JP4477424B2 - 難燃性樹脂組成物並びに成形体及びoa機器 - Google Patents
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Description
したがって、環境への負荷の小さく難燃性に優れ、広い用途に適用可能な難燃性樹脂組成物は未だ提供されていないのが現状である。
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリ乳酸と、リン系難燃剤と、脂肪酸マグネシウムと、ポリフェノールとを含有することを特徴とする。該難燃性樹脂組成物は、前記ポリ乳酸と、前記リン系難燃剤と、前記脂肪酸マグネシウムと、前記ポリフェノールとを含有するため、十分な難燃性を有し、燃焼時の断熱炭化層の生成量が著しく増し、着火時に速やかに消火される。また、これらの成分は毒性が小さく、かつ添加量が従来よりも少量で済むため、環境負荷が小さい。このため、各種分野に好適に使用することができ、電気・電子・OA分野等の分野にも好適に使用することができ、例えば、パーソナルコンピュータ部品(例えば外装部品)等にも好適に使用することができる。また、上述のように、該難燃性樹脂組成物においては、難燃剤等の添加量が多過ぎなくとも十分な難燃効果が得られるため、該難燃性樹脂組成物の比重が大きくなり過ぎず、広範な用途に適用が可能である。また、生分解性樹脂であるポリ乳酸を主成分としているため、生分解性に優れ、環境への負荷が小さい。
本発明の成形体は、本発明の前記難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。該成形体は、本発明の前記難燃性樹脂組成物により形成されているので、難燃性、生分解性等に優れ、環境への負荷が小さく、広範な用途に適用可能であり、電気・電子・OA分野等の分野においても好適に使用することができ、例えば、パーソナルコンピュータ部品(例えば外装部品)等にも好適に使用することができる。
本発明のOA機器は、本発明の前記成形体を有してなることを特徴とする。該成形体は、本発明の前記成形体により形成されているので、難燃性、生分解性等に優れ、環境への負荷が小さい。
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリ乳酸と、リン系難燃剤と、脂肪酸マグネシウムと、ポリフェノールとを含有して成り、更に適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記市販品としては、例えば、三井化学のレイシアH−100Jなどが好適に挙げられる。
前記合成品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その合成の方法としては、例えば、ポリ乳酸前駆体を重合等する方法、などが挙げられる。前記ポリ乳酸前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、L−ラクタイド、D−ラクタイド、などが挙げられる。
これらのポリ乳酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ乳酸の分子量としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記リン系難燃剤の具体例としては、例えば、(ポリ)リン酸アンモニウム、(ポリ)リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素、などが挙げられる。
これらのリン系難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該リン系難燃剤としては、市販品であってもよいし、適宜合成した合成品であってもよい。前記市販品としては、例えば、クラリアントジャパンのポリリン酸アンモニウム(AP422)などが好適に挙げられる。また、前記合成品の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
これらの中でも、難燃性向上に効果的であり、火災等の条件下において断熱性炭化層(char)を生成が著しい点で、ポリリン酸アンモニウムが特に好ましい。
前記リン系難燃剤の含有量が、5質量部未満であると、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分でないことがあり、20質量部を超えると、前記難燃性樹脂組成物において相分離を生じ、該難燃性樹脂組成物を用いて形成した成形体の耐熱性や強度等が十分でないことがあり、外観も劣化することがある。
一方、5〜20質量部であると、そのようなことはなく、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分である点で有利である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、市販品であってもよいし、適宜合成した合成品であってもよい。これらの中でも、難燃性向上に効果的であり、火災等の条件下において断熱性炭化層(char)を生成が著しい点で、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
前記脂肪酸マグネシウムの含有量が、0.2質量部未満であると、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分でないことがあり、10質量部を超えると、前記難燃性樹脂組成物において相分離を生じ、該難燃性樹脂組成物を用いて形成した成形体の耐熱性や強度等が十分でないことがあり、外観も劣化することがある。一方、0.2〜10質量部であると、そのようなことはなく、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分である点で有利である。
前記フラボノイド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タンニン(タンニン酸)、カテキン、ナリンゲニン、モリン、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低コストである上、難燃性向上に効果的であり、火災等の条件下において断熱性炭化層(char)を生成可能である点で、タンニン(タンニン酸)が好ましい。
なお、前記タンニンとは、植物などから抽出されるポリフェノール化合物であり、化学構造の違いから、縮合型タンニンと、加水分解型タンニンとに分類される。本発明においては、前記縮合型タンニン、前記加水分解型タンニンのいずれであってもよく、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリフェノールの含有量が、0.2質量部未満であると、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分でないことがあり、5質量部を超えると、変色が生じ易く、外観が劣化することがある。一方、0.2〜5質量部であると、そのようなことはなく、前記難燃性樹脂組成物における難燃性向上効果が十分である点で有利である。
なお、前記ポリフェノールの前記成形体中での存在は、例えば、前記成形体を溶剤に溶解させて、クロマトグラフィー等で分取して、構造解析等を行うことにより、確認することができる。
これらは、本発明の効果を害しない範囲内で適宜選択した量を使用することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然物由来生分解性樹脂としては、例えば、キチン・キトサン、アルギン酸、グルテン、コラーゲン、ポリアミノ酸、バクテリアセルロース、プルラン、カードラン、多糖類系副産物、デンプン、変性デンプン、微生物産生ポリエステル(バイオポリエステル)、などが挙げられる。
前記化学合成生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン(PU)、などが挙げられる。
また、前記脂肪族ポリエステルとしては、例えば、特開2001-335623号公報、特開2002-167497号公報等において開示されているような、乳酸とジカルボン酸とジオールとを共重合したものなども挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1、3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、燃焼時において断熱炭化層が生成され、難燃化効果を向上させることができる点で、タルクが特に好ましい。
