JP4481535B2 - 血小板捕捉フィルターおよび血小板因子回収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血小板捕捉フィルターおよび血小板因子回収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、血小板由来の因子を採取する場合には、遠心分離法により全血血液から血小板を分離した後に、トロンビン等の血小板活性化剤を血小板に添加して、血小板を活性化させることにより、血小板から放出される因子(以下、「血小板因子」と言う。)を回収することが行なわれている。
【0003】
この血小板因子としては、例えば、血小板由来増殖因子(Platelet derived growth factor ; PDGF)、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor ; TGF)、上皮細胞成長因子(Epidermal growth factor ; EGF)、インスリン様増殖因子(Insulin like growth factor ; IGF)等が挙げられる。
【0004】
そして、回収されたこれらの血小板因子は、創傷治療促進剤の原料として用いられている。
【0005】
従来、血小板を活性化させる操作を行なう際には、その操作に先立って、▲1▼遠心分離操作により、多血小板血漿(PRP)、濃厚血小板(PC)のような血漿中に血小板が浮遊した状態のもの(血小板浮遊液)を調整し、さらに、▲2▼前記血小板浮遊液において、血小板を沈降させた後、上清血漿を洗浄除去する前操作(前処理)が行なわれているが、この前処理には、多大な手間と時間とを要とするという問題点があった。
【0006】
この問題点を解決するものとして、特表平7−507558号公報には、遠心分離法により分離された血小板浮遊液をフィルターに通して濾過し、フィルターで捕捉された血小板にトロンビン等の血小板活性化剤を添加して、血小板を活性化させることにより血小板因子を回収する方法が記載されている。
【0007】
この方法は、比較的短時間で血小板因子を回収することができるが、この方法に用いられるフィルターは、本来、白血球を主として、白血球および血小板を捕捉するためのものである。このため、特に、全血血液を濾過した場合には、フィルターに、血小板とともに多量の白血球も捕捉される。
【0008】
このため、捕捉された白血球により、経時的にフィルターの流路(細孔)が狭くなり、この流路の狭窄により、フィルターに捕捉された血小板は、刺激を受け、活性化されてしまう。
【0009】
その結果、血小板から放出された血小板因子が、濾液と一緒にフィルターを通過してしまい、血小板因子の回収率が低下するという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、例えば全血血液のような血小板を含む被処理液を濾過した際に、血小板の捕捉率が高く、かつ、白血球の捕捉率が低い血小板捕捉フィルターを提供すること、また、容易かつ短時間で、血小板から血小板因子を回収することができる血小板因子回収装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(28)の本発明により達成される。
【0014】
(1) 血小板を含む被処理液から前記血小板を捕捉する血小板捕捉フィルターであって、
流入口と流出口とを備えるハウジング内に、多孔質体で構成され、その表面をアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとを主とする共重合体で被覆されたフィルター部材を含むフィルターを収納してなり、
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)または2−メトキシエチルメタクリレート(MEMA)であり、
前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMAEA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMAPA)、および2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタアクリレート(DMAPMA)の中から選択された1つであり、
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの組成比は、85:15〜50:50であることを特徴とする血小板捕捉フィルター。
【0015】
(2) 前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、前記2−メトキシエチルアクリレート(MEA)であり、
前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)である上記(1)に記載の血小板捕捉フィルター。
(3) 前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの組成比は、80:20〜60:40である上記(1)または(2)に記載の血小板捕捉フィルター。
【0016】
(4) 前記フィルター部材は、その平均孔径が5〜20μmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
【0017】
(5) 前記フィルター部材は、膜状多孔質体で構成され、それらを複数積層してなるものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
【0018】
(6) 前記フィルター部材を構成する複数の前記膜状多孔質体は、それぞれ、不織布または発泡体で構成されている上記(5)に記載の血小板捕捉フィルター。
【0019】
(7) 前記フィルターは、その平均孔径または表面のゼータ電位のいずれか一方が、前記フィルター部材と異なるプレフィルター部材を含み、
該プレフィルター部材は、前記ハウジング内の前記フィルター部材より前記流入口側に位置している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
【0020】
(8) 前記プレフィルター部材は、その平均孔径が、30〜100μmである上記(7)に記載の血小板捕捉フィルター。
【0021】
(9) 前記プレフィルター部材は、その表面のゼータ電位が、0〜25mVである上記(7)に記載の血小板捕捉フィルター。
【0022】
(10) 前記プレフィルター部材は、膜状多孔質体で構成され、それらを複数積層してなるものである上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
【0023】
(11) 前記プレフィルター部材を構成する複数の前記膜状多孔質体は、それぞれ、不織布または発泡体で構成されている上記(10)に記載の血小板捕捉フィルター。
【0024】
(12) 前記フィルター全体に対する前記フィルター部材の占める体積率は、50%以上である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
【0025】
(13) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の血小板捕捉フィルターと、
前記流入口に接続され、前記血小板捕捉フィルター内に、前記被処理液を供給する第1のラインと、
前記流出口に接続され、前記血小板捕捉フィルター内を通過した液体を回収する第2のラインと、
前記血小板捕捉フィルターにより捕捉された血小板を活性化させ、該血小板から放出される血小板因子を回収する血小板因子回収手段とを有することを特徴とする血小板因子回収装置。
【0026】
(14) 前記血小板回収手段は、前記血小板を物理的刺激により活性化させる上記(13)に記載の血小板因子回収装置。
【0027】
(15) 前記血小板因子回収手段は、前記第1のラインおよび/または前記第2のラインの一部を共用するよう構成されている上記(13)または(14)に記載の血小板因子回収装置。
【0028】
(16) 前記血小板因子回収手段は、前記血小板捕捉フィルターを介して設置された一対の容器を有し、このうち、第1の容器は、前記第1のラインに接続され、第2の容器は、前記第2のラインに接続されている上記(13)ないし(15)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0029】
