JP4474050B2 - マルチモード光学組織診断システム - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばヒトまたは動物の組織の特性を決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織の特性を決定するための分光学的手法は周知であり、組織内の変化を検査するために広く使用されている。利用可能な分光器テクニックの種類も多く、これらは光と細胞および組織内に存在する自然発色団の相互作用の性質に基づいて特定の情報を提供する。その相互作用には、特定波長の光の吸収、吸収した光の蛍光としての再放出、特定波長の光の散乱(方向の変化)および吸収または散乱された光と再放出された光の間の偏光における変化が含まれる。
【0003】
たとえば、電磁放射線を目標組織に照射し、戻ってきた電磁放射線を検出して目標組織の特性を決定することが知られている。周知の方法においては、戻ってきた電磁波の振幅ならびに波長を分析して目標組織の特性を決定している。一例を挙げれば、Kittrell等に特許された米国特許第4,718,417号は、動脈内の組織のタイプを診断するための方法を開示しており、それにおいては動脈内にカテーテルを挿入し、特定波長の励起光を使用して動脈の内壁を照明する。動脈壁内の物質または組織は、この励起光に反応して蛍光放射線を放出する。検出器を用いてこの蛍光放射線を検出し、放出されている蛍光放射線の振幅ならびに波長を分析して照明部位の動脈壁が正常であるか、あるいはプラークによって覆われているかを判断する。この米国特許第4,718,417号の内容は、本明細書において参照し援用する。
【0004】
Alfano等に特許された米国特許第4,930,516号は、癌組織を検出するための方法を開示しており、それにおいては、第1の波長の励起光を用いて組織標本を照射し、当該励起光に反応して放出された蛍光放射線を検出する。続いて放出されている蛍光放射線の波長および振幅を調べて、組織サンプルが癌性であるか正常であるかを決定する。正常組織は一般に、特定の既知の波長に振幅のピークを有するが、癌組織はそれとは異なる波長に振幅のピークを有する。その逆に注目すれば、同一波長におけるスペクトル振幅は、正常組織と癌組織で異なるということになる。この米国特許第4,930,516号の開示内容についても、本明細書において参照し援用する。上述したこれらの方法は、蛍光分光分析法と呼ばれる。
【0005】
さらに別のAlfano等に特許された米国特許第5,369,496号では、生物学的物質の特徴を決定するための方法が開示されており、それにおいては、目標組織に光を照射し、後方散乱された光または反射光を分析して組織の特性を決定している。この米国特許第5,369,496号の内容は、本明細書において参照し援用する。このタイプの方法は、吸収分光分析法と呼ばれる。
【0006】
また、蛍光発光の消滅時間に注目し、照明した組織のタイプまたは状態を決定することも知られている。これらの方法は、時間分解分光分析法と呼ばれる。一般的に述べれば、蛍光発光の寿命を検出するための装置は、蛍光発光の寿命の直接検出に集中している。通常、非常に短時間の励起光のバーストが目標組織に向けられ、検出器を用いて目標組織からの蛍光発光を検出する。蛍光発光の減衰については、蛍光発光の振幅を時間に関して記録する。蛍光発光の検出は、特定の波長においてなされるか、あるいは所定の波長の範囲にわたってなされることになる。その後、時間の関数として見た振幅の減衰プロファイルを調べて目標組織の特性または状態を決定する。
【0007】
たとえば、Kittrell等に特許された米国特許第5,562,100号には、特定の波長を有する励起放射線の短いパルスを目標組織に照射するステップ、およびこの励起放射線に反応して目標組織から放出された蛍光放射線を検出するステップを含む組織の特性を決定するための方法が開示されている。この方法においては、放出された放射線の振幅が放出の減衰として時間的に記録される。その後、振幅プロファイルを使用して目標組織の特性を決定する。同様にAlfano等に特許された米国特許第5,467,767号もまた、組織標本が癌細胞を含んでいるか否かを決定する方法を開示しており、それにおいては、蛍光発光の振幅減衰プロファイルが調べられる。これらの米国特許第5,562,100号および第5,467,767号の内容は、本明細書において参照し援用する。
【0008】
別の米国特許では、蛍光発光の消失時間が、位相シフトまたは偏光異方性の測定を利用して間接的に測定できることが述べられている。たとえば、Lakowicz等に特許された米国特許第5,624,847号は、位相シフト方法を使用して各種物質の存在または濃度を決定するための方法を開示している。またZuckermanに特許された米国特許第5,515,864号は、偏光異方性の測定テクニックを使用して血中酸素の濃度を測定するための方法を開示している。これらの方法はいずれも、励起放射線に反応して生成される蛍光発光の寿命を間接的に測定する。なお、米国特許第5,624,847号および第5,515,864号の内容は、本明細書において参照し援用する。
【0009】
上述した従来技術方法は、いずれも単独では組織の特性における変化の正確な測定に充分でない。つまり、以下においてより完全に論じるが、組織が正常な組織から、たとえば癌組織に変化している経過段階にある場合を考えると、蛍光分光分析法では、吸収分光分析法に比べて発生中の形態学的変化に対する感応度が低いことから、組織の特性決定においてそれがあまり効果的でなくなる。同様に、吸収分光分析法は、蛍光分光分析法に比較すると組織内における生物化学的変化に対する感応度が低いことから、単独では組織の特性決定の評価に不充分であると言える。
【0010】
より正確な最終的判断に到達するため、2ないしは3以上の測定テクニックを組み合わせることが知られている。たとえば、本明細書において参照し援用するSamuels等に特許された米国特許第5,582,168号においては、眼の水晶体内の変化を検出するための装置および方法が開示されている。Samuels等は、伝達もしくはラマンまたは蛍光発光をはじめ、散乱、反射もしくは類似の効果をともに測定することを教示している。その後、散乱もしくは反射強度に対する蛍光発光強度の比を用いて被検対象の正規化を行う。しかしながら、この方法から疾患に起因する生物化学的変化に対する解決は得られるが、疾患に起因する形態学的変化に対する解決は得られない。
【0011】
さらに、概して従来技術の分光学的手法は、組織上の単一ポイントもしくは最低限度数のポイントにおける組織の特性に焦点を当てている。単一ポイントもしくは最低限度数のポイントにおいて測定値を求めても、その組織の状態を正確に反映する組織のエリアの充分なサンプリングが提供されないことから、誤りが導かれる可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明においては、組織の特性における変化の正確な測定を提供する方法および装置の提供に焦点が当てられている。本発明による方法および装置は、限定する意図はないが、蛍光発光、吸収、反射、偏光異方性、および位相変調を含む2つ以上の光学モダリティ(分光学的手法)を組み合わせて組織の変化に関連する形態学的変化と生物化学的変化とを分離し、それにより、当該組織の状態の正確な診断を提供する。各種の分光学的手法に従って得られた測定値は、診断目的に合わせて最良の診断結果を得るために、等しく重み付けすること、あるいは各種の方法において重み付けすることが可能である。たとえば、患者の年齢、ホルモン代謝、粘膜の粘稠度、循環系および神経系といった被検組織に特有の特徴に基づいて結果に重み付けを行うことが考えられる。
【0013】
本発明は、目標組織の特性を決定するための装置および方法を包含しており、それにおいては、励起電磁放射線を使用して目標組織を照明し、当該目標組織から返された電磁放射線を分析して当該目標組織の特性を決定する。本発明を実施するいくつかの装置および方法は、たとえばヒトまたは動物の組織の表面のわずか下側において診断を行うために使用することができる。例を挙げれば、本発明を実施する方法および装置を使用すれば、皮膚、胃腸管等の自然体内管腔の内層、あるいは臓器もしくは血管の表面の状態を診断することが可能になる。また、本発明を使用したそれとは異なる装置および方法を用いて、たとえばヒトまたは動物の組織内の深い部分の診断を行うことが可能であり、それにおいては、ヒトまたは動物の胸部の深い部分にできた腫瘍または病変の診断における場合のように、電磁放射線を組織内の数センチメートルの深さまで到達させた後、目標組織との相互作用が得られるようにする必要がある。
【0014】
本発明の好ましい実施態様によれば、生物化学的変化と形態学的変化を分離するために、反射率との組み合わせにおいて蛍光発光を使用する装置および方法が提供される。蛍光発光および反射率情報は、個別に分析し、比較するか、あるいはそれに代えて較正を行って吸収および散乱に起因する減衰を考慮に入れることもできる。蛍光発光および反射率以外の別の分光学的手法の組み合わせにも適当なものがあると考えられる。
【0015】
各種の分光学的手法を使用する測定は同時に行ってもよく、また測定の間の時間的間隔として定義されるクリティカル・タイミング・ウィンドウが所定の時間以下に維持されることを前提として逐次行ってもよい。
【0016】
上記のテクニックは、好ましくは目標組織の複数の部分の特徴を決定するために使用される。目標組織の全体的な分析は、実質的に組織表面の全体を覆う複数の検査ポイントにおいて同時に測定を行うことによって、あるいは実質的に組織表面の全体を覆う複数の検査ポイントの一部分だけを測定し、それらの複数の検査ポイントのすべてにおける測定を完了するまで所定のタイミングで繰り返すことによって行うことができる。
【0017】
さらに目標組織を複数のフィールド・エリアに分けて、フィールドのパターンを作ることができる。その場合、それぞれのフィールド・エリア内の複数の検査ポイントにおいて測定を行う。その後、目標組織の状態を診断するために、このフィールド・エリアに対して個別の分析および比較を行うことができる。次に、目標組織を異なるセットのフィールド・エリアに分けなおし、そのフィールド・エリアの分析および比較を行って組織の状態を診断する。これらのフィールド・エリアは、すべて同一のサイズおよび/または形状としてもよく、また各種のサイズおよび/または形状を持たせてもよい。さらに、目標組織をフィールド・エリアに分けなおすときには、オリジナルのフィールド・エリアと同一の形状ならびにサイズにして配置だけを変えてもよく、また異なるサイズおよび/または形状、あるいは各種のサイズまたは形状のフィールド・エリアに分けなおしてもよい。
【0018】
上述したように、本発明を実施するテクニックは、目標組織の複数の部分の状態を決定するために使用することが可能であり、決定した状態を使用して当該目標組織のマップを作成することもできる。その後この種のマップは、ディスプレイ・スクリーン上に表示し、あるいはハード・コピー形式に表すことができる。
【0019】
さらに、このテクニックを使用してパターン認識アルゴリズムまたはニューラル・ネットワークに情報を供給することができる。
【0020】
本発明のこのほかの利点、目的および特徴は、一部は以下の説明に示されており、また別の部分は当業者であれば以下を研究することによって、あるいは本発明の実施から学ぶことによって明らかなものとなろう。本発明の目的および利点は、付随する特許請求の範囲に特に指摘されるように具現され、達成することができる。
【0021】
次に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施態様を説明する。図面において同じ部材には同じ参照符号を用いている。
【0022】
【発明を実施するための最良の形態】
背景技術の欄における先行技術による方法の場合、光の相互作用の情報内容(従って、用いられる分光学的方法)は、概して云えば、組織の変化タイプに固有のものである。すなわち、腫瘍組織は、いくつかの点で正常組織とは異なっている。一般に、腫瘍組織が正常組織から派生する前に、正常組織はいくつかの変化を被っている。これらの変化は、さまざまな内因性要因及び外因性要因によって誘発される可能性がある。少しばかり列挙すると、これらの要因には、いくつか遺伝性形質、染色体突然変異、ウイルスによって誘発される細胞の悪性形質転換、及び、紫外線及びX線照射の突然変異誘発効果が含まれる。
【0023】
正常な細胞が悪性になるまでの間に生じる再初期の変化は、生化学的なものである。最初に示される変化の1つは、腫瘍を大きいサイズに成長させて、酸素要求量を減少させる解糖作用が強まることである。侵襲性腫瘍細胞は、その主成分がコラーゲンIVである、基底膜障壁を破壊するタイプIVコラゲナーゼを分泌する。このため、侵襲性腫瘍細胞は、下にある基質または結合組織に浸透することが可能になる。いくつかの他の酵素(例えばカテプシン、ヒアルロニダーゼ、プロテグリカン、及び、タイプI、II、及び、IIIのコラゲナーゼ)は、細胞外基質を弱め、さらなる腫瘍の侵襲の一因となる。腫瘍のサイズが1ないし2mm3を超えると、酸素及び他の栄養素の供給が制限されることになる。いくつかの腫瘍は、腫瘍の成長を持続するために必要な酸素及び栄養素を供給する血管の形成を腫瘍内において誘発する、腫瘍血管形成因子を分泌することが明らかになっている。
