従来の光伝送システムでは、光ファイバを伝搬することにより減衰した信号を再生するために、光信号を電気信号に変換し、デジタル信号を識別した後に光信号を再生する識別再生光中継器が用いられていた。この識別再生光中継器では、光信号を電気信号に変換する電子部品の応答速度に制限があることに問題があった。また、伝送する信号のスピードが速くなると、消費電力が大きくなるなどの問題もあった。
上述した問題を解決するための信号増幅手段として、エルビウムやプラセオジムなどの希土類元素を添加した光ファイバに励起光を入射して信号光を増幅するファイバレーザ増幅器や、半導体レーザ増幅器が存在する。ファイバレーザ増幅器や半導体レーザ増幅器は、信号光を光のままで増幅することができるので、識別再生光中継器で問題になっていた電気的な処理速度の制限が存在しない。加えて、ファイバレーザ増幅器や半導体レーザ増幅器は、機器構成も比較的単純であるという利点を有する。
しかし、これらのレーザ増幅器は、劣化した信号光パルス波形を整形する機能は持っていない。また、これらのレーザ増幅器においては、不可避的かつランダムに発生する自然放出光が、信号成分とは全く無関係に混入されるので、信号光のSN比が増幅前後で少なくとも3dB低下する。これらは、デジタル信号伝送時における伝送符号誤り率の上昇につながり、伝送品質を低下させる要因になっている。
上述した従来のレーザ増幅器の限界を打開する手段として、位相感応光増幅器(Phase Sensitive Amplifier:PSA)が検討されている。位相感応光増幅器は、伝送ファイバの分散の影響による劣化した信号光パルス波形を整形する機能を備えている。また、信号とは無関係の直交位相を持った自然放出光を抑圧できるために、増幅前後で信号光のSN比を劣化させず同一に保つことが原理的に可能である。
位相感応型増幅器は、光ファイバなどの三次非線形光学媒質を用いた構成(非特許文献1参照)、もしくは、二次非線形光学媒質を用いた構成(非特許文献2参照)に大別できる。二次非線形光学媒質としては、周期的に分極反転されたニオブ酸リチウム(PPLN)が知られており、PPLNを用いた構成の場合、光ファイバなどの三次非線形光学媒質を用いた構成に比べ、光ファイバ内の散乱現象の一種であるGAWBS(Guided acoustic-wave Brillouin scattering)や、自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)の混入がなく、低ノイズな増幅が可能である。
PPLNにおいて高効率を得るには、光導波路型のデバイスを形成することが有効であり、種々の光導波路が研究開発されている。主にこれまでは、Ti拡散光導波路やプロトン交換光導波路と呼ばれる拡散型光導波路を用いて検討がなされてきた。
しかしながらこれらの光導波路は、作製において結晶内に不純物を拡散することから、光損傷耐性や長期信頼性の観点から課題があった。拡散型の光導波路では、高強度の光を光導波路に入射するとフォトリフラクティブ効果による結晶の損傷が発生してしまうため、光導波路に入力できる光パワーに制限があった。
近年、バルク結晶の特性をそのまま利用できることから、高光損傷耐性、長期信頼性、デバイス設計が容易などの特徴を持つリッジ型の光導波路が研究開発されている。
2枚の基板を接合して形成された光学素子の一方の基板を薄膜化した後、リッジ加工をすることにより、リッジ型の光導波路を形成することができる。この基板接合において、接着剤を用いずに基板同士を強固に接合する技術として、直接接合技術が知られている。高光損傷耐性、長期信頼性、デバイス設計の容易性などの特徴以外にも、接着剤などを用いずに基板同士を強固に接合することができる直接接合の技術は、不純物の混入や接着剤などによる光の吸収を回避できる点からも有望視されている。
図10に、非特許文献2などに開示されている二次非線形光学媒質として直接接合型の周期分極反転光導波路を用いた位相感応光増幅器の基本的な構成を示す。図10は、非特許文献2のFig.1に示された実験装置の構成を示している。この装置では、光通信に用いられる微弱なレーザ光から非線形光学効果を得るのに十分なパワーを得るために、ファイバレーザ増幅器を用いて基本波光を増幅する。増幅された基本波光を第1の二次非線形光学素子に入射させて第二高調波を発生させる。第2の二次非線形光学素子に、信号光と第二高調波とを入射して縮退パラメトリック増幅を行うことで、位相感応増幅を行う構成としている。二次非線形光学素子は、周期的に分極反転されたニオブ酸リチウム(PPLN)からなる光導波路を備える。
この光増幅器は、位相感応光増幅部における信号光と励起光の位相が一致すると入力信号光は増幅され、両者の位相が90度ずれた直交位相関係になると、入力信号光は減衰する特性を有する。この特性を利用して増幅利得が最大となるように励起光―信号光間の位相を一致させると、信号光と直交位相の自然放出光を発生させずに、つまりSN比を劣化させずに信号光を増幅することができる。
