JP4478754B2 - タンパク質担持リン酸カルシウム、その製造方法及びそれを用いたタンパク質徐放体、人工骨及び組織工学スキャフォールド - Google Patents

タンパク質担持リン酸カルシウム、その製造方法及びそれを用いたタンパク質徐放体、人工骨及び組織工学スキャフォールド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、水溶性タンパク質特に水溶性成長因子や水溶性細胞接着因子のような、非細胞外基質性タンパク質を担持したリン酸カルシウムセラミックスに関する。本発明によって得られるタンパク質担持リン酸カルシウム主成分セラミックスは、生体適合性を有しており、生体組織再構築を促進する生体組織代替材料、組織工学スキャホールド、タンパク質徐放体として利用される。
【0002】
【従来の技術】
生体組織の再構築、組織誘導、細胞分化を図るために成長因子、細胞接着因子その他のタンパク質、リン脂質、多糖類、ホルモン等の生物学的活性化物質(biologically active substance)が使用されていた。これらの活性化物質はそのまま生体投与されるほか、何らかの生体材料等に担持させて、場合によってはさらにこれら担持材料から徐放させて使用されていた。
【0003】
タンパク質を生体材料に担持する方法としては、例えば、担持基材が有機物であれば、トリプシン処理された牛の骨マトリックス(US 4,563,350)に担持する方法、無機成分あるいは骨コラーゲン粉末60〜98%からなる組成物(EP 309,241)に担持する方法、再構成されたコラーゲン(US 3,394,370、US 4,172,128)に担持する方法、ポリマーマトリックスに担持する方法(特開2001-131086、特開平2001-122800)などがある。さらに、タンパク質をゲル形成する高分子中に保持する方法(US 6,410,645)、70〜80kDaのアロエベラ由来多糖類を主成分とする組成物と複合化させる方法(US 6,395,311)、ハイドロゲル又はバッグの中に保持して徐放させる方法(特開2000-178180)、乳酸及び/又はグリコール酸とp-ジオキサンとポリエチレングリコールとを主成分として反応させた共重合体に含有させる方法(特開2000‐237297)、乳酸/グリコール酸共重合体に含有させる方法(J BiomedMater Res, 57, 291-299 (2001))などが、開示されている。
【0004】
骨組織はリン酸カルシウムとコラーゲンからなり、リン酸カルシウムは広く人工骨材料に使用されている。したがって、骨組織に対しては、リン酸カルシウムに生物学的活性化物質を担持して組織再構築する方が、有機物に生物学的活性化物質を担持して細胞にリン酸カルシウムをゼロからつくらせるより早くて効率的である。
【0005】
そのような観点から、リン酸カルシウム質生体材料にタンパク質を担持させる方法としては、水酸アパタイトやβリン酸三カルシウム多孔質焼結体の気孔中に成長因子を物理的に保持する方法(US 6,346,123、Clin Orthop, 187, 277-280(1983)、J Biomed Mater Res 49, 415-421(2000))、リン酸三カルシウムや石膏に接触させて担持する方法(特開平2001-131086、特開平2001-122800)、水酸アパタイト多孔体や顆粒に吸着させて担持する方法(Biochem Biophys Res Commun, 193, 509-517(1993)、Biomaterials, 17, 703-709(1996)、Clin Orthop 268, 303-312(1991)、J. Mater Sci:Mater in Med, 12, 293-298(2001)、J Biomed Mater Res, 41, 405-411 (1998))、水酸アパタイト顆粒にコラーゲンゲルを添加して骨形成因子を粘着固定する方法(Biomaterials, 22, 1643-1651(2001))、水酸アパタイトと生体崩壊性ポリマーを含む多孔性複合体に生理活性物質をさらに添加した組成物(US 5,766,618)とする方法、MOCVD法で金属上に形成したリン酸カルシウム被膜をタンパク質溶液中に浸漬して吸着させる方法(US 6,113,993)、スパッタコーティングでチタン上に形成したリン酸カルシウム被膜を骨形成因子溶液に浸漬して吸着させる方法(Plastic Recon Surgery 108, 434-443(2001))、水酸アパタイト―αリン酸カルシウム複合焼結体をタンパク質溶液に浸漬して吸着させる方法(J. Mater Sci;Mater in Med, 12, 761-766(2001))、αリン酸カルシウム多孔体をタンパク質溶液に浸漬して吸着させる方法(J Biomed Mater Res, 59, 422-428(2002))、リン酸八カルシウム顆粒を骨形成因子溶液に浸漬後、凍結乾燥して担持する方法(J. Biomed Mater Res, 57, 175-182(2001))、非晶質リン酸カルシウム、軟骨形成細胞又はその前駆細胞、水分又は生理活性物質を含む水分を複合化し、硬化させて生理活性物質を保持する方法(US 6,277,151)、リン酸カルシウムを含む微粒子表面に薬剤を被覆する方法(US 5,958,458、DK 0695/94)、生体吸収性ポリマーや生体吸収性リン酸カルシウムと成長因子を混合して、金属等の多孔性インプラントの気孔内に保持する方法(US 5,947,893)、リン酸カルシウムセメントにタンパク質や生理活性物質や薬剤を混合して硬化させ、タンパク質や生理活性物質や薬剤を保持する方法(US 5,782,971、特開平9-225020、特開平4-248774、特開平6-228011、特開平7-31673、Biomed Mater Eng, 4, 291-307(1994)、Clin Ortho Related Res., 367S, S396-S405 (1999)、J Periodont, 71, 8-13(2000)、Biomaterials, 23, 1261-1268(2002)、J. Biomed Mater Res, 59, 265-271(2002))、硬化後のリン酸カルシウムセメントに吸収させる方法(J. Biomed Mater Res., 44, 168-175(1999))、分極処理したリン酸カルシウム上に選択吸着させる方法(特開2001‐187133)、カルシウム成分及び増粘剤が配合されたペーストに混合して骨形成促進物質を担持させる方法(特開平2001-106638)等が知られている。
【0006】
ところが、リン酸カルシウムに生物学的活性化物質を担持させる方法は、上述のように、リン酸カルシウムセラミックの気孔内に担持、リン酸カルシウムセメントに混合して硬化、吸収性ポリマーと複合化、あるいは吸着作用を利用したものがほとんどであり、これらの方法では生物学的活性化物質の担持量が少なかったり、長期間の徐放が困難であった。さらに、リン酸カルシウムセメントに混合する場合には、リン酸カルシウムセラミックス程の高強度を有する徐放体を作製できない、吸収性ポリマーと複合化する場合は操作が複雑になるといった欠点があった。
【0007】
水溶液からリン酸カルシウムとタンパク質を共沈させる方法は、有力な担持法であり、ポリマー又はチタンなどの金属表面に析出させる方法(US 6,136,369、US 6,143,948、US 6,344,061、EP96201293)が開示されている。しかし、水溶液からリン酸カルシウムとの共沈でタンパク質をリン酸カルシウムセラミック表面上に担持する方法は知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第6136369号明細書
【特許文献2】
米国特許第6143948号明細書
【特許文献3】
米国特許第6344061号明細書
【特許文献4】
欧州特許第96201293号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体適合性を有しており、生体組織再構築を促進する生体組織代替材料、組織工学スキャホールド、タンパク質徐放体として利用し得る、生物学的活性化物質を担持したリン酸カルシウム焼結体の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
