JP4487758B2 - 波長変換装置及び波長変換方法 - Google Patents

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Description

この発明は、波長多重光通信等に利用される波長変換装置及び波長変換方法に関するものである。
近年、インターネットの普及等により通信需要が急速に増大している。それに対応して光ファイバ等を用いた高速でかつ大容量の光ネットワークが整備されつつある。このような光ネットワークでは、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方法が注目されている。WDM光通信ネットワークを実現するためには、波長変換装置が必要とされる。例えば、光クロスコネクトノードに波長変換装置を採用すると、チャンネル間の衝突の回避や、波長の再利用が可能となる等の利点があるからである。
波長変換には様々な方法があるが、非線形光学結晶を用いて、信号光とポンプ光との差周波発生を発現させ、この結果得られる差周波光を変換光として出力する方法が通例となっている。一般的に、異なる波長間では非線形光学結晶の屈折率が異なっているため、ポンプ光と、信号光との間に伝播定数の差が生じる。この伝播定数の差に起因する位相差が、ポンプ光、及び信号光の伝播距離と共に変化するので、差周波発生の変換効率を高めることは困難である。
差周波発生の変換効率を高めるために、波長変換装置を構成する波長変換素子として、周期的ドメイン反転構造が形成された光導波路によって、擬似位相整合(QPM:Quasi−Phase Matching)を実現して波長変換を行う、擬似位相整合型波長変換素子(以下、QPM型波長変換素子と称することもある。)が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
栖原敏明著「擬似位相整合導波路を用いた非線形光学波長変換・信号処理デバイス」応用物理第72巻第11号、pp.1381―1386、2003年
上述の従来例の波長変換装置では、信号光に比べて短波長の光をポンプ光として用いて周波数ωの信号光と、周波数ωのポンプ光との非線形光学効果により、周波数ωの変換光を発生する。例えば、周波数ωに対応する、信号光の波長λを1.55μmとし、周波数ωに対応する、ポンプ光の波長λを0.77μmとすると、変換光は、ω+ω=ωを満たす、周波数ωの差周波光となり、1/λ+1/λ=1/λの式から、変換光の波長λは、1.53μmとなる。
しかしながら、非線形光学係数が大きいことなどから波長変換素子としてよく用いられる、強誘電体結晶であるLiNbOは、ポンプ光として短波長の光、特に0.8μmよりも短い光を用いると、光損傷の影響を受けやすいという欠点を有している。
また、ポンプ光、信号光、及び変換光のそれぞれの波数k、k、及びk間の波数差をΔk(=kp−ks−kc)とすると、波長変換素子を伝播した各光の位相差は、ΔkLとなる。ここで、Lは波長変換素子の素子長である。従って、伝播中に位相差が生じないためにはΔk=0とする必要がある。
nを周波数ωでの屈折率、cを光速度としたときに、波数kは、k=nω/cで表される。この関係を用いると、Δk=(nω−nω−nω)/cが得られる。屈折率が光の周波数に依存して変化しないならば、ω+ω=ωであるので、常に、Δk=0となる。しかし、実際には、屈折率は周波数依存性を有しており、Δkは0とはならない。これを補償するために、周期的ドメイン反転構造が形成された波長変換素子であるQPM型波長変換素子が使用される。この周期的ドメイン反転構造の周期をΛとすると、波数間の関係は、Δk=k−k−k−2π/Λとなる。ここで、ポンプ光の特定の波長λp0に対して、kp0−ks0−kc0=2π/ΛとなるようにΛを設定すると、この特定のポンプ光の波長λp0では、Δk=0となり、大きな変換率が得られる。
