JP4487064B2 - アミノカルボン酸の製造法 - Google Patents
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Description
本発明は、環境問題等を抜本的に解決することを可能とする次世代の化学合成技術としてその実用化が強く期待されている超臨界状態の反応媒体を利用した高温高圧システムの技術分野において、亜臨界水又は超臨界水を反応媒体とする高温高圧反応システムを利用することによってアミノカルボン酸化合物を1段階の簡単な反応プロセスで合成する方法を提供するものであり、短時間で不純物を含まないアミノカルボン酸を大量に生産することを可能とする方法を提供するものである。
本発明の方法で製造されたアミノカルボン酸は、例えば、各種機能性有機化合物を合成するための原料として、また、有用な工業製品を製造する原料の出発物質として、また、医薬農薬合成の中間体の基本骨格作りに欠かせない化合物として、また、金属イオンの分析用試薬として、重要、かつ有用な化合物である。
本発明は、係る有用な化合物であるアミノカルボン酸を、効率よく、短時間で、大量に、しかも、環境にやさしくアミノカルボン酸を製造することができる新規な合成方法を提供するものとして有用である。
また、過酸化物の存在下或いは紫外線の照射下で、ウンデセン酸にHBrをアンチマルコニコフ付加反応により付加させることよってナイロン11の原料であるω−アミノウンデカン酸が合成されている(非特許文献3)。
また、従来、長期間にわたりアミノカルボン酸の合成に関する研究がなされ、工業的なアミノカルボン酸の製造が実用化されてきているので、製造工程の全般にわたって問題点が明らかにされる中で、基本的にそれらの問題点は解決されており、また、それに伴い、多くのノウハウが蓄積され活用されることによりアミノカルボン酸の製造方法は一応確立されている。したがって、当技術分野において、これまで、安定したアミノカルボン酸の製造は確保されてはいた。
更に、従来の製造方法では、廃液、廃物が多量排出されるので、近年、製造業において大きなウエートを占める問題点として注目されている環境問題と調和させるには、それらの廃液、廃物を無害化処理することが要請されている。こうした環境問題を解決するためには、廃液、廃物の無害化処理に多大の費用が必要となり、そのことが、製品の価格上昇を招く原因ともなっていた。それ故、当技術分野においては、環境問題をもクリアできるとともに、製造効率の良い新規なアミノカルボン酸の製造方法の開発が強く要望されていた。
即ち、本発明の目的は、触媒や有機溶剤を使用することなく、不飽和カルボン酸とアンモニア又はアルキルアミンを原料としてアミノカルボン酸を合成する方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、有機溶媒、触媒・酸等を極力使用せずに反応を遂行し、アミノカルボン酸を効率よく製造する方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、廃水、廃物がほとんど発生しない製造方法であって、廃水、廃物の処理を必要としないアミノカルボン酸の製造方法を提供することである。
更には、本発明の他の目的は、一段階で、無触媒で、反応時間10秒ないし0.1秒というきわめて短時間の反応でアミノカルボン酸を高選択的で連続的に製造する方法を提供することである。
(1)高温高圧状態の反応媒体中で、不飽和カルボン酸である、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させて、反応時間10秒ないし0.1秒の一段階反応でアミノカルボン酸を選択的に合成するβ−アラニン又は3−アミノ酪酸からなるアミノカルボン酸の製造方法であって、
(1)高温高圧水を反応媒体として利用する流通反応装置において、1)反応温度より高温の高温高圧水を所定の速度で高圧ライン系に供給し、2)反応温度より低温の不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンの基質流体を所定の速度で高圧ライン系に供給し、3)これらを合流させることにより反応系の反応温度を短時間で設定温度に到達させ、4)上記1)〜3)により、副生成物の生成を抑制して選択的にアミノカルボン酸を製造すること、(2)反応媒体が、温度100ないし450℃、圧力0.1ないし50MPaであること、(3)反応系に触媒を含まないこと、を特徴とする上記アミノカルボン酸の製造方法。
(2)高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体とを混合することにより、該高温高圧水よりも低温に設定されている反応温度に短時間で到達できるようにした(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(3)高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体との重量比が40:1〜3:1である(2)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(4)カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルから選択される(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(5)カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、クロトン酸又はそのエステルである(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(6)反応媒体が亜臨界水又は超臨界水である(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
