JP4474179B2 - 転造装置、モータの製造方法、及びシャフト製造方法 - Google Patents

転造装置、モータの製造方法、及びシャフト製造方法 Download PDF

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本発明は、一対のダイスによりワークを塑性変形させてワークを転造加工するための転造装置、このような転造加工により外周部にねじ山が形成されたシャフトを有するモータの製造方法、及び、このようなシャフトの製造方法に関する。
車両のワイパ装置やパワーウインドウ装置等の駆動源としては、モータを含めて構成されたモータアクチュエータが用いられる。モータアクチュエータは、モータと減速ギヤ列を含めて構成されている。
モータは出力軸を備えており、モータが作動することで発生した回転力により出力軸が自らの軸周りに回転する。出力軸の先端側にはギヤが設けられており、このギヤが減速ギヤ列の第1段目のギヤに噛み合っている。出力軸の回転は、その先端に設けられたギヤを介して減速ギヤ列の第1段目のギヤに伝えられる。減速ギヤ列に伝えられた回転力は減速ギヤ列において減速され、減速ギヤ列の最終段のギヤに連結された駆動軸から出力される。
ところで、このようなモータアクチュエータにおいては、出力軸の先端側にウオームギヤを設けると共に、減速ギヤ列の第1段目のギヤをウオームホイールとし、これにより、回転力を大幅に減速させたり、回転の軸の向きを変えたりしている。
また、この種のモータの出力軸には、金属製の出力軸に直接ウオームギヤを形成した構成もある。このような金属製の出力軸に直接ウオームギヤを形成するための一手段としては、所謂「転造加工」がある。ギヤやねじ山を転造加工するための装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示された転造盤(転造装置)は、一対のロールダイスを備えている。これらのロールダイスは互いに平行に配置された主軸にそれぞれ一体的に取り付けられている。ロールダイスは互いの外周面との間に加工するワーク(例えば、モータの出力軸等)の外径寸法未満の空隙が形成されるように両主軸間の位置が設定されており、モータ等の駆動力で各主軸が回転すると、一対のロールダイスがそれぞれ回転する。
各ロールダイスの外周部にはその軸方向に沿って凹凸が形成されており、両ロールダイスが回転した状態で、ワークが両ロールダイスの間に入り込むと、両ロールダイスの外周面に形成された凹凸により、ワークの外周部が塑性変形させられる。さらに、これらのロールダイスの回転に連動してワークをロールダイスの軸方向に移動させると、連続的にワークの外周部が塑性変形され、これにより、ワークの外周部にギヤやねじ山が形成される。
一方、このような転造加工においては、加工開始時における両ロールダイスの回転位置が加工品質に大きな影響を与える。すなわち、両ロールダイスの外周面に形成された凹凸は、ロールダイスの軸心を中心とした螺旋状に形成されており、凹凸の位置はロールダイスの周方向の位置に応じて軸方向に漸次変位している。
このため、一方のロールダイスの回転位置に対して他方のロールダイスを予め設定されている所定の回転位置に位置合わせしておかないと、一方のロールダイスで成されるワークの塑性変形と、他方のロールダイスで成される塑性変形とが、ロールダイスの軸方向にずれてしまい、加工品質が低下してしまう。
そこで、ロールダイスの軸方向一方の端面に位置合わせの目印となる刻線を施し、目視によりロールダイスの回転位置を調整していた。また、上記の特許文献1では、このような回転位置の調整を容易にするため、転造盤に回転調整装置を設けている。
回転調整装置は転造加工用のモータとは別のモータを備えている。回転調整装置のモータは、一対の主軸の一方に対して連結及び切り離しが可能に設けられている。両主軸は互いに連動して回転するべくギヤ等から成る駆動力伝達機構を介して機械的に連結されていると共に、この連結は切り離しが可能とされている。
ロールダイスの回転位置を調整する際には、一方のロールダイスの刻線に対して他方のロールダイスの刻線が所定の位置に達するまで、回転調整装置のモータの駆動力により一方の主軸又は両主軸を微動回転させる。
特開平10−137887号公報
上記の特許文献1では、確かに、刻線を目視しながら回転調整装置を操作できるため、この意味では回転位置の調整が容易にはなる。しかしながら、目視により回転位置の調整を行っていると言う点では、それ以前の従来の回転位置調整の方法となんら変わっていない。このような目視に頼る回転位置調整は作業者の熟練を要するため、作業効率の向上を図ることが困難であるうえ、作業者毎の調整誤差が生じ、加工品質が安定しない。
本発明は、上記事実を考慮して、作業効率を向上でき、しかも、作業者毎の調整誤差を効果的に低減できる転造加工装置、シャフトの製造効率がよく、しかも、シャフトの加工品質を安定したモータの製造方法、及び、製造効率がよく、加工品質が安定したシャフトの製造方法を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係る転造装置は、互いに対向した状態で平行に配置されると共に、軸方向に凹凸が交互に並ぶ加工部が各々に形成された一対のダイスを有し、前記一対のダイスの間にワークを配置して前記一対のダイスの各々を前記軸方向周りに回転させることで、前記一対のダイスの前記加工部が前記ワークを塑性変形させて転造加工する転造装置であって、前記方向に沿った前記一対のダイスの一方の前記加工部に対する他方の前記加工部の相対的な位置関係に基づき、前記一対のダイスの少なくとも一方の回転角度位置の補正値を演算するダイス補正手段を備える、ことを特徴としている。
請求項1に記載の本発明に係る転造装置によれば、一対のダイスの間にワークを入り込ませると共にワークをそれぞれ加工方向に移動させると、このワークの所定方向に沿って各ダイスに形成された凹凸状の加工部が、この凹凸に応じてワークの外周部を塑性変形させる。これにより、ワークが転造加工される。
ここで、本発明に係る転造装置では、ダイスの軸方向に沿った一対のダイスの一方の加工部に対する他方の加工部の相対的な位置関係に基づいて、ダイス補正手段によって少なくとも一方のダイスに対する他方のダイスの回転角度のずれである補正値が演算される。加工部はダイスの軸方向に沿って連続した凹凸となっているため、補正値に基づき少なくとも一方のダイスの回転角度を補正することで、一方のダイスの加工部の凹凸に対して他方のダイスの加工部の凹凸の位相が揃うか、又は、転造加工に適した所定の位相差を生じさせることができる。
