JP4473355B2 - アポトーシス抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アポトーシスの促進が関わる疾患の予防および治療剤として有用なアポトーシス抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アポトーシスとは、細胞の生理的・能動的な死を意味し、その異常が各種疾患の発症に密接に関係することが知られている[臨床病理 45巻 7号 603−605頁(1997年);医学のあゆみ 178巻 10号 712−716頁(1996年)]。
アポトーシス抑制作用を有する化合物としては、例えば(1-ヘテロアゾリル-1-ヘテロサイクリル)アルカン誘導体(特表平8−512312);(3S,4aR,6R,8aR)-6-[2-(1H-テトラゾール-5-イル)-エチル-1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a-デカヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)、314巻、249−254頁、1996年)などが知られている。
最新医学 52巻 6号 95−102頁(1997年)、特に100頁には、「チアゾリジンは,恐らくPPARγの作用を介して,前脂肪細胞から脂肪細胞への分化を促進し,小さな脂肪細胞の数を顕著に増加させ,大きな脂肪細胞の数を減少させる(アポトーシス??)のであろう」、「脂肪組織に作用するチアゾリジン誘導体は,このようなタイプのインスリン抵抗性に対し著効を示す」との記載があり、「チアゾリジン誘導体による脂肪組織の変化とインスリン抵抗性の改善機構(仮説)」が示されているが、これらはアポトーシス抑制作用に関するものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アポトーシス抑制作用を示す薬剤は、アポトーシスの促進が関わると考えられる疾患、例えばウイルス疾患、神経変性疾患、脊髄異形成疾患、虚血性疾患、肝疾患等の予防および治療剤として用いることができるので、このような新しいタイプの薬剤の開発が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、アポトーシス抑制作用を有する化合物につき種々検討した結果、インスリン感受性増強作用を有する化合物、特にアゾリジンジオンと、その特定の側鎖に化学構造上の特異性を有する一般式
【化3】
〔式中、Rはそれぞれ置換されていてもよい炭化水素または複素環基;Yは式 −CO−、−CH(OH)−または−NR3−(ただしR3は置換されていてもよいアルキル基を示す。)で示される基;mは0または1;nは0、1または2;XはCHまたはN;Aは結合手または炭素数1ないし7の2価の脂肪族炭化水素基;Qは酸素原子または硫黄原子;R1は水素原子またはアルキル基を示す。環Eはさらに1ないし4個の置換基を有していてもよく、該置換基はR1と結合して環を形成していてもよい。LおよびMはそれぞれ水素原子を示すかあるいは互いに結合して結合手を形成していてもよい。〕で表される化合物またはその塩が、予想外にもその特異な化学構造に基づいて優れたアポトーシス抑制作用を示し、アポトーシスの促進が関わると考えられる疾患の予防・治療剤として有用であることを初めて見出し、これに基づいて本発明を完成した。
【0005】
本発明は、
1)一般式(I)で表される化合物またはその塩を含有してなるアポトーシス抑制剤、
2)Rで示される複素環基が、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する5ないし7員の単環式複素環基またはその縮合複素環基である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
3)Rが置換されていてもよい複素環基である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
4)複素環基が、ピリジル、オキサゾリル、チアゾリルまたはトリアゾリル基である上記3)記載のアポトーシス抑制剤、
5)部分構造式
【化4】
である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
6)XがCHである上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
7)R1が水素原子である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
8)LおよびMが水素原子である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
9)インスリン感受性増強作用を有する化合物を含有してなるアポトーシス抑制剤、
10)神経変性疾患の予防および治療剤である上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
11)ピオグリタゾンまたはその塩を含有する上記1)記載のアポトーシス抑制剤、
12)トログリタゾンまたはその塩を含有する上記1)記載のアポトーシス抑制剤、および
13)ロジグリタゾンまたはその塩を含有する上記1)記載のアポトーシス抑制剤に関する。
【0006】
本発明のアポトーシス抑制剤に用いられる化合物は、インスリン感受性増強作用を有する化合物であればよく、特に一般式(I)で表される化合物またはその塩が好ましい。式(I)における置換基について以下に説明する。
Rで示される置換されていてもよい炭化水素基における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、脂環族−脂肪族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基における炭素数は、好ましくは1〜14である。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基が好ましい。該脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec.−ブチル、t.−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t.−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチルなど炭素数1〜8の飽和脂肪族炭化水素基(例、アルキル基等);例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2,4−ヘキサジエニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2,4−ヘキサジイニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニルなど炭素数2〜8の不飽和脂肪族炭化水素基(例、アルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基、アルカジイニル基等)が挙げられる。
