JP4476415B2 - 高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたicカード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,ICカードであって端子表面に高耐食ニッケル−金めっきを用いたものに関する。さらに詳細には,金めっき層のピンホールに起因する孔食を防止して耐久性を高めた高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
旧来の磁気カードに代わるICカードは,機器側からのアクセスための端子を有している。この端子の表面は耐久使用のために高い耐食性および硬度が要求されるので,銅の下地にニッケルおよび金の2層めっきを施したものが一般的に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,一般的なニッケル−金めっきでは,耐食性がなおも不十分であった。具体的には,金めっき層に存在するピンホールに起因してニッケルめっき層に孔食が生じやすいという問題があった。これに対しニッケルめっき層や金めっき層を厚くする等の対策も考えられるが,コストや生産性の問題もあり,また本質的な解決とはいえなかった。
【0004】
本発明は,前記した従来のICカードのニッケル−金めっきが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,コストや生産性をあまり犠牲にしないで高耐食性を実現した高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードは,端子表面の下地金属上に被覆されたニッケルめっき層と,ニッケルめっき層上に被覆された金めっき層とを有し,ニッケルめっき層の腐食電位と金めっき層の腐食電位との差が,1800〜1840mVの範囲内にあるものである。そして,ニッケルめっき層のイオウ含有量が,0.001〜0.01重量%の範囲内にあり,ニッケルめっき層の厚さが2〜4μmの範囲内であるものである。
【0006】
本発明者が鋭意研究した結果,上述の孔食には,局部電池現象が関与していることが判明した。すなわち,一般的なニッケル−金めっきでは,金めっき層の腐食電位とニッケルめっき層の腐食電位との差が1930mVと大きく,金めっき層に少しでもピンホールがあると,卑なニッケルめっき層が局部電池現象のためにどんどん腐食して孔食となってしまうのである。なお,金や金めっき被覆直後のニッケルは,通常の腐食環境では不動態を形成しないので,標準電極電位をそのまま腐食電位と考えてもほぼ差し支えないと考えられる。さらに本発明者による研究の結果,ニッケルめっき層中のイオウ含有量(通常のニッケルめっきでは0.04重量%程度)を低減させることにより,ニッケルめっき層の腐食電位を貴にできる,すなわち金めっき層の腐食電位に近づけられることが見いだされた。
【0007】
本発明の高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードは,上記の知見に基づき,現実的に可能な範囲内でニッケルめっき層の腐食電位と金めっき層の腐食電位との差を小さくしたものである。したがって,金めっき層とニッケルめっき層との間の局部電池現象が緩やかで,耐食性が向上している。よって,金めっき層に多少のピンホールがあっても,また各めっき層の膜厚をあまり厚くしなくても,十分な耐久性を有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態のICカードの端子表面の高耐食ニッケル−金めっきは,図1に示す構造を有している。すなわち,銅層1の表面上にニッケルめっき層2が積層されており,さらにその上に金めっき層3が積層されている。このうち銅層1は,ICカード基板の配線層をなす銅パターンの一部であり,銅箔のラミネートもしくは銅めっきにより形成されたものである。
【0009】
銅層1上のニッケルめっき層2は,硫酸ニッケル,塩化ニッケル,ホウ酸を主成分とするいわゆるワット浴を用いて電気めっきにより形成された被膜である。このめっき層は,外部機器との反復的な接触に耐えるための硬度を担う役割を有している。厚さは2〜4μmの範囲内である。ニッケルめっき層2上の金めっき層3は,シアン浴を用いて電気めっきにより形成された通常の金めっき層である。このめっき層は,耐食性,外観上の装飾性を担う役割を有している。また,外部機器との接触時の接触抵抗を低減する機能をも有している。厚さは0.15μm程度である。
【0010】
そして,通常のICカード基板用のニッケルめっき層が0.04重量%程度のイオウを含有するのに対し,本実施の形態のニッケルめっき層2ではイオウ含有量を0.001〜0.01重量%の範囲内にまで低減させている。これには,光沢の付与のために用いられるイオウ系添加剤の添加量を通常よりも減らしためっき浴を用いればよい。また,硫酸ニッケルと塩化ニッケルとの配合比率を塩化ニッケルリッチ側に変更してもよい。なお本発明者は,燃焼−赤外線吸光法によりニッケルめっき層2のイオウ含有量を測定した。そのため,金めっき前の状態のサンプルからニッケルめっき層2をはがし,測定に供した。
【0011】
かかる高耐食ニッケル−金めっきは,通常の使用条件下では次のような腐食挙動を示す。すなわち,金めっき層3にはピンホールが30箇所/mm2 程度不可避的に存在している。その厚さが0.15μm程度と特に厚くはないためである。このため,図2に示すように,金めっき層3のピンホール4を起点とするニッケルめっき層2の孔食自体はやはり発生する。
【0012】
しかしながら前述のようにニッケルめっき層2のイオウ含有量が低められていることから,ニッケルめっき層2の腐食電位は金めっき層3の腐食電位と比較して1800〜1840mV程度卑であるにすぎない。このため,両めっき層間の局部電池現象は緩やかである。したがって,図2に示される孔食の進行は遅い。これにより本実施の形態に係る高耐食ニッケル−金めっきは,実用上十分高い耐久性を発揮する。もし,ニッケルめっき層2のイオウ含有量が通常と同じく0.04重量%程度あると,金めっき層3との腐食電位の差が1930mV程度もあることになる。これでは局部電池現象が著しく孔食が速く進行するので,耐久性が不十分である。なお本発明者は,金めっき前の状態のサンプルについての電解式膜厚計による電圧指示値を腐食電位としている。これは相対比較値としては標準電極電位にほぼ等しいと考えられる。
【0013】
また,本発明者が塩水噴霧試験で評価したところ,本実施の形態に係る高耐食ニッケル−金めっきは変色の発生まで約96時間を要した。これは従来型のニッケル−金めっきの場合の約12時間と比較して約8倍であり,実用上十分である。
【0014】
以上詳細に説明したように本実施の形態に係るICカードの端子表面の高耐食ニッケル−金めっきでは,銅層1上にニッケルめっき層2を有しさらにその上に金めっき層3を有する層構造において,ニッケルめっき層2の腐食電位を金めっき層3の腐食電位に近づけたので,腐食環境下においてもニッケルめっき層2と金めっき層3との間の局部電池現象が緩やかである。よって,孔食による腐食の速度が遅く,各めっき層の厚さをさほど厚くしなくても十分な耐久性を発揮する。
【0015】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【0016】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,コストや生産性をあまり犠牲にしないで高耐食性を実現した高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係るICカードの端子表面の高耐食ニッケル−金めっきの構造を示す断面図である。
【図2】ニッケルめっき層の孔食を説明する断面図である。
【符号の説明】
2 ニッケルめっき層
3 金めっき層
Claims (1)
- 高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカードにおいて, 端子表面の下地金属上に被覆されたニッケルめっき層と,
前記ニッケルめっき層上に被覆された金めっき層とを有し,
前記ニッケルめっき層の腐食電位と前記金めっき層の腐食電位との差が,1800〜1840mVの範囲内にあり,
前記ニッケルめっき層のイオウ含有量が,0.001〜0.01重量%の範囲内にあり, 前記ニッケルめっき層の厚さが2〜4μmの範囲内であることを特徴とする高耐食ニッケル−金めっきを端子表面に用いたICカード。
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