このように、ダイスの回転角度が補正されることで、ワークの加工精度が向上する。しかも、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、ダイスの回転角度調整に関して作業者毎の調整の誤差が極めて少なく、転造加工の品質を安定させることができる。
さらに、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、作業者の経験や既に加工が終了したワークの状態に基づいてダイスの回転角度を補正する等に比べて補正作業を迅速に行なうことができ、転造加工の作業効率を飛躍的に向上させることができる。
請求項2に記載の本発明に係る転造装置は、請求項1に記載の本発明において、前記一対のダイスの各々に対応して設けられ、予め設定された所定の検出位置で、前記方向に沿った前記凹凸の状態を検出する一対の検出手段と、前記一対の検出手段の各々の検出結果の差異に基づいて、前記補正値を演算する演算手段と、を含めて前記ダイス補正手段を構成した、ことを特徴としている。
請求項2に記載の本発明に係る転造装置では、一対のダイスの各々に対応して検出手段が設けられる。これらの検出手段は予め設定された所定の検出位置に設けられており、この検出位置にて加工部における凹凸の状態、すなわち、加工部の検出位置に対応した部分における凹凸の位置や高さ(深さ)等が検出手段により検出される。
さらに、本発明に係る転造装置では、両検出手段での検出結果の差異を演算し、この差異に基づき補正値が演算される。この補正値に基づきダイスの回転角度を補正することで、一方のダイスの加工部の凹凸に対して他方のダイスの加工部の凹凸の位相が揃うか、又は、転造加工に適した所定の位相差を生じさせることができ、ワークの加工精度を向上させることができる。
請求項3に記載の本発明に係る転造装置は、請求項2に記載の本発明において、先端が前記加工部に対向して設けられると共に、前記加工部に対して接離移動可能な探触子を含めて前記検出手段を構成し、前記探触子の先端が前記加工部に当接した状態での前記加工部に対して接離する方向及び前記ダイスの回転軸方向の少なくとも何れか1つの方向に沿った先端の位置を前記検出手段が検出する、ことを特徴としている。
請求項3に記載の本発明に係る転造装置では、検出手段は加工部に対して接離する方向及びダイスの軸方向の少なくとも何れか1つの方向に移動可能な探触子を含めて構成される。補正値を得るにあたり、本発明に係る転造装置では、探触子の先端が加工部に接近させられ加工部に探触子の先端が当接させられる。
上記のように、加工部はワークの所定方向に沿って連続した凹凸により構成されるため、例えば、探触子がダイスの軸方向に変位可能であれば、仮に凹凸の凹の底部以外の部分に探触子が接触すれば、探触子は凹の底部に到達するまでダイスの軸方向に変位する。この軸方向に沿った探触子の変位が検出手段によって検出され、補正値の演算に供される。
一方、例えば、探触子が加工部に対して接離する方向に変位可能であれば、凹凸の凹に探触子の先端が接触したならば加工部への探触子の接近移動量が大きく、凹凸の凸に探触子の先端が接触したならば加工部への探触子の接近移動量が小さくなる。このように、連続した凹凸におけるどの位置に探触子の先端が接触したかにより、加工部に対して接離する方向に沿った先端の位置が変わる。この先端の位置が検出手段により検出され、補正値の演算に供される。
請求項に記載の本発明に係る転造装置は、請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の本発明において、前記一対のダイスの一方を支持する支持軸が取り付けられた固定軸台と、前記一対のダイスの他方を支持する支持軸が取り付けられると共に、前記ダイスの軸方向及び前記他方のダイスを前記一方のダイスに対して接離させる接離方向に移動可能な可動軸台と、前記固定軸台に設けられた前記一方のダイスに対してのみ駆動力を付与して前記一方のダイスを回転させる固定軸台側駆動手段と、前記可動軸台に支持されると共に、前記可動軸台に設けられた前記他方のダイスに対してのみ駆動力を付与して前記他方のダイスを回転させる可動軸台側駆動手段と、前記可動軸台に支持されると共に、前記可動軸台を前記軸方向及び前記接離方向に移動させる調整手段と、を備えることを特徴としている。
請求項に記載の本発明に係る転造装置によれば、一対のダイスの一方は固定軸台に設けられた支持軸に支持され、一対のダイスの他方は可動軸台に設けられた支持軸に支持される。可動軸台は、ダイスの軸方向及び一対のダイスの一方に対して他方を接離させる方向に移動可能であり、調整手段を操作することで可動軸台が移動させられる。
したがって、例えば、固定軸台及び可動軸台の双方の支持軸にダイスを支持させた状態で、先ず、転造加工するワークの形状や成型後の形状等に基づき調整手段を操作して、一対のダイスの一方に対して他方が接離する方向に可動軸台が移動させられる。
さらに、一対のダイスの一方に対して他方をその軸方向に変位させるために、調整手段を操作して可動軸台をダイスの軸方向に適宜に移動させる。この可動軸台の軸方向に沿った移動により、例えば、一対のダイスの一方に対する他方の大まかな位置調整が行われる。
この状態で、ダイス補正手段により一対のダイスの一方に対する他方の補正値が演算される。さらに、この補正値に基づき、調整手段によって可動軸台が軸方向に移動させられ、又は、可動軸台側駆動手段の駆動力で一対のダイスの他方が回転させられて他方のダイスの位置が調整される。
ここで、本発明に係る転造装置によれば、調整手段を備えていることで、一対のダイスの一方に対する他方の大まかな位置調整がダイス補正手段による補正値の演算前に行なうことができる。このような大まかな位置調整を予め行なうことで、補正値を小さくでき、補正値に基づく位置調整を速やかに行なうことができ、結果的には、補正値のみに頼るよりも位置調整に要する時間を短縮でき、工数の軽減を実現できる。
さらに、本発明に係る転造装置では、固定軸台側駆動手段の駆動力は固定軸台の支持軸に支持されたダイスにのみ駆動力を付与して回転させ、可動軸台側駆動手段の駆動力は可動軸台の支持軸に支持されたダイスにのみ駆動力を付与して回転させる。このため、補正値演算後のダイスの位置調整で、ダイスを回転させなくてはならない場合には、可動軸台側駆動手段を作動させれば、可動軸台側のダイスのみが回転して、位置調整を行なうことができる。
