JP4471725B2 - 圧電共振素子、圧電共振子及びフィルタ並びに複合基板 - Google Patents

圧電共振素子、圧電共振子及びフィルタ並びに複合基板 Download PDF

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Description

本発明は、レゾネータやフィルタなどに適用されるSH波の表面波を利用した端面反射型の圧電共振素子、圧電共振子及びこれを使用したフィルタ並びに複合基板に関するものである。
従来より、通信機器、電子機器にはマイクロコンピュータなどが多用されており、このようなマイクロコンピュータにはクロック発振回路などが接続されていた。
ここで、発振回路は、図11に示す等価回路のように、圧電共振素子501の両端と接地電位との間に2つの負荷容量成分515a、515b(C1、C2)が接続され、さらに、圧電共振素子501の両端間に帰還抵抗513、インバータ514がそれぞれ接続されていた。
一般的に、安定な発振を得る為には、発振周波数に対応した圧電共振素子のメイン振動のP/V値を大きくすることに加えて、インバータの増幅率(ゲイン)の大きさにも依存する。一般的にインバータのゲインは周波数依存性があり、高周波になるに従い小さくなるが、メイン振動の近傍もしくは離れた周波数でのスプリアス振動や別の共振点が発生すると、その共振点において発振条件を満たした場合には誤発振を引き起こす恐れがある。従って、圧電共振素子には、メイン振動以外の振動レベルが充分小さいことが要求される。
なお、P/V値は20×log(Ra/Rb)で表されるもので、Raは反共振インピーダンス、Rbは共振インピーダンスとして定義される。
さらに、近年においては電子機器の薄型化が進み、例えば携帯電話やHDDやメモリーカード等に使用されるため、回路基板への高密度実装化が進められており、圧電共振素子に対しても小型化、特に薄型化が要求されているが、上記の表面実装型圧電共振子ではこのような薄型化要求に対して限界があった。
従来、発振子となる圧電共振素子の小型化を図るために、表面波を利用した端面反射型の表面波共振素子やその表面波共振素子を外装樹脂で覆ったリード付きタイプの表面波装置などの構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−195644号公報
しかしながら、特許文献1に記載の圧電共振素子は、複数の電極指が並列に配列した一対の櫛歯電極を備えたインターデジタルトランスデューサ(IDT)が圧電基板の表面に設けられ、電極間隔が狭いことから温度と湿度とが高い場合、例えばAlやAg電極等のイオン化しやすい電極材料においては、電極材料がマイグレーションを起こし、回路がショートするという問題があった。
そのため、水分の影響を低減するために圧電共振素子を外装樹脂で覆っているため、樹脂厚みを小さくするのは限界があり、特に薄型化に限界があるという問題があった。
そこで、本発明は、小型且つ低背の形状を維持しながら、耐環境性、特に耐湿性によるマイグレーションを改善した圧電共振子及びこれを使用したフィルタ並びに複合基板を提供することを目的とする。
本発明は、櫛歯電極を構成する電極指の表面を耐湿性の高いセラミック材料で被覆することで、電極材料のマイグレーションを抑制することができるとともに、共振特性を維持できるという知見によるものであり、その結果、回路の短絡を防止することができ、信頼性の高いIDTを形成した圧電共振子を実現することができる。
即ち、本発明の圧電共振子は、複数の層が積層された積層体である圧電基板の一主面に、複数の電極指が並列に配列した一対の櫛歯電極を備えたインターデジタルトランスデューサ(IDT)を設けてなり、SH波タイプの表面波を利用した圧電共振素子であって、前記櫛歯電極の少なくとも一部の表面に絶縁体からなる被覆層が設けられており、前記圧電基板内部の他側主面側に前記IDTと対向するように孤立導体層が設けられていることを特徴とする。
前記被覆層の厚みが0.03〜5μmであることが好ましい。これにより、被覆効果が充分に発揮されて回路の湿度の影響を確実に低減でき、IDTを形成した圧電共振子の信頼性をより高めることができる。
前記被覆層が、酸化珪素、アルミナ、窒化珪素及び酸化亜鉛のうち少なくとも1種であることが好ましい。これらの材料は、水又は水蒸気との反応性に乏しく、電極材料と水分との反応を効果的に防止することができる。