図10に示した技術では、個別の位相変調器、励起光を生成するための第二高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)用素子,光パラメトリック増幅(OPA:Optical parametric amplification)用素子あるいは合分波素子といった種々の素子を光ファイバにより接続しているため、接続による損失により増幅光のS/N比が低下するという欠点があった。また、複数の二次非線形光学素子が必要であり、二次非線形光学素子の動作を安定させるためにそれぞれ個別に温度調整機構が必要である、などのように、必要な部品点数が多くなり,さらに全体の構成が複雑になるという問題があった。
PPLNの光導波路化には、バルクに比べて高い変換効率が得られること以外にも本来は、大きな利点がある。これは、複数の機能を1チップに集積することで高機能なデバイスを実現可能なことである。このため、上記問題に対し、同一基板上に上記素子を集積する構成を採用することにより、素子間の接続損失が原理的に無くなり、接続損失により劣化する増幅光のS/N比が改善可能である。また、接続損失の低減により、励起光のOPA過程への結合効率も向上するために、さらなる高利得化が期待できる。
PPLN光導波路を用いて複数の非線形過程を起こし、位相感応増幅を行う方法としては、非特許文献3に示されているようなPPLN光導波路をタンデムに接続する形態が提案されている。非特許文献3においては、第二高調波を発生させるPPLNと、縮退パラメトリック増幅のための周期分極反転光導波路とが光合分波器を介して直列に接続されることで、縮退パラメトリック増幅に成功している。
しかしながら、限られた面積の基板上でPPLNを直列(タンデム)に接続する素子を形成する場合、個別のPPLN長が短くなるという問題があった。変換効率は、長さの二乗に比例するため、集積度を上げていくと急激に変換効率が下がるという問題がある。
上述した問題に対し、非特許文献4に開示されているSHG/OPA用PPLN光導波路を集積する構成を図11に示す。図11は、非特許文献4のFig.1(b)に示された集積素子の構成を示す構成図である。図11に示す集積素子は、反射型の波長合分波素子と並列方向に展開されたPPLN光導波路を集積した構成になっている。この構成をとることで、タンデムにPPLNを接続する場合に比べて、限られたウエハ上でPPLN長を長くとることが可能になり、高効率な複数の非線形過程を利用することができる。これにより、非線形光学素子を1チップに集約でき、部品点数が少なく、小型高効率な位相感応増幅を達成することが可能となる。
しかしながら、上述した技術では、以下に示す問題があった。
図11に示される集積素子は、波長合分波素子として、マルチモード干渉(MMI:Multi-Mode Interference)と光学多層膜によるダイクロイックミラーを利用している。図12は、MMIにおける光の結合・分離を示すシミュレーション結果である。図12は、波長1.56μmの信号光と波長0.78μmの励起光とが結合する状態を、BPM(Beam Propagation Method)によりシミュレーションした結果を示す特性図である。
このシミュレーションに用いたMMIは、図12の(c)に示すように、スラブ型導波路構造のモード干渉導波路1201と、入力側の2つの入出力導波路1202,入出力導波路1203とから構成されている。2つの入出力導波路1202,入出力導波路1203は、モード干渉導波路1201の幅方向の中心を導波方向に通る中心線に対し、互いに間隔Δだけ軸がずれた位置に接続している。図12に示すシミュレーション結果においては、2×Δがモード干渉導波路1201の幅Wmの3分の1となるように、間隔Δが設定されている。なお、Wm=30μm、地崩れ量Δ=5μm、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。
図12の(a)は、波長0.78μmの励起光の振る舞いを示す特性図である。モード干渉導波路1201の中心からΔ(=5μm)軸ズレした位置に接続されている入出力導波路1202から入射した励起光(0.78μm)は、モード干渉導波路1201に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路1201内をマルチモード伝播する。この伝播において、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長0.78μmの光がある光路長を伝播した後、モード干渉導波路1201の中心から入力側と反対にΔだけ軸ズレした位置に極値(収束点)を取る。
図12の(b)は、入出力導波路1203から波長1.56μmの信号光を入力した場合の振る舞いを示す図である。モード干渉導波路1201の中心からΔ(=5μm)ずれた位置に接続されている入出力導波路1203から入射した信号光(1.56μm)は、モード干渉導波路1201に固有の複数のモードに展開され、モード干渉導波路1201内をマルチモード伝播する。この伝播において、各モードの伝播定数が異なるために生じるモード干渉によって、波長1.56μmの光がある光路長を伝播した後、モード干渉導波路1201の中心から入力側と反対にΔだけ軸ズレした位置に1回目の極値(収束点)を取った後、さらにその反対側にΔだけ軸ズレした位置に2回目の極値(収束点)を取る。
収束点から次の収束点までの光路長をビート長と呼び、この長さをLπとすると、ほぼ以下の式に従う。
式(1)において、Weは光の感じる実効的なモード干渉導波路1201の幅、ngは実効屈折率、λ0は入力光の波長である。
