JP3301443B2 - 白血球および血小板除去フィルター - Google Patents

白血球および血小板除去フィルター

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、白血球および血小板
去フィルターに関するものである。詳しく述べると本発
明は、白血球を除去すると共に血小板をより効率よく除
去する白血球および血小板除去フィルターに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】輸血の形態が全血輸血から成分輸血に変
化してきたのにともない、より純粋な赤血球の成分製剤
が求められるようになってきた。200ccまたは40
0ccの献血によって得られた血液は、遠心操作によっ
て各種の成分に分画される。赤血球成分は、ほとんどの
場合赤血球濃厚液として分離され、赤血球を必要とする
患者に輸血される。この赤血球濃厚液には、多くの白血
球や血小板を含んでおり輸血後の副作用が大きな問題と
なっている。特に白血球は、輸血副作用の原因となるこ
とが多く、非溶血性発熱性副作用、抗白血球抗体の産
生、移植片対宿主反応等を引き起こす恐れがあるため
に、繊維や多孔体のフィルターを用いて除去されてき
た。また、血小板も頻回輸血する場合、抗血小板抗体生
成を抑制するために、除去される事が望まれている。そ
のため従来の白血球除去フィルターで血小板除去率をよ
り高くするためには、元々白血球に比べて大きさの小さ
い血小板を除去するには孔径を小さくする必要があっ
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の白血球除去フィルターにあっては、多孔質体
の孔径を小さくすると十分な流量が得られず、目づまり
を起しやすいという問題があった。そこで、本発明は、
孔径を変化させずに白血球ばかりでなく血小板もより効
果的に除去する白血球および血小板除去フィルターを提
供することを目的とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、以下の本
発明により解決される。 (1)合成樹脂多孔質体からなる濾材を主要部とし、血
液から実質的に白血球と共に血小板を除去する白血球
よび血小板除去フィルターであって、前記濾材は表面ゼ
ーター電位が正電位になるように、カチオン性官能基を
有する物質が化学反応によって導入されてなることを特
徴とする白血球および血小板除去フィルター。 (2)前記表面ゼーター電位は3〜46.8mVである
ことを特徴とする(1)に記載の白血球および血小板
去フィルター。 (3)前記表面ゼーター電位は5.9〜46.8mVで
あることを特徴とする(2)に記載の白血球および血小
除去フィルター。 (前記濾材の上流側に不織布を積層したプレフィル
ターがさらに設けられていることを特徴とする(1)〜
(3)のいずれか一項に記載の白血球および血小板除去
フィルター)前記合成樹脂多孔質体は、ポリウレタンまたはポ
リビニルホルマールである、(1)〜()のいずれか
一項に記載の白血球および血小板除去フィルター。 ()(1)〜()のいずれか一項に記載の白血球
よび血小板除去フィルターを備えたことを特徴とする白
血球および血小板除去装置。
【0005】本発明における「ゼーター電位」は、通常
以下のように測定される。すなわち、固体と液体とを相
対移動させたとき、固体表面が負電化を帯びている場
合、液体側にはイオンの濃度勾配ができ、その状態で液
体を移動させると固体表面に引き寄せられた+イオンの
うち、そのすべり面よりも沖合いのイオンは液体の流れ
に乗って移動し、一方固体表面近傍の吸着イオンはそこ
に保持される。この固体の上流と下流に電極を配置する
と、下流の電極は正に、上流の電極は負に帯電し、沖合
いのイオンはこの電位差を解消するために固体表面近傍
のイオンの流れとは逆に+イオンが上流に、−イオンが
下流に移動する。そして、一定の液体流速下で、このイ
オンの挙動が定常状態を保つことにより2つの電極間に
一定の電位差が生じ、これを「流動電位」と呼ぶ。
【0006】そして「ゼーター電位」はこの時のイオン
の流れに「すべり」が生ずる面における電位を指し、次
式(数1)により求められる。
【0007】
【数1】 式中、ηは流動液体の粘度、εは流動液体の誘電率、E
sは流動電位、λは流動液体の導電率、Pは流体を流す
ために加えられた圧力を示す。
【0008】本発明において「多孔質体」とは、内部ま
たは表面に多数の小さな外部に通じる連続した孔状をも
つ物質のことである。つまり、血球が通過できる孔を有
していれば特に限定されるものではない。多孔質体の材
質は、煉瓦のような素焼等の無機物質でも、へちま、海
綿等の天然有機物質でも、プラスチックフォーム(発泡
プラスチック)等の合成高分子でも良い。また、スポン
ジ状の形態でも膜状の形態でも良い。量産化の面から合
成樹脂多孔質体等が望ましく、ポリウレタン、フッ素樹
