度は、動的粘弾性を測定することにより求められ、主分散の力学的損失がピークとなる温度をさす。例えばPETフィルムでは、そのガラス転移温度はおよそ110℃前後である。
【0058】
支持体が金属製であれば、この金属が溶融しない温度範囲まで、加温した雰囲気にすることも可能である。また、金属やセラミックなどある程度の耐熱性を有する支持体であれば高温処理を行ってもよい。
【0059】
ロールプレス機のロールは、強い圧力がかけられることから金属ロールが好適である。また、ロール表面が柔らいと、圧縮時に微粒子がロールに転写されることがあるので、ロール表面を硬質膜で処理することが好ましい。
【0060】
このようにして、機能性微粒子を含有する圧縮層が形成される。この圧縮層の膜厚は、用途にもよるが、0.1〜10μm程度とすればよい。また、10μm程度の厚い圧縮層を得るために、微粒子の分散液の塗布、乾燥、圧縮の一連の操作を繰り返し行っても良い。さらに、本発明において、支持体の両面に機能性膜を形成することも勿論可能である。このようにして得られる機能性膜は、優れた導電性や触媒作用などの各機能性を示し、バインダー樹脂を用いないか又はバインダーとしては機能しない程の少量の樹脂を用いて作製したにもかかわらず、実用上十分な膜強度を有し、支持体との密着性にも優れる。
【0061】
本発明の機能性膜は、1層または2層以上の微粒子含有層だけから構成されてもよく、微粒子含有層と他の層とが積層されたものであってもよい。図1に示す構成例は、支持体1上に微粒子含有層2を形成したものである。また、図2に示す構成例は、微粒子含有層2a,2bを2層積層したものである。
【0062】
このような構成の機能性膜は、特に図1のような構成のものでは、タッチパネル、面状発熱体等の導電材料や、PDP用電磁波遮蔽等の電磁波遮蔽材料に応用することができ、図2の積層構成のものでは、無機EL用電極、太陽電池用電極等の導電材料などに応用することができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
サンプル No. 1
平均一次粒径が20nmのATO微粒子(石原産業(株)製SN-100P)100重量部にエタノール300重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。得られた塗液を50μm厚のPETフィルム上に、バーコーターを用いて塗布し、60℃の温風を1分間送って乾燥することにより塗膜を形成した。この塗膜の厚さは1.7μmであった。このようにして塗膜を形成したフィルムを、以降において圧縮前フィルムと称する。
【0065】
まず、圧縮圧力の確認のための予備実験を行った。
一対の直径140mmの金属ロール(ロール表面にハードクロムめっき処理が施されたもの)を備えるロールプレス機を用いて、ロールを回転させず且つ前記ロールの加熱を行わないで、室温(23℃)にて前記圧縮前フィルムを挟み圧縮した。この時、フィルム幅方向の単位長さ当たりの圧力は750N/mmであった。次に、圧力を解放し、圧縮された部分のフィルム長手方向の長さを調べたら1.9mmであった。この結果から、単位面積当たりに395N/mm2 の圧力で圧縮したことになる。
【0066】
次に、予備実験に使用したものと同様の前記圧縮前フィルムを金属ロール間に挟み、前記条件で圧縮しながら4m/分の送り速度となるようにロールを回転させることにより、圧縮されたATO含有塗膜を機能性膜として有するサンプルNo.1を得た。この機能性膜の厚さは、0.9μmであった。
【0067】
この機能性膜の残留溶剤量をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、552g/m3であった。なお、圧縮に用いたロール表面にATO微粒子の付着は認められなかった。
【0068】
また、この機能性膜の電気抵抗は72kΩであった。90度ピール試験の結果から、塗膜強度は6N/12mm以上であった。なお、電気抵抗の測定および90度ピール試験は、以下に説明する手順で行った。
【0069】
(電気抵抗)
導電膜が形成されたフィルムを50mm×50mmの大きさに切断した。対角の位置にある角の2点にテスターをあてて電気抵抗を測定した。
【0070】
(90度ピール試験)
図3を参照して説明する。
試験サンプル11における支持体フィルム11bの機能性膜11aが形成された面とは反対側の面に、両面テープ12を貼った。これを大きさ25mm×100mmに切り出した。次に、両面テープ12により、試験サンプル11をステンレス板13に貼った。そして、試験サンプル11が剥がれないように、サンプル11の両端部(25mm辺)に固定用セロハンテープ14を貼った。(図3(a))。
