JP4474728B2 - ハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管およびその製造方法ならびにハイドロフォーミング部材の製造方法 - Google Patents

ハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管およびその製造方法ならびにハイドロフォーミング部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車の構造部材や足回り部材などに用いて好適な鋼管であって、とくにハイドロフォーミングにおける加工性(ハイドロフォーミング性)に優れるとともに、析出強化能を有する構造用電縫鋼管ならびにこれを用いる部材の製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の構造部材として用いられる、種々の断面形状をもつ中空部材を製造するには、従来、鋼板のプレス加工によって成形した部品同士をその溶接代であるフランジ部でスポット溶接で接合する方法が採用されてきたが、品質の面でも、生産効率の面でも改善が求められている。
一方、最近になり、構造用の中空部材に対して、衝突時のより高い衝撃吸収能が求められるようになり、素材として用いられる鋼板が一層高強度化してきた。このため、従来のプレス成形による方法では、成形欠陥がなく、また成形品の形状や寸法精度が良好な部材を製造することが次第に困難になってきている。
【0003】
このような問題を解決するための新しい成形方法として、最近、ハイドロフォーミングが注目されている。ハイドロフォーミングは、鋼管の内部に高圧液体を注入して塑性加工を行う方法であり、鋼管の断面寸法を拡管加工などにより変化させて、複雑形状部材の一体成形をはかるとともに、強度・剛性を高める機能をもつ優れた成形法である。
ところで、ハイドロフォーミングに供される鋼管としては、一般に、通常の鋼管と同様に、C:0.20〜0.10%の中、低炭素鋼からなる素材で製造した電縫鋼管が用いられることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかるC量を含む電縫鋼管にハイドロフォーミングを施しても、素材そのものの加工性がよくないために、十分な拡管率が得られないという問題があった。
一方、電縫鋼管の素材そのものの加工性を高めるために、炭素量を著しく低減した極低炭素鋼を素材に用いることが考えられる。しかし、極低炭素電縫鋼管の場合には、ハイドロフォーミング性はよいものの、溶接に起因した別の問題を生じることとなる。すなわち、極低炭素電縫鋼管では、鋼管製造時における継目部の溶接熱により、熱影響部の結晶粒が粗大化して軟化し、拡管成形での変形が局部的に集中して、素材がもつ高延性を十分に発揮できないこと、また、ハイドロフォームした部材を他の部材と溶接した場合に、同様な軟化が生じて部材としての強度が十分に得られないことなどである。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術が抱えていたこれらの問題に鑑み、ハイドロフォーミングに適した電縫鋼管についての新たな提案を行うものである。とくに、この発明は、ハイドロフォーミング性に優れるとともに、溶接軟化を生じないばかりか、ハイドロフォーミング後の熱処理で析出強化する、いわゆる析出強化能を具えた、構造用電縫鋼管とこの電縫鋼管を用いた部材について提案することを目的とする。
また、本発明鋼管が目指す具体的な目標特性は、(鋼管のTS)×拡管率(軸方向圧縮条件)で表したハイドロフォーミング性が12000 MPa・%以上であり、さらに歪み量7%のハイドロフォーミング後、500 ℃×5分の熱処理を行う歪み時効熱処理による強度上昇が100 MPa以上であるものとする。なお、歪み量7%のハイドロフォーミング後の強度よりも前記歪み時効熱処理後の強度が50MPa以上高いことがさらに好ましい。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を達成するために、電縫鋼管の成分組成、製造方法などについて種々の検討を重ねた。その結果、C量を0.01〜0.05%未満の範囲としたセミ極低炭素材を用いること、Cuを適正量含有させること、継ぎ目部を電気抵抗溶接して造管した後に絞り率0.3 〜10%のサイジング(縮径)を行うことが有効であることを見いだした。本発明は上記知見を基にして完成したものであり、その要旨構成は次のとおりである。