前記IDTと対向するように孤立導体層設けられることにより、バルク振動の周波数を表面波の振動より低周波側に移動させることが可能となる。そのため、SH波の表面波とバルク波振動とを分離し、表面波を適用した圧電共振子の小型化においてもバルク波に起因したスプリアス振動が重畳しにくく安定した振動特性を得ることができる。
前記圧電基板の厚みが320μm以下であり、補強基板が、前記圧電基板の他側主面に、接着層を介して設けられていることが好ましい。前記圧電基板の厚みが320μm以下と薄いと、SH波の表面波とバルク波振動とを分離することができ、レゾネータとして適用する場合、安定した発振を得ることが可能になる。また、前記圧電基板の一主面の前記他側主面に補強基板を設けていると、圧電共振素子の破損を防止でき、しかも、補強基板を圧電基板に接合したとしても、表面波を用いるため、共振特性には殆ど影響を与えることがない
前記接着層のヤング率が1×1010Pa以下であることが好ましい。これにより、バルク波をダンピングさせるバルク波のP/V値を小さくすることが可能である。
前記補強基板が、Al、MgO、ZrO、AlN、Si、SiCの少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。これにより、補強基板の強度が高いため、補強基板の厚みを薄くでき、圧電共振素子の厚みを薄くできる。補強基板は、製品厚みを薄くしても高い強度が得るという点から、補強基板の厚みを薄くしても、圧電磁器より十分高い強度と高い靭性が得られる材料であることが望ましい。
前記IDTの単位面積当りの荷重が2×10−5g/cm以上であることが好ましい。これにより、電極基板に加わる電極荷重の質量負荷効果が大きくなり、SH波タイプの表面波振動が電極近傍に集中する、いわゆるエネルギー閉じ込め効果が大きくなり、P/V値を大きくすることができる。
前記IDTの電極指のうちで最も外側に位置する電極指が、前記圧電基板の側面からなる反射端面と接していることが好ましい。これにより、電極基板に加わる電極荷重の質量負荷効果が大きくなり、SH波タイプの表面波振動が電極近傍に集中する、いわゆるエネルギー閉じ込め効果が大きくなり、P/V値を大きくすることができる。
前記反射端面は、前記圧電基板の一方側端面から他方側端面まで連続して形成されていることが好ましい。これにより、SHタイプの表面波の反射をより向上でき、スプリアス発生をより効果的に抑えることができる。すなわち、共振及び反共振の近傍におけるスプリアスの発生をさえることができるとともに、大きなP/V値が得られる
前記圧電基板の前記一主面の前記電極指の配列方向の端部に、前記圧電基板の側面と間隔をあけて該側面に沿うよう、表面波を反射させるための反射形成されており、前記圧電基板の前記側面と前記反射溝との間が反射堤部とされていることが好ましい。これにより、圧電共振素子をベース基板に容易に、かつ安定して接着することができ、しかも機密性を高める効果がある。SHタイプの表面波を反射させるための反射端面を構成する反射溝の長さは、櫛歯電極の電極指の交差長より長くすると、SHタイプの表面波の反射をより向上でき、スプリアス発生をより効果的に抑えることができる。
本発明の圧電共振子は、上記の圧電共振素子に対して、前記圧電基板の前記一主面に形成された前記IDTを収容する空間を形成するように、前記圧電基板の前記一主面にベース基板を接着してなるため、圧電共振素子とベース基板の積層構造を基本構造とすることができ、圧電共振素子を筐体で覆う必要がないことから圧電共振子としての厚みを著しく薄くすることができる。また、電極指の交差部に隣接する部分の反射溝内には、合成樹脂は充填されておらずに空気が存在しており、SHタイプの表面波を有効に反射できるとともに、反射溝で均一に反射することができ、圧電共振素子のP/V値を低減させることなく、スプリアスの発生を防止できる。
また、本発明の他の圧電共振子は、上記の圧電共振素子に対して、前記IDTを収容する空間を形成するように、前記圧電基板の前記IDTが形成された前記一主面にベース基板を接着し、前記反射溝に合成樹脂を充填してなることを特徴とする。これにより、圧電基板とベース基板との固着部分及び反射溝内の合成樹脂により、ベース基板内の空間が完全に密封され、気密性を向上できる。
前記ベース基板に、容量を形成する電極が形成されていることが好ましい。これにより、ベース基板に誘電体磁器を用い、容量を形成する電極を形成し、負荷容量を内蔵したレゾネータに適した圧電共振子を得る事ができる。
本発明のフィルタは、上記の圧電共振素子を複数電気的に接続してなることを特徴とする。これにより、フィルタとしての減衰特性を有したバンドパスフィルタの機能を得ることができる。