水溶液を用いてリン酸カルシウムとタンパク質を共沈させる方法は、リン酸カルシウムに過飽和であるものの、自発核形成は生じないハンクス液などの安定過飽和溶液を使用し、不均一核形成を利用して基板上にリン酸カルシウムとタンパク質を共沈させる。しかしこの方法ではリン酸カルシウムの析出量が少なく、担持できるタンパク質の量も少ない結果となる。自発核形成を生じる不安定リンカルシウム過飽和溶液を使用すれば、リン酸カルシウムの析出量を増やすことができ、その結果タンパク質担持量も増やすことが期待できる。ただしこの場合は、自発核形成までの時間を人為的に制御し、溶液全体で自発核形成する以前に、リン酸カルシウム基板上への共沈析出を終了させるか、あるいは、基板のごく近傍でのみ自発核形成させる必要がある。
【0011】
本発明では、自発核形成を生じるタンパク質含有不安定リンカルシウム過飽和溶液を使用し、自発核形成までの時間を人為的に制御し、溶液全体で自発核形成する以前に、リン酸カルシウム基板上への共沈析出を終了させるか、あるいは、基板のごく近傍でのみ自発核形成させてリン酸カルシウムの析出量を増すことで、タンパク質担持量を増加させたリン酸カルシウム主成分焼結体を提供する。さらに、本発明では担持に使用する薬品の生体適合性が高く、なおかつ担持操作が単純な、生物学的活性化物質担持リン酸カルシウムが提供される。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液中で、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質とリン酸カルシウムとの制御された遅延共沈を行ない、リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させる方法であって、
前記不安定リン酸カルシウム過飽和溶液として、Ca成分0〜2.5mM、リン酸成分1.0〜20mM、K成分0〜40mM、Na成分0〜200mM、Cl成分0〜200mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液を用い、
該水溶液中のKCl濃度を制御することにより、リン酸カルシウム析出までの時間を人工的に制御遅延させることを特徴とする方法。
(2)自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液中で、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質とリン酸カルシウムとの制御された遅延共沈を行ない、リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させる方法であって、
前記不安定リン酸カルシウム過飽和溶液として、Ca成分1.2〜2.75mM、リン酸成分0.6〜15mM、K成分0〜30mM、Na成分30〜150mM、Mg成分0.1〜3.0mM、Cl成分30〜150mM、HCO3成分0〜60mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液を用い、
該水溶液中のKCl濃度を制御することにより、リン酸カルシウム析出までの時間を人工的に制御遅延させることを特徴とする方法。
(3)前記水溶液として、医療用輸液剤、透析・腹膜灌流液、輸液の補正用製剤、カルシウム製剤、透析・腹膜灌流液の補充液の中から選択される1種または2種以上の溶液を含んだ水溶液を使用する(2)の方法。
(4)前記生物学的活性化物質である水溶性タンパク質が成長因子または細胞接着因子のうちの少なくとも一種を含んでいる(1)から(3)のいずれかの方法。
(5)カルシウム成分を含む溶液とリン酸成分を含む溶液をあらかじめ別々に作製しておき、両者を混合することでタンパク質の共沈を開始させる、(1)から(4)のいずれかの方法。
(6)前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体中に、酸化カルシウムを0.1〜4重量%含有させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
(7)αリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウムから選ばれる1種または2種以上の相をあらかじめ、前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体表面に形成しておき該相からカルシウムを放出させてタンパク質を共沈析出させる、(1)から(6)のいずれかの方法。
(8)タンパク質を溶解させたリン酸成分を含む溶液を、前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体と接触させ、タンパク質の共沈を開始させる(7)の方法。
(9)リン酸成分を含む溶液が、リン酸緩衝生理的食塩水又はリン酸含有カルシウム不含有医療用輸液剤の中から選択される1種又は2種の混合液である(7)の方法。
(10)(1)から(9)のいずれかの方法を用いたことを特徴とする生体材料の製造方法。
(11)(1)から(9)のいずれかの方法を用いたことを特徴とするタンパク質徐放体の製造方法。
(12)(1)から(9)のいずれかの方法を用いたことを特徴とする人工骨の製造方法。
(13)(1)から(9)のいずれかの方法を用いたことを特徴とする組織工学スキャフォールドの製造方法。
(14)焼結後の酸化カルシウム含有量が0.1〜4重量%であるリン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に、(1)から(9)のいずれかの方法により、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させてことを特徴とするリン酸カルシウム焼結体。
(15)表面から少なくとも深さ1ミクロンまでの表面層にαリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムの少なくとも1種が含有されたリン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に、(1)から(9)のいずれかの方法により、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させたことを特徴とするリン酸カルシウム焼結体。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは、リン酸カルシウム沈殿が自発核形成で自然に生じてしまう溶液のことである。したがって、リン酸カルシウムに過飽和でありながら、リン酸カルシウム沈殿を生成しない安定リン酸カルシウム過飽和溶液、すなわち、ハンクス溶液や1倍濃度擬似体液などは自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液に含まれない。
【0014】
本発明では、自発核形成とは、溶液の成分が基板や異物質や容器の壁の助けを借りずに、自然発生的に集合して溶液が目視で白濁すること又はこのようにして溶液中で粒径1μm以上の粒子に成長することである。溶液中の粒子の粒径は光散乱法で測定することができる。沈殿とは自発核形成で生じた粒子のことである。共沈とは、単独では沈殿しないはずのほかの物質が同時に主沈殿とともに沈殿することである。リン酸カルシウムの析出とは、自発核形成によるリン酸カルシウム粒子の発生だけでなく、基板や異物質や容器の壁の助けを借りて、これらの表面上にリン酸カルシウムが集合する不均一核形成によるリン酸カルシウム形成をも含む。
【0015】
リン酸カルシウムとの制御された遅延共沈とは、溶液組成と温度の選択によって、リン酸カルシウムの析出に至るまでの時間を人工的に制御遅延させ、リン酸カルシウム析出のほとんど又は全てが基板上だけに生ずるようにし、核発生直後の高活性リン酸カルシウムナノ粒子が周囲のタンパク質を吸着又は化学結合でとり込んで共沈するようにした共沈である。具体的には、2種類以上の水溶液を順番に混合して不安定な過飽和リン酸カルシウム溶液を作製し、自発核形成によるリン酸カルシウム析出までの時間が最後の溶液混合から10秒以上7日以下、好ましくは2分以上2日以下となる共沈を生じせしめる。自発核形成までの誘導時間は水溶液の化学組成と温度を、至適値に選択することで制御する。共沈に至る待ち時間は、基板がない状態で過飽和リン酸カルシウム溶液を作製し、目視で溶液が白濁するか又は粒径1μm以上の沈殿粒子が光散乱法で検出されるまでの時間である。
