〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1(a)・(b)ないし図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
なお、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲が、以下の実施形態および図面に限定されるものではない。
また、以下の説明では、液状物質を帯電させて、該液状物質の静電吸引力により、液状物質を吐出させる静電吸引方式のノズルプレートについて説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、圧電素子の振動により液状物質の流路を変形させることにより液状物質を吐出させるピエゾ方式や、液状物質の流路内に発熱体を設け、その発熱体を発熱させて気泡を発生させ、気泡による流路内の圧力変化に応じて液状物質を吐出させるサーマル方式のノズルプレートであっても適用することが可能である。
図1(a)・(b)は、本発明の一実施形態に係るノズルプレート1の構成を示したものであり、図1(a)は、ノズルプレート1の構成を概略的に示した透視図であり、図1(b)は、図1(a)に示したノズルプレート1を切断線A−A’で切断した切断面を示した断面図である。
図1(a)・(b)に示すノズルプレート1は、例えばインクジェットプリンターに備えられ、微小なインクドット(液滴)を、描画対象となる対象基材に直接描画することによって微細パターンを高い精度で形成することができる。
なお、ここで対象基材とは、吐出された液状物質の着弾を受ける対象物をいう。また、その材質については特に限定されるものではない。したがって、本実施の形態のノズルプレート1をインクジェットプリンターに適応した場合は、用紙やシート等の記録媒体や液晶表示用のカラーフィルタが上記対象基材に相当する。また、導電性ペーストを用いて回路の形成を行う場合には、回路が形成されるべきベースが上記対象基材に相当する。
具体的には、上記ノズルプレート1を用いて液状物質の吐出を行う場合は、該ノズルプレート1内あるいはインクジェットヘッド内に設けられた吐出電極(図示しない)に電圧を印加してノズル2(ノズル部材、突出部)の先端であるノズル先端部3に電界を集中させ、液状物質を帯電させて、該液状物質の静電吸引力により、液状物質をノズル2の対象基材側開口部8から吐出させることができる。
なお、本実施の形態のノズルプレート1の場合、ノズル先端部3に対向する対向電極がなくとも液状物質の吐出を行うことが可能である。例えば、対向電極が存在しない状態で、ノズル先端部3に対向させて対象基材を配置した場合、該対象基材が導体である場合には、対象基材の受け面を基準としてノズル先端部3の面対称となる位置に逆極性の鏡像電荷が誘導される。一方、上記対象基材が絶縁体である場合には、対象基材の受け面を基準として基材の誘電率により定まる対称位置に逆極性の映像電荷が誘導される。そして、ノズル先端部3に誘起される電荷と鏡像電荷または映像電荷間での静電力により液状物質の液滴が飛翔する。そのため、ノズルプレート1は、図1(a)・(b)に示すように、ベース部4(基板部材)と、ノズル2とを備えている。なお、本発明に係るノズルプレートは、上述したように、液状物質を帯電させるための吐出電極を設けた構成であるが、以下の説明ではこの吐出電極については、特に図示しないものとする。
上記ベース部4は、図1(a)・(b)に示すように、液状物質がベース部4に流入する流入面4aと、吐出対象である図示しない対象基材に該液状物質を吐出する、該流入面4aに対向配置された吐出面4bとを有している。さらに、上記ベース部4は、上記流入面4aおよび吐出面4bの両方に開口部を有したベース貫通穴5(第1貫通穴、第2貫通穴)を備えている。
上記ベース部4の厚みは、適宜設定することが可能であるが、10〜300μmの範囲で設定されることが好ましい。ベース部4の厚みが10μm以下となると、ノズル自体の構造安定性を維持することが困難となる。また、ベース部4の厚みが300μm以上になると、ベース貫通穴5の加工が困難になる。一例としては、厚さ100μmとすることができる。
また、上記ノズル2は、上記ベース部4の上記吐出面4b側に配置されており、図示したように円筒形状をなしている。上記ノズル2は、上記円筒形状を構成する1対の円形面のそれぞれに開口部、ベース部側開口部および対象基材側開口部8(ノズル穴)、を有したノズル貫通穴6(第1貫通穴、第2貫通穴)を備えている。ノズル貫通穴6のベース部側開口部および対象基材側開口部8のうち、上記ベース部側開口部は、連通部7において、ベース貫通穴5の吐出面4b側の開口部と連結しており、ベース貫通穴5とノズル貫通穴6とは連通している。