【0024】
形態変化は、後で、腫瘍の進行中に明らかになる。こうした変化は、いかなるものであれ、平均細胞サイズ、細胞外観、細胞配列の変化、及び、非先天性細胞の存在として定義される。さらに、血管形成の効果による潅流の増大によって、組織の外観全体に相違が生じることになる。正常組織は、細胞のタイプ及び配列がはっきりと分化する。さらに、正常細胞は、組織の特異性が強い。腫瘍細胞は、この組織の特異性、並びに、細胞の分化及び配列を失う。腫瘍細胞と正常細胞の顕著な相違は、細胞質における細胞骨格、微小管網、及び、微小繊維網の変化出ある。正常細胞における細胞骨格は、極めて整然としているが、腫瘍細胞は、無秩序である。さらに、腫瘍細胞は、急速に分裂するので、核内の染色質の含有量及び核のサイズが、両方とも、正常細胞を上回ることになる。
【0025】
吸収分光学的方法は、腫瘍の進行中に後で発生する形態変化に対していっそう敏感である。測定は、試料が光源と検出器の間に配置される透過幾何学配置においてなされるか、あるいは、光源と検出器が同じ側に配置される反射幾何学配置においてなされる。いかなる構成であろうと、腫瘍と正常組織の間に生じる組織の吸収の変化を測定することが可能である。例えば、血管形成による血管新生の増加によって、血管吸収が増大する。しかし、組織を伝搬して、再放出される光は、光の散乱相互作用によって強い影響を受けるので、ただ単に組織発色基の吸収スペクトルによって決まるわけではない。従って、吸収の変化の報告以外に、こうした技法は、その全てが、組織の散乱特性の変化に影響する、細胞及び細胞器官のサイズ、構造、及び、配列の変化に敏感である。腫瘍細胞は、核が大きくなっており、核は、屈折率が細胞質と異なるので、有効な光の散乱体の働きをする。同様の働きが、例えば、ミトコンドリア及び小胞体のような細胞器官からも観測される。
【0026】
従って、吸収分光学的方法の場合は2つの効果、すなわち吸収と散乱によって、検出器で測定される放射線量が決まる。従って、何らかの方法でこれらの効果を分離して、組織特性の正確な測定が得られるようにする必要がある。これを達成するためいくつかの技法が先行技術に示されている。例えば、本明細書において援用されるWang他の米国特許第5,630,423号及びこれに引用される文献を参照されたい。現在では散乱及び吸収係数を妥当な正確度の範囲内で求めることが可能である。
【0027】
吸収分光学的方法の異なるアプローチは、反射偏光解消技法の利用である。このアプローチでは、直線偏光が、組織に当てられ、戻された反射イメージが、入射光の偏光方向に対して平行な偏光子と垂直な偏光子を介して検分される。平行成分は、表面組織の試料採取を行い、垂直成分は、より深い組織の試料採取の後、複数回にわたって散乱し、その結果、偏光解消する。表面組織の試料採取を行った光子を分析することによって、散乱効果と関係のない、この組織の吸収スペクトルを発生することが可能になる。さらに、分析に用いられる戻された放射線の偏光解消の程度を調整することによって、診査される組織の深さを制御することが可能である。
【0028】
初期生化学的変化は、先天性発色基の蛍光特性の変化によって最もよく検出される。組織に含まれる主蛍光体は、芳香性アミノ酸チロシン、フェニルアラニン、及び、トリプトファン、代謝物NAD(H)及びFAD(H)、及び、構造的蛋白コラーゲン及びエラスチンである。これらの蛍光体の全てが、特性吸収及び蛍光スペクトルを有している。これらの分子の蛍光特性は、pH、溶媒和、及び、酸化状態を含む物理化学的環境によって決まる。例えば、還元形NAD(H)は蛍光を発するが、酸化形NAD(H)は蛍光を発しない。FAD(H)に関して、この逆が当てはまる。上述の腫瘍細胞によって分泌される各種タンパク質分解酵素の構造的タンパク質に対する作用によって、蛍光成分(トリプトファン、フェニルアラニン等)が異なる局部的環境(異なる溶媒和、粘性、及び、疎水性)にさらされ、その結果、その蛍光特性に変化を生じることになる。
【0029】
生化学的変化は、前者の結果として生じる形態変化に先行するが、その固有の生化学的特徴においてのみまわりの正常組織と異なる病的組織について考えるのは非現実的である。これが本当であれば、ただ単に蛍光を測定することによって、病的異変を識別し、突き止めることが可能である。実際には、さまざまな程度の形態変化が、生化学的変化に付随して生じる。これらの変化は、後で、腫瘍の進行中に現れ、平均細胞核、細胞サイズ、細胞外観、細胞配列の変化、及び、非先天性細胞の存在として定義される。さらに、例えば、血管形成による潅流の増加といった宿主反応の効果によって、組織の外観に全体的な相違が生じることになる。形態が変化すると、励起光及び蛍光の両方を吸収及び散乱して、真の蛍光信号を変化させることによって、測定の複雑性がさらに増すことになる。腫瘍が初期の場合、測定可能な形態変化が生じている可能性は低く、従って、近接する正常組織から初期腫瘍を識別することができる可能性のあるのは、蛍光だけである。しかし、大幅な形態変化が生じると、測定には、散乱及び再吸収による蛍光信号の変化から蛍光スペクトルの変化を切り離す、または、分離するというさらなる複雑化が伴うことになる。例えば、正常な結腸組織から過形成及び線腫様ポリープを診断する場合、参考までに本明細書において援用するLasers in Surg.Med(12)1992の63〜78ページにおいてShoemacher他によって教示されているように、組織タイプが正常タイプから変化すると、390nmの蛍光(337nmの励起光)を発する病的異変が観測される。これは、コラーゲン蛍光の減少またはヘモグロビン吸収の増大と解釈することが可能である。実際、著者の明らかにするところによれば、この効果は、線腫における肥厚粘膜によって粘膜下層のコラーゲンからの蛍光が遮蔽されるためである。
【0030】
従って、ただ単に蛍光のスペクトル・シフトまたは強度変化を測定するだけでは、明らかに、組織特性の変化を正確に測定し、例えば、蛍光に基づく診断を下すには不十分である。散乱及び吸収の効果から真に独立した蛍光測定を行うのは困難である。
【0031】
それらの相対的程度が腫瘍の進行程度によって変動する、生化学的変化と形態変化の効果を分離するため、多モード・アプローチが必要になる。こうしたアプローチは、問題となる領域の蛍光スペクトルと吸収スペクトルの両方を測定可能な装置を必要とする。測定は、同一条件を確保するため、できれば同時に同じ場所で実施しなければならない。
【0032】
分離は、後述するさまざまなやり方で実施することが可能である。
【0033】
時間分解蛍光法は、散乱及び吸収の効果からほぼ独立している。これは、とりわけ、上皮癌及び光の移動距離が短い同様の状態の診断に当てはまる。時間分解測定は、蛍光体の蛍光寿命を測定する。これは、固有の分子特性であり、それ自体、蛍光体の濃縮(十分なS/N比の測定可能信号が生じる場合)または光源の揺らぎといった外部干渉とは無関係である。こうした方法は、蛍光移植片からの経皮的測定について立証されており、定常状態の蛍光測定に優れることが分かっている。参考までに、本明細書において援用されている、Bambot他のBiosens and Bioelectronics(10)1995の643〜652ページ、及び、Rao他に対する米国特許第5,628,310号を参照されたい。蛍光スペクトル・シフト及び強度変化を生じることになる同じ組織の生化学的変化は、一般に、蛍光寿命も変化させる。一般に知られるように、励起状態の蛍光体を激減させる非放射状突起は、蛍光寿命を大きく変化させる。こうした非放射状突起は、おそらく、発生する腫瘍に固有の蛍光体のまわりの物理化学的環境が変化する結果である。
【0034】
時間分解法は、時間領域または周波数領域で実施されるが、後者は、位相変調蛍光光度法としても知られている。位相変調測定は、蛍光の減衰時間を直接するために用いられるよりも安価で、複雑でない測定器具を使用して実施することが可能である。例えば、輝度変調光ビームを試料に当てることが可能である。試料から戻される蛍光も、同じ周波数で輝度変調される。しかし、組織における蛍光体の蛍光寿命が有限であるため、戻される蛍光信号は移相するが、この移相は、蛍光寿命に関連している。
【0035】
時間分解法の利用にとって最大の障害はコストである。このコストは、変調周波数と光の周波数の両方の大きさに比例する。用いられる変調周波数は、公称では、診査される蛍光体の寿命の逆数である。病的変異のマーカの働きをする組織に固有の発色基の短い(数ナノ秒)蛍光寿命を考慮すると、高変調周波数(数百メガヘルツ)が必要とされ、RF装置及び技法が必然的に必要になる。さらに、大部分の固有の発色基は、低波長(高周波数)で吸収が最大になる。これらの波長で動作し、必要な周波数波長で固有の変調を施すことが可能な半導体光源及び検出器は、高価であり、滅多にない。こうは云ったものの、低波長光源/検出器及びRF周波数デジタル電子機器の両分野とも、研究及び開発の盛んな分野であり、将来は、大幅なコスト低下が期待される。
【0036】
蛍光寿命を決定する上述の位相変化法に対する代替法は、蛍光の偏光消去または異方性の測定である。用いられる測定器具は、反射偏光消去に用いられるものと同様である。実際、両方の原理に基づく測定に、同じ測定器具を容易に利用することが可能である。透明溶液(光子が散乱によって偏光消去することのない)中において、蛍光の偏光異方性を測定することによって、診査される蛍光体の蛍光寿命の推定値が得られる。これは、蛍光異方性(r)と寿命(τ)を関連づけるPerrin方程式(Perrin他)によって下記のように表される
【0037】
【数1】
Figure 0004474050
方程式1
【0038】
ここで、rはブラウン運動がない場合、すなわち凍結状態にあるか、極めて粘性の高い媒体内にある場合の分子の異方性であり、τは観測される時間平均異方性であり、τは分子の蛍光寿命であり、φはブラウン回転相関時間である。
【0039】
厳密に云えば、上記方程式は、蛍光寿命と異方性の両方における単一指数関数的減衰に関してのみ有効である。異方性減衰は、球状分子に関してのみ単一指数関数的である(異方性偏光消去)。回転相関時間は、簡略化のため、球体に関して下記のように定義される。
【0040】
【数2】
Figure 0004474050
方程式2
【0041】
ここで、ηは粘度であり、Vは体積であり、Rは一般気体定数であり、Tは絶対温度である。
【0042】
方程式1(数1)に示すように、異方性は、蛍光寿命と回転相関時間の両方からの変化を反映する。固有蛍光体の蛍光寿命は腫瘍の進行につれて変化する。同様に、微小粘度、温度、または、膜流動度といった局部的物理特性が変化すると、回転相関時間が変化し、その結果、異方性が変化する。参考までに援用されている米国特許第4,115,699号、第4,122,348号、及び、第4,131,800号には、外因性疎水性色素及び蛍光偏光消去法を用いた、悪性腫瘍による局部的微小粘度及び流動度の変化の測定が開示されている。
【0043】
生体内組織測定に適用した場合の、この技法に関する原理上の欠点は、組織内の複数散乱事象によって生じる偏光消去である。しかし、励起偏光のかなりの部分は、蛍光体の励起前は、偏光状態のままであり、結果生じる蛍光も、検出器に達する時点では、ほぼ偏光状態にある。それにもかかわらず、蛍光寿命及び回転相関時間に起因する偏光消去から、散乱による偏光消去を分離する必要がある。
【0044】
本発明による技法は、分光データだけに基づいてさまざまな癌組織の段階から正常組織を判別するように設計されている。より明確な判別を実現するには、例えば、患者の年齢、閉経期の状況、月経状態、及び/または、病気の前歴といった追加要素を分光学的入力に追加することが可能である。
【0045】
本発明による多モード・アプローチは、イメージング・モードで実施することが可能である。換言すれば、高空間分解能でいくつかの診査ポイントで組織を同時に診査する場合に、複数の分光学的方法が用いられる。このアプローチの支えとなる理由は、患者間における既知の正常組織の分光学的特徴の変異性、及び、患者の99%は、器官全体が病気にかかっているわけではないという事実である。
正常な組織に関する先験的知識なしでこれを行う最良の方法は、正常組織と異常組織の両方、すなわち、器官全体を測定することである。
【0046】