本発明の複合基板は、マイクロコンピュータICチップと、上記の圧電共振素子とをマイクロコンピュータICチップと、上記の圧電共振素子とをベース基板に実装したことが好ましい。これにより、部品の集積度を高め、低背化を図ることが容易になる。
本発明を、図を用いて説明する。図1は、本発明の圧電共振素子の一実施様態を示すもので、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)のV−V’の部分概略断面図、図1(c)はW−W’の概略断面図である。
図1によれば、本発明の圧電共振素子1は、圧電基板1aの一主面2aに一対の櫛歯電極(以下、IDTと言う)3が形成されおり、各IDT3は複数の電極指3a、3bを圧電基板の一辺1cに平行になるように、即ち、分極方向と平行になるように構成され、一対のIDT3の電極指3a、3bが交互に配置され、一対の櫛歯電極の電極指3a、3bが圧電基板1aの一主面2aの中央部で交差している。
なお、電極指3a、3bは、接続部6a、6bを介して接続用電極7a、7bにそれぞれ電気的に接続されている。接続用電極7a、7bには、外部回路への接続のためにバンプ8を設けることも可能である。
本発明によれば、櫛歯電極の少なくとも一部の表面、特に電極指3a、3bの表面に絶縁体からなる被覆層を設けることが重要である。例えば、図1(b)、(c)に示したように、ベース金属部材11a、11bの表面に被覆層12a、12bをそれぞれ形成することが重要である。
このように、櫛歯電極を構成する電極指の表面を耐湿性の高い絶縁材料被覆し、保護層を形成することで、共振特性を維持したまま電極材料のマイグレーションを抑制することができ、その結果、小型且つ低背の形状を維持しながら、耐環境性、特に耐湿性に優れ、マイグレーションの発生が防止された圧電共振子及びこれを使用したフィルタ並びに複合基板を実現できる。
被覆層の厚みを0.03〜5μm、特に0.1〜4μm、更には0.3〜3μm、より好適には0.5〜2μmにすることが好ましい。このように厚みを最適に設定することにより、P/V低下に伴う発振特性の劣化を抑制したままで、回路への湿度の影響を低減でき、IDTを形成した圧電共振子の信頼性を高めることができる。
被覆層は、酸化珪素、アルミナ、窒化珪素及び酸化亜鉛のうち少なくとも1種であることが好ましい。これらの材料は水や水蒸気との反応性が低いため耐水性に優れ、電極材料と水分との反応を効果的に防止することができる。なお、これらの材料からなる被覆層を緻密に形成することは、耐水性を高める点で好ましい。
被覆層12a、12bは、図1(b)及び(c)に示したように、少なくとも電極指3a、3bの交差する部位に形成することが必要であるが、所望により、圧電基板1aの一主面2a、接続部6a、6b間の内部の櫛歯電極3全体、さらに接続部6a、6b及び接続用電極7a、7bの上に被覆層12a、12bを形成しても良い。
圧電基板1aは、PT(チタン酸鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やニオブ酸ナトリウムNaNbO等の圧電セラミック材料、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、四棚酸リチウムなどの単結晶材料から形成されているものである。望ましくは、電気機械結合係数の大きな、チタン酸鉛PbTiOやチタン酸ジルコン酸鉛PbZrTiO及びニオブ酸ナトリウムNaNbOを主成分とした圧電セラミックス等であると大きなP/V値を得やすい。さらには、レゾネータ用途の場合、比誘電率が300以下となるチタン酸鉛PbTiO及びニオブ酸ナトリウムNaNbOを主成分とした圧電セラミックスであること望ましい。
また、櫛歯電極及び孤立導体層の材質はAlやCr、Ag、Au、Pt、Niなどが好適に使用できる。
IDT3を構成する櫛歯電極の単位面積当りの荷重は、電極厚み×電極密度で書き表され、2×10−5g/cm以上であることが望ましい。櫛歯電極の荷重をこのように重くすることで、表面波の伝播をより表面近くに制限することができ、スプリアスの重畳をより効果的に防止することができるとともに、P/Vを大きくすることができる。
例えば、IDT3を形成するためには、Al電極の場合、厚みが0.08μm以上であり、Au電極の場合は厚みが0.01μm以上にすることが好ましい。これにより、2×10−5g/cm以上の荷重を加えることができ、圧電基板と補強基板とを合成樹脂で接着した場合においても、ダンピングによるSHタイプ表面波の振動を抑制する効果が小さいことから、大きなP/Vを得る事ができる。