【0007】
(1)鋼組成が、質量%(以下単に、%)でC:0.01〜0.05%未満、Si:1.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Al:0.01〜0.1%を含み、Cu:0.5〜2.5%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の鋼組成からなるスラブを熱間圧延し、圧延終了後2秒以内に20℃/s以上で急冷して700℃以下で巻き取り、または、上記スラブを熱間圧延後さらに冷間圧延した冷延鋼板の焼鈍後に700℃以上の領域を10℃/s以上で急冷して、Cuの80%以上を固溶状態とした熱延鋼板または冷延鋼板を素材とし、これを円筒状の形に成形し、両幅端部同士を突き合わせて電気抵抗溶接し、次いで、外周長の絞り率で0.3〜10%のサイジングを施した電縫鋼管であって、引張強度(MPa)×拡管率(%)が12000MPa・%以上で、歪み量7%のハイドロフォーミング後500℃×5分の熱処理を行う歪み時効処理による、鋼管の強度上昇量が100MPa以上であることを特徴とするハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管。
【0008】
(2)上記(1)において、鋼組成が、上記成分のほか、下記群〜D群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とするハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管。

群:Nb:0.005〜0.040%、Ti:0.005〜0.50%、B:0.0005〜0.020%のうちの1種または2種以上
C群:Cr:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種
D群:Ca:0.0020〜0.02%、REM:0.0020〜0.02%のうちの1種または2種
【0009】
(3)C:0.01〜0.05%未満、Si:1.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.15%以下、S:0.015%以下、Al:0.01〜0.1%を含み、Cu:0.5〜2.5%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブを熱間圧延し、圧延終了後2秒以内に20℃/s以上で急冷して700℃以下で巻き取り、または、上記スラブを熱間圧延後、冷間圧延した冷延鋼板を再結晶温度以上で焼鈍したのち、700℃以上の領域を10℃/s以上で急冷し、含有するCuの80%以上を固溶状態として含む熱延または冷延の帯状素材を円筒状に成形した後、継目部を電気抵抗溶接し、次いで、外周長の絞り率で0.3〜10%のサイジングを施すことにより、引張強度(MPa)×拡管率(%)が12000MPa・%以上で、歪み量7%のハイドロフォーミング後500℃×5分の熱処理を行う歪み時効処理による鋼管の強度上昇量が100MPa以上である、ハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管の製造方法。
(4)上記成分組成に加えてさらに、下記〜D群のうちの少なくとも1群の成分を含有することを特徴とする上記(3)に記載の構造用電縫鋼管の製造方法。

群;Nb:0.005〜0.040%、Ti:0.005〜0.50%、B:0.0005〜0.020%のうちの1種または2種以上
C群;Cr:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種
D群;Ca:0.0020〜0.02%、REM:0.0020〜0.02%のうちの1種または2種
【0010】
(5)上記(3)または(4)に記載の方法により得た電縫鋼管に、ハイドロフォーミングを施し、これに200℃以上700℃以下の温度域で1分以上60分以下の熱処理を施すことを特徴とするハイドロフォーミング部材の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明における鋼成分の限定理由、電縫鋼管の製造方法などについて説明する。
C:0.01〜0.05%未満