ビート長は、波長に反比例するために、0.78μmの光が1回ビートを打つ間に1.56μmの光が2回ビートを打つ。また、モード干渉導波路1201の幅方向において最初にビートを打つ位置は、入力した軸ズレ位置Δに対して中心線を挟んで反対側にΔだけ軸ズレした位置となる。この後、中心線を挟んで交互にΔだけ軸ズレした位置にビートを打つことになる。このように、モード干渉導波路1201においては、各波長についてそれぞれ幅方向に決まった位置の収束点でビートを打つ。
このため、モード干渉導波路1201の長さを、2つの波長帯のビート長の最小公倍数となる長さにして、両者が収束する点(幅方向にΔ軸ズレした位置)の近傍に出力を設けることにより、0.78μmの光と1.56μmの光とを結合して出力することができる。
この特性を逆に用いれば、0.78μmの光と1.56μmの光を2つの光導波路に分波することもできる。上述したモード干渉導波路1201において、0.78μmの光と1.56μmの光とが収束する点の半分の位置に反射端面を設けた場合、0.78μmの光および1.56μmの光を同じ入出力導波路1202から入射すると、0.78μmの光は入出力導波路1203へ、1.56μmの光は入出力導波路1202へと分波が可能となる。
反射端面に0.78μmの光に対しては反射、1.56μmの光に対しては反射防止の光学膜をコーティングすることにより、1.56μmの光は反射防止膜による反射抑制効果とマルチモード干渉導波路1201による分波効果により、入出力導波路1203から0.78μmの光のみを高い波長選択性を持って取り出すことができる。
図11に示す集積素子におけるMMI2の長さは、1.56μmの光と0.78μmの光のビート長の最小公倍数とされている。また、図11に示す集積素子におけるMMI1の長さは、MMI2の約半分に設計されている。MMI1およびMMI2において、1.56μmの光はストレートポートに、0.78μmの光はクロスポートに結合される。このため、集積素子は動作としては、SHG用のPPLN導波路(SHG stage)で出力された励起光および励起光発生のために入射した基本波光の両者は、MMI1によって分離される。そののちに、MMI2で信号光と励起光が合波され、OPAのためのPPLN導波路(DFG stage)へと結合される。
しかしながら、MMI2において波長が大きく異なる2つの光(信号光と励起光)を合波する際に1つの問題が生じる。MMIが入射モードと同じモードを出射側で結合するためのビート長を示す式(1)中のngは、LNの屈折率分散により、信号光と励起光とで異なる値を持つ。このため、両方の光で最適な結像長をとることはできない。
図13にMMIの長さに対する透過特性を1.56μmの光と0.78μmの光の場合とで計算した結果を示す。使用したパラメータは、先ほどと同様、Wm=30μm、入出力導波路1202幅=5μm、入出力導波路1202および入出力導波路1203の軸ズレ量Δ=5μm、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。0.78μmの光のビート長(1.56μmの光のビート長の約2倍)の付近を示したものになっている。結像ピークはMMI長にして約70μmずれており、このため1.56μmの光の透過を最大にした場合には、0.78μmの光の透過率は約0.6であり、計算上の損失としては2.2dBである。
MMI2における信号光の損失は位相感応増幅前の損失となるために、直接SN比を劣化させる要因となる。位相感応増幅器の低雑音性を活かすためにはMMI2における信号光損失は最小に抑えられるようにMMI長を調整する必要がある。このため、励起光は上記のようなMMIの焦点ズレに起因した過剰損失を被ることになり、結果として励起効率およびパラメトリック利得の劣化を招いてしまう。
また、一方で集積素子中の導波路は1.56μmの波長の光の基本モードを閉じ込める構造であるために、その半波長である励起光に対してはマルチモード導波路であることが避けられない。MMIは基本モードで入射した光に対して、ちょうどビート長の長さで入射モードと同じ基本モードに結合する。励起光の場合、入出力導波路1202もマルチモード導波路であるために、出力側導波路位置がビート長からずれている場合には、高次のモードが励振されてしまう。一般に、PPLN導波路の位相整合は相互作用する光の基本モードに対してのみ成立する。これにより、励起光のうち高次モードの成分がある場合、高次モードはパラメトリック過程に関与しないため、利得が劣化してしまう。
図14にMMIの長さに対する励起光出力の基本モードに結合する割合を示す。MMIの構造は上述したものと同様である。信号光の透過に対してMMI長が最適化されている場合、前述したように、励起光に対しては、透過ピークから約70μmずれたMMI長となる。このため、図14から、高次モードに結合する48%分利得が劣化する。
以上から、屈折率分散によるMMIの結像位置の誤差により、ひとつの合波器で信号光と励起光を同時に合波した場合には、信号光の損失は図13の透過ピークから得られる約0.19dBの低い損失が期待できるが、励起光に対しては約2.2dBと過剰な損失が付加されてしまう。さらに励起光に関しては最適なMMI長ではないために位相整合に寄与しない高次モードが約48%励振されてしまい、過剰損失とトータルで見ると5.4dBの励起効率の劣化を招いてしまう。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、利得の劣化や励起光の劣化などが抑制された状態で、信号光と励起光とを合波してパラメトリック増幅できるようにすることを目的とする。