【0016】
析出に至る待ち時間が短い通常の沈殿形成の場合は、最後に添加した溶液液滴と周囲の溶液の界面での沈殿形成が卓越し、基板上へ沈殿を析出することは出来ない。しかし、自発核形成までの誘導時間を遅延させ、さらに界面自由エネルギーの低いリン酸カルシウムを主成分とする基板を共存させる場合は、リン酸カルシウムの生成は界面自由エネルギーの低い基板上での析出が卓越し、リン酸カルシウムと共存タンパク質を基板上に固定することが可能となる。
【0017】
本発明のリン酸カルシウム過飽和溶液を作製し得る溶液は少なくともカルシウム成分を含む溶液、少なくともリン酸成分を含む溶液、またはカルシウム成分とリン酸成分の両者を含む溶液である。これらの溶液自身が自発核形成誘導時間の遅延成分を含んでいても良いし、自発核形成までの誘導時間を制御遅延する1種または2種以上の溶液をさらに混合してもよい。カルシウム成分とリン酸成分は、混合前は異なる容器に別々に溶解させておくことが好ましい。少なくともカルシウム成分を含む溶液、少なくともリン酸成分を含む溶液、またはカルシウム成分とリン酸成分の両者を含む溶液は限定されない。リン酸成分を含む溶液の例としては、リン酸緩衝生理的食塩水、リン酸溶液、リン酸水素二カリウム溶液、リン酸二水素カリウム溶液、リン酸水素二ナトリウム溶液、リン酸二水素ナトリウム溶液などが挙げられる。カルシウム成分を含む溶液の例としては、塩化カルシウム溶液、乳酸カルシウム溶液、酢酸カルシウム溶液、グルコン酸カルシウム溶液、クエン酸カルシウム溶液などが挙げられる。カルシウム成分とリン酸成分の両者を含む溶液としては、ハンクス液や1倍擬似体液のような安定過飽和溶液や、リン酸カルシウム不飽和溶液を挙げることができる。このようなリン酸カルシウム不飽和溶液の例としては、例えば、塩化カルシウム濃度2.5mM、リン酸水素カリウム濃度1.0mM、pH5未満の溶液を挙げることができる。自発核形成の誘導時間を制御する溶液としては、水酸化カリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液などの適当なアルカリ性溶液、または塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を使用する。
【0018】
カルシウム成分を含む溶液、リン酸成分を含む溶液、カルシウム成分とリン酸成分を含む溶液、自発核形成誘導時間制御溶液の各成分溶液と制御溶液は各々1種類の溶液でも良いし、組成の異なる複数種の溶液から成っていても良い。これらの溶液の混合順序は、混合中又は混合後10秒未満で自発核形成しない限り、特に制限はない。具体的には例えば、1種類目の自発核形成誘導時間制御溶液に1種類目のリン酸成分溶液を混合し、次にカルシウム成分溶液を混合し、次に2種類目の自発核形成誘導時間制御溶液を混合し、最後に2種類目のリン酸成分溶液を混合することもできるし、例えば、リン酸成分溶液にカルシウム成分溶液を混合し、次に1種類目の自発核形成誘導時間制御溶液を混合し、最後に2種類目の自発核形成誘導時間制御溶液を混合することもできる。
【0019】
タンパク質の変成や失活が生じなければ、上述のどの溶液にタンパク質を添加溶解してもよいし、複数の溶液にタンパク質を添加溶解しても良いし、全ての溶液が混合された後にタンパク質を添加溶解しても良い。すなわち、(1)カルシウム成分とリン酸成分の両方を含む溶液にタンパク質を添加溶解しても良いし、(2)カルシウム成分を含む溶液、リン酸成分を含む溶液の一方または両方にタンパク質を添加溶解しても良いし、(3)自発核形成の誘導時間を制御する溶液に添加溶解してもよい。添加溶解するタンパク質は、固体状のタンパク質でも良いし、すでに溶液に溶解しているものでも構わない。
【0020】
以上の操作によりタンパク質とリン酸カルシウムの共沈が開始され、その際にリン酸カルシウム主成分焼結体を接触させることにより、リン酸カルシウム主成分焼結体上にタンパク質が共沈析出し、タンパク質を担持したリン酸カルシウム主成分焼結体が得られる。
【0021】
この際、リン酸成分を含む溶液のみ、またはリン酸成分を含む溶液と自発核形成誘導時間制御溶液を用い、該溶液にタンパク質を添加溶解させておき、これとリン酸カルシウム主成分焼結体を接触させた場合でも、焼結体に含有されているαリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウムの溶解によりカルシウムが溶液中に放出され、タンパク質の共沈析出が開始され得る。
【0022】
さらに、αリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウム等の溶解性カルシウム含有相をあらかじめリン酸カルシウム主成分焼結体表面に形成しておき、タンパク質を共沈析出させてもよい。
【0023】
カルシウム成分とリン酸成分が同時に含まれている溶液が、リン酸カルシウムに対して過飽和になるpHは、カルシウムイオン濃度とリン酸イオン濃度に依存するが、例を挙げれば塩化カルシウム濃度2.5mM、リン酸水素カリウム濃度1.0mMの場合はpH5以上である。過飽和溶液が、安定な過飽和状態か、不安定な過飽和状態かは、共存イオンとイオン強度によって影響される。
【0024】
自発核形成の誘導時間を遅延させる成分は、自発核形成時間までの誘導時間を10秒以上遅延させるものであれば特に制限はないが、担持溶液の生体適合性の上から、ナトリウム成分かカリウム成分を主成分とする溶液が好ましい。このような溶液は具体的には50〜200mM、好ましくは100〜180mM、さらに好ましくは166mM炭酸水素ナトリウム溶液、5〜50mM、好ましくは10〜30mM、さらに好ましくは20mM水酸化カリウム溶液、0〜40mM、好ましくは0〜20mM、さらに好ましくは20mM塩化カリウム溶液を挙げることができ、例えば、塩化カルシウム濃度42.9mM、リン酸濃度28.6mMの溶液4.9mLに対しては、12.5mMのKCl溶液80mLと20mM水酸化カリウム溶液12mLを添加すれば、最終pHが7.4になり生体適合性が高く、析出に至る待ち時間が10分に遅延されたリン酸カルシウム過飽和溶液となる。
【0025】
析出に至る待ち時間が遅延された不安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは具体的には、Ca−P−Na−K−Cl系及び、Ca−P−Na−K−Mg−Cl−CO3系のある特定組成範囲の水溶液である。
【0026】
Ca−P−Na−K−Cl系の水溶液としては、Ca成分0〜2.5mM好ましくは0.8〜2.5mM、リン酸成分1.0〜20mM好ましくは1.2〜10mM、K成分0〜40mM好ましくは0〜20mMを含み、pHが5.0〜9.0好ましくは5.8〜8.5であり、Na成分がさらに0〜200mM好ましくは0〜150mM、Cl成分が0〜200mM好ましくは0〜150mM含まれた溶液である。溶液のCa/Pモル比は特に規定しないが、好ましくは0.1〜2.5の範囲である。
【0027】
Ca−P−Na−K−Mg−Cl−CO3系の溶液としては、Ca成分1.2〜2.75mM好ましくは1.39〜2.33mM、リン酸成分0.6〜15mM好ましくは1.17〜10mM、K成分0〜30mM好ましくは4〜20mM、Na成分30〜150mM好ましくは40〜145mM、Mg成分0.1〜3.0mM好ましくは0.2〜2.0mM、Cl成分30〜150mM好ましくは40〜145mM、HCO3成分0〜60mM好ましくは0〜45mM含み、pH5.0〜9.0好ましくは5.8〜8.5の溶液である。溶液のCa/Pモル比は特に規定しないが、好ましくは2.5以下の範囲である。
【0028】