本発明は、水や二酸化炭素を主成分とした高温高圧流体、好適には、例えば、高温高圧水、亜臨界水又は超臨界水を反応媒体とし、無触媒下で短時間に、効率良くアミノカルボン酸を製造することを特徴とする。
即ち、本発明は、水や二酸化炭素を主成分とした高温高圧流体の存在下、不飽和アルキルカルボン酸にアンモニア又はアルキルアミンを用いて直接アミノ基を導入して、高い選択率でアミノ基導入アルキルカルボン酸を製造するものであり、好適には、例えば、高温高圧水状態で200〜450℃、0.1〜50MPaである反応媒体が使用される。
本発明で使用される、高温高圧水とは、温度100〜500℃、圧力0.1〜50MPaの高温高圧水が用いられ、更に好適には、反応時間、目的とするアミノカルボン酸の化学構造にもよるが、温度200〜400℃、圧力25〜45MPaの高温高圧水が用いられ、更に好適には、温度250〜350℃、圧力35〜45MPaの高温高圧水が用いられる。
本発明の基質としては、不飽和カルボン酸の概念に含まれる化合物を用いることができるが、その中でも、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物、更に、炭素数が3ないし12である化合物が好ましい。
本発明において、不飽和カルボン酸とは、置換基を有する場合もある不飽和カルボン酸を意味するものであり、本発明で使用できる基質は、不飽和結合及びカルボキシル基を有する化合物であれば他の置換基を有する化合物であっても使用することができることは言うまでもない。
以下、本発明を、不飽和カルボン酸とアンモニアを例として説明する。
多量の高温高圧水を送液している高圧ライン系の経路中で高温高圧水に不飽和カルボン酸とアンモニアを混合する場合は、高温高圧水、不飽和カルボン酸、アンモニアそれぞれの温度、送液量、濃度、送液管の径などに応じて混合後の反応液の温度は決定されるので.これらの条件を適宜選定することにより反応温度を自由に設定することができる。
a)高温高圧水反応場に不飽和カルボン酸及びアンモニア水を高速で圧入することによって、短時間で、しかも一段階でアミノカルボン酸を製造できる。
b)反応媒体として水が使用でき、有機溶媒を必須とはしない。
c)反応触媒、ハロゲン化物等が必要ないため、生成物に不純物が混入する恐れがない。
d)反応媒体が水であるため、反応生成物の取り扱いが容易であり、また、反応媒体から生成物を容易に分離できる。
e)反応媒体として水を使用し、有機溶媒、触媒等を使用しないため、製造工程から、廃物、廃液の排出がなく、それらの処理が不要である。
f)反応に選択性があり、目的とする化合物のみを製造できる。
g)反応時間が短いため、短時間に大量の化合物を合成するのに適している。
h)本発明は、環境問題との調和が良好な方法であり、水とアンモニアのリサイクルがし易く、高速反応であり、生産コストを軽減化する可能性を有するものである。
次に、このような本発明のアミノカルボン酸の製造方法を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の製造方法は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、アクリル酸にアンチマルコニコフ付加反応によりアンモニアを付加し、β−アラニンを製造した。
そのときの反応は、次に記載のとおり進行する。
上記反応プロセスにより、β−アラニンを製造するための製造条件を以下に示す。
反応器:ハステロイC−276製、1/16インチ、内径0.5mm、長さ500mm。
反応圧力:40MPaとし、圧力は±0.1MPaに保った。
反応温度:100,150,175,200,250,280,300,325,350,365,375,385,400℃13種類の温度で±1℃の精度に保った。
高温高圧水速度:10m1/min
基質導入速度:4ml/min
基質:アクリル酸及び28%アンモニア水(和光純薬株式会社)
分析:LC−MS
本実施例では、所定の反応温度に短時間で到達させるために、以下の温度上昇方法を用いた。使用装置を説明する前に、この使用装置を単純化して反応系の温度上昇の仕組を図1に基づいて説明する。
Aポンプは高温高圧水サイドから温度500℃(T1)の高温高圧水を1分間に10g(m1)で送り、Bポンプは基質サイドから常温25℃(T2)の高圧水を1分間に1g(m2)で送り、これらの流体が合流したときの温度(T3)は、以下のようにして計算される。
Aポンプの条件:
T1=500℃(773K)、ml=10g/分、高温高圧水のエンタルピーH=1931KJ/Kg
Bポンプの条件:
T2=25℃(298K)、m2=1g/分、基質のエンタルピーH2=141KJ/Kg
m3H3=m1H1+m2H2但し、m3=m1+m2
これを変形して、以下の式1が得られる。
m1=10g/min、m2=1g/min
H1=1931 kJ/kg、 H2=141 kJ/kg
を式1に代入すると、H3は1768kJ/kgとなり、混合された反応媒体の温度は、このエンタルピーに対応する380℃に達する。即ち、この装置では、所定の反応温度には0.05秒以内で到達できる。
