JP4478553B2 - ガラスの製造方法およびガラス熔融装置 - Google Patents

ガラスの製造方法およびガラス熔融装置 Download PDF

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Description

本発明は、粉体状ガラス原料を用いるガラスの製造方法およびガラス熔融装置に関する。
耐火煉瓦でできた炉の内部に配置された熔融容器内にガラス原料を投入しながらガラスを熔融する装置として、例えば特許文献1に記載されている熔融装置が知られている。
特開2003−335525号公報
炉内に熔融容器を配置してガラス原料を効率よく加熱するには、炉内の雰囲気温度がガラスの熔融に適した温度に保たれるように炉の密閉度を高める必要がある。そのため、従来の炉はガラス原料を供給する原料供給口と熔融ガラスを炉外に送り出す熔融ガラスの流路を除いて炉内空間を密閉する構造になっていた。
このような構造の炉を使用して粉体状のガラス原料を加熱、熔融しようとすると、次のような問題が生じる。すなわち、粉体状のガラス原料は、予めガラス化したカレット原料とは異なり、ガラス化前の原料なので、加熱、熔融時の反応により多量のガスを発生する。炉外への排熱量を抑制するため密閉度を高めた炉では、ガスの多量発生によって炉内圧力が高まり、炉内への粉体状原料の供給が困難になってしまう。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、粉体状のガラス原料を供給しながら安定してガラスを熔融することが可能なガラスの製造方法ならびにガラス熔融装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[請求項1]閉鎖された炉内に配置された熔融容器内に粉体状の光学ガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含む光学ガラスの製造方法において、
前記炉は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記熔融容器は白金合金製であり、
前記炉内かつ前記熔融容器外に加熱源が配置されており、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とする光学ガラスの製造方法。
[請求項2]前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
[請求項3]閉鎖された炉内に配置された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
前記炉は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられ、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法。
[請求項]前記炉の内部に加熱手段が配置されていることを特徴とする請求項に記載の製造方法
[請求項]前記炉内にガスを導入しながら前記粉体状のガラス原料の供給を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
[請求項]前記ガラス原料の熔融によって生成するガスの発生量に応じて、前記排気孔の開口面積および/または開口する排気孔の数を増減させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
[請求項]前記炉は、耐火煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は白金もしくは白金合金からなるか、または、
前記炉は、焼成煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は電鋳煉瓦からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
[請求項]閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
前記熔融容器は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法。
[請求項]前記容器内にガスを導入しながら前記粉体状のガラス原料の供給を行うことを特徴とする請求項に記載の製造方法
[請求項10]前記ガラスが、1400℃にて3dPa・s未満の粘度を示すか、または液相温度を有するとともに液相温度において35dPa・s以下の粘度を示すものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
[請求項11]前記ガラスが、必須成分としてB23を、任意成分としてSiO2を含み、かつSiO2の含有量が0〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法
[請求項12]閉鎖された炉内に配置した熔融容器内に粉体状の光学ガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製する光学ガラス熔融装置において、
前記炉は、
光学ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記熔融容器は白金合金製であり、
前記炉内かつ前記熔融容器外に加熱源が配置されており、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とする光学ガラス熔融装置。
[請求項13]前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられることを特徴とする請求項12に記載の熔融装置
[請求項14]閉鎖された炉内に配置した熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
前記炉は、
ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられ、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置。
[請求項15]
前記炉の内部に加熱手段が配置されていることを特徴とする請求項14に記載の熔融装置
[請求項16]前記炉は、耐火煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は白金もしくは白金合金からなるか、または、
前記炉は、焼成煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は電鋳煉瓦からなることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の熔融装置