Cは、鋼の強化に寄与する反面、成形性を低下させる元素であり、とくにC含有量が0.05%以上では成形性の低下が大きくなる。一方、0.01%に満たない含有量では、電縫鋼管製造時の抵抗溶接により溶接熱影響部の結晶粒が粗大化し、また、ハイドロフォーミング部材をアーク溶接した際にも同様に結晶粒が粗大化し、強度低下や不均一な変形の原因となる。このため、C量は0.01〜0.05%未満の範囲とする。
【0012】
Si:1.0 %以下
Siは、鋼の強化に有用な元素であり、所望の強度に応じて添加する。しかし、1.0 %を超えて添加すると、鋼管用の素材となる熱延または冷延鋼板の表面性状が悪化し、結局、鋼管の表面性状が顕著に悪化し、結果的にハイドロフォーム時の耐バースト性を低下させるので、1.0 %以下の範囲で添加する。
【0013】
Mn:3.0 %以下
Mnは、表面性状および溶接性を低下させることなく、鋼板ひいてはハイドロフォーミング部材の強度を向上させるのに有効な元素であるが、3.0 %を超える添加はハイドロフォーム時の拡管率を低下させる。したがって、Mn含有量は3.0 %以下%とする。
【0014】
P:0.15%以下
Pは、強度の向上に有効な元素であるが、0.15%を超えて添加すると溶接性を顕著に劣化させる。とくに、Pによる強化作用がさほど必要ではないとき、またC量が高く溶接性の低下が懸念されるときには、0.02%以下に制限するのが望ましい。
【0015】
S:0.015 %以下
Sは、鋼中で非金属介在物として存在し、これが起点となってハイドロフォーム時に鋼管を破断させる恐れがある。このため、S量は低いほど耐バースト性が改善され0.015 %以下とすればその効果があらわれる。なお、耐バースト性の一層の向上には、好ましくは0.010 %以下、さらに好ましくは0.005 %以下に制限するのがよい。
【0016】
Al:0.01〜0.1 %
Alは、鋼の脱酸作用を有するほか、結晶粒の粗大化抑制のために有用な元素であるので、0.01%以上の添加が必要である。一方、0.1 %を超えて多量に添加しても、これらの効果が飽和するだけでなく、かえって鋼板の表面欠陥を生じてしまう。よって、Alは0.01〜0.1 %の範囲で含有させる。
【0017】
Cu:0.5 〜2.5 %、添加量の80%以上が固溶Cu
Cuは、造管、サイジングおよびハイドロフォーミングの工程に次いで行う熱処理によって、強度の上昇をはかるのに有用な元素である。しかも、Cu添加による強化は、ハイドロフォーミング時の拡管率を大きくは低下させないという利点を有している。こうした効果を発揮させるには、0.5 %以上、好ましくは0.8 %以上のCuを添加することと、添加量の80%以上、好ましくは90%以上は固溶状態で存在させることが必要である。一方、2.5 %を超えてCuを添加しても、強度上昇効果は飽和してしまうので、2.5 %を上限として添加する。
【0019】
Nb:0.005 〜0.040 %、Ti:0.005 〜0.50%、B:0.0005〜0.020 %
Nb、TiおよびBは、いずれも結晶粒の微細化に有用な元素である。このような効果は、Nb:0.005 %以上、Ti:0.005 %以上、B:0.0005%以上の添加であらわれる。しかし、Nb:0.040 %、Ti:0.50%、B:0.020 %を超えて添加してもその効果が飽和するだけでなく、鋼の熱間変形抵抗を増大して製造性を阻害する。したがって、これらの元素は上記範囲で添加する。
【0020】
Cr:0.02〜1.0 %、Mo:0.02〜1.0 %
Cr、Moは、鋼管の延性を損なうことなく、強度を向上させるのに有用な元素である。このような効果は、いずれも0.02%以上の添加で得られるが、1.0 %を超えて添加してもその効果が飽和するほか、鋼の熱間加工性および冷間加工性を低下させる。したがって、これら元素は上記範囲で添加する。
【0021】
Ca:0.0020〜0.02%、 REM:0.0020〜0.02%
Ca、 REMは、鋼中のSを主体とした非金属介在物の形態を球状にして、その切欠作用を減少して、耐バースト性を向上させるのに有用な元素である。こうした効果は、Ca、 REMともに0.0020%以上の添加で得られるが、0.02%を超えて添加しても効果が飽和するかやや低下する傾向となる。したがって、これら元素は上記範囲で添加する。なお、Ca、 REMの両者を併用する場合には合計量で0.03%以下の範囲で添加するのが好ましい。
【0022】