ここで、ポンプ光の波長λが特定の波長λp0からずれると、Δk=0とはならず、Δk=kp0−ks0−kc0−2π/Λ+(dk/dω)Δω−(dk/dω)Δω−(dk/dω)Δωとなる。なお、Δω、Δω、及びΔωは、それぞれポンプ光、信号光、及び変換光のQPM条件からの周波数ずれを示している。QPM条件では、kp0−ks0−kc0=2π/Λとなるので、Δk=(dk/dω)Δω−(dk/dω)Δω−(dk/dω)Δωである。光の群速度をVとすると、dk/dω=1/Vであるので、位相差は光周波数間の群速度差に対応付けられていることがわかる。波長変換では、ω=ω+ωの関係があるため、Δω=Δω+Δωとなる。従って、Δk=(1/Vgp−1/Vgc)Δω+(1/Vgc−1/Vgs)Δωとなる。ここで、Vgp、Vgs、及びVgcはそれぞれ、ポンプ光、信号光、及び変換光の群速度を示す。従って、ポンプ光と変換光の群速度差、及び、変換光と信号光の群速度差を小さくすれば、それだけ広い周波数範囲、すなわち、広い波長範囲で位相差を小さく抑えることが可能となり、広帯域での変換効率が高くなる。
群速度の逆数1/Vは、1/V=dk/dω=d(nω/c)/dω=(n+ωdn/dω)/cで表されるので、屈折率の周波数に依存することになる。ここで、屈折率は短波長側で大きくなり、従って、短波長側では群速度の逆数が大きくなる。このことから、波長λが1.55μm付近の変換光に対して、ポンプ光の波長λが0.77μm程度の場合、ポンプ光と変換光の間の群速度差が大きくなり、その結果、変換効率を低下させてしまう。
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、特にポンプ光による光損傷を低減する波長変換装置及び波長変換方法を提供することにある。また、この発明の他の目的として、ポンプ光の波長と、変換光の波長との群速度差を小さくすることで、広帯域での変換効率を高くすることができる波長変換装置及び波長変換方法を提供することにある。
上述した目的を達成するために、この発明の波長変換装置は、LiNbO 基板に周期的ドメイン反転構造を作りつけた波長変換装置であって、第1の波長変換部、及び第2の波長変換部を備えている。第1の波長変換部は、波長がλの第1のポンプ光と波長がλの信号光との非線形光学効果として差周波発生を発現させることにより、波長がλの中間光を生成する。第2の波長変換部は、波長がλの第2のポンプ光と中間光との非線形光学効果として和周波発生を発現させることにより、波長がλの変換光を生成する。ここで、信号光及び変換光の波長が、1.55μm帯の波長であるとき、第1のポンプ光の波長λ が、2.25μm以上5μm以下である。
また、この発明の波長変換方法は、LiNbO 基板に周期的ドメイン反転構造を作りつけた波長変換装置で行われる波長変換方法であって、以下の過程を備えている。先ず、波長がλの第1のポンプ光、及び波長がλの信号光から、非線形光学効果として差周波発生を発現させることにより波長がλの中間光を生成する。次に、波長がλの第2のポンプ光、及び中間光から、非線形光学効果として和周波発生を発現させることにより波長がλの変換光を生成する。ここで、波長がλ の変換光を生成するにあたり、第1のポンプ光の波長λ を、2.25μm以上5.0μm以下とするのが良い。
この発明の波長変換装置及び波長変換方法によれば、第1のポンプ光と信号光との非線形光学効果により、中間光を出力した後、第2のポンプ光と中間光との非線形光学効果により、波長がλの変換光を出力する。
第1及び第2のポンプ光として使用する波長域を長波、例えば1μm程度又はそれ以上に設定することが可能となり、LiNbOにおいて光損傷の影響を低減することが可能となる。
さらに、第1及び第2のポンプ光の波長を長波長にすることにより、第1及び第2のポンプ光の波長と変換光の波長との群速度差を小さくできるので、広帯域での変換効率を高めることができる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の構成および配置関係についてはこの発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成の組成(材質)および数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されない。