[請求項17]閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
前記熔融容器は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための排気孔
を有し、
前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置。
本発明によれば、粉体状のガラス原料を供給しながら安定してガラスを熔融することが可能なガラスの製造方法ならびにガラス熔融装置を提供することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[ガラスの製造方法]
本発明の第一の態様のガラスの製造方法(以下、「製法I」ともいう)は、
閉鎖された炉内に配置された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
前記炉は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法
である。
図1は、製法Iに使用し得るガラス熔融装置の一例(垂直断面図)であり、図2は、図1のA−A’における水平断面の概略図である。以下、図面を参照しながら製法Iについて説明する。但し、製法Iは、図面に示す態様に限定されるものではない。
製法Iにおいて使用されるガラス原料は、ガラス化前の各種粉体状化合物からなるものである。前記化合物としては、H3BO3、La23、Gd23、Y23、Yb23、SiO2、ZrO2、ZnO、ZnCO3などを例示することができる。
本発明において使用される粉体状ガラス原料は、ガラス化前の原料なので、加熱、熔融時の反応により多量のガスを発生する。そこで、製法Iでは、内部に熔融容器を配置する炉に、ガラス原料を供給するための原料供給部を設けるとともに、原料供給部とは別の位置に、炉内のガスを炉外に排気するための排気孔を設ける。これにより、閉鎖された炉内で発生したガスを炉外へ排気しながら、ガラス原料の供給、加熱、熔融を行うことができる。なお、本発明において、「閉鎖された炉」とは、原料ガラスの供給、加熱、熔融を行う際に開口している部分が事実上排気孔のみであることをいう。後述するように、炉には排気孔以外にも複数の開口部が設けられることがあるが、それら開口部にはドレインパイプ等が取り付けられるため、原料ガラスの供給、加熱、熔融を行う際には、それら開口部からのガスの流出は実質的にないとみなすことができるので、このような態様の炉も、本発明における閉鎖された炉に含まれる。
ガラス熔融時には炉内は高温になるため、前記炉は、耐火煉瓦製であることが好ましい。耐火煉瓦としては、高温度焼成煉瓦、高温度焼成高アルミナ質煉瓦などの煉瓦を使用することができる。高温度焼成煉瓦はアルミナを60質量%以上、シリカを30質量%以上含むものであり、高温度焼成高アルミナ質煉瓦が耐火性をより向上するため、アルミナの量を増やしたものである。いずれの焼成煉瓦とも市販のものを使用することができる。
炉内に配置される熔融容器としては、公知のものを用いることができ、例えば白金または白金合金製容器を使用することができる。
製法Iにおいて使用される炉は、ガラス原料を供給するための原料供給部と、炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための排気孔とを有する。
図1に示す装置では、炉3の上部に、ガラス原料を熔融容器1に導くためのパイプ6とパイプ6の内側に配置された内側パイプ5が取り付けられている。供給するガラス原料としては、複数種の粉体状の化合物を所定の割合で調合したものを使用することができる。この調合済み原料は原料供給口10に供給され、下方に位置する、モータ8で所定の回転スピードで回転するスクリュー9により、内側パイプ5の内側に押し出される。スクリュー9を一定スピードで回転させるので、内側パイプ内へのガラス原料の単位時間あたりの供給量も一定となる。スクリュー9はガラス原料とともに、原料供給口10と内側パイプ5の間を塞ぐ働きをする。この働きにより、後述する原料供給ガスが原料供給口10側に流れ込むことを防止することができる。このように、製法Iにおいて使用される炉に設けられる原料供給部は、原料供給口、スクリュー、内側パイプ、パイプ等によって構成され、上記のように、原料によって原料供給口と内側パイプの間を塞ぐことにより、炉の内部と外部は遮断される構成となっている。
製法Iでは、炉内にガス(原料供給ガスという。)を導入しながらガラス原料の供給を行うことが好ましい。前記原料供給ガスは、ガラス原料の供給方向と同じ方向から、特にガラス原料の供給経路と同一経路から炉内に導入することが更に好ましい。
図1に示す装置では、原料供給ガスをガラス原料とともにパイプ内を流して炉内に投入する。具体的には、図1に示す装置を用いる場合は、内側パイプ5の内部および内側パイプ5とパイプ6の間の隙間には、ガス管7から一定量のガスを下向きに流すことにより、炉内にガスを導入することができる。原料供給ガスとしては乾燥ガスを用いることが好ましい。水分を含んだガスを炉内に供給すると、ガスが急激に熱せられることによりガスの体積が急激に膨張し、安定したガラス原料の供給を妨げる恐れがある。また供給するガスは清浄なものが好ましい。ガスの種類としては、空気、窒素、窒素と酸素の混合ガスなどを使用することができる。空気や窒素と酸素の混合ガスを使用することにより、熔融ガラスの酸化度を調整し、ガラスが還元されて着色することを防止する効果を得ることもできる。但し、空気に酸素を加えたものや、上記混合ガスを使用する場合、酸素の分圧が高すぎると熔融容器を構成する金属、例えば白金合金が侵蝕されやすくなるので、酸素分圧が過剰に高くならないよう注意するべきである。
内側パイプ5内に供給されたガラス原料は、好ましくは上記原料供給ガスと共に内側パイプ5、次いでパイプ6を通って、パイプ出口6−1から真下に配置された熔融容器1内の熔融ガラス2の液面に投入される。炉内の圧力は、ガラス原料の熔融反応によって発生するガスにより高まるため、前述のように原料供給ガスを流しながらガラス原料を供給することが望ましい。原料供給ガスをガラス原料とともに流す機構は、特に密閉性の高い炉内でガラスの熔融を行う装置または方法において極めて有効なものである。なお、炉内は原料供給ガスの有無によらず、炉外雰囲気に対し陽圧とすることが好ましい。
前述のように原料供給ガスを連続して流すことにより、ガラス原料がパイプを塞いでしまったり、炉内からの上昇気流によってガラス原料が多量に飛散することを防止することもできる。原料供給ガスの流量は、上記効果が得られるように適宜調整して決定することができる。