また、本発明に係る転造装置では、可動軸台側駆動手段は可動軸台に支持されているため、可動軸台を移動させても、可動軸台の支持軸やダイスに対する可動軸台側駆動手段の位置関係が変わらない。このため、駆動手段とダイスとの位置関係が変わるような構造に比べて、可動軸台側駆動手段からダイスまでの回転駆動力の伝達機構を簡素化できる。
しかも、駆動手段とダイスとの位置関係が変わる構造では、位置関係の変化に伴い減速比等に誤差が生じることが懸念されるが、本発明に係る転造装置では、可動軸台の支持軸やダイスに対する可動軸台側駆動手段の位置関係が変わらないため、上記のような誤差が生じることはなく、一定の比率で正確に回転駆動力を伝達できる。
請求項に記載の本発明に係るモータ製造方法は、ステータにて生じた磁界とロータにて生じた磁界との相互作用により前記ロータを回転させて前記ロータに固定されて先端側にねじ山が形成されたシャフトを回転させるモータを製造するためのモータ製造方法であって、前記シャフトの軸方向に沿って連続した凹凸状の加工部が形成され、当該加工部が前記シャフトを介して互いに対向する一対のダイスを用いると共に、当該一対のダイスの一方に対する他方の前記軸方向に沿った相対的な位置関係を検出し、当該検出結果に基づいて少なくとも一方の前記ダイスの回転角度の補正値を演算し、当該演算結果に基づき少なくとも一方の前記ダイスの回転角度を補正した状態で、前記一対のダイスの各々を回転させつつ前記シャフトを先端側から前記一対のダイスの間に挿入し、前記一対のダイスの各加工部により前記シャフトに前記ねじ山を転造加工する、ことを特徴としている。
請求項に記載の本発明に係るモータ製造方法によって製造されるモータは、ステータ及びロータの双方にて生じた磁界の相互作用でロータと共に回転するシャフトの外周部にはねじ山が施される。
このねじ山は、一対のダイスの間にシャフトを挿入しつつ、各ダイスをそれぞれ所定の方向に移動させることで形成される。各ダイスにはシャフトの軸方向に沿って連続した凹凸から成る加工部が形成されており、上記のように、一対のダイスの間にシャフトを挿入すると共に、各ダイスをそれぞれ所定の方向に移動させると加工部の凹凸によりシャフトの外周部を塑性変形させられ、これにより、ねじ山が形成される(すなわち、転造加工によりねじ山が形成される)。
ここで、シャフトにねじ山を形成するにあたり、ダイスの軸方向に沿った一対のダイスの一方に対する他方の相対的な位置関係が検出される。さらに、この検出結果に基づいて少なくとも一方のダイスの回転角度の補正値が演算される。この補正値に基づいてダイスの回転角度が補正され、このダイスの回転角度補正により一方のダイスの加工部の凹凸に対して他方のダイスの加工部の凹凸の位相が揃うか、又は、転造加工に適した所定の位相差を生じさせることができる。
このようにしてダイスの回転角度が補正された状態でシャフトにねじ山が形成されることにより、ねじ山の加工精度が飛躍的に向上し、このねじ山に対する他のねじやギヤ等との噛合性が向上する。
これにより、例えば、シャフトのねじ山にギヤが噛合して回転力を伝達する構成であれば、効率よく回転を伝達できると共に回転伝達時における異音の発生を防止又は効果的に抑制できる。また、シャフトのねじ山に他の部材のねじを螺合させる構成であれば、精度よく螺合させることができ、螺合状態における寸法精度を向上させることができると共に、シャフトと他の部材とのガタを防止又は効果的に軽減でき、シャフトの回転時における異音の発生を防止又は効果的に抑制できる。
しかも、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、ダイスの回転角度調整に関して作業者毎の調整の誤差が極めて少なく、シャフトの品質を安定させることができる。
さらに、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、作業者の経験や既に加工が終了したワークの状態に基づいてダイスの回転角度を補正する等に比べて補正作業を迅速に行なうことができ、シャフトの製造効率を飛躍的に向上させることができ、その結果、モータ全体のコストを安価にできる。
請求項に記載の本発明に係るシャフトの製造方法は、外周部にねじ山を有するシャフトの製造方法であって、シャフトの軸方向に沿って連続した凹凸状の加工部が各々に形成された一対のダイスを用いると共に、当該一対のダイス一方に対する他方の前記軸方向に沿った相対的な位置関係を、前記一対のダイスの各々に対する所定の検出位置において前記加工部の凹凸の高さをそれぞれ検出すると共に、当該検出結果に基づき少なくとも何れか一方の前記ダイスの回転角度の補正値を演算し、前記補正値に基づいて少なくとも一方のダイスの位置を補正し、前記補正を施した状態で、前記一対のダイスの間に前記シャフトを配置し、前記一対のダイスの各々を回転させ、互いに対向する前記加工部により前記シャフトの外周部に前記ねじ山を転造加工する、ことを特徴とするシャフトの製造方法。
請求項に記載の本発明に係るシャフトの製造方法では、一対のダイスの間にシャフトが挿入され、各ダイスがそれぞれ回転させられる。各ダイスにはその軸方向に沿って連続した凹凸から成る加工部が形成されており、上記のように、一対のダイスの間にシャフトを挿入しつつ、各ダイスを回転させると加工部の凹凸によりシャフトの外周部が塑性変形させられ、これにより、シャフトの外周部にねじ山が形成される(すなわち、転造加工によりねじ山が形成される)。
ここで、シャフトにねじ山を形成するにあたり、ダイスの軸方向に沿った一対のダイスの一方に対する他方の相対的な位置関係が検出される。さらに、この検出結果に基づいて少なくとも一方のダイスの回転角度の補正値が演算される。この補正値に基づいてダイスの回転角度が補正され、このダイスの回転角度補正により一方のダイスの加工部の凹凸に対して他方のダイスの加工部の凹凸の位相が揃うか、又は、転造加工に適した所定の位相差を生じさせることができる。
このようにしてダイスの回転角度が補正された状態でシャフトにねじ山が形成されることにより、ねじ山の加工精度が飛躍的に向上し、このねじ山に対する他のねじやギヤ等との噛合性が向上する。
これにより、例えば、シャフトのねじ山にギヤが噛合して回転力を伝達する構成であれば、効率よく回転を伝達できると共に回転伝達時における異音の発生を防止又は効果的に抑制できる。また、シャフトのねじ山に他の部材のねじを螺合させる構成であれば、精度よく螺合させることができ、螺合状態における寸法精度を向上させることができると共に、シャフトと他の部材とのガタを防止又は効果的に軽減でき、シャフトの回転時における異音の発生を防止又は効果的に抑制できる。