また、本発明の鋼管は、引張強度(MPa)×拡管率(%)が 12000 MPa・%以上であるものとする。鋼管の引張強度が小さいと、高い衝撃吸収能が得られず、また、拡管率が小さいと、ハイドロフォーミングにより成形できる形状が限定されてしまう。本発明では、これらの2つの特性がバランスしていることが必要であるので、引張強度(MPa)×拡管率(%)を 12000 MPa・%以上に限定する。なお、引張強度は350MPa以上、拡管率は28%以上であることが好ましい。
ここで拡管率とは、外径do の鋼管を変形部長さlc =2do として、管端から管内面に液体を供給して液圧を負荷し、円形断面自由バルジ変形させ、バーストした時の最大外径dmax より、(dmax −do )/do ×100 で定義するものとする。この拡管率の測定は、自由バルジ試験により行なう。この自由バルジ試験は、例えば、図1および図2に示される金型2a,2bを、図3に示す構成のハイドロフオーミング加工装置を用いて、拡管を行なうことにより実施できる。
【0023】
図1は金型の斜視図であり、図2は金型の断面図である。金型2a,2bはそれぞれ、長さ方向両端側は、鋼管の外径do に略等しい径の半筒状面で構成される鋼管保持部3を有し、長さ方向中央部には、径dc の半円筒状変形部4および傾斜角θ=45°のテーパー状変形部5とよりなる変形部6を有し、変形部6の長さlc がdo の2倍となっている、上部金型2aおよび下部金型2bからなる。半円筒状変形部4の径dc は、鋼管の外径do の2倍程度あればよい。図3に示すように、この上部金型2aと下部金型2bとで、金型それぞれの鋼管保持部3に鋼管1が嵌まるように、鋼管1を挟み込む。この状態で、鋼管1の両端から該鋼管1の内面側に、軸押シリンダ7aを介して水等の液体を供給して、液圧Pを付与し、円形断面自由バルジ変形させてバーストした時の最大外径dmax を測定する。なお、図3中の8、9はそれぞれ金型2a、2bが鋼管を挟み込んだ状態に保持しておくための、金型ホルダ、アウターリングである。
【0024】
なお、ハイドロフォームでは、管の両端を固定する場合と、管の両端から圧縮力を加える場合(軸方向圧縮という)とがあるが、一般に、管端圧縮の方が高い拡管率を得ることが可能であり、本発明においても、高い拡管率が得られるよう、管の両端から圧縮力を適宜負荷するものとする。この圧縮力の負荷は、図3において、軸押シリンダ7a,7bに対して軸方向に圧縮力Fを負荷することにより実施できる。
【0025】
さらに、本発明の鋼管は、歪み量7%のハイドロフォーミング後、550 ℃×5分の熱処理を行なう歪み時効処理により、引張強度が100MPa以上上昇する特性を有するものとする。ここで、歪み量7%のハイドロフォーミングは、図2に示した金型において、半円筒状変形部4の径dc が鋼管の外径do の1.07倍のものを用い、鋼管を金型の変形部6に沿うまでハイドロフォームを行なうことにより実施する。
この歪み時効処理により引張強度が100MPa以上上昇するという上記の特性を有することにより、ハイドロフォームによる成形後の熱処理を行えば、成形部品が高強度化して、高い耐衝突性を備えるようになるのである。
なお、ハイドロフォーミングにより成形した部品に施す、高強度化するための熱処理条件は、200 〜700 ℃の温度範囲で、1〜60分の処理で強度上昇効果があるが、より大きな強度上昇量を得るには500 ℃×5分の条件が最も好ましい。
【0026】
次に、本発明の鋼管の製造方法について説明する。
上述した成分組成にしたがう鋼を溶製した後、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法によりスラブとする。スラブは、熱間圧延により熱延鋼板とするか、熱間圧延の後、さらに冷間圧延−焼鈍により冷延鋼板とする。このようにして得られた熱延鋼板または冷延鋼板を素材として、ロール成形または曲げ加工により、ほぼ円筒状の形に成形し、両幅端部同士を突き合わせた継目部を電気抵抗溶接にて接合する。
電気抵抗溶接に次いで、外周長の絞り率で0.3 〜10%のサイジングを行う。サイジングを行う目的は、電縫鋼管をハイドロフォーミングに供するために、十分な形状精度を得ることと、材料変形の均一性を確保することにある。このような目的を達成するには、少なくとも0.3 %の絞り率が必要であるが、10%を超えて行うと顕著な加工硬化により鋼管としての加工性の低下を招いてしまう。したがって、電気抵抗溶接後は、外周長の絞り率で0.3 〜10%のサイジングを行うものとする。