前記充填材の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、繊維状物質、微粒状物質などが好ましい。
前記充填材の前記難燃性樹脂組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリ乳酸100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部が好ましい。
前記微生物のタンパク質の生合成を阻害するものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ピューロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、ストレプトマイシンなどが挙げられる。
前記核酸の生合成を阻害するものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アゼセリン、アクリジン、アクチノマイシンD、バドマイシン、リファマイシンなどが挙げられる。
前記細胞膜のイオン透過性を変化させるものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、パリノマイシン、グラミシジンA、ノナクチン、モネンシン等のイオノフォアなどが挙げられる。
前記細胞膜を破壊するものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クロロクレゾール、キシロール等のフェノール類、塩化ベンザルコニウム等の4級アンモニウム塩、クロロヘキシジン等のビグアニド類、チロシジン、グラミシジンS、ポリミキシン等の環状ペプチド、などが挙げられる。
前記金属イオン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、鉄イオン及びその錯体化合物などが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリエーテルなどが挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、公知の成形方法に従って成形することにより、本発明の成型体を製造することができる。
前記成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダ成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。
本発明の成形体は、本発明の前記難燃性樹脂組成物を成形してなる。
前記成形体は、前記ポリ乳酸と、前記リン系難燃剤と、前記脂肪酸マグネシウムと、前記ポリフェノールとを少なくとも含有してなり、更に適宜その他の成分を含有してなる。
なお、前記ポリフェノールの前記成形体中での存在は、例えば、前記成形体を溶剤に溶解させて、クロマトグラフィー等により分取し、構造解析等を行うことにより、確認することができる。
前記成形体の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の成形方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダ成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。これらの中でも、成形体をパソコンの筐体等の電子部品などととして使用する場合には、フィルム成形、押出成形及び射出成形から選択されるいずれかであるのが好ましい。
本発明のOA機器は、本発明の前記成形体を有してなること以外は、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については適宜選択することができる。
前記OA機器の具体例としては、例えば、パソコンの外装部品、筐体等、配線基板、などが好適に挙げられる。
前記OA機器としては、樹脂で形成されている部分における前記成形体の占める割合が大きい程、廃棄等の面で好ましい。
前記UL94V試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)は、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、評価結果は以下の表2に示すクラスに分けられる。なお、「NOT 94V」は、難燃性が低く、UL94Vの規格に適合しないことを意味する。
ポリ乳酸100質量部と、難燃剤10質量部と、ステアリン酸マグネシウム1質量部と、タンニン1質量部とを含む難燃性樹脂組成物のペレット状の試料を調製し、これをコンポスト中に埋設し、58℃、好気的条件下に保持しながら、前記試料の質量変化及び分子量変化を観察した。その結果、質量変化は、前記コンポスト中に埋設する前の質量から、10週間で71質量%まで減量した。また、分子量変化は、前記コンポスト中に埋設する前の分子量から、68%まで低分子化した。これらの結果から、前記難燃性樹脂組成物が生分解性であることを確認した。
(付記1) ポリ乳酸と、リン系難燃剤と、脂肪酸マグネシウムと、ポリフェノールとを含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(付記2) ポリフェノールがフラボノイド化合物である付記1に記載の難燃性樹脂組成物。
(付記3) フラボノイド化合物がタンニンである付記2に記載の難燃性樹脂組成物。
(付記4) ポリフェノールの含有量が、ポリ乳酸100質量部に対し、0.2〜5質量部である付記1から3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記5) リン系難燃剤がリン酸アンモニウムである付記1から3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記6) リン系難燃剤の含有量が、ポリ乳酸100質量部に対し、5〜20質量部である付記1から5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記7) 脂肪酸マグネシウムがステアリン酸マグネシウムである付記1から6のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記8) 脂肪酸マグネシウムの含有量が、ポリ乳酸100質量部に対し、0.2〜5質量部である付記1から7のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記9) タルクを含有する付記1から8のいずれに記載の難燃性樹脂組成物。
(付記10) 付記1から9のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる付記7に記載の成形体。
(付記11) フィルム成形、押出成形及び射出成形のいずれかにより成形された付記10に記載の成形体。
(付記12) 表面に配線が設けられ、電気回路基板として用いられる付記10から11のいずれかに記載の成形体。
(付記13) 筐体として用いられる付記10から12のいずれかに記載の成形体。
(付記14) 付記10から13のいずれかに記載の成形体を有してなることを特徴とするOA機器。
本発明の成形体は、各種分野に好適に使用することができ、電気・電子・OA分野等の分野にも好適に使用することができ、例えば、パーソナルコンピュータ部品(例えば外装部品)等にも好適に使用することができる。
本発明のOA機器は、パーソナルコンピュータ部品、例えば、外装部品、筐体、などとして好適に使用することができる。
Claims (5)
- ポリ乳酸100質量部に対し、リン系難燃剤5〜20質量部と、脂肪酸マグネシウム0.2〜5質量部と、ポリフェノール0.2〜5質量部とを配合してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- ポリフェノールがフラボノイド化合物である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- リン系難燃剤がリン酸アンモニウムである請求項1から2のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1から3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
- 請求項4に記載の成形体を有してなることを特徴とするOA機器。
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