しかも、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、ダイスの回転角度調整に関して作業者毎の調整の誤差が極めて少なく、シャフトの品質を安定させることができる。
さらに、補正値に基づいてダイスの回転角度が補正されるため、作業者の経験や既に加工が終了したワークの状態に基づいてダイスの回転角度を補正する等に比べて補正作業を迅速に行なうことができ、シャフトの製造効率を飛躍的に向上させることができる。
<本実施の形態の構成>
(転造装置10の全体構成)
図1には本発明の一実施の形態に係る転造装置10の正面図が示されており、図2には本転造装置10の平面図が示されている。
これらの図に示されるように、転造装置10は載置台12を備えている。載置台12は鋼材等により比較的高い剛性を有するブロック状又は厚肉の平板状に形成されている。この載置台12上には基台としてのベッド14が設けられている。ベッド14は鋼材等により比較的高い剛性を有する平板状に形成されており、ボルト等の図示しない締結手段により載置台12に一体的に締結固定されている。
このベッド14上には固定軸台としての主軸台16が設けられている。主軸台16もまた鋼材等により比較的高い剛性を有する平板状に形成されており、ボルト等の図示しない締結手段によりベッド14に一体的に締結固定されている。
主軸台16の厚さ方向一方の側面の側方には主軸受18が一体的に取り付けられている。主軸受18には駆動軸20の軸方向一端側が回転自在に軸支されている。
また、駆動軸20の軸方向に沿った主軸受18の一端側には、固定軸台側駆動手段としての駆動部21を構成する減速手段としてのギヤボックス22が配置されており、更に、ギヤボックス22を介して主軸受18とが反対側には駆動手段として駆動部21を構成するモータ24が配置されている。ギヤボックス22は、主軸台16又はベッド14に一体的に連結されている。また、ギヤボックス22に連結されているモータ24は、ギヤボックス22を介して間接的に主軸台16又はベッド14に一体的に連結されている。
ギヤボックス22の内側には、複数のギヤにより構成された減速ギヤ列が収容されており、この減速ギヤ列を介してモータ24の出力軸と上記の駆動軸20とが機械的に連結され、モータ24の駆動力によって駆動軸20が回転する構成となっている。
また、駆動軸20の軸方向他端側には補助軸受26が設けられており、駆動軸20の軸方向他端側が回転自在に軸支されている。補助軸受26の主軸台16と対向する側の面からはあり部28が突出形成されている。このあり部28は主軸台16の補助軸受26側の面に固定されたガイドレール30のあり溝32に嵌合している。
補助軸受26はボルト等の締結手段によりガイドレール30又は主軸台16に一体的に締結固定されているが、この締結固定を解除することで補助軸受26はガイドレール30のあり溝32に案内され、駆動軸20の軸方向に沿ってスライドできる構造となっている。この補助軸受26のスライドにより補助軸受26での駆動軸20の軸支を解除できる。
一方、ベッド14上には可動軸台としての主軸台34が主軸台16に対向する如く設けられている。主軸台34もまた鋼材等により比較的高い剛性を有する平板状に形成されている。
但し、主軸台16とは異なり、主軸台34はベッド14上に設けられた図示しないガイド機構に取り付けられており、調整手段としてのハンドル36を回転させることでベッド14上を主軸台16に対して接離する方向に主軸台34が移動し、また、調整手段としてのハンドル38を回転させることで、ベッド14の上面に対して水平で且つ主軸台16に対して接離する方向に対して直交する方向(すなわち、後述する駆動軸42の軸方向)に主軸台34が移動する構成となっている。
主軸台34の厚さ方向一方の側面の側方には主軸受40が一体的に取り付けられている。主軸受40には駆動軸42の軸方向一端側が回転自在に軸支されている。
また、駆動軸42の軸方向に沿った主軸受40の一端側には、可動軸台側駆動手段としての駆動部43を構成する減速手段としてのギヤボックス44が配置されており、更に、ギヤボックス44を介して主軸受40とが反対側には駆動手段として駆動部43を構成するモータ46が配置されている。ギヤボックス44は、主軸台34に一体的に連結されている。また、ギヤボックス44に連結されているモータ46は、ギヤボックス44を介して間接的に主軸台34に一体的に連結されている。
ギヤボックス44は基本的にギヤボックス22と同じ構成で、ギヤボックス22に設けられた減速ギヤ列と同じ減速比でモータ46の出力軸の回転を駆動軸42に伝えて回転する。さらに、モータ46はモータ24と同期して回転するように制御されており、したがって、駆動軸42は駆動軸20と同じ方向へ同じ速度で回転する。
また、駆動軸42の軸方向他端側には補助軸受48が設けられており、駆動軸42の軸方向他端側が回転自在に軸支されている。補助軸受48の主軸台34と対向する側の面からはあり部50が突出形成されている。このあり部50は主軸台34の補助軸受48側の面に固定されたガイドレール52のあり溝54に嵌合している。
補助軸受48はボルト等の締結手段によりガイドレール52又は主軸台34に一体的に締結固定されているが、この締結固定を解除することで補助軸受48はガイドレール52のあり溝54に案内され、駆動軸42の軸方向に沿ってスライドできる構造となっている。この補助軸受48のスライドにより補助軸受48での駆動軸42の軸支を解除できる。
(軸保持機構60の構成)
さらに、図1及び図2に示されるように、本転造装置10は保持手段としての軸保持機構60を備えている。軸保持機構60は一対の梁通過ブロック62、64を備えている。
梁通過ブロック62は主軸台16の上面に形成されており、図示しない一対の嵌挿孔が形成されている。一対の嵌挿孔は各々が断面矩形状で、駆動軸20、42の軸方向に沿って並んで形成されていると共に、駆動軸20、42の軸間方向に梁通過ブロック62を貫通している。
一方、梁通過ブロック64は駆動軸20、42の軸間方向に梁通過ブロック62と対向するように形成されている。梁通過ブロック64にも各々が断面矩形状の一対の嵌挿孔が形成されている。梁通過ブロック64の嵌挿孔は断面形状が梁通過ブロック62に形成された嵌挿孔と同形状とされており、駆動軸20、42の軸間方向に沿って梁通過ブロック64の一方の嵌挿孔が梁通過ブロック62の一方の嵌挿孔に対向しており、梁通過ブロック64の他方の嵌挿孔が梁通過ブロック62の他方の嵌挿孔に対向している。
