JP4475992B2 - タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
近年、供給問題による石油価格の高騰や石油の枯渇が懸念されているだけでなく、省資源や炭酸ガス排出抑制の規制強化など環境問題的観点からも、天然素材が見直される風潮にある。タイヤ業界においても例外ではなく、合成ゴムの代替材料として天然ゴムが注目されている。天然ゴムは機械的強度が強く、耐摩耗性に優れているため、トラック/バス用タイヤなど大型タイヤに多く使用されている。しかしながら、天然ゴムは側鎖に分子量の小さなメチル基しかもっておらず、ガラス転移温度(Tg)が−60℃と低いため、グリップ性能に劣るという問題があった。
これら問題を解決するため、環化天然ゴムや塩化天然ゴム、エポキシ化天然ゴムなどの天然ゴム誘導体が用いられている。たとえばタイヤ材料としては特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などにエポキシ化天然ゴムを用いる方法が提案されている。エポキシ化天然ゴムは天然ゴムの不飽和二重結合がエポキシ化されたものであり、極性基であるエポキシ基によって分子凝集力が増大するため天然ゴムよりもガラス転移温度(Tg)が高く、かつ、機械的強度や耐摩耗性、耐ガス透過性にすぐれている。特に、シリカを含むゴム組成物においては、シリカ表面のシラノール基とエポキシ化天然ゴムのエポキシ基が相互作用を起こすといわれており、そのためカーボンブラックを充填した配合に匹敵するほどの機械的強度や耐摩耗性が得られる。しかし、エポキシ化天然ゴムはヒステリシスロスが大きくウェットグリップ性能に優れている反面、シリカをもってしても転がり抵抗特性が悪いという欠点があった。さらに、シリカとエポキシ化天然ゴムの相互作用が強いために、エポキシ化天然ゴムと他のジエン系ゴムのブレンド配合系においてはシリカのエポキシ化天然ゴム側への偏在が起こったり、エポキシ化天然ゴムの極性が高いために非極性の鉱物油とは混ざりにくいなどの欠点があり、加工性に劣るだけでなく、硬度上昇や耐摩耗性が悪化するという問題があった。
特開平6−220254号公報 特開平7−90123号公報 特開平7−149955号公報 特開2001−233995号公報
本発明は、シリカの偏在やオイルとの相溶性が改善され、さらに、それらの加工性や耐摩耗性を低下させることなく、転がり抵抗特性およびウェットグリップ性能を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明は、エポキシ化天然ゴムを5〜100重量%含むゴム成分100重量部に対して、窒素吸着比表面積が100〜300m2/gのシリカを5〜150重量部、および植物由来のオイルを1〜50重量部、ならびに該シリカ100重量部に対してシランカップリング剤を1〜20重量部、および該シリカ100重量部に対して陰イオン界面活性剤を0.1〜20重量部含有するタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
また、本発明は、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、エポキシ化天然ゴム、シリカ、植物由来のオイル、シランカップリング剤および陰イオン界面活性剤を配合することで得られたタイヤトレッド用ゴム組成物は、シリカの偏在やオイルとの相溶性が改善されており、加工性および耐摩耗性を低下させることなく、転がり抵抗特性およびウェットグリップ性能を向上させることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分、シリカ、オイル、シランカップリング剤および陰イオン界面活性剤からなる。
ゴム成分は、エポキシ化天然ゴムを含有する。エポキシ化天然ゴムとしては、市販のエポキシ化天然ゴムを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化して用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては特に限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができ、例えば、天然ゴムに過酢酸や過ギ酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。エポキシ化率が5モル%未満では、ゴム組成物に対する改質効果が小さい傾向がある。また、エポキシ化率は80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。エポキシ化率が80モル%をこえると、ポリマー成分がゲル化してしまうため好ましくない。
エポキシ化天然ゴムの含有量は、ゴム成分中に5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。エポキシ化天然ゴムが5重量%未満では、充分なグリップ性能が得られないため好ましくない。また、エポキシ化天然ゴムの含有量は100重量%以下である。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、エポキシ化天然ゴム以外に用いられるゴム成分としては、天然ゴムおよび/またはジエン系合成ゴムがあげられる。ジエン系合成ゴムとしては、具体的にスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては湿式法または乾式法により製造されたシリカがあげられるが、特に制限はない。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は100m2/g以上、好ましくは120m2/g以上である。シリカのN2SAが100m2/g未満では、補強効果が小さい。また、シリカのN2SAは300m2/g以下、好ましくは280m2/g以下である。シリカのN2SAが300m2/gをこえると分散性が低下し、ゴム組成物の発熱性が増大するため好ましくない。
シリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して5重量部以上、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上である。シリカの含有量が5重量部未満では充分な低発熱性、ウェットグリップ性能が得られない。また、シリカの含有量は150重量部以下、好ましくは120重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。シリカの含有量が150重量部をこえると加工性、作業性が悪化するため好ましくない。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有する。本発明で好適に使用できるシランカップリング剤は、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤とすることができる。具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−メチルジメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−メチルジメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(4−メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(4−メチルジメトキシシリルプチル)ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトトリエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあげられる。カップリング剤添加効果とコストの両立からビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが好適に用いられる。これらシランカップリング剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100重量部に対して1重量部以上、好ましくは2重量部以上である。シランカップリング剤の含有量が1重量部未満では分散改良など充分な効果が得られない。また、シランカップリング剤の含有量は20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。シランカップリング剤の含有量が20重量部をこえるとコストがかかるのに対し、充分なカップリング効果が得られず、補強性、耐摩耗性が低下するため好ましくない。分散効果およびカップリング効果を考慮すると、シランカップリング剤の含有量は2〜15重量部であることが好ましい。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、植物由来のオイルを含有する。