脂環族炭化水素基としては、炭素数3〜7の脂環族炭化水素基が好ましい。該脂環族炭化水素基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど炭素数3〜7の飽和脂環族炭化水素基(例、シクロアルキル基等)および1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、3−シクロペンテニル、1−シクロヘキセニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、1−シクロヘプテニル、2−シクロヘプテニル、3−シクロヘプテニル、2,4−シクロヘプタジエニルなど炭素数5〜7の不飽和脂環族炭化水素基(例、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基等)が挙げられる。
【0007】
脂環族−脂肪族炭化水素基としては、上記脂環族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とが結合したもの(例、シクロアルキル−アルキル基、シクロアルケニル−アルキル基等)のが挙げられ、なかでも炭素数4〜9の脂環族−脂肪族炭化水素基が好ましい。該脂環族−脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンテニルメチル、3−シクロペンテニルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキセニルメチル、3−シクロヘキセニルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘキシルプロピル、シクロヘプチルメチル、シクロヘプチルエチルなどが挙げられる。
芳香脂肪族炭化水素基としては、炭素数7〜13の芳香脂肪族炭化水素基(例、アラルキル基、アリール−アルケニル基等)が好ましい。該芳香脂肪族炭化水素基としては、例えばベンジル、フェネチル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、1−フェニルプロピルなど炭素数7〜9のフェニルアルキル;α−ナフチルメチル、α−ナフチルエチル、β−ナフチルメチル、β−ナフチルエチルなど炭素数11〜13のナフチルアルキル;スチリル、4−フェニル−1,3−ブタジエニルなど炭素数8〜10のフェニルアルケニル;2−(2−ナフチル)ビニルなど炭素数12〜13のナフチルアルケニルなどが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基(例、アリール基等)が好ましい。該芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル、ナフチル(α−ナフチル,β−ナフチル)などが挙げられる。
【0008】
一般式(I)中、Rで示される置換されていてもよい複素環基における複素環基としては、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する5ないし7員の単環式複素環基またはその縮合複素環基が挙げられる。縮合複素環としては、例えばこのような5ないし7員の単環式複素環と、1ないし2個の窒素原子を含む6員環、ベンゼン環または1個の硫黄原子を含む5員環との縮合環が挙げられる。
複素環基の具体例としては、例えば2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピラジニル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,4−トリアゾ−ル−3−イル、1,2,3−トリアゾ−ル−4−イル、テトラゾ−ル−5−イル、ベンズイミダゾ−ル−2−イル、インド−ル−3−イル、1H−インダゾ−ル−3−イル、1H−ピロロ〔2,3−b〕ピラジン−2−イル、1H−ピロロ〔2,3−b〕ピリジン−6−イル、1H−イミダゾ〔4,5−b〕ピリジン−2−イル、1H−イミダゾ〔4,5−c〕ピリジン−2−イル、1H−イミダゾ〔4,5−b〕ピラジン−2−イル、ベンゾピラニル、3,4−ジヒドロ−ベンゾピラン−2−イル等が挙げられる。複素環基は、好ましくはピリジル、オキサゾリル、チアゾリルまたはトリアゾリル基である。
【0009】
一般式(I)中、Rで示される炭化水素基および複素環基は、それぞれ置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、アリール基、芳香族複素環基、非芳香族複素環基、ハロゲン原子、ニトロ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいチオール基、エステル化されていてもよいカルボキシル基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜15の直鎖状または分枝状の脂肪族炭化水素基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
アルキル基の好適な例としては、炭素数1〜10のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec.−ブチル、t.−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t.−ペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。
アルケニル基の好適な例としては、炭素数2〜10のアルケニル基、例えばビニル、アリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。
