JP4482776B2 - 人造繊維の巻き取り方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は人造繊維を工業的に生産する技術に関する。特に、多数のヤーンを同一の処理装置で処理して巻き取る際にヤーン同士が互いに干渉することなく安定して生産する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
設備の生産能力を高めるために、複数の紡糸口金から吐出させたヤーンを同一の延伸装置もしくは水洗・乾燥装置、熱処理装置、表面処理装置で、処理した後に、個々のヤーンをチーズとして巻き取るのが一般的である。このような方式で、ヤーンを個別の巻き取り機に導く際に処理装置出口から巻き取り機までの距離がヤーン毎に順次長くなるように配置される。ヤーンの数が少ない場合には、装置出口から巻き取り機までの距離が数メートルで収まるが、ヤーンの数が増えてくると5メートルもしくはそれ以上になる。この際の糸道を安定化させるために非駆動式のガイドロールが用いられる。
個々のヤーンが所定量のパッケージとして巻き取られた際に、空のスプールに切り替える作業で糸が弛んだ時や、工程途中で糸が切れた際に糸端が弛んで走行してきた際に、別のヤーンと干渉して共切れが発生するトラブルで生産ロスが発生する問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、多数のヤーンを同時に処理して個々のパッケージに巻き取る際にも処理装置と巻き取り機の間でヤーン同士が干渉することが少ない人造繊維を製造する技術を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、同一の駆動ローラー上を5mm以上の間隔で複数本、特に9本以上のヤーンを平行に走行させた後に個別の巻き取り装置で巻き取る際に、前記駆動ロールと前記個々の巻き取り装置のガイドローラーとの間に接糸部が直線であるローラーを設けて人造繊維を巻き取る方法である。
【0005】
以下、更に本発明を詳述する。投資コストを抑えて経済的に人造繊維を生産するためには1つの処理装置内で可能な限り多くのヤーンを処理することが好ましい。ただし、同時に処理する本数が8本以下の場合は、1台の巻き取り機もしくは2台の巻き取り機で8本同時もしくは4本ずつ巻き取る事も可能であり、特に本発明による工夫をしなくても比較的容易に生産することができる。さらに多数即ち、9本以上のヤーンを同時に処理する場合には多数の巻き取り機をヤーンの走行方向に配列して巻き取る方式がハンドリング上好ましい。また、処理装置出口部には多数のヤーンを安定的に引き出すために駆動ロールが必要である。
【0006】
駆動ロールを平行して走行するヤーンの間隔は間隔が狭いとヤーンの僅かな蛇行の度に隣り合うヤーンが干渉して毛羽立ちやひどい場合にはヤーンの一部が飛び移る欠点が発生する。一方、処理装置をコンパクトにする観点ではヤーンの間隔は狭い方が好ましい。したがって、ヤーン間隔の好ましい範囲は、5mm以上50mm以下でより好ましくは、5mm以上30mm以下である。
【0007】
ヤーンを個々の巻き取り機で引き取る際に、上記駆動ロールから巻き取り機までの距離は可能な限り短くすることが好ましいが複数本、特に9本以上のヤーンを同台数の巻き取り機で巻き取る場合には、台数が多くなると数メーター以上の距離になる。この場合、中間にガイドローラーなどの支持点を設けないと揺れが大きく5mm以上の間隔で走行させてもヤーン同士が干渉する。この問題を解消するための支持点として溝付きのガイドロールや固定式のフックガイドを利用する事ができるが、振動や作業のミスで容易に外れて機能しなくなる。また、スネルガイドなどの外れ防止機能がある支持点は作業性が悪く適さない。本発明では支持点として接糸部分が直線状のガイドローラーを用いる、直線状であるのはヤーンが平行して走行し寄りつかないようにするためであり、ローラーを用いるのはヤーンとの摩擦でスカムが発生し製品欠点となるのを防止する為である。ガイドローラーの表面は、梨地仕上げのハードクロムめっきや、目埋めを施したセラミックスコート、ダイヤモンドコートなどが好ましい。
【0008】
また、ガイドローラーを利用する目的がヤーンとの摩擦の低減であるのでガイドローラーは軽く回転する必要がある。軽く回転させるためには回転体が軽量で慣性モーメントが小さいこと、軸受けが回転するか軸に駆動装置が取り付けられている事が好ましい。実用的な観点からガイドローラーを空気軸受け式(エアベアリング方式)にすることが特に望ましい。
【0009】
