JP4477198B2 - 擁壁や法面の吸音構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車等の走行に伴う騒音を大幅に低減できるようにした擁壁や法面の吸音構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般道や高速道路等においては、路面の外部に騒音が漏れないように、所定の厚みで重い金属製の遮蔽材を遮音のために使用している。しかしながら、騒音を外部に出さないだけであって、騒音を吸収したり拡散して低減しようとするものではなかった。
【0003】
そのため近年、発泡コンクリートや軽量コンクリート等からなるスポンジ状、あるいはおこし状構造物を用い、その多孔質の特性に基く吸音作用で騒音の低減を図ろうとする試みがなされている。
【0004】
例えば、特開平8−217560号公報には、通常の法面ブロックの表面に、みかけ気孔率20%以上55%以下の吸音コンクリート板を貼り付けた構造の吸音コンクリート壁もしくはブロックが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来から多孔質素材の吸音作用については周知であり、上記吸音コンクリート板による吸音作用も存在するであろうことは疑問の余地がない。しかしながら、多孔質素材による吸音作用は、多孔質素材の孔径には細かなばらつきはあるものの、騒音に含まれる種々の周波数の音波にはあまり対応しておらず、その吸音作用にはおのずから限界があった。また、通常の法面ブロックに吸音コンクリート板を貼り付ける手間やコスト、また法面ブロックに必要とされる強度には貢献しない上、表面に貼付される吸音コンクリート板の衝撃強度は充分でないという問題もある。
【0006】
もちろん、上記吸音コンクリート板は特殊な配合を要求されるため、吸音コンクリート板の製造に手間がかかったり、大幅なコスト増につながってしまうという問題点があった。そして、これに上記法面ブロックに吸音コンクリート板を貼り付けるコストが上乗せされるために、コスト面で普及には問題があった。
【0007】
上記コストの問題は、道路や橋梁、その他の土木や建築の分野で使用するには非常に重要な障害となってしまう。すなわち、一般道や高速道路等においては何100m、何キロメーター、何十キロメーターという長いスパンで施工する必要があるため、公共投資の大幅な増額につながってしまうという問題があった。
【0008】
そこでこの発明は、騒音に含まれる種々の周波数の音波に対応しやすく、しかも充分な吸音作用を発揮させることができ、またコスト面でも従来のコンクリートブロックと大差の擁壁や法面の吸音構造物を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわちこの発明の擁壁や法面の吸音構造物は、 騒音等に面した表面に、コンクリート打設時に凹状の吸音部を繰り返し形成された擁壁や法面の吸音構造であって、上記凹状の吸音部が、底部を備えたU字状断面状を有し、かつ内向きに狭まるテーパ面を備えると共に、前記テーパ面に段差が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明の擁壁や法面の吸音構造物は、上記内向きに狭まるテーパ面を備えた凹状の吸音部が、1mm以上の幅もしくは径の開口を備えていることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明の擁壁や法面の吸音構造物は、上記コンクリート打設時に凹状の吸音部を繰り返し形成された擁壁や法面の吸音構造が、施工現場におけるコンクリート流し込み工法や吹き付け工法、工場でのコンクリートブロック工法等においてそれぞれ形成されるようにしたことをも特徴とするものである。
【0012】
この発明の擁壁や法面の吸音構造物は以上のように構成したので、凹状の吸音部のサイズや深さに応じて騒音に含まれる種々の周波数の音波に対応しやすく、しかも充分な吸音作用を発揮させることができ、また素材のコスト面でも従来のコンクリートブロックと大差の擁壁や法面の吸音構造物を提供することができるようになった。
【0013】