梁通過ブロック62、64の一方の嵌挿孔には、梁66が梁通過ブロック62、64の対向方向(すなわち、駆動軸20、42の軸間方向)に貫通配置されている。また、梁通過ブロック62、64の他方の嵌挿孔には、梁68が梁通過ブロック62、64の対向方向(すなわち、駆動軸20、42の軸間方向)に貫通配置されている。
これらの梁66、68は、各々が断面矩形状の角棒状に形成されている。梁通過ブロック62の嵌挿孔を通過して梁通過ブロック62を介して梁通過ブロック64とは反対側に突出した梁66、68の一端にはそれぞれストッパ70が設けられている。
各ストッパ70は対応する梁66、68に対してボルト等の締結手段により着脱自在に締結固定されており、ストッパ70を梁66、68に装着した状態では、梁66、68が梁通過ブロック64側に変位しようとすると、ストッパ70に梁通過ブロック62の側面が干渉し、梁66、68の変位を規制する。また、梁通過ブロック64の嵌挿孔を通過して梁通過ブロック64を介して梁通過ブロック62とは反対側に突出した梁66、68の他端には、それぞれ一対のストッパ72が設けられている。
一対のストッパ72は、梁66、68の長手方向に並んで両梁66、68の各々に設けられている。各ストッパ72は対応する梁66、68に対してボルト等の締結手段により着脱自在に締結固定されており、ストッパ72を梁66、68に装着した状態では、梁66、68が梁通過ブロック62側に変位しようとすると、梁通過ブロック64側のストッパ72に梁通過ブロック64の側面が干渉し、梁66、68の変位を規制する。
すなわち、ストッパ70、72の全てが梁66、68に装着された状態では、少なくとも、両梁通過ブロック62、64が駆動軸20、42の軸間方向に互いに離間する方向への変位が規制されている。
(ダイス80の構成)
さらに、図1に示されるように、駆動軸20にはダイス80が同軸的且つ一体的に取り付けられている。図3及び図4に示されるように、ダイス80は全体的に略円板状又は略円柱状に形成されている。また、ダイス80の外周部には断面略矩形状の切欠部82が形成されている。切欠部82はダイス80の軸方向に沿って連続して形成されており、ダイス80の軸方向両端にて開口していると共に、ダイス80の外周面にて開口している。
ダイス80の外周面のうち、上記の切欠部82を除く部分の全部又は殆どは加工部84とされている。図4乃至図6に示されるように、加工部84は複数の凸部86と複数の凹部88とにより構成されている。凸部86と凹部88とはダイス80の軸方向に沿って交互に形成されている。
また、凸部86及び凹部88はダイス80の中心軸線周りに略螺旋状に形成されており、ダイス80の周方向に沿った切欠部82の開口端の一端を起点として周方向に変位するにつれて漸次ダイス80の軸方向に変位し、ダイス80の軸心を介して切欠部82とは反対側を通り切欠部82の開口端の他端まで形成されている。但し、このように略螺旋状に形成されている凸部86及び凹部88であるが、所謂ねじとは異なり、切欠部82の開口端の他端における凸部86及び凹部88の終点の延長上に次ピッチの凸部86及び凹部88が位置しない(すなわち、切欠部82が形成されていなかったとしても、凸部86及び凹部88は、次ピッチの凸部86及び凹部88に連続しない)。
また、厳密には凸部86の頂部に沿ったダイス80の外周形状は円形ではなく、切欠部82の開口端の一端における凸部86の起点から、概ね切欠部82の反対側までの間で漸次外径寸法が大きくなり、更に、一定範囲外径寸法が略等しくなった後、切欠部82の開口端の他端までの間で漸次外径寸法が小さくなるように設定されている。しかも、ダイス80の周方向に沿った凸部86の断面形状は、起点側で頂部が略鋭角とされている。また、起点から漸次頂部がダイス80の半径方向外側へ突出しつつ頂部に丸みが形成されるか、又は、頂部が略平坦状に変化し、更に、凸部86の終点近傍では凸部86の断面形状が略台形となる。
一方、駆動軸42には、ダイス80と同一形状のダイス90が同軸的且つ一体的に取り付けられている。初期状態ではダイス80の切欠部82とダイス90の切欠部82とが駆動軸20、42の軸間方向に対向するように配置される。
(ダイス位置補正装置100の構成)
また、図1、図2、及び図3に示されるように、本転造装置10は、ダイス補正手段としてのダイス位置補正装置100を備えている。ダイス位置補正装置100は検出手段としての一対の探触子102、104を備えている。
探触子102は略棒状に形成され、ダイス80の上方に配置された筒状のシリンダ106に上下方向に摺動自在に嵌挿されており、先端はダイス80の外周面に接触している。探触子102の先端はテーパ状で漸次先細になっており、図8に示されるように、先端はダイス80の概ね隣接する凸部86間の形状と同じ形状に形成され、凹部88と探触子102とが対向した状態では、探触子102が隣接する凸部86間に嵌まり込む。
一方、探触子104は探触子102と同形状に形成されており、ダイス90の上方に配置された筒状のシリンダ106に上下方向に摺動自在に嵌挿されており、先端はダイス90の外周面に接触している。
これらの探触子102、104の各々はスライダ107に支持されている。両スライダ107は、支持体109に設けられたガイドプレート111上に取り付けられており、ガイドプレート111に案内されてダイス80、90の軸方向にスライドする。
また、支持体109には、各スライダ107に対応して変位センサ108が設けられており、各スライダ107のスライド(変位)を検出している。
また、図7に示されるように、各変位センサ108は、ダイス位置補正装置100の装置本体110に設けられた演算手段としてのCPU112に接続されており、各スライダ107の変位量に対応した電気信号(電圧値や電流値)である検出信号がCPU112に入力される。
また、CPU112はRAM114やROM116等の記憶手段に接続されていると共に、入力手段としてのキーボード118に接続されている。さらに、CPU112は出力手段としてのモニタ120に接続されている。また、CPU112にはドライバ122が接続されており、CPU112から出力されたモータ制御信号がドライバ122に入力される。
さらに、ドライバ122には電源124が接続されていると共に、モータ46が接続されており、ドライバ122はCPU112から出力されたモータ制御信号に基づいてモータ46に対する通電制御を行なう構成となっている。