上記ノズル2の円筒形状の大きさは、適宜設定することが可能である。ノズル2の外径としては、2〜35μmとすることが好ましい。また、ノズル2のベース部4からの突出量、具体的には吐出面4bからの突出量としては、10〜200μmとすることが好ましい。吐出面4bからの突出量を10μm以上とすることで、ノズル先端に効果的に電界を集中させることができる。また、吐出面4bからの突出量が300以上になると、ノズル孔の加工が困難になる。一例としては、ノズル2の外径を10μm、ノズル2のベース部4からの突出量を100μmとすることができる。
また、上記ノズル2のノズル貫通穴6の大きさも、適宜設定することが可能である。例えば、高いアスペクト比加工における解像度の限界である1μm以上とすることが好ましく、微細液滴の作製を考慮すると30μm以下とすることが好ましい。一例としては、ノズル貫通穴6の内径を3〜5μmの範囲で設定することができる。
なお、ベース貫通穴5とノズル貫通穴6とは、液状物質が、該ベース貫通穴5を流れた後、ノズル貫通穴6を流れて上記ノズル2における対象基材との対向面に形成された対象基材側開口部8から吐出するように構成されていればよく、後述するように、上記ベース部4の吐出面4b側の開口部と、上記ノズル2の上記ベース部側開口部とは、必ずしもその形状が一致していなくてもよい。詳細は後述するが、例えば、互いの開口部が同一径でなくてもよく、また、互いの開口部の中心がずれて形成されている構成であってもよい。
なおまた、図1(a)では、2つの上記ノズル2が構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに、上記ノズル2の配置も、図示したものに限定されるものではなく、具体的には、複数の上記ノズル2が、複数列をなして構成されているものであってもよい。
以上のように、本実施の形態に係るノズルプレート1は、対象基材側開口部8を有する円筒形状のノズル2をノズルプレート上に形成している。これによって、吐出電極に電圧を印加させた際、該対象基材側開口部8近傍の電界集中が向上し、低い印加電圧で液状物質を吐出させることができる。
次に、以上のような構成を備えた本実施の形態に係るノズルプレート1の製造方法について説明する。
図2(a)〜(f)は、本実施の形態のノズルプレート1の製造方法を説明するため説明図である。なお、図2(a)〜(f)は、図1(b)と同様に、図1(a)に示す製造完了後のノズルプレート1における切断線A−A’で切断した状態に相当する断面図である。
図2(a)は、犠牲部材9を示している。この犠牲部材9は、ガラスやSiなどの基板10と、該基板10上に形成された、酸によってエッチングすることのできるNiを主成分とする犠牲層11を備えている。
本実施の形態では、基板10と犠牲層11との積層構造を犠牲部材9として用いている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、後の製造工程で、ノズルプレート1を、犠牲部材9から除去することができる部材であれば、該犠牲部材9は、例えば、上記犠牲層11に用いる材料のみによって構成されたものであってもよい。
さらに、上記犠牲層11の材料にNiを主成分とするものを用いているが、後の製造工程において犠牲部材9上に形成されるノズルプレート1の材料と、選択性の高いエッチングを行うことのできる材料であれば、特に限定されるものではない。したがって、例えば、Fe、Cu、Alなどの金属材料を上記犠牲層11として用いることもできる。
次に、図2(b)は、上記犠牲部材9に、第1の感光性樹脂層12を積層した状態を示している(第1積層工程)。
上記第1の感光性樹脂層12の積層は、回転塗布法等の従来公知の方法によって上記犠牲部材9上に塗布することによって積層することができる。
本実施の形態のノズルプレート1は、図1(b)に示したように、ベース部4から円筒形状のノズル2が突出した構成となっている。そのため、上述したように、例えば、ノズル2のベース部4からの突出量を100μmとしたい場合は、上記犠牲部材9上に、第1の感光性樹脂層12を厚さ100μmとなるように積層すればよい。すなわち、本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12の厚みは、ノズル2のベース部4からの突出量に相当する。
本実施の形態では、上記第1の感光性樹脂層12を用いて上記ノズル2を形成する。さらに、図1(a)に示したように、上記ノズル2にはノズル貫通穴6が形成されている。そこで、図2(c)は、上記第1の感光性樹脂層12を用いて上記ノズル2およびノズル貫通穴6を形成する工程を示している(第1感光工程)。
図2(c)に示すように、第1マスク13を第1の感光性樹脂層12における上記犠牲部材9側とは反対側に配置し、第1マスク13によって第1の感光性樹脂層12の一部がマスクされるようにして、中心波長0.5nm(5Å)のシンクロトロン放射光14を第1の感光性樹脂層12に照射する。
この照射により、図2(c)に示すように、領域E2が感光され、ノズル貫通穴6を有した円筒形状のノズル2が第1の感光性樹脂層12内に形成される。
次に、図2(d)は、上記シンクロトロン放射光14によって感光された第1の感光性樹脂層12に、第2の感光性樹脂層15を積層した状態を示している(第2積層工程)。本実施の形態では、上記第2の感光性樹脂層15を用いて、図1(a)に示した上記ベース部4を形成する。