アルキニル基の好適な例としては、炭素数2〜10のアルキニル基、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニルなどが挙げられる。
【0010】
脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜12の飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、例えばシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基などが挙げられる。
シクロアルキル基の好適な例としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル、ビシクロ〔2.2.2〕オクチル、ビシクロ〔3.2.1〕オクチル、ビシクロ〔3.2.2〕ノニル、ビシクロ〔3.3.1〕ノニル、ビシクロ〔4.2.1〕ノニル、ビシクロ〔4.3.1〕デシルなどが挙げられる。
シクロアルケニル基の好適な例としては、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、例えば2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられる。
シクロアルカジエニル基の好適な例としては、炭素数4〜10のシクロアルカジエニル基、例えば2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イルなどが挙げられる。
アリール基とは、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基を意味し、好適な例としては、炭素数6〜14のアリール基、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アセナフチレニルなどが挙げられ、なかでもフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどが好ましい。
【0011】
芳香族複素環基の好適な例としては、例えばフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどの、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する5ないし7員の芳香族単環式複素環基;例えばベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ〔b〕チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2−ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、α−カルボリニル、β−カルボリニル、γ−カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナトリジニル、フェナトロリニル、インドリジニル、ピロロ〔1,2−b〕ピリダジニル、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジニル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジニル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジニルなどの、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する2環性または3環性芳香族縮合複素環基などが挙げられる。
【0012】
非芳香族複素環基の好適な例としては、例えばオキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、チオラニル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノなどが挙げられる。
ハロゲン原子の例としてはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられ、とりわけフッ素および塩素が好ましい。
置換されていてもよいアミノ基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数1〜13のアシル基(例、炭素数2〜10のアルカノイル基、炭素数7〜13のアリールカルボニル基等)または炭素数6〜12のアリール基等でモノまたはジ置換されていてもよいアミノ基(−NH2基)が挙げられる。
置換されたアミノ基としては、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、ジアリルアミノ、シクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ、フェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ等が挙げられる。
【0013】
置換されていてもよいアシル基におけるアシル基としては、炭素数1〜13のアシル基、具体的にはホルミルの他例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基または芳香族複素環基(例、チエニル,フリル,ピリジルなど)とカルボニル基とが結合した基などが挙げられる。
アシル基の好適な例としては、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、シクロヘプタンカルボニル、クロトニル、2−シクロヘキセンカルボニル、ベンゾイル、ニコチノイルなどが挙げられる。
置換されたアシル基における置換基としては、例えば炭素数1〜3のアルキル、例えば炭素数1〜3のアルコキシ基、ハロゲン(例、塩素,フッ素,臭素など)、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ等が挙げられる。
【0014】
置換されていてもよいヒドロキシ基において、置換されたヒドロキシ基としては、例えばアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基の好適な例としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec.−ブトキシ、t.−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、ノニルオキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。
