JP4487064B2 - アミノカルボン酸の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温高圧水を反応媒体として、不飽和カルボン酸とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させてβ−アラニン又は3−アミノ酪酸からなるアミノカルボン酸(以下、アミノカルボン酸と記載することがある。)を合成する新規なアミノカルボン酸の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、温度100ないし450℃、圧力0.1ないし50MPaの高温高圧水又は亜臨界水、超臨界水を反応媒体として不飽和カルボン酸とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させてアミノカルボン酸を製造する方法に関するものである。
本発明は、環境問題等を抜本的に解決することを可能とする次世代の化学合成技術としてその実用化が強く期待されている超臨界状態の反応媒体を利用した高温高圧システムの技術分野において、亜臨界水又は超臨界水を反応媒体とする高温高圧反応システムを利用することによってアミノカルボン酸化合物を1段階の簡単な反応プロセスで合成する方法を提供するものであり、短時間で不純物を含まないアミノカルボン酸を大量に生産することを可能とする方法を提供するものである。
本発明の方法で製造されたアミノカルボン酸は、例えば、各種機能性有機化合物を合成するための原料として、また、有用な工業製品を製造する原料の出発物質として、また、医薬農薬合成の中間体の基本骨格作りに欠かせない化合物として、また、金属イオンの分析用試薬として、重要、かつ有用な化合物である。
本発明は、係る有用な化合物であるアミノカルボン酸を、効率よく、短時間で、大量に、しかも、環境にやさしくアミノカルボン酸を製造することができる新規な合成方法を提供するものとして有用である。
従来、アミノカルボン酸の製造方法には種々の方法があり、多くの事例が報告されている。それらの報告の中には、例えば、ニトリル基を有する原料を有機溶媒中で酸化する方法、アルコールを硫酸中でパラジウム触媒存在下に電極酸化する方法、また、過酸化物の存在下又は紫外線照射下に臭化水素をアンチマルコニコフ付加することによりハロゲン化合物を一旦製造した後、アミノカルボン酸とする方法がある。
例えば、β−アラニンは、有機溶媒中でβ−アミノプロピオニトリルから合成する方法(非特許文献1)、β−ヒドロキシプロピオニトリルから合成する方法(特許文献1)、また、隔膜法でないパラジウム電極を使用して硫酸中で3−アミノ−1−プロパノールを電気的に酸化して合成する方法(非特許文献2)等により合成されている。
また、過酸化物の存在下或いは紫外線の照射下で、ウンデセン酸にHBrをアンチマルコニコフ付加反応により付加させることよってナイロン11の原料であるω−アミノウンデカン酸が合成されている(非特許文献3)。
以上例示したように、従来のアミノカルボン酸の合成法は、多段プロセスが用いられることが多く、しかも触媒、有機溶媒等の使用が不可欠なものであり、昨今の環境問題を考慮すると、改善すべき点を数多く有するものであった。
また、従来、長期間にわたりアミノカルボン酸の合成に関する研究がなされ、工業的なアミノカルボン酸の製造が実用化されてきているので、製造工程の全般にわたって問題点が明らかにされる中で、基本的にそれらの問題点は解決されており、また、それに伴い、多くのノウハウが蓄積され活用されることによりアミノカルボン酸の製造方法は一応確立されている。したがって、当技術分野において、これまで、安定したアミノカルボン酸の製造は確保されてはいた。
しかしながら、従来のアミノカルボン酸の製造プロセスには、多段階のプロセスが必要であったり、各種の触媒が使用され、また、反応媒体には有機溶媒が使用されたり、特殊な反応条件(例えば、紫外線照射)を実現するためには設備が必須となる場合もあり、これらの物質の購入、設備投資は、製造コストを増大する一因となっていた。
更に、従来の製造方法では、廃液、廃物が多量排出されるので、近年、製造業において大きなウエートを占める問題点として注目されている環境問題と調和させるには、それらの廃液、廃物を無害化処理することが要請されている。こうした環境問題を解決するためには、廃液、廃物の無害化処理に多大の費用が必要となり、そのことが、製品の価格上昇を招く原因ともなっていた。それ故、当技術分野においては、環境問題をもクリアできるとともに、製造効率の良い新規なアミノカルボン酸の製造方法の開発が強く要望されていた。
Boatright、U.S.pat.2,734,081(1956) Ford, Org.Syn.coll.III,34(1955) Jubilee Vol.Emil Barell,1946,85−91 Klaus Weissermel, Hans−Jurgen,Industrial Organische Chemie,向山光昭監訳 工業有機化学,東京化学同人,p282(2001)