図1を参照して、この発明の波長変換装置につき説明する。図1は、波長変換装置を説明するための概略的な模式図である。波長変換装置10は、第1の波長変換部30及び第2の波長変換部50を備えている。第1の波長変換部30は、第1の合波器32、第1の波長変換素子40、及び第1の波長フィルタ34を備えている。また、第2の波長変換部50は、第2の合波器52、第2の波長変換素子60、及び第2の波長フィルタ54を備えている。
波長変換装置10には、波長がλの信号光(図中、矢印101で示す。)、波長がλの第1のポンプ光(図中、矢印121で示す。)、及び、波長がλの第2のポンプ光(図中、矢印123で示す。)が入力される。
信号光101及び第1のポンプ光121は、第1の波長変換部30の第1の合波器32で合波され、第1の入力光(図中、矢印103で示す。)として、第1の波長変換素子40に送られる。第1の合波器32として、例えば、任意好適な周知の光カプラを用いることができる。
第1の入力光103に含まれる、信号光101と第1のポンプ光121とは、第1の波長変換素子40で、非線形光学効果により中間光を発生する。
信号光、第1のポンプ光、及び中間光が合波された第1の出力光(図中、矢印105で示す。)は、第2の波長変換部50へ送られる。なお、第1の波長変換部30の出力部分に、波長フィルタ34を備えて、第1の出力光105に含まれる信号光101及び第1のポンプ光121を遮断し、中間光(図中、矢印107で示す。)のみを通過させると、不要な光信号が後段の第2の波長変換部50に入力されないので好適である。
中間光107及び第2のポンプ光123は、第2の波長変換部50に備えられる第2の合波器52で合波され、第2の入力光(図中、矢印113で示す。)として、第2の波長変換素子60に送られる。第2の合波器52として、例えば、任意好適な周知の光カプラを用いることができる。
第2の入力光113に含まれる、中間光107と第2のポンプ光123とは、第2の波長変換素子60で非線形光学効果により変換光を発生し、第2の入力光113、中間光107、及び第2のポンプ光123が合波された第2の出力光(図中、矢印115で示す。)を出力する。なお、第2の波長変換部50の出力部分に、第2の波長フィルタ54を備えて、第2の出力光115に含まれる中間光107及び第2のポンプ光123を遮断し、変換光117のみを通過させると、不要な光信号が出力されないので好適である。
第1の波長変換素子40は、光導波路42に周期的ドメイン反転構造45を作りつけたQPM型波長変換素子である。周期的ドメイン反転構造45は、第1ドメイン46と第2ドメイン48とから構成されている。第1ドメイン46と第2ドメイン48とは、この波長変換素子40の素材である強誘電体結晶の自発分極の向きが互いに180度の関係となっている。波長変換素子40を構成する素材には、例えばzカットされたLiNbO基板が使われる。以後の説明において、特に断らない限り、強誘電体結晶基板としてzカットされたLiNbO基板を対象として取り上げることとする。
zカットされたLiNbO基板は、その表面に直交する方向に自発分極の向きが揃えられているシングルドメイン結晶基板である。自発分極ベクトルの終端側の面を+z面、自発分極ベクトルの初端側の面を−z面と呼ぶこともある。
このLiNbO基板の+z面に周期的にドメインを反転させて、ドメイン反転領域(第2ドメイン)48を形成する。従って、周期的ドメイン反転構造45は、シングルドメイン結晶基板としての自発分極が保たれているドメイン(第1ドメイン)46と自発分極の方向が反転された第2ドメイン48とで構成される。すなわち、第1ドメイン46の自発分極の向きは、−z面から+z面に向かう方向であるのに対して、第2ドメイン48の自発分極の向きは、+z面から−z面に向かう方向である。