本発明に係る光増幅装置は、平面視矩形とされて互いに平行な第1の辺および第2の辺を有する基板の上に形成され、第1の辺の側より入力する信号光より信号光の第2高調波である励起光を発生させる第1二次非線形光学素子と、基板の上に形成されて第1二次非線形光学素子より出力された励起光および信号光が入力する入力部、入力した励起光および信号光より分波した励起光を出力する出力部を備える分波器と、基板の上に形成されて分波器の出力部より出力した励起光が入力する励起光入力部、第2の辺の側より入力する信号光が入力する信号光入力部、および信号光入力部より入力した信号光に励起光入力部より入力した励起光を合波した合波光を第1の辺の側に出力する合波光出力部を備えるマルチモード干渉型の合波器と、基板の上に形成されて合波器の合波光出力部より出力した合波光を入力してパラメトリック増幅する第2二次非線形光学素子とを備え、第1二次非線形光学素子および第2二次非線形光学素子は、非線形光学特性を持った結晶から構成されて直列に接続した複数の領域から構成されて隣り合う領域は結晶の分極が反転した状態とされ、合波器は、平面視矩形とされて互いに平行な第3の辺および第4の辺、および互いに平行な第5の辺および第6の辺を有し、励起光入力部は、第3の辺の側に配置されて第3の辺に対して第1の角度で第2の辺の側から励起光を入射し、信号光入力部は、第4の辺の側の第5の辺の側の端部に配置されて第4の辺に対して第2の角度で第2の辺の側から信号光を入射し、合波光出力部は、第4の辺の側の第6の辺の側の端部に配置されて第4の辺に対して第3の角度で合波光を第1の辺の側に出力し、励起光入力部と第3の辺との接続部は、第5の辺と第3の辺との交点から所定の距離離間し、第1の角度、第2の角度、および第3の角度は、同一とされている。
上記光増幅装置において、分波器は、マルチモード干渉型光学素子または方向性結合器から構成されていればよい。
上記光増幅装置において、合波器の光伝播方向における光路長、励起光入力部と第3の辺との接続部の位置、第1の角度、第2の角度、第3の角度は、信号光と励起光の両方の光量が同時に極値となるように設定されている。
上記光増幅装置において、非線形光学特性を持った結晶は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1-x)O3(0≦x≦1)、KTiOPO4のいずれかであればよく、また、Mg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも1つが添加されていてもよい。
上記光増幅装置において、第2二次非線形光学素子より出力された増幅光の位相と、励起光の位相を同期する位相同期部を備える。
以上説明したことにより、本発明によれば、利得の劣化や励起光の劣化などが抑制された状態で、信号光と励起光とを合波してパラメトリック増幅できるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における光増幅装置の構成を示す構成図である。この光増幅装置は、基板101の上に形成された第1二次非線形光学素子102と、基板101の上に形成された分波器103と、基板101の上に形成された合波器104と、基板101の上に形成された第2二次非線形光学素子105とを備える。
基板101は、例えば、LiTaO3から構成され、平面視矩形とされて互いに平行な第1の辺101aおよび第2の辺101bを有している。
第1二次非線形光学素子102は、基板101の第1の辺101aの側より入力する信号光より信号光の第2高調波である励起光を発生させる。第1二次非線形光学素子102は、例えばニオブ酸リチウムなどの非線形光学特性を持った結晶から構成され、周期的なピッチ長で直列に接続した複数の領域から構成されて隣り合う領域は結晶の分極が反転した(非線形定数が周期的に反転された)状態とされている。
分波器103は、第1二次非線形光学素子102より出力された励起光および信号光が入力する入力部131、入力した励起光および信号光より分波した励起光を出力する出力部132を備える。辺101aの側より第1二次非線形光学素子102に信号光が入射し、第1二次非線形光学素子102で励起光が生成され、光導波路111を導波して入力部131より分波器103に入射し、励起光が分波されて出力部132より出射する。分波器103は、マルチモード干渉型光学素子または方向性結合器から構成すれば良い。
合波器104は、分波器103の出力部132より出力した励起光が入力する励起光入力部141、第2の辺101bの側より入力する信号光が入力する信号光入力部142、および信号光入力部142より入力した信号光に励起光入力部141より入力した励起光を合波した合波光を第1の辺101aの側に出力する合波光出力部143を備える。合波器104は、マルチモード干渉型光学素子である。出力部132より出力した励起光は、光導波路112を導波して励起光入力部141に入射する。信号光は、光導波路113を導波して信号光入力部142に入射する。合波光出力部143より出射した合波光は、光導波路114を導波して第2二次非線形光学素子105に入射する。