前癌または癌を有する器官の視角的に正常な領域は、必ず疑わしいところがあり、最終的な分析は、ほぼ必ず、生検及び組織検査の結果によることになる。この観測結果は、参考までに本明細書において援用される「Field Cancerization in Oral Squamour Epitheliumu:Clinical Implication of Multicentric Origin」in Cancer 6,1953の963〜968ページにおいて、D.P.Slaughter他が論じている、場癌化現象と一致する。徴候のかなりの部分は、とりわけ、乳癌に存在しており、これから明らかなように、患者の乳癌から派生した、正常と思われていた乳房の上皮が、前癌になっていることが「宣告される」。これによって、参考までに本明細書において援用される「The Prevalence of carcinoma In Situ In Normal and Cancer Associated Breasts」,Hum Pathol 16,1985の796〜807ページにおいて、G.F.Schwartz他が論じているように、病的異変に関して処置を受ける女性の二次乳癌発生率が比較的高いことの説明がつく。発明者の信ずるところによれば、同様のパターンが子宮頚癌にも存在し、参考までに本明細書において援用される「Cancer Diagnostics,The World Market,Clinica Reports,PJB Publications,1997」の72ページに記載のように、パパニコロー試験が陰性である病歴のある女性の多数(50%)が子宮頚癌を発生することの説明をつけることができる。こうしたパターンは、さらに、癌検出におけるイメージング・モードの利用のさらなる根拠となる。
【0047】
次に、図面に関連して本発明の説明を行う。
【0048】
図1は、本発明の望ましい実施態様による装置の概略図である。この装置には、できれば、1つ以上の放射光ファイバ52によって、標的組織50に伝達される電磁放射線を生じる放射線源20が含まれている。この装置には、放射線源20から放射される電磁放射線を選択的に制御するためのフィルタ22を含むことも可能である。放射線源20には、当該技術者に周知のように、例えば、レーザ、発光ダイオード、蛍光管、白熱球、または、電磁放射線を放射することが可能な他の任意のタイプの装置を含むことが可能である。
【0049】
標的組織50から戻される電磁放射線は、検出器56によって検知される。以下で述べるように、検出器は、それらに制限するわけではないが、蛍光、吸収、反射、異方性、位相変化を含む組織特性を判定するための既知方法の任意の1つ、または、本開示の背景技術のセクションにおいて論述した方法を含む他の任意の既知分光学的方法を用いることが可能である。検出器は、1つの測定だけの場合に比べて良好な、すなわち、正確な標的組織の特性に関する測度、従って、組織状態のより完全な診断が得られるようにする、2つ以上の分光学的方法を用いるのが望ましい。
【0050】
戻される電磁放射線には、励起放射線によって励起された標的組織の蛍光体からの蛍光放射と、標的組織から散乱または反射する励起電磁放射線の両方が含まれている。後述するように、望ましい実施態様の場合、検出器56は、前記両方の形の電磁放射線に対する強度ベースの測定を行う。これらの測定結果を組み合わせることによって、生化学的変化から形態変化が分離される。検出器には、当該技術者には、やはり、周知のように、例えば、光電子増倍管、感光ダイオード、電荷結合素子、または、他の任意のタイプの電磁放射線センサを含むことが可能である。
【0051】
検出器が小型の電荷結合素子であれば、内視鏡またはカテーテル器具の遠位端に配置することが可能である。この場合、電荷結合素子は、既に標的組織に隣接して配置されているので、検出器は、戻り放射線を直接検知することができる。電荷結合素子は、従って、その情報をプロセッサ44に伝達するための何らかの手段が必要になる。
【0052】
検出器が、器具の遠位端に配置された電荷結合素子でなければ、戻される電磁放射線は、1つ以上の戻り光ファイバ54を介して検出器56に伝導することが可能である。戻り光ファイバ54及び励起光ファイバ52は、同じ器具の同じ場所に配置することもできるし、あるいは、別個の器具に配置することも可能である。あるいはまた、器具内の同じ光ファイバを用いて、励起機能と戻り機能の両方を実施することも可能である。
【0053】
プロセッサ装置44には、メモリ45とディスプレイ47を含むことが可能である。実際、プロセッサ装置には、一般的なパーソナル・コンピュータを含むことが可能である。
【0054】
本発明の望ましい実施態様の場合、検出器56は、標的組織から散乱または反射する励起電磁放射線と同時に、標的組織からの蛍光放射も検出して、被検組織の完全な分析を施すことが可能である。あるいはまた、検出器は、まず、標的組織の蛍光体からの蛍光放射を検出し、それから引き続き、標的組織から散乱または反射する励起電磁放射線を検出するように構成することも可能である。後者の場合、今後は「クリティカル・タイミング・ウィンドウ」と呼ばれる、検出間の時間期間を最小限に抑えて、結果全体を損なうことになる、動きの人為的成分及び/または大幅な組織の変化を回避しなければならない。検出間の時間期間は、約0.25秒未満が望ましいが、時間期間が短いほど、結果は正確になる。
【0055】
図2には、本発明による測定技法を実施するために用いることが可能な内視鏡が示されている。内視鏡60には、放射線源20から標的組織に電磁放射線を伝搬することが可能な伝送光ファイバ束52が含まれている。内視鏡60には、標的組織から検出器56に蛍光放射及び/または反射/散乱電磁放射線を伝達するための戻り光ファイバ束54も含まれている。これに代わる実施態様では、伝搬及び戻り光ファイバは、後述のように、同じ場所に配置することもできるし、同じ光ファイバとすることもできるし、あるいは、二重組をなす光ファイバとすることも可能である。
【0056】
すなわち、1つのポイントだけ、または、最小数のポイントではなく、複数の診査ポイントにおいて同時検出を行うことが望ましい。これによって、さらに詳細に後述するように、組織のある領域またはほぼ組織全体にわたって場の影響の変化を評価することが可能になる。1つの診査ポイントだけ、または、最小数の診査ポイントで測定を行うと、組織の状態を正確に反映するのに十分な組織領域の試料採取が行えないので、誤りを犯すことになる可能性がある。
【0057】
例えば、検出器は、被検組織のほぼ全表面積にわたって分布する多数の診査ポイントで検出するように構成することが可能である。すなわち、戻り光ファイバ54には、できれば、被検組織のほぼ全表面にわたる、組織上における対応する多数の診査ポイントで検出できるように分布した多数の光ファイバを含むことが可能である。光ファイバのそれぞれは、励起電磁放射線を被検組織に送り、次に、戻り電磁放射線を検出器56に戻すことが可能である。組織は、全体として分析することもできるし、あるいは、複数の場領域に分割することも可能である。
【0058】
あるいはまた、伝送光ファイバ及び戻り光ファイバは、診査ポイントのそれぞれに配置することが可能である(例えば図7Bを参照)。さらに、各診査ポイントには、二重組をなす光ファイバ、すなわち、蛍光を検出するための伝送光ファイバ及び戻り光ファイバと、散乱または反射を検出するための伝送光ファイバ及び戻り光ファイバを含むことが可能である(例えば図7Cを参照)。こうした場合、光ファイバは、被検組織上の同じポイントに焦点を合わせるように構成することが可能である(例えば図7Dを参照)。
【0059】
さらに、この装置には、図5の実施態様に関連して解説される回転式コア114を含むこともできるし、あるいはまた、回転式テーブル(図示せず)上に組織を載せて、検出器56によって、複数診査ポイントのある部分だけが診査されるようにすることも可能である。次に、回転式ヘッドまたは回転式テーブルのいずれかを回転させることが可能であり、検出器は、次の組をなす診査ポイントで検出を行うことになる。このプロセスでは、被検組織のほぼ全表面を網羅するため、例えば、続けて6回転することになる。
【0060】
内視鏡60には、内視鏡の位置決めを行うための、あるいは、患者から組織標本を切除することを意図した、内視鏡60の遠位端にある装置を操作するためのハンドル62を含むことも可能である。内視鏡には、標的組織にある用量の薬剤を送り込むための装置66を含むことも可能である。また、電磁放射線源20は、内視鏡によって標的組織に送ることが可能な治療放射線を一挙に放出するように構成することも可能である。
【0061】
図3A及び3Bには、本発明を具現化することが可能な内視鏡またはカテーテルの構造が示されている。この装置には、人間または動物の体内に挿入することを意図した長い本体部分が含まれている。本体部分70は、人間または動物の血管または他の管腔に挿入するのに十分なほど小さい直径を備えていなければならない。
【0062】
この装置には、光ファイバ72a〜72cの近位端を保持する遠位端80が含まれている。光ファイバは、装置の全長に沿って延び、遠位保持部分74に終端がくる。遠位保持部分74は、光ファイバを所定の配向をなすように保持する。光ファイバは、装置の遠位端76の選択部分を照射できるように保持される。この配向によって、光ファイバの遠位端は、装置の遠位端76の外側の選択領域から放射線を受けることも可能になる。
【0063】
図3Bに示すように、光ファイバは、単一の中心光ファイバ72aが、第1のリングをなす光ファイバ72bによって包囲され、これらの光ファイバ72bが、さらに、第2のリングをなす光ファイバ72cによって包囲されるように構成されている。もちろん、光ファイバの他の配向も可能である。
【0064】
光ファイバのうちの選択されたものに励起電磁放射線を当て、光ファイバのうちの選択されたものを介して戻されてくる電磁放射線をモニタすることによって、装置の遠位端外の選択位置における標的組織の特性を判定することが可能になる。例えば、中心光ファイバ72aが、標的組織に向けて電磁放射線90を放出し、戻り電磁放射線が同じ光ファイバを介して検知される場合、上述の方法の任意の1つを用いて、戻り電磁放射線を分析し、装置の遠位端の中心に隣接して配置された標的組織の特性を判定することが可能である。同じプロセスを用いて、装置の遠位端の周囲のさまざまな位置における標的組織の状態を判定することが可能である。
【0065】
図4A〜4Cには、装置のそれぞれに異なる遠位端が示されている。
【0066】
図4Aの場合、光ファイバの遠位端は、特定の方向に光ファイバ97の遠位端を向ける保持部分98によって保持されている。保持部分98には、たわみワイヤまたはバー96が取り付けられていて、装置の近位端まで延びている。たわみワイヤまたはバー96を回転させると、保持部分98も回転させることができる。これによって、光ファイバの遠位端を装置の遠位端の異なる部分に向けることが可能になる。
【0067】
図4Bには、1つ以上の膨張させることが可能なバルーン部分92a、92bを含む本発明のもう1つの実施態様が示されている。光ファイバ72が、保持部分94によって装置の中心に配置されている。膨張させることが可能なバルーン92a、92bのそれぞれも、保持部分94によって保持されている。異なるバルーン部分を選択的に膨張または収縮させることによって、装置の遠位端の異なる部分を照射するように、あるいは、装置の遠位端に隣接した選択部分からの戻り放射線を受光するように、光ファイバ72を向けることができる。
【0068】
図4Cには、図3A及び3Bに示す実施態様と同様の装置の実施態様が示されている。この図には、光ファイバ72a〜72cを通る電磁放射線を用いて、装置の遠位端の選択部分に隣接した材料または組織を選択的に照射することが可能な方法が示されている。図4Cの場合、上方光ファイバだけが、装置外に電磁放射線を放射している。この電磁放射線は、血管の内壁に形成されたプラークを破壊または微塵にするために用いられている。電磁放射線を光ファイバのうちの選択されたものに適用することによって、医師は、標的組織または材料に関する問題を慎重に除去または矯正することができる。
【0069】
図5には、組織特性を判定するために用いることが可能な本発明を具現化するもう1つの装置が縦断面図で示されている。器具110には、標的組織に接するように構成された円形端部キャップ12を備えた円筒形外側ハウジング112が含まれている。外側ハウジング112には、回転円筒形内側ハウジング114が取り付けられている。内側ハウジング114内には、光ファイバ束116が配置されている。
【0070】
光ファイバ116は、内側コア114の全長に沿って通り、外側ハウジング112の端部キャップ120に隣接した端部において特定のパターンをなすように構成されている。端部キャップ120に隣接した内側コア114の端部は、回転軸受け122を備えた外側ハウジング112内に取り付けられている。端部キャップ120は、電磁放射線が、光ファイバから、端部キャップを通って、端部キャップ120に隣接した標的組織を照射するように、少なくとも部分的に透明または透過性になっている。次に、標的組織から散乱するか、または、標的組織によって発生する光が、端部キャップ120を通り、光ファイバ116に沿って戻される。
【0071】
内側コア114は、また、回り止め機構118によって外側ハウジング112の内部に取り付けられている。回り止め機構は、内側コア114を支持し、内側コアが、外側ハウジング112内において所定の角度だけ回転できることを補償する。
【0072】