第1ドメイン46と第2ドメイン48とで形成される周期的ドメイン反転構造45の周期はΛである。第1ドメイン46の長さd1と第2ドメイン48の長さd2とを等しくとることによって、波長変換率を最大にすることができる。すなわち、d1=d2として、Λ=d1+d2とするのが好適である。
自発分極が反転している領域の形成は、zカットされたLiNbO基板の自発分極の方向を反転させる領域に、Tiを高温熱拡散するか或いは高電圧を印加することで行えることが知られている。Tiを高温熱拡散するには第2ドメイン48が形成される部分に、真空蒸着法等でTi薄膜を50nmの厚さに形成し、約1000℃で10時間程度熱拡散すれば良い。高電圧を印加して自発分極の方向を反転させるには、第2ドメイン48が形成される部分に電極を形成して高電圧を瞬間的に印加すれば良い。
続いて、zカットされたLiNbO基板に形成された周期的ドメイン反転構造45に交差するように光導波路42を形成する。光導波路42は、安息香酸を交換源としたH−Liイオン交換法(プロトン交換法とも呼ばれる。)によって形成できることが知られている。例えば、光導波路42を形成する領域のみを空けてその他の領域を金属マスクで覆った状態で、200℃の安息香酸中に2時間浸して、金属マスク及び安息香酸を除去し、350℃のAr雰囲気中で6時間アニール処理することで形成される。
なお、第2の波長変換素子の構造は、第1の波長変換素子の構造と同様なので、説明は省略する。
図2を参照して、波長λの第1のポンプ光、波長λの第2のポンプ光、及び波長λの信号光から波長λの変換光を発生する機構について、波長λが1.55μmであり、波長λが1.53μmである場合を例にとって説明する。図2は、波長変換方法を説明するための模式図である。
先ず、第1のポンプ光121aと信号光101との非線形光学効果により、波長λの中間光107が発生する。第1のポンプ光121a、信号光101、及び中間光107のそれぞれの光周波数をω、ω及びωとすると、ω=c/λ、ω=c/λ、及びω=c/λの関係がある。
第1のポンプ光121aの波長λが、信号光101の波長λよりも短い場合、すなわち、第1のポンプ光121aの周波数ωが、信号光101の周波数ωよりも大きい場合は、非線形光学効果として差周波発生を発現させ、ω=ω+ωを満たす周波数ωを有する差周波光が中間光107として生成される。
第1のポンプ光121aの波長λを0.98μmとすると、第1の波長変換部30では、ω=ω+ω、すなわち、1/λ=1/λ+1/λとなるので、中間光107の波長λは、2.66μmとなる。
次に、第2のポンプ光123aと中間光107との非線形光学効果により、波長λの変換光117が発生する。第2のポンプ光123aの波長λが、変換光117の波長λよりも短い場合、すなわち、第2のポンプ光123aの周波数ωが、変換光117の周波数ωよりも大きい場合は、非線形光学効果として差周波発生を発現させ、ω=ω+ωを満たす周波数ωを有する差周波光が変換光として生成される。第2のポンプ光123aの光周波数をωとすると、ω=c/λの関係がある。差周波発生では、ω=ω+ω、すなわち、1/λ=1/λ+1/λとなるので、第2のポンプ光123aの波長λを0.97μmとすると、変換光117の波長λは、1.53μmとなる(図2(A))。
第1のポンプ光及び第2のポンプ光の波長は上述の例に限られず選択可能である。
第1のポンプ光121bの波長λを1.18μmとすると、中間光107の波長λは5.0μmとなり、さらに、第2のポンプ光123bの波長λを1.17μmとすると、変換光117の波長λは1.53μmとなる(図2(B))。
第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λよりも長い場合、すなわち、第1のポンプ光の周波数ωが、信号光の周波数ωよりも小さい場合は、非線形光学効果として差周波発生を発現させ、ω=ω+ωを満たす周波数ωを有する差周波光が中間光として生成される。
第1のポンプ光121cの波長λを2.25μmとすると、第1の波長変換部30では、ω=ω+ω、すなわち、1/λ=1/λ+1/λとなるので、中間光107の波長λは、5.0μmとなる。