IDT3の電極指圧電基板1aの長手方向に平行な圧電基板の側面1d、即ち、圧電基板の一辺1cを含む側面1dは、IDT3で発生した表面波を効率良く反射するため、一主面1aに対して垂直であることが望ましい。
圧電基板1aの厚みは320μm以下、特に250μm以下、更には150μm以下であることが好ましい。これは、圧電磁器を薄くし、SHタイプの表面波のfr、fa間及びその近傍にスプリアスが重畳しないようにするという理由による。
このように圧電素子1aが薄い場合、衝撃等による破壊を防止しするため、他側主面2bの表面に、孤立導体層5を挟むようにして補強基板1bを接着することが好ましい。このように、補強基板1bを設けると、補強基板1bにより圧電共振素子1の強度向上を図ることができ、例えば、一主面2aに形成されたIDT3の加工が容易になる。
また、圧電基板1aと補強基板1bとを接着固定することで、強度は補強基板1bによって確保できることから、圧電基板1aの厚みを薄くすることが可能となり、SHタイプの表面波とバルク波に起因したスプリアスとを分離することが容易になり、より大きなP/V値を得ることができる。
補強基板1bの厚さは、200μm、特に150μm、更には100μmであることが好ましい。その理由は、電子部品の低背化を可能にする観点からである。
補強基板1bとしては、圧電基板1aを構成する圧電磁器より強度や靭性の高いアルミナ(Alを主成分にした磁器)、ジルコニア(ZrOを主成分にした磁器)、マグネシア(MgOを主成分にした磁器)、窒化アルミニウム(AlNを主成分にした磁器)、窒化珪素(Siを主成分にした磁器)、炭化珪素(SiCを主成分にした磁器)を用いることができるが、これらの中でも、原価が安く生産性に優れる観点から、アルミナが望ましい。
圧電基板1aと補強基板1bとを接着する際に接着剤として用いる合成樹脂のヤング率は1×1010Pa以下であることが望ましい。このようなヤング率の低い合成樹脂で接着することにより、バルク波に起因したスプリアスを効果的に抑制できる。このような合成樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が例示できるがこれらに限定されるものではない。
本発明によれば、IDT3と対向するように孤立導体層5を設けることが好ましい。孤立導体層5は、例えば、図2に示したように、圧電基板1aのIDT3の設けられた一主面2aと反対の他側主面2bに孤立導体層5を設けることにより、バルク振動の周波数を表面波の振動より低周波側にシフトさせることができ、SH波の表面波とバルク波振動とを分離し、スプリアス振動がSH波に重畳しにくくなるため、安定した振動特性を得る事ができる。
即ち、SHタイプの表面波の共振周波数fr及び反共振周波数faの中間近傍に存在していたバルク波のスプリアスは、圧電基板1aのIDT3が形成されないもう一方の他側主面2bに孤立導体層5を形成することで、約50MHz圧電共振素子1においては低周波側に約1.5MHzスプリアスが移動することがシミュレーションと試作によって確認された。
このように、他側主面2bに孤立導体層5を形成することで、バルク波振動に起因したスプリアスを低周波側に移動させることが可能になるため、SHタイプの表面波のfr、faとバルク波振動のスプリアスとを分離できることが判る。そのため、SHタイプの表面波のfr、fa間及びその近傍にスプリアスが重畳しないことから、大きなP/V値が得られ、レゾネータとして適用する場合、安定した発振を得ることが可能になる。
孤立導体層5の面積は、IDT3の電極指3a、3bの交差する領域である電極指交差部3cの面積よりも大きくすることが好ましい。電極指交差部3cの面積よりも孤立導体層5の面積を大きくすることによって、バルク波の悪影響をより効果的に排除することができる。
孤立導体層5は、図3(a)に示したように、他側主面2bに設けることが好ましい。圧電基板1aの一主面2aに電極指3b、接続用電極7a、7b等を設けるが、これらの電極に対して、孤立導体層5を対向させるように形成するのが容易になる。
また、図3(b)に示したように、圧電基板1aを積層体で構成し、その内部に孤立導体層5を設けることも可能である。例えば、グリーンシートの表面に電極パターンを形成し、他のグリーンシートと組合せて積層し、内部に孤立導体層を備えた積層体を得ることができる。この場合、孤立導体層5は、バルク波の影響を効果的に取り除くため、他側主面2bの近くに設けるのが望ましい。