(17) 前記第1のラインの途中には、第1の流路切替器具が設置され、該第1の流路切替器具を介して、前記第1の容器が前記第1のラインに接続されている上記(16)に記載の血小板因子回収装置。
【0030】
(18) 前記第2のラインの途中には、第2の流路切替器具が設置され、該第2の流路切替器具を介して、前記第2の容器が前記第2のラインに接続されている上記(16)または(17)に記載の血小板因子回収装置。
【0031】
(19) 前記第1の容器と前記第2の容器との間で、血小板に刺激を与えるための液体を移動させることにより、前記血小板捕捉フィルターに捕捉された血小板と接触させ、これにより、前記血小板を活性化させる上記(16)ないし(18)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0032】
(20) 前記液体の移動は、少なくとも1往復行なわれる上記(19)に記載の血小板因子回収装置。
【0033】
(21) 前記血小板の活性化操作時における前記液体の流量は、0.5〜10mL/secである上記(19)または(20)に記載の血小板因子回収装置。
【0034】
(22) 前記第1の容器および前記第2の容器は、それぞれ、シリンジである上記(16)ないし(21)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0035】
(23) 前記血小板捕捉フィルター内に、洗浄液を供給する第3のラインを有する上記(13)ないし(22)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0036】
(24) 前記第3のラインは、前記血小板因子回収手段の上流側に接続されている上記(23)に記載の血小板因子回収装置。
【0037】
(25) 前記第3のラインは、前記第1のラインの途中に接続されている上記(23)または(24)に記載の血小板因子回収装置。
【0038】
(26) 前記血小板捕捉フィルター内を通過した後の前記洗浄液を回収する第4のラインを有する上記(23)ないし(25)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0039】
(27) 前記第4のラインは、前記第2のラインの途中に接続されている上記(26)に記載の血小板因子回収装置。
【0040】
(28) 前記被処理液は、全血血液である上記(13)ないし(27)のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の血小板捕捉フィルターおよび血小板因子回収装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明の血小板因子回収装置の全体構成を示す概略図であり、図2は、本発明の血小板捕捉フィルターの構成を示す分解斜視図(一部断面で示す)である。
【0043】
図1に示す血小板因子回収装置1は、血小板を含む被処理液から血小板を捕捉し、かかる血小板から放出される血小板因子(以下、単に、「血小板因子」と言う。)を回収するための装置であり、本発明の血小板捕捉フィルター7と、第1のライン(被処理液供給ライン)2と、第3のライン(洗浄液供給ライン)3と、第2のライン(濾過済液回収ライン)4と、第4のライン(洗浄済液回収ライン)5と、血小板因子回収手段6とを有している。以下、各部の構成について、順次説明する。
【0044】
なお、以下の説明では、血小板を含む被処理液として、全血血液を処理する場合を代表に説明する。
【0045】
まず、本発明の血小板捕捉フィルター7から説明する。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、血小板のフィルターへの吸着率は、白血球のそれよりも、フィルターの表面のゼータ電位の影響を受け易いことを見い出した。すなわち、本発明者は、フィルターの表面のゼータ電位を適宜設定することにより、フィルターに血小板をより選択的に捕捉させることができることを見い出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0046】
図2に示す血小板捕捉フィルター7は、全血血液から血小板を捕捉する機能を有するものであり、ハウジング8と、ハウジング8内に設置されたフィルター9と、フィルター9の支持部材10a、10bとで構成されている。換言すれば、血小板捕捉フィルター7は、ハウジング8内に、フィルター9および支持部材10a、10bを収納してなるものである。
なお、以下の説明では、図2中、上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
【0047】
ハウジング8は、有底筒状をなす第1のハウジング部材(下部ハウジング部材)81と、第1のハウジング部材81に装着(固定)される天板部(天井)を有し、ほぼ筒状をなす第2のハウジング部材(上部ハウジング部材)82とで構成されている。
【0048】
第1のハウジング部材81の底部には、ハウジング8内に連通する流出口(液体排出口)811が突出形成されている。
【0049】
第1のハウジング部材81の内側下部には、内腔部812を縮径した縮径部813が形成されている。第1のハウジング部材81に第2のハウジング部材82を装着し、内部にフィルター9および支持部材10a、10bを収納した状態(以下、この状態を、「血小板捕捉フィルター7の組み立て状態」と言う。)では、縮径部813に支持部材10aが設置(収納)される。
【0050】
また、血小板捕捉フィルター7の組み立て状態では、内腔部812と後述する第2のハウジング部材82の内腔部822とで画成される空間には、フィルター9が設置(収納)される。
【0051】
また、第1のハウジング部材81の上部には、外周に沿って、ほぼ円筒状をなす嵌合部814が形成されている。血小板捕捉フィルター7の組み立て状態では、この嵌合部814の内側に、第2のハウジング部材82の嵌合部824が挿入される。
【0052】
第2のハウジング部材82の天板部には、ハウジング8内に連通する流入口(液体導入口)821が突出形成されている。
【0053】
第2のハウジング部材82の内側上部には、内腔部822を縮径した縮径部823が形成されている。血小板捕捉フィルター7の組み立て状態では、縮径部823に支持部材10bが設置される。
【0054】
また。第2のハウジング部材82の下部には、内周に沿って、ほぼ円筒状をなす嵌合部824が形成されている。血小板捕捉フィルター7の組み立て状態では、この嵌合部824が嵌合部814の内側に挿入され、これらが嵌合することにより、第1のハウジング部材81と第2のハウジング部材82とが固定される。
【0055】
ハウジング8の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。
【0056】
フィルター9は、それぞれ、多孔質体で構成されるフィルター部材91およびプレフィルター部材92とを有している。
【0057】
フィルター部材91は、血小板を捕捉する主たる部分であり、複数のほぼ円盤状をなす多孔質膜(膜状多孔質体)911を積層してなるものである。
【0058】
各多孔質膜911としては、それぞれ、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる不織布、発泡体(連通孔を有するスポンジ状多孔質体)、織布、メッシュ等が挙げられるが、これらの中でも、特に、不織布または発泡体を用いるのが好ましい。各多孔質膜911として、前記合成樹脂からなる不織布または発泡体を用いることにより、孔径のコントロール等が容易であり、生産性に優れるという利点がある。
【0059】
各多孔質膜911の平均厚さは、その構成材料、形態等により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、0.05〜5mm程度とするのが好ましく、0.1〜3mm程度とするのがより好ましい。
【0060】
また、多孔質膜911の設置数としては、平均厚さにより適宜設定され、特に限定されないが、例えば、2〜100枚程度とするのが好ましく、3〜80枚程度とするのが好ましい。
【0061】
フィルター部材91(各多孔質膜911)は、その表面のゼータ電位が、例えば、26〜38mV程度とされているのが好ましく、29〜35mV程度とされているのがより好ましい。フィルター部材91の表面のゼータ電位を前記範囲内とすることにより、血小板捕捉フィルター7では、血小板の捕捉率を向上させることができるとともに、白血球の捕捉率を低下させることができる。
【0062】