また、製造コストの面でも、騒音に含まれる周波数の音波の特性に応じて、内向きに狭まるテーパ面を備えた凹状の吸音部のサイズや深さ、構造物表面に形成する凹状の吸音部の分布等を決定し、これを型枠において再現するだけであるため、大幅なコスト低減を実現することができるようになった。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図面に基いてこの発明の擁壁や法面の吸音構造物の実施の形態について詳細に説明する。図1および図2において、1はこの発明を適用した吸音ブロックであり、本体2の騒音等に面した表面には、コンクリート打設時に凹状の吸音部3が上下左右に繰り返し形成している。そして上記凹状の吸音部3は、断面がV字状であって、その壁面は開口部4から内向きに狭まるテーパ面5に形成されている。
【0015】
この凹状の吸音部3は、開口部4が1mm以上の幅もしくは径を備えていることが望ましい。そして、その間隔を一定の寸法で変化させていくことにより、騒音に含まれるさまざまな周波数の音波にも対応できるようにすることができる。この凹状の吸音部3は、その深さも非常に重要である。すなわち、浅すぎる場合にはテーパ面5で音波が相殺される前に反射してしまう。また深すぎる場合には、型枠からの脱型が難しくなってしまうのである。このようにして、凹状の吸音部の開口部のサイズや深さ、構造物表面に形成する凹状の吸音部3の分布等を決定し、これを型枠において再現するだけで、吸音性に優れ、しかも強度やコスト面でも非常に競争力のある製品を提供することができるようになったのである。
【0016】
図3はこの発明の擁壁や法面の吸音構造物の他の実施例を示すものである。
この例では、上記内向きに狭まるテーパ面5を備えた凹状の吸音部3が、現場施工した自立した吸音壁に形成されている。この例では、構造物表面に形成する凹状の吸音部3を上下左右に千鳥状に形成している。もちろん、構造物表面に形成する凹状の吸音部3の配置は上記各実施例に示したものに限定されるものではない。
【0017】
図4はこの発明の擁壁や法面の吸音構造物のさらに別の実施例を示すものである。この例では、上記内向きに狭まるテーパ面5を備えた凹状の吸音部3が、底部を備えたU字状断面を有している。この場合でも、壁面がテーパ面5を備えていることによって充分な吸音作用を発揮させることができることが判明した。
【0018】
この例では、上記内向きに狭まるテーパ面5を備えた凹状の吸音部3が、テーパ面5のほぼ中間に段差6が形成されている。この段差6によれば、騒音に含まれる音波のうちで凹状の吸音部3が対応できる周波数の範囲を広げることができ、しかも音波の干渉が高まってより吸音作用の向上を図ることができる。
【0019】
図5は、この発明の擁壁や法面の吸音構造物を、現場施工に適用した場合を示すものである。すなわち、型枠7の少なくとも騒音発生方向に対応する面には凹状の吸音部3に対応する凸部を形成しておく。そして道路の両側に型枠7を設置して、型枠7内にコンクリートを流し込むのである。上記型枠7としては、あらかじめ上記凸部を一体的に形成したものであっても、また通常の型枠7に金属型、ゴム型、樹脂型、紙型(再生紙表面防水コート)、発泡スチロール型等を適用することにより、簡単に吸音型枠とすることができる。
【0020】
図6は、この発明の擁壁や法面の吸音構造物を、工場でのコンクリートブロック工法に適用した場合を示すものである。この例でも、型枠7の少なくとも騒音発生方向に対応する面、図では床面部分には凹状の吸音部3に対応する凸部を形成しておく。そしてその上部にブロック型枠7を設置して、ブロック型枠7内にコンクリートを流し込むのである。上記ブロック型枠7としては、あらかじめ上記凸部を一体的に形成したものであっても、また通常のブロック型枠7と金属型、ゴム型、樹脂型、紙型(再生紙表面防水コート)、発泡スチロール型等とを組合せることにより、簡単に吸音型枠とすることができる。
【0021】
上記施工現場におけるコンクリート流し込み工法と同様に、法面等には吹き付け工法が適用可能である。この吹き付け工法は、あらかじめ下地コンクリートを吹き付けた後にネット状の吸音ゴム型をその表面に取り付け、その上から再度吹き付けを所定の厚さになるよう吹き付け、その後ネット状の吸音ゴム型を取り外すのである。
【0022】
図7はこの発明の擁壁や法面の吸音構造物の別の実施例を示すものである。