脂、ポリプロピレン、ポリビニルホルマール、ポリカー
ボネート等が挙げられる。また、孔径に関しても、孔の
大きい多孔質体であれば厚さの厚いものを用いるか薄い
ものでも積層して使用すればよく、孔の小さいものでは
薄いままで用いることが可能である。多孔質体の孔径と
厚さを適宣選択することによって、血球が通過できるも
のであれば、いずれの多孔質体でも使用できる。特に、
特公昭63−26089、特開平3−173825によ
ると平均気孔径5〜20μmあるいは6〜12μmの白血
球除去用のフィルターが開示されており、これらの孔径
を有する多孔質体を使用するのが望ましい。
【0009】表面ゼーター電位が正電位であるために
は、濾材主要部の多孔質体そのものが正電位を示す物質
であっても良い。また濾材主要部の多孔質体に表面処理
を行うことによって正電位を示すようにしても良い。例
えば、アミノ基のようなカチオン性官能基を有する物質
を化学反応によって基材の多孔質体に導入する事によ
り、基材の多孔質体のゼーター電位を正電位にする方法
がある。
【0010】表面ゼーター電位が正電位(0mV以上)
である多孔質体からなるメインフィルター部は図1のよ
うなフィルターハウジングに組み込まれる。この濾材の
上流側に、単一の組成である不織布を積層したプレフィ
ルターを配し、濾材の下流側には濾材とハウジングが密
着することを防ぐためのスペーサーが配される。
【0011】また、本発明の白血球および血小板除去フ
ィルターは、公知の方法により親水化することにより血
液製剤が染み込みやすくなり、フィルターの部分的なエ
アーブロックを防ぐことができる。
【0012】以下、実施例を示し本発明を更に詳細に説
明するが、本発明は何らこれに限定されるものではな
い。
【0013】
【実施例】
(実施例1)ホルムアルデヒドによって架橋されたポリ
ビニルホルマール多孔質体(厚さ1.3mm)1gを10
0mlの水に浸漬し、1N硝酸に硝酸セリウムアンモニウ
ムを溶かして0.1mol/lとした溶液2.5mlを加え、さ
らにアクリルアミド5gを溶かし、窒素雰囲気下で40
℃で1時間重合した。表面ゼーター電位は、流動電位測
定装置によって、流動電位と液体を流すために加えた圧
力及び、液体の動電率を測定することによって計算より
求めた。流動液は、1mMKCl水溶液を使用し、pH6±
1、温度20±5℃で測定した。ゼーター電位は、+
5.9mVであった。得られたサンプルを図1のホルダー
に25φに打ち抜き、0.8mmの厚さのプレフィルター
とメッシュと共に入れた。
【0014】人の血液400mlをCPDテルモダブルバ
ック(テルモ社製)に採血し、3000rpm,10分遠心
した後、上澄である血漿150mlを子バックに取り、残
った濃厚赤血球に、ヘマトクリットが50%になるよう
に、生理食塩水を加え、赤血球浮遊液を調製した。調製
した赤血球浮遊液25mlを血液導入口2より流し、濾過
時間と濾過前後の血球数をSysmex NE−600
0(東亜医用電子株式会社製)にて測定し、下記式(数
2)にしたがい除去率を算出した。
【0015】
【数2】
【0016】その結果、白血球除去率93.3%、血小
板除去率91.4%、所要時間3分16秒であった。
【0017】(比較例1)一方、表面ゼーター電位が−
22.8mVの実施例1で使用したポリビニルホルマール
多孔質体について同様な試験を行うと、白血球除去率9
2.0%、血小板除去率65.5%、所要時間2分29秒
であった。
【0018】(実施例2)ポリウレタン多孔質フィルタ
ー(厚さ0.5mm)をメタノールで8時間ソックスレー
洗浄器で洗浄した後、低温プラズマ(アルゴン、0.2T
orr)を20秒間照射した。続いて4−ビニルピリジン
のガス(0.6Torr)を反応器に導入して表面グラフト
重合を行った。得られた表面グラフト化フィルターは、
55℃、3時間、0.1Mベンジルクロライドを含む溶
液中で4級化反応を行って、N−ベンジルピリジニウム
クロライド基を表面に有するポリウレタン多孔質フィル
ターを得た。
【0019】当該フィルターのゼーター電位を測定した
ところ+46.8mVであった。得られたフィルターを実
施例1と同様に評価したところ白血球の除去率99.8
9%、血小板除去率98.84%、所要時間4分50秒
であった。
【0020】(実施例3)実施例2と同様の方法で同様
のポリウレタン多孔質フィルターにジエチルアミノアク
リレートをグラフト重合した後、0.1Mエチルブロマ
イドを含むメタノール溶液中で、50℃、16時間反応
させて4級化反応を行って、表面にトリエチルアンモニ
ウムブロマイド基を有するポリウレタン多孔質フィルタ
ーを得た。
【0021】当該フィルターのゼーター電位を測定した
ところ+7.8mVであった。得られたフィルターを実施
例1と同様に評価したところ白血球の除去率99.73
%、血小板の除去率99.10%、所要時間4分25秒
であった。