【0027】
本発明においては、ハイドロフォーミングの後の熱処理においてCuによる析出強化作用を発揮させるため、Cu添加量の80%以上、好ましくは90%以上を固溶状態で存在させることが重要である。そのため、上記工程において、とくに熱間圧延工程では、圧延終了後に少なくとも2秒以内に急冷(おおむね20℃/s以上)を行い、700 ℃以下の低温で巻き取ってCuの析出を防止する必要がある。また、冷延鋼板は焼鈍後に700 ℃以上の領域を同じく急冷(おおむね10℃/s以上)することでCuの析出を防止することが必要となる。
また、こうしたCuによる析出強化作用を発揮させるには、鋼板を用いての造管ののち、サイジングおよびハイドロフォーミングの工程を経て、析出処理のための熱処理を行うことが必要となる。かかる熱処理の条件は200 ℃以上700 ℃以下の温度で1分以上60分以下とすることが望ましい。
【0028】
【実施例】
表1に示す化学成分の鋼を溶製してスラブとした。このスラブを1220℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0 mmの熱延鋼板とするか、または、熱間圧延に引き続き、酸洗−冷間圧延−連続焼鈍の工程により板厚2.0 mmの冷延鋼板とした。ここで、熱間圧延後の冷却は、2秒以内に開始し、600 ℃以下の温度で巻き取った。また、冷延鋼板については、各々の再結晶温度(本鋼板については650 〜700℃)以上で焼鈍したのち、10℃/s以上の冷却速度で500 ℃以下まで冷却した。
これらの熱延鋼板または冷延鋼板を、円筒状に成形後、その継目部を電気抵抗溶接して、直径63.5mm、肉厚2.0 mmの鋼管とし、次いで外周長の絞り率で5%のサイジングを行った。
【0029】
得られた電縫鋼管よりJIS12号試験片を採取し、引張強度を求めた。また、鋼管を500 mmの長さに切断しハイドロフォーム用の試験体とした。この試験体に、図1〜3で示したように、両端から水を供給して、円形断面自由バルジ変形させて、バーストしたときの拡管率を測定した。ここで、金型寸法は、図2におけるlc が127.0 mm、dc が127.0 mm、rd が5mm、lo が550 mm、θが45°のものとした。
各電縫鋼管の特性は、拡管率だけでなく、素材強度とのバランスを考慮して、鋼管の強度×拡管率でも表した。鋼管の強度は電縫鋼管よりJIS12号試験片を採取し、引張強度(TS)を測定した。
また、サイジングを施した電縫鋼管を用いて、歪み量7%でハイドロフォーミングを施し、次いで500℃、5分の析出熱処理を施し、これら各工程終了後の引張強度(TS)を、鋼管の変形部位よりJIS12号試験片を切り出してそれぞれ測定した。
【0030】
【表1】
Figure 0004474728
【0031】
得られた結果を表2に示す。表1、2から、本発明にしたがう電縫鋼管は、素材強度×拡管率が高く、ハイドロフォーミング性が優れているとともに、析出強化による強度上昇量が大きいことがわかる。すなわち、発明例では、鋼管の引張強度×拡管率の値で12000 MPa・%以上が得られ、また析出熱処理後のTS(D)と鋼管のTS(B)との差が105MPa以上、という大きな値が得られる。
一方、化学成分が適正でない比較例は、ハイドロフォーミング性が劣るか、強度上昇量が少ないかのいずれかの難点を抱えており、ハイドロフォーミング部材の構造部材としての性能に欠けるものである。
【0032】
【表2】
Figure 0004474728
【0033】
また、表1中の管No. 1の鋼管について、サイジングの際の絞り率を、0.1 〜12%の間で変化させた場合の、電縫管のTS、拡管試験結果、歪み量7%のハイドロフォーミング後のTS、析出熱処理後のTS、析出強化量を表3に示す。
【0034】
【表3】
Figure 0004474728
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ハイドロフォーミング性に優れ、しかも大きな析出強化能を有する構造用電縫鋼管を提供することが可能になる。したがって、本発明は、ハイドロフォーム後、熱処理して製造される構造部材の高品質、安定生産に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】自由バルジ試験に用いる金型を示す斜視図である。