アルケニルオキシ基の好適な例としては、炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、例えばアリル(allyl)オキシ、クロチルオキシ、2−ペンテニルオキシ、3−ヘキセニルオキシ、2−シクロペンテニルメトキシ、2−シクロヘキセニルメトキシ等が挙げられる。
アラルキルオキシ基の好適な例としては、炭素数7〜10のアラルキルオキシ基、例えばフェニル−C1-4アルキルオキシ(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシなど)等が挙げられる。
アシルオキシ基の好適な例としては、炭素数2〜13のアシルオキシ基、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルカノイルオキシ(例、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシなど)等が挙げられる。
アリールオキシ基の好適な例としては、炭素数6〜14のアリールオキシ基、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。該アリールオキシ基は、1ないし2個の置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えばハロゲン(例、塩素,フッ素,臭素など)等が挙げられる。置換されたアリールオキシ基としては、例えば4−クロロフェノキシ等が挙げられる。
【0015】
置換されていてもよいチオール基において、置換されたチオール基としては、例えばアルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アラルキルチオ基、アシルチオ基などが挙げられる。
アルキルチオ基の好適な例としては、炭素数1〜10のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec.−ブチルチオ、t.−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、ノニルチオ等が挙げられる。
シクロアルキルチオ基の好適な例としては、炭素数3〜10のシクロアルキルチオ基、例えばシクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ等が挙げられる。
アラルキルチオ基の好適な例としては、炭素数7〜10のアラルキルチオ基、例えばフェニル−C1-4アルキルチオ(例、ベンジルチオ、フェネチルチオなど)等が挙げられる。
アシルチオ基の好適な例としては、炭素数2〜13のアシルチオ基、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルカノイルチオ基(例、アセチルチオ、プロピオニルチオ、ブチリルチオ、イソブチリルチオなど)等が挙げられる。
【0016】
エステル化されていてもよいカルボキシル基としては、例えばアルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基の好適な例としては、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル,エトキシカルボニル,プロポキシカルボニル,ブトキシカルボニル等が挙げられる。
アラルキルオキシカルボニル基の好適な例としては、炭素数8〜10のアラルキルオキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基の好適な例としては、炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシカルボニル,p−トリルオキシカルボニル等が挙げられる。
Rで示される炭化水素基および複素環基における置換基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、芳香族複素環基、炭素数6〜14のアリール基であり、さらに好ましくはC1-3アルキル,フリル,チエニル,ベンゾフラニル,フェニル,ナフチルである。
【0017】
一般式(I)中、Rで示される炭化水素基および複素環基上の置換基は、それらが脂環式炭化水素基,アリール基,芳香族複素環基または非芳香族複素環基であるときはさらにそれぞれ適当な置換基を1個以上、好ましくは1ないし3個有していてもよく、このような置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基(例、フェニル,ナフチルなど)、芳香族複素環基(例、チエニル,フリル,ピリジル,オキサゾリル,チアゾリルなど)、非芳香族複素環基(例、テトラヒドロフリル,モルホリノ,チオモルホリノ,ピペリジノ,ピロリジノ,ピペラジノなど)、炭素数7〜9のアラルキル基、アミノ基、N−モノ(C1-4)アルキルアミノ基、N,N−ジ(C1-4)アルキルアミノ基、炭素数2〜8のアシルアミノ基(例、アセチルアミノ,プロピオニルアミノ,ベンゾイルアミノなど)、アミジノ基、炭素数2〜8のアシル基(例、炭素数2〜8のアルカノイル基など)、カルバモイル基、N−モノ(C1-4)アルキルカルバモイル基、N,N−ジ(C1-4)アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、N−モノ(C1-4)アルキルスルファモイル基、N,N−ジ(C1-4)アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルケニルオキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキルオキシ基、炭素数7〜9のアラルキルオキシ基、炭素数6〜14のアリールオキシ基(例、フェニルオキシ,ナフチルオキシなど)、メルカプト基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数7〜9のアラルキルチオ基、炭素数6〜14のアリールチオ基(例、フェニルチオ,ナフチルチオなど)、スルホ基、シアノ基、アジド基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子(例、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素)などが挙げられる。