【0022】(比較例2)実施例2,3の基材である未
処理のポリウレタン多孔質フィルターのゼーター電位を
測定したところ−40.0mVであった。該フィルター
を実施例2と同様に評価したところ白血球の除去率9
1.4%、血小板除去率5.1%、所要時間4分39秒で
あった。
【0023】(実施例4、比較例3)厚さ0.5mmで、
この厚さにおける白血球除去率が30〜60%程度であ
る表面ゼーター電位が−30mVのポリウレタン多孔質体
濾材と、該ポリウレタン多孔質体にグリシジルアクリレ
ートをグラフト重合し、次いでカチオン化剤(カチオノ
ンUK:一方社油脂工業)を固定し、表面ゼーター電位
が+7.9mVとなった濾材を用いて白血球除去能力の比
較を行った。直径25mmに打ち抜かれた厚さ0.5mmの
被検体をフィルターホルダー(NUCLEPORE 25mm HOLDE
R)にセットし、これを用いて新鮮全血、赤血球濃厚
液、白血球浮遊液を0.5ml/min/cm2の流速で10分間
濾過した。結果を表1に示す。カチオン化処理された濾
材を用いて濾過された液体中の白血球濃度は、それぞれ
の未処理の多孔質体で濾過された液体中の白血球濃度の
約1/40〜1/80の値を表1に示した。また赤血球は
濾過前後で濃度変化はなかった。
【0024】
【表1】
【0025】濾過後の多孔質体の電子顕微鏡での所見で
は、未処理の多孔質体においては孔を通過できずに捕捉
されている白血球が認められたのみだが、カチオン化処
理多孔質体では孔径で捕捉されている以上に、多数の白
血球が基材表面に吸着していることが認められた。同時
にカチオン化表面においては血小板の吸着も認められ
た。このことによりカチオン化処理し表面ゼーター電位
を正にすることにより白血球と血小板の捕捉性能が向上
するが、赤血球の回収についての影響は少ないものと判
断できる。また、始動時間が短縮すると同時に、フィル
ター内の流路形成が均一になっていることも示唆され
た。
【0026】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明の白血球
および血小板除去フィルターは、表面ゼーター電位が正
電位である多孔質体を濾材の主要部にすることにより白
血球のみならず血小板の除去率も著しく向上することが
でき、表面ゼーター電位を変化させることで血小板の除
去率が向上するために孔径の大きいフィルターを使用す
ることができ、血液の処理時間の短縮が可能となり、ま
た表面ゼーター電位は、表面ゼーター電位を正電位にす
る物質を処理することにより手軽に変化でき、白血球、
血小板の捕捉性能を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明の白血球および血小板除去フィルター
をハウジングに組み込んだ白血球および血小板捕捉装置
の一例である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−27317(JP,A) 特開 平5−170654(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61M 1/16 500

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成樹脂多孔質体からなる濾材を主要部
    し、血液から実質的に白血球と共に血小板を除去する
    白血球および血小板除去フィルターであって、前記濾材
    は表面ゼーター電位が正電位になるように、カチオン性
    官能基を有する物質が化学反応によって導入されてなる
    ことを特徴とする白血球および血小板除去フィルター。
  2. 【請求項2】 前記表面ゼーター電位は3〜46.8m
    Vであることを特徴とする請求項1に記載の白血球およ
    び血小板除去フィルター。
  3. 【請求項3】 前記表面ゼーター電位は5.9〜46.
    8mVであることを特徴とする請求項2に記載の白血球
    および血小板除去フィルター。
  4. 【請求項4】 前記濾材の上流側に不織布を積層したプ
    レフィルターがさらに設けられていることを特徴とする
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の 白血球および血小
    除去フィルター。
  5. 【請求項5】 前記合成樹脂多孔質体は、ポリウレタン
    またはポリビニルホルマールである、請求項1〜4のい
    ずれか一項に記載の 白血球および血小板除去フィルタ
    ー。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の
    血球および血小板除去フィルターを備えたことを特徴と
    する白血球および血小板除去装置。
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