熔融容器1内で加熱、熔融されたガラス2は、熔融容器の下方側面に設けられたドレインパイプ12(例えば白金合金製)を通って炉3の外部の清澄槽、作業槽(いずれも図示せず)へと導かれ、清澄、攪拌・均質化後に熔融容器外へ流出される。なお、清澄槽、作業槽、各槽を連結するパイプ、作業槽で均質化したガラスを流出するパイプも白金合金で作られていることが好ましい。
製法Iにおいては、熔融容器内に供給されたガラス原料を加熱、熔融するために、更には、炉内雰囲気および熔融ガラスを加熱するために、炉の内部に加熱手段を配置することが好ましい。更に、製法Iにおいては、炉外に加熱手段を配置することもできる。炉内に配置する加熱手段は、炉内に配置された加熱源であることができ、炉外に配置する加熱手段は、炉外に配置された誘導加熱装置であることができる。例えば、図1に示す装置では、パイプ6、排気孔11およびドレインパイプ12を除いて、基本的に密閉構造を有する炉内に熔融容器1と加熱源4を配置することができる。また、前記炉内に熔融容器1と加熱源4を配置し、炉外に高周波発生コイルを配置することもできる。
加熱源4としては、耐熱性の抵抗体を用いることが好ましく、抵抗体に電流を流し発熱させて加熱を行うことができる。前記抵抗体としては、SiC製発熱体、モリブデンシリサイドとアルミノシリケートの混合体からなる発熱体(カンタルヒータと呼ばれる)、ニッケルクロム合金発熱体を例示できる。これらの発熱体は組み合わせて使用することもできる。中でも、SiC製発熱体による加熱によれば、ガラスの熔融に適した高温状態を安定して長時間作り出すことができることから、上記加熱源としてはSiC製発熱体を用いることが特に好ましい。加熱源として燃焼ガスにより加熱する加熱源、例えば燃焼バーナを使用すると、炉内の雰囲気を激しく流動させるので、ガラス原料が飛散されるため、望ましくない。
なお、熔融容器を白金合金製など高周波誘導加熱が可能な耐火製材質によって構成することにより、熔融容器を高周波誘導加熱してガラスの熔融を行うこともできる。その場合、ガラス熔融装置は、高周波発生コイルと前記コイルに電力を供給する電源とを炉外に備えた構成とし、熔融容器の高周波誘導加熱のみを行うようにしてもよいし、上記のように炉内に加熱源を配置して、炉内加熱源による加熱と上記高周波誘導加熱を併用してもよい。
加熱源に要求される加熱能力は、装置全体の仕様によって左右されるが、熔融容器内のガラス原料および熔融ガラスを1250〜1480℃、好ましくは1300〜1430℃に加熱できる能力とすることが望ましい。
炉内に加熱手段を配置すると、熔融容器とその内容物ならびに炉内雰囲気を直接加熱することができるため、加熱効率を高めるためには、炉内に加熱手段を配置することが好ましい。しかし、炉内に加熱手段を配置して、ガラス原料として粉体状の原料を使用すると、炉内に浮遊したガラス原料の飛散物が加熱手段に付着する場合があり、この付着した飛散物がガラス化反応を起こすと、炉内に配置された加熱手段が侵蝕されて損傷するおそれがある。また、炉内に加熱手段を配置すると、加熱手段近傍の温度は極端に高くなり、加熱手段から離れた位置との温度差は大きく、内部の温度分布が大きくなり、炉内雰囲気に対流が激しくなり、粉体状原料の飛散がより多くなる。このように、炉内に加熱手段を有する場合には、上記のような現象が生じるおそれがあるが、炉に排気孔を設けることにより、炉内の圧力を下げる効果に加え、更に、炉内の浮遊物(原料飛散物)を速やかに炉外に排出する効果を得ることもできる。よって、製法Iは、特に、加熱効率を高めるために炉内に加熱手段を配置する場合に、安定して熔融ガラスを製造するためにきわめて有効な方法である。
粉体状ガラス原料を加熱、熔融する際、化合物同士の反応によって多量のガスが熔融容器内から発生する。炉3には、排気孔11以外にも幾つかの開口部がある。しかし、それら開口部にはパイプ6やドレインパイプ12、また、炉内に加熱源4が配置される場合には、加熱源4にエネルギーを供給する供給経路が取り付けられているので、炉内のガスを外部に排出するために使用できる開口部は、炉壁に設けられた排気孔11のみとなる。炉内で発生した多量のガス(反応生成ガスという。)は、排気孔11から炉外に排出されるため、炉内の圧力は過剰に高まることがない。その結果、原料供給口10からつながるパイプ6から、粉体状の化合物原料を炉内に配置した熔融容器1に円滑に供給することができ、ガラスを安定して熔融、製造することができるとともに、上記構造の原料供給部をガラス原料によって塞ぐことにより、炉の内外を遮断して炉の密閉性を高めることができる。
炉内で発生した反応生成ガスは、ガス管7からパイプ6を通ってガラス原料とともに炉内へ送り込まれる原料供給ガスとともに、排気孔11から炉外へ排気される。炉は炉外への排熱量が最小限になるよう、ドレインパイプおよび排気孔を除いて密閉状態になっているため、炉内は極めて高温であり、排気孔付近でもガラス原料さえ存在すればガラスの熔融反応がおきるほど高温になっている。そのため、炉内雰囲気の対流が激しく、粉体状原料の一部が炉内に飛散し、飛散した原料の大部分は、炉内の排気経路にのって排気孔11に至り、排気孔11内壁に付着してしまう。飛散した原料が排気孔11内壁に付着すると、熔融反応がおこり、侵食性の高い熔融状態のガラスによって排気孔が侵蝕されるおそれがある。このような排気孔の侵蝕を低減、防止するため、少なくとも排気孔内壁は、白金または白金合金からなることが好ましい。排気孔全体が白金または白金合金からなることが更に好ましい。白金や白金合金は、熔融容器の材料としても使用されるほど、高い耐侵食性と耐熱性を備えているので、飛散原料が付着し、熔融反応をおこしても排気孔内壁の侵蝕を大幅に低減することができる。
一方、排気孔が焼成煉瓦などによって構成されていると、熔融状態のガラスが煉瓦の微小な気孔に侵入して侵蝕されるおそれがある。このような状態でガラスの熔融を続けると、排気孔の形状、大きさが次第に変化して密閉構造を有する炉の開口面積が変化してしまう。その結果、一定の条件の下にガラスの熔融を行っていても、炉内の圧力が微妙に変化することで原料の飛散量が変化したり、炉外への排熱量が変化することにより熔融温度の変動し、ガラス原料の供給が不安定になったり、熔融条件が変化する。そして、生産するガラスの光学特性等が変動してしまうなどの問題が発生するおそれがある。さらに排気孔の侵蝕が進むと、炉体の構造に歪みが生じ、安定な状態でガラスを熔融することが困難になってしまうおそれがある。
排気孔の侵蝕が著しくなると生産を止めて炉を修理しなければならず、生産性が低下してしまうが、少なくとも排気孔内壁を白金または白金合金により構成することにより、排気孔の侵蝕を大幅に低減することができるので、より安定した操業が可能になる。