次に、第2のポンプ光123cと中間光107との非線形光学効果により、波長λの変換光117が発生する。第2のポンプ光123cの波長λが、変換光117の波長λよりも長い場合、すなわち、第2のポンプ光123cの周波数ωが、変換光117の周波数ωよりも小さい場合は、非線形光学効果として和周波発生を発現させ、ω=ω+ωを満たす周波数ωを有する和周波光が変換光117として生成される。和周波発生では、ω=ω+ω、すなわち、1/λ=1/λ+1/λとなるので、第2のポンプ光123cの波長λを2.20μmとすると、変換光の波長λは、1.53μmとなる(図2(C))。
同様に、第1のポンプ光121dの波長λを3.2μmとすると、中間光107の波長λは3.0μmとなり、さらに、第2のポンプ光123dの波長λを3.12μmとすると、変換光117の波長λは1.53μmとなる(図2(D))。
第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λよりも短い場合、すなわち、第1のポンプ光の周波数ωが、信号光の周波数ωよりも大きい場合は、中間光の周波数ωは、ω=ω+ω、及びω=ω+ωの関係を満たす。また、第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λよりも長い場合、すなわち、第1のポンプ光の周波数ωが、信号光の周波数ωよりも小さい場合は、中間光の周波数ωは、ω=ω+ω、及びω=ω+ωの関係を満たす。従って、いずれの場合もω−ω=ω−ωの関係が得られる。このことから、信号光から変換光への波長変換の大きさは、第1のポンプ光及び第2のポンプ光の周波数(又は波長)の差に依存して、第1のポンプ光及び第2のポンプ光の周波数(又は波長)の大きさには直接依存しないことが分かる。
通常、信号光の波長λsに対する、信号光の波長λと、変換光の波長λの差Δλ(例えば、Δλ=λ−λ)は小さく、例えば、λ=1.55μmのとき、Δλ=20〜30nm程度である。以下、第1のポンプ光、信号光、及び中間光について説明するが、以下の説明は、第2のポンプ光、変換光、及び中間光にも適用することができる。
図3を参照して第1のポンプ光の波長と中間光の波長の関係について説明する。図3(A)及び(B)は、第1のポンプ光の波長λと中間光の波長λの関係を示す図であって、横軸に、第1のポンプ光の波長λをとり、及び、縦軸に、中間光の波長λをとっている。第1の波長変換部30での波長変換では、ω=ω+ωの関係があるため、Δω=Δω+Δωとなる。従って、Δk=(1/Vgp−1/Vgm)Δω+(1/Vgm−1/Vgs)Δωとなる。なお、Δωは、中間光の周波数ずれを示しており、また、Vgmは中間光の群速度を示す。
第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λ(ここでは、1.55μm)より小さい場合、第1のポンプ光の波長λを大きくしていくと、中間光の波長λも大きくなる(図3(A))。従来の、第1のポンプ光の波長λ1が約0.77μmの時の結果を図3(A)中、×印で示す。なお、従来、第1のポンプ光の波長λが約0.77μmの時は、中間光の波長λが1.55μm程度となり、この中間光を、変換光として出力する。
また、第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λ(ここでは、1.55μm)より大きい場合、第1のポンプ光の波長λを小さくしていくと、中間光の波長λが大きくなる(図3(B))。
LiNbO結晶では、長波長側で光吸収があり、波長が4〜5μmではおよそ2〜3dBの減衰が起こる。従って、中間光の波長λが5μm以下、好適には4μm以下とするのが良い。なお、中間光の波長λが5μm以下となるのは、第1のポンプ光の波長λが1.18μm以下、又は2.25μm以上のときである。また、中間光の波長λが4μm以下となるのは、第1のポンプ光の波長λが1.1μm以下のとき、又は、2.6μm以上のときである。