さらに、析出に至る待ち時間が遅延されたCa−P−Na−K−Mg−Cl−CO3系のリン酸カルシウム不安定過飽和溶液は、医療用輸液剤、透析・腹膜灌流液、輸液の補正用製剤、カルシウム製剤、透析・腹膜灌流液の補充液の中から選ばれた1種または2種以上を混合することで作製することもできる。これらの溶液または薬剤は、Ca、P、Na、K、Mg、Cl、CO3の供給源として使用でき、この場合は、全ての溶液または薬剤が既に医療用に認可されており、しかも滅菌済みであるため、手術室等で使用するのに好都合である。医療用輸液の、Ca成分を含みP成分を含まない電解質輸液、P成分を含みCa成分を含まない電解質輸液、塩化ナトリウム輸液、透析・腹膜灌流液の補充液の透析液専用炭酸水素ナトリウム補充液は特に好適に使用されるが、これらに限定するものではない。Ca成分を含みP成分を含まない電解質輸液、P成分を含みCa成分を含まない電解質輸液、塩化ナトリウム輸液、透析液専用炭酸水素ナトリウム補充液としては、例えばそれぞれ市販のリンゲル液(大塚製薬)、クリニザルツB(小林薬工)、生理食塩液(大塚製薬)、バイフィル専用炭酸水素ナトリウム補充液(武田薬品)を用いれば良い。また、その組成は実施例に記載の通りである。
【0029】
タンパク質を添加しておく溶液は、上述の少なくともカルシウム成分を含む溶液、少なくともリン酸成分を含む溶液、カルシウム成分とリン酸成分の両方を含む溶液、自発核形成までの誘導時間を制御する溶液のいずれかに添加しておいても良い。ただし、タンパク質の変性を防止する観点からpH5以上8以下の溶液に添加しておくことが望ましい。この際のタンパク質の添加量は、タンパク質の種類やタンパク質を担持する焼結体の用途により異なるが、数μg/mL〜数g/mL、好ましくは10μg/mL〜100μg/mLである。焼結体への担持量もタンパク質の種類やタンパク質を担持する焼結体の用途により異なるが、1平方cm当り0.4μg以上、好ましくは1μg以上であり、担持量の上限には特に制限はない。単位面積当りの担持量を計算するための面積の値は担持前の焼結体面積のことである。担持量の下限は実験的に求めた。すなわち、発明者らは共沈を伴わず吸着のみでリン酸カルシウムに担持できるタンパク質の量を求めた結果、吸着だけで1平方cm当り0.33μgのタンパク質が担持できることがわかった(実施例5)。そこで、担持量の下限は1平方cm当り0.4μgとした。
【0030】
各成分溶液の温度とpHは、タンパク質の変性を防止できる温度とpHであれば特に制限はない。一般的には、多くのタンパク質は体温以上では変性することが多いので、各成分溶液と混合後の溶液の温度は37℃以下であることが望ましい。しかし、タンパク質の変性温度は、タンパク質の種類によって異なるので、使用するタンパク質によっては37℃以下に限るものではない。
【0031】
本発明において、リン酸カルシウムを主成分とする焼結体とは、焼結後にリン酸カルシウム焼結体となるリン酸カルシウム及び、これに炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、酸化カルシウムの少なくとも1種類を含んだものをいう。
【0032】
本発明において、元素や炭酸が固溶したリン酸カルシウムとは、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンの金属元素の固溶であればリン酸カルシウムのカルシウムを当該金属元素が不純物として一部置換したリン酸カルシウム、珪素であればリン酸カルシウムのリンを不純物として一部置換したリン酸カルシウム、炭酸の場合はリン酸カルシウムのリン酸基を不純物として一部置換したリン酸カルシウムのことである。珪素や炭酸が固溶する場合は置換される原子またはイオン団との間で電荷の不一致があるため、これを補うための他元素の2次的固溶や、構造中に原子が存在しない空孔サイトが生成したりする。例えば、炭酸が水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2に固溶する場合、(Na+,CO3 2-)と(Ca2+ 、PO4 3-)の同時置換、(K+,CO3 2-)と(Ca2+ 、PO4 3-)の同時置換、や(H+,CO3 2-)と(Ca2+、PO4 3-)の同時置換で炭酸が固溶する。各元素やイオン団には固溶限界があり、固溶限界以上に珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンをリン酸カルシウムに含有させようとすると、これらの元素を固溶したリン酸カルシウムの他に、これらの元素の酸化物やリン酸塩が生成して、これら元素の酸化物やリン酸塩を含む組成物となる。固溶限界は、例えばリン酸カルシウム焼結体が低温型Ca3(PO4)2であれば、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンはいずれも全カルシウムの約12mol%である。
【0033】
リン酸カルシウムを主成分とする焼結体には、骨形成やその他の生体機能を強化するために、亜鉛, マグネシウム、鉄、マンガン、珪素のなかから選ばれた1種または複数の生体必須元素を添加することができる。亜鉛、鉄、マンガン、珪素の焼結後の含有量は、骨の亜鉛、鉄、マンガン、珪素含有濃度の1倍以上100倍までの範囲とする。骨の亜鉛, 鉄、マンガン、ケイ素含有濃度は亜鉛:0.012重量%〜0.0217重量%、鉄:0.014重量%〜0.02重量%、マンガン:1ppm〜4ppm、珪素:0.0105重量%である。生体必須元素含有量が骨の含有量の1倍以下では、これら元素特有の持つ生体機能促進作用を骨中で発揮することは出来ない。また、100倍以上の含有量では、骨組織中で使用する人工骨においても、細胞培養液中で使用する組織工学スキャフォールドにおいても、これらの元素が過剰となり毒性を発現する。25倍以上100倍以下の含有量の場合は、骨組織中では毒性を発現するものの、細胞培養液中では毒性を発現しない。マグネシウムの焼結後の含有量は、骨のマグネシウム含有濃度の1倍以上50倍までの範囲とする。骨のマグネシウム含有濃度は0.26重量%〜0.55重量%である。マグネシウム含有量が骨の含有量の1倍以下では、マグネシウムの生体機能促進作用を骨中で発揮することは出来ない。マグネシウム含有量の上限だけ他の生体必須元素と違って骨の含有濃度の50倍までとした理由は、マグネシウムの骨含有量が他の生体必須元素よりけた違いに多いため、50倍以上の含有量では焼結後のカルシウムモル数よりマグネシウムモル数のほうが多くなり、リン酸カルシウムが主成分とならないからである。
【0034】
亜鉛、マグネシウム、鉄、マンガン、珪素、カルシウムは、焼結前の原料粉末であるリン酸カルシウムに固溶させておいてもよいし、無機塩、金属、酸化物、水酸化物、有機金属化合物として混合させておいてもよい。無機塩、金属、酸化物、水酸化物、有機金属化合物をあらかじめ混合させておく場合は、焼結時にこれら元素はリン酸カルシウムと反応して固溶する。混合元素量が固溶限界以上の場合は、焼結後当該元素固溶リン酸カルシウムの他に当該金属酸化物またはリン酸塩が生成する。無機塩として混合させる場合は、焼結時に陰イオン団が揮発する、炭酸塩や硝酸塩が好ましい。金属の塩化物、弗化物、硫酸塩は焼結時に生体適合性の低い塩素、フッ素、硫酸基が残存する結果となるため、使用できない。
【0035】
リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の全体としてのCa/Pモル比は0.75以上2.1以下、好ましくは1.1以上1.9以下である。Ca/Pモル比1.5以下の範囲にあっても、炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンから選ばれた不純物を含むリン酸カルシウム焼結体、例えばマグネシウムを含有するリン酸カルシウム焼結体であれば、焼結後にマグネシウム固溶リン酸三カルシウムとリン酸三マグネシウムの混合物とすることができ、生体適合性の低いピロリン酸カルシウムの生成を防ぐことができる。しかし、Ca/Pモル比0.75未満では、炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンから選ばれた不純物を添加した場合は、ピロリン酸カルシウムの生成を防ぐことができても、これら不純物成分の含有モル数のほうがカルシウムの含有モル数より多い結果となり、リン酸カルシウム質焼結体でなくなる。従って、リン酸カルシウム焼結体のCa/Pモル比の下限は0.75とした。Ca/Pモル比が2.1以上では毒性限界以上の酸化カルシウム生成を伴い、焼結体の生体適合性が損なわれる。そこでリン酸カルシウム焼結体のCa/Pモル比の上限は2.1とした。
【0036】
炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンを含まないリン酸カルシウム焼結体のCa/Pモル比は1.5以上2.0以下であることが望ましい。このようなリン酸カルシウム焼結体としては、具体的には単独でもCa/Pモル比が1.5以上2.0以下である水酸アパタイト、βリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、及びこれらの混合焼結体のほか、酸化カルシウムが混合された焼結体でもよい。これらの化合物は、化学量論組成のものであっても良いし、非化学量論組成のものでもよい。
【0037】
炭酸を含むリン酸カルシウム焼結体としては、具体的には炭酸を固溶した水酸アパタイト焼結体を挙げることができる。
【0038】
珪酸を含むリン酸カルシウム焼結体としては、具体的には珪酸を固溶した水酸アパタイト、珪酸を固溶したリン酸三カルシウム、及びこれらの混合焼結体のほか、ケイ酸カルシウム又は珪酸を添加した焼結体を挙げることができる。
【0039】
マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンを含むリン酸カルシウム焼結体としては、これらの金属イオンを固溶した水酸アパタイト、リン酸4カルシウム、リン酸三カルシウムのほか、これら金属酸化物及びリン酸塩を添加したリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0040】
また、本発明において焼結体中の酸化カルシウムは、溶出して焼結体表面近傍のpHを上昇させ、その結果焼結体表面近傍の過飽和度を上昇させるため、沈殿を基板表面で集中的に形成させるために特に効果的である。この目的のため、酸化カルシウムを焼結体中に0.1重量%から4重量%まで、好ましくは0.1重量%から3.5重量%まで、さらに好ましくは0.1重量%から1.8重量%含ませることができる。酸化カルシウム0.1重量%未満ではpH上昇の効果が小さいため、酸化カルシウム含有量の下限を0.1重量%とした。酸化カルシウムは空気中の水分と反応するため、含有量が多いと焼結体の強度が低下する。4重量%より酸化カルシウム含有量が多いと焼結体の強度が著しく低下するため、上限を4重量%とした。
【0041】
酸化カルシウムと空気中の水分との反応による強度劣化を防止する目的で、酸化カルシウムを焼結体の表面から少なくとも1ミクロンの表面層内だけに含有させておくこともできる。表面からの深さの下限を1ミクロンとした理由は、リン酸カルシウム焼結体の粒径が通常は1ミクロンから10ミクロンの大きさであり、最表面層を1ミクロン以下の厚さに分割できないからである。表面からの深さの上限は特に無く、焼結体の強度に影響がない含有量範囲であれば、全体に酸化カルシウムが分布していても差し支えない。
【0042】
酸化カルシウムと同様に、αリン酸三カルシウムとリン酸4カルシウムも、焼結体表面近傍の過飽和度を上昇させるため、沈殿を基板表面で集中的に形成させるために効果的である。すなわち、これらのリン酸カルシウムは加水分解によって低結晶性水酸アパタイトに変化し、加水分解反応時のカルシウム放出により、焼結体表面近傍の過飽和度が上昇する。また、加水分解で生じる高活性な低結晶性水酸アパタイトも、溶液中のタンパク質を取り込む。
【0043】
αリン酸三カルシウムとリン酸4カルシウムの焼結体中での含有量は90重量%以上か20重量%以下、好ましくは95重量%以上か15重量%以下である。αリン酸三カルシウムやリン酸4カルシウムの含有量が20重量%より高く90重量%未満の範囲では、焼結体の強度は著しく小さい。
【0044】
酸化カルシウムと同様に、αリン酸三カルシウムとリン酸4カルシウムを焼結体の表面から少なくとも1ミクロンの表面層内のみに含有させておくことは、空気中の水分と反応して強度劣化するのを防ぐ観点から好ましい。表面からの深さの下限を1ミクロンとした理由は、リン酸カルシウム焼結体の粒径が通常は1ミクロンから10ミクロンの大きさであり、最表面層を1ミクロン以下の厚さに分割できないからである。表面からの深さの上限は特に無く、強度に影響のない含有量範囲であれば、焼結体全体にαリン酸三カルシウムとリン酸4カルシウムが分布していても差し支えない。酸化カルシウム、αリン酸三カルシウムまたはリン酸4カルシウムが表面からどの程度内部に存在しているかは、例えばX線マイクロアナリシス装置を備えた走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で断面観察することにより確認することができる。
【0045】
担持するタンパク質は水溶性のタンパク質であり、生物学的活性化物質を使用することができる。水溶性タンパク質には、非水溶性のタンパク質をアルブミンなどの水溶性担体タンパク質またはポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸類(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)などの水溶性ポリマーに結合させることで水可溶性とした非水溶性タンパク質も含む。非水溶性のタンパク質と上記水溶性担体タンパク質または水溶性ポリマーとの結合は両方の物質の官能基を利用すればよく、種々の公知の方法で結合させることができる。ここで生物学的活性化物質は生物に対して生物活性を有する、すなわち生物に作用することで生物体に何らかの変化を誘起し得る物質をいう。生物学的活性化物質として、生体の調節や生体の機能を変化させ得るサイトカイン、ホルモン等の生理活性物質が含まれ、例えば成長因子や細胞接着因子がある。水溶性で生物活性を持たないタンパク質の例としては、アルブミン、チトクロムC、グロブリン、などを挙げることができる。水溶性で生物活性を持つタンパク質、すなわち生物学的活性化因子の例としては、塩基性繊維芽細胞成長因子、IL-1(インターロイキン1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、エリスロポエチン、CSF-1(コロニー刺激因子)、SCF(幹細胞因子)、トロンボポエチン、EGF(上皮増殖因子)、TGF-α(トランスフォーミング増殖因子-α)、HB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)、エピレグリン、ニューレグリン1、2、3、PDGF(血小板由来増殖因子)、インスリン、HGF(肝細胞増殖因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)、NGF(神経成長因子)、GDNF(グリア細胞株由来神経栄養因子)、ミッドカイン、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)、ベータグリカン、アクチビン、BMP(骨形成因子)、TNF(腫瘍壊死因子)、IFN-α/β(インターフェロン-α/β)、IFN-γ(インターフェロン-γ)、フィブロネクチン、ラミニン、カドヘリン、インテグリン、セレクチンなどを挙げることができるが、これらに限定はされない。動物細胞の結合組織を構成するタンパク質であるコラーゲン、ゼラチンは本発明の生物学的活性化因子には含まれない。
【0046】
リン酸カルシウム焼結体は、緻密質焼結体であっても良いし、多孔質焼結体であってもよい。多孔質焼結体に生物活性を有するタンパク質を担持する場合は、焼結体を体内に埋入した後に、血管、骨、上皮、神経等の再生組織を焼結体の気孔内に侵入させることができるので効果が大きい。気孔率が20%より低いと実質的に緻密質であり組織侵入に適さず、気孔率が80%より高いと強度が低下し実用上の価値が損なわれる。そのため、多孔質リン酸カルシウム焼結体の気孔率は20%以上80%以下とした。気孔率は、以下の方法により測定することが可能である。すなわち、多孔質焼結体の外寸法と重量を測定し、体積V(cm3)と重量W(g)を求める。多孔質焼結体を構成するリン酸カルシウムの理論密度をD(g/cm3)とすれば、気孔率(%)はP=(1−P(W/(VxD))x100で求めることができる。例えば、縦1.560cm、横1.550cm、高さ0.340cm、重量1.0704gで、気孔が3次元網目状に貫通している水酸アパタイト多孔質焼結体であれば、水酸アパタイトの理論密度値3.16g/cm3を用いて、P=58.8%となる。
【0047】