また、合波器104は、平面視矩形とされて互いに平行な第3の辺104aおよび第4の辺104b、および互いに平行な第5の辺104cおよび第6の辺104dを有している。また、励起光入力部141と第3の辺104aとの接続部は、第5の辺104cと第3の辺104aとの交点から所定の距離離間している。
また、励起光入力部141は、第3の辺104aの側に配置されて第3の辺104aに対して第1の角度で第2の辺101bの側から励起光を入射する。また、信号光入力部142は、第4の辺104bの側に配置されて第4の辺104bに対して第2の角度で第2の辺101bの側から信号光を入射する。また、合波光出力部143は、第4の辺104bの側に配置されて第4の辺104bに対して第3の角度で合波光を第1の辺101aの側に出力する。ここで、第1の角度、第2の角度、および第3の角度は、同一とされている。
また、合波器104の光伝播方向における光路長、励起光入力部141と第3の辺104aの接続部の位置、第1の角度、第2の角度、第3の角度は、信号光と励起光の両方の光量が、合波光出力部143(と第4の辺104bとの接続部)で同時に極値となるように設定されている。
第2二次非線形光学素子105は、合波器104の合波光出力部143より出力した合波光を入力してパラメトリック増幅する。例えば、第2二次非線形光学素子105は、合波光を縮退パラメトリック増幅する。第2二次非線形光学素子105は、ニオブ酸リチウムなどの非線形光学特性を持った結晶から構成され、周期的なピッチ長で直列に接続した複数の領域から構成されて隣り合う領域は結晶の分極が反転した状態とされている。この構成は、第1二次非線形光学素子102と同様である。
この光増幅装置において、外部より入力される信号光一部は、カプラ121により分岐され、信号光と励起光との位相同期用の位相変調器126および可変長光ファイバ125を通じてファイバレーザ増幅器127に入力して増幅された後,基板101の辺101aより入力し、励起光の発生に使用される。
また、第2二次非線形光学素子105を出力したパラメトリック増幅された増幅光は、一部がカプラ122より分岐され、フォトダイオード(光電変換部)123で光電変換されて検出信号として出力され、帰還制御部124に入力する。検出信号を入力した帰還制御部124は、入力した検出信号と、位相変調器126が用いるパイロット信号とを比較することで、可変長光ファイバ125に帰還制御をかけて光路長を調整する。これら、位相同期部の動作により、第1二次非線形光学素子102に入力される信号光の位相と、第2二次非線形光学素子105より出力される増幅光の位相とを同期する。第1二次非線形光学素子102に入力される信号光より励起光が生成されるため、上述したことにより励起光の位相が、増幅光の位相に同期する。
なお、可変長光ファイバ125は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)より構成された可変伸長部に光ファイバが巻き付けられ、可変伸長部に信号が印加されて体積が変化することで光ファイバ長(光路長)を変化させている。
ここで、上述した二次非線形光学素子について説明する。基本となる信号光と非線形光学特性を持った結晶で発生する波長変換光である励起光との間では、屈折率が異なるため位相速度に差がある。このため、信号光が、結晶内を伝播するにつれて次々と発生する励起光は、少しずつ位相がずれていく。この中で、所定の長さ(ピッチ長)離れた2点で発生した励起光の位相差がπになると、互いに打ち消し合うようになり逆に強度が減衰していく。上述した二次非線形光学素子は、この状態を抑制して安定して強度を増大させる。
信号光と励起光との位相差がπとなるところ(ピッチ長)で、結晶の分極(分極の方向)を反転させてここで発生する励起光の位相を反転させる。この構造によると、分極を反転していない状態であれば打ち消し合う状態が、逆に強め合う状態となり、結晶内を伝播するにつれて次々と発生する励起光の強度を常に増加させることができる。このように、上述した二次非線形光学素子では、信号光の波長λに対応したピッチ長で結晶の分極を反転させている周期分極反転により、擬似的に位相整合させて波長を変換している。
次に、基板101について説明する。基板101の第2の辺101bの部分(端面)には、信号光は透過して励起光は反射する選択透過膜106が形成されている。選択透過膜106は、よく知られた光学多層膜から構成すれば良い。一方、基板101の第1の辺101aの部分(端面)には、信号光および励起光の両者に対して無反射な特性を有する透過膜107が形成されている。
実施の形態において、分波器103は、信号光および励起光が入射および出射する入出射端面および反射端面を有する単一のマルチモード光導波路から構成されている。反射端面は、基板101の第1辺101bと共通とされ、信号光(1.56μm)は透過して励起光(0.78μm)は反射する選択透過膜106が配置される。また、入出射端面では、マルチモード光導波路の光軸を示す中心線103aから対称に軸ずれした位置で、入力部131および出力部132が接続されている。