更に、少なくとも排気孔内壁を白金または白金合金により構成することにより、排気孔が侵蝕されにくくなるので、炉内の圧力をより一定に保つことができ、ガラス原料の供給条件がより安定化され、また炉内からの排熱量もより一定に保つことができるので、結果として屈折率などのガラスの光学特性をより安定化することができる。
排気孔内壁または全体を、白金または白金合金で構成する場合、炉内側開口近傍の炉内壁も白金または白金合金で構成してもよい。なお、炉体内壁をすべて白金または白金合金で構成することも考えることはできるが、極めて高価な白金や白金合金材料を多量に使わなければならず現実的ではない。
なお、炉を焼成煉瓦製とする場合は、排気孔内壁または全体を白金または白金合金で構成してもよいし、電鋳煉瓦で構成してもよい。電鋳煉瓦は焼成煉瓦よりも耐侵食性に優れているため、排気孔を電鋳煉瓦製とすることにより、排気孔を炉体同様、焼成煉瓦製とした場合よりも排気孔の侵蝕を低減することができる。電鋳煉瓦は、焼成煉瓦に比べれば高価であるが、白金系材料に比べれば安価であり、使いやすいというメリットはある。但し、熔融ガラスに対する耐侵食性の面では、白金系材料を用いることが好ましい。この点を理解した上で、排気孔を構成する材料を使い分けることが望ましい。例えば、後述するガラスA〜Eの各ガラスの熔融には、白金または白金合金製の排気孔を有する炉の使用が望ましい。
電鋳煉瓦は、ほとんど気孔が無く、緻密堅硬な煉瓦である。その好ましいものはアルミナ、ジルコニア、シリカを主成分とするものであり、市販のものを使用することができる。
ガラス化反応物に対する耐侵蝕性は、焼成煉瓦<電鋳煉瓦<白金または白金合金、の順に高くなる。そこで、最も侵蝕されやすい排気孔を、炉全体を構成する材料よりも耐侵蝕性の高い材料で作製すれば、設備全体の耐久性を高めることができる。そのため、製法Iでは、炉は耐火煉瓦製であり、かつ、排気孔は白金もしくは白金合金からなるか、または、炉は焼成煉瓦製であり、かつ、排気孔は電鋳煉瓦からなることが好ましい。
ガラス原料の飛散による腐食を低減または防止するためには、排気孔の炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられている(以下、「外傾している」ともいう)ことが好ましい。そのような排気孔を設けたガラス熔融装置の一例(垂直断面図)を、図3に示す。図3に示す装置は、排気孔以外の構成は、図1に示す装置と同様である。
前述のように、炉内で飛散した粉体状の化合物原料は排気孔内壁に付着するとガラス化反応を起こす。ここで、炉内側開口が炉外側開口と同程度の高さ、または炉内側開口が炉外側開口よりも低位置に設けられている(「内斜している」ともいう)と、ガラス化反応した物質は炉の側壁から炉床へと流れ、炉の側壁や炉床を侵蝕してしまうおそれがある。それに対し、図3に示すように、排気孔が外傾していれば、ガラス化反応した物質は炉外に流れるため、上記物質による炉の侵蝕を低減または防止することができる。
なお、炉に設けられる排気孔は、図1および図3(a)に示すように、炉内壁および炉外壁から突出した構造でもよく、図3(b)に示すように、炉壁から突出しない構造でもよい。但し、後述するように排気孔内壁の付着物を除去するためには、炉側壁から突出した構造の排気孔が好ましい。
外傾角度は、特に限定されないが、水平面に対して1〜45°とすることが好ましい。上記角度で外傾させることで、ガラス化反応した物質を外部へ円滑に排出することができる。
また、排気孔の長さは、炉壁の厚さ以上であれば特に限定されない。但し、長すぎると、排気の際の抵抗が増し、排気効率が低下するおそれがある。他方、短すぎると、ガラス化反応した物質が、炉壁外面に流れて炉外壁を侵蝕するおそれがある。よって、製法Iでは、上記の点を勘案して、排気孔の長さを決定することが好ましい。
炉に設ける排気孔の形状は、特に限定されないが、底部が樋状のものが、ガラス化反応した物質を炉外へ排出する上で好ましく、底部が丸みを帯びたものがより好ましく、更に、強度の面からは、円筒形状のものが一層好ましい。
図1および図2に示す装置例では、排気孔は炉内側壁の上部四方に4ヶ所設けられている。但し、本発明において、排気孔の数は特に限定されず、1ヶ所に設けてもよいし、複数箇所に設けてもよい。排気孔の位置は、図1に示すように炉内側壁の高い位置とすることが好ましい。
排気孔の数、排気孔の開口面積、炉内と炉外との差圧の調整により、排気能力を変化させることができる。炉内の圧力は単位時間あたりの反応生成ガスの発生量と排気能力により変化する。前記反応生成ガスの発生量が増加し、炉内圧力が上昇すると、ガラス原料の供給が困難になる場合がある。この際、原料供給ガスの圧力を高め、原料を強制的に炉内の熔融容器に押し込むと、炉内の圧力がさらに上昇するという悪循環に陥る。このような事態を回避するため、前記反応生成ガスの発生量の増減に応じて、排気孔の開口面積を増減したり、開口する排気孔の数を増減したり、排気孔の開口面積の増減と開口する排気孔の数の増減を組み合わせ、炉内圧力を調整することが望ましい。
また、排気孔内壁への飛散原料の付着が著しい場合には、排気孔を加熱して付着物を除去することが好ましい。前記加熱には、酸水素バーナによる加熱などの手段を用いることができる。また、排気孔全体が白金または白金合金によって構成されている場合は、電流を流すことにより排気孔を通電加熱することもできる。
なお、排気孔の開口面積を過度に大きくしたり過度に数を増やすと、炉外への排熱量が増加し効率的な加熱ができなくなったり、炉内雰囲気温度を熔融温度にまで上昇できなくなるおそれがあるため、炉内圧力を上記適正状態に維持可能な範囲で排気孔の開口面積や数を最小にすることが望ましい。
反応生成ガスの発生量は熔融するガラスの組成によって変わる。
以下に、B23を含有するガラスを例に反応生成ガスについて説明する。
ガラス成分としてB23を導入するには、通常H3BO3原料を使用する。H3BO3原料を加熱、分解してB23とH2Oが生成すると考えると、2モルのH3BO3原料に対し、1モルのB23がガラス成分として導入され、3モルの水蒸気が生成する。つまり、B23の導入量が増えると水蒸気の発生量が増えることになる。他の成分にもよるが、B23含有ガラスの熔融では、反応生成ガスの大部分は水蒸気である。したがって、ガラス組成を変えるためにB23の導入量を変えると、反応生成ガスの量も変化する。B23含有ガラスは光学ガラス用途を初めとして様々な用途において重要な役割を果たし、通常のB23含有ガラスでは、B23の含有量は概ね10〜45質量%の範囲となる。B23の含有量が10質量%のガラスの製造と、45質量%のガラスの製造を比較すると、B23の含有量に4.5倍の開きがあるので、原料分解のスピードが一定であれば、単位時間あたりの水蒸気発生量、さらには単位時間あたりの反応生成ガスの発生量にも約4.5倍の差が生じる。