植物由来のオイルとしては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、ロジン、パインオイル、ジペンテン、パインタール、トール油などの植物から得られる軟化剤があげられる。
タイヤ用ゴム組成物に用いられる一般的な軟化剤としては、プロセス油、エチレンとα−オレフィンのコオリゴマー、パラフィン・ワックス、流動パラフィン、ホワイト・オイル、ペトロラタム、石油スルホン酸塩、ギルソナイト、石油アスファルト、石油樹脂などの鉱物系軟化剤が用いられているが、環境問題などを考慮した場合、鉱物系軟化剤よりも植物系軟化剤のほうが好ましく、特に、作業性や性能への影響度合から綿実油、なたね油、大豆油が好ましい。
植物由来のオイルの含有量は、ゴム成分100重量部に対して1重量部以上、好ましくは5重量部以上である。植物由来のオイルの含有量が1重量部未満では、ゴムの可塑化効果が小さい。また、植物由来のオイルの含有量は50重量部以下、好ましくは45重量部以下である。植物由来のオイルの含有量が50重量部をこえると相溶性が低下し、加工性、滲出性が悪化するため好ましくない。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、陰イオン界面活性剤を含有する。陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、従来からフィラーや顔料の分散剤として使用される陰イオン界面活性剤を用いることができる。たとえば、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などが好ましい。
陰イオン界面活性剤の含有量は、シリカ100重量部に対して0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上である。陰イオン界面活性剤の含有量が0.1重量部未満では、充分な相溶効果が得られない。また、陰イオン界面活性剤の含有量は20重量部以下、好ましくは15重量部以下である。陰イオン界面活性剤の含有量が20重量部をこえると、硬度やモジュラスの低下が起こり、補強性や耐摩耗性が悪化するため好ましくない。
なお、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物には、前記エポキシ化天然ゴム、ジエン系ゴム、シリカ、シランカップリング剤、植物由来のオイルおよび陰イオン界面活性剤以外に、必要に応じてカーボンブラックなどの補強剤、老化防止剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、および加硫促進助剤などの通常のゴム工業で使用される配合剤を適宜配合することができる。
本発明のタイヤは、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合した本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状にあわせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
実施例1〜4および比較例1〜5
(1)各種薬品の説明
天然ゴム:RSS#3
エポキシ化天然ゴム:Kumplan Guthrie Berhad社(マレーシア)製のENR−50(エポキシ化率:50モル%)
スチレンブタジエンゴム:JSR(株)製のSBR1502(スチレン単位量:23.5重量%)
シリカ:デグッサ社製のUltrasil VN3(N2SA:210m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140
植物油:日清オイリオ(株)製の大豆白絞油
陰イオン界面活性剤1:花王(株)製のデモールEP(特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)
陰イオン界面活性剤2:花王(株)製のデモールMS(特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
表1に示す各種薬品の配合内容に従って、混練り配合し、各種供試ゴムを得た。これらの配合物を160℃で20分間プレス加硫して加硫物を得、これらについて以下に示す各特性の試験を行なった。
(2)試験方法の説明
<加工性試験>
JIS K6300に定められたムーニー粘度の測定法に従い、130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式で指数表示した、指数が大きいほど、ムーニー粘度が低く、加工性が優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
<摩耗試験>
ランボーン摩耗試験機にて、温度20℃、スリップ率20%、試験時間5分間の条件でランボーン摩耗量を測定し、各配合の容積損失を計算し、比較例1の損失量を100として下記計算式で指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性が優れる。
(摩耗指数)=(比較例1の損失量)/(各配合の損失量)×100
<転がり抵抗試験>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%の条件下で各配合のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式で指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が低減されており、転がり抵抗特性が優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
<ウェットスキッド試験>
スタンレー社製のポータブルスキッドテスターを用いてASTM E300−83の方法に従って測定し、比較例1の測定値を100として下記計算式で指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れる。
(ウェットスキッド指数)=(各配合の数値)/(比較例1の数値)×100
Figure 0004475992
表1の結果によれば、陰イオン界面活性剤および植物由来のオイルを配合することにより、加工性や耐摩耗性を低下させることなく、転がり抵抗特性およびウェットグリップ性能が改善されていることがわかる。

Claims (2)

  1. エポキシ化天然ゴムを5〜100重量%含むゴム成分100重量部に対して、
    窒素吸着比表面積が100〜300m2/gのシリカを5〜150重量部、および
    植物由来のオイルを1〜50重量部、ならびに
    該シリカ100重量部に対してシランカップリング剤を1〜20重量部、および
    該シリカ100重量部に対して陰イオン界面活性剤を0.1〜20重量部含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であり、
    前記植物由来のオイルが、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、または落花生油であるタイヤトレッド用ゴム組成物
  2. 請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
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