図6Aには、図5の切断線10−10に沿って描かれた器具の実施態様の断面図が示されている。内側コア114は、回り止め機構によって外側ハウジング112内に支持されている。この実施態様の場合、回り止め機構には、内側コア114から離れる方向にバイアスをかけられたバネ付きフィンガ136を備える2つの取り付け部134が含まれている。回り止め機構には、それぞれ、中央凹部132を備えた、4つのストッパ130も含まれている。バネ付きフィンガ136は、ストッパ130の中央凹部132に係合して、回転式内側コアを所定の各回転位置で停止させるように構成されている。図6Aに示す実施態様の場合、外側ハウジング112の内表面には、4つのストッパが設けられている。従って、内側コア11は、約90゜の増分で回転可能である。図6Aに示すものと同様の代替的な実施態様では、それぞれ、それ自体のバネ付きフィンガ136を備えた、4つの取り付け部134を内側コア114に取り付けることが可能である。4つのこうした取り付け部を設けることによって、内側コア114を外側ハウジング12内においてよりしっかりと中心に保持するのに役立つことになる。
【0073】
図6Bには、回り止め機構の他の代替的な実施態様が示されている。この実施態様の場合、外側ハウジング112の内部に、6つのストッパ130が間隔をあけて配置されている。それぞれ、それ自体のバネ付きフィンガ136を備えた、3つの取り付け部134が、内側コア114に取り付けられている。3つの取り付け部134は、内側コア114の外部に、約120゜の間隔をあけて配置されている。この実施態様によれば、内側コアを60゜の増分で所定の位置まで回転させることが可能である。さらに、120゜離れた3つの取り付け部は、内側コア114を外側ハウジング112の中心に支持された状態に保つのに役立つ。
【0074】
図5を参照すると、光ファイバの端部は、所定のパターンをなすように光ファイバを保持する円形端板121に取り付けることが可能である。円形端板121は、円筒形内側コア114の端部にしっかりと固定されることになる。さらに、外側ハウジング112の端板121と端部キャップ120の間には、屈折率整合剤123を配置することが可能である。屈折率整合剤123は、光屈折率整合剤と、端部キャップ120に対する端板121の自由回転を可能にする潤滑剤の両方の働きをすることが可能である。
【0075】
図7Aには、測定器具の実施態様の面に光ファイバを配置する方法が示されている。図7Aには、図5に示す装置の端部キャップ120であろう測定器具の面が参照番号140で表示されている。黒い円142は、端部キャップ120の裏の光ファイバの位置を表している。中空の円144は、測定器具の内側コア114が約90゜回転した場合に、光ファイバが到達する位置を表している。従って、円のそれぞれは、光ファイバで診査することが可能な位置を表している。
【0076】
この装置の実施態様には、単一光ファイバが、図7Aに黒い円142で示す位置のそれぞれに配置されることになるものもある。この場合、励起光は、光ファイバに沿って進行し、黒の円142で表示された各診査ポイントから放出されることになる。標的組織から散乱するか、または、標的組織によって生じる光は、同じ光ファイバを進行して、図1に示す検出器56のような検出器または検出器アレイまで戻ることになる。
【0077】
これに代わって他の実施態様では、図7Bに示すように、対をなす光ファイバを黒の円142A、142Bで表示された各位置に配置することが可能である。この実施態様の場合、各対をなす光ファイバの一方が、励起光を標的組織に伝導し、各対をなす光ファイバのもう一方が、標的組織から散乱するか、または、標的組織によって生じる光を検出器に伝導することになる。さらにもう1つの実施態様では、図7Cに示すように、黒の円142A、142B、142C、142Dで表示の各診査位置に、励起光を伝搬するための複数光ファイバ、及び/または、標的組織から散乱するか、または、標的組織によって生じる光を伝搬するための複数光ファイバを配置して、例えば、蛍光と反射率の両方を同時に検出できるようにすることが可能である。この後者の場合、図7Dに示すように、光ファイバは、被検組織の同じポイントに焦点が合うように構成することが可能である。
【0078】
図7Aに示す光ファイバ・パターンを備えた測定器具を用いるため、まず、測定器具は、端部キャップ120が標的組織に隣接するように配置される。端部キャップ120は、標的組織に接触させることもできるし、あるいは、標的組織の表面から間隔をあけて配置することも可能である。また、端部キャップ120と標的組織の間に屈折率整合剤を挿入することも可能である。次に、最初の測定サイクル中に、光ファイバを用いて、図7Aの黒の円142を備えた診査位置のそれぞれにおける組織の特性が同時に測定されることになる。組織の特性は、上述の測定技法の任意の1つを用いて測定することが可能である。次に、外側ハウジング112内において、内側コア114を約90゜回転させ、第2の測定サイクル中に、光ファイバを用いて、図7Aの中空の円144を備えた診査位置のそれぞれにおける組織の特性が同時に測定されることになる。
【0079】
測定器具には、端部キャップ120または他のどこかに、ユーザが、何回転したか、従って、組織のどれだけが分析されたかを確認できるようにするための位置表示ツールの働きをする、マーキング(図示せず)を含むことが可能である。
【0080】
図5、6Aまたは6Bに示すように測定器具を構成し、図7A〜7Dに示す光ファイバ・パターンの任意の1つを施すことには、多くの重要な利点がある。例えば、このように測定器具を構成すると、測定器具は、内側コアが回転しない場合に可能であるよりも多くの標的組織のポイントを診査することが可能になる。内側コア114を回転させて、標的組織の異なる位置で第2の一連の測定を行うことができるので、装置の分解能が大幅に増すことになる。
【0081】
さらに、多数の光ファイバが、測定器部の組織接触面に詰め込まれると、光ファイバ間のクロストークが生じる可能性がある。クロストークは、ある診査位置からの励起光が、標的組織から散乱して、隣接する診査位置に入射する場合に生じる可能性がある。クロストークは、また、第1の診査位置からの励起光が、標的組織を通って進行し、隣接する診査位置に入射する場合に生じる可能性もある。クロストークを低減または排除する最も容易な方法の1つは、診査位置間の間隔をさらに離すことである。しかし、診査位置間の間隔を広くすると、装置の分解能が低下することになる。
【0082】
回転式内側コアを備えた本発明を具現化する測定器具では、任意の単一測定サイクル中における診査位置間の間隔を、クロストークを低減またはほぼ排除するのに十分なだけ広げることが可能である。複数測定サイクルを利用すると、装置は、優れた分解能を得ることができる。従って、クロストークによって生じる感度または選択性にとって望ましくない影響を受けることなく、良好な分解能が得られる。さらに、所定の分解能を得るのに必要とされる光ファイバ数及び対応する検出器数が少なくなる。
【0083】
さらに、標的組織全体にわたって間隔をあけて配置された位置から同時に複数の組織測定結果を得る能力には、他の利点もある。測定器具が、癌の成長または他の組織疾患の検出を意図したものである場合、測定器具によって診査される標的組織は、正常組織と罹病組織の両方を備えている可能性がある。上述のように、組織特性は、人によって大幅に異なる可能性があり、比較的短い時間期間において大幅に変動する可能性がある。これらの理由から、罹病領域の位置を確認する方法の1つは、正常組織の基準を確立し、次に、各診査ポイントの測定値と基準測定値を比較することである。罹病領域の位置を確認する最も容易な方法は、単純に測定値の異常または差異を探すことである。
【0084】
組織特性は、比較的急速に変化する可能性があるので、組織特性間における正確で、はっきりと定義された差異を確立するためには、できるだけ大きい領域にわたって複数の示度の読み取りを同時に行うことが望ましい。本発明による望ましい方法の場合、これには、複数の診査ポイントで蛍光測定を行い、その後、引き続き、同じ複数の診査ポイントで反射率測定を行うことを含めることが可能である。あるいはまた、蛍光測定と反射率測定を同時に行うことも可能である。理想を云えば、同じ時間期間中に、全ての測定を実施すべきである。望ましい実施態様の場合、該装置及び方法は、少なくともこのクリティカル・タイミング・ウィンドウ内において測定を実施する。臨界タイム・ウィンドウは、本明細書に記載の利点を生じる、2つの分光測定間における最長所要時間と定義される。この値は、後述する要因を含む、さまざまな要因によって変動する可能性があるが、後続の測定間におけるクリティカル・タイミング・ウィンドウは、さらに後述するように、約0.25秒未満が望ましく、約0.1秒未満であればいっそう望ましい。
【0085】
同時に、または、できる限りほぼ同時に、診査ポイントの蛍光測定及び反射率測定を実施することを望ましいものにする効果が、いくつか存在する。まず、各心拍サイクル中に生じる血圧変化が、組織中の血液含有量に大きく影響する可能性がある。血液は、所定の光の波長をしっかりと吸収するので、心拍サイクルの異なる部分において診査ポイントに存在する血液量が変動することによって、大幅に異なる測定結果を生じる可能性がある。
【0086】
この潜在的エラー源を排除するため、血液含有量が同じままである十分に短いタイム・ウィンドウ内において、蛍光測定と反射率測定の両方を実施しなければならない。約0.25秒未満の時間期間で十分のはずである。潜在的エラーを排除するもう1つの方法は、心拍サイクルの異なる部分において、同じ診査ポイントの複数測定を行い、さらに、その結果を平均することである。
【0087】
考慮すべきもう1つの要因は、患者の動きである。測定サイクル中に、患者がわずかでも動くと、測定器具と診査を受ける組織との間の接触圧が変化する可能性がある。これは、測定結果にも影響を及ぼす可能性がある。従って、同時、または、できる限りほぼ同時に測定結果を得ることは、患者の動きによって生じる測定エラーの阻止にも役立つことになる。
【0088】
また、組織腫瘍は、わずか約1mmといった場合もあるので、装置の分解能は、約1mmであることが望ましい。換言すれば、必要な分解能を得るには、診査位置間の間隔を約1mmにすることが望ましい。あいにく、単一測定サイクル中において、診査位置間の間隔が約1mmの場合、かなりのクロストークが生じる可能性があり、測定結果の正確度が不十分になる。
【0089】
本発明を具現化する測定器具によれば、クロストークをほぼ排除するのに十分な間隔をあけて診査位置を設定し、なおかつ、必要な1mmの分解能を得ることが可能になる。各測定サイクルにおいて、全ての測定結果が厳密に同時に得られるわけではないが、正常領域及び罹病領域を含んでいるはずの、標的組織全体にわたって間隔をあけた位置で、同時に測定が実施されることになる。従って、各測定サイクルからの結果を利用して、罹病領域の位置確認に役立つ組織特性の変異を検出することが可能である。これらの理由から、本発明を具現化する測定器具では、分解能、クロストークの排除、及び、時間変化する組織特性を確実に考慮に入れるため、全ての測定を同時に実施する要望といった、競合する設計要件のバランスがとられる。
【0090】
図8には、図5に示す装置の光ファイバに関する第2の構成が描かれている。この実施態様の場合、診査位置は、六角形のハニカム・パターンをなすように配置される。黒の円142は、第1の測定サイクル中に、光ファイバが占めることになるであろう位置を表し、中空の円144は、内側コア11が約60゜回転した後の、第2の測定サイクル中に、光ファイバが占めることになるであろう位置を表している。このパターンによって、各測定サイクルにおける隣接診査位置間の最大間隔が得られ、測定器具の分解能がほぼ倍になる。
【0091】
図9には、図5に示す装置の光ファイバに関する第3の構成が描かれている。この実施態様の場合、光ファイバは、やはり、六角形のハニカム・パターンに従って構成される。しかし、この実施態様で用いられる光ファイバは、はるかに少ない。この第3の実施態様は、6つの測定サイクルを必要とする測定プロセスにおける利用を意図したものである。装置の内側コアは、各測定サイクル間において約60゜ずつ回転することになる。一連の6つの測定サイクルを通して、装置は、最終的に、図9に示す黒の円の診査位置142及び中空の円の診査位置144を全て診査することになる。この実施態様によれば、単一測定サイクル中における診査位置間の離隔距離をさらに広くし(クロストークを低減するか、または、ほぼ排除するため)、なおかつ、優れた測定分解能を実現することが可能になる。さらに、所定の測定分解能を実現するのに必要な光ファイバ及び対応する検出器が、はるかに少なくなる。
【0092】
出願人によって、クロストークをほぼ排除するのに必要な診査位置間の間隔を決定するための実験的研究が実施された。この研究は、各診査位置毎に1対の光ファイバを用いて実施されたが、この場合、各対をなす光ファイバの一方が、励起光を供給し、各対をなす光ファイバのもう一方が、光を検出するために用いられた。励起光ファイバの直径は、約200μmであり、検出光ファイバの直径は約100μmであった。測定は、光学標準試料と組織に対して実施された。これらの条件下において、診査位置を約3mmの間隔をあけて配置し、クロストークをほぼ排除する必要があった。従って、測定器具は、内側コアによって、診査位置を標的組織の異なる位置まで回転させることができるように、上述のような設計が施されていなければ、約3mmの分解能を実現することしかできないであろう。
【0093】