図4は、端面反射を効率良く行うために、反射堤部をもうけた圧電共振素子を示すもので、図4(a)は斜視図、(b)は一部を除去して孤立導体層を示した斜視図、(c)は平面図である。
図4によれば、圧電共振素子21は、圧電基板21aの一主面22aの表面に電極指23a、23bを具備するIDT23が形成され、接続部26a、26bを介して接続用電極27a、27bに電気的に接続されている。また、圧電基板21aの他側主面22bには孤立導体層25が形成され、また補強基板21bと接着されている。
圧電基板21aの側面21dには、側面21dと平行な側面を有する反射堤部29を設け、圧電基板21aと反射堤部29との間に、SHタイプの表面波を反射させるための反射溝24を形成することが好ましい。
ここで、IDT23の最も外側に位置する電極指23a、23bの電極幅dは、SHタイプの表面波の波長λに対して、約λ/8の幅に設定すると、最も外側に位置する電極指は、反射溝24に隣接して形成されているため、SHタイプの表面波の端面反射をより効果的にすることが可能になる。さらに、表面波の端面反射の点からは、電極指23a、23bの外側に隣接した反射溝24の長さは、電極指23a、23bの電極指交差部3cの長さLよりも長くなるように構成するのが、SH波の端面反射を可能にし、スプリアス発生レベルを押さえられる点から望ましい。さらに、SH波からなる表面波は圧電基板の深さ方向にも振動することから、深さ方向に発生した振動に対しても端面反射を効果的にし、スプリアス発生レベルを押さえられる点からも反射溝24の深さは圧電基板1aの高さより大きいことが望ましい。
このような反射端面(圧電基板の側面)、反射溝24及び反射堤部29は、圧電基板21aをスライサー加工機やレーザー加工機やサンドブラスト加工などにより、圧電共振素子の一方の端面から他の端面まで溝加工することによって形成することができる。その際に、反射溝24が圧電基板21aにとどまらず、補強基板21bの一部に及ぶように加工することが望ましい。
また、本発明の圧電共振子は、例えば図5に示したように、本発明の圧電共振素子101(例えば図4に記載の圧電共振素子101を、入力電極PIN、グランド電極PGND、出力電極POUTを表面に具備するベース基板110の上に接着したものである。
即ち、図6(a)、(b)によれば、圧電基板101aの一主面102aにIDT103が設けられ、他側主面102bと補強基板101bとの界面に孤立導体層105が形成されている。そして、一主面102aをベース基板110に接着する。接着にあたっては、圧電共振素子101とベース基板110によってIDT103を収容する空間106を形成するように配置することが重要である。このような配置にすれば、空間106が形成されているので、圧電基板101a表面のIDT103によるSHタイプの表面波の振動を妨げることがなく、特性の優れた圧電共振子を実現できる。
この合成樹脂は、圧電共振素子101とベース基板110とを接着する際に、反射溝104の内部に充填される。なお、予め反射溝104内に合成樹脂を充填した後、圧電共振素子101とベース基板110を接着しても良い。その接着領域は、例えば、圧電磁器端面から図6(c)の圧電共振子の平面図における破線Aの外側の領域(非A領域)を選ぶことができる。この場合、バンプ108側(非A領域)の反射溝104aには合成樹脂が充填され、破線Aの内側の反射溝104bには合成樹脂115が充填されていない。
なお、合成樹脂のヤング率が十分小さく、共振特性の低下が顕著ではない場合、反射溝104bを合成樹脂で充填しても差し支えない。また、図6(a)に示したように、空間106を外気から遮断するために、反射堤部109とベース基板110と接着されるのが好ましい。
図6(b)において、圧電共振素子101の端面部まで加工された反射端面107の端面近傍は、合成樹脂の充填、又は絶縁性接着剤の塗布により塞ぐことができ、さらには外部端子形成によっても塞ぐことができるため、櫛歯電極からなるインターデジタルトランスデユーサ(IDT)の駆動部は完全に気密封止することが可能である。
この場合、反射端面部に接着剤が充填されているものの、空間106のIDT103が設けられた中部付近には接着剤が充填されていないことが望ましい。これによって、IDT103の振動を阻害せず、特性の低下を抑制することができる。また、充填する場合にはヤング率の低い接着剤を用いることが好ましい。