上記第2の感光性樹脂層15の積層は、第1の感光性樹脂層12の積層と同様に、従来公知の方法によって第1の感光性樹脂層12上に塗布することによって積層することができ、上述したように、例えば、上記ベース部4の厚みを100μmとしたい場合は、第1の感光性樹脂層12上に第2の感光性樹脂層15を厚さ100μmとなるように積層すればよい。
上述したように、上記ベース部4には、ベース貫通穴5が形成されている。そこで、図2(e)は、上記第2の感光性樹脂層15を用いて上記ベース部4およびベース貫通穴5を形成する工程を示している(第2感光工程)。図2(e)に示すように、第2マスク16を第2の感光性樹脂層15における上記第1の感光性樹脂層12側とは反対側における、第2マスク16によって第2の感光性樹脂層15の一部がマスクされるように配置する。そして、第2マスク16を用いて、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を第2の感光性樹脂層15に照射する。
この照射により、図2(e)に示すように、領域E1が感光され、ベース貫通穴5を有したベース部4が形成される。
次に、図2(f)は、製造が完了したノズルプレート1を示している。図2(e)においてベース貫通穴5を有したベース部4が形成されたノズルプレート1は、上記感光された領域E1および領域E2をテトラヒドロオキシザンとアミノエタノールおよびエタノールを含有する現像液に浸漬し、上記領域E1および領域E2を除去する。次に、エタノールを含有する停止液によって現像を停止した後、水洗し、ノズルプレート1の形状を現像する(現像工程)。さらに、硝酸を含有するエッチング液によって、上記犠牲部材9をエッチングする。これにより、ノズルプレート1(第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15)と、犠牲部材とを分離することができる(分離工程)。
以上のように、図2(a)〜(f)に図示した工程によって、ノズルプレート1を製造することができる。
以上のように、本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15は、現像液に浸漬することにより、感光された上記領域E1および領域E2が除去される構成となっている。したがって、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15は、現像液に対する溶解度が増加するいわゆるポジ型の材料を用いる。
さらに、本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15として、光透過材料を用いる。その理由を以下に説明する。
本実施の形態におけるノズルプレート1は、連通部7(図1(a))において、ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6のそれぞれ開口部が一致した構成となっている。そこで、図2(e)に示した工程では、上記第2マスク16は、上記第2の感光性樹脂層15における領域E1が上記第1の感光性樹脂層12に形成されたノズル貫通穴6に対応するように、配置される必要がある。
そこで、上記のように、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を光透過材料とすることによって、特に、第2の感光性樹脂層15にベース貫通穴5を形成する際、上記第1の感光性樹脂層12に形成したノズル貫通穴6との位置合わせを容易に行うことができる。
具体的には、光透過材料を用いれば、ベース貫通穴5に相当する領域が開口した上記第2マスク16を、上記第2の感光性樹脂層15上に配置して、該第2の感光性樹脂層15にベース貫通穴5を形成する際、上記第2マスク16の開口領域と、第1の感光性樹脂層12に形成されたノズル貫通穴6との位置合わせを、例えば、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を感光しない光を用いて行うことができる。
これにより、ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6の加工精度が、上述した従来の製造方法よりも高くすることができる。
なお、ここで光透過材料とは、第2の感光性樹脂層にベース貫通穴5を形成する際、ノズル貫通穴6との位置合わせを行うことが容易になる程度の光透過性を有する材料のことであり、透明材料であってもよく、半透明材料であってもよい。
具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂や、メチルメタクリレート(MMA)とメタクリル酸(MAA)とを主成分とする有機樹脂等が挙げられる。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂を用いて、それぞれ100μmの厚さに塗布して第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を形成することができる。