このような状況の中で、木発明者らは、上記従来技術に鑑みて、簡単な合成プロセスで環境問題が解決できるとともに、上記アミノカルボン酸化合物を効率良く製造することができる新しいアミノカルボン酸の製造方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、高温高圧水又は亜臨界水、超臨界水を反応媒体とする高温高圧反応システムを利用することによって、無触媒で、不飽和カルボン酸とアンモニア又はアルキルアミンとからきわめて短時間でアミノカルボン酸を高選択で製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の目的は、触媒や有機溶剤を使用することなく、不飽和カルボン酸とアンモニア又はアルキルアミンを原料としてアミノカルボン酸を合成する方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、有機溶媒、触媒・酸等を極力使用せずに反応を遂行し、アミノカルボン酸を効率よく製造する方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、廃水、廃物がほとんど発生しない製造方法であって、廃水、廃物の処理を必要としないアミノカルボン酸の製造方法を提供することである。
更には、本発明の他の目的は、一段階で、無触媒で、反応時間10秒ないし0.1秒というきわめて短時間の反応でアミノカルボン酸を高選択的で連続的に製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高温高圧状態の反応媒体中で、不飽和カルボン酸である、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させて、反応時間10秒ないし0.1秒の一段階反応でアミノカルボン酸を選択的に合成するβ−アラニン又は3−アミノ酪酸からなるアミノカルボン酸の製造方法であって、
(1)高温高圧水を反応媒体として利用する流通反応装置において、1)反応温度より高温の高温高圧水を所定の速度で高圧ライン系に供給し、2)反応温度より低温の不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンの基質流体を所定の速度で高圧ライン系に供給し、3)これらを合流させることにより反応系の反応温度を短時間で設定温度に到達させ、4)上記1)〜3)により、副生成物の生成を抑制して選択的にアミノカルボン酸を製造すること、(2)反応媒体が、温度100ないし450℃、圧力0.1ないし50MPaであること、(3)反応系に触媒を含まないこと、を特徴とする上記アミノカルボン酸の製造方法。
(2)高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体とを混合することにより、該高温高圧水よりも低温に設定されている反応温度に短時間で到達できるようにした(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(3)高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体との重量比が40:1〜3:1である(2)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(4)カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルから選択される(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(5)カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、クロトン酸又はそのエステルである(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
(6)反応媒体が亜臨界水又は超臨界水である(1)に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、水や二酸化炭素を主成分とした高温高圧流体、好適には、例えば、高温高圧水、亜臨界水又は超臨界水を反応媒体とし、無触媒下で短時間に、効率良くアミノカルボン酸を製造することを特徴とする。
即ち、本発明は、水や二酸化炭素を主成分とした高温高圧流体の存在下、不飽和アルキルカルボン酸にアンモニア又はアルキルアミンを用いて直接アミノ基を導入して、高い選択率でアミノ基導入アルキルカルボン酸を製造するものであり、好適には、例えば、高温高圧水状態で200〜450℃、0.1〜50MPaである反応媒体が使用される。
