JP4481150B2 - う蝕検知液 - Google Patents

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本発明は歯牙のう蝕検知液に関する。さらに詳しくは、歯牙のう蝕の治療において、う蝕原因菌に感染した歯質を除去する際に、感染部を殺菌もしくは静菌するなどにより、う蝕を抑制しつつ、感染部を染色し、感染歯質の除去を容易にすることにより感染歯質の取り残しを防止するためのう蝕検知液に関する。
歯を喪失する原因の約半数はう蝕と言われていることから、歯牙のう蝕の治療において、う蝕原因菌に感染した歯質を除去する際に感染部分を染色することにより、う蝕部分を発見するための方法が幾つか提案されている。
特許文献1では、「う蝕検知液」として提案されている。
特許文献2では、簡単且つ必要最低限の治療で済ませることができ、審美性を損なうことなく初期う蝕を検知する提案がなされている。
特許文献3では、感染歯質を除去した歯質表面には、スメヤー層がありその中にも細菌の混入が疑われそのまま修復を行えば、二次う蝕の原因菌を作る可能性があり、また感染歯質の除去の際、患歯周囲にも細菌が散布され健全歯が感染する可能性があることが示され、そこでう蝕部分の検知と同時にう蝕部分に存在する歯髄疾患の原因菌を殺菌または静菌する効果を有する「抗菌性う蝕検知液」が提案されている。
特開昭56−96700号公報 特開2002−187857号公報 特開2000−63290号公報
本発明の目的は、感染歯質を殺菌もしくは静菌するなどにより、う蝕を抑制しつつ、簡便に且つ正確にう蝕感染部を検知することができ、しかも感染歯質部、感染歯質の周囲の虫歯・歯周病の原因となる歯垢の生成を抑え且つ、適用部位が時間経過と共に歯の質を強くする(再石灰化)効能を有する検知液を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明は、除去すべき感染した歯質部分を染色でき、取り残した部分に存在する細菌の繁殖を抑制でき、かつ、時間と共に再石灰化して歯質の強化が期待できる等の作用にて、う蝕を抑制しつつ、う蝕感染部を検知可能にする組成物を開発すべく鋭意研究を続けた結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明のよれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
(A)う蝕感染部を染色して歯質から識別させ得る色を与える色素あるいは染料、
(B)う蝕抑制効果を有する亜硫酸塩
(C)成分(A)および(B)を溶解ないしは分散できる水系溶媒
からなる歯牙のう蝕検知液であり、かつ、成分(A)として、フルオレセインナトリウム、塩基性フクシンおよびアシッドレッドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が用いられている、ことを特徴とするう蝕検知液(以下、本発明の第1のう蝕検知液ということがある)によって達成される。
本発明により、う蝕検知液を用いた感染歯質の染色と感染歯質の殺菌もしくは静菌、感染部並びにその周りの歯質を強くすることなどにより、う蝕抑制を同時に行うと、感染部の歯質除去によって発生する削りカスが、周りに再付着しても殺菌済みのものであり、また、歯質を強くできるため、新たなう蝕を誘発する危険性を大幅に少なくする。
本発明における(A)成分は、う蝕感染部を染色して歯質から識別させ得る色を与える色素または染料である。ここで(A)成分としては、軟化層、脱灰層および先駆菌層を選択的に染色できる染料または色素を挙げることができる。(A)成分は、それを含有する組成物を歯質に塗布した後、短時間例えば1分以内程度では水洗しても色落ちしないようなものが好ましい。(A)成分の色調は歯質と明らかに区別ができる色合い、例えば、赤、青、黒、紺、紫および緑などが好ましい。具体的には、フロキシンBK、アシッドレッド、ファストアシッドマゼンダ、フロキシンB、ファストグリーンFCF、ローダミンB、塩基性フクシン、酸性フクシン、エオシン、エチスロシン、サフラニン、ローズベンガル、ベーメル、ゲンチアナ紫、銅クロロフィルソーダ、ラッカイン酸、フルオレセインナトリウム、コチニールおよびシソシンなどを挙げることができる。これらの色素は単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中で、フルオレセインナトリウム、塩基性フクシン、又はアシッドレッドが好ましい。本発明の第1のう蝕検知液においては、これらの好ましい色素から選ばれる少なくとも1種の色素を含有することを必須とする。