このため、血小板捕捉フィルター7では、血小板をより選択的に捕捉することができるので、白血球の捕捉量の増加に伴う経時的なフィルター部材91の流路(細孔)の狭窄(以下、単に、「目詰まり」と言う。)を好適に防止(抑制)することができる。その結果、血小板捕捉フィルター7では、フィルター部材91に捕捉された血小板が、この目詰まりにより刺激を受け、活性化されるのを好適に防止(抑制)することができる。
【0063】
なお、フィルター部材91の表面のゼータ電位が低すぎると、フィルター部材91の平均孔径等によっては、血小板の捕捉率を十分にできない場合があり、一方、フィルター部材91の表面のゼータ電位が高すぎると、血小板の捕捉時に、血小板が活性化してしまう場合がある。
【0064】
このようなフィルター部材91の表面のゼータ電位の調整方法としては、例えば、▲1▼〜▲3▼の方法が挙げられる。
【0065】
▲1▼ フィルター部材91の表面を、ゼータ電位を調整可能な物質(例えばアミノ基のようなカチオン性官能基を有する物質)で後処理(例えば、被覆等)する方法。
【0066】
▲2▼ フィルター部材91の構成材料として、それ自体が前記範囲内のゼータ電位を有するものを使用する方法。
【0067】
▲3▼ フィルター部材91の構成材料中に、予めゼータ電位を調整可能な物質を含有または結合させておき、かかる材料を用いてフィルター部材91を形成する方法。
【0068】
これらの中でも、フィルター部材91の表面のゼータ電位の調整方法としては、フィルター部材91の表面を、ゼータ電位を調整可能な物質で被覆する方法を用いるのが好ましい。この方法によれば、フィルター部材91の構成材料の選択の幅を広げることができるとともに、フィルター部材91の表面のゼータ電位を、より容易かつ確実に調整することができる。
【0069】
ゼータ電位を調整可能な物質としては、フィルター部材91の表面のゼータ電位を前記範囲内に調整可能な物質であれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性官能基を有するアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとを主とする共重合体を用いるのが好ましい。この共重合体は、その付着量や、それらを構成するモノマーの組成比等を適宜設定することにより、容易にフィルター部材91の表面のゼータ電位を調整することができる。
【0070】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)、2−メトキシエチルメタクリレート(MEMA)等を用いることができる。
【0071】
一方、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMAEA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMAPA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタアクリレート(DMAPMA)等を用いることができる。
【0072】
主として、これらのモノマーで構成される共重合体で被覆されたフィルター部材91を用いることにより、血小板捕捉フィルター7では、血小板の捕捉率をより向上させることができるとともに、白血球の捕捉率をより確実に低下させることができる。
【0073】
また、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの組成比は、特に限定されないが、例えば、85:15〜50:50程度であるのが好ましく、80:20〜60:40程度であるのがより好ましい。各モノマーの組成比を前記範囲内とすることにより、血小板捕捉フィルター7には、優れた血小板の捕捉率と、血小板の捕捉時における血小板の活性化の優れた抑制効果とを両立させることができる。
【0074】
なお、各モノマーの組成比が前記下限値未満であると、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの種類等によっては、フィルター部材91の血小板の捕捉率を十分にすることができない場合があり、一方、これらの組成比が前記上限値を超えると、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの種類等によっては、フィルター部材91の血小板の捕捉時における血小板の活性化の抑制効果を十分にすることができない場合がある。
【0075】
また、フィルター部材91(各多孔質膜911)の平均孔径としては、特に限定されないが、例えば、5〜20μm程度とするのが好ましく、8〜15μm程度とするのがより好ましい。フィルター部材91の平均孔径が前記下限値未満の場合、フィルター部材91の流入口821側の面(図2中、上部の面)に、白血球が非特異的に捕捉されることがあり、その結果、目詰まりにより、捕捉された血小板が刺激を受け、活性化されることがある。一方、フィルター部材91の平均孔径が前記上限値を超えた場合、フィルター部材91では、血小板の捕捉率が低下することがある。
【0076】
換言すれば、フィルター部材91の平均孔径を前記範囲内とすることにより、フィルター部材91では、白血球の非特異的な捕捉の増大(増加)と、血小板の捕捉率の低下とを好適に防止(抑制)することができる。
【0077】
ハウジング8内には、フィルター部材91より流入口821側に、プレフィルター部材92が設置されている。
【0078】
プレフィルター部材92は、フィルター部材91の流路(細孔)に、主に白血球による目詰まりが生じるのを防止(抑制)する機能を有するものであり、複数の多孔質膜(膜状多孔質体)921を積層してなるものである。
【0079】
各多孔質膜921は、それぞれ、前記多孔質膜911と同様の合成樹脂からなる不織布または発泡体で構成され、その形状や寸法等は、前記多孔質膜911と同様のものとすることができる。
【0080】
また、多孔質膜921の設置数としては、平均厚さにより適宜設定され、特に限定されないが、例えば、1〜30枚程度とするのが好ましく、2〜10枚程度とするのが好ましい。
【0081】
このプレフィルター部材92(各多孔質膜921)は、前記フィルター部材91と、その平均孔径や表面のゼータ電位が異なるものを用いるのが好ましい。
【0082】
平均孔径を異なるものとする場合には、プレフィルター部材92の平均孔径は、フィルター部材91の平均孔径より大きく設定され、具体的には、30〜100μm程度とするのが好ましく、50〜80μm程度とするのがより好ましい。
【0083】
一方、表面のゼータ電位を異なるものとする場合には、プレフィルター部材92の表面のゼータ電位は、フィルター部材91の表面のゼータ電位より小さく設定され、具体的には、0〜25mV程度とするのが好ましく、5〜15mV程度とするのがより好ましい。
【0084】
このような構成とすることにより、プレフィルター部材92は、フィルター部材91の目詰まりを、より確実に防止(抑制)することができる。
【0085】
このプレフィルター部材92の表面のゼータ電位の調整方法としては、前記フィルター部材91で挙げたものと同様の方法を用いることができる。
【0086】
なお、プレフィルター部材92(各多孔質膜921)は、前記フィルター部材91と、その平均孔径および表面のゼータ電位のいずれか一方が異なるものであっても、双方が異なるものであってもよい。
【0087】
このようなフィルター9では、その全体に対するフィルター部材91の占める体積率が、例えば、50%以上程度であるのが好ましく、70%以上程度であるのがより好ましい。このような体積率の範囲内において、フィルター部材91とプレフィルター部材92とは、それぞれ、その機能を如何なく発揮することができる。
【0088】
フィルター9の下部および上部には、それぞれ、支持部材10a、10bが装着され、この状態でハウジング8内に収納される。支持部材10a、10bは、それぞれ、フィルター9の支持部材としての機能を有する他、フィルター9への液体の供給、フィルター9からの液体の排出を円滑に行なうための機能を有するものである。すなわち、支持部材10a、10bは、それぞれ、流路確保部材ということもできる。
【0089】
これらの支持部材10a、10bとしては、例えばシリコーン等の柔軟性を有する材料で構成されたリング101と、このリング101の内側に挿入されたメッシュ(拡散部材)102とで構成されている。リング101は、例えば0.1〜2mm程度の厚さを有している。
【0090】