本発明で使用される、高温高圧水とは、温度100〜500℃、圧力0.1〜50MPaの高温高圧水が用いられ、更に好適には、反応時間、目的とするアミノカルボン酸の化学構造にもよるが、温度200〜400℃、圧力25〜45MPaの高温高圧水が用いられ、更に好適には、温度250〜350℃、圧力35〜45MPaの高温高圧水が用いられる。
本発明の反応は、基本的には、例えば、不飽和カルボン酸に含まれる不飽和結合にアンモニアがアンチマルコニコフ付加反応により付加してアミノカルボン酸が生成するものであり、反応が起こりうる反応温度、反応圧力の条件は、不飽和カルボン酸の濃度、その化学構造に応じて上記反応条件から適宜選定することができる。
本発明の基質としては、不飽和カルボン酸の概念に含まれる化合物を用いることができるが、その中でも、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物、更に、炭素数が3ないし12である化合物が好ましい。
本発明において、不飽和カルボン酸とは、置換基を有する場合もある不飽和カルボン酸を意味するものであり、本発明で使用できる基質は、不飽和結合及びカルボキシル基を有する化合物であれば他の置換基を有する化合物であっても使用することができることは言うまでもない。
本発明で基質として用いることができる、不飽和カルボン酸の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ソルピン酸、ヘプテン酸、ノネン酸、ウンデシレン酸等、及びそれらの化合物の分枝状、直鎖状の異性体、又は、それらの化合物の低級アルキルエステル、シクロアルケニル基を有するカルボン酸化合物が例示されるが、本発明は、これらに制限されるものではない。本発明は、置換基を有する不飽和カルボン酸、例えば、低級アルキルエステルを基質とする場合にも、遊離の酸と同様に本発明の付加反応が生起し、基質にアンモニアを付加した化合物を得ることができるので、アミノカルボン酸エステルを製造する方法としても有用である。そして、本発明の反応が終了した後に、公知の加水分解反応を利用することによって遊離酸を得ることができる。
更に、本発明では、上記不飽和カルボン酸とアンモニアとの反応に、アンモニアに代えて、アルキルアミンを使用することが可能であり、好適には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン等でも同様に反応が進行し、それぞれ相当する、N−メチル−アミノカルボン酸、N−エチル−アミノカルボン酸、N−ジメチル−アミノカルボン酸等が合成されるが、本発明は、これらのアルキルアミンに制限されるものではなく、その他のアルキルアミンでも同様に反応は進行する。
以下、本発明を、不飽和カルボン酸とアンモニアを例として説明する。
本発明においては.上記基質及び反応媒体を反応器に導入して所定の反応時間で合成を実施する。この場合、上記反応器として、例えば、バッチ式の高温高圧反応容器、及び連続式の流通式高温高圧反応装置を使用することができるが、本発明は、これらの装置については特に限定されるものではない。本発明の方法は、反応媒体として、好適には、上記高温高圧水が用いられるが、具体的には、亜臨界水(100℃以上、0.1MPa以上)、超臨界水(375℃以上、22MPa以上)が例示され、より好適には、臨界点以上の水(375℃以上、22MPa以上)が例示される。これらの反応媒体に、有機溶媒を任意の割合で含有させることもできるが、多量に含有させると、環境汚染の問題を引き起こすので、排水の処理などを必要とし、また、製品の価格上昇の遠因ともなることがある。
本発明では、上記高温高圧水の反応媒体の組成、温度及び圧力条件、基質の種類及びその使用量、反応時間等を最適に調整することにより、短時間で、効率良く反応生成物を得ることができる。また、本発明では、後述する実施例に示されているように、例えば、基質及び反応媒体を流通式高温高圧反応装置に導入し、温度、圧力、反応時間等を変化させることにより所定の反応生成物を選択的に合成することもできる。例えば、後述する本発明の実施例1〜13に記載の反応条件では、β−アラニンが選択的に生成し、α−アラニン及び副反応物であるアクリルアミドの生成は認められない。
本発明の方法では、従来、多段の製造プロセスで行われていた、不飽和カルボン酸とアンモニアとの反応によりアミノカルボン酸を製造する工程を、一段階の工程で実行することができるので、製造コストは大幅に低減できる。従来法で用いられていた、触媒、強塩基や強酸、有機溶媒の使用は必要ではないので、反応後に、中和処理、無害化処理、廃水処理等の必要がない。また、本発明の合成方法は、反応時間10秒ないし0.1秒というきわめて短時間で目的化合物を合成し得るのであるが、これらは、後記する実験によってはじめて実証されたものである。本発明では、10秒以下の反応時間、更には1秒以下の反応時間内でアミノカルボン酸の合成が可能であり、短時間に大量生産することをも可能とする。