図4を参照して第1のポンプ光の波長と、群速度差の関係について説明する。図4(A)及び(B)は、第1のポンプ光の波長λと群速度差ΔVの関係を示す図であって、横軸に、第1のポンプ光の波長λをとり、及び、縦軸に、群速度差ΔVをとっている。ここで、曲線I及びIIIは、第1のポンプ光と中間光の群速度差ΔV=1/Vgp−1/Vgmを示し、曲線II及びIVは、中間光と信号光の群速度差ΔV=1/Vgm−1/Vgsを示している。
ここで、第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λ(ここでは、1.55μm)より小さい場合、第1のポンプ光の波長λを大きくすると、第1のポンプ光と中間光の群速度差ΔV(=1/Vgp−1/Vgm)が小さくなり、第1のポンプ光の波長λが1.08(μm)の時に最小となる(曲線I)。例えば、第1のポンプ光の波長λが0.77μmの時に0.09程度であった群速度差ΔV(図中、×印で示す。)が、ポンプ光の波長が1μmの時には0.03となり3分の1程度になっている。これは、波長変換の帯域幅が3倍以上になっていることを意味する。一方、第1のポンプ光の波長λを大きくすると、中間光と信号光の群速度差ΔV(=1/Vgm−1/Vgs)が大きくなる(曲線II)。例えば、第1のポンプ光の波長が1μm以下の時には0.01以下であった群速度差ΔVが、ポンプ光の波長が1.1μmの時には0.05となり第1のポンプ光の波長が0.77μmの時の半分程度になっている(図4(A))。
また、第1のポンプ光の波長λが、信号光の波長λ(ここでは、1.55μm)より大きい場合、第1のポンプ光の波長λが長くなると、第1のポンプ光と中間光の群速度差ΔV(=1/Vgp−1/Vgm)(曲線III)、及び、中間光と信号光の群速度差ΔV(=1/Vgm−1/Vgc)(曲線IV)は小さくなり、第1のポンプ光の波長が2.25μm以上の場合は、群速度差ΔVは0.15以下である(図4(B))。
図5を参照して第1のポンプ光の波長λと、QPM型波長変換素子の周期的ドメイン構造の周期Λの関係について説明する。図5は、ポンプ光の波長とQPMの周期的ドメイン構造の周期Λの関係を示す図であって、横軸に、第1のポンプ光の波長λをとり、及び、縦軸に、QPM型波長変換素子の周期的ドメイン構造の周期Λをとっている。
第1のポンプ光の波長λが信号光の波長λよりも短い場合、周期Λは、1〜1.1μmで最大となり、その周期Λは30μm程度である。従来例の0.77μmのポンプ光を用いた場合は、周期Λが20μm程度である(図中、×印で示す。)ので、第1のポンプ光の波長λを1μm程度とすることにより、周期Λが長くなり、作成が容易になる。
また、第1のポンプ光の波長λが信号光の波長λよりも長い場合は、28〜35μmであり、同様に、従来よりも周期Λが長くなり、作成が容易になる。
また、LiNbOに対する光損傷の影響を考えると、第1のポンプ光の波長λは、0.8μmよりも大きい値とするのが良い。
上述の説明から、第1のポンプ光の波長λは1μm程度とするのが良い。第1のポンプ光の波長λを1μmより短くしていくと、LiNbOが光損傷の影響を受けるとともに、第1のポンプ光と変換光の群速度差ΔVが大きくなることにより帯域幅が狭くなり、一方、第1のポンプ光の波長λを1μmより長くしていくと、中間光の波長が長くなり、LiNbOの吸収の影響を受けるためである。また、第1のポンプ光の波長が1.1μmを超えると信号光と中間光の群速度差ΔVが大きくなり帯域幅が狭くなる。
特に、エルビウム添加光ファイバ増幅器の励起光源として半導体レーザを用いることで、0.98μm付近の高出力の光源が得られるので、第1のポンプ光の波長を0.98μmとするのが好適である。