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本転造装置10でのモータ130のシャフト132の製造方法の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
(ダイス装着工程)
本転造装置10にてシャフト132を製造するにあたり、先ず、ダイス装着工程でダイス80、90が転造装置10に取り付けられる。このダイス装着工程では、先ず、梁66、68に対する各ストッパ72の固定が解除され、主軸台16に対して主軸台34が接離する方向、すなわち、駆動軸20、42の軸間方向に変位可能な状態とされる。
また、このストッパ72の解除作業に前後して、補助軸受26、48の固定が解除されてガイドレール30、52に沿って駆動軸20、42の軸方向他端側に補助軸受26、48がスライドさせられる。これにより、補助軸受26、48による駆動軸20、42の他端側における軸支が解除される。
さらに、これらのストッパ72の解除作業及び補助軸受26、48の固定解除作業等に前後して、シャフト132の仕様毎に外周形状や凸部86及び凹部88のピッチが異なる複数種類のダイス80、90の中から、製造するシャフト132に適応したダイス80、90が選択され、駆動軸20の軸方向他端側からダイス80が駆動軸20に装着されると共に、駆動軸42の軸方向他端側からダイス90が駆動軸42に装着される。これにより、ダイス80は駆動軸20に対して同軸的且つ一体的に固定され、ダイス90は駆動軸42に対して同軸的且つ一体的に固定される。
次いで、補助軸受26、48により駆動軸20、42を軸支させて、各補助軸受26、48をガイドレール30等に締結固定する。次いで、ハンドル36を操作してダイス80、90に応じて駆動軸20、42の軸間距離を調整し、ダイス80の外周部とダイス90の外周部との間の間隙の大きさを、製造するワーク134に対応した距離に調整する。さらに、この調整が終了した後に、梁66、68にストッパ72を固定する。以上のようにしてダイス装着工程が終了する。
(ダイス位置調整工程)
次いで、ダイス位置調整工程では、先ず、ダイス80の切欠部82とダイス90の切欠部82とが駆動軸20、42の軸間方向に沿って互いに対向する状態まで、ダイス80、90がそれぞれ回転させられる。さらに、このダイス80、90の回転に前後して、ハンドル38が回転操作されて主軸台34がダイス90の軸方向に沿って変位させられる。これにより、先ず、ダイス80に対するダイス90の大まかな位置調整が成される。
次いで、この状態で、探触子102、104の各々の先端が、対応するダイス80、90の外周部に当接させられる。
ここで、ダイス80、90の外周部に形成された凸部86及び凹部88は、ダイス80、90の軸周りに略螺旋状に形成されており、したがって、凸部86及び凹部88は、ダイス80、90の周方向に沿った変位量に対してダイス80、90の軸方向に所定量変位している。このため、探触子102、104の位置が予め決まっていても、探触子102、104の先端が探触子102、104の軸方向に沿って凸部86及び凹部88のどの位置に対向するかは、ダイス80、90の回転位置によって変化する。
探触子102、104の先端は、凹部88に対向していれば、凹部88(すなわち、隣接する凸部86の間)に嵌まり込む(図8の実線状態)。しかしながら、図8の二点鎖線で示されるように、凹部88以外の部位、すなわち、凸部86等に探触子102、104の先端が対向していると、探触子102、104の先端は対向する凸部86等に接触するが、図8の矢印にて示されるように、自重等により凸部86の斜面を滑るようにダイス80、90の軸方向に沿って変位しつつ凹部88に嵌まり込む。
このように、ダイス80、90の軸方向に探触子102、104が変位すると、探触子102、104を支持しているスライダ107がダイス80、90の軸方向にスライドする。このスライダ107のスライド(変位)は各変位センサ108によって検出され、この検出結果に対応した検出信号が装置本体110のCPU112に入力される。
一方、ダイス位置補正装置100の装置本体110は、起動されるとCPU112がROM116からダイス選択画面の画面データを読み込み、モニタ120にダイス選択画面を表示させる。このようなダイス選択画面で駆動軸20、42に装着したダイス80、90をキーボード118等により選択すると、ダイス80、90の種類毎に予めROM116に記憶させたマップデータをCPU112が読み込んで展開する。
この状態で、キーボード118等を用いて補正値の計算をCPU112に実行させると、変位センサ108からの両探触子102、104の変位量に対応した検出信号に基づき、展開したマップデータから補正値を選択又は演算する。
この補正値はダイス90の回転角度として導き出され、モニタ120の画面に表示される。さらに、この状態からキーボード118等を用いて補正実行をCPU112に対して指示すると、CPU112からは補正値に基づいてモータ制御信号が出力される。
このモータ制御信号はドライバ122に入力される。ドライバ122では入力されたモータ制御信号に基づいてモータ46に対する通電制御が行なわれる。モータ46は通電されると出力軸を回転させ、更に、ギヤボックス44の減速ギヤ列を介して駆動軸42を補正値に対応した角度だけ回転させる。これにより、補正値に対応した角度だけダイス90が回転させられ、ダイス90の回転位置が補正される。
このようにしてダイス90の回転位置が補正されることで、ダイス80の軸方向に沿って連続するダイス80の凸部86及び凹部88の位相に対し、ダイス90の軸方向に沿って連続するダイス90の凸部86及び凹部88の位相が揃うか、或いは、予め想定された位相分だけずれる。
ここで、上記のように、本実施の形態では、ダイス位置補正装置100による補正値の演算や、補正値に基づくダイス90の回転位置の補正に先立って、ハンドル38の回転操作によるダイス90の大まかな位置調整が成される。このように、予め、大まかにダイス90の位置調整が行なわれることで、補正値が小さくなり、補正値に基づく調整量を小さくできる。
これにより、補正値だけに頼ってダイス90の回転位置の補正を行なうよりも最終的にはダイス90の回転位置の補正を素早く行なえる。このため、ダイス90の回転位置補正に要する時間を短くでき、工数の軽減、ひいては、後述するモータ130のコストを軽減できる。