このように、マルチモード導波路の片側端面(反射端面)に誘電体多層膜などの反射膜を用いることで、不要な1.56μmの光を基板101外に透過させ、入力部131から入射された0.78μmの光は、マルチモード干渉を起こしながら干渉の途中で反射し折り返され、さらにマルチモード干渉を行いながら分波器103のマルチモード光導波路内で周期的に結像を繰り返しながら集光する。この集光位置は、入力(入力部131)位置、分波器103の幅、長さすなわち反射位置に依存する。結像は1:Nへと分岐させる結像も可能であり、これらを最適化することにより、第1二次非線形光学素子102で生成した0.78μmの励起光を、入力部131からから入射させ、出力部132にのみ結像させることができる。
次に、合波器104について、より詳細に説明する。実施の形態における合波器104によれば、波長が大きく異なる信号光と励起光の合波時の結像点の誤差を、励起光入力部141の入射位置を調整することで補償することが可能になる。図2Aに、合波器104と同様のサイドポート型MMIの透過特性を、1.56μmの光で計算した結果を示す。また、図2Bに、上記サイドポート型MMIの透過特性を、0.78μmの光で計算した結果を示す。なお、Wm=20μm、入出力導波路(コア)幅=5μm、入出力導波路の入射角度は89°、クラッドの屈折率=1.0、コアの屈折率=約2.1である。図2Aは、MMI長は1.56μmの光が2回ビートを打つ長さの近傍を示している。また、図2Bは、0.78μmの光が一回ビート長を打つ長さの近傍を示している。
図2Aには、1.56μmの光がマルチモード干渉をしながら伝搬し、2回目のビートを打った結合点でストレートポートに結合する状態が示されている。一方、図2Bには、0.78μmの光がマルチモード干渉をしながら伝搬し、最初のビートを打つ結合点でクロスポートに結合する様子を示している。
上述した各結合点付近のMMI長に対する、各々の波長のMMI透過率を図2Cに示す。両波長の透過ピークのMMI長の誤差は約270μmであり、1.56μmの信号光側の方が離れた位置にピークがきている。実施の形態における合波器104において、上記と同様の構造をとった場合、合波器104の長さ(第5の辺104c,第6の辺104dの長さ)を1.56μmの波長の光の透過ピークが得られる約6580μmとし、励起光入力部141の第5の辺104cと第3の辺104aとの交点からの距離を、270μmとすることで、信号光と励起光がともに透過ピークとなる位置で合波することが可能となる。
図2Cに示す透過ピークから、0.78μmの光の損失は0.08dB、1.56μmの光の損失は0.42dBである。励起光入力部141の位置を適切に選ぶことで、両波長の光を上記の損失値で同時に低損失に合波することができ、焦点のズレに起因した過剰な損失を抑えることが可能となる。なお、上述では、合波器104としてのサイドポート型MMIは、Wm=20μm、入出力導波路幅=5μm、入出力導波路のMMI側壁への入射角度は89°としたが、サイドポート型MMIや入射導波路の幅、および入射角度などを適宜変更しても同様の特性を得ることは可能である。
次に、実施の形態における光増幅装置の製造について簡単に説明する。まず、図3の(a)に示すように、ZカットLiTaO3からなる第1ウエハ301を用意する。また、図3の(b)に示すように、ZカットZn添加LNからなる第2ウエハ302を用意する。これら基板は、非線形光学媒質から構成されていればよく、上記材料に限らず、KNbO3、LiNb(x)Ta(1-x)O3(0≦x≦1)、KTiOPO4、または、これらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有している材料を用いることができる。
ここで、第2ウエハ302は、一部に予め1.5μm帯で位相整合条件が満たされる周期分極反転構造が作製されている。LiNbO3結晶などにおける分極反転格子作製技術については多くの研究がなされ、いくつかの方法が開発されているが、これらの中で好な結果が再現性よく得られる電界印加法により周期分極反転構造を作製すればよい。例えば、第2ウエハ302の周期反転構造形成領域において、リソグラフィーにより周期レジストパターンを形成し、これをマスクとして利用して周期的な電極(金属薄膜電極、液体電極など)を形成し、形成した電極により電圧パルスを印加することで良好な周期分極反転構造を得ることができる。
なお、上述した構成の第1ウエハ301および第2ウエハ302は、熱膨張係数がほぼ一致している。また、第2ウエハ302の屈折率より第1ウエハ301の屈折率の方が小さい。また、第1ウエハ301および第2ウエハ302は、共に直径3インチの円形とされている。また、第1ウエハ301は、厚さ500μmであり、第2ウエハ302は、厚さ300μmである。また、これらはいずれも、両面が光学研磨されている。
次に、図3の(c)および図5Aに示すように、第1ウエハ301に第2ウエハ302を貼り合わせる。例えば、第1ウエハ301および第2ウエハ302の貼り合わせ面を、よく知られた酸洗浄あるいはアルカリ洗浄によって親水性にした後、これら2つのウエハを、クラス10〜100程度のクリーンルーム内など、マイクロパーティクルが極力存在しない清浄雰囲気中で重ね合わせる。次いで、重ね合わせた第1ウエハ301および第2ウエハ302を電気炉に搬入し、400℃で3時間熱処理することにより拡散接合を行う。接合されたウエハは、接合面にマイクロパーティクルなどの挟み込みがなく、ボイドフリーであり、室温に戻したときにおいてもクラックなどは発生しない。