使用するガラス熔融装置の排気能力が一定で、その排気能力がB23を10質量%含むガラスの熔融に適したものとして設定されている場合、B23を45質量%含むガラスの熔融では、炉内の圧力が過剰に高くなり、先に説明した悪循環に陥るおそれが生じる。そこで、ガラス熔融装置に、排気孔の実効的な開口面積を変える機能を持たせ、B23を10質量%含むガラスの熔融に適した排気孔の実効的開口面積を4倍から5倍にして、B23を45質量%含むガラスの熔融を行えばよい。ここで排気孔の実効的開口面積とは、排気孔が1つの場合には排気孔の開口面積を意味し、排気孔が複数ある場合は各排気孔の開口面積の合計を意味する。排気孔の開口面積を変えるには、排気孔に絞り機能を設けたり、排気孔の一部を閉ざす機能を設けるなどすればよい。複数の排気孔を持つ装置の場合、実効的な開口面積を変える手段としては、排気孔にシャッターを設けてシャッターを閉ざす排気孔の数を設定できるようにすればよい。例えば、開口面積が等しい4つの排気孔を炉内側壁上部の四方に設け、そのうちの3つにシャッターを設ける。B23を10質量%含むガラスの熔融では、シャッターを備えた3つの排気孔を閉ざし、B23を45質量%含むガラスの熔融では、すべてのシャッターを開いて、4つの排気孔をすべて開口する。このような機能を設けることにより、ガラス組成が変化しても炉内圧力を一定またはほぼ一定に保つことができ、安定したガラス原料の供給が可能になる。このように、ガラス熔融装置において、排気孔の実効的な開口面積の可変手段を設け、前記可変手段において、実効的開口面積の可変範囲をガスの種類、ガラス生産量などをもとに設定することが好ましい。
以上、B23含有ガラスの熔融を例に説明したが、その他の組成のガラスについても発生するガスの種類、ガラス生産量などをもとに、同様に考えに基づいて炉の排気能力、排気孔の数を設定すればよい。
製法Iは、耐火煉瓦、特に焼成煉瓦を侵蝕しやすいガラス原料からのガラスの製造に適している。このようなガラスは、高温状態で比較的低い粘度を示すガラスである。例えば、焼成煉瓦よりなる排気孔に飛散したガラス原料が付着して熔融反応をおこすと、熔融状態のガラスは煉瓦の気孔に侵入する。この気孔への侵入はガラスの粘度が低いほど進みやすく、その結果、煉瓦の侵蝕スピードも速くなる。特に、1400℃において3dPa・s未満の低粘度を示すガラスや、液相温度が存在し、その液相温度において35dPa・s以下の低粘度を示すガラスの場合、煉瓦の侵蝕は著しい。またB23含有ガラスでも、SiO2の含有量が0〜10質量%のガラスも同様に熔融状態で低粘度を有するため煉瓦を著しく侵蝕する。さらに、アルカリ金属酸化物を含むガラスは、煉瓦の気孔に侵入して煉瓦の組織自体を侵蝕するため、上記低粘度のガラスに次いで煉瓦の侵蝕作用が強く、低粘度でアルカリ金属酸化物を含むガラスはより一層煉瓦の侵蝕作用が強い。よって、製法Iは、以下のガラスの製法として好適である:
(1)1400℃において3dPa・s未満の粘度を示すガラス(ガラスAという)、
(2)液相温度が存在し、前記液相温度において35dPa・s以下の粘度を示すガラス(ガラスBという)、
(3)必須成分としてB23を含み、任意成分として0〜10質量%のSiO2を含むガラス(ガラスCという)、中でも0〜7質量%のSiO2を含むガラス、特に0〜5質量%のSiO2を含むガラス、
(4)ガラスAでありかつガラスCであるガラス(ガラスDという)、
(5)ガラスBでありかつガラスCであるガラス(ガラスEという)、
(6)アルカリ金属酸化物を含むガラスA、
(7)アルカリ金属酸化物を含むガラスB、
(8)アルカリ金属酸化物を含むガラスC、
(9)アルカリ金属酸化物を含むガラスD、
(10)アルカリ金属酸化物を含むガラスE。
なおガラスAの1400℃における粘度の下限は10-2dPa・s、ガラスBの液相温度における粘度の下限は10-1dPa・sを目安に考えればよい。
製法Iは、ホウ酸と希土類酸化物を含むガラス原料を使用する場合にも好適である。粉体状の原料が飛散すると、熔融容器に供給される原料がその分少なくなる。ホウ酸と希土類酸化物を含むガラス原料を使用する場合、ホウ酸と希土類酸化物は比重の差が大きいため、ホウ酸の飛散量と希土類酸化物の飛散量は異なる。この飛散量の違いを見込んで原料の調合を行えばよいが、排気孔の侵蝕が進み原料の供給条件が変化すると、上記ホウ酸原料と希土類酸化物原料の飛散量が変化し、上記調合による調整によっても目的とするガラスの組成を得られなくなってしまう。製法Iによれば、排気孔の侵蝕を防止することができ、原料の供給条件を一定にすることができるので、比重の差が大きいホウ酸と希土類酸化物を含むガラス原料を使用する場合においても、目的の組成、特性を有するガラスを安定して製造することができる。ホウ酸と希土類酸化物を含むガラス原料を使用して得られるガラスをガラスFとすると、製法Iは上記ガラスA〜Eのいずれかのガラスであって、かつガラスFであるガラスの製法としても好適である。
なお、上記ガラスA〜Fの熔融には、排気孔を電鋳煉瓦で構成した装置よりも白金または白金合金製の排気孔を備えた装置のほうが適している。
本発明の第二の態様のガラスの製造方法(以下、「製法II」ともいう)は、
閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
前記熔融容器は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法
である。
図4に、製法IIに使用し得るガラス熔融装置の一例(垂直断面図)を示す。以下、図面を参照しながら製法IIについて説明する。但し、製法IIは図面に示す態様に限定されるものではない。
図4において、熔融容器1’は、原料供給口10からつながるパイプ6、排気孔11、熔融容器から熔融ガラスを排出する排出口であるドレインパイプ12が直接接続する構造になっている。そして、原料供給口10からパイプ6までが、原料供給部を構成している。ここで熔融容器1’、すなわち熔融タンク1’、排気孔11、ドレインパイプ12は、白金または白金合金製とすることが好ましい。
内側パイプ5、パイプ6、ガス管7、モータ8、スクリュー9、原料供給口10の詳細および機能については、製法Iの説明で述べたとおりである。またガス管7より供給される原料供給ガスについても、製法Iの説明で述べたとおりである。
製法IIにおいて使用される熔融容器には、容器内側開口と容器外側開口とを有し、容器内のガスを容器外に排気するための排気孔が設けられている。これにより、熔融容器内で発生する反応生成ガスを容器外に排出することができるので、容器内部の圧力が過剰に高まることを防止することができる。その結果、粉体状のガラス原料を熔融容器内に安定して供給することができる。なお、本発明において、「閉鎖された熔融容器」とは、先に製法Iにおける炉についての説明と同様に、原料ガラスの供給、加熱、熔融を行う際に開口している部分が事実上排気孔のみであることをいう。図4に示すように、熔融容器には上記以外にも開口部があるが、それら開口部にはドレインパイプ等が取り付けられるため、原料ガラスの供給、加熱、熔融を行う際には、それら開口部からのガスの流出は実質的にないとみなすことができるので、このような態様の熔融容器も、本発明における閉鎖された熔融容器に含まれる。