支持部材10bの設置により、そのリング101の内側に流入口821に連通する空間が形成され、流入口821から流入した液体のフィルター9への流路が確保され、支持部材10aの設置により、そのリング101の内側に流出口811に連通する空間が形成され、フィルター9から流出口811へ排出される液体の流路が確保される。すなわち、前記フィルター9は、流入口821に連通する空間と流出口811に連通する空間とを区画するようハウジング8内に設置される。
【0091】
また、支持部材10a、10bにおいて、リング101の内側にメッシュ102を設置したことにより、リング101の内側空間を液体が通過する際に、均一分散(拡散)され、濾過、血小板の捕捉、洗浄等の効率を向上させることができる。
【0092】
なお、支持部材10a、10bとしては、前記構成に限定されず、例えば、各種セラミックス材料等からなる多孔質体等であってもよい。
【0093】
また、これらの支持部材10a、10bは、必要に応じて(例えば、ハウジング8の流出口811および流入口821の内径の寸法等により)、省略することもできる。
【0094】
以上説明したように、本発明の血小板捕捉フィルター7は、血小板の捕捉率が極めて高く、白血球の捕捉率が極めて低い。このため、本発明の血小板捕捉フィルター7では、全血血液を遠心分離等の前処理を施すことなくそのまま処理することができるいう利点(特徴)がある。
【0095】
次に、血小板捕捉フィルター7が組み込まれた血小板因子回収装置1全体について説明する。
【0096】
第1のライン2は、血小板捕捉フィルター7内に全血血液(被処理液)を供給するためのラインであり、主に、チューブ21と、チューブ21の一端に接続された針管22とで構成されている。チューブ21の他端は、血小板捕捉フィルター7(第2のハウジング部材82)の流入口821に接続されている。
【0097】
針管22は、瓶針で構成されており、全血血液(被処理液)が収納された血液バッグ(図示せず)のゴム栓(栓体)を刺通することができる。針管22で前記ゴム栓を刺通することにより、血小板捕捉フィルター7内と血液バッグ(容器)内とを連通して、全血血液を血小板捕捉フィルター7内へ供給することができる。
【0098】
チューブ21の途中には、チューブ21の内部流路を遮断・開放し得る流路開閉手段としてのクランプ24が設置されている。
【0099】
また、チューブ21の途中には、血小板捕捉フィルター7の近傍に、後述する血小板因子回収手段6を構成するシリンジ61を接続する第1の三方活栓(第1の流路切替器具)62が設置されている。
【0100】
なお、本実施形態では、チューブ21の一端には、針管22が接続されているが、これに代わり、直接、前記血液バッグが接続されていてもよい。
【0101】
また、針管22は、例えば翼状針等の穿刺針で構成されていてもよい。この場合、穿刺針を供血者(ドナー)の血管に穿刺して、直接、供血者から血小板捕捉フィルター7内に採血血液を供給することができる。なお、この場合、第1のラインの途中には、採血血液中に抗凝固剤を添加するための抗凝固剤供給ラインを接続しておくようにするのが好ましい。
【0102】
第3のライン3は、血小板捕捉フィルター7内に洗浄液を供給するためのラインであり、主に、チューブ31と、チューブ31の一端に接続された針管32とで構成されている。チューブ31の他端は、Y字状の分岐コネクタ33を介して、チューブ21の途中に接続されている。すなわち、第3のライン3は、第1のライン2の途中に接続されている。
【0103】
針管32は、瓶針で構成されており、洗浄液が収納された洗浄液バッグ(図示せず)のゴム栓(栓体)を刺通することができる。針管32で前記ゴム栓を刺通することにより、血小板捕捉フィルター7内と洗浄液バッグ(容器)内とを連通して、洗浄液を血小板捕捉フィルター7内へ供給することができる。
【0104】
チューブ31の途中には、このチューブ31の内部流路を遮断・開放し得る流路開閉手段としてのクランプ34が設置されている。
【0105】
また、前記分岐コネクタ33は、後述する血小板因子回収手段6の第1の三方活栓62より上流側に設置されている。すなわち、第3のライン3は、血小板因子回収手段6の上流側に接続されている。
【0106】
第3のライン3により供給される洗浄液としては、例えば、生理食塩水、ハンクス平衡塩溶液、ダルベッコ平衡塩溶液のような各種電解質液、または、ブドウ糖液のような糖液や、ACD−A液、CPDA−1液のような血液保存液等が好適に使用される。
【0107】
なお、本実施形態では、チューブ31の一端には、針管32が接続されているが、これに代わり、直接、前記洗浄液バッグが接続されていてもよい。
【0108】
また、チューブ31の他端は、直接、血小板捕捉フィルター7に接続されていてもよい。
【0109】
さらに、第3のライン3は、必要に応じて、省略することもできる。この場合、第1のライン2の針管21を前記洗浄液バッグに繋ぎ換えて用いるようにすればよい。
【0110】
第2のライン4は、血小板捕捉フィルター7内を通過した後の全血血液(被処理液:液体)、すなわち、血小板が捕捉された後の全血血液(処理済液)を回収するためのラインであり、主に、一端が血小板捕捉フィルター7(第1のハウジング部材81)の流出口811に接続され、他端が処理済液回収バッグ40内に連通するよう接続されたチューブ41で構成されている。
【0111】
チューブ41の途中には、チューブ41の内部流路を遮断・開放し得る流路開閉手段としてのクランプ44が設置されている。
【0112】
また、チューブ41の途中には、血小板捕捉フィルター7の近傍に、後述する血小板因子回収手段6を構成するシリンジ63を接続する第2の三方活栓(第2の流路切替器具)64が設置されている。
【0113】
本実施形態では、チューブ41の他端には、処理済液回収バッグ40が接続されているが、これに代わり、例えば、返血ラインおよび返血用ポンプ等で構成される返血手段を設け、処理済液が、直接、供血者に返血されるようにしてもよい。
【0114】
第4のライン5は、血小板捕捉フィルター7内を通過した後の洗浄液(洗浄済液)を回収するためのラインであり、主に、一端がチューブ41の途中に設置されたY字状をなす分岐コネクタ53に接続され、他端が洗浄済液回収バッグ50内に連通するよう接続されたチューブ51で構成されている。すなわち、第4のライン5は、第2のライン4の途中に接続されている。
【0115】
チューブ51の途中には、このチューブ51の内部流路を遮断・開放し得る流路開閉手段としてのクランプ54が設置されている。
【0116】
また、前記分岐コネクタ53は、後述する血小板因子回収手段6の第2の三方活栓64より下流側に設置されている。
【0117】
なお、チューブ51の一端は、直接、血小板捕捉フィルター7に接続されていてもよい。
【0118】
また、第4のライン5は、必要に応じて、省略することもできる。この場合、前記洗浄済液は、第2のライン4を用いて回収するようにすればよい。
【0119】
血小板因子回収手段6は、血小板捕捉フィルター7により捕捉された血小板を活性化させ、この血小板から放出される血小板因子を回収する機能を有するものであり、主に、血小板捕捉フィルター7を介して設置された一対のシリンジ(第1の容器および第2の容器)61、63で構成されている。
【0120】
このうち、シリンジ(第1の容器)61は、第1の三方活栓(第1の流路切替器具)62を介して、チューブ21(第1のライン2)の途中に接続され、また、シリンジ(第2の容器)63は、第2の三方活栓(第2の流路切替器具)64を介して、チューブ41(第2のライン4)の途中に接続されている。
【0121】
血小板因子回収手段6では、第1の三方活栓62および第2の三方活栓64の流路の切替により、シリンジ61とシリンジ63との間で、交互に液体を移動させることができる。すなわち、血小板因子回収手段6は、液体が移動可能な流路(液流通手段)を有しており、本実施形態では、この流路が第1のライン2および第2のライン4の一部を共用するよう構成されている。これにより、血小板因子回収装置1の簡略化および小型化を図ることができる。
【0122】
また、本実施形態では、この流路の上流側に第3のライン3が接続されているため、後述するように、血小板因子の回収操作に先立って、流路内が洗浄液で洗浄されることとなる。このため、得られる血小板因子への不要性分(特に、白血球)等の混入をより低下させることができる。
【0123】
なお、血小板因子回収手段6は、第1のライン2および第2のライン4のいずれか一方と、その一部を共用するよう構成されていてもよいし、また、第1のライン2および第2のライン4と、別途、独立して設けられていてもよい。