ベース基板110の基材110aは、絶縁性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、チタン酸バリウムを含有した誘電体材料やアルミナ基板等のセラミックス、あるいはポリイミドや液晶ポリマー等の耐熱性に優れた樹脂材などから構成されることが望ましい。
反射端面に充填する合成樹脂は、ヤング率が1×1010Pa以下のものがバルク波に起因したスプリアスを効果的に抑制できる。このような合成樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が例示できるがこれらに限定されるものではない。
本発明のフィルタは、上記の圧電共振素子を複数電気的に接続してなるものであり、例えば、一実施様態であるラダー型フィルタを図7に示す。
このフィルタは、直列共振子201と並列共振子202で構成される。直列共振子201は、入力端子205aと出力端子205bを直列に電気的配置がなされ、一方、並列共振子202は、出力端子215cが直列共振子201の出力側端子205bと結線させ、グランド側端子215gをグランドに接地させる回路構成でフィルタ回路を形成することができる。
直列共振子201と並列共振子202はそれぞれ、反射端面部206を介して、独立した櫛歯電極を形成し電気的接続を図る事でフィルタを得ることができる。例えば、ラダー型フィルタとする場合、直列に配置される圧電共振素子の共振周波数と並列に配置される反共振周波数とを合わせてフィルタの中心周波数を決定し、保証減衰量を直列列に配置した容量より並列に配置した容量より大きくすることでフィルタとしての所望の減衰量を得ることができる。即ち、並列に配置した共振子のIDT203bの数を直列に配置した共振子のIDT203aより多くすることで減衰量を大きくすることができる。
本発明の複合基板は、例えば図8に示すように、回路母基板301にキャビティ302が形成され、このキャビティ302内に、圧電共振素子303のIDT形成面をキャビティ底面に対向するように、且つIDT形成面とキャビティ底面とに空間を設けるように、本発明の圧電共振素子303を収容し、キャビティ302を覆うようにキャビティ上にICチップ304を配置したものである。
圧電共振素子303及びICチップ304は接着剤を用いて接着するが、圧電共振素子303に用いる接着剤は、図6(c)に破線で示した接着領域Aとなるように、ヤング率が1×1010Pa以下の合成樹脂からなる接着を用いるのが好ましい。また、ICチップ304はキャビティ302を密封するための蓋の役割をも果たすことができ、接着剤やろう材を用いて、キャビティ302を封止するように接着するのが好ましい。
なお、ICチップ304は、ベアチップでも、また、ICをパッケージの内部に封入したものでも、いずれでも良い。
また、回路母基板301中にはコンデンサを内蔵していること、即ち容量を形成する電極が形成されていることが望ましい。例えば、図8に示したように、回路母基板301が内部に誘電体層305を具備し、誘電体層305を挟持するように、且つ対向するように一対の電極306a、306bをそれぞれ設けてコンデンサ307a、307bを形成している。この場合、2個のコンデンサを形成し、これらのコンデンサ307a、307bが、圧電共振素子303に電気的に接続されている。
このように、マイクロコンピュータ用等のICチップ304を、キャビティ302内の圧電共振子303を封止するように実装することにより、厚みの薄い、いわゆる低背な複合基板を提供することができ、電子機器の小型化に寄与することができる。
PT系圧電磁器ウエーハ(L=21mm、W=40mm、t=0.15mm)をL方向に分極し、鏡面出した磁器の主面上にAl電極を蒸着した。フォトリソグラフ工程を用いて櫛歯電極からなるIDTと、IDTと電気的に導通する引き出し電極とを複数形成した。
なお、IDTを個々の圧電共振素子の中央部に相当する領域に配置し、IDTの電極指の長手方向と分極方向を一致させた。また、IDTの交差電極の数は12対、電極交差部の長さL(図2)は330μmとした。
ここで、IDT電極の幅は15μm、電極指と電極指との間隔は 15μm、メタライゼーション比(IDT電極幅/電極間の無電極の幅)を1に設定した。
次に、バンプ8を形成した後、マグネトロンスパッタリング法によって、IDTの上部に絶縁性薄膜を形成した。絶縁性薄膜としては、酸化珪素膜を0.03、0.1、0.5、1、3、5μmの膜厚に形成した。また、絶縁性薄膜としてアルミナ、窒化珪素及び酸化亜鉛を主成分とした薄膜を用いた場合、膜厚を0.05μmとした。