本発明の現在の望ましい実施態様では、図9に示すものと同様の光ファイバ・パターンが利用される。従って、装置は、標的組織内における全ての測定を完了するのに、6つの測定サイクルを実施するように設計されている。内側のコア114は、各測定サイクル間において60゜回転させられる。現在のところ望ましい実施態様では、各診査位置に光ファイバ対を利用する。各光ファイバ対には、直径が約200μmの励起光ファイバと、直径が約100μmの検出光ファイバが含まれている。この光ファイバの構成によって、診査位置の間隔を約3.0〜3.5mm離して、なおかつ、約1mmの分解能を実現することが可能になる。
【0094】
標的組織内における罹病領域の位置を確認するには、少なくとも2次元に間隔をあけた標的組織内の複数の異なる位置で測定を実施することが必要になる。各測定毎に、複数の励起波長を必要とし、散乱または発生する光の複数の波長の検出を必要とすることになる可能性がある。従って、測定には、3つの測定次元、すなわち、標的組織の領域に関する2つの次元と、スペクトル情報を含む第3の次元が必要になる。図10には、これらの3次元で測定を実施することが可能な装置が示されている。
【0095】
測定器具には、光源20とフィルタ・アセンブリ22が含まれている。複数の励起光ファイバ116aが、フィルタ・アセンブリ22から標的組織50に通じている。励起光ファイバ116a及び検出光ファイバ116bは、上述のように、対をなすように構成されている。
【0096】
光源20及びフィルタ・アセンブリ22によって、特定の波長の光を用いて、励起光ファイバ116aを介して標的組織50を照射することが可能になる。フィルタ・アセンブリ22は、光源20と励起光ファイバ116aの間に選択的に入りすることが可能な、単一光学帯域フィルタまたは複数光学フィルタとすることが可能である。あるいはまた、光源20及びフィルタ・アセンブリ22の代わりに、波長同調可能光源を用いることも可能である。さらにもう1つの実施態様では、レーザのような複数の光源を用いて、特定の波長または波長帯域の励起光を選択的に出力することが可能である。他の光源が適合する場合もあり得る。
【0097】
検出光ファイバは、光学系55に通じている。検出光ファイバ116bからの光は、光学系を通過して、検出器アレイ56に入射する。検出器アレイ56には、複数の感光検出器または複数の分光光度計を含むことが可能である。検出器アレイ56は、検出光ファイバ116bのそれぞれに関する測定結果を同時に得ることができるのが望ましい。
【0098】
光学系55には、検出器アレイ56が所定の波長の光の強度を測定できるようにする複数の光学フィルタを含むことが可能である。望ましい実施態様の場合、検出器アレイは、電荷結合素子(CCD)のような感光検出器の2次元アレイということになる。光学系には、各検出光ファイバ116bからの光を複数の異なる波長に分割し、CCD上のピクセル列に異なる波長の光の焦点を合わせるように構成された分光器が含まれることになる。従って、CCD上における各ピクセル列は、単一検出ファイバに対応する。単一光ファイバ116bによって伝搬される異なる波長の光の強度は、CCDのピクセル列の出力に基づいて決定することが可能である。特定のピクセルの出力が大きくなるほど、特定の波長における強度が増すことになる。
【0099】
望ましい実施態様は、優れた柔軟性を実現することが可能である。全ての波長の光が必ず検出されるので、測定器具のソフトウェアは、各測定毎に問題となるピクセルを簡単に選択し、それによって、特定の波長における強度を決定することが可能になる。第1の測定中に、蛍光特性を表す所定のピクセルを検査することができる。後続測定中に、散乱特性を表す異なるピクセルを検査することができる。また、装置は、基本的に、ただ単に制御ソフトウェアを変更することによって、異なる測定を完全に実施するように再構成することが可能である。従って、単一の装置を用いて、多種多様な異なる種類の測定を行うことが可能である。
【0100】
本発明の望ましい方法の場合、上述の構造の1つを用いて、一連の測定サイクルを実施することになる。回転式コアを備えた実施態様を利用する場合、装置の内側コアは、測定サイクル間に回転させられることになる。1つの測定サイクルの全測定が完了すると、内側コアが回転し、さらなる測定サイクルが実施されることになる。
【0101】
しかし、望ましい方法の場合、各測定サイクル毎に、2つ以上の分光学的方法を用いて、測定が実施される。例えば、測定装置は、単一測定サイクル中に、蛍光特性の測定と、反射率特性の測定を実施することが可能である。しかし、他の測定、及び、他の分光学的方法の組み合わせが適合する場合もあり得る。次に、蛍光測定結果と反射率測定結果を比較し、分析することによって、生化学変化による効果と形態変化による効果を分離して、組織の状態に関するより正確な診断が行えるようにすることが可能である。
【0102】
前述のように、同時にまたは間隔をあけて、被検組織のほぼ全表面領域にわたって測定を行い、その結果を分析することが可能である。あるいはまた、被検組織を場の領域に分割して、場のパターンを生成することが可能である。被検組織を場の領域に分割すると、例えば、変化が起こりそうな組織の特定領域といった、組織の特定領域の分析が可能になる。
【0103】
例えば、図1の診断装置には、さらに、図11Aに示すように、場領域調整装置560及び場領域処理装置570を含むことが可能である。場領域調整装置560は、図11B〜11Dに示すように、標的組織を複数の場領域580に分割して、場パターン500を生成する。場領域580は、任意の所望の形状及びサイズとすることが可能である(例えば図11B〜11Dに示される異なるサイズ及び形状の場領域を参照)。さらに、この分割は、標的組織の目視検査または標的組織に実施された先行試験結果に基づいて行うこともできるし、ユーザが装置に事前プログラムまたは入力することも可能である。次に、それぞれの場領域内の複数の診査ポイント542のそれぞれにおいて、検出器5による測定が実施され、その後、場領域処理装置570によって、それぞれの場領域580のそれぞれに関する測定結果の分析が行われる。場領域処理装置570は、さらに、それぞれの場領域580のそれぞれに関する結果と、その他の場領域580に関する結果を比較する。
【0104】
図11B及び11Cには、それぞれ4つと8つの「パイ型」場領域が示されている。各場合とも、それぞれの場領域内の複数の診査ポイント542のそれぞれにおいて、検出器5による測定が実施され、それぞれの場領域580のそれぞれについて、場領域処理装置570による結果の分析が実施された後、場領域調整装置560は、場領域を回転させて、異なる組をなす診査ポイントにまとめることによって、場領域580をリセットすることもできるし(図11Cに示す矢印を参照されたい)、あるいは、図11Dに示す場領域のような、サイズ及び形状の異なる場領域をセットすることも可能である。図11Dに示すように、これらの場領域は、サイズ及び/または形状が同じである必要はない。
【0105】
あるいはまた、場領域調整装置560及び場領域処理装置570をプロセッサ44に組み込み、分割をプロセッサまたは付属のソフトウェアに事前プログラムしておくことも可能である。
【0106】
図12には、本発明による望ましい方法のステップが示されている。第1のステップS1000において、標的組織が、所定の波長の電磁放射線、できれば、蛍光特性を検出するためのある波長と、反射率特性を検出するためのある波長の電磁放射線によって照射される。第2のステップS1010では、できれば、上述の光ファイバ構成の1つを利用した検出器56によって、戻り電磁放射線が検出される。ステップS1020では、蛍光強度及び反射強度が計算され、ステップ1030では、後述の望ましい方法を利用して、蛍光強度及び反射強度の計算及び分析が実施される。ステップS1040では、組織特性が判定される。
切り離しまたは分離は、後述するさまざまなやり方で実施可能である。総合的な判別を向上させるため、判別パラメータの任意のいくつかまたは全てを組み合わせることが可能である。
【0107】
1.判別パラメータとして蛍光測定強度と反射測定強度の線形組み合わせを利用する。
【0108】
【数3】
Figure 0004474050
方程式1
【0109】
ここで、λは、蛍光励起波長であり、λは、蛍光放出波長であり、Fは、蛍光強度であり、Rは、反射強度である。係数a、b、及び、cは、最良の判別が得られるように経験に基づいて選択された重み係数である。
【0110】
2.判別パラメータとして、蛍光と反射の比に関して線形組み合わせを利用する。
【0111】
【数4】
Figure 0004474050
方程式2
【0112】
3.判別パラメータとして複数蛍光放出波長における蛍光と反射の比に関する線形組み合わせを利用する。
【0113】
【数5】
Figure 0004474050
【0114】
ここで、λ1m及びλ2mは、2つの別個の蛍光放出波長であり、λ1x及びλ2xは、対応する励起波長であり、Fは、蛍光強度であり、Rは、反射強度である。係数a、b、及び、cは、経験に基づいて最良の判別が行えるように選択された重み関数である。
【0115】
4.判別パラメータとして量子収量(量子効率としても知られる)測定結果を利用する。量子収量は、吸収される光の光子当たりの蛍光体によって生じる蛍光光子数によって真の蛍光収量を定義する。
【0116】
【数6】
Figure 0004474050
方程式4
【0117】
蛍光強度及び反射強度は、背景光について補正され、較正標的から離れて測定された強度に対して正規化される。係数a及びbは、経験に基づいて最良の判別が行えるように選択された重み関数である。
【0118】
5.血液は、約410nm、545nm、及び、575nmの3つの別個の可視ピークを備えた広帯域の吸光度を有している。一方では、血液吸光度は、癌細胞における血管新生によって変化するので、病的異変の重要な標識である。他方では、血液吸光度に関連した人為的影響が、局所出血及び炎症から測定スペクトルに生じる。上述のスペクトル判別要素は、従って、血液吸光度について補正されなければならない。これは、判別要素を血液反射率に対して正規化することによって実施することが可能である。
【0119】
【数7】
Figure 0004474050
方程式5
【0120】
あるいは、血液反射率を減算することによって実施することも可能である。
【0121】
【数8】
Figure 0004474050
方程式6
【0122】
ここで、dは、経験に基づく補正係数であり、Rbloodは、経験に基づいて選択された血液の反射率である。
【0123】
6.あるいはまた、強度セットFλm、Rλm、および、Rλx(ここで、λは各蛍光体毎に選択される)が、原理構成要素分析またはロジスティック回帰における病理学的結果に対して集合的に調整される。従って、これらによって、例えば、参考までに本明細書に援用される「Classification and Regression Trees」,Monterey CA:Wadsworth & Brooks/Cole,1984においてL.Brieman他によって教示されている分類及び回帰の木(CART)、通常のネットワーク、及び、そのハイブリッドといった、パターン認識技法の基礎を形成することが可能である。
【0124】
本発明による技法は、分光学的データだけに基づいて、さまざまな癌組織段階から正常組織を判別するように設計されている。例えば、より明確な判別を実現するには、例えば、患者の年齢、閉経期の状況、月経状態、病気の前歴といった追加要素を分光学的入力に追加することが可能である。
【0125】
標的組織に対して複数の測定サイクルが実施され、所定のパターンをなすように構成された光ファイバを備える内側コアを測定サイクル間に回転させて、標的組織に対して複数の測定が実施される、上述の実施態様のそれぞれにおいて、他の代替的な実施態様では、回転機構以外の他の何らかの移動機構を用いることが可能である。本発明には、クロストークを回避するのに十分な間隔をあけた、制限された数の検出器によって、標的組織に対する複数の測定を実施可能にする他のタイプの移動または並進装置が包含される。また、前述のように、被検組織の全領域に対して同時に測定を行うこともできるし、あるいは、標的組織を場領域に分割し、各場領域毎に測定を実施することも可能である。
さらに、本発明を具現化する装置及び方法によって、身体の通路または管腔の内部における組織に生体内測定を実施することが可能になる。本発明を具現化する内視鏡を人間または動物の自然体内腔に挿入して、癌組織または罹病組織の存在を探索することが可能である。これは、検討を受ける人間または動物の体内の組織の位置を突き止め、検査するのに、手術の必要がなくなることを表している。
反射率測定と共に蛍光測定をいっしょに利用することによって、一方の測定だけの場合よりも正確な標的組織の特性判定が可能になる。
【0126】
上述の技法を利用して、標的組織のある領域の状態をマッピングすることが可能である。例えば、上述の技法を利用して、測定装置の遠位端に隣接した標的組織の状態を判定することが可能である。さらに、標的組織の異なる部分に隣接するように、測定装置を移動させ、測定を繰り返すことが可能である。このプロセスを多数回にわたって繰り返すことによって、標的組織領域のさまざまな部分の状態を判定することが可能になる。さらに、判定された状態を利用して、印刷するか、モニタに表示することが可能な、標的組織領域のマップを生成することが可能である。