また、本実施の形態では、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を用いて、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を感光させている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を感光させることができる光であればよい。
また、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を感光させることができる光の中でも、中心波長0.3〜1.0nm(3〜10Å)の光であることが好ましい。これにより、中心波長0.3〜1.0nmの非常に短波長の光を用いたリソグラフィによって、上記ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6を形成することができる。そのため、リソグラフィの解像度が非常に高く、精度の高いノズルプレート1の加工が実現できる。
したがって、上記第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15は、光透過性材料であるとともに、中心波長0.3〜1.0nmの光に高い感光性を示す材料であることが好ましい。
さらに、中心波長0.3〜1.0nmの光の中でも、シンクロトロン放射光14であることが好ましい。これにより、非常に平行度の高いシンクロトロン放射光を用いたリソグラフィによって、上記ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6を形成することができる。そのため、本実施の形態のように、円筒形状のノズル2を容易に加工することができる。
また、本発明に係るノズルプレートの製造方法は、従来と同様の高アスペクト比のノズル部材であっても適用することが可能である。この場合も、上記シンクロトロン放射光14を用いることによって、高アスペクト比のノズル部材を容易に加工することができる。
以上のように、本実施の形態のノズルプレートの製造方法を用いることにより、ノズルプレート1の製造工程の間、該ノズルプレート1は、犠牲部材9上に形成され、該ノズルプレート1のベース貫通穴5およびノズル貫通穴6を形成した後に、犠牲部材9がノズルプレート1から分離される構成となっている。
このため、犠牲部材9がない場合の製造方法に比べ、製造中のノズルプレート1(第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15)の剛性が高い状態で製造することができる。したがって、本実施の形態のようにノズルプレートの形状が微細な形状である場合に、その加工精度を高めることができる。
また、ベース部4にベース貫通穴5を形成する際、第1の感光性樹脂層12内に既に形成されたノズル2は、領域E2とともに、犠牲部材9によって固定され、剛性が高くなっていることから、ノズル2を損傷させることなくベース貫通穴5を形成することができる。したがって、犠牲部材は用いず、基板から突出した形状のノズルを形成した後に、該ノズルの裏面に基板の流路貫通穴を形成する従来技術におけるノズルプレートの製造方法と比較して、良好なノズルプレート1を提供することができる。
また、本実施の形態のノズルプレートの製造方法によれば、ベース貫通穴5は、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を用いて、感光させることによって形成している。したがって、エッチングによってベース貫通穴を形成するような従来の製造方法と比較してオーバーエッチング等による上述した問題が生じる可能性は極めて低くなる。すなわち、ノズルプレートを良好に製造することができるとともに、良好なノズルプレートを提供できる。
また、上記ノズル2は、円筒形状を有しているため、対象基材側開口部8近傍の電界集中を高めることができる。これにより、低い吐出電圧で液状物質を吐出することが可能となる。
また、本発明に係るノズルプレートの製造方法は、換言すれば、以下の点を特徴としているとも表現できる。すなわち、液状物質を吐出する少なくとも1つのノズル穴を有するノズルプレートの製造方法であって、犠牲部材を準備する工程と、上記犠牲部材上に第1の感光性樹脂層を形成する工程と、上記第1の感光性樹脂層に形成される第1貫通穴に対応する形状を加工する工程と、上記第1の感光性樹脂層上に第2の感光性樹脂層を形成する工程と、上記第2の感光性樹脂層に形成される第2貫通穴に対応する形状を加工する工程と、上記第2貫通穴加工後に犠牲部材を除去する工程を備えることを特徴とすることもできる。
この場合、さらに、上記第1の感光性樹脂層または第2の感光性樹脂層の少なくとも一方が、第1貫通穴あるいは第2貫通穴よりも大きな外径を有する円筒形状に加工されることを特徴とすることもできる。