また、IDTが形成されていないもう他側主面にAl層を孤立導体層として形成し、この他側主面にアルミナを主成分とした補強基板(L=21mm、W=40mm、t=0.1mm)を接着した。接着にはヤング率が2×10Paのエポキシ樹脂を用いた。
次に、最外側の電極指の電極幅がλ/8(約7.5μm)になるように、SHタイプの表面波を反射させるための端面を形成するための溝加工を行って、図4に示した圧電共振素子を作製した。
図4に示された反射溝を得るため、圧電基板を貫通するように、さらに圧電基板の端面まで延出するように圧電基板ウエーハをダイシング加工機で加工を施した。反射溝の両端部に、図4(c)に示すように、ヤング率が1×10Paのエポキシ樹脂を充填した。その後、IDTと電気的に導通が図れた引き出し電極部の一部に導電性のバンプを印刷した。
次に、BaTiO系誘電体を主成分とした誘電体基板(L=21mm、W=40mm、t=0.15mm)のウエーハの両主面に端子電極となるAg電極印刷後焼き付けし、2個の容量が形成された(各20〜50pF)負荷容量内蔵の誘電体基板のウエーハを作製した。
その後、誘電体基板のウエーハ上にエポキシ系樹脂をIDTに対向しないような領域に環状に印刷し(図4に示す)、圧電磁器ウエーハのIDTが形成された面と対向するように貼り合わせ固着した。
その後、個々の圧電共振子の形状に(L=2mm、W=2mm、t≒0.4mm)ダイシング加工機で切断した。その後、外部端子をAgスパッタで形成し、IDTと外部端子との電気的導通を行い、図5又は6に示すような圧電共振子を得た。
この時のインピーダンス特性を測定したところ、図9に示すようにメイン周波数帯域内にスプリアスが発生せずP/V=61dBと大きな値が得られた。この時の圧電共振子の容量(IDTの容量)は15pFであり、従来から使用されるセラミックレゾネータにおける共振子の容量の15pFと同等であり、従来から負荷容量として使用される8〜30pFの範囲で安定した発振が得られることが確認された。また、IDT上部に0.5μmの酸化珪素からなる絶縁性薄膜を形成した試料を用いて湿中負荷試験(60℃、95%で1000時間の連続動作評価)を行った結果、マイグレーションは認められず安定した発振が得られた。
(比較例1)
次ぎに、実施例1において、圧電基板の他側主面に、Al層を孤立導体層として形成せず、また、被覆層を形成しない以外は、実施例1と同様にして圧電共振子を作製した。その圧電共振子のインピーダンス特性を図10に示した。
図10によれば、メイン帯域内にスプリアスが重畳することでP/V値は41dBまで低減しており、レゾネータ用途等には適しないことがわかった。
IDTの上部に形成する絶縁性薄膜として、厚みが0.01、0.03、0.1、1、3、5μm、10μmの酸化珪素膜を形成した以外は実施例1と同様にして圧電共振子を作製した。また、実施例1と同じ方法で評価したところ、0.01以外の試料は、いずれもマイグレーションは認められず、安定した発振が確認できた。厚みが0.01μmの場合、絶縁性薄膜がない比較例1に対しては、明らかに改善されていたが、50個中4個で絶縁不良が発生した。さらに、厚みが10μmの場合、P/V=51dBであったが、それ以外は、60dB以上と共振特性がさらに向上した。
IDTの上部に形成する絶縁性薄膜として、厚みが0.05μmのアルミナ、窒化珪素及び酸化亜鉛を主成分とした薄膜を形成した以外は実施例1と同様にして圧電共振子を作製した。また、実施例1と同じ方法で評価したところ、いずれもマイグレーションは認められず、安定した発振が確認できた。
本発明の圧電共振素子を示すもので、図1(a)は斜視図、(b)は(a)のV−V’の部分概略断面図、(c)はW−W’の概略断面図である。 本発明の圧電共振素子を示すもので、図1(a)は斜視図、図1(b)は圧電基板の一部を除去して孤立導体層を示した斜視図である。 (a)は図2(a)におけるW−W’の断面図、(b)は本発明の他の圧電共振素子の断面図である。 本発明の他の圧電共振素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電基板の一部を除去して孤立導体層を示した斜視図、(c)は平面図である。 本発明の圧電共振子の取付けを示す模式図である。 本発明の圧電共振子の構造を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるX−X’の断面図、(c)は平面図である。 本発明のフィルタを示す平面図である。 本発明の複合基板を示す概略断面図である。 実施例1のインピーダンス特性図である。 比較例1のインピーダンス特性図である。 圧電共振子の発振回路図である。 従来のバルク波の厚み縦3倍波振動を用いた圧電共振子の模式図である。