【0124】
このような血小板因子回収手段6では、シリンジ61、63との間で、血小板に刺激を与えるための液体を移動させることにより、血小板捕捉フィルター7に捕捉された血小板と接触させ、これにより、血小板を活性化させる。すなわち、血小板因子回収手段6は、血小板を物理的刺激により活性化させるよう構成されている。
【0125】
そして、このとき、血小板因子回収手段6では、血小板から放出される血小板因子を、前記液体とともに、シリンジ61またはシリンジ63に回収する。
【0126】
血小板の活性化の方法としては、例えば、トロンビンのような惹起物質の血小板への接触によって行なうこともできるが、物理的刺激で血小板を活性化させるのが好ましい。これにより、血小板の活性化にあたり、生体由来の惹起物質を用いる場合に比べ、得られる血小板因子中へ細菌やウィルス等が混入する危険性をより確実に回避することができるという利点がある。
【0127】
使用する液体としては、血小板因子に悪影響を与えず、かつ、生体に対しても悪影響を与えることのないものであれば、特に限定されず、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液等を用いることができる。
【0128】
血小板の活性化操作時における液体の流量としては、特に限定されないが、例えば、0.5〜10mL/sec程度であるのが好ましく、1〜5mL/sec程度であるのがより好ましい。これにより、血小板をさらに確実に活性化させることができる。
【0129】
なお、血小板の活性化に用いる物理的刺激としては、血小板への液体の接触による刺激の他、例えば、超音波、電気、温度変化等による各種刺激が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。血小板の活性化に用いる物理的刺激として、超音波、電気、温度変化等による各種刺激を用いる場合には、血小板因子回収手段6には、これらの各種刺激を、血小板(血小板捕捉フィルター7)に付与することができる各種手段を設けるようにすればよい。
【0130】
前記各チューブ21、31、41、51の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルを用いるのが好ましい。これらのチューブがポリ塩化ビニル製であれば、十分な可撓性、柔軟性が得られるので取り扱いがし易く、また、クレンメ等による閉塞にも適するからである。
【0131】
また、前記各分岐コネクタ33、53の構成材料についても、それぞれ、前記チューブで挙げた構成材料と同様のものを用いることができる。
【0132】
また、前記処理済液回収バッグ40および洗浄済液回収バッグ50の構成材料としては、それぞれ、例えば、軟質ポリ塩化ビニルが好適に使用される。
【0133】
次に、血小板因子回収装置1の使用方法の一例について説明する。
[1] まず、図1に示すように、第1のライン2および第3のライン3が、それぞれ血小板捕捉フィルター7より鉛直上方に位置し、また、第3のライン4および第4のライン5が、それぞれ血小板捕捉フィルター7より鉛直下方に位置するようにして設置する。
【0134】
また、第1の三方活栓62および第2の三方活栓64の部分においては、それぞれ、チューブ21、41の内部流路が連通した状態としておく。
【0135】
なお、このとき、各クランプ24、34、44、54は、それぞれ、閉状態とされており、かかる部分において、各チューブ21、31、41、51は、それぞれ、その内部流路が閉塞されている。
【0136】
次いで、この状態で、全血血液が収納された血液バッグ(図示せず)の排出口に、第1のライン2の針管22を、また、洗浄液が収納された洗浄液収納バッグ(図示せず)のゴム栓に、第3のライン3の針管32を、それぞれ刺通する。
【0137】
[2] 次に、クランプ24、44を、それぞれ開状態として、チューブ21、41の内部流路を開放して、血液バッグ内の全血血液を、チューブ21を介して、血小板捕捉フィルター7内へ供給し、血小板捕捉フィルター7内を通過した後の全血血液(処理済液)をチューブ41を介して処理済液回収バッグ40内へ回収する。
【0138】
より具体的には、血液バッグ内の全血血液を、落差(自重)によりチューブ21を介して移送し、ハウジング8(第2のハウジング部材82)の流入口821から血小板捕捉フィルター7内へ供給する。全血血液は、支持部材10bのリング101内を通過する際に、その流れがフィルター9の中央部から放射状に均一に分散され、プレフィルター部材92を構成する各多孔質膜921およびフィルター部材91を構成する各多孔質膜911を、それぞれ通過する。このとき、血小板は、主にフィルター部材91において捕捉され、その他の成分(不要成分)は、フィルター部材91を通過し、支持部材10aを経て、ハウジング8(第1のハウジング部材81)の流出口811から排出される。そして、処理済液(血小板が捕捉された後の全血血液)を、落差(自重)によりチューブ41を介して移送し、処理済液回収バッグ40内へ回収する。
このようにして、全血血液中より血小板が濾別・分離される。
【0139】
血小板の捕捉が終了したら、クランプ24、44を、それぞれ閉状態として、チューブ21、41の内部流路を閉塞する。
【0140】
[3] 次に、クランプ34、54を、それぞれ開状態として、チューブ31、51の内部流路を開放して、洗浄液バッグ内の洗浄液を、チューブ31を介して、血小板捕捉フィルター7内へ供給し、血小板捕捉フィルター7内を通過した後の洗浄液(洗浄済液)をチューブ51を介して洗浄済液回収バッグ50内へ回収する。
【0141】
より具体的には、洗浄液バッグ内の洗浄液を、落差(自重)によりチューブ31を介して移送し、ハウジング8の流入口821から血小板捕捉フィルター7内へ供給して、ハウジング8内、特に、フィルター9を洗浄する。これにより、ハウジング8の内面やフィルター9等に付着している不要成分(特に、赤血球、白血球)が洗い流され、ハウジング8の流出口811より排出される。そして、洗浄済液を、落差(自重)によりチューブ51を介して移送し、洗浄液回収バッグ50内へ回収する。
【0142】
このような洗浄を行なうことにより、得られる血小板因子への不要成分の混入を、より確実に低下させることができる。
なお、このような洗浄は、任意であり、省略することもできる。
【0143】
血小板捕捉フィルター7内の洗浄が終了したら、クランプ34、54を、それぞれ閉状態として、チューブ31、51の内部流路を閉塞する。
【0144】
[4] 次に、第1の三方活栓62および第2の三方活栓64を操作して、シリンジ61の内部空間とシリンジ63の内部空間とが連通するようにする。
【0145】
ここで、本実施形態では、シリンジ61内に、血小板に刺激を与えるための液体が収納されているものとする。
【0146】
この状態で、シリンジ61のプランジャを、内部空間の容積が減少する方向に移動操作すると、シリンジ61内から前記液体が排出され、第1の三方活栓62を経て、血小板捕捉フィルター7内へ供給される。かかる液体は、血小板捕捉フィルター7内において、フィルター9に捕捉された血小板と接触する。なお、液体の流量は、前述したような範囲に設定される。これにより、血小板は、活性化され、血小板因子を放出する。
【0147】
血小板から放出された血小板因子は、前記液体とともに、ハウジング8の流出口811より排出され、第2の三方活栓64を経て、シリンジ63内に収納される。なお、このとき、シリンジ63の内部空間の容積が増大し、これに伴ってシリンジ63のプランジャも移動する。
【0148】
このような操作(液体の移動)は、1回のみでもよいが、例えば、少なくとも1往復行なうのが好ましく、3〜15往復程度行なうのがより好ましい。これにより、血小板をより確実に活性化させることができ、その結果、血小板因子の収率を増大させることができる。
【0149】
このようにして、シリンジ61またはシリンジ63に、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、インスリン様増殖因子(TGF)のような血小板因子を含む液体を回収する。
【0150】
以上、本発明の血小板捕捉フィルターおよび血小板因子回収装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0151】
フィルター部材およびプレフィルター部材は、それぞれ、複数の多孔質膜(膜状多孔質体)を積層してなるものに代わり、例えばブロック状(塊状)等の多孔質体で構成されたものであってもよい。