さらに、上記第1貫通穴の中心位置と上記第2貫通穴の中心位置をずらして配置されていることを特徴とすることもできる。
〔実施の形態2〕
本発明に係る他の実施の形態について、図3(a)〜(d)に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施の形態では、上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3(a)〜(d)は、本実施の形態におけるノズルプレートの製造方法を説明するため説明図である。なお、本実施の形態におけるノズルプレート1は、構造上は、上記実施の形態1と同一である。したがって、図3(a)〜(d)は、図1(b)と同様に、図1(a)に示す製造完了後のノズルプレート1における切断線A−A’で切断した状態を図示した断面図である。
上記実施の形態1のノズルプレート1は、該ノズルプレート1を構成するベース部4とノズル2を、現像液に対する溶解度が増加するいわゆるポジ型の樹脂材料の第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を用いて形成している。これに対して、本実施の形態では、感光された領域が、現像液に対する溶解耐性が向上するいわゆるネガ型の樹脂材料を用いている。
第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15にネガ型の樹脂材料を用いた場合のノズルプレート1の製造方法について図3(a)〜(d)に基づいて、以下に説明する。
上記実施の形態1と本実施の形態の製造方法とで異なる点は、本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12を用いてベース部4を形成し、第2の感光性樹脂層15を用いてノズル2を形成する点である。以下に、本実施の形態の製造方法を具体的に説明する。なお、以下では、特に上記実施の形態1と異なる点について説明し、実施の形態1と同様の内容については、説明を省略する。
図3(a)は、犠牲部材9に第1の感光性樹脂層12を積層した状態を示している(第1積層工程)。上述したように本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12を用いて、図1(a)に示したベース部4を形成する。まず、従来公知の方法によって犠牲部材9上に第1の感光性樹脂層12を塗布する。例えば、上記ベース部4の厚みを100μmとしたい場合は、第1の感光性樹脂層12を厚さ100μmとなるように積層すればよい。
上記ベース部4には、ベース貫通穴5が形成されている。図3(b)は、上記第1の感光性樹脂層12を用いて上記ベース部4およびベース貫通穴5を形成する工程を示している(第1感光工程)。
図3(b)に示すように、第1マスク13を、第1の感光性樹脂層12における上記犠牲部材9側とは反対側における、第1マスク13によって第1の感光性樹脂層12の一部、具体的にはベース貫通穴5部分、がマスクされるように配置する。そして、第1マスク13を用いて、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を、第1の感光性樹脂層12に照射する。
この照射により、図3(b)に示すように、領域E3が感光され、ベース貫通穴5を有したベース部4が形成される。
次に、図3(c)は、上記シンクロトロン放射光14によって感光された第1の感光性樹脂層12に、第2の感光性樹脂層15を積層した状態を示している(第2積層工程)。本実施の形態では、上記第2の感光性樹脂層15を用いて上記ノズル2を形成する。
上記第2の感光性樹脂層15の積層は、第1の感光性樹脂層12の積層と同様に、従来公知の方法によって第1の感光性樹脂層12上に塗布することによって積層することができ、例えば、ノズル2のベース部4からの突出量を100μmとしたい場合は、上記第1の感光性樹脂層12上に第2の感光性樹脂層15を厚さ100μmとなるように積層すればよい。すなわち、本実施の形態では、第2の感光性樹脂層15の厚みは、ノズル2のベース部4からの突出量に相当する。
図3(d)は、上記第2の感光性樹脂層15を用いて上記ノズル2およびノズル貫通穴6を形成する工程を示している(第2感光工程)。
図3(d)に示すように、第2マスク16を、第2の感光性樹脂層15における上記第1の感光性樹脂層12側とは反対側に配置して、第2の感光性樹脂層15の一部をマスクする。そして、第2マスク16を用いて、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を第1の感光性樹脂層12に照射する。
この照射により、領域E4が感光され、ノズル貫通穴6を有した円筒形状のノズル2が第2の感光性樹脂層15内に形成される。
次に、第1の感光性樹脂層12にベース部4を形成し、第2の感光性樹脂層15にノズル2を形成したノズルプレート1を、上記実施の形態1と同様、現像する(現像工程)。これにより、図3(e)に図示したノズルプレート1が完成する。