排気孔の容器内側開口は、図4に示すように、容器外側開口よりも高位置に設けられている(以下、「外傾している」ともいう)。このように排気孔の排気ガス入り口が出口よりも高い位置になるようにすることで、排気孔内壁に付着した熔融ガラスからの揮発物や、排気孔内壁に付着した飛散原料が加熱、熔融されてできたガラスが排気孔内を下降して容器の外に排出され、熔融容器内に蓄積されている熔融ガラスに混入することを防ぐことができる。
排気孔内壁に付着したガラスの組成は容器内に蓄積されている熔融ガラスの組成とは異なるため、排気孔内壁に付着したガラスや揮発物は熔融ガラスにとって異物である。このような異物が混入することにより、製造するガラスの屈折率や分散などの光学特性が目標値からずれてしまい、ガラスの品質が低下してしまう。それに対して、製法IIによれば、このような品質低下を防止することができる。排気孔の形状は、排気孔内壁の付着物が熔融容器外に確実に排出されるとともに、排気孔が塞がらない形状にすればよい。
外傾角度は、特に限定されないが、水平面に対して1〜45°とすることが好ましい。上記角度で外傾させることで、ガラス化反応した物質を外部へ円滑に排出することができる。
また、排気孔の長さは、炉壁(図4では図示せず)の厚さ以上であれば特に限定されない。但し、長すぎると、排気の際の抵抗が増し、排気効率が低下するおそれがある。他方、短すぎると、ガラス化反応した物質が、容器壁外面に流れて容器外壁を侵蝕するおそれがある。よって、製法IIでは、上記の点を勘案して、排気孔の長さを決定することが好ましい。
熔融容器に設ける排気孔の形状は、特に限定されないが、底部が樋状のものが、ガラス化反応した物質を容器外へ排出する上で好ましく、底部が丸みを帯びたものがより好ましく、更に、強度の面からは、円筒形状のものが一層好ましい。
熔融容器1’の加熱は、容器を例えば白金または白金合金製とし、通電加熱をすることによって、または、容器の外部にヒータを配置して加熱することにより行うことができる。または、容器外部に高周波発生コイルを配置し、前記コイルに電源を接続して電力を供給し高周波誘導加熱をすることによっても行うことができる。さらには前記各加熱法を併用することによって行うこともできる。
製法IIは、製法Iにおいて説明した各ガラスに加え、フツリン酸ガラスを熔融、製造するために好適である。フツリン酸ガラスを熔融する場合、粉体状化合物原料として、フッ素化合物とメタリン酸化合物等を使用することができる。例えば、フッ素化合物としてAlF3、MgF2、CaF2、SrF2、YF3など、メタリン酸化合物としてAl(PO33、Ba(PO32などを使用することができる。これらの化合物を秤量、調合したものを、例えば800〜1000℃程度に加熱した熔融容器1’に投入して熔融することができる。但し、メタリン酸化合物は熔融時に分解して強い還元作用を示す遊離リンを発生し、白金または白金合金製の熔融容器1’を侵蝕するおそれがある。このような侵蝕を防止するため、熔融容器1’の底部であって、ガラス原料を熔融ガラスに投入する位置に真下から酸素ガスのような酸化性ガスを熔融ガラス中に供給し(図示せず)、バブリングによって遊離リンを速やかに酸化することが望ましい。このようにして高品質なフツリン酸ガラスを高い生産性のもとに粉体状原料から製造することができる。
なお、その他の事項や、好ましい形態などについては製法Iと同様である。
また、製法I、IIのいずれにおいても、ガラス原料を連続して熔融容器内に供給することが好ましい。ガラス原料を連続して熔融容器内に供給して加熱、熔融して熔融ガラスを作製するとともに、得られた熔融ガラスを連続して排出口(ドレインパイプ)から排出することが更に好ましい。その理由は、ガラスの連続生産が可能になるとともに、稼動中に常時、反応生成ガスが発生するケースにおいて上記効果が一段と大きくなるからである。
製法I、製法IIにおいて、熔融容器内で熔融した熔融ガラスを、清澄槽に送って清澄した後、攪拌槽に送って均質化して流出パイプから流出し、鋳型に鋳込んだり、所定の分量のガラスを分離して金型に供給し、プレス成形することにより、所望の形状および特性を有するガラスからなるガラス成形体を得ることができる。
製法Iおよび製法IIは、光学ガラスの製造に好適である。特に、屈折率(nd)の変動幅が±0.00050のガラスを連続して製造するための方法として好ましい。
光学ガラスを熔融する場合は、上記成形体を加工して、または再度、加熱してプレス成形することにより、または、再度、加熱してプレス成形した成形品を加工してレンズやプリズムなどの光学素子を作ることができる。
このようにして得られる光学ガラスの屈折率(nd)の変動量を±0.00050以内に収めることができる。
[ガラス熔融装置]
製法Iにおいて使用され得る本発明のガラス熔融装置(以下、「装置I」ともいう)は、
閉鎖された炉内に配置した熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
前記炉は、
ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置、
である。
製法IIにおいて使用され得る本発明のガラス熔融装置(以下、「装置II」ともいう)は、
閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
前記熔融容器は、
前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
を有し、
前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置、
ある。
上記装置Iの詳細は、先に製法Iについて述べた通りであり、装置IIの詳細は、先に製法IIについて述べた通りである。前述のように、装置Iまたは装置IIを用いて原料ガラスを加熱、熔融してガラスを製造することにより、高品質なガラスを安定して連続製造することができる。
次に実施例により、本発明をより詳細に説明する。
排気孔全体を白金合金で構成した、図1に示す構造を備えるガラス熔融装置を用いて、以下に示す光学ガラス1〜5の5種類のガラスを製造した。