一般式(I)中、Rは、好ましくは置換されていてもよい複素環基である。Rは、さらに好ましくはC1-3アルキル,フリル,チエニル,ベンゾフラニル,フェニルおよびナフチルから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいピリジル,オキサゾリル,チアゾリルまたはトリアゾリル基である。
【0018】
一般式(I)中、Yは、−CO−,−CH(OH)−または−NR3−を示すが、−CH(OH)−または−NR3−が好ましく、さらに好ましくは−NR3−である。ここにおいて、R3で示される置換されていてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,sec.−ブチル,t.−ブチルなどが挙げられる。また、置換基としては、例えばハロゲン(例、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素),炭素数1〜4のアルコキシ基(例、メトキシ,エトキシ,プロポキシ,ブトキシ,イソブトキシ,sec.−ブトキシ,t.−ブトキシなど),ヒドロキシ基,ニトロ基,炭素数1〜4のアシル基(例、ホルミル,アセチル,プロピオニルなど)などが挙げられる。R3は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくはメチルである。
nは、0,1または2を示し、好ましくは0または1である。
Xは、CHまたはNを示し、好ましくはCHである。
【0019】
一般式(I)中、Aは、結合手または炭素数1〜7の2価の脂肪族炭化水素基を示す。該脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝状のいずれでもよく、また飽和、不飽和のいずれでもよい。その具体例としては、例えば−CH2−,−CH(CH3)−,−(CH2)2−,−CH(C2H5)−,−(CH2)3−,−(CH2)4−,−(CH2)5−,−(CH2)6−,−(CH2)7−の飽和のもの、例えば−CH=CH−,−C(CH3)=CH−,−CH=CH−CH2−,−C(C2H5)=CH−,−CH2−CH=CH−CH2−,−CH2−CH2−CH=CH−CH2−,−CH=CH−CH=CH−CH2−,−CH=CH−CH=CH−CH=CH−CH2−などの不飽和のものが挙げられる。Aは、好ましくは結合手または炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基であり、該脂肪族炭化水素基は、さらに飽和であることが好ましい。Aは、さらに好ましくは結合手、−CH2−または−(CH2)2−であり、特に好ましくは結合手または−(CH2)2−である。
R1で示されるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,sec.−ブチル,t.−ブチルなどが挙げられる。R1は、好ましくは水素原子またはメチルであり、さらに好ましくは水素原子である。
【0020】
一般式(I)中、部分構造式
【化5】
〔式中、各記号は前記と同意義を示す。〕である。
また、環Eは、置換可能な任意の位置に、さらに1ないし4個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、アルキル基、置換されていてもよいヒドロキシ基,ハロゲン原子,置換されていてもよいアシル基,ニトロ基,および置換されていてもよいアミノ基が挙げられる。これらは、いずれもRで示される炭化水素基および複素環基の置換基として述べたものと同様のものが用いられる。
【0021】
環E、すなわち部分構造式
【化6】
〔式中、R2は、水素原子,アルキル基,置換されていてもよいヒドロキシ基,ハロゲン原子,置換されていてもよいアシル基,ニトロ基または置換されていてもよいアミノ基を示す。〕である。
R2で示されるアルキル基,置換されていてもよいヒドロキシ基,ハロゲン原子,置換されていてもよいアシル基,および置換されていてもよいアミノ基としては、いずれもRで示される炭化水素基および複素環基の置換基として述べたものと同様のものが挙げられる。R2は、好ましくは水素原子、置換されていてもよいヒドロキシ基またはハロゲン原子である。R2は、さらに好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0022】
一般式(I)において、環E上の置換基とR1とが結合して環を形成している化合物としては、例えば次式で表される化合物が挙げられる。
【化7】
【化8】
[式中、各記号は前記と同意義である。]
【0023】
LおよびMは、水素原子あるいは互いに結合して結合手を示すが、好ましくは水素原子である。
一般式(I)において、LとMが互いに結合して結合手を形成する化合物:
【化9】
[式中、各記号は前記と同意義である。]には、アゾリジンジオン環の5位の二重結合に関し、(E)−体および(Z)−体が存在する。
【0024】
また、LおよびMがそれぞれ水素原子を示す化合物:
【化10】
[式中、各記号は前記と同意義である。]には、アゾリジンジオン環の5位の不斉炭素による(R)−体および(S)−体の光学異性体が存在し、該化合物は、これら(R)−体および(S)−体の光学活性体およびラセミ体を含む。
【0025】
一般式(I)で表される化合物の好ましい例としては、例えば、RがC1-3アルキル,フリル,ベンゾフラニル,チエニル,フェニルおよびナフチルから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよいピリジル,オキサゾリル,チアゾリルまたはトリアゾリル基;Yが−CH(OH)−または−NR3−(かつR3がメチル);nが0または1;Aが結合手または−(CH2)2−;R1が水素原子またはメチル;環Eすなわち部分構造式
【化11】
かつR2が水素原子、C1-4アルコキシ基またはハロゲン原子;LおよびMが水素原子である化合物が挙げられる。
【0026】
一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば
1)5-〔3-〔3-フルオロ-4-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリルメトキシ)フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
2)5-〔3-〔4-〔2-〔5-メチル-2-(2-ナフチル)-4-オキサゾリルエトキシ〕フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
3)5-〔3-〔4-〔2-(ベンゾ〔b〕フラニル)-5-メチル-4-オキサゾリルメトキシ〕フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
4)5-〔3-〔4-〔2-(2-フリル)-5-メチル-4-オキサゾリルメトキシ〕-3-メトキシフェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
5)5-〔3-〔4-〔5-メチル-2-(2-ナフチル)-4-オキサゾリルメトキシ〕フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
6)5-〔3-〔4-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリルメトキシ)フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
7)5-〔2-〔2-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリル)エトキシ〕-5-ピリジルメチル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
8)5-〔4-〔2-(1-メチル-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール-3-イル)エトキシ〕ベンジル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
9)5-〔3-〔2-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリルメトキシ)-5-ピリジル〕プロピル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
10)5-〔2-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリルメチル)-5-ベンゾフラニルメチル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
【0027】
11)5-〔4-〔2-ヒドロキシ-2-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリル)エトキシ〕ベンジル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
12)5-〔4-〔2-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリル)エトキシ〕ベンジル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
13)5-〔〔4-〔2-(メチル-2-ピリジルアミノ)エトキシ〕フェニル〕メチル〕-2,4-チアゾリジンジオン(一般名:ロジグリタゾン),
14)(R)-(+)-5-〔3-〔4-〔2-(2-フリル)-5-メチル-4-オキサゾリルメトキシ〕-3-メトキシフェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
15)5-〔2-〔2-(5-イソプロピル-2-フェニル-4-オキサゾリル)エトキシ〕-5-ピリジルメチル〕-2,4-チアゾリジンジオン,
16)5-〔3-〔3-メトキシ-4-〔1-(5-メチル-2-フェニル-4-オキサゾリル)エトキシ〕フェニル〕プロピル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
17)5-〔4-〔2-〔5-メチル-2-(2-ナフチル)-4-オキサゾリル〕エトキシ〕ベンジル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
18)5-〔2-〔4-〔2-〔5-メチル-2-(2-ナフチル)-4-オキサゾリル〕エトキシ〕フェニル〕エチル〕-2,4-オキサゾリジンジオン,
19)5-〔4-〔2-(5-エチル-2-ピリジル)エトキシ〕ベンジル〕-2,4-チアゾリジンジオン(一般名:ピオグリタゾン),
20)5-〔〔4-〔(3,4-ジヒドロ-6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチル-2H-1-ベンゾピラン-2-イル)メトキシ〕フェニル〕メチル〕-2,4-チアゾリジンジオン(一般名:トログリタゾン)などが挙げられる(なお、1)〜20)は化合物No.を示し、以下、これらの化合物を、単に化合物No.1、化合物No.2などと略記することがある)。これらのうち、化合物No.13,14,19,20が好ましい。さらに好ましくは、化合物No.13,19,20である。
【0028】
一般式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)と略記する)は、分子内に酸性基や塩基性基を有し、塩基塩や酸付加塩を形成することができる。化合物(I)の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、トリエタノールアミンなどの三級アミンとの塩;ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなどの二級アミンとの塩;エタノールアミンなどとの塩が挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
上記した塩の中でも、塩酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩が最も好ましい。
【0029】