符号の説明
1、21・・・圧電共振素子
1a、21a・・・圧電基板
1b、21b・・・補強基板
1c・・・圧電基板の一辺
1d、21d・・・圧電基板の側面
2a、22a・・・一主面
2b、22b・・・他側主面
3、23・・・櫛歯電極(IDT)
3a、3b、23a、23b・・・電極指
3c・・・電極指交差部
5、25・・・孤立導体層
6a、6b、26a、26b・・・接続部
7a、7b、27a、27b・・・接続用電極
8・・・バンプ
11a、11b・・・ベース金属部材
12a、12b・・・被覆層
24・・・反射溝
29・・・反射堤部
A・・・接着領域の境界
L・・・電極指交差部の長さ
d・・・最外電極指の電極幅
λ・・・表面波の波長

Claims (15)

  1. 複数の層が積層された積層体である圧電基板の一主面に、複数の電極指が並列に配列した一対の櫛歯電極を備えたインターデジタルトランスデューサ(IDT)を設けてなり、SH波タイプの表面波を利用した圧電共振素子であって、前記櫛歯電極の少なくとも一部の表面に絶縁体からなる被覆層が設けられており、前記圧電基板内部の他側主面側に前記IDTと対向するように孤立導体層が設けられていることを特徴とする圧電共振子。
  2. 前記被覆層の厚みが0.03〜5μmであることを特徴とする請求項1記載の圧電共振子。
  3. 前記被覆層が、酸化珪素、アルミナ、窒化珪素及び酸化亜鉛を主成分とした少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電共振子。
  4. 前記圧電基板の厚みが320μm以下であり、補強基板が、前記圧電基板の前記他側主面に、接着層を介して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電共振素子。
  5. 前記接着層のヤング率が1×1010Pa以下であることを特徴とする請求項に記載の圧電共振素子。
  6. 前記補強基板が、Al、MgO、ZrO、AlN、Si、SiCの少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の圧電共振素子。
  7. 前記IDTの単位面積当りの荷重が2×10−5g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の圧電共振素子。
  8. 前記IDTの電極指のうちで最も外側に位置する電極指が、前記圧電基板の側面からなる反射端面と接していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の圧電共振素子。
  9. 前記反射端面は、前記圧電基板の一方側端面から他方側端面まで連続して形成されていることを特徴とする請求項8に記載の圧電共振素子。
  10. 前記圧電基板の前記一主面の前記電極指の配列方向の端部に、前記圧電基板の側面と間隔をあけて該側面に沿うよう、表面波を反射させるための反射形成されており、前記圧電基板の前記側面と前記反射溝との間が反射堤部とされていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の圧電共振素子。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の圧電共振素子に対して、前記圧電基板の前記一主面に形成された前記IDTを収容する空間を形成するように、前記圧電基板の前記一主面にベース基板を接着してなることを特徴とする圧電共振子。
  12. 請求項10に記載の圧電共振素子に対して、前記IDTを収容する空間を形成するように、前記圧電基板の前記IDTが形成された前記一主面にベース基板を接着し、前記反射溝に合成樹脂を充填してなることを特徴とする圧電共振子。
  13. 前記ベース基板に、容量を形成する電極が形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の圧電共振子。
  14. 請求項1〜10のいずれかに記載の圧電共振素子を複数電気的に接続してなることを特徴とするフィルタ。
  15. マイクロコンピュータICチップと、請求項1〜10のいずれかに記載の圧電共振素子とをベース基板に実装したことを特徴とする複合基板。
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