一般に、室温以上の温度で基質が反応するときは、基質の温度は、図2のA〜D、即ち、基質の温度が上昇する期間、基質が反応温度に保たれている期間、基質の温度が下降している期間と変化し、全期間にわたって基質は反応する。この全期間A〜Dの間にわたり生成した生成物の混合物が集積され解析されていることとなる。
次に、使用装置の操作について、図3に基づいて説明する。この装置は、番号を付した各部材により構成されている。
それらを以下に説明する。
1:水ポンプ、2:アンモニア水ポンプ、3:アクリル酸ポンプ、4:洗浄水ポンプ、5:第一熱電対、6:第二熱電対、7:圧力計、8:電子制御背圧弁、9:冷却ユニット、10:高温高圧水供給装置、11:恒温装置、12:反応器、13:合流点1、14:合流点2、15:合流点3、16:合流点4、17:合流点5、18:合流点6。
図4と表1は、反応圧力40MPaにおいて、アクリル酸よりβ−アラニンを合成する反応において、主に反応温度を変化させて、β−アラニンの生成結果を示したものである。表1又は図4から明らかなように、反応時間は、0.44ないし0.82秒と短時間であり、100〜400℃でβアラニンの生成が認められた。転化率から見ると250〜350℃の温度範囲で特に良好な値を示すことが分かる。また、本実施例にあっては、β−アラニンのみが合成され、α−アラニン及びアクリルアミドは合成されていないことからみて、高純度のβ−アラニンが製造できるのみならず、β−アラニンのみを選択的に製造することもできる。また、これらの結果から、通常は、紫外線照射下もしくは過酸化物の存在下での反応条件でしか起こらないと考えられていたアンチマルコニコフ付加反応が本発明では選択的に起こっていることが明らかであり、本発明は、β−アミノ酸の選択的製造に有用であることも分かる。
実施例1ないし13で使用したアクリル酸より炭素が1個だけ多いクロトン酸に本発明を適用した。上記実施例1ないし13と同様の条件下で反応が起こり、クロトン酸より3−アミノ酪酸を選択的に製造することができた。図5に示されている「反応の相対物質収率」によると、本発明による、3−アミノ酪酸の製造では、270〜320℃付近での物質収支が良好であることが分かる。
本発明のアミノカルボン酸の製造方法は、そうした特徴点を有しているために、特に、低分子量のアミノ酸の製造方法として有用であり、それにより、アミノ酸類を原料とする機能性有機化合物、医薬農薬、金属イオン分析試薬、ペプチド合成等の原材料として有用なアミノカルボン酸を製造し、提供することを可能とするものであって、産業上の利用価値のきわめて高いものである。
1:水ポンプ
2:アンモニア水ポンプ
3:アクリル酸ポンプ
4:洗浄水ポンプ
5:第一熱電対
6:第二熱電対
7:圧力計
8:電子制御背圧弁
9:冷却ユニット
10:高温高圧水供給装置
11:恒温装置
12:反応器
13:合流点1
14:合流点2
15:合流点3
16:合流点4
17:合流点5
18:合流点6
Claims (6)
- 高温高圧状態の反応媒体中で、不飽和カルボン酸である、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させて、反応時間10秒ないし0.1秒の一段階反応でアミノカルボン酸を選択的に合成するβ−アラニン又は3−アミノ酪酸からなるアミノカルボン酸の製造方法であって、
(1)高温高圧水を反応媒体として利用する流通反応装置において、1)反応温度より高温の高温高圧水を所定の速度で高圧ライン系に供給し、2)反応温度より低温の不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンの基質流体を所定の速度で高圧ライン系に供給し、3)これらを合流させることにより反応系の反応温度を短時間で設定温度に到達させ、4)上記1)〜3)により、副生成物の生成を抑制して選択的にアミノカルボン酸を製造すること、(2)反応媒体が、温度100ないし450℃、圧力0.1ないし50MPaであること、(3)反応系に触媒を含まないこと、を特徴とする上記アミノカルボン酸の製造方法。 - 高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体とを混合することにより、該高温高圧水よりも低温に設定されている反応温度に短時間で到達できるようにした請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
- 高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体との重量比が40:1〜3:1である請求項2に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
- カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルから選択される請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
- カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、クロトン酸又はそのエステルである請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
- 反応媒体が亜臨界水又は超臨界水である請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
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