【0152】
また、フィルターは、プレフィルター部材を、必要に応じて省略して、フィルター部材のみで構成されたものであってもよい。
【0153】
また、フィルターは、フィルター部材およびプレフィルター部材と異なる他の部材を、さらに含む(有する)ものであってもよい。
【0154】
また、血小板因子回収手段が有する第1の容器および第2の容器は、それぞれシリンジに代わり、例えば、可撓性を有するバック(容器)等で構成されていてもよい。
【0155】
また、前記実施形態では、被処理液として、全血血液を代表に説明したが、本発明では、例えば、多血小板血漿、濃厚血小板のような血小板懸濁液等を処理できることは言うまでもない。
【0156】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0157】
(実施例1A〜1D)
まず、フィルターの表面のゼータ電位を調整するための物質(共重合体)を合成した。
【0158】
2−メトキシエチルアクリレート(MEA)40gと、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)12gとを、ジメチルホルムアミド(DMF)240gに溶解した。
【0159】
この溶解液に、アゾイソブチルニトリル(AIBN)52mgを加え、窒素雰囲気下、75℃で6時間、反応させた。
【0160】
反応終了後、反応液を濃縮し、かかる濃縮物をアセトン約200mLに溶解し、約3Lのヘキサン中に滴下し、精製した。
【0161】
この精製操作を3回繰り返した後、析出物を約150mLのメタノールに溶解し、濃縮、真空乾燥を行い、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0162】
この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0163】
次に、2種類のポリエステル不織布(目付:30g/m2、厚さ:0.25mm、平均孔径:57.4μm、および、目付:20g/m2、厚さ:0.15mm、平均孔径:10.7μm)を用意し、かかるポリエステル不織布を、前記共重合体1%のメタノール溶液に浸漬した。なお、ポリエステル不織布の平均孔径は、パームポロメータ(PMI社製)により測定した。
【0164】
浸漬終了後、50℃に保持したRO水でシャワー洗浄を行い、70℃で乾燥し、前記共重合体でコーティングしたポリエステル不織布(コーティング済ポリエステル不織布)を得た。
【0165】
コーティング済ポリエステル不織布の表面のゼータ電位を、0.001NのKCl水溶液を媒液とし、流動電位測定装置((株)島津製作所社製「ZP20H」)で測定したところ、34.1mVであった。
【0166】
このコーティング済ポリエステル不織布を、それぞれ直径19mmに切断(カット)した。
【0167】
ハウジング内に、プレフィルター部材として、平均孔径57.4μmのコーティング済ポリエステル不織布7枚を流入口側に、フィルター部材として、平均孔径10.7μmのコーティング済ポリエステル不織布56枚を流出口側に、それぞれ設置した(有効膜面積:2.27cm2、体積:2.27cm3、フィルター全体に対するフィルター部材の体積率:82.8%)。
【0168】
また、フィルターの両面に、シリコーンゴム製リング(外径:17mm、内径15mm、厚さ:0.5mm)と、該リング内に挿入されたポリプロピレン製メッシュ(厚さ:0.25mm)とを装着し、図2に示すような血小板捕捉フィルターを作成した。
【0169】
さらに、この血小板捕捉フィルターを用いて、図1に示すような血小板因子回収装置を4つ組み立てた。
【0170】
(実施例2)
前記共重合体の0.5%メタノール溶液を用いて、ポリエステル不織布のコーティングを行なった以外は、前記実施例1と同様にして、コーティング済ポリエステル不織布を得、血小板捕捉フィルターを作成し、血小板因子回収装置を組み立てた。
【0171】
なお、コーティング済ポリエステル不織布は、その表面のゼータ電位が29.6mVであった。
【0172】
(実施例3)
前記実施例1と同様にして、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0173】
なお、この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0174】
かかる共重合体の0.5%メタノール溶液を用いて、ポリエステル不織布のコーティングを行なった以外は、前記実施例1と同様にして、コーティング済ポリエステル不織布を得、血小板捕捉フィルターを作成し、血小板因子回収装置を組み立てた。
【0175】
なお、コーティング済ポリエステル不織布は、その表面のゼータ電位が27.4mVであった。
【0176】
(実施例4)
前記実施例1と同様にして、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0177】
なお、この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0178】
かかる共重合体の1.5%メタノール溶液を用いて、ポリエステル不織布のコーティングを行なった以外は、前記実施例1と同様にして、コーティング済ポリエステル不織布を得、血小板捕捉フィルターを作成し、血小板因子回収装置を組み立てた。
【0179】
なお、コーティング済ポリエステル不織布は、その表面のゼータ電位が37.2mVであった。
【0180】
(実施例5)
前記実施例1と同様にして、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0181】
なお、この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0182】
次に、ポリウレタン発泡体(目付:130g/m2、厚さ:0.6mm、平均孔径:8.0μm)を用意し、かかるポリウレタン発泡体の一部のものを、前記共重合体0.2%のメタノール溶液に浸漬した。なお、ポリウレタン発泡体の平均孔径は、前記実施例1と同様にして測定した。
【0183】
浸漬終了後、50℃に保持したRO水でシャワー洗浄を行い、70℃で乾燥し、前記共重合体でコーティングしたポリウレタン発泡体(コーティング済ポリウレタン発泡体)を得た。
【0184】
コーティング済ポリウレタン発泡体および未コーティングのポリウレタン発泡体の表面のゼータ電位を、それぞれ、前記実施例1と同様にして測定したところ、33.5mVおよび4.7mVであった。
【0185】
これらのコーティング済ポリウレタン発泡体および未コーティングのポリウレタン発泡体を、それぞれ直径19mmに切断(カット)した。
【0186】
ハウジング内に、プレフィルター部材として、未コーティングのポリウレタン発泡体2枚を流入口側に、フィルター部材として、コーティング済ポリウレタン発泡体8枚を流出口側に、それぞれ設置した(有効膜面積:2.27cm2、体積:1.36cm3、フィルター全体に対するフィルター部材の体積率:80.0%)。
【0187】
また、フィルターの両面に、前記実施例1と同様のシリコーンゴム製リングと、ポリアミド製メッシュとを装着し、図2に示すような血小板捕捉フィルターを作成した。
【0188】
さらに、この血小板捕捉フィルターを用いて、図1に示すような血小板因子回収装置を組み立てた。
【0189】
(比較例1)
前記実施例1と同様にして、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0190】
なお、この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0191】
かかる共重合体の0.3%メタノール溶液を用いて、ポリエステル不織布のコーティングを行なった以外は、前記実施例1と同様にして、コーティング済ポリエステル不織布を得、血小板捕捉フィルターを作成し、血小板因子回収装置を組み立てた。
【0192】
なお、コーティング済ポリエステル不織布は、その表面のゼータ電位が24.9mVであった。
【0193】
(比較例2)
前記実施例1と同様にして、MEA/DMAEMA共重合体を得た。
【0194】
なお、この共重合体において、MEAとDMAEMAとの組成比は、NMRで確認したところ、75:25であった。
【0195】
かかる共重合体の2.0%メタノール溶液を用いて、ポリエステル不織布のコーティングを行なった以外は、前記実施例1と同様にして、コーティング済ポリエステル不織布を得、血小板捕捉フィルターを作成し、血小板因子回収装置を組み立てた。