【0071】
試験サンプル11の機能性膜11a面にセロハンテープ(幅12mm、日東電工製、No. 29)15をサンプル11の長辺と平行になるように貼った。セロハンテープ15とサンプル11との貼付の長さは50mmであった。セロハンテープ15の貼付されていない端を張力計16に取り付け、セロハンテープ15の貼付面と非貼付面15aとの成す角が90度になるようにセットした。セロハンテープ15を、100mm/分の速度で引っ張って剥がした。このとき、セロハンテープ15を剥がす速度と試験サンプル11を貼り付けたステンレス板13の移動速度とが同じとなるように制御することにより、セロハンテープ15の非貼付面15aと試験サンプル11面とが常に90度となるようにした。張力計16にて剥がすときに要した力Fを計測した。(図3(b))。
【0072】
試験後、セロハンテープが剥がされた機能性膜の表面と、剥がしたセロハンテープの表面とを調べた。両方の表面に粘着剤がある場合は、機能性膜が破壊されたのではなく、セロハンテープの粘着剤層が破壊されたこと、すなわち、粘着剤の強度が剥がすときに要した力Fの値であったということになり、機能性膜の強度はその値F以上となる。
【0073】
本試験においては、粘着剤の強度上限が6N/12mmであるため、上記のように両方の表面に粘着剤がある場合は、機能性膜の強度が6N/12mm以上であることを表す。これより小さい値の場合は、機能性膜表面に粘着剤がなくセロハンテープ表面に機能性膜が一部付着しており、その値において、機能性膜中で破壊が生じたことを表す。
【0074】
サンプル No. 2
エタノール300重量部に替えて、エタノール200重量部およびシクロヘキサノン100重量部からなる混合溶剤を用いたほかはサンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.2を得た。このサンプルについてサンプルNo.1と同様な測定を行ったところ、機能性膜の残留溶剤量は1420g/m3であった。なお、圧縮に用いたロール表面にATO微粒子の付着は認められなかった。また、この機能性膜の電気抵抗は71kΩであった。そして、90度ピール試験の結果から、塗膜強度は6N/12mm以上であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明の機能性膜における微粒子含有層は、塗布法を利用して形成されるにもかかわらず、溶剤含有量が少ない。したがって、微粒子含有塗膜を圧縮して微粒子含有層を形成する際に、ロール等の圧縮手段への塗膜の付着が生じにくく、その結果、高品質の微粒子含有層が得られると共に、圧縮手段のクリーニングなどメンテナンスの手間が軽減して生産性が高くなる。また、溶剤含有量が少ないため、膜強度が高くなるほか、基体への付着強度も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機能性膜の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の機能性膜の構成例を示す概略断面図である。
【図3】実施例における90度ピール試験を説明するための図である。
【符号の説明】
1 支持体
2、2a、2b 微粒子含有層
11 導電膜が形成された試験サンプル
11a 導電膜
11b 支持体フィルム
12 両面テープ
13 ステンレス板
14 固定用セロハンテープ
15 セロハンテープ
15a セロハンテープ非貼付面
16 張力計
Claims (3)
- 機能性微粒子を含有する微粒子含有層を含み、前記微粒子含有層が溶剤を10〜1500g/m3含有する機能性膜であって、機能性微粒子を溶剤に分散した機能性塗料を塗布、乾燥して、微粒子含有塗膜を形成し、前記微粒子含有塗膜を圧縮して、微粒子含有層を形成し、
前記機能性微粒子が導電性微粒子であり、
前記微粒子含有層が、樹脂の含有量が前記導電性微粒子の体積を100としたとき、25体積%未満であり、
焼成工程を経ることなく、形成される
導電膜としての機能を有する機能性膜。 - 前記支持体が樹脂である請求項1に記載の機能性膜。
- 前記導電性微粒子が、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)から選択される導電性無機微粒子である請求項1または2に記載の機能性膜。
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