熔融容器1およびドレインパイプ12は白金合金製であり、内側パイプ5およびパイプ6は耐熱性の合金製である。高温度焼成高アルミナ質煉瓦よりなる炉3の内部側壁上部には、白金合金製の排気孔が4箇所設けられている。排気孔の内径はいずれも100mmであり、図示しないシャッターを備えており、シャッターの開閉により排気孔の実効的な開口面積を変更できる構成になっている。
光学ガラス1は、屈折率(nd)が1.71300、アッベ数(νd)が53.9、液相温度が1040℃、液相温度における粘度が6dPa・s、1400℃における粘度が1dPa・sであり、B23を37質量%、SiO2を5質量%、La23を41質量%、その他成分としてCaOなどを含むガラスである。
光学ガラス2は、屈折率(nd)が1.77250、アッベ数(νd)が49.6、液相温度が1040℃、液相温度における粘度が10dPa・s、1400℃における粘度が0.3dPa・sであり、B23を31質量%、SiO2を2質量%、La23を42質量%、Y23を11質量%、その他成分としてZrO2などを含むガラスである
光学ガラス3は、屈折率(nd)が1.80610、アッベ数(νd)が40.7、液相温度が950℃、液相温度における粘度が27dPa・s、1400℃における粘度が0.4dPa・sであり、B23を26質量%、SiO2を3質量%、La23を40質量%、その他成分としてNb25などを含むガラスである。
光学ガラス4は、屈折率(nd)が1.83400、アッベ数(νd)が37.3、液相温度が970℃、液相温度における粘度が9dPa・s、1400℃における粘度が0.7dPa・sであり、B23を19質量%、SiO2を5質量%、La23を35質量%、その他成分としてZnOなどを含むガラスである。
光学ガラス5は、屈折率(nd)が1.88300、アッベ数(νd)が40.8、液相温度が1200℃、液相温度における粘度が5dPa・s、1400℃における粘度が0.9dPa・sであり、B23を11質量%、SiO2を7質量%、La23を42質量%、その他成分としてGd23などを含むガラスである。
上記ガラスの組成に応じて調合した粉体状のガラス原料を原料供給口10に満たした。原料供給口10に供給されたガラス原料は、スクリュー9の回転により内側パイプ5内に送られ、パイプ6内を通って原料供給ガスとともに熔融容器内に連続的に供給された。なお、スクリュー9によって押し出される原料は炉内の高温ガスが原料供給口10側に流れ込むことを防止する働きをする。
原料供給ガスには、高純度の乾燥窒素ガスを用いたが、空気をフィルターなどにより清浄化するとともに、乾燥剤中を通すことにより乾燥して使用してもよい。
加熱源4はSiC製発熱体であり、これら発熱体に電流を流すことにより、炉内の熔融容器近傍の温度が1300〜1430℃になるように加熱した。
単位時間あたりのガラス原料の供給量、原料供給ガスの供給量は、1日あたりの熔融ガラスの生産量が1トンになるように設定した。
光学ガラス1の製造時には、4つの排気孔のシャッターをすべて開放し、全排気孔から炉内のガスを排気しつつ、熔融を行った。
光学ガラス2の製造時には、1つの排気孔のシャッターを閉じ、3つの排気孔から炉内のガスを排気しつつ、熔融を行った。
光学ガラス3および4の製造時には、2つの排気孔のシャッターを閉じ、2つの排気孔から炉内のガスを排気しつつ、熔融を行った。
光学ガラス5の製造時には、3つの排気孔のシャッターを閉じ、1つの排気孔から炉内のガスを排気しつつ、熔融を行った。
熔融容器内のガラスを、図示しない清澄槽に送り清澄し、次いで図示しない攪拌槽に送り均質化した後、流出パイプから一定のスピードで流出させた。
このように定常状態と見なせる状態で光学ガラス1〜5の熔融状態の各ガラスを鋳型に鋳込み、平板状に成形し、アニールしてから縦横に切断し、カットピースと呼ばれる所定寸法の直方体上のガラス片を複数個作製した。
これらカットピースの屈折率(nd)を測定したところ、各光学ガラスともに屈折率(nd)の変動幅は±0.00050以内に収まっており、アッベ数(νd)の値も上記の値と一致するものであった。
これらカットピースを使用してレンズ、プリズムなどの光学素子を作るには、カットピースに研削、研磨加工を施してもよいし、カットピースに必要の応じてバレル研磨や表面を平滑化するための研磨を施し、再度、加熱、軟化してプレス成形してもよい。プレス成形品には必要に応じて研削、研磨加工を施してもよい。
このようにして屈折率などの光学特性が一定かつ高品質の光学素子を多数、作製した。
次に、図3に示すように焼成煉瓦製炉体の側壁に、白金合金製の排気孔が外傾して取り付けられたガラス熔融装置を用いて、上記各光学ガラスを熔融、製造した。各光学ガラスともに屈折率(nd)の変動幅は±0.00050以内に収まっており、アッベ数(νd)の値も上記の値と一致するものであった。排気孔が上記状態で取り付けられているので、排気孔内で熔融状態になったガラスは炉外の流れ出し、炉床をはじめ炉体を侵蝕することなく長期にわたり上記ガラスの熔融、製造を行うことができた。
なお、本実施例では、排気孔を白金合金で構成した装置を使用してガラスの製造を行ったが、白金合金の代わりに白金を使用してもよい。
また白金や白金合金製の排気孔に比べて装置としての寿命は短くなるが、電鋳煉瓦製の排気孔を供えた装置でも上記光学ガラスの製造を行うことはできる。
なお、上記実施例において炉外を囲むように高周波発生コイルを配置し、このコイルを電源に接続して高周波を発生させ、白金合金製の熔融容器を高周波誘導加熱するようにしてもよい。
次に図4に示すガラス熔融装置を用いて、フツリン酸ガラスを熔融、製造した。熔融容器、排気管、ドレインパイプは白金合金製であり、排気孔は外斜した状態になるように取り付けられている。またパイプ6からメタリン酸塩原料を含む粉体状の化合物原料を連続して熔融容器内に投入した。熔融容器を外部に配置したヒータにより加熱し、ガラス原料を加熱、熔融した。熔融容器底部のパイプ6の真下には、図4に図示しない酸素ガスの吐出口があり、そこから熔融容器内に蓄積されている熔融ガラスに酸素ガスをバブリングさせた。メタリン酸塩原料を含む粉体状原料を原料供給ガスとともに熔融容器内に供給し、バブリング位置に投入した。バブリングによってメタリン酸塩原料の分解生成物である遊離リンが速やかに酸化されたため、遊離リンによる容器の侵蝕を防止することができた。熔融反応によって生成するガスは原料供給ガスとともに排気孔を通って容器外に排気されたため、容器内の圧力が過剰に高くなることはなかった。
このようにして屈折率やアッベ数の変動幅を小さくなるように、フツリン酸ガラスを安定的に製造することができた。
本発明によれば、粉体状ガラス原料から、高品質なガラスを安定して製造することができる。
本発明の第一の態様のガラスの製造方法において使用され得るガラス熔融装置の一例(垂直断面図)を示す。 図1のA−A’における水平断面の概略図である。 本発明の第一の態様のガラスの製造方法において使用され得るガラス熔融装置の一例(垂直断面図)を示す。 本発明の第二の態様のガラスの製造方法において使用され得るガラス熔融装置の一例(垂直断面図)を示す。