本実施の形態における第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15には、光透過材料であり、かつ、現像液に対する溶解耐性が向上するいわゆるネガ型の樹脂材料を用いる。具体的には、エポキシ系の材料を用いることができ、より具体的には、MicroChem Corp.製 SU-8レジスト等を用いることができる。
以上のような製造方法を用いることにより、本実施の形態におけるノズルプレート1は、ノズル2を形成する前の工程で、ベース部4およびベース貫通穴5を形成するため、ベース部4を形成する際にノズル2が損傷するような従来の問題はなくなる。
また、上記実施の形態1と同様、本実施の形態のノズルプレートの製造方法によれば、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を用いて、感光させることによってベース貫通穴5を形成する。したがって、エッチングによってベース貫通穴を形成するような従来の製造方法と比較してオーバーエッチング等による上述した問題が生じる可能性は極めて低くなる。すなわち、ノズルプレートを良好に製造することができるとともに、良好なノズルプレートを提供できる。
なお、上述したような、上記実施の形態1および本実施の形態におけるノズルプレート1は、連通部7(図1(a))において、ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6のそれぞれ開口部が一致した構成となっている。しかしながら、本発明に係るノズルプレートは、それぞれ開口部が一致した構成のものに限定されるものではない。
具体的には、図4(a)〜(c)に示すような構成のノズルプレートであってもよい。図4(a)〜(c)は、ノズルプレート1のベース貫通穴5およびノズル貫通穴6の他の形状を示したものであり、図1(b)と同様に、図1(a)に示す製造完了後のノズルプレート1における切断線A−A’で切断した状態に相当する断面図である。
図4(a)に示すベース貫通穴5およびノズル貫通穴6の形状は、ベース貫通穴5の径に比べ、ノズル貫通穴6の径が小さい場合の構成を示した断面図である。
図4(a)に示す構成の場合、ノズル貫通穴6に比べ、ベース貫通穴5の流路抵抗が小さくなるので、微細に形成されるノズル貫通穴6から大量の液状物質を吐出するような吐出形態を採用する際に、吐出量に対して液状物質の供給が不足することがなく、描画を安定して行うことができる。
なお、ベース貫通穴5の形状は、上記ノズル2の外径を超えなければ、吐出する液状物質の物性、所望の描画特性に応じて任意に設定することができる。
また、図4(b)に示すベース貫通穴5およびノズル貫通穴6の形状は、図4(a)の構成とは反対に、ノズル貫通穴6の径に比べ、ベース貫通穴5の径が小さい場合の構成を示した断面図である。
図4(b)に示す構成の場合、ノズル貫通穴6に比べ、ベース貫通穴5の流路抵抗が大きくなるので、微細に形成されるノズル貫通穴6から、低粘度の液状物質を微少量吐出する際に、液状物質の大量供給を抑制することができる。
また、これにより、ノズル貫通穴6先端から吐出される液状物質の液滴量を微小に制御することができる。
図4(c)に示すベース貫通穴5およびノズル貫通穴6の形状は、ノズル貫通穴6とベース貫通穴5の配置をずらした構成となっている。
ここで、「ずらした構成」とは、すなわち、上記第1の感光性樹脂層12と第2の感光性樹脂層15との境界面において、上記第1の感光性樹脂層12または第2の感光性樹脂層15が該境界面に沿ってスライドしたようにすることによって、ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6のそれぞれの開口部の中心がずれた状態の構成のことをいう。
図4(c)に示す構造の場合、ベース貫通穴5とノズル貫通穴6の連通部7において流路の断面形状が小さくなるので、この連通部7において流路抵抗を高めることができる。
したがって、図4(b)に示した構成と同様に、液状物質の大量輸送を制限することができる。そのため、低粘度の液状物質を微少量吐出するような吐出条件において、吐出量を微小に制御することができる。
なお、上記ベース貫通穴5とノズル貫通穴6のずれ量は、上記ノズル2の外径とノズル貫通穴6の径とから設定することができる。
すなわち、ベース貫通穴5の領域が、ノズル2の外周部よりも外側に及ぶことがないように配置する必要がある。その理由としては、次のような問題が挙げられるためである。図5は、図1(b)と同様に、図1(a)に示す製造完了後のノズルプレート1における切断線A−A’で切断した状態に相当する断面図である。図4に示したノズルプレート1の構成では、ベース貫通穴5のエッジ領域が、ノズル2の外周部よりも外側に配置されている。このような構成になると、ノズル2とベース部4の境界面に漏出口17が形成されてしまい、液状物質が該漏出口17から漏れ出てしまうことによって、対象基材側開口部8からの液状物質の吐出量の安定性が著しく低下するという問題が生じるためである。