(加工工程)
このようにしてダイス90の回転位置が補正された状態で、ダイス80の切欠部82とダイス90の切欠部82との間にシャフト132の原材料又は中間加工品としての棒状のワーク134が配置される。
この状態で、両ダイス80、90を同じ速度で同じ方向に回転させると、先ず、凸部86の一端(切欠部82の開口端の幅方向一端)が、ワーク134に当接する。図9(A)に示されるように、凸部86の断面形状は、先端部が先細テーパ状であるため、凸部86はワーク134の外周部に切り込みを入れるかの如く食い付き、凸部86の両側方の凹部88側へワーク134の外周部を寄せて塑性変形させる。
この状態で、更に、ダイス80、90を回転させると、凸部86はダイス80、90の半径方向外方へ漸次突出しているため、図9(B)に示されるように、凸部86の先端は、漸次、ワーク134の外周部に対して深く食い込むと共に、更に、両側方の凹部88側へワーク134の外周部を寄せて塑性変形させる。
次いで、更に、ダイス80、90が回転すると、図9(C)に示されるように、凸部86の先端は、ねじ山としての所定のウオームギヤ136の歯の断面形状に等しくなり、ワーク134の外周部をウオームギヤ136の形状に成形する。
この状態から更にダイス80、90が回転すると、図9(D)に示されるように、凸部86の先端までのダイス80、90の外径寸法が漸次小さくなり、この状態で、両ダイス80、90の凸部86の他端が軸間方向に互いに対向して、更に、両切欠部82が互いに対向するまで両ダイス80、90が回転すると、凸部86がワーク134の外周部から抜け、ワーク134、すなわち、シャフト132の先端側にウオームギヤ136が転造加工される。
このように、本転造装置10ではダイス80、90を1回転させることで、シャフト132の先端側にウオームギヤ136を成形できる。このため、単なる丸ダイスを用いて幾度となく丸ダイスを回転させ、ワーク134をその軸方向に送りつつウオームギヤ136を成形する構成に比べると、加工時間を短くでき、生産効率を大幅に向上させることができる。
しかも、加工工程に先立って、上記のようにダイス80の回転位置に対してダイス90の回転位置を補正している。このため、ダイス80での加工とダイス90での加工とにずれが生じることがなく、成形品質、すなわち、シャフト132の先端に形成されたウオームギヤ136の品質を向上させることができる。
さらに、上記のようにダイス90の回転位置の補正は、探触子102、104の変位量に基づき、補正値という定量的な値として導き出されるため、ダイス90の回転位置の補正に関して作業者毎の個人差がないか、仮に、個人差が生じたとしても極めて小さい。これにより、ウオームギヤ136の成形品質を安定させることができる。
また、基本的に探触子102、104を両ダイス80、90の加工部80に接触させた状態でキーボード118を操作すれば、補正値が演算され、更に、補正値に基づきダイス90の回転角度が補正されるため、補正作業を迅速に行なうことができ、しかも、作業時間の個人差も少ない。これにより、作業工数を軽減でき、コストを安価にできる。
また、上記のように、ダイス80、90を1回転だけさせてシャフト132の先端にウオームギヤ136を成形すると言う点からすれば、通常の丸ダイスを何回転もさせてウオームギヤ136を成形する場合に比べて、ダイス80、90の単位回転角度あたりのワーク134の外周部の塑性変形量が大きい。
このようにダイス80、90を1回転させるだけでワーク134を大きく塑性変形させる際には、ワーク134からの反力が両ダイス80、90を駆動軸20、42の軸間方向に離間させようとする。
主軸台16は基本的にベッド14に固定されているため変位することがない。これに対して、主軸台34はそもそもが主軸台16に対して接離移動可能である。このため、ワーク134からの反力は主軸台34を主軸台16から離間させようとする。
しかしながら、主軸台16、34の双方に形成された梁通過ブロック62、64には梁66、68が通過しており、梁通過ブロック62、64が駆動軸20、42の軸間方向に離間しようとすると、ストッパ70、72が梁通過ブロック62、64に干渉して梁通過ブロック62、64の移動を規制する。すなわち、本転造装置10では主軸台16、34を駆動軸20、42の軸間方向に離間させようとする外力に対しては、梁66、68を介して主軸台16、34が一体的に連結された構造となっており、このような外力に対しては、主軸台34の剛性のみならず、梁66、68、主軸台16、更には、ベッド14の剛性にて抗することになる。
これにより、上記のようなワーク134からの反力がダイス90に作用しても、ダイス90がダイス80から離間する方向に変位することがない。このように、ワーク134を転造加工している状態におけるダイス80、90の位置精度を保つことができることで、ワーク134の加工精度を高く維持でき、この結果、シャフト132の先端に形成するウオームギヤ136の寸法精度を高く維持できる。
さらに、本実施の形態では、上記のように、ダイス80に回転駆動力を伝えるための駆動部21と、ダイス90に回転駆動力を伝えるための駆動部43と、が別体で構成され、しかも、駆動部43は基本的に主軸台34に一体的に取り付けられている。このため、主軸台34を如何に動かしても、モータ46と駆動軸42との間隔等が変化しない。したがって、ギヤボックス44内の減速ギヤ列の構成を簡素化できる。
しかも、モータ46と駆動軸42との間隔等が変化する構成であれば、変化してもモータ46の回転駆動力を駆動軸42に伝達できるように、ギヤボックス44内のギヤ列を複雑にしなくてはならず、これにより、伝達誤差にも変化が生じる。これに対して、本実施の形態では、モータ46と駆動軸42との間隔等が変化しないため、このような問題が生じることがなく、ウオームギヤ136の寸法誤差等を小さくできる。
(モータ組立工程)
以上のようにして先端にウオームギヤ136が形成されたシャフト132は、図10に示されるように、その長手方向基端側はロータ138に対して同軸的且つ一体的に装着される。さらに、ステータを構成するマグネット140が内壁に一体的に固定されたヨーク142の内側に、シャフト132の長手方向基端側がロータ138と共に収容される。