インスリン感受性増強作用を有する化合物、例えば化合物(I)またはその塩等は、例えば特開昭55−22636(EP-A-8203)、特開昭60−208980(EP-A-155845)、特開昭61−286376(EP-A-208420)、特開昭61−085372(EP-A-177353)、特開昭61−267580(EP-A-193256)、特開平5−86057(WO-A-9218501)、特開平7−82269(EP-A-605228)、特開平7−101945(EP-A-612743)、EP-A-643050およびEP-A-710659(特開平9−194467)等に記載の方法あるいはそれに準ずる方法により製造することができる。
【0030】
本発明に用いられるインスリン感受性増強作用を有する化合物は、障害を受けているインスリン受容体機能を元に戻し、インスリン抵抗性を解除し、その結果インスリンの感受性を増強する化合物であればよく、その具体例としては、例えば前記した一般式(I)で表される化合物またはその塩が挙げられる。
また、インスリン感受性増強作用を有する化合物としては、上記した以外に、例えば
5−〔〔3,4−ジヒドロ−2−(フェニルメチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル〕メチル〕−2,4−チアゾリジンジオン (一般名:エングリタゾン)またはそのナトリウム塩;
5−〔〔4−〔3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル〕フェニル〕メチル〕−2,4−チアゾリジンジオン (一般名:ダルグリタゾン/CP−86325)またはそのナトリウム塩;
5−(2−ナフタレニルスルフォニル)−2,4−チアゾリジンジオン (AY−31637);
4−〔(2−ナフタレニル)メチル〕−3H−1,2,3,5−オキサチアジアゾール−2−オキシド (AY−30711);
5−〔6−(2−フルオロベンジル)ナフタレン−2−イルメチル〕−2,4−チアゾリジンジオン (MCC−555);
5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−〔4−(トリフルオロメチル)ベンジル]ベンズアミド (KRP−297);
(Z)−1,4−ビス−4−[(3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジン−2−イル)メチル]フェノキシブト−2−エン (YM440);
4−[4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ]ベンジル]−3,5−イソオキサゾリジンジオン (JTT−501)なども挙げられる。
【0031】
アポトーシス抑制作用は、例えばアポトーシスを起こす系に試験化合物を加え、アポトーシス活性を測定して、アポトーシス活性の抑制率を算出することによって評価される。アポトーシス活性を測定する方法としては、例えば1)細胞にアクチノマイシンDを作用させてアポトーシスを誘導し、細胞のDNAラダー(DNA ladder)を定量する方法[M. Herrmannら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)、22巻、5506頁、1994年;Y. A. IoannouおよびF. W. Chen、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)、24巻、992頁、1996年]、2)細胞にTNF−αを作用させて細胞死を測定する方法[免疫実験操作法II,右田俊介、紺田 進、本庶 佑、濱岡俊之編集、南江堂、1995年、861−871頁]などが挙げられる。
【0032】
本発明のアポトーシス抑制剤は、「インスリン感受性増強作用を有する化合物」、例えば「化合物(I)またはその塩」をそのまま用いてもよいが、通常、「インスリン感受性増強作用を有する化合物」、例えば「化合物(I)またはその塩」と薬理学的に許容される担体などとを用いて、例えば医薬組成物の製造法として自体公知の手段に従って製造することができ、具体的には、化合物(I)またはその塩と担体とを常法に従って混合して得られ、医薬組成物として用いられてもよい。
ここにおいて、薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤の好適な例としては、例えばα化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
崩壊剤の好適な例としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。
【0033】
溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、トリカプリリンなどが挙げられる。
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子などが挙げられる。
等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。
緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコールなどが挙げられる。
防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
本発明のアポトーシス抑制剤における「インスリン感受性増強作用を有する化合物」または「化合物(I)またはその塩」の含量は、例えば約5〜約100重量%、好ましくは、約10〜約80重量%である。
【0034】
本発明のアポトーシス抑制剤は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方(例えば第13改正)に記載の方法等により製造することができる。本発明のアポトーシス抑制剤の剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口剤;および注射剤、坐剤、ペレット、点滴剤等の非経口剤が挙げられ、これらは毒性も低く、それぞれ経口的あるいは非経口的に安全に投与できる。
【0035】
本発明のアポトーシス抑制剤は、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し、アポトーシスの促進が関わる疾患の予防および治療剤として用いられる。このような疾患としては、例えばウイルス疾患(例、エイズ、劇症肝炎など)、神経変性疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、小脳変性など)、脊髄異形成疾患(例、再生不良性貧血など)、虚血性疾患(例、心筋梗塞、脳卒中など)、肝疾患(例、アルコール性肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)、関節疾患(例、変形性関節症など)、アテローム動脈硬化症等が挙げられる。本発明のアポトーシス抑制剤は、とりわけ神経変性疾患の予防および治療として好適に用いられる。