そこで、図4(c)に示す構造を実現する場合は、以下の式を満たす必要がある。
D0>D1/2+D2/2+△A
なお、上記ベース貫通穴5の径をD1、上記ノズル貫通穴6の径をD2、上記ノズル2の外径をD0、上記連通部におけるそれぞれの開口部の中心のずれ量を△Aとして表すものとする。
図4(c)に示す構造を実現する場合は、上記の式を満たすことによって、上述した問題は生じず、液状物質の大量輸送を制限することができる。そのため、低粘度の液状物質を微少量吐出するような吐出条件において、吐出量を微小に制御することができるとともに、液状物質の吐出を安定に行うことができる。
ノズルプレート1は、以上のような図4(a)〜(c)に示した構成のノズルプレートであってもよい。図4(a)に示した構成を製造する際は、第1マスク13に設けられたノズル貫通穴6形成部分の開口領域の径を、第2マスク16に設けられたベース貫通穴5形成部分の開口領域の径よりも小さくすることによって製造することができる。なお、図4(a)に示した構成を製造する際はネガ型の樹脂材料を用いることが好ましい。また概念を判りやすく説明するために図4(a)では、ベース貫通穴5の形状をストレート形状としているが、実際にはノズル貫通穴6の露光によってベース貫通穴5の内径が減少する場合がある。図4(b)に示した構成を製造する際は、第2マスク16に設けられたベース貫通穴5形成部分の開口領域の径を、第1マスク13に設けられたノズル貫通穴6形成部分の開口領域の径よりも小さくすることによって製造することができる。なお、図4(b)に示した構成を製造する際はポジ型あるいはネガ型の樹脂材料を用いることができる。
さらに、図4(c)に示した構成を製造する際は、上述した製造方法とは異なり、第2の感光性樹脂層15に第2マスク16を用いてベース貫通穴5を形成する際に、第1の感光性樹脂層12に既に形成されたノズル貫通穴6とのアライメントをずらして第2マスク16を配置することによって製造することができる。
すなわち、図4(c)に示した構成を製造する際は、新たにマスクパターンを作成することなしに、ノズル2内の流路抵抗を変化することができる。したがって、用途に応じた流路抵抗設定や調整を、簡便に、かつ、コストの増加なしに実現することができる。なお、図4(c)に示した構成を製造する際はネガ型の樹脂材料を用いることが好ましい。また概念を判りやすく説明するために図4(c)では、ベース貫通穴5の形状をストレート形状としているが、実際にはノズル貫通穴6の露光によってベース貫通穴5の内径が減少する場合がある。
〔実施の形態3〕
本発明に係る他の実施の形態について、図6(a)・(b)および図7(a)〜(f)に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施の形態では、上記実施の形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施の形態1で説明した部材と同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6(a)・(b)は、本発明の他の実施形態に係るノズルプレート1の構成を示しものであり、図6(a)は、ノズルプレート1の構成を概略的に示した透視図であり、図6(b)は、図6(a)に示したノズルプレート1を切断線C−C’で切断した切断面を示している。なお、説明の便宜上、図6(a)・(b)に図示したノズルプレート1では、ノズル2とベース部4との境界面を図示しているが、実際は、境界面は存在しない。
本実施の形態におけるノズルプレート1は、上記実施の形態1のノズル2とは構造の異なるノズル部20(ノズル部材)を備えている。
具体的には、図6(a)・(b)に示すように、本実施の形態のノズルプレート1は、上記実施の形態1のノズル2と同一の円筒形状のノズル2以外に、該ノズル2の外側、すなわち、該ノズル2の外径を囲むように、該ノズル2のベース部4からの突出量と略同一の突出量を有した平面部18が、該突出量と同じ深度を有した溝19を介して、形成されたノズル部20を備えている。
本実施の形態におけるノズルプレート1の製造方法について、図7(a)〜(f)に基づいて説明する。図7(a)〜(f)は、図6(b)と同様に、図6(a)に示す製造完了後のノズルプレート1における切断線C−C’で切断した状態を図示した断面図である。
なお、本実施の形態におけるノズルプレート1の製造方法は、上記実施の形態1の製造方法と略同様であるため、以下の説明では、上記実施の形態1の製造方法と同様の工程については簡単に説明する。
図7(a)は、犠牲部材9を示している。犠牲部材9は、上記実施の形態1の場合と同様に、基板10と、該基板10上に形成された犠牲層11とを備えている。上記犠牲部材9は、上記犠牲層11に用いる材料のみによって構成されたものであってもよく、上記犠牲層11には、後の製造工程で、ノズルプレート1が上記犠牲部材9から容易に分離できるような選択性の高いエッチングを行うことのできる材料を用いる。