本発明のアミノカルボン酸の製造方法では、後記する実施例において詳述しているごとく、多量の高温高圧水と少量の不飽和カルボン酸及び/又はアンモニアを含有する基質流体とを混合することによって短時間のうちに反応液を所定の温度に到達させ、反応を遂行させることができる。この場合、高温高圧水は所定の反応温度よりも高い温度に保ちながら貯蔵タンクから反応ゾーンに送液される。通常、不飽和カルボン酸とアンモニアとは反応ゾーンに流入する以前に両者が反応したり、高温による分解作用を受けることがないようにするため、別々のタンクに入れ、常温付近で貯蔵されている。
多量の高温高圧水を送液している高圧ライン系の経路中で高温高圧水に不飽和カルボン酸とアンモニアを混合する場合は、高温高圧水、不飽和カルボン酸、アンモニアそれぞれの温度、送液量、濃度、送液管の径などに応じて混合後の反応液の温度は決定されるので.これらの条件を適宜選定することにより反応温度を自由に設定することができる。
高温高圧水は、例えば、500℃の、所定の反応温度よりも高い温度に、不飽和カルボン酸とアンモニアとは常温付近の温度に保持して使用されることが多いからから、混合後の反応液の温度は両者の混合量の比が大きく影響する。通常、両者の混合量の比は、3:1〜40:1の範囲の値から選ばれる。高温高圧水と、不飽和カルボン酸、アンモニアとの混合は、短時間に行われるほど好ましく、通常は、約2秒以下、好ましくは0.1〜0.001秒の範囲の時間で混合される。この場合、混合時間は、送液量、送液管の内径等を選定することにより適宜設定できる。従来、高温高圧水を利用して有機合成反応を研究した例はあるものの、高温高圧システムを利用して不飽和カルボン酸とアンモニアからアミノカルボン酸を合成することができることは、これまでを実証された例はなく、本発明によりはじめて実証されたものである。
本発明は、高温高圧状態の反応媒体中では不飽和カルボン酸とアンモニアとの付加反応によりアミノカルボン酸を製造する新規方法に関するものであり、本発明により、次に記載の効果が奏される。
a)高温高圧水反応場に不飽和カルボン酸及びアンモニア水を高速で圧入することによって、短時間で、しかも一段階でアミノカルボン酸を製造できる。
b)反応媒体として水が使用でき、有機溶媒を必須とはしない。
c)反応触媒、ハロゲン化物等が必要ないため、生成物に不純物が混入する恐れがない。
d)反応媒体が水であるため、反応生成物の取り扱いが容易であり、また、反応媒体から生成物を容易に分離できる。
e)反応媒体として水を使用し、有機溶媒、触媒等を使用しないため、製造工程から、廃物、廃液の排出がなく、それらの処理が不要である。
f)反応に選択性があり、目的とする化合物のみを製造できる。
g)反応時間が短いため、短時間に大量の化合物を合成するのに適している。
h)本発明は、環境問題との調和が良好な方法であり、水とアンモニアのリサイクルがし易く、高速反応であり、生産コストを軽減化する可能性を有するものである。
本発明は、高温高圧水状態にある水の存在下、不飽和カルボン酸化合物にアンモニアを用いて直接アミノ基を導入するアミノカルボン酸の製造方法であり、特に、アンチマルコニコフ付加による特異的なアミノ基導入法である。その際の反応条件は、200〜450℃、25〜50MPaが最適であることを本発明者らは実験的に見出した。本発明において、高温高圧状態にある水を媒体として不飽和カルボン酸化合物にアンモニアを用いて直接アミノ基を導入してアミノカルボン酸を製造するにあたり、例えば、約2秒以下のきわめて短時間の反応でアミノ基を導入することができた。
次に、このような本発明のアミノカルボン酸の製造方法を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の製造方法は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜13
本実施例では、アクリル酸にアンチマルコニコフ付加反応によりアンモニアを付加し、β−アラニンを製造した。
そのときの反応は、次に記載のとおり進行する。
(1)製造条件
上記反応プロセスにより、β−アラニンを製造するための製造条件を以下に示す。
反応器:ハステロイC−276製、1/16インチ、内径0.5mm、長さ500mm。
反応圧力:40MPaとし、圧力は±0.1MPaに保った。
反応温度:100,150,175,200,250,280,300,325,350,365,375,385,400℃13種類の温度で±1℃の精度に保った。
高温高圧水速度:10m1/min
基質導入速度:4ml/min
基質:アクリル酸及び28%アンモニア水(和光純薬株式会社)
分析:LC−MS
(2)反応器の温度上昇の仕組み
本実施例では、所定の反応温度に短時間で到達させるために、以下の温度上昇方法を用いた。使用装置を説明する前に、この使用装置を単純化して反応系の温度上昇の仕組を図1に基づいて説明する。
Aポンプは高温高圧水サイドから温度500℃(T1)の高温高圧水を1分間に10g(m1)で送り、Bポンプは基質サイドから常温25℃(T2)の高圧水を1分間に1g(m2)で送り、これらの流体が合流したときの温度(T3)は、以下のようにして計算される。