本発明のアポトーシス抑制剤の投与量は、投与対象、投与ルート、症状などによっても異なるが、例えば成人の神経変性疾患の患者に対して経口投与する場合、有効成分である「インスリン感受性増強作用を有する化合物」、例えば「化合物(I)またはその塩」として、通常1回量約0.1mg/kg〜約30mg/kg、好ましくは約2mg/kg〜約20mg/kg投与することが好ましく、この量を1日1ないし3回投与するのが望ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び実験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
実施例1
化合物No.19の塩酸塩2479.5g(化合物No.19として2250g)、乳糖13930.5gおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)540gを流動造粒乾燥機(パウレック社製)に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース450gを溶解した水溶液7500gをスプレーして、造粒末を得た。得られる造粒末16820gをカッターミル(昭和化学機械工作所製)を通し、整粒末とした。得られる整粒末16530gとカルメロースカルシウム513gおよびステアリン酸マグネシウム57gをタンブラー混合機(昭和化学機械工作所製)を用いて混合末とし、この混合末16800gを打錠機(菊水製作所製)により打錠し、1錠あたり化合物No.19を15mg含有する下記組成の錠剤140,000錠を得た。
【0037】
実施例2
実施例1と同様にして、1錠あたり化合物No.19を30mg含有する下記組成の錠剤140,000錠を得た。
【0038】
実施例3
実施例2と同様にして、1錠あたり化合物No.19を45mg含有する下記組成の錠剤140,000錠を得た。
【0039】
実験例1
細胞にTNF−αを作用させてアポトーシス(細胞死)を誘発し、このアポトーシスに対する試験化合物の抑制活性を、アポトーシス抑制活性を有する公知のデキサメタゾン(dexamethasone)を基準として測定した。
すなわち、96穴ミクロプレートの各ウェルに、培地(PRMI-1640、日研生物医学研究所製)(10重量%牛胎児血清含有)を25μlずつ分注し、ついで、試験化合物のジメチルホルムアミド(化合物No.16)またはジメチルスルホキシド(化合物No.2,4,6,8,13)溶液(試験化合物の濃度:1mM)を上記培地で20容量倍に希釈した液2μlを加えた。
次に、TNF−α〔ジェンザイム(GENZYME)社、米国〕を上記培地に溶解した液(40ng/ml培地)25μlおよびマウス繊維芽細胞(L929細胞、IFO 50409)を上記培地に懸濁した液(2×105cells/ml)50μlを添加し、37℃、5%炭酸ガス存在下で72時間細胞を培養した。また、培養時の試験化合物の最終濃度は、1μMであった。
培養後、培地をウェルから吸引除去し、各ウェルに5%(w/v)クリスタルバイオレット/70%(v/v)メタノール溶液を50μlずつ添加して、生細胞を染色した。ついで、ウェルを水洗後、乾燥して、波長570nmでの吸光度を吸光光度計〔マイクロプレート・リーダー・モデル(MICROPLATE READER Model)450、バイオ・ラッド(Bio-Rad)社製〕を用いて測定することにより、各試験化合物のアポトーシス抑制活性を求めた。
また、上記試験化合物(最終濃度1μM)をデキサメタゾン(最終濃度1.1μM)とする以外は上記と同様にして、デキサメタゾンのアポトーシス抑制活性を求めた。
ついで、デキサメタゾン(最終濃度1.1μM)のアポトーシス抑制活性を100%とした場合の各試験化合物(最終濃度1μM)のアポトーシス抑制活性を算出した。
結果を〔表1〕に示す。
【0040】
【表1】
アポトーシス抑制活性(%)
〔表1〕から明らかなように、本発明で用いられる化合物(I)は、アポトーシスを抑制した。
【0041】
【発明の効果】
本発明のアポトーシス抑制剤は、優れたアポトーシス抑制作用を示し、アポトーシスの促進が関わる疾患、例えばウイルス疾患、神経変性疾患、骨髄異形成疾患、虚血性疾患、肝疾患等の予防および治療剤として有用である。
Claims (15)
- 一般式
- Rで示される複素環基が、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する5ないし7員の単環式複素環基またはその縮合複素環基である請求項1記載の予防および治療剤。
- Rが置換されていてもよい複素環基である請求項1記載の予防および治療剤。
- 複素環基が、ピリジル、オキサゾリル、チアゾリルまたはトリアゾリル基である請求項3記載の予防および治療剤。
- 部分構造式
- XがCHである請求項1記載の予防および治療剤。
- R1が水素原子である請求項1記載の予防および治療剤。
- LおよびMが水素原子である請求項1記載の予防および治療剤。
- アポトーシスの促進が関わる疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎および小脳変性から選ばれる神経変性疾患である請求項1記載の予防および治療剤。
- ピオグリタゾンまたはその塩を含有する請求項1記載の予防および治療剤。
- ロジグリタゾンまたはその塩を含有する請求項1記載の予防および治療剤。
- アポトーシスの促進が関わる疾患がエイズまたは劇症肝炎である請求項1記載の予防および治療剤。
- アポトーシスの促進が関わる疾患が心筋梗塞または脳卒中である請求項1記載の予防および治療剤。
- アポトーシスの促進が関わる疾患が肝疾患である請求項1記載の予防および治療剤。
- アポトーシスの促進が関わる疾患が関節疾患である請求項1記載の予防および治療剤。
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-
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