組織が侵入するためには、少なくとも2個以上細胞が気孔内に侵入する必要がある。細胞1個の大きさは30ミクロンであるため、気孔直径の最小値は70ミクロンとした。また、直径4mmより大きい組織を侵入させる必要性は実用上皆無に等しいため、気孔直径の上限は4mmとした。気孔直径は光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて多孔質焼結体の断面を観察することで測定することができる。。
【0048】
気孔が焼結体を貫通していれば、血管や神経を貫通ささせることもできる。気孔が3次元網目状に貫通していれば、毛細血管や骨組織が三次元網目状に貫通するのに都合が良い。
【0049】
リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の原料粉末としては、リン酸カルシウム粉末、及びリン酸カルシウムに炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンのうち少なくとも1種が含有されるか固溶したリン酸カルシウム粉末を使用することができる。
【0050】
炭酸、珪素、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンを含まないリン酸カルシウム原料粉末のCa/Pモル比は1.5以上2.0以下であることが望ましい。このようなリン酸カルシウム粉末としては、具体的には単独でもCa/Pモル比が1.5以上2.0以下である水酸アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、及びこれらの混合物のほか、これらの単独粉末又は混合物にCa/Pモル比が1.5以下または2.0以上の粉末、具体的には、リン酸水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、金属カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硝酸カルシウム、カルシウムアルコキサイド等のカルシウム塩が混合されたものでもよいし、リン酸アンモニウム、リン酸等が混合されたものでもよい。これらの化合物は、化学量論組成のものであってもいし、非化学量論組成のものでもよい。
【0051】
炭酸を含むリン酸カルシウム原料粉末としては、具体的には炭酸を固溶した水酸アパタイト、炭酸を固溶した非晶質リン酸カルシウム、及びこれらの混合物、さらに炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムを添加したリン酸カルシウム粉末を挙げることができる。
【0052】
珪酸を含むリン酸カルシウム粉末としては、具体的には珪酸を固溶した水酸アパタイト、珪酸を固溶した非晶質リン酸カルシウム、珪酸を固溶したリン酸三カルシウム、及びこれらの混合物のほか、ケイ酸カルシウム又は珪酸を添加したリン酸カルシウム粉末を挙げることができる。
【0053】
マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガンを含むリン酸カルシウム粉末としては、これらの金属イオンを固溶した水酸アパタイト、非晶質リン酸カルシウム、リン酸4カルシウム、リン酸三カルシウムのほか、これら金属及び金属酸化物、水酸化物、リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩を添加したリン酸カルシウム粉末を挙げることができる。金属の塩化物、弗化物、硫酸塩は焼結時に生体適合性の低い塩素、フッ素、硫酸基が残存する結果となるため、使用できない。
【0054】
酸化カルシウムを含有する焼結体の原料粉末は、高温で酸化カルシウムを生成するカルシウム化合物を、全体のCa/Pモル比が1.67を超えるようにリン酸カルシウムと混合して燒結することで作製することができる。このようなカルシウム化合物としては具体的には、カルシウムの硝酸塩、炭酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、水酸化物、キレート等を挙げることができる。表面だけ酸化カルシウムを含有するようにするには、例えば、これらの水溶液を焼結前の成型体に塗布しておけば良い。
【0055】
リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の原料粉末の粒子径には特に制限はないが、約0.1μmから100μmであることが望ましい。これらの原料粉末にポリビニルアルコールなどのバインダーを含有させ、場合によってはさらに水やアルコールなどの溶剤を含有させて成型体を作製する。焼結工程は、通常の電気炉を用い大気雰囲気下で、500℃以上1500℃以下、好ましくは700℃以上1400℃以下で行う。500℃以下では焼結は起こらず、1500℃以上では多くのリン酸カルシウムが分解する。最適焼結温度は、焼結させるリン酸カルシウム粉末の化学組成によって異なる。例をあげれば、炭酸を3−15重量%含有する水酸アパタイトの最適焼結温度は600℃以上800℃以下である。水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2:Ca/Pモル比=1.67)の最適焼結温度は900℃以上1200℃以下である。水酸アパタイトとαリン酸三カルシウムの複合焼結体の最適焼結温度は1130℃以上1200℃以下である。水酸アパタイトと酸化カルシウムの複合焼結体の最適焼結温度は1130℃以上1200℃以下である。ケイ素を含む水酸アパタイトの最適焼結温度は900℃以上1200℃以下である。βリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2:Ca/Pモル比=1.50)の最適焼結温度は、900℃以上1100℃以下である。αリン酸三カルシウムの最適焼結温度は1200℃以上1500℃以下である。亜鉛、マンガン、マグネシウムを含有するβリン酸三カルシウムの最適焼結温度は900℃以上1200℃以下である。亜鉛、マンガン、マグネシウムを含有するαリン酸三カルシウムの最適焼結温度は1300℃以上1500℃以下である。
【0056】
共沈するかどうかは目視で確認することもできるし、動的光散乱法を用いてナノメーターレベルで確認することもできる。共沈物は粉末X線回折法 、走査型電子顕微鏡観察で評価できる。タンパク質量はビュレット法にBicinchonic Acidを組み合わせた、比色分析で定量することができる。タンパク質の徐放性はタンパク質担持リン酸カルシウム焼結体を生理的食塩水に浸し、経時的に食塩水中のタンパク質量を定量して評価することができる。本発明のタンパク質担持リン酸カルシウム焼結体からなるタンパク質の徐放性は、担持するタンパク質の種類、タンパク質を担持する焼結体の用途により異なる。共沈させるリン酸カルシウムの量を変えることにより徐放性を調節することができ、様々な用途に対応させることが可能である。
【0057】
本発明の水溶性タンパク質を表面に担持させたリン酸カルシウムを主成分とする焼結体は、人工骨等の生体材料として用いることができる。表面に担持しているタンパク質である生物学的活性化因子が生体組織再構築に有用である。また、担持しているタンパク質が徐々に放出されるので、タンパク質徐放体として用いることができる。例えば、本発明のタンパク質を担持した焼結体を生体内に埋め込んで用いればよい。さらに、本発明のタンパク質を担持した焼結体を組織工学スキャホールドとして用いることができる。すなわち、焼結体上で細胞を培養して皮膚、骨等のヒトの組織や臓器を形成させることが可能である。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0059】
【実施例1】
超純水にKClを0〜0.1192gを加えてスターラーで30分間攪拌して溶解し、0〜20mMKCl溶液を作製した。次にこの溶液に50mM H3PO4溶液を加えた。次に100mM CaCl2溶液を加え、20mM KOH溶液を徐々に滴下してpH7.4に調整し、CaCl2濃度5mM、PO4濃度1mMの溶液を得た。これをCaP溶液と呼ぶ。塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を超純水に溶解しトリスヒドロキシメチルアミノメタンを加えて(5mM)、12.5〜150mg/Lのトリス緩衝タンパク質溶液とした。CaP溶液とタンパク質溶液を1:1で混合した。動的光散乱法で粒子サイズが成長するのを追跡したところ、KCl 20mM以下で析出が確認された。析出に至る待ち時間はKCl濃度に強く依存し、KCl 0mMで約1時間、KCl 10mMでは10時間程度であった。析出物は粉末X線回折法で同定を行い、走査型電子顕微鏡で形態観察を行なった。更に、析出物を濾過後の溶液についてタンパク質濃度を定量した。その結果、析出物はbFGFとアパタイトの共沈物であることが確認された。析出物のサイズは数100〜1ミクロン程度であった。すなわち、KC1の濃度を適当に選択することで、リン酸カルシウムの析出までの時間を制御でき、しかもリン酸カルシウムにタンパク質bFGFを結合させて共沈させることが示された。