Aポンプの条件:
T1=500℃(773K)、ml=10g/分、高温高圧水のエンタルピーH=1931KJ/Kg
Bポンプの条件:
T2=25℃(298K)、m2=1g/分、基質のエンタルピーH2=141KJ/Kg
合流した後の反応媒体の温度をT3、エンタルピーをH3とし、合流後の反応媒体の流量をm3とすると、混合前混合後のエンタルピーの総量は変わらないから以下の式が得られる。
m3H3=m1H1+m2H2但し、m3=m1+m2
これを変形して、以下の式1が得られる。
m3=m1+m2であるので、上記式1は、以下の式2へと変形できる。
そこで、
m1=10g/min、m2=1g/min
H1=1931 kJ/kg、 H2=141 kJ/kg
を式1に代入すると、H3は1768kJ/kgとなり、混合された反応媒体の温度は、このエンタルピーに対応する380℃に達する。即ち、この装置では、所定の反応温度には0.05秒以内で到達できる。
(3)時間による反応器の温度推移
一般に、室温以上の温度で基質が反応するときは、基質の温度は、図2のA〜D、即ち、基質の温度が上昇する期間、基質が反応温度に保たれている期間、基質の温度が下降している期間と変化し、全期間にわたって基質は反応する。この全期間A〜Dの間にわたり生成した生成物の混合物が集積され解析されていることとなる。
ここでA〜Bを温度の上昇領域、B〜Cをセット温度領域、そしてC〜Dを終了領域と呼ぶ。ABCDの全領域で集積された反応生成物が解析されていた故に、上昇領域及び終了領域においては、未知の又は認識されていない反応が生起している可能性がある。したがって、B〜Cのセット温度領域の反応を議論するためには、他の領域(A〜B、C〜D)での温度履歴を極力少なくすることによって、無駄な反応を除去して反応の解析に明瞭さ正確さを与えることができる。
このような反応条件を満たすような反応システムは理想的ではあるが、A〜B及びD〜Cを全く除外することはできない。しかしながら、それらの領域を非常に短い瞬間とする反応システムの構築は可能である。即ち、A〜Bは、設定温度以上の高温流体と基質とを衝突させ瞬時に混合することによって、設定温度に急激に到達させることができる。また、C〜Dの領域での温度低下は、多量の低温流体と短時間で混合することによって達成することができる。本実施例では、A〜B及びD〜Cの温度領域を短時間で通過できる反応システムを作製し、それによって、反応温度を正確に設定し、反応生成物を精度よく解析・同定した。尚、この方法は、新たな超臨界流体の利用法を提示するものである。
(4)アクリル酸よりβ−アラニンの合成
次に、使用装置の操作について、図3に基づいて説明する。この装置は、番号を付した各部材により構成されている。
それらを以下に説明する。
1:水ポンプ、2:アンモニア水ポンプ、3:アクリル酸ポンプ、4:洗浄水ポンプ、5:第一熱電対、6:第二熱電対、7:圧力計、8:電子制御背圧弁、9:冷却ユニット、10:高温高圧水供給装置、11:恒温装置、12:反応器、13:合流点1、14:合流点2、15:合流点3、16:合流点4、17:合流点5、18:合流点6。
まず、この装置の立ち上げに当たっては、ラインの圧力制御、温度制御、流入流体の表示と計量等の一般的な高温高圧装置の点検を行った後、実験計画に沿った、設定条件をセットして、スタートさせた。最初の全てのラインは水で満たされていて設定圧力で稼働させた。その時の各ポンプの流速は反応条件ではなくても良い。次に、高温高圧水供給装置10を設定温度でONさせ、恒温装置11をONさせ、冷却ユニット9をONさせた後、温度設定域が約2/3付近より、反応条件で水ポンプ1及び洗浄ポンプ4の送液量を設定し、高温高圧水供給装置10は第一熱電対5による制御に切り替えた。第一熱電対5と第二熱電対6が反応管をセットしている恒温装置の温度に一致した時点で、ポンプ4はアクリル酸ポンプ2及びアンモニア水ポンプ3に切り替えて反応をスタートさせた。このプロセスでは基質の合流点より4−5cm下流に第一熱電対をセットした。したがって、流速と管の内径より推定すると、設定温度には0.004−0.005秒で達していることになる。
(5)結果
図4と表1は、反応圧力40MPaにおいて、アクリル酸よりβ−アラニンを合成する反応において、主に反応温度を変化させて、β−アラニンの生成結果を示したものである。表1又は図4から明らかなように、反応時間は、0.44ないし0.82秒と短時間であり、100〜400℃でβアラニンの生成が認められた。転化率から見ると250〜350℃の温度範囲で特に良好な値を示すことが分かる。また、本実施例にあっては、β−アラニンのみが合成され、α−アラニン及びアクリルアミドは合成されていないことからみて、高純度のβ−アラニンが製造できるのみならず、β−アラニンのみを選択的に製造することもできる。また、これらの結果から、通常は、紫外線照射下もしくは過酸化物の存在下での反応条件でしか起こらないと考えられていたアンチマルコニコフ付加反応が本発明では選択的に起こっていることが明らかであり、本発明は、β−アミノ酸の選択的製造に有用であることも分かる。