(A)成分は、組成物100重量部中に、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは0.005〜10重量部、さらに好ましくは0.01〜5重量部の範囲で含有される。
(B)成分は、う蝕抑制効果を有する化合物である亜硫酸塩である。これらは主に口腔内細菌の増殖を抑制する作用によりう蝕抑制効果を発揮するものである。
(B)成分として使用できる亜硫酸塩としては、具体的には亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなどが挙げられる。また、亜硫酸塩は単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、組成物100重量部中に、通常0.001〜50重量部、より好ましくは0.005〜40重量部、さらに好ましくは0.05〜30重量部の範囲で使用される。
本発明の(C)成分は、(A)および(B)成分を溶解ないしは分散させる水系溶媒である。かかる水系溶媒としては、水単独、もしくは水および水と混和し得る有機溶媒とを混合した溶媒である。ここで使用できる水としては、例えば蒸留水、イオン交換水または生理食塩水などが挙げられる。中でも蒸留水およびイオン交換水が好ましく用いられる。さらに水と混和し得る有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などを挙げることができる。このうちエタノールおよびアセトンが好ましく用いられる。かかる水系溶媒のうち、水とエタノールの混合溶液または水とアセトンの混合溶液が好ましい。
本発明における(D)成分は、う蝕抑制効果、再石灰化誘導効果を有する化合物である。
(D)成分として使用できる再石灰化誘導化合物としては、糖アルコールを用いることが好ましい。具体的にはラクチトール、イソマルチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、イソマルトテトライトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、バラチニット、エリスリトール、など挙げることができる。その中でも特にキシリトールが好ましく用いられる。
また、かかる糖アルコールはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であってもよい。
本発明は、う蝕に感染した歯牙に本発明の組成物を接触させることにより、歯質の脱灰程度によって(A)成分の染色度合いが異なることを利用して脱灰を受けていない健全歯質と区別する検知方法に加えて、取り残した細菌の活性や増殖を抑制しうる(B)成分によって新たな部位への感染と進行を防ぐ効果を併せ持つう蝕検知液である。新たな部位へのう蝕感染と進行を防ぐためには、細菌の活性と増殖を抑制する直接的手段と未感染う蝕の脱灰を受けていない歯質を強化するという間接的な手段があるが、本発明においてはどちらの手段でも使用できる。
本発明のう蝕検知液の使用方法に限定はないが、例えば、う蝕罹患部に本発明のう蝕検知液を接触させ、所定時間、通常、数秒間から数分間放置し、水洗することによって脱灰した部分を染色させ、健全部分の染色状態が異なることを利用してう蝕部分を識別する。識別されたう蝕部分を除去し、必要に応じて再度、本発明のう蝕検知液を適用する。この操作を数回繰り返しながら、う蝕部分の検知と除去を繰り返す。なお、本発明は上記の使用方法によって限定されない。
本発明のう蝕検知液は、このような簡単な操作によって、う蝕感染部を鮮明に染色し、健全象牙質との染色状態の違いによって、う蝕原因菌に罹患した歯質を的確に識別、検知でき感染部の細菌を殺菌しつつ、歯牙全体を(B)成分及び好ましくは、さらに、キシリトールなどの(D)成分にて歯質を強くし、新たなう蝕を誘発する危険性を大幅に少なくすることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1〜9は参考例である。