【0060】
【実施例2】
KCl成分0〜50mM、CaCl2成分1.17〜2.5mM、HPO成分1.0mM〜2.33mMの種々の組成の溶液を作製した。すなわち、クリーンベンチ内で80mlの超純水にKClを0〜0.2982gを加えてスターラーで30分間攪拌して溶解し、0〜50mMKCl溶液を作製した。次にこの溶液に50mMH3PO4溶液を1.6〜3.72mLを加えた。次に100mMCaCl2溶液を0.936〜2.0mLを加え、20mM KOH溶液を徐々に滴下してpH7.4に調整した。これをCaP溶液と呼ぶ。チトクロムCをカルシウム不含マグネシウム不含リン酸緩衝生理的食塩水(PBS(−))、すなわち、KCl成分2.68mM、KH2PO4成分1.46mM、NaCl成分136.89mM、Na2HPO4成分8.10mMの水溶液に50μg/mLの濃度で溶解させた。さきのCaP溶液1mLとタンパク質含有PBS(−)1mLを混合して遅延共沈水溶液とした。窒素雰囲気下にこの水溶液を7日間放置し、孔径0.22μmのフィルターでろ過し、ろ液のチトクロムC含有量を定量した。その結果、溶液のCa/Pモル比1.0〜2.5の範囲、KCl濃度0〜20mMでチトクロムCとリン酸カルシウムの共沈が生じた(図1)。
【0061】
【実施例3】
リン酸カルシウムを主成分とする種々の緻密質及び多孔質焼結体を作製した(表1)。緻密質焼結体は、3%ポリビニルアルコールを添加した粒径75μmアンダーの各種リン酸カルシウム粉末を100MPaで一軸加圧成形し、1100℃〜1200℃で焼結して作製した。焼結後の大きさは直径13〜14mm、厚さ1〜1.2mmであり、相対密度90〜95%であった。緻密質焼結体の表面積は3.06〜3.60cm2であった。多孔質焼結体は以下のような方法で作製した。すなわち、3%ポリビニルアルコールを添加した粒径75μmアンダーの各種リン酸カルシウム粉末を0.175gを秤量し、超純水40〜65μL添加して錬和し、直径0.5mm長さ28mmのステンレス製長柱体状オス型13本を0.3mm間隔に平行に配列し、この上に、これと直交する方向で同一寸法のステンレス製長柱体状オス型14本を配列した。この長柱体状オス型配列物に上記粉末錬和物を詰め込み、36MPaで加圧した。加圧後、長柱体状オス型を被覆している粉末をプラチック製スクレーパーで取り除いた。上記操作を4回繰り返した。加圧成型後、長柱体状オス型を全部抜き取って、気孔を形成させた。これを室温で、2日間乾燥させ、700〜1170℃で5時間燒結して多孔体とした。多孔体は直径400μmの直線状貫通気孔を交互に直交させた気孔を有し、2方向の気孔の交点は直径50〜200μmの気孔が形成されていた。多孔質焼結体は、緻密質焼結体とほぼ同重量のものを切り出して使用した。気孔率は60〜64%である。これらの焼結体は全て160℃、1時間乾熱滅菌した。
【0062】
担持に用いたCaP溶液はCaCl2成分2.1mM、H3PO4成分1.4mM、KCl成分10または20mMである。タンパク質はチトクロムC、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、ラミニンの3種類で、これらのタンパク質はカルシウム不含マグネシウム不含リン酸緩衝食塩水(PBS(−))、すなわち、KCl成分2.68mM、KH2PO4成分1.46mM、NaCl成分136.89mM、Na2HPO4成分8.10mMの水溶液に25又は50μg/mLの濃度で溶解させた。
【0063】
滅菌した焼結体を細胞培養用24穴プレートに入れ、これにCaP溶液1mLとタンパク質含有PBS(−)溶液1mLを入れた。窒素雰囲気中に7日間放置し、放置後溶液を回収してタンパク質量を定量し、焼結体へのタンパク質担持量を求めた(表2)。その結果、いずれの焼結体にもタンパク質が担持されていることがわかった。特に、多孔質焼結体や酸化カルシウムを含有する焼結体で、担持量が多かった。
【0064】
【表1】
Figure 0004478754
【0065】
【表2】
Figure 0004478754
【0066】
【実施例4】
実施例3で得られた、チトクロムCを担持した緻密質水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体表面のX線回折パターンを測定した(図2)。その結果、焼結体表面に酸化カルシウムは検出されず、担持溶液から析出生成した低結晶性アパタイトに覆われていることがわかった。すなわち、水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体は水溶液中でカルシウムを放出し、放出されたカルシウムが焼結体表面近傍の過飽和度を更に上昇させ、焼結体表面で低結晶性アパタイトが大量に析出し、この時、大量のタンパク質を共沈させたものと推察された。
【0067】
【実施例5】
カルシウムを含有しない水溶液にタンパク質を溶解し、カルシウムを放出する酸化カルシウム含有焼結体上に担持させた。焼結体は直径13mm、厚さ1mmで表面積は3.06cm2である。すなわち、チトクロムCをカルシウム不含マグネシウム不含リン酸緩衝食塩水(PBS(−))、すなわち、KCl成分2.68mM、KH2PO4成分1.46mM、NaCl成分136.89mM、Na2HPO4成分8.10mMの水溶液に25μg/mLの濃度で溶解させた。
【0068】
水中でカルシウムイオンを放出する焼結体として、実施例3の緻密質水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体、亜鉛含有水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体、水酸アパタイト−αリン酸三カルシウム複合焼結体、亜鉛含有水酸アパタイト−αリン酸三カルシウム複合焼結体、カルシウムイオンを放出しない焼結体として実施例3の緻密質水酸アパタイト焼結体と亜鉛含有水酸アパタイト焼結体を用いた。滅菌したこれら緻密質焼結体を細胞培養用24穴プレートに入れ、これにチトクロムC含有PBS(−)溶液2mLを入れた。窒素雰囲気中に7日間放置し、放置後溶液を回収してタンパク質量を定量し、焼結体へのタンパク質担持量を求めた(表3)。カルシウムを放出しない水酸アパタイト焼結体と亜鉛含有水酸アパタイト焼結体では、タンパク質の担持は受動的吸着効果のみによるもので、タンパク質担持量は僅かであった。一方、カルシウムを放出する焼結体上では、放出カルシウムとPBS(−)中のリン酸との反応で、リン酸カルシウムが表面に生成し、この時PBS(−)中のタンパク質を能動的に共沈で取込むため、カルシウムを放出しない焼結体の2〜7倍量のタンパク質を担持することができた。
【0069】
【表3】
Figure 0004478754
【0070】
【実施例6】
実施例3で得られた緻密質タンパク質担持リン酸カルシウム焼結体をカルシウム不含マグネシウム不含リン酸緩衝生理的食塩水(PBS(−))で洗い、細胞培養用24穴シャーレに入れた。ここに生理食塩水(0.9wt%食塩水)を1.5mL滴下し、37℃、窒素雰囲気下に放置した。経時的に生理食塩水を回収してタンパク質量を定量し、タンパク質の徐放率を求めた(表4)。いずれの焼結体もタンパク質を徐放することができ、タンパク質徐放体として使用できることが示された。また酸化カルシウムを含有する焼結体は他の焼結体に比較して徐放速度が小さいことがわかった。
【0071】
【表4】
Figure 0004478754
【0072】
【実施例7】