【0196】
なお、コーティング済ポリエステル不織布は、その表面のゼータ電位が39.2mVであった。
【0197】
(比較例3A〜3D)
市販の赤血球製剤用白血球除去フィルター(旭メディカル社製、「セパセルRZ」)に用いられているフィルターを用意した(目付:41.3g/m2、厚さ:0.2mm、平均孔径:3.0μm)。なお、フィルターの平均孔径は、前記実施例1と同様にして測定した。
【0198】
フィルターの表面のゼータ電位を、前記実施例1と同様にして測定したところ、45.0mVであった。
このフィルターを、それぞれ直径19mmに切断(カット)した。
【0199】
ハウジング内に、かかるフィルターを、24枚設置した(有効膜面積:2.27cm2、体積:1.09cm3)。
【0200】
また、フィルターの両面に、前記実施例1と同様のシリコーンゴム製リングと、ポリプロピレン製メッシュとを装着し、図2に示すような血小板捕捉フィルターを作成した。
【0201】
さらに、この血小板捕捉フィルターを用いて、図1に示すような血小板因子回収装置を4つ組み立てた。
【0202】
[評価1]
実施例1A〜実施例4および比較例1〜3Aの血小板因子回収装置を用いて、それぞれ、クエン酸で抗凝固した健常人(ドナーD1)末梢血に対して、以下に示す処理を行ない、PDGF(血小板因子)を回収した。
【0203】
まず、ドナーD1末梢血(被処理液)35mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0204】
次いで、血小板捕捉フィルターに、2mLの生理食塩水を2mL/secの流量で10往復通液して、回収液3mLを得た。
【0205】
実施例1A〜実施例4および比較例1〜3Aの血小板因子回収装置における処理時間(血液濾過時間)、白血球通過率、血小板捕捉率、PDGF濃度(濾液、洗浄済液、回収液)、PDGF回収総量および血小板109個当たりのPDGF回収量を、それぞれ表1に示す。
【0206】
なお、白血球通過率および血小板捕捉率は、それぞれ、末梢血(被処理液)および濾液(処理済液)をサンプリングし、これらに含まれる白血球数および血小板数を、多項目自動血球分析装置(Sysmex社製、「Sysmex SE−9000」)により、それぞれ測定し、その測定結果に基づいて算出した。
【0207】
また、PDGF濃度は、ELISA法(R&D Systems社製、「Quantikine humanPDGF kit」により測定した。
【0208】
【表1】
【0209】
表1に示す結果から、フィルター部材の表面のゼータ電位を26〜38mVに設定した本発明(実施例1A〜実施例4)の血小板因子回収装置では、いずれも、処理時間が短いものであった。
【0210】
また、本発明の血小板因子回収装置では、いずれも、血小板捕捉率が極めて高く、かつ、白血球通過率が極めて高い(白血球捕捉率が極めて低い)ものであり、その結果、フィルター部材の白血球による目詰まりにより、血小板が活性化されるのを抑制することができ、濾液中および洗浄済液中への血小板因子の混入が極めて低いものであることが確認された。
【0211】
また、本発明の血小板因子回収装置では、いずれも、物理的刺激により、効率良く血小板因子を回収できることが確認された。
【0212】
特に、フィルター部材の表面のゼータ電位を29〜35mVに設定した本発明(実施例1A、2)の血小板因子回収装置では、いずれも、前記結果がより優れるものであった。
【0213】
これに対し、比較例1の血小板因子回収装置では、フィルター部材の表面のゼータ電位が低いことにより、血小板捕捉率が極めて低いものであった。
【0214】
一方、比較例2、3Aの血小板因子回収装置では、フィルター部材の表面のゼータ電位が高いことにより、白血球通過率が極めて低いもの、すなわち、血小板捕捉フィルターへの白血球の捕捉が過度に起こるものであった。
【0215】
このようなことから、比較例1〜3Aの血小板因子回収装置では、いずれも、血小板因子を効率よく回収できないものであることが確認された。
【0216】
[評価2]
実施例1Bおよび比較例3B、3Cの血小板因子回収装置を用いて、それぞれ、クエン酸で抗凝固した健常人(ドナーD2)末梢血に対して、以下に示す処理を行ない、PDGF(血小板因子)を回収した。
【0217】
(実施例1B)
まず、ドナーD2末梢血(被処理液)35mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水5mLで洗浄した。
【0218】
次いで、血小板捕捉フィルターに、2mLの生理食塩水を2mL/secの流量で10往復通液して、回収液3mLを得た。
【0219】
(比較例3B)
まず、ドナーD2末梢血(被処理液)35mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0220】
次いで、血小板捕捉フィルターに、トロンビン1U/10e8血小板となるように調製したトロンビン添加HEPES水溶液を添加し、10分間放置した後、かかるHEPES緩衝液を回収して、回収液3mLを得た。
【0221】
(比較例3C)
まず、ドナーD2末梢血(被処理液)35mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0222】
次いで、血小板捕捉フィルターに、トロンビン1U/mLのトロンビン添加HEPES緩衝液24mLを通液しつつ回収して、回収液25mLを得た。
【0223】
実施例1Bおよび比較例3B、3Cの血小板因子回収装置における処理時間(血液濾過時間)、白血球通過率、血小板捕捉率、PDGF濃度(濾液、洗浄済液、回収液)、PDGF回収総量および血小板109個当たりのPDGF回収量を、それぞれ表2に示す。
【0224】
なお、白血球通過率、血小板捕捉率およびPDGF濃度は、それぞれ、前記評価1と同様にして測定した。
【0225】
【表2】
【0226】
表2に示す結果から、本発明(実施例1B)の血小板因子回収装置では、物理的刺激による血小板因子の回収により、トロンビン刺激による場合(比較例3B、3C)を上回るだけの血小板因子の回収量を得ることが可能であった。
【0227】
[評価3]
実施例1Cおよび比較例3Dの血小板因子回収装置を用いて、それぞれ、クエン酸で抗凝固した健常人(ドナーD3)末梢血に対して、以下に示す処理を行ない、PDGF(血小板因子)を回収した。
【0228】
(実施例1C)
まず、ドナーD3末梢血(被処理液)50mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0229】
次いで、血小板捕捉フィルターに、2mLの生理食塩水を2mL/secの流量で10往復通液して、回収液3mLを得た。
【0230】
(比較例3D)
まず、ドナーD3末梢血(被処理液)50mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0231】
次いで、血小板捕捉フィルターに、トロンビン1U/10e8血小板となるように調製したトロンビン添加HEPES緩衝液を添加し、10分間放置した後、かかるHEPES溶液を回収して、回収液3mLを得た。
【0232】
実施例1Cおよび比較例3Dの血小板因子回収装置における処理時間(血液濾過時間)、白血球通過率、血小板捕捉率、PDGF濃度(濾液、洗浄済液、回収液)、PDGF回収総量および血小板109個当たりのPDGF回収量を、それぞれ表3に示す。
【0233】
なお、白血球通過率、血小板捕捉率およびPDGF濃度は、それぞれ、前記評価1と同様にして測定した。
【0234】
【表3】
【0235】
表3に示す結果から、本発明(実施例1C)の血小板因子回収装置では、被処理液量(末梢血血液量)が50mLの場合でも、35mLの場合(評価1における実施例1Aを参照)と同様の性能が確認された。
【0236】
これに対し、比較例3Dの血小板因子回収装置では、被処理液量が50mLの場合、35mLの場合(評価2における比較例3Bを参照)と比較して、明らかに、その性能が低下するものであった。
【0237】
[評価4]
実施例1D、5および6の血小板因子回収装置を用いて、それぞれ、クエン酸で抗凝固した健常人(ドナーD4)末梢血に対して、以下に示す処理を行ない、PDGF(血小板因子)を回収した。
【0238】
まず、ドナーD4末梢血(被処理液)10mLを血小板捕捉フィルターで濾過した後、血小板捕捉フィルターを生理食塩水10mLで洗浄した。
【0239】
次いで、血小板捕捉フィルターに、2mLの生理食塩水を2mL/secの流量で10往復通液して、回収液2mLを得た。