次に研磨定盤の平坦度が管理された研磨装置を用い、貼り合わせた第2ウエハ302の厚さが20μmになるまで研磨加工を施す。研磨加工の後に、ポリッシング加工を行うことにより、鏡面の研磨表面を得ることができる。ウエハの平行度(最大高さと最小高さとの差)を光学的な平行度測定機を用いて測定したところ、3インチウエハの周囲を除き、ほぼ全体にわたってサブミクロンの平行度が得られ、図3の(d)に示すように、第1ウエハ301の上に、光導波路形成層302aが作製される。光導波路形成層302aを備える第1ウエハ301は、接着剤を用いず、熱処理による拡散接合によって直接貼り合わせため、直径3インチのウエハの全面積にわたって均一な組成、厚さを備えた状態が得られる。
以上のようにして光導波路形成層302aを形成したら、この層をパターニングすることで、図4に示すように、第1ウエハ301の上に、各光導波路を構成するコア部303を形成する。コア部303を形成することで、図5Bに示すように、第1二次非線形光学素子102、光導波路111、分波器103、合波器104、第2二次非線形光学素子105などを備える複数のチップ領域を形成する。複数のチップ領域は、第1ウエハ301の上において所定の方向に1列配列されている。この所定の方向を2つに分け、第1二次非線形光学素子102および第2二次非線形光学素子105が配置される領域が、上述したように、第2ウエハ302の周期分極反転構造が形成された領域となる。
例えば、公知のリソグラフィー技術により作製したレジストパターンをマスクとし、よく知られたドライエッチング技術により光導波路層302aをエッチング加工すれば良い。ドライエッチングにおいては、例えば、アルゴンガスを用いれば良い。このパターニングにより、リッジ型光導波路を作製すれば良い。
例えば、高さ5μm、幅5μmのコア部303を形成する。このパターニングにおいて、コア部303の幅により、位相整合の条件が変化するため、コア部303以外の領域の光導波路層302aは、完全に除去された状態とすることが望ましい。なお、コア部303は幅が5μmと細いため、第1ウエハ301との接合面積が小さくなり、第1ウエハ301上に固定された状態を得るだけの十分な接合強度が必要となる。上述したウエハ同士の直接接合によれば、このような小さな接合面積であっても剥離などが起きず、十分な接合強度を保つことができる。
以上のようにして、第1ウエハ301の上に複数のチップ領域を形成した後、これらを短冊状に切り出すことで、図5Cに示すように、複数の集積素子チップ100が得られる。図6に示すように、切断位置601および切断位置602で垂直に切り出すことで、集積素子チップ100とすれば良い。ここで、分波器103の0.78μmの光を入力部から入射し、出力部に入射モードと同一のモードで出力されるビート長のちょうど半分となる切断位置601で、垂直に切り出せばよい。また、切り出した各集積素子チップ100の端面は、光学研磨する。
次に、各集積素子チップ100の光学研磨した端面に、図7に示すように、選択透過膜106,透過膜107を形成する。分波器103が配置される側の第1辺101bの端面に、信号光は透過して励起光は反射する選択透過膜106を形成する。また、第1二次非線形光学素子102,第2二次非線形光学素子105が配置される側の第1の辺101aの端面に、信号光および励起光の両者に対して無反射な特性を有する透過膜107を形成する。例えば、イオンアシスト型のスパッタリング装置を用い、所定の金属層を各々蒸着して形成すれば良い。1.5μm帯の光に対して選択透過膜106の特性を評価したところ、反射率は0.5%であった。
作製した集積素子を用いて、1.56μmの信号光を第2二次非線形光学素子105へ結合させたときの合波器104の挿入損失と0.78μmの光を第2二次非線形光学素子105へ結合させたときの分波器103および合波器104でのトータルでの挿入損失を測定した。まず、0.78μmの光を、第1二次非線形光学素子102に入射し、分波器103へと伝搬させる。また1.56μmの光を光導波路113に入射し、合波器104へと伝搬させる。
分波器103の反射端面は0.78μmの光に対しては反射、1.56μmの光に対しては反射防止の選択透過膜106が形成されている。分波器103の入力部131へ入射された0.78μmの光は、分波器103のモード干渉導波路内を、マルチモード干渉を行いながら伝搬し、選択透過膜106で反射された後に、出力部132に結像され、光導波路112を導波する。合波器104は、励起光入力部141が適切な位置に配置されているため、信号光入力部142から入力した1.56μmと、励起光入力部141から入力した0.78μmの両波長の光に対して最適な結合長をとることができる。
分波器103を折り返し、合波器104を通過後に合波光出力部143より出力された0.78μmの光において、選択透過膜106の反射率は99%と非常に高いため、折り返しによる光の損失は、分波器103のマルチモード干渉導波路を通過する際の損失が支配的である。しかしながら、分波器103,合波器104による光過剰損失が非常に小さいため、トータルで1.6dBと非常に小さい損失で光の折り返しを行うことができる。また、波長1.56μmの信号光に対する合波器104の挿入損失は、0.8dBと非常に低損失であった。