多数のヤーンを1本の接糸部が直線状のガイドロールに通す場合に、個々のヤーンの識別が困難である、中央部のヤーンだけをかけ直す際に作業性が悪いなどの問題が生じる。そこで、例えば24本のヤーンを12本づつの2組に分けて上下2段に設置した2本の接糸部が直線状のガイドロールを通す事が好ましい。2組に分ける分け方はヤーン間隔を広げる目的で1つ置きに交互にしてもよく、近い巻き取り機に向かうヤーン同士を集めても良い。
【0010】
処理装置と巻き取り機との間には、ガイドロールの他に種々の装置を配置することが可能である、たとえば紡糸油剤を付与する装置、インタレーサー、巻き取り機毎に駆動式の引き取りローラーを設ける事。糸切れや毛羽を検知するセンサーや自動切断装置や吸引装置などを設けることで、安定生産に役立てることができる。
【0011】
本発明を利用できる人造繊維としては、低速でプロセス可能な炭素繊維、湿式もしくは乾湿式紡糸で得られるフィラメントとして、リヨセル、ポリベンザゾール、アラミド、ポリイミド。超高分子量ポリエチレン繊維の巻き取り工程。ポリベンザゾールの熱処理工程に好適である。
【0012】
【実施例】
以下、更に実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1、2および比較例1>
555dTexの24本のPBOヤーンを乾燥装置出口と駆動ローラーユニットとの間に設けた油剤付与ノズルを用いてヤーンピッチを4,6,8mmに調整し、24台の巻き取り機で巻き取りを行った。駆動ローラーユニットには、6本のローラーが図−1のように配列し24本の糸を平行に走行させることができる。巻き取り機は上下2段に積み上げてヤーンの進行方向に12列並べた。この際の駆動ローラーユニット出口ローラーから最も近い巻き取り機(以下1番巻き取り機と表す)までの水平距離は620mmで、最も遠い巻き取り機(近い順に番号を付し24番巻き取り機とする)までの水平距離は8100mmであった。1番巻き取り機の上と9番巻き取り機の上に各々1本の外径45mm長さ320mmのエアベアリンク式ガイドローラーを取り付けてその上面にヤーンを走行させた。1番巻き取り機の上のガイドローラーには24本の糸を走行させ、9番巻き取り機の上のガイドローラーには16本の糸を走行させてヤーン速度480m/分で24台の巻き取り機に巻き取った。糸干渉によるトラブルは、4mmピッチ(比較例1)では3件/日、6mmピッチ(実施例1)では0.15件/日、8mmピッチ(実施例2)では20日以上糸干渉によるトラブルが発生しなかった。
【0014】
ヤーン間ピッチが5mm未満ではガイドロールを用いても隣り合うヤーン同士が干渉して操業が不安定になることが明らかである。
【0015】
<実施例3>
実施例1(ヤーンピッチ6mm)において、1番巻き取り機の上のガイドローラーを3本に変更して鉛直方向に100mm間隔で配列し、それぞれのガイドロールの上面に8本づつを通し、9番巻き取り機の上に設けたガイドロールを2本に変更しそれぞれに8本ずつ通糸した。この際に、隣り合うヤーン同士が異なるガイドロールの上面を走行するようにすることで、1番巻き取り機の上のガイドローラーでは18mmピッチ、9番巻き取り機の上のガイドローラーでは12mmピッチの間隔で走行させることができた。この方式では、平均のヤーン同士の干渉トラブルは0.02件/日であった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によると、同一の処理装置で多数のヤーンを同時に処理する際にヤーン同士が干渉することなく安定して操業する事ができ。設備投資の圧縮と生産性の向上を同時に満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた駆動ロール配列を説明するための側面の模式図。
【符号の説明】
1・・・・・・駆動ロールユニット、2・・・・・・駆動ロール、3・・・・・・ヤーン、4・・・・・・給油ガイド。
Claims (3)
- 同一の駆動ローラー上を5mm以上の間隔で9本以上のヤーンを平行に走行させた後に個別の巻き取り装置で巻き取る際に、ヤーンピッチは油剤付与ノズルにより調整され、前記駆動ロールと前記個々の巻き取り装置のガイドローラーとの間に接糸部分が直線状であるガイドローラーを設けて人造繊維を巻き取る方法。
- ガイドローラーの表面が、梨地仕上げのハードクロムめっき、目埋めを施したセラミックスコート、ダイヤモンドコートのいずれか、あるいは複数により表面加工されていることを特徴とする、請求項1記載の人造繊維を巻き取る方法。
- ヤーンの間隔は5mm以上50mm以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の人造繊維を巻き取る方法
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