【0240】
実施例1D、5および6の血小板因子回収装置における処理時間(血液濾過時間)、白血球通過率、血小板捕捉率、PDGF濃度(濾液、洗浄済液、回収液)、PDGF回収総量および血小板109個当たりのPDGF回収量を、それぞれ表4に示す。
【0241】
なお、白血球通過率、血小板捕捉率およびPDGF濃度は、それぞれ、前記評価1と同様にして測定した。
【0242】
【表4】
【0243】
表4に示す結果から、フィルター部材の表面のゼータ電位を26〜38mVに設定した本発明(実施例1D、5および6)の血小板因子回収装置では、いずれも、処理時間が短いものであった。
【0244】
また、本発明の血小板因子回収装置では、いずれも、血小板捕捉率が極めて高く、かつ、白血球通過率が極めて高い(白血球捕捉率が極めて低い)ものであり、その結果、フィルター部材の白血球による目詰まりにより、血小板が活性化されるのを抑制することができ、濾液中および洗浄済液中への血小板因子の混入が極めて低いものであることが確認された。
【0245】
また、本発明の血小板因子回収装置では、いずれも、物理的刺激により、効率良く血小板因子を回収できることが確認された。
【0246】
<まとめ>
本発明の血小板因子回収装置(血小板捕捉フィルター)では、短時間で血小板を捕捉することが可能であった。
【0247】
また、本発明では、濾液中および洗浄済液中での血小板因子の濃度が極めて低いことから、濾過中のフィルターの目詰まりによる血小板への刺激を抑制することができるものであることが確認された。
【0248】
さらに、本発明では、血小板への刺激を抑制しつつ、血小板を捕捉することができるため、物理的な刺激のみで容易に血小板を活性化させることができ、十分量の血小板因子を確実に回収することができた。
【0249】
一方、比較例の血小板因子回収装置(血小板捕捉フィルター)では、血小板捕捉率が極めて低いものか、あるいは、血小板捕捉率は十分であるが、白血球の捕捉率が極めて高いものであった。
【0250】
特に、後者の場合、血液濾過時間が極めて長くなるとともに、経時的なフィルターの目詰まりにより血小板が刺激され、これにより、濾液や洗浄済液中に血小板因子が流出することが確認された。また、この場合、フィルターに捕捉されている血小板には、既に刺激が与えられていることから、トロンビン刺激によっても、十分量の血小板因子を回収することができなかった。
【0251】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、血小板をより選択的に捕捉することができ、容易かつ短時間で、血小板から十分量の血小板因子を回収することができる。
【0252】
フィルター部材の表面のゼータ電位や平均孔径の設定、プレフィルター部材の設置、洗浄液を供給する第3のラインの設置等により、前記効果をより向上させることができる。
【0253】
また、本発明では、濾過法の利点である無菌的処理が可能であるとともに、大量で迅速な処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血小板因子回収装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の血小板捕捉フィルターの構成を示す分解斜視図(一部断面で示す)である。
【符号の説明】
1 血小板因子回収装置
2 第1のライン
21 チューブ
22 針管
24 クランプ
3 第3のライン
31 チューブ
32 針管
33 分岐コネクタ
34 クランプ
4 第2のライン
40 処理済液回収バッグ
41 チューブ
44 クランプ
5 第4のライン
50 洗浄済液回収バッグ
51 チューブ
53 分岐コネクタ
54 クランプ
6 血小板因子回収手段
61 シリンジ
62 第1の三方活栓
63 シリンジ
64 第2の三方活栓
7 血小板捕捉フィルター
8 ハウジング
81 第1のハウジング部材
811 流出口
812 内腔部
813 縮径部
814 嵌合部
82 第2のハウジング部材
821 流入口
822 内腔部
823 縮径部
824 嵌合部
9 フィルター
91 フィルター部材
911 多孔質膜
92 プレフィルター部材
921 多孔質膜
10a、10b 支持部材
101 リング
102 メッシュ
Claims (11)
- 血小板を含む被処理液から前記血小板を捕捉する血小板捕捉フィルターであって、
流入口と流出口とを備えるハウジング内に、多孔質体で構成され、その表面をアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとを主とする共重合体で被覆されたフィルター部材を含むフィルターを収納してなり、
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、2−メトキシエチルアクリレート(MEA)または2−メトキシエチルメタクリレート(MEMA)であり、
前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMAEA)、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMAPA)、および2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメタアクリレート(DMAPMA)の中から選択された1つであり、
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの組成比は、85:15〜50:50であることを特徴とする血小板捕捉フィルター。 - 前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、前記2−メトキシエチルアクリレート(MEA)であり、
前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)である請求項1に記載の血小板捕捉フィルター。 - 前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと前記アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとの組成比は、80:20〜60:40である請求項1または2に記載の血小板捕捉フィルター。
- 前記フィルター部材は、その平均孔径が5〜20μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の血小板捕捉フィルター。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の血小板捕捉フィルターと、
前記流入口に接続され、前記血小板捕捉フィルター内に、前記被処理液を供給する第1のラインと、
前記流出口に接続され、前記血小板捕捉フィルター内を通過した液体を回収する第2のラインと、
前記血小板捕捉フィルターにより捕捉された血小板を活性化させ、該血小板から放出される血小板因子を回収する血小板因子回収手段とを有することを特徴とする血小板因子回収装置。 - 前記血小板回収手段は、前記血小板を物理的刺激により活性化させる請求項5に記載の血小板因子回収装置。
- 前記血小板因子回収手段は、前記第1のラインおよび/または前記第2のラインの一部を共用するよう構成されている請求項5または6に記載の血小板因子回収装置。
- 前記血小板因子回収手段は、前記血小板捕捉フィルターを介して設置された一対の容器を有し、このうち、第1の容器は、前記第1のラインに接続され、第2の容器は、前記第2のラインに接続されている請求項5ないし7のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
- 前記第1のラインの途中には、第1の流路切替器具が設置され、該第1の流路切替器具を介して、前記第1の容器が前記第1のラインに接続されている請求項8に記載の血小板因子回収装置。
- 前記第2のラインの途中には、第2の流路切替器具が設置され、該第2の流路切替器具を介して、前記第2の容器が前記第2のラインに接続されている請求項8または9に記載の血小板因子回収装置。
- 前記第1の容器と前記第2の容器との間で、血小板に刺激を与えるための液体を移動させることにより、前記血小板捕捉フィルターに捕捉された血小板と接触させ、これにより、前記血小板を活性化させる請求項8ないし10のいずれかに記載の血小板因子回収装置。
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