次に、図7(b)は、上記犠牲部材9に、第1の感光性樹脂層12を積層した状態を示している(第1積層工程)。第1の感光性樹脂層12の積層は、ノズル部20(ノズル2および平面部18)のベース部4からの突出量を、例えば、100μmとしたい場合は、上記犠牲部材9上に第1の感光性樹脂層12を厚さ100μmとなるように積層すればよい。すなわち、本実施の形態では、第1の感光性樹脂層12の厚さは、ノズル部20のベース部4からの突出量に相当する。
図7(c)は、上記第1の感光性樹脂層12を用いて、上記ノズル2と、ノズル貫通穴6と、溝19と、平面部18とを形成する工程を示している(第1感光工程)。図7(c)に示すように、第1マスク13を第1の感光性樹脂層12における上記犠牲部材9側とは反対側に配置し、第1マスク13によって第1の感光性樹脂層12の一部がマスクされるように、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を第1の感光性樹脂層12に照射する。
この照射により、図7(c)に示すように、領域E5が感光され、ノズル貫通穴6を有した円筒形状のノズル2と、溝19と、平面部18とが第1の感光性樹脂層12内に形成される。
次に、図2(d)は、上記シンクロトロン放射光14によって感光された第1の感光性樹脂層12に、第2の感光性樹脂層15を積層した状態を示している(第2積層工程)。本実施の形態では、上記第2の感光性樹脂層15を用いて上記ベース部4を形成する。
図7(e)は、上記第2の感光性樹脂層15を用いて上記ベース部4およびベース貫通穴5を形成する工程を示している(第2感光工程)。図7(e)に示すように、第2マスク16を第2の感光性樹脂層15における上記第1の感光性樹脂層12側とは反対側における、第2マスク16によって第2の感光性樹脂層15の一部がマスクされるように配置し、中心波長0.5nmのシンクロトロン放射光14を第2の感光性樹脂層15に照射する。この照射により、図7(e)に示すように、領域E1が感光され、ベース貫通穴5を有したベース部4が形成される。
図7(e)に示した状態から、図7(f)に図示した製造が完了した本実施の形態のノズルプレート1に至るまでの工程は、上記実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
以上のように、図7(a)〜(f)に示した工程によって、ノズルプレート1を製造することができる。
なお、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15を現像する際、現像液に浸漬することにより、感光された上記領域E1および領域E5が除去される構成としている。したがって、第1の感光性樹脂層12および第2の感光性樹脂層15は、現像液に対する溶解度が増加するいわゆるポジ型の材料を用いる。しかしながら、本実施の形態におけるノズルプレート1の製造方法は、これに限定されるものではなく、上記実施の形態2のように、現像液に対する溶解耐性が向上するいわゆるネガ型の樹脂材料を用いることによって製造することも可能である。なお、ネガ型の樹脂材料を用いる場合は、実施の形態2と同様、第1の感光性樹脂層12にベース部4を形成し、第2の感光性樹脂層15にノズル部20を形成する。
以上のように、本実施の形態のノズルプレート1は、円筒形状のノズル2の外側に、該ノズル2の外径を囲むように、該ノズル2のベース部4からの突出量と略同一の突出量を有した平面部18が、該突出量と同じ深度を有した溝19を介して、形成されたノズル部20を備えている。
これにより、上記溝19と平面部18との境界領域にも電界が集中し、この外周部から発生する電界によって上記ノズル部20の対象基材側開口部8近傍の電界が閉じ込められることになる。そのため、対象基材側開口部8近傍電気力線の発散が防止され、これによって電気力線に沿って飛翔する流体の着弾精度が向上する。
さらに、上記溝19のさらに外側に、上記平面部18が存在するため、対象基材との接触などによる上記ノズル部20の破損を防止することができる。
なお、本実施の形態におけるノズルプレート1は、ベース貫通穴5およびノズル貫通穴6のそれぞれ開口部が一致した構成となっている。しかしながら、上記実施の形態1の場合と同様に、本実施の形態の場合も、ベース貫通穴5の径とノズル貫通穴6の径とを異なる大きさに設定することができる。また、上記実施の形態1の場合と同様に、上記した式を満たす範囲内であれば、ノズル貫通穴6とベース貫通穴5の配置をずらした構成とすることもできる。
また、本発明に係るノズルプレートの製造方法は、換言すれば、以下の点を特徴としているとも表現できる。すなわち、上記第1の感光性樹脂層12または第2の感光性樹脂層15の少なくとも一方が、それぞれ第1貫通穴あるいは第2貫通穴よりも大きな外径を有する円筒形状と上記円筒形状を取り囲む外溝を有するように加工されることを特徴とすることもできる。
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。