【0127】
生体内組織診断及び病的異変測定に関する最も困難な問題の1つは、異なる患者間において、あるいは、同じ患者内においてさえ存在する、正常組織特性の生物学的多様性である。さらに、この多様性は、長期及び短期の両方において、時間変動する。長期変動は、患者の年齢、ホルモン環境、代謝、粘膜の粘度、及び、循環系と神経系の相違に起因する可能性がある。短期変動は、心拍、物理的動き、局所的温度変化等に起因する血液の潅流よる可能性がある。
【0128】
組織特性の変動性のため、標的組織が病気にかかっているか否かを正確に判定するには、標的組織の測定値と、同じ患者の正常組織の測定値を比較することが必要になる。既知の正常細胞の測定は、標的組織の測定と並行して、または、同時に行うのが望ましい。これにより、正常組織の測定値は、それからの変動を病気と解釈することが可能な、正常性の基準の働きをする。基準測定値に達するため、いくつかの方法を用いることが可能である。
【0129】
まず、皮膚の色素沈着(母斑)、または、結腸のポリープのような視覚的特徴を利用して、潜在的な異常領域を識別することが可能である。これらの潜在的に異常な、視覚的に明確に識別できる領域を包囲する、複数領域の正規化または平均化スペクトルを利用して、基準測定値を設定することが可能である。さらに、基準測定値は、異常な視覚的に明確に識別される領域で得られた測定値と比較することが可能である。
【0130】
視覚的特徴に基づく正常領域と異常領域の測定は、測定装置自体のイメージング機能を用いて自動化することが可能である。
【0131】
他の代替方法では、管腔または組織の一部に沿って間隔をあけた領域に対して測定を行うことが可能である。領域間の間隔は、診断を受ける組織のタイプによって決まることになる。次に、異なる領域で得られるここの測定値間の差が計算される。差があらかじめ設定された量を超えると、過剰に大きい差間の組織は病気にかかっているものと診断されることになる。さらに他の代替的な実施態様では、視覚的に疑わしい部位から遠ざかるにつれて生じるスペクトル応答の勾配を病気の標識として用いることも可能である。これは、容易に自動化され、いかなるイメージング様相においても有効に実施することが可能である。
【0132】
さらに、パターン認識アルゴリズム(例えばニューラル・ネットワーク)を用いて、同じ患者のさまざまな部位から得られた示度または異なる患者の複数の示度の差を分析することも可能である。
【0133】
子宮頚の組織変化の判定における本発明の有効性を判定するため、上記で教示された装置及び方法を利用して、予備テストが実施された。その結果については、以下で明らかにする。このテストでは、本発明によって得られた結果と、細胞学的検査、膣鏡検査、及び、組織学的検査の結果が比較された。
【0134】
この研究には、27人の登録者が参加したが、1人の患者からのデータは、装置のエラーのために収集できなかった。患者のうち5人は、装置/子宮頚界面における剛性の透明窓と、290及び460nmの波長の励起電磁放射線を発生することが可能なモノクロメータを備えた第1世代のプローブを用いて測定された。しかし、S/N比分析によって、迷光及び他の問題のために、蛍光測定に関して高波長(460nm)で、反射率測定に関して全波長で、データの大部分が役に立たなくなることが明らかになった。残りの患者については、たわみ窓、並びに、350nmの付加励起電磁放射線を利用可能にする新規のモノクロメータを備える、第2世代のプローブが用いられた。
【0135】
21人の患者の細胞学的検査、膣鏡検査、及び、組織学的検査の結果が、下記の表1において比較されている。21人の患者に関する組織病理学的検査結果によって、6人が、1人の癌を含めて、症状が中程度の/重い形成異常か、それ以上であることが明らかになった。テストを行った15人の重症より軽い症状の患者のうち、7人は、症状の軽い形成異常であり、3人は、炎症であり、2人は、膣鏡検査で正常に見えたが、子宮頚の病歴があって、独立した試験プロトコル下において90日前に局所治療が施されており、2人は、パパニコロー試験の結果が異常であったが、膣鏡検査が正常のため、生検が施され、1人は、パパニコロー試験及び膣鏡検査の両方の結果とも正常であり、従って、生検は施されなかった。
【0136】
【表1】
Figure 0004474050
【0137】
6つの重症の形成異常/癌のうち、パパニコロー試験によって、3つが正常、反応性、または、ASCUSとして誤って分類された(感度=50%)。パパニコロー試験と生検の両方の結果が得られた10の重症より軽い症例のうち、パパニコロー試験によって、10の症例全てが、重症より軽いと分類された(特定度=100%)。膣鏡検査によって、6つの重症の形成異常/癌の症例のうちの3つだけしか正確に分類されなかったが(50%の感度)、10の重症より軽い病変のうちの8つが正確に分類された(特定度=80%)。
【0138】
子宮頚組織における既知の生体分子の存在及び活動に対応する特定波長において、強度が検査された。蛍光測定は、約290nm(トリプトファン)、350nm(NADH)、及び、460nm(FAD)の波長で実施された。反射率測定は、約320nm、420nm(ヘモグロビン)、及び、540〜580nm(ヘモグロビン)の波長で実施された。これらは、これらの波長に関して優性生体分子を基準にしたものであるが、例えば、コラーゲン及びエラスチンのような二次生体分子を励起させることも可能である。反射率のピークは、上述の及びその他の生体分子が吸収しない、従って、観測される反射ピークを生じるスペクトル・ポイントを表すように見える約320nmにおいて見受けられた。
【0139】
測定は、光ファイバ・システムを用いて実施され、一連のCCDイメージとして蛍光及び反射強度データが得られた。有意のデータを抽出するため、組織測定に先立って、組織スペクトルが、一連の補正及び較正を受けた。波長較正が実施されたが、これには、各スペクトル・データ・ポイントに対する波長の割り当てを必要とする。背景減算が実施されたが、これには、CCDに生じる「暗」信号及び組織測定中に得られる任意の周囲光信号(例えば室内灯からの)の除去を必要とする。強度較正が実施されたが、これには、蛍光/反射標準について測定された強度による組織スペクトル強度の較正を必要とする。迷光補正が実施されたが、これには、励起モノクロメータ迷光に関する組織蛍光スペクトルの補正を必要とする。また、システム応答補正が実施されたが、これには、集光系(光ファイバ、フィルタ、分光器、CCD)の不均一なスペクトル応答の補正を必要とする。
【0140】
データの質を査定するため、S/N比(SNR)、クロストーク、及び、変動性が検査された。S/N比は、CCDからの電子ノイズ、並びに、蛍光信号に重畳される光学「ノイズ」及び人為的成分である。SNRが、必要を超える場合、露光時間を短縮することが可能である。SNRがあまりに低い場合には、露光時間を延長するか、他のオプションを試してみることが必要になる可能性がある。クロストークが生じるのは、所定の集光ファイバによって集められた光量が他の周囲の励起光ファイバによって影響を受ける場合である。このパラメータは、光ファイバと組織の間の相殺効果によって大いに左右される。変動性には、蛍光/反射率に基づく判別の診断能力に影響を及ぼすであろう、所定の状態(正常、形成異常等)にある上皮から測定されたスペクトルの患者間及び患者内変動性の量(例えばピークの強度及び/または位置)が含まれる。
【0141】
このテスト中に、3つの一般的なタイプ、すなわち、変動の平均、標準偏差、及び、係数に関するデータ分析が実施された。患者からの全スペクトルの波長のそれぞれにおける強度変動の平均、標準偏差、及び、係数が計算された。分析は、子宮頚の表面全体に分布した252のデータ・ポイントで得られた測定値を用いて実施された。子宮頚は、また、象限に分割され、各象限毎に測定された。さらに、正常組織を含む象限の生検結果が、異常のある組織を含む象限の生検結果と比較された。
【0142】
各患者毎に子宮頚の252のポイントからのスペクトルを検査するのは、SNRを推定する最も直截的な方法である。クロストーク及び変動性を査定する場合、有効な方法は、スペクトル・データに基づいて、子宮頚の擬似カラー・マップを作成することである。各スペクトルの重要なパラメータ(例えば信号波長の強度、2つの波長間の強度比)をカラー符号化して、それが測定された子宮頚の位置にマッピングすることが可能である。このタイプのマップによって、各患者から得られる大量のデータを、データにおける空間関係を定性的に洞察するのにより扱いやすい形に圧縮することが可能になる。
【0143】
子宮頚の252の全データポイントについて、それぞれの波長のそれぞれにおける蛍光及び反射強度測定が、いくつかの異なる方法で分析された。まず、変動の平均、標準偏差、及び、係数が、256の全てのデータ・ポイントからの測定結果を利用して計算された。これらの計算値を表したグラフが、図13〜26に示されている。データ・ポイントは、分光学的測定に引き続き実施された、組織学的検査に基づく正常、軽症の形成異常/炎症、または、重症の形成異常として特性が明らかにされる。
【0144】
次に、子宮頚が、4つのゾーン、すなわち、場領域に分割され、変動値の平均、標準偏差、及び、係数が、ゾーン毎に計算された。これにより、各ゾーンの結果を互いに比較して、子宮頚の潜在的に異常なゾーンの位置を突き止める試みが可能になる。各ゾーンに関する計算値を調べて、十分なS/N比が得られたか否かが確認された。特定のゾーンに関するS/N比が低すぎる場合、そのゾーンに関するデータは廃棄された。
【0145】
また、上述のように、後続の組織学的検査が、各患者から集めた組織標本に対して実施された。組織標本が、必要なS/N比を備える特定のゾーンについて採取され、分析された場合、その結果は、図27〜38に表示された。しかし、患者の特定ゾーンに関する組織標本が得られずに、分析された場合には、データ・ポイントの特性を明らかにする方法がなく、その結果は、図27〜38に表示されなかった。従って、図27〜38のデータ・ポイントは、十分に高いS/N比を備えていて、引き続き、その実際の状態を確かめるため組織学的に分析された象限だけを表している。
【0146】
最後に、データは「回転単位で」分析された。上述のように、データ収集に用いられた装置は、子宮頚と接触する面に分布する42の光ファイバ診査ポイントを有している。第1の測定サイクルは、42の測定結果を収集するために実施される。次に、光ファイバは、60゜回転させられる。第2の測定サイクル中に、新しい位置において、42の追加測定結果が得られる。この回転及び測定プロセスは、子宮頚の252の全てのポイントにおいて測定が実施されるまで繰り返される。
【0147】
得られた測定値は、回転単位で分析された。換言すれば、変動の平均、標準偏差、及び、係数は、第1の測定サイクル中に得られた42の測定値について計算され、新しい値が、各後続測定サイクル中に得られた42の測定値を利用して計算された。各サイクルからの測定結果が、子宮頚全体にほぼ均等に分布している点に留意されたい。図39〜50には、各回転単位の測定サイクルに関する全ての計算値が示されている。
【0148】
図13及び14には、それぞれ、21の症例全てに関する平均対変動係数(CV)及び標準偏差(SD)のバイパラメータ・プロットが示されている。最初の5つの症例は、これらの症例と他の16の症例の間における窓タイプの差を考慮して、標準化された。図13において、6つの重症/癌の症例が、グラフの上方右側コーナにクラスタ化しているように見える(対角線の上方で、対角線上方の3つの軽症の病変の右側)。
【0149】
残りの分析には、第2世代のプローブと、新規のモノクロメータを用いて、後の16人の患者をテストすることが必要であった。図15〜26には、子宮頚全体に関する計算値が示されている。下記の表2には、正しい陰性予測のパーセンテージを示す、3つの蛍光及び反射率測定のそれぞれに関する重症の症例と軽症/炎症/正常の症例との重複度が要約されている。ここで、4つの重症の症例に関する最低レベルの尺度より低いしきい値を用いると、n=12である(すなわち、100%の感度)。表2には、軽症の形成異常(n=7)、炎症(n=3)、パパニコロー試験結果が異常であるが、生検を施されない症例(n=2)、実験的処置を受けた病歴を有する無症状の患者(n=2)、及び、正常(n=1)を含む、全ての重症より軽い形成異常の症例が含まれている。表2において明らかなように、蛍光測定に関する290nm及び反射率測定に関する320nmの波長は、重症の症例と重症より軽い症例の間における重複の最小量を示している。
【0150】
【表2】
Figure 0004474050
【0151】
図27〜38には、S/N比が十分に高く、その状態を判定するため、引き続き分析された象限の計算測定値が示されている。象限単位の分析の目的は、象限レベルまでの空間情報が得られるか否かを示し、正常象限を異常象限から弁別できるか否かを確認することにあった。
【0152】