以上から、実施の形態における光増幅装置によれば、波長の大きく異なる信号光と励起光の合波の際の過剰な損失を最小限に抑えることができ、低損失で励起効率の高い集積素子を実現できる。
実施の形態における光増幅器においては、信号光と位相の合った光のみを増幅するために、上述のように信号光と励起光の位相が一致、もしくはπラジアンだけずれている必要がある。実施の形態では、2次の非線形光学効果を用いており、この場合、第二高調波に相当する波長である励起光の位相φ2ωsと、信号光の位相φωsとが「Δφ=1/2φ2ωs−φωs=nπ(ただし、nは整数)・・・(2)」の関係を満たしていることが重要となる。
図8は、従来の二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器における、入力信号光‐励起光間の位相差Δφと、利得(dB)との関係を示す特性図である。図8に示すように、Δφが−π、0、またはπのときに、利得が最大となっていることがわかる。
図8に示すような入力信号光と励起光との間の位相同期を達成するために、実施の形態における光増幅装置では、ファイバレーザ増幅器127の前に、励起光の位相を一定周波数の小振幅のパイロット信号で変調するため位相変調器126を設けている。励起光の位相を微小に変調した状態でパラメトリック増幅された信号光を、カプラ122で分岐してフォトダイオード123より受光・観測する。
図8に示す利得が最大となる位相同期が取れている状態では、位相変調による利得の変動が最小になるのに対して、図8示す位相差が大きくなるに従って、位相変調によって利得に変調を生じ、増幅された光にも観測している検出信号と同じ周波数の変調成分を生じることになる。このような増幅光に現れる変調成分が最小になるように、PLL(Phase Lock Loop)の技術を用いて、帰還制御部124で可変長光ファイバ125のファイバ長を制御し、励起光の位相にフィードバックをかけることで、励起光と信号光との間の位相を同期させることができる。可変長光ファイバ125にフィードバックをかけ、可変長光ファイバ125を構成する光ファイバ部品の伸び縮みや温度変動による位相の変動を抑制できるようにしている。
次に、実施の形態における光増幅装置の増幅特性を、データ信号用変調器としてLNマッハツェンダー変調器を用い、入力信号として10Gb/sのNRZ信号を入力した場合について評価した。図9は、実施の形態における光増幅装置によって増幅された信号の時間波形を説明するための説明図である。図9(a)に励起光が入射しないときの入射信号光の出力波形を、図9(b)にPLLにより励起光と信号光の位相が合うように設定したときの出力波形を、図9(c)にPLLにより励起光と信号光の位相が90度ずれるように設定したときの出力波形をそれぞれ示す。励起光の位相を信号光に合わせることにより、実施の形態では、約17dBの利得を得ることができた。いずれも、横軸は時間である。
上述したように、本発明では、平面視矩形とされて互いに平行な第1の辺および第2の辺を有する基板の上に形成した合波器をマルチモード干渉型とし、平面視矩形とされて互いに平行な第3の辺および第4の辺、および互いに平行な第5の辺および第6の辺を有し、励起光入力部は、第3の辺の側に配置されて第3の辺に対して第1の角度で第2の辺の側から励起光を入射し、信号光入力部は、第4の辺の側の第5の辺の側の端部に配置されて第4の辺に対して第2の角度で第2の辺の側から信号光を入射し、合波光出力部は、第4の辺の側の第6の辺の側の端部に配置されて第4の辺に対して第3の角度で合波光を第1の辺の側に出力し、励起光入力部と第3の辺との接続部は、第5の辺と第3の辺との交点から所定の距離離間させ、第1の角度、第2の角度、および第3の角度は、同一とした。
この結果、本発明によれば、波長の大きく異なる信号光と励起光を1つの合波器で極めて低損失に合波することができ、利得の劣化や励起光の劣化などが抑制され、SN比の劣化の抑制と高い励起効率の両立という、従来の構成を用いた場合では実現できなかった特性を備え、高い利得を持ったパラメトリック増幅を起こすことができるようになる。また、パラメトリック増幅過程における信号光および励起光の波長関係は、縮退パラメトリック過程に限らず、波長が異なる場合すなわち非縮退パラメトリック過程においても同様に信号光を低雑音で増幅することが可能である。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、周期的に分極反転された二次非線形光学材料としてZnを添加したニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用いたが、ニオブ酸リチウムに限定されるものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムの混晶(LiNb(x)Ta(1-x)O3(0≦x≦1))、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタニルリン酸カリウム(KTiOPO4)などに代表される二次非線形光学材料であれば同様の効果が得られる。また、二次非線形光学材料の添加物に関しても、Znに限定されるものではなく、Znの代わりにMg、Zn、Sc、In、Feを用いても良く、添加物を添加しなくてもよい。