実施例14
実施例1ないし13で使用したアクリル酸より炭素が1個だけ多いクロトン酸に本発明を適用した。上記実施例1ないし13と同様の条件下で反応が起こり、クロトン酸より3−アミノ酪酸を選択的に製造することができた。図5に示されている「反応の相対物質収率」によると、本発明による、3−アミノ酪酸の製造では、270〜320℃付近での物質収支が良好であることが分かる。
以上詳述したように、本発明は、高温高圧水を反応媒体として、不飽和カルボン酸とアンモニアからアミノカルボン酸を製造する方法に係るものであり、本発明により、有機溶媒、触媒あるいはハロゲン化合物を使用しない新規な反応系が実現でき、廃液、廃触媒、廃酸等の処理をしなくても良く、環境にやさしいアミノカルボン酸の製造方法を提供することができる。また、上記反応プロセスで使用している原料は、主に水とアンモニアであるため、本発明は、原料の再利用がしやすい反応であり、高速反応であり、また、不純物が少なく、アンチマルコニコフ付加反応が選択的に生起するため、目的とする構造の化合物のみを得ることができるという利点を有している。
本発明のアミノカルボン酸の製造方法は、そうした特徴点を有しているために、特に、低分子量のアミノ酸の製造方法として有用であり、それにより、アミノ酸類を原料とする機能性有機化合物、医薬農薬、金属イオン分析試薬、ペプチド合成等の原材料として有用なアミノカルボン酸を製造し、提供することを可能とするものであって、産業上の利用価値のきわめて高いものである。
温度上昇の原理を説明する図を示す。 スタートから終了までの反応器内での温度推移を示す。 本発明を実施するために使用した反応装置を示す。 アクリル酸よりβ−アラニンを製造する際の転化率と反応温度との関係を示す。 クロトン酸を原料とするアミノカルボン酸の製造における相対物質収支率を示す。
符号の説明
(図3の符号)
1:水ポンプ
2:アンモニア水ポンプ
3:アクリル酸ポンプ
4:洗浄水ポンプ
5:第一熱電対
6:第二熱電対
7:圧力計
8:電子制御背圧弁
9:冷却ユニット
10:高温高圧水供給装置
11:恒温装置
12:反応器
13:合流点1
14:合流点2
15:合流点3
16:合流点4
17:合流点5
18:合流点6

Claims (6)

  1. 高温高圧状態の反応媒体中で、不飽和カルボン酸である、カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物とアンモニア又はアルキルアミンとを反応させて、反応時間10秒ないし0.1秒の一段階反応でアミノカルボン酸を選択的に合成するβ−アラニン又は3−アミノ酪酸からなるアミノカルボン酸の製造方法であって、
    (1)高温高圧水を反応媒体として利用する流通反応装置において、1)反応温度より高温の高温高圧水を所定の速度で高圧ライン系に供給し、2)反応温度より低温の不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンの基質流体を所定の速度で高圧ライン系に供給し、3)これらを合流させることにより反応系の反応温度を短時間で設定温度に到達させ、4)上記1)〜3)により、副生成物の生成を抑制して選択的にアミノカルボン酸を製造すること、(2)反応媒体が、温度100ないし450℃、圧力0.1ないし50MPaであること、(3)反応系に触媒を含まないこと、を特徴とする上記アミノカルボン酸の製造方法。
  2. 高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体とを混合することにより、該高温高圧水よりも低温に設定されている反応温度に短時間で到達できるようにした請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
  3. 高温高圧水と上記不飽和カルボン酸と、アンモニア又はアルキルアミンを含有する基質流体との重量比が40:1〜3:1である請求項2に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
  4. カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルから選択される請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
  5. カルボキシル基を有するエチレン系炭化水素化合物が、クロトン酸又はそのエステルである請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
  6. 反応媒体が亜臨界水又は超臨界水である請求項1に記載のアミノカルボン酸の製造方法。
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