全部で19の象限を、生検を施された罹病部位または正常部位を含むものとして確実に識別することができた。これらのうち、正常な象限はなく、8つに、軽症/炎症性の病的異変が含まれており、2つに、重症の病的異変が含まれていた。蛍光測定に290nmの波長を用いると、象限内の変動性の測度のため、データが分割されるように思えた(SD及びCV)。平均蛍光は、350及び420nmで判別されるように思える。パパニコロー試験によって正常と診断され、膣鏡検査によって変質形成と診断された、生検において重症の病的異変と誤診される可能性のある、重症の病変が1つ存在するように思われる。従って、あらかじめ明らかなように、子宮頚全体の測定は、象限レベル、すなわち、より小さい場領域まで下げると、小さい診断値になるが、診断的には、より「重要な」ものになる。
【0153】
図39〜50には、回転単位で計算された測定値が示されている。この分析は、単一測定サイクルからの個別回転データが、6つの回転位置について、全てが必要か、あるいは、部分集合が必要かに関する何らかの手がかりを与えるものであるか否かを判定するために実施された。一般に、単一の回転データは、統合データ・セットのそれを鏡映し、さらに少しだけ重複する。その結果に基づき、回転単位のデータは、子宮頚全体のデータと同様であるように思われる。これは、42の診査ポイントから得られる分解能は、子宮頚の状態を正確に予測するのに十分であることを示唆するものである。
【0154】
図51には、460nmの波長を利用した蛍光測定の計算平均値に対する、320nmの波長を利用した反射率測定の計算標準偏差のバイパラメータ・プロットが示されている。見て分かるように、このプロットには、正常と重症の病変との判別が示されている。
【0155】
この小データ・セットに関して明確な結論を引き出すのは時期尚早であるが、結果は、勇気づけられるものである。パパニコロー試験と膣鏡検査の両方とも誤って分類した、本発明の分光学的方法によれば判別することが可能であったろう、重症の病変があった。さらに、これらの予備事例の結果は、発癌に起因する既知の生物学的現象及び場の影響に一致する。蛍光測定と反射率測定の両方によって、判別情報が得られるのが注目される。
【0156】
個別波長における変動の全体としての平均、標準偏差、及び、係数を調べ終わると、次に、空間及びスペクトル情報を利用することが可能になる。組織病理学が利用可能な組織上のポイント(例えば生検部位/生検部位の近く)から測定されたスペクトルは、特に、例えば、正常対異常のカテゴリによって検査することが可能である。スペクトル情報をさらに利用するため、望ましい方法では、上述の重要な波長におけるさまざまな強度比を用いることが必要になる。そのアプローチ以外に、高度な統計的分析技法(例えば主成分分析、ベイズ分類、分類木、人工ニューラル・ネットワーク)を利用して、パターン認識の判別及びモデル化に有効な可能性のある他の波長の識別を助けることも可能である。
【0157】
以上の実施態様は単なる例示であって、本発明を限定するものと解釈すべきでない。本発明の教示する内容は、別の種類の装置に対しても容易に利用することができる。本発明で述べた説明は、説明のための例示を意図したものであって、請求の範囲を限定するものではない。該当する技術分野における当業者であれば、多くの代替例や改良、変形例が明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する、位相シフト測定を行うことができる装置を示した概要図である。
【図2】本発明を実施する内視鏡の概要図である。
【図3】図3Aおよび3Bは、本発明の他の実施態様を示している。
【図4】図4A、4Bおよび4Cは、本発明の各種実施態様における端末部分を示している。
【図5】本発明の別の実施態様を示す断面図である。
【図6】図6Aおよび6Bは、図5に示した装置の10−10線に沿った別の断面図である。
【図7】図7A〜7Dは、光ファイバの各種の配列を示す。
【図8】光ファイバの各種の配列を示す。
【図9】光ファイバの各種の配列を示す。
【図10】本発明の別の実施態様を示している。
【図11】図11Aは、本発明の別の実施態様を示した概要図であり、図11B〜11Dは、目標組織を複数のフィールド・エリアに分ける方法を示している。
【図12】発明を実施する方法のステップを示している。
【図13】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図14】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図15】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図16】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図17】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図18】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図19】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図20】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図21】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図22】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図23】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図24】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図25】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図26】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図27】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図28】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図29】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図30】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図31】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図32】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図33】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図34】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図35】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図36】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図37】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図38】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図39】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図40】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図41】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図42】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図43】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図44】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図45】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図46】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図47】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図48】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図49】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図50】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【図51】発明を使用して行われた各種のテスト結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10…切断線
12…円形端部キャップ
20…放射線源
22…フィルタ・アセンブリ
44…プロセッサ
45…メモリ
47…ディスプレイ
50…標的組織
52…光ファイバ
54…戻り光ファイバ
55…光学系
56…検出器
60…内視鏡
62…ハンドル
66…薬剤を送り込むための装置
70…本体部分
72…光ファイバ
72a〜72c…光ファイバ
74…遠位保持部分
76…遠位端
80…遠位端
90…電磁放射線
92a、92b…バルーン部分
94…保持部分
96…たわみワイヤまたはバー
97…光ファイバ
98…保持部分
110…器具
112…外側ハウジング
114…内側コア(内側ハウジング;回転式コア)
116…光ファイバ
116a…励起光ファイバ
116b…検出光ファイバ(単一光ファイバ)
118…回り止め機構
120…端部キャップ
121…円形端板
122…回転軸受け
123…屈折率整合剤
130…ストッパ
132…中央凹部
134…取り付け部
136…フィンガ
140…測定器具の面
142、142A、142B、142C、142D…黒の円(診査位置)
144…中空の円(診査位置)
500…場パターン
542…診査ポイント
560…場領域調整装置
570…場領域処理装置
580…複数の場領域

Claims (38)

  1. 以下の工程を有する目標組織の状態に関する情報を取得する方法。
    (a)離間した位置から目標組織に励起電磁放射線を照射する工程
    (b)前記目標組織から返された戻り電磁放射線を検出する工程
    (c)少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記戻り電磁放射線の特徴をプロセッサにより決定する工程
    (d)前記少なくとも2つの分光学的手法によって決定された特徴を組み合わせ、これによって前記目標組織内における生物化学的変化を形態学的変化から分離する工程
    (e)前記決定され組み合わされた特徴に基づいて前記目標組織の状態を前記プロセッサにより決定する工程
  2. 前記少なくとも2つの分光学的手法は、蛍光発光測定と、散乱または反射測定を包含することを特徴とする求項1記載のシステム。
  3. 前記少なくとも2つの分光学的手法は、吸収測定、散乱測定、反射測定、偏光異方性測定、定常状態蛍光発光測定、および時間分解蛍光発光測定からなるグループから選択されることを特徴とする求項1記載の方法。
  4. 前記時間分解蛍光発光測定は、位相変調テクニック、偏光異方性テクニック、蛍光発光の消滅プロファイルを直接モニタするテクニックのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする求項3記載の方法。
  5. 前記(b)工程は、前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線および前記目標組織から散乱される励起電磁放射線を同時に検出する工程を含むことを特徴とする求項1から4のいずれか一に記載の方法。
  6. 前記(c)工程は、前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線および前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の両方に対して強度ベースの測定を行う工程を含むことを特徴とする求項5記載の方法。
  7. 前記(b)工程は、前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線を検出し、続いて前記目標組織から散乱される励起電磁放射線を検出する工程を含むことを特徴とする求項1から4のいずれか一に記載の方法。