第1のポンプ光の波長を、信号光の波長よりも長くすると、図3(B)に示したように中間光の波長は短くなっていくので、第1のポンプ光の波長を、2.25μm以上5μm以下、好ましくは、2.6μm以上4μm以下とすれば、LiNbO結晶での、光吸収の影響を受けにくくなる。また、第1のポンプ光の波長が2.6μm以上4μm以下であれば、周期Λが長いので、QPM型波長変換素子の周期的ドメイン構造の作成も容易であり、また、群速度差ΔVが大きくなっても、帯域幅が狭くなることがない。従って、第1のポンプ光の光源として、出力波長が2.6μm以上4μm以下の、例えばInAlGaAsSb系半導体レーザ等の、高出力の光源が得られれば、この波長領域を第1のポンプ光として用いることが可能となる。
この発明の波長変換装置及び波長変換方法によれば、第1のポンプ光と信号光との非線形光学効果により、波長がλの中間光を出力した後、第2のポンプ光と中間光との非線形光学効果により、波長がλの変換光を出力する。信号光から変換光への波長変換の大きさは、第1のポンプ光及び第2のポンプ光の周波数(又は波長)の差に依存して、第1のポンプ光及び第2のポンプ光の周波数(又は波長)の大きさには直接依存しないので、第1及び第2のポンプ光として使用する波長域を長波、例えば1μm程度又はそれ以上に設定することが可能となり、LiNbOにおいて光損傷の影響を低減することが可能となる。
さらに、第1及び第2のポンプ光の波長を長波長にすることにより、第1及び第2のポンプ光の波長と変換光の波長との群速度差を小さくできるので、広帯域での変換効率を高めることができる。
波長変換装置を説明するための概略的な模式図である。 波長変換方法を説明するための模式図である。 第1のポンプ光の波長と中間光の波長の関係を示す図である。 第1のポンプ光の波長と群速度差の関係を示す図である。 第1のポンプ光の波長と周期的ドメイン反転構造の周期の関係を示す図である。
符号の説明
10 波長変換装置
30 第1の波長変換部
32 第1の合波器
34 第1の波長フィルタ
40 第1の波長変換素子
42 光導波路
45 周期的ドメイン構造
46 第1ドメイン
48 第2ドメイン
50 第2の波長変換部
52 第2の合波器
54 第2の波長フィルタ
60 第2の波長変換素子

Claims (4)

  1. 波長がλの第1のポンプ光と波長がλの信号光との非線形光学効果として差周波発生を発現させることにより、波長がλの中間光を生成する第1の波長変換部、及び
    波長がλの第2のポンプ光と前記中間光との非線形光学効果として和周波発生を発現させることにより、波長がλの変換光を生成する第2の波長変換部
    を備え
    前記第1の波長変換部及び前記第2の波長変換部は、LiNbO 基板に周期的ドメイン反転構造を作りつけて構成され、
    前記信号光及び前記変換光の波長が、1.55μm帯の波長であるとき、前記第1のポンプ光の波長λ が、2.25μm以上5μm以下である
    ことを特徴とする波長変換装置。
  2. 前記第1の波長変換部の出力部分に前記第1のポンプ光及び前記信号光を遮断し、かつ、前記中間光を通過させる波長フィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
  3. 前記第2の波長変換部の出力部分に前記第2のポンプ光及び前記中間光を遮断し、かつ、前記変換光を通過させる波長フィルタを備えることを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
  4. LiNbO 基板に周期的ドメイン反転構造を作りつけた第1の波長変換部及び第2の波長変換部を備える波長変換装置で行われる波長変換方法であって、
    波長がλの第1のポンプ光と波長がλの信号光とから、非線形光学効果として差周波発生を発現させることにより波長がλの中間光を生成する過程と、
    波長がλの第2のポンプ光と前記中間光とから、非線形光学効果として和周波発生を発現させることにより波長がλの変換光を生成する過程と
    を備え、
    前記信号光及び前記変換光の波長が、1.55μm帯の波長であるとき、前記第1のポンプ光の波長λ が、2.25μm以上5μm以下である
    ることを特徴とする波長変換方法。
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