Claims (17)

  1. 閉鎖された炉内に配置された熔融容器内に粉体状の光学ガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含む光学ガラスの製造方法において、
    前記炉は、
    前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
    を有し、
    前記熔融容器は白金合金製であり、
    前記炉内かつ前記熔融容器外に加熱源が配置されており、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とする光学ガラスの製造方法。
  2. 前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
  3. 閉鎖された炉内に配置された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
    前記炉は、
    前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
    を有し、
    前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられ、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法。
  4. 前記炉の内部に加熱手段が配置されていることを特徴とする請求項に記載の製造方法
  5. 前記炉内にガスを導入しながら前記粉体状のガラス原料の供給を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
  6. 前記ガラス原料の熔融によって生成するガスの発生量に応じて、前記排気孔の開口面積および/または開口する排気孔の数を増減させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
  7. 前記炉は、耐火煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は白金もしくは白金合金からなるか、または、
    前記炉は、焼成煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は電鋳煉瓦からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
  8. 閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製することを含むガラスの製造方法において、
    前記熔融容器は、
    前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
    を有し、
    前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うことを特徴とするガラスの製造方法。
  9. 前記容器内にガスを導入しながら前記粉体状のガラス原料の供給を行うことを特徴とする請求項に記載の製造方法
  10. 前記ガラスが、1400℃にて3dPa・s未満の粘度を示すか、または液相温度を有するとともに液相温度において35dPa・s以下の粘度を示すものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法
  11. 前記ガラスが、必須成分としてB23を、任意成分としてSiO2を含み、かつSiO2の含有量が0〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法
  12. 閉鎖された炉内に配置した熔融容器内に粉体状の光学ガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製する光学ガラス熔融装置において、
    前記炉は、
    光学ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
    を有し、
    前記熔融容器は白金合金製であり、
    前記炉内かつ前記熔融容器外に加熱源が配置されており、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とする光学ガラス熔融装置。
  13. 前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられることを特徴とする請求項12に記載の熔融装置
  14. 閉鎖された炉内に配置した熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
    前記炉は、
    ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    炉内側開口と炉外側開口と有し、炉内のガスを炉外に排気するための1つまたは2つ以上の排気孔
    を有し、
    前記炉内側開口は、炉外側開口よりも高位置に設けられ、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置。
  15. 前記炉の内部に加熱手段が配置されていることを特徴とする請求項14に記載の熔融装置
  16. 前記炉は、耐火煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は白金もしくは白金合金からなるか、または、
    前記炉は、焼成煉瓦製であり、かつ、前記排気孔は電鋳煉瓦からなることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の熔融装置
  17. 閉鎖された熔融容器内に粉体状のガラス原料を供給し、前記ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製するガラス熔融装置において、
    前記熔融容器は、
    前記ガラス原料を供給するための原料供給部、および、
    容器内側開口と容器外側開口と有し、前記容器内のガスを容器外に排気するための排気孔
    を有し、
    前記容器内側開口は、容器外側開口よりも高位置に位置し、
    前記ガラス原料の加熱、熔融によって発生するガスを前記排気孔から排気しながら前記熔融を行うために用いられることを特徴とするガラス熔融装置。
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