【図2】自由バルジ試験に用いる金型を示す断面図である。
【図3】自由バルジ試験に用いるハイドロフォーミング加工装置の構成の例を示す断面図である。

Claims (5)

  1. 鋼組成が、質量%で
    C:0.01〜0.05%未満、
    Si:1.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    P:0.15%以下、
    S:0.015%以下、
    Al:0.01〜0.1%を含み、
    Cu:0.5〜2.5%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の鋼組成からなるスラブを熱間圧延し、圧延終了後2秒以内に20℃/s以上で急冷して700℃以下で巻き取り、または、上記スラブを熱間圧延後さらに冷間圧延した冷延鋼板の焼鈍後に700℃以上の領域を10℃/s以上で急冷して、Cuの80%以上を固溶状態とした熱延鋼板または冷延鋼板を素材とし、これを円筒状の形に成形し、両幅端部同士を突き合わせて電気抵抗溶接し、次いで、外周長の絞り率で0.3〜10%のサイジングを施した電縫鋼管であって、引張強度(MPa)×拡管率(%)が12000MPa・%以上で、歪み量7%のハイドロフォーミング後500℃×5分の熱処理を行う歪み時効処理による、鋼管の強度上昇量が100MPa以上であることを特徴とするハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管。
  2. 請求項1において、鋼組成が、上記成分のほか、下記群〜D群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とするハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管。

    群:Nb:0.005〜0.040%、Ti:0.005〜0.50%、B:0.0005〜0.020%のうちの1種または2種以上
    C群:Cr:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種
    D群:Ca:0.0020〜0.02%、REM:0.0020〜0.02%のうちの1種または2種
  3. 鋼組成が、質量%で
    C:0.01〜0.05%未満、
    Si:1.0%以下、
    Mn:3.0%以下、
    P:0.15%以下、
    S:0.015%以下、
    Al:0.01〜0.1%を含み、
    Cu:0.5〜2.5%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブを熱間圧延し、圧延終了後2秒以内に20℃/s以上で急冷して700℃以下で巻き取り、または、上記スラブを熱間圧延後さらに冷間圧延した冷延鋼板の焼鈍後に700℃以上の領域を10℃/s以上で急冷して、Cuの80%以上を固溶状態とした、熱延または冷延の帯状素材を円筒状に成形した後、継目部を電気抵抗溶接し、次いで、外周長の絞り率で0.3〜10%のサイジングを施すことにより、引張強度(MPa)×拡管率(%)が12000MPa・%以上で、歪み量7%のハイドロフォーミング後500℃×5分の熱処理を行う歪み時効処理による鋼管の強度上昇量が100MPa以上である、ハイドロフォーミング性に優れ、析出強化能を有する構造用電縫鋼管の製造方法。
  4. 上記成分組成に加えてさらに、下記〜D群のうちの少なくとも1群の成分を含有することを特徴とする請求項3に記載の構造用電縫鋼管の製造方法。

    群;Nb:0.005〜0.040%、Ti:0.005〜0.50%、B:0.0005〜0.020%のうちの1種または2種以上
    C群;Cr:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種
    D群;Ca:0.0020〜0.02%、REM:0.0020〜0.02%のうちの1種または2種
  5. 請求項3または4に記載の方法により得た電縫鋼管に、ハイドロフォーミングを施し、これに200℃以上700℃以下の温度域で1分以上60分以下の熱処理を施すことを特徴とするハイドロフォーミング部材の製造方法。
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