これにより、モータ130が組み立てられる。このようにして組み立てられたモータ130は、例えば、図示しないギヤボックスにシャフト132の先端側が入り込んだ状態でギヤボックスに一体的に連結され、モータアクチュエータを構成する。ギヤボックス内ではシャフト132の先端側に形成されたウオームギヤ136にギヤボックス内に回転自在に収容されたウオームホイールが噛合させられ、モータ130にて生じた駆動力でシャフト132が回転すると、ウオームギヤ136に噛合するウオームホイールに回転を伝達する。
ここで、シャフト132の先端に形成されたウオームギヤ136は、上記のように、極めて高い寸法精度を維持できるため、ウオームホイールに対して極めて良好な噛合性を確保でき、極めて高い回転力の伝達効率を確保できる。
しかも、良好な噛合性を確保できることで、回転力の伝達時における異音の発生等を防止又は効果的に抑制でき、静音化を図ることも可能となる。さらには、シャフト132の製造コストを安価にできることで、モータ130全体、ひいてはモータアクチュエータの製造コストを安価にできる。
本発明の一実施の形態に係る転造装置の正面図である。 本発明の一実施の形態に係る転造装置の平面図である。 本発明の一実施の形態に係る転造装置のダイス並びにダイス補正手段を示す拡大斜視図である。 本発明の一実施の形態に係る転造装置のダイス並びにダイス補正手段を示す拡大正面図である。 本発明の一実施の形態に係る転造装置のダイス並びにダイス補正手段を示す拡大側面図である。 ダイスの正面図である。 ダイス補正手段の構成の概略を示すブロック図である。 加工部を構成する凸部及び凹部の各位置で探触子が接触した場合の探触子の状態(位置)を示す図である。 ダイスがワークを加工している状態を示す図である。 本発明の一実施の形態に係るモータの正面断面図である。
符号の説明
10・・・転造装置、21・・・駆動部(固定軸台側駆動手段)、43・・・駆動部(可動軸台側駆動手段)、36・・・ハンドル(調整手段)、38・・・ハンドル(調整手段)、80・・・ダイス、82・・・切欠部、84・・・加工部、86・・・凸部、88・・・凹部、90・・・ダイス、100・・・ダイス位置補正装置(ダイス補正手段)、102・・・探触子(検出手段)、104・・・探触子(検出手段)、112・・・CPU(演算手段)、130・・・モータ、132・・・シャフト、134・・・ワーク、136・・・ウオームギヤ(ねじ山)、138・・・ロータ、140・・・マグネット(ステータ)

Claims (6)

  1. 互いに対向した状態で平行に配置されると共に、軸方向に凹凸が交互に並ぶ加工部が各々に形成された一対のダイスを有し、前記一対のダイスの間にワークを配置して前記一対のダイスの各々を前記軸方向周りに回転させることで、前記一対のダイスの前記加工部が前記ワークを塑性変形させて転造加工する転造装置であって、
    前記方向に沿った前記一対のダイスの一方の前記加工部に対する他方の前記加工部の相対的な位置関係に基づき、前記一対のダイスの少なくとも一方の回転角度位置の補正値を演算するダイス補正手段を備える、
    ことを特徴とする転造装置。
  2. 前記一対のダイスの各々に対応して設けられ、予め設定された所定の検出位置で、前記軸方向に沿った前記凹凸の状態を検出する一対の検出手段と、
    前記一対の検出手段の各々の検出結果の差異に基づいて、前記補正値を演算する演算手段と、
    を含めて前記ダイス補正手段を構成した、
    ことを特徴とする請求項1に記載の転造装置。
  3. 先端が前記加工部に対向して設けられると共に、前記加工部に対して接離移動可能な探触子を含めて前記検出手段を構成し、前記探触子の先端が前記加工部に当接した状態での前記加工部に対して接離する方向及び前記ダイスの回転軸方向の少なくとも何れか1つの方向に沿った先端の位置を前記検出手段が検出する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の転造装置。
  4. 前記一対のダイスの一方を支持する支持軸が取り付けられた固定軸台と、
    前記一対のダイスの他方を支持する支持軸が取り付けられると共に、前記ダイスの軸方向及び前記他方のダイスを前記一方のダイスに対して接離させる接離方向に移動可能な可動軸台と、
    前記固定軸台に設けられた前記一方のダイスに対してのみ駆動力を付与して前記一方のダイスを回転させる固定軸台側駆動手段と、
    前記可動軸台に支持されると共に、前記可動軸台に設けられた前記他方のダイスに対してのみ駆動力を付与して前記他方のダイスを回転させる可動軸台側駆動手段と、
    前記可動軸台に支持されると共に、前記可動軸台を前記軸方向及び前記接離方向に移動させる調整手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の転造装置。
  5. ステータにて生じた磁界とロータにて生じた磁界との相互作用により前記ロータを回転させて前記ロータに固定されて先端側にねじ山が形成されたシャフトを回転させるモータを製造するためのモータ製造方法であって、
    前記シャフトの軸方向に沿って連続した凹凸状の加工部が形成され、当該加工部が前記シャフトを介して互いに対向する一対のダイスを用いると共に、当該一対のダイスの一方に対する他方の前記軸方向に沿った相対的な位置関係を検出し、
    当該検出結果に基づいて少なくとも一方の前記ダイスの回転角度の補正値を演算し、
    当該演算結果に基づき少なくとも一方の前記ダイスの回転角度を補正した状態で、前記一対のダイスの各々を回転させつつ前記シャフトを先端側から前記一対のダイスの間に挿入し、前記一対のダイスの各加工部により前記シャフトに前記ねじ山を転造加工する、
    ことを特徴とするモータ製造方法。
  6. 外周部にねじ山を有するシャフトの製造方法であって、
    シャフトの軸方向に沿って連続した凹凸状の加工部が各々に形成された一対のダイスを用いると共に、当該一対のダイスの一方に対する他方の前記軸方向に沿った相対的な位置関係を、前記一対のダイスの各々に対する所定の検出位置において前記加工部の凹凸の高さをそれぞれ検出すると共に、当該検出結果に基づき少なくとも何れか一方の前記ダイスの回転角度の補正値を演算し、
    前記補正値に基づいて少なくとも一方のダイスの位置を補正し、
    前記補正を施した状態で、前記一対のダイスの間に前記シャフトを配置し、前記一対のダイスの各々を回転させ、互いに対向する前記加工部により前記シャフトの外周部に前記ねじ山を転造加工する、
    ことを特徴とするシャフトの製造方法。
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