表5に組成を示したカルシウム不含有リン酸塩含有医療用電解質輸液とカルシウム含有リン酸塩不含有医療用電解質輸液をCa/Pモル比=0.5〜2.5となるように混合した。これにNaHCO3濃度=0〜47.43 mMとなるように透析ろ過型人工腎臓用透析液専用炭酸水素ナトリウム補充液を混合し、過飽和リン酸カルシウム溶液を調製した。この溶液1.8mLに、チトクロームC濃度250μg/mLの生理食塩水溶液(154 mM NaCl溶液)を体積比で9:1となるように混合して全体を2mLとし、室温又は37℃で2日間、静置した。できあがった溶液の組成はCaCl2成分1.20〜2.39mM、H3PO4成分0.69〜3.37mM、KCl成分0〜40mMを含みpHが5.8〜9.0であった。表6に室温でリン酸カルシウムが自発核形成し、チトクロムCの共沈が生じた溶液のCa/Pモル比、NaHCO3濃度、チトクロムC共沈量を示す。表7に37℃でリン酸カルシウムが自発核形成し、チトクロムCの共沈が生じた溶液における、チトクロムC共沈量を示す。すなわち、これらの溶液はリン酸カルシウムの不安定過飽和溶液であり、タンパク質を共沈析出できる溶液であることが示された。
【0073】
【表5】
Figure 0004478754
【0074】
【表6】
Figure 0004478754
【0075】
【表7】
Figure 0004478754
【0076】
【実施例8】
表5に組成を示したカルシウム不含有リン酸塩含有医療用電解質輸液とカルシウム含有リン酸塩不含有医療用電解質輸液をCa/Pモル比=1.5となるように混合した。これにNaHCO3濃度が15mMとなるように透析ろ過型人工腎臓用透析液専用炭酸水素ナトリウム補充液を混合し、過飽和リン酸カルシウム溶液を調製した。この溶液に、チトクロームCの250μg/mLの生理食塩水溶液(154 mM NaCl溶液)を体積比で9:1となるように混合し、リン酸カルシウム焼結体を投入し、37℃で2日間、静置した。基材には、酸化カルシウム含有量を0.00〜1.65 重量%で変化させた直径13 mm、厚さ1 mmの円盤上の水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体を使用した。焼結体の表面積は3.06cm2である。不安定過飽和溶液から基材表面へのアパタイトの析出過程で共沈したタンパク質量と基材の酸化カルシウム含有量との関係は表8の通りである。
【0077】
【表8】
Figure 0004478754
【0078】
【発明の効果】
本発明は、生物学的活性化物質であるタンパク質を担持したリン酸カルシウムを主成分とする焼結体であり、生体適合性を有しており、担持したタンパク質の作用により、生体組織再構築が促進され、人工骨等の生体材料、組織工学スキャホールド等に用いることができる。さらに、実施例に示すように、担持したタンパク質は徐放性を示すので、徐放体として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Ca−P−Na−K−Cl系不安定リン酸カルシウム過飽和溶液溶液からのチトクロムC共沈量を示す図である。
【図2】図2は、チトクロムCを担持した緻密質水酸アパタイト−酸化カルシウム複合焼結体表面のX線回折パターンを示す図である。

Claims (15)

  1. 自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液中で、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質とリン酸カルシウムとの制御された遅延共沈を行ない、リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させる方法であって、
    前記不安定リン酸カルシウム過飽和溶液として、Ca成分0〜2.5mM、リン酸成分1.0〜20mM、K成分0〜40mM、Na成分0〜200mM、Cl成分0〜200mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液を用い
    該水溶液中のKCl濃度を制御することにより、リン酸カルシウム析出までの時間を人工的に制御遅延させることを特徴とする方法。
  2. 自発核形成を生じる不安定リン酸カルシウム過飽和溶液中で、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質とリン酸カルシウムとの制御された遅延共沈を行ない、リン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させる方法であって、
    前記不安定リン酸カルシウム過飽和溶液として、Ca成分1.2〜2.75mM、リン酸成分0.6〜15mM、K成分0〜30mM、Na成分30〜150mM、Mg成分0.1〜3.0mM、Cl成分30〜150mM、HCO3成分0〜60mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液を用い
    該水溶液中のKCl濃度を制御することにより、リン酸カルシウム析出までの時間を人工的に制御遅延させることを特徴とする方法。
  3. 前記水溶液として、医療用輸液剤、透析・腹膜灌流液、輸液の補正用製剤、カルシウム製剤、透析・腹膜灌流液の補充液の中から選択される1種または2種以上の溶液を含んだ水溶液を使用する請求項2に記載の方法。
  4. 前記生物学的活性化物質である水溶性タンパク質が成長因子または細胞接着因子のうちの少なくとも一種を含んでいる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. カルシウム成分を含む溶液とリン酸成分を含む溶液をあらかじめ別々に作製しておき、両者を混合することでタンパク質の共沈を開始させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体中に、酸化カルシウムを0.1〜4重量%含有させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
  7. αリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウムから選ばれる1種または2種以上の相をあらかじめ、前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体表面に形成しておき該相からカルシウムを放出させてタンパク質を共沈析出させる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
  8. タンパク質を溶解させたリン酸成分を含む溶液を、前記リン酸カルシウムを主成分とする焼結体と接触させ、タンパク質の共沈を開始させる請求項7に記載の方法。
  9. リン酸成分を含む溶液が、リン酸緩衝生理的食塩水又はリン酸含有カルシウム不含有医療用輸液剤の中から選択される1種又は2種の混合液である請求項7に記載の方法。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法を用いたことを特徴とする生体材料の製造方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法を用いたことを特徴とするタンパク質徐放体の製造方法。
  12. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法を用いたことを特徴とする人工骨の製造方法。
  13. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法を用いたことを特徴とする組織工学スキャフォールドの製造方法。
  14. 焼結後の酸化カルシウム含有量が0.1〜4重量%であるリン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法により、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させてことを特徴とするリン酸カルシウム焼結体。
  15. 表面から少なくとも深さ1ミクロンまでの表面層にαリン酸三カルシウム、リン酸4カルシウム、酸化カルシウム、または酸化マグネシウムの少なくとも1種が含有されたリン酸カルシウムを主成分とする焼結体の表面に、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載された方法により、生物学的活性化物質である水溶性タンパク質を担持させたことを特徴とするリン酸カルシウム焼結体。
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