JP4471617B2 - Pd金属内包カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents

Pd金属内包カーボンナノチューブの製造方法 Download PDF

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この出願の発明は、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、ナノコンポジット等の新素材やスピントロニクス等の新規デバイスとしての応用展開が期待されるPd金属が内包されたカーボンナノチューブを簡単に効率よく製造することのできるPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法に関するものである。
カーボンナノチューブを基本とした新素材の研究開発が行われている。その一つに、カーボンナノチューブの内部に金属等の炭素以外の物質を導入した異物質内包カーボンナノチューブが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
特開平6−227806号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された異物質内包カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの中心に形成された中空の穴に金属等の炭素以外の物質を詰め込むことにより製造されるため、製造プロセスが簡単でなく、製造効率が良好でないという問題がある。
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、Pd金属が内包されたカーボンナノチューブを簡単に効率よく製造することのできるPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、Pd金属が内包されたカーボンナノチューブの製造方法であり、シリコン基板の表面にSiO2、SiNx、Mo又はWのいずれか一種の第1の薄膜を形成させ、第1の薄膜の表面にカーボンナノチューブに内包させるPd金属による第2の薄膜を形成させた後、第2の薄膜をナノパーティクル状にし、Pdナノパーティクルを起点としてカーボンナノチューブを化学気相成長法により成長させることにより、カーボンナノチューブの先端に存在するPdナノパーティクルの一部からPd金属が第1の薄膜表面上のPdナノパーティクルに向かって延び、Pd金属がカーボンナノチューブに内包されることを特徴とするPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
この出願の発明は、第2には、上記第1のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法において、カーボンナノチューブの成長中にシリコン基板に負のバイアスを印加することを提供する。
この出願の発明は、第3には、Pd金属が内包されたカーボンナノチューブの製造方法であり、金属基板の表面に高融点金属の第1の薄膜を形成させ、第1の薄膜の表面にカーボンナノチューブに内包させるPd金属による第2の薄膜を形成させた後、第2の薄膜をナノパーティクル状にし、Pdナノパーティクルを起点としてカーボンナノチューブを化学気相成長法により成長させることにより、カーボンナノチューブの先端に存在するPdナノパーティクルの一部からPd金属が第1の薄膜表面上のPdナノパーティクルに向かって延び、Pd金属がカーボンナノチューブに内包されることを特徴とするPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
この出願の発明は、第4には、上記第3のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法において、高融点金属基板の場合、第1の薄膜を省略することを提供する。
そして、この出願の発明は、第5には、上記第3又は第4のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法において、カーボンナノチューブの成長中に金属基板に負のバイアスを印加することを提供する。
この出願の発明の第1のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法によれば、カーボンナノチューブの製造と同時にカーボンナノチューブの中空の穴にPd金属を導入することができ、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造プロセスが簡単となり、製造効率が良好となる。
この出願の発明の第2のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法によれば、上記第1のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法の効果に加え、Pd金属内包カーボンナノチューブを基板に1本ずつ垂直に配向させることができる。熱CVDにより形成されるネット状のバンドル(束)を形成せず、電子デバイスへの応用に適する。
この出願の発明の第3のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法によれば、上記第1のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法の効果に加え、基板に低融点金属を用いることができる。
この出願の発明の第4のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法によれば、高融点金属基板の場合には、第1の薄膜を省略することができ、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造プロセスがより簡略化する。
そして、この出願の発明の第5のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法によれば、上記第2のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法と同様に、Pd金属内包カーボンナノチューブを基板に1本ずつ垂直に配向させることができる。
以下、実施例を示しつつこの出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法についてさらに詳しく説明する。
図1は、この出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法の概要を示した工程断面図である。この出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法においては、Pd金属内包カーボンナノチューブは以下の工程を経て製造される。
a)基板(1)の表面に第1の薄膜(2)を形成させる。基板(1)がシリコン製の場合、第1の薄膜(2)は、SiO2、SiNx、Mo又はWのいずれか一種から形成することができる。SiO2は、基板の表面酸化、スパッタリング、真空蒸着のいずれかにより形成可能であり、SiNx、Mo又はWは、スパッタリング、真空蒸着のいずれかにより形成可能である。基板(1)が金属製の場合、たとえばCu、Mo、その他等の場合、第1の薄膜(2)は、Mo、W等の高融点金属から形成することができ、スパッタリング、真空蒸着のいずれかにより形成可能である。第1の薄膜(2)は、カーボンナノチューブを成長させる時の基板(1)と内包金属との反応、すなわちシリコン基板の場合にはシリサイド化、低融点金属の場合には合金化を抑えることができる。
なお、第1の薄膜(2)は、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造に先立ち、あらかじめ基板(1)の表面に形成させておくこともできる。また、第1の薄膜(2)は、基板(1)がW、Mo等の高融点金属製の場合には、省略することができる。
そして、第1の薄膜(2)の表面に、カーボンナノチューブに内包させるPd金属による第2の薄膜(3)を形成させるこのPd金属による第2の薄膜(3)は、真空蒸着等により形成可能である。膜厚はカーボンナノチューブの径の大きさ等により適宜設定することができる。基板(1)が高融点金属製の場合、第1の薄膜(2)は上記のとおり省略され、第2の薄膜(3)が基板(1)の表面に直接形成される。
b)形成させた第2の薄膜(3)をナノパーティクル状にする。たとえば、基板(1)をチャンバー内に配置して加熱し、第2の薄膜(3)にプラズマを照射することにより第2の薄膜(3)をナノパーティクル状にすることができる。
c)生成させたPdナノパーティクルを起点としてカーボンナノチューブ(4)を成長させる。たとえば、チェンバー内にカーボンナノチューブ(4)の原料ガスを導入し、化学気相成長法によりカーボンナノチューブ(4)を成長させることができるカーボンナノチューブ(4)は単層、多層のいずれであってもよい。カーボンナノチューブ(4)の先端には、図示したように、Pdナノパーティクルの一部が存在する。
d)カーボンナノチューブ(4)が成長すると、これと同時に、図中の符号5に示したように、カーボンナノチューブ(4)の先端のPdナノパーティクルから第2の薄膜(2)の表面上のPdナノパーティクルに向かってPd金属が延びる。やがてPd金属は、第2の薄膜(2)の表面上のPdナノパーティクルと合体する。この時、カーボンナノチューブの成長は終了し、中空部にはPd金属が導入され、Pd金属が内包されたカーボンナノチューブが製造される(図中の符号6)。Pd金属内包カーボンナノチューブ(6)の密度、径は、カーボンナノチューブ(4)の成長時の温度等でコントロール可能である。
たとえば以上の工程として示されるこの出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法では、カーボンナノチューブの成長と同時にその中空部にPd金属を導入することができるため、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造プロセスが簡便となっている。したがって、製造効率も良好である。なお、カーボンナノチューブの成長中に、すなわち、図1c)、d)に示された工程において、基板に負のバイアスを印加すると、Pd金属内包カーボンナノチューブは基板に1本ずつ垂直に配向する。熱CVDにより形成されるネット状のバンドル(束)が形成しないため、電子デバイスへの応用に適する。
この出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法により製造されるPd金属内包カーボンナノチューブは、次のような応用が期待される。
カーボンナノチューブは水素吸蔵への応用が検討されている。そこで、水素吸蔵に注目されているPd金属を内包させることにより、カーボンナノチューブとPd金属の両方に水素吸蔵が可能となり、水素吸蔵量をより高めることが可能となる。
このように、Pd金属内包カーボンナノチューブは、新素材として、また、デバイスへの応用が期待されるものである。
表面酸化によりSiO2を表面に形成させたシリコン基板を真空蒸着装置のチェンバー内に配置し、膜厚100nmのPdをSiO2の表面に蒸着した。次いで、シリコン基板を真空中で700℃〜850℃に10分間加熱した後、基板温度はそのままにしてチェンバー内に水素を導入し、チェンバー内の圧力を約20Torrにした。そして、600Wのマイクロ波パワーを導入し、Pd薄膜に水素プラズマを1分程度照射した。この後、メタン/水素=50sccm/50sccmをチェンバー内に導入し、基板温度を900℃、マイクロ波を600Wに設定して10分間カーボンナノチューブを成長させた。カーボンナノチューブの成長中には、シリコン基板に400V以上の負のバイアスを印加した。
図2にTEM写真を示したように、Pdのナノパーティクルの一部はカーボンナノチューブの先端に存在し、カーボンナノチューブは時間とともに成長した。シリコン基板には負のバイアスが印加されているため、カーボンナノチューブは基板に垂直に成長した。Pdはカーボンナノチューブに成長にともなって次第に基板側に延び、最終的にシリコン基板側にあるPdナノパーティクルと合体し、カーボンナノチューブの成長は終了した。カーボンナノチューブは多層構造を有するものであった。そして、Pdはカーボンナノチューブに内包され、シリコン基板に垂直に配向した。
なお、図2図中に記した符号は、図1図中の符号に対応している。
もちろん、この出願の発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、Pd金属内包カーボンナノチューブの製造プロセスが簡単となり、製造効率が良好となる。
この出願の発明のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法の概要を示した工程断面図である。 実施例で製造したPd金属内包カーボンナノチューブのTEM写真である。
符号の説明
1 基板
2 第1の薄膜
3 第2の薄膜
4 カーボンナノチューブ
5 成長中のカーボンナノチューブ
Pd金属内包カーボンナノチューブ