この例では、上記内向きに狭まるテーパ面5を備えた凹状の吸音部3が、円錐状断面、もしくは円柱状に近い、底部を切断した下つぼまりのテーパ面を有するロート状断面を有している。この場合でも、その壁面がテーパ面5を備えていることによって充分な吸音作用を発揮させることができることが判明した。しかも、穴のサイズや深さを変えることにより、種々の周波数の音波に簡単に対応することができる。
【0023】
図8もこの発明の擁壁や法面の吸音構造物の別の実施例を示すものである。
この例では、上記内向きに狭まるテーパ面5を備えた凹状の吸音部3が、桝目状の溝を形成している。この場合でも、溝の壁面がテーパ面5を備えていることによって充分な吸音作用を発揮させることができることが判明した。しかも、溝の開口部4のサイズや深さを変えることにより、種々の周波数の音波に簡単に対応することができる。
【0024】
上記各構造物による吸音作用について、図9を用いて説明する。例えば、吸音ブロック1の構造物表面に配置した凹状の吸音部3に騒音等の音波が到来すると、フラットな面ではそのまま反射され、反響する。しかしながた、音波が凹状の吸音部3に開口部4から入射すると、この凹状の吸音部3のテーパ面5で音波は相殺され、確実かつ効果的に吸音されるのである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
表1ないし表4は、それぞれ凹状の吸音部3の形状に応じて騒音の周波数にどのような影響があるかを調べたものであり、表1の平面板の場合はもちろん、ほとんど吸音効果がない。表2の小穴ランダム形(円錐状断面:図7参照)の場合には一定の幅のところでかなりの吸音効果が見られた。表3の角形溝(田形:図8参照)の場合には幅広い周波数に対して所定の吸音作用が見られた。表4の角形溝(千鳥状:図3参照)の場合には幅広い周波数に対して、かなり顕著な吸音作用が見られた。
【0030】
【発明の効果】
この発明の擁壁や法面の吸音構造物は以上のように構成されているので、凹状の吸音部のサイズや深さに応じて騒音に含まれる種々の周波数の音波に対応しやすく、しかも充分な吸音作用を発揮させることができ、また素材のコスト面でも従来のコンクリートブロックと大差の擁壁や法面の吸音構造物を提供することができるようになった。
【0031】
また、製造コストの面でも、騒音に含まれる周波数の音波の特性に応じて、内向きに狭まるテーパ面を備えた凹状の吸音部の開口部のサイズや深さ、構造物表面に形成する凹状の吸音部の分布等を決定し、これを型枠において再現するだけであるため、加工性に優れ、大幅なコスト低減を実現することができるようになった。また、埃や土がたまりにくく、ほとんどメンテナンスフリーである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の擁壁や法面の吸音構造物の1実施例を示す斜視図である。
【図2】その概略断面図である。
【図3】この発明の擁壁や法面の吸音構造物の他の実施例を示す斜視図である。
【図4】さらに別の実施例を示す断面図である。
【図5】現場施工の状態を示す概略斜視図である。
【図6】吸音ブロックを製造する状態を示す概略断面図である。
【図7】この発明の擁壁や法面の吸音構造物の別の実施例を示す斜視図である。
【図8】さらに別の実施例を示す斜視図である。
【図9】吸音機構を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 吸音ブロック
2 本体
3 凹状の吸音部
4 開口部
5 テーパ面
6 段差
7 型枠
Claims (3)
- 騒音等に面した表面に、コンクリート打設時に凹状の吸音部を繰り返し形成された擁壁や法面の吸音構造であって、上記凹状の吸音部が、底部を備えたU字状断面状を有し、かつ内向きに狭まるテーパ面を備えるとともに、前記テーパ面に段差が形成されていることを特徴とする擁壁や法面の吸音構造物。
- 内向きに狭まるテーパ面を備えた凹状の吸音部が、1mm以上の幅もしくは径の開口を備えている請求項1に記載の擁壁や法面の吸音構造物。
- コンクリート打設時に凹状の吸音部を繰り返し形成された擁壁や法面の吸音構造が、施工現場におけるコンクリート流し込み工法や吹き付け工法、工場でのコンクリートブロック工法等においてそれぞれ形成されるようにした請求項1または2に記載の擁壁や法面の吸音構造物。
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