  8. 前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線の検出と、それに続く前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の検出との間の時間として定義されるクリティカル・タイミング・ウィンドウが、約0.25秒を超えないことを特徴とする求項7記載の方法。
  9. 前記(c)工程は、前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線および前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の両方に対して強度ベースの測定を行う工程を含むことを特徴とする求項7記載の方法。
  10. 前記(b)工程は、前記目標組織を覆って分布する複数の検査ポイントから返された電磁放射線を検出する工程を含むことを特徴とする求項1から9のいずれか一に記載の方法。
  11. 前記方法はさらに前記目標組織を第1のセットのフィールド・エリアに分ける工程を含んでおり、
    前記(c)工程は、少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記戻り電磁放射線の特徴を決定する工程を含んでおり、
    前記(d)工程は、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれについて前記少なくとも2つの分光学的手法によって決定された特徴を組み合わせる工程を含んでおり、
    前記(e)工程は、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれの、前記決定され、組み合わされた特徴を比較することによって前記目標組織の状態を決定する工程を含むことを特徴とする求項10記載の方法。
  12. 前記方法はさらに目標組織の視覚的特徴を識別する工程を含んでおり、
    前記フィールド・エリアは、前記目標組織の識別済みの視覚的特徴に基づいて選択されることを特徴とする求項11記載の方法。
  13. 前記フィールド・エリアは、前記目標組織の以前に識別済みの特徴に基づいて選択されることを特徴とする求項11記載の方法。
  14. 前記目標組織の以前に識別済みの特徴は、細胞学、コルポスコピーおよび組織病理学のうちの少なくとも1つを使用して以前に行った前記目標組織のテストを通じて識別された前記目標組織の特性を包含することを特徴とする求項13記載の方法。
  15. 前記方法はさらに、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれの、前記決定され、組み合わされた特徴を比較することによって前記目標組織の状態を決定した後、前記目標組織を、前記第1のセットのフィールド・エリアと異なる第2のセットのフィールド・エリアに分けなおす工程と、
    少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記戻り電磁放射線の特徴を決定する工程と、
    前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれについて前記少なくとも2つの分光学的手法によって決定された特徴を組み合わせる工程と、
    前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれの、前記決定され、組み合わされた特徴を比較することによって前記目標組織の状態を決定する工程を含むことを特徴とする求項11記載の方法。
  16. 前記方法は源と検出器とプロセッサとを備える装置を使用して実行されるものであり、また前記複数の検査ポイントから返された電磁放射線を検出する工程が以下の工程を含むことを特徴とする求項10記載の方法。
    前記複数の検査ポイントの第1のサブセットからの前記目標組織から返された電磁放射線を検出する工程
    前記装置および前記組織の少なくとも一方を移動する工程
    前記複数の検査ポイントの第2のサブセットからの前記目標組織から返された電磁放射線を検出する工程
    前記装置および前記組織の少なくとも一方を再度移動する工程
    このプロセスを前記複数の検査ポイントのすべてにおいて検出を実行完了するまで継続する工程
  17. 前記方法はさらに、前記決定され組み合わされた特徴に基づいて前記目標組織の異なる部分の状態のマップを生成する工程を含むことを特徴とする求項1から16のいずれか一に記載の方法。
  18. 前記方法はさらに、前記目標組織内における状態のパターンの有無を決定するためのパターン認識プロセスを行う工程を含むことを特徴とする求項1から17のいずれか一に記載の方法。
  19. 以下の構成を備えるヒトまたは動物の目標組織における罹病領域の存在及び位置を決定するためのシステムであって、
    前記システムは、
    前記目標組織から離間して配置され、励起電磁放射線を提供するための電磁放射線源と、
    前記励起電磁放射線を目標組織に結合するデバイスと、
    前記目標組織から離間して配置され、前記目標組織から返された電磁放射線を検出するデバイスと、
    前記返された電磁放射線の特徴を少なくとも2つの分光学的手法を用いて決定すべく構成されたプロセッサと、
    を備え、
    前記プロセッサは、前記少なくとも2つの分光学的手法のそれぞれによって決定された前記特徴を組み合わせ、それにより前記目標組織内における生物化学的変化と形態学的変化を分離し、かつ決定され組み合わされた特徴に基づいて前記目標組織の状態を決定するものであり、
    前記電磁放射線を検出するデバイスは、励起放射に応じて蛍光体から放出された蛍光をまず検出し、続いて離間間隔で生じるクロストークを低減するよう、十分に離間して配置された前記目標組織を覆って分布する複数の検査ポイントにおいて、前記目標組織から発散された励起電磁放射線を検出することを特徴とするシステム。
  20. 前記少なくとも2つの分光学的手法は、蛍光発光測定法および散乱または反射測定法を包含することを特徴とする求項19記載のシステム。
  21. 前記少なくとも2つの分光学的手法は、吸収測定、散乱測定、反射測定、偏光異方性測定、定常状態の蛍光発光測定、および時間分解蛍光発光測定からなるグループから選択されることを特徴とする求項19記載のシステム。
  22. 前記返された電磁放射線を検出するデバイスは、前記電磁放射線に反応する内生的な発蛍光団によって放出される蛍光放射線および、前記目標組織から散乱される励起電磁放射線を同時に検出するべく構成されていることを特徴とする求項19から21のいずれか一に記載のシステム。
  23. 前記プロセッサは、前記励起放射線に反応する内生的な発蛍光団によって放出される蛍光放射線および前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の両方に対して強度ベースの測定を行うことを特徴とする求項22記載のシステム。
  24. 前記電磁放射線を検出するデバイスは、最初に前記電磁放射線に反応する内生的な発蛍光団によって放出される蛍光放射線を検出した後、続いて前記目標組織から散乱される励起電磁放射線を検出するべく構成されていることを特徴とする求項19から21のいずれか一に記載のシステム。
  25. 前記励起電磁放射線に反応して前記目標組織から放出される電磁放射線の検出と、それに続く前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の検出の間の時間として定義されるクリティカル・タイミング・ウィンドウが、約0.25秒を超えないことを特徴とする求項24記載のシステム。
  26. 前記プロセッサは、前記励起放射線に反応する内生的な発蛍光団によって放出される蛍光放射線および前記目標組織から散乱される励起電磁放射線の両方に対して強度ベースの測定を行うことを特徴とする求項24記載のシステム。
  27. 前記電磁放射線を検出するデバイスは、前記目標組織を覆って分布する複数の検査ポイントから返される電磁放射線を検出するべく構成されていることを特徴とする求項19から26のいずれか一に記載のシステム。
  28. 前記プロセッサは、前記目標組織を第1のセットのフィールド・エリアに分け、前記少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記返される電磁放射線の特徴を決定し、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれについて前記少なくとも2つの分光学的手法によって決定された特徴を組み合わせ、さらに、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記目標組織の状態を、前記それぞれのフィールド・エリアについて決定し、組み合わせた特徴に基づいて決定することを特徴とする求項27記載のシステム。
  29. 前記目標組織は、以前に識別済みの前記目標組織の特性に従ってフィールド・エリアに分けられることを特徴とする求項28記載のシステム。
  30. 前記以前に識別済みの前記目標組織の特性は、視覚的に識別した前記目標組織の特性であることを特徴とする求項29記載のシステム。
  31. 前記以前に識別済みの前記目標組織の特性は、細胞学、コルポスコピーおよび組織病理学のうちの少なくとも1つを使用して以前に行った前記目標組織のテストを通じて識別された前記目標組織の特性であることを特徴とする求項29記載のシステム。
  32. さらに前記プロセッサは、前記第1のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記目標組織の状態を、前記それぞれのフィールド・エリアについて決定し、組み合わせた特徴に基づいて決定した後、前記目標組織を前記第1のセットのフィールド・エリアと異なる第2のセットのフィールド・エリアに分け、前記少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記返される電磁放射線の特徴を決定し、前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれについて前記少なくとも2つの分光学的手法によって決定された特徴を組み合わせ、さらに、前記第2のセットのフィールド・エリアのそれぞれにおける前記目標組織の状態を、前記それぞれのフィールド・エリアについて決定し、組み合わせた特徴に基づいて決定するべく構成されていることを特徴とする求項28から31のいずれか一に記載のシステム。
  33. 前記電磁放射線を検出するデバイスは、複数のあらかじめ決定済みのポジションに対して移動可能であり、あらかじめ決定済みのポジションのそれぞれにおいて、前記複数の検査ポイントのサブセットから返される電磁放射線を検出するべく構成されていることを特徴とする求項27記載のシステム。
  34. 前記プロセッサは、さらに、パターン認識プロセスを行って、前記目標組織内における状態のパターンの有無を決定するべく構成されていることを特徴とする求項19から33のいずれか一に記載のシステム。
  35. 前記プロセッサは、さらに、決定された目標組織の異なる部分の状態のマップを生成するべく構成されていることを特徴とする求項19から34のいずれか一に記載のシステム。
  36. 以下の工程を有するヒトまたは動物の病変組織の状態に関する情報を取得する方法。
    離間した位置から目標組織に励起電磁放射線を照射する工程
    前記目標組織から返された電磁放射線を検出する工程
    少なくとも2つの分光学的手法を用いて前記返された電磁放射線の特徴をプロセッサにより決定し、それにより、疾患に起因して生じている前記目標組織内における生物化学的変化と形態学的変化を分離する工程
    前記決定した特徴に基づいて前記目標組織の状態を前記プロセッサにより決定する工程
  37. 以下の工程を有するヒトまたは動物の目標組織における罹病領域の存在及び位置を決定するためのシステムであって、
    前記システムは、
    前記目標組織から離間して配置され、励起電磁放射線を提供するための電磁放射線源と、
    前記励起電磁放射線を目標組織に結合するデバイスと、
    前記目標組織から離間して配置され、前記目標組織から返された電磁放射線を検出するデバイスと、
    前記返された電磁放射線の特徴を少なくとも2つの分光学的手法を用いて決定し、それにより疾患に起因して生じている前記目標組織内における生物化学的変化と形態学的変化を分離し、前記決定した特徴に基づいて前記目標組織の状態を決定するべく構成されているプロセッサと、
    を有しており、
    前記電磁放射線を検出するデバイスは、励起放射に応じて蛍光体から放出された蛍光をまず検出し、続いて離間間隔で生じるクロストークを低減するよう、十分に離間して配置された前記目標組織を覆って分布する複数の検査ポイントにおいて、前記目標組織から発散された励起電磁放射線を検出することを特徴とするシステム。
  38. 前記罹病領域の検出が、目標組織サンプルをセットしたシステムの従前の較正を要さず、放射線源が他の未使用の目標組織でもって予め較正されてなることを特徴とする請求項19記載のシステム。
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