Claims (5)

  1. Pd金属が内包されたカーボンナノチューブの製造方法であり、シリコン基板の表面にSiO2、SiNx、Mo又はWのいずれか一種の第1の薄膜を形成させ、第1の薄膜の表面にカーボンナノチューブに内包させるPd金属による第2の薄膜を形成させた後、第2の薄膜をナノパーティクル状にし、Pdナノパーティクルを起点としてカーボンナノチューブを化学気相成長法により成長させることにより、カーボンナノチューブの先端に存在するPdナノパーティクルの一部からPd金属が第1の薄膜表面上のPdナノパーティクルに向かって延び、Pd金属がカーボンナノチューブに内包されることを特徴とするPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法。
  2. カーボンナノチューブの成長中にシリコン基板に負のバイアスを印加する請求項1記載のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法。
  3. Pd金属が内包されたカーボンナノチューブの製造方法であり、金属基板の表面に高融点金属の第1の薄膜を形成させ、第1の薄膜の表面にカーボンナノチューブに内包させるPd金属による第2の薄膜を形成させた後、第2の薄膜をナノパーティクル状にし、Pdナノパーティクルを起点としてカーボンナノチューブを化学気相成長法により成長させることにより、カーボンナノチューブの先端に存在するPdナノパーティクルの一部からPd金属が第1の薄膜表面上のPdナノパーティクルに向かって延び、Pd金属がカーボンナノチューブに内包されることを特徴とするPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法。
  4. 高融点金属基板の場合、第1の薄膜を省略する請求項3記載のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法。
  5. カーボンナノチューブの成長中に金属基板に負のバイアスを印加する請求項3又は4記載のPd金属内包カーボンナノチューブの製造方法。
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