(染色識別性試験)
各種色素、各種抗菌剤及び有機溶媒を室温下にて混合撹拌して表1に示すような各種検知液を調製した。これを用いて、抜去したう蝕象牙の切断面に各種検知液を塗布し、約10秒後にその適用部分を水洗し、う蝕部分と健全象牙質部分が、より鮮明に染め分けられているかどうかを以下の基準で判定した。また、色素にウラニン(フルオレセインナトリウム)を用いた検知液は市販の歯科用可視光線照射器を用いて光照射を行い、う蝕部分と健全象牙質部分が、より鮮明に染め分けられているかどうかを以下の基準で判定した。
++:鮮明に染着
+ :染着
± :わずかに染着
− :ほとんど染着しない
(抗菌性試験)
実施例1〜4
オートクレーブにて滅菌処理した水溶媒100重量部に対し、色素としてウラニン(フルオレセインナトリウム)を5重量部、フッ化ナトリウムをそれぞれ0.1重量部、0.5重量部、2重量部および4重量部となる検知液を室温下にて混合撹拌してそれぞれ調製した(表1参照)。これらを用いて抗菌性試験を行い、う蝕抑制の指標とした。
ヒト口腔内細菌をカルチュレットにて採取し、直ぐにリン酸緩衝溶液中に分散させ所定量を嫌気性菌用羊血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン(株)製)に塗抹した。次に、各種検知液をペーパーディスク(直径8mm、厚さ1.5mm)に75μmに染み込ませ寒天培地上に置き、嫌気性下で37℃にて24時間培養させた。24時間後のペーパーディスク周辺の菌の発育状況を観察した。判定は以下の基準で行った。結果を表1に示した。
発育阻止斑の発現状況
− :ペーパーディスク周囲に菌の発育阻止斑が全く認められない。
± :ペーパーディスク周囲に菌の発育阻止斑が幅約1mm未満のリング状で認められる。
+ :ペーパーディスク周囲に菌の発育阻止斑が幅約1〜2mmのリング状で認められる。
++:ペーパーディスク周囲に菌の発育阻止斑が幅約2mmを超えるリング状で認められる。
実施例5
実施例3において、色素であるウラニンを塩基性フクシンにかえ、その他は実施例3と同様にして検知液を調製し、実施例3と同様の評価を行った。
実施例6〜8
色素としてアシッドレッドを用い、実施例7、8ではキシリトールも用い、表1に記載の組成からなる検知液を調製し、実施例1〜3と同様の評価を行った。
実施例9
色素として塩基性フクシンを用い、そしてカテキンを含有する、表1み記載の組成の検知液を調製し、実施例1〜3と同様の評価を行った。
実施例10
色素としてアシッドレッドの用いそして、亜硫酸塩を含有する、表1に記載の組成の検知液を調製し、実施例1〜3と同様の評価を行った。
比較例1
オートクレーブにて滅菌処理した水溶媒100重量部に対し、ウラニンが5重量部である検知液を室温下にて混合撹拌して調製した。実施例1〜3と同様の評価を行った。
比較例2
オートクレーブにて滅菌処理した水溶媒100重量部に対し、塩基性フクシンが5重量部である検知液を室温下にて混合撹拌して調製した。実施例1〜3と同様の評価を行った。
比較例3
オートクレーブにて滅菌処理した水溶媒100重量部に対し、アシッドレッドが5重量部である検知液を室温下にて混合撹拌して調製した。実施例1〜3と同様の評価を行った。
比較例4
オートクレーブにて滅菌処理した水溶媒50重量部、有機溶剤50重量部に対し、アシッドレッドが5重量部である検知液を室温下にて混合撹拌して調製した。実施例1〜3と同様の評価を行った。
Figure 0004481150

Claims (2)

  1. (A)う蝕感染部を染色して歯質から識別させ得る色を与える色素あるいは染料、
    (B)う蝕抑制効果を有する亜硫酸塩
    (C)成分(A)および(B)を溶解ないしは分散できる水系溶媒
    からなる歯牙のう蝕検知液であり、かつ、成分(A)として、フルオレセインナトリウム、塩基性フクシンおよびアシッドレッドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が用いられている、ことを特徴とするう蝕検知液。
  2. (D)再石灰化誘導化合物をさらに含有する請求